(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143443
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】二酸化炭素処理方法
(51)【国際特許分類】
B01D 53/14 20060101AFI20241003BHJP
C02F 1/461 20230101ALI20241003BHJP
B01J 19/00 20060101ALI20241003BHJP
C01B 32/50 20170101ALI20241003BHJP
C25B 3/26 20210101ALI20241003BHJP
C25B 3/05 20210101ALI20241003BHJP
C25B 3/07 20210101ALI20241003BHJP
C25B 3/09 20210101ALI20241003BHJP
C25B 3/03 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
B01D53/14 210
C02F1/461 Z
B01J19/00 A
C01B32/50
C25B3/26
C25B3/05
C25B3/07
C25B3/09
C25B3/03
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056128
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】521233563
【氏名又は名称】株式会社Eプラス
(74)【代理人】
【識別番号】100127764
【弁理士】
【氏名又は名称】小川 泰州
(72)【発明者】
【氏名】廣田 武次
【テーマコード(参考)】
4D020
4D061
4G075
4G146
4K021
【Fターム(参考)】
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA11
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BC01
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4D020CC10
4D020CC11
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4D061DC13
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4D061EB01
4D061EB04
4D061EB19
4G075AA04
4G075BA05
4G075BB04
4G075CA20
4G075CA51
4G075DA01
4G075DA18
4G075EB01
4G146JA02
4G146JB09
4G146JC21
4G146JD02
4K021AC02
4K021AC04
4K021AC05
4K021AC07
4K021AC12
4K021AC17
4K021BA02
4K021BA18
(57)【要約】
【課題】本発明は、比較的少ないエネルギーで二酸化炭素を含有する被処理ガスから二酸化炭素を回収することができる新規な二酸化炭素処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 アミン系化合物を溶質とするアルカリ性水溶液に被処理ガスを接触させることによってアルカリ性水溶液中に二酸化炭素を溶存させる吸収工程と、アルカリ性水溶液を加熱することによって溶存させた二酸化炭素を脱離させる脱離工程と、脱離させた二酸化炭素を回収する回収工程と、を実行し、前記脱離工程の実行時、アルカリ性水溶液の液温を50~100℃に上昇させる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化炭素を含有する被処理ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素処理方法であって、
アミン系化合物を溶質とするアルカリ性水溶液に被処理ガスを接触させることによってアルカリ性水溶液中に二酸化炭素を溶存させる吸収工程と、
アルカリ性水溶液を加熱することによって溶存させた二酸化炭素を脱離させる脱離工程と、
脱離させた二酸化炭素を回収する回収工程と、
を実行し、
前記脱離工程の実行時、アルカリ性水溶液の液温を50~100℃に上昇させることを特徴とする二酸化炭素処理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の二酸化炭素処理方法において、
前記吸収工程の実行時、アルカリ性水溶液の液温を40℃以下に維持する二酸化炭素処理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の二酸化炭素処理方法において、
被処理ガスとして100℃以上の高温ガスを選択し、
前記脱離工程実行時、被処理ガスとアルカリ性水溶液との熱交換によってアルカリ性水溶液の液温を上昇させ、
熱交換後の温度が低下した被処理ガスに対して前記吸収工程を実行する二酸化炭素処理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の二酸化炭素処理方法において、
50℃以下となされた被処理ガスに対して前記吸収工程を実行する二酸化炭素処理方法。
【請求項5】
請求項1に記載の二酸化炭素処理方法において、
更に、二酸化炭素を溶存させたアルカリ性水溶液を電気分解する電気分解工程を実行する二酸化炭素処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を含有する被処理ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地球温暖化現象は様々な要因が重なって引き起こされている現象であるが、人間の産業活動に伴って大気中に排出された二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガスを大きな要因とする説が主流となっている。そのため、二酸化炭素の排出量の削減が国際的な課題とされている。又、排出された二酸化炭素を回収する手段についても研究が進められている。
【0003】
二酸化炭素を回収する手段としては、モノエタノールアミンなどのアミン系化合物を溶質とするアルカリ性水溶液に二酸化炭素を接触させて前記水溶液中に二酸化炭素を溶存させた後、加熱処理することによって二酸化炭素を回収する方法(化学吸着法)が一般的である。又、アルカリ性水溶液に二酸化炭素を溶存させた後、電気分解処理することによって二酸化炭素をメタンやエタン等のC1~C2程度の有機化合物に変性させる手段も開発されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
例えば、RNH2の化学式(R:アルキル基又はアルカノール基)からなるアミン系化合物を溶質とするアルカリ性水溶液中に二酸化炭素を導入すると、まずアミン系化合物と二酸化炭素との結合形成反応(RNH2+CO2→RNH2CO2)が起こり、続くプロトン脱離反応(RNH2CO2+H2O→RNHCO2
-+H3O+)によって前記アルカリ性水溶液中に二酸化炭素が溶存する。即ち、アミン系化合物に二酸化炭素を接触させると、アミノ基と二酸化炭素とがウレタン結合を形成してカルバミン酸イオンが形成される。
【0006】
そして、前述の化学吸着法ではアルカリ性水溶液を加熱処理することによって二酸化炭素を選択的に回収する。回収した二酸化炭素については、例えば、液化炭酸ガスの状態で地下に埋設するものとされている。
【0007】
しかしながら、カルバミン酸イオンから二酸化炭素を脱離させるためには120℃以上の加熱処理が必要とされている。従って、前記化学吸着法ではアルカリ性水溶液から二酸化炭素を脱離させるための大きな熱エネルギーが必要となり、処理コストが高くなる。
【0008】
一方、前記特許文献2に記載の方法においても、電気分解処理の際に電気的エネルギーが必要とされるため、係る処理方法のみをもって多量の二酸化炭素を処理することは困難である。
【0009】
本発明は前記技術的課題を解決するために開発されたものであって、比較的少ないエネルギーで二酸化炭素を含有する被処理ガスから二酸化炭素を回収することができる新規な二酸化炭素処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記技術的課題を解決する本発明の二酸化炭素処理方法は、二酸化炭素を含有する被処理ガスから二酸化炭素を回収する二酸化炭素処理方法であって、アミン系化合物を溶質とするアルカリ性水溶液に被処理ガスを接触させることによってアルカリ性水溶液中に二酸化炭素を溶存させる吸収工程と、アルカリ性水溶液を加熱することによって溶存させた二酸化炭素を脱離させる脱離工程と、脱離させた二酸化炭素を回収する回収工程と、を実行し、前記脱離工程の実行時、アルカリ性水溶液の液温を50~100℃に上昇させることを特徴とする(以下、「本発明処理方法」と称する。)。
【0011】
本発明処理方法においては、前記吸収工程の実行時、アルカリ性水溶液の液温を40℃以下に維持することが好ましい態様となる。
【0012】
本発明処理方法においては、被処理ガスとして100℃以上の高温ガスを選択し、前記脱離工程実行時、被処理ガスとアルカリ性水溶液との熱交換によってアルカリ性水溶液の液温を上昇させ、熱交換後の温度が低下した被処理ガスに対して前記吸収工程を実行することが好ましい態様となる。
【0013】
本発明処理方法においては、50℃以下となされた被処理ガスに対して前記吸収工程を実行することが好ましい態様となる。
【0014】
本発明処理方法においては、更に、二酸化炭素を溶存させたアルカリ性水溶液を電気分解する電気分解工程を実行することが好ましい態様となる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、比較的少ないエネルギーで二酸化炭素を含有する被処理ガスから二酸化炭素を回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】
図1は、本発明処理方法を実行するための二酸化炭素処理設備の概要を示す模式図である。
【0017】
【
図2】
図2は、本発明処理方法を実行するための別の二酸化炭素処理設備の概要を示す模式図である。
【0018】
【
図3】
図3は、本発明処理方法を実行するための更に別の二酸化炭素処理設備の概要を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を説明するが、本発明はこの実施形態に限定されるものではない。
【0020】
<本発明処理方法>
本発明処理方法では、「吸収工程」と、「脱離工程」と、「回収工程」と、を実行する。又、前記各工程に加えて、更に「電気分解工程」を実行することが好ましい態様となる。
【0021】
‐吸収工程‐
前記吸収工程では、アミン系化合物を溶質とするアルカリ性水溶液に被処理ガスを接触させることによってアルカリ性水溶液中に二酸化炭素を溶存させる。この種のアルカリ性水溶液中に二酸化炭素を含む被処理ガスを吹き込むことによって被処理ガス中の二酸化炭素をアルカリ性水溶液中に溶存させる手段は既に公知となっている。なお、アミン系化合物と二酸化炭素との結合反応は発熱反応であることから、係る反応を促進すべく、前記吸収工程の実行時におけるアルカリ性水溶液の液温は40℃以下(より好ましくは30℃以下)に維持することが好ましい。
【0022】
本発明処理方法においてアルカリ性水溶液の溶質をなすアミン系化合物は特に限定されるものではない。アミン系化合物としては、例えばアンモニアの水素基がアルキル基やアルカノール基によって置換されたアルキルアミン(モノアルキルアミン、ジアルキルアミン、トリアルキルアミン)や、アルカノールアミン(モノアルカノールアミン、ジアルカノールアミン、トリアルカノールアミン)或いはアルキルアルカノールアミンを挙げることができる。具体的な化合物名としては、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、メチルジエタノールアミン、2‐アミノ‐2‐メチル‐1‐プロパノール、又は、ピペラジン等を上げることができる。又、アルカリ性水溶液の濃度は、アミン系化合物の配合量を20~50重量%(より好ましくは30~40重量%)とすることが好ましい。
【0023】
なお、アルカリ性水溶液としてアミン系化合物に加えてケイ酸ナトリウムやケイ酸カリウム等のケイ酸塩も溶質とする水溶液を用いれば、二酸化炭素の溶存量が向上することが確認されている。この場合、アミン系化合物とケイ酸塩との配合割合は特に限定されないが、アミン系化合物100重量部に対してケイ酸塩1~10重量部(好ましくは、2~5重量部)とすることが好ましい。
【0024】
‐脱離工程‐
前記脱離工程では、アルカリ性水溶液を加熱することによって溶存させた二酸化炭素を脱離させる。本発明処理方法においては、この脱離工程の実行時にアルカリ性水溶液の液温を50~100℃に上昇させる。
【0025】
ここで、従来法(化学吸着法)においても二酸化炭素を溶存させたアルカリ性水溶液を加熱することによって二酸化炭素を脱離させる手段が採用されていた。しかしながら、従来法において、加熱によって上昇させるアルカリ性水溶液の液温につき100℃以下に設定されることは無かった。これは、アミン系化合物と二酸化炭素とを接触させた際に生成されるカルバミン酸イオンから二酸化炭素を脱離させるためには120℃以上の加熱温度が必要とされていたからである。
【0026】
この点につき本発明者が検討したところ、二酸化炭素を溶存させたアルカリ性水溶液の液温を50℃以上に上昇させれば溶存させた二酸化炭素の10~20%が脱離し、液温を100℃近くまで上昇させれば30~50%を超える二酸化炭素の脱離が確認された。この現象は、アルカリ性水溶液中に溶存させた二酸化炭素につき、カルバミン酸イオンの溶存状態のみならず、炭酸イオンや、アルカリ性水溶液と二酸化炭素の電位差による溶存状態なども存在しており、アルカリ性水溶液の液温上昇に応じて自由度の高い溶存状態の二酸化炭素から順に脱離していると予測される。
【0027】
即ち、本発明処理方法では、前記脱離工程によってアルカリ性水溶液に溶存させた二酸化炭素の全ての脱離を目標としているのではなく、アルカリ性水溶液に溶存させた二酸化炭素のうちの10~50%程度の脱離を目標としており、その結果、従来法と比較して、アルカリ性水溶液の液温を上昇させるための熱エネルギーが少なくなる利点が生じる。
【0028】
‐回収工程‐
前記回収工程では、脱離させた二酸化炭素を回収する。回収した二酸化炭素は、例えば、液化炭酸ガスの状態で地下に埋設する。
【0029】
‐電気分解工程‐
前記電気分解工程では、二酸化炭素を溶存させた前記アルカリ性水溶液を電気分解する(即ち、前記アルカリ性水溶液に二つの電極(陽極と陰極)を接触させて電極間に電圧を印加する。)。なお、前記電気分解工程は前記吸収工程の実行中や実行後に行っても良いし、前記脱離工程の実行中や実行後に行っても良い。
【0030】
前記電気分解工程の実行時、電解電流の値が400A以下(好ましくは150~300A)となるように電極間電圧を印加すれば、前記アルカリ性水溶液中に溶存する二酸化炭素が2‐モルホリノエタノールや、オキサゾリジン‐2‐オンなど、前記アルカリ性水溶液中に残存し得る物質に変性することが確認されている。一方、前記電気分解工程の実行時に電解電流の値が400mAを超えると、前記アルカリ性水溶液中に溶存する二酸化炭素がメタンやエタン等のC1~C2程度の有機化合物に変性することが確認されている。従って、前記電気分解工程を実行すれば、アルカリ性水溶液中に溶存している二酸化炭素の一部を別の物質に変性させて回収することができる。
【0031】
<実施形態>
図1に前記本発明処理方法を実行するための二酸化炭素処理施設1の概要を示す。前記二酸化炭素処理施設1は、「吸収搭(2)」と、「脱離搭(3)」と、「回収容器(4)」と、を具備する。
【0032】
‐吸収搭2‐
前記吸収搭2は、アルカリ性水溶液が貯留される内部空間を有してなり、被処理ガスを搭下方から導入することによって、被処理ガスに含まれる二酸化炭素をアルカリ性水溶液に溶存させる役割を担う。即ち、前記吸収搭2は、前記本発明処理方法における吸収工程を実行するための設備である。アルカリ性水溶液を通過して二酸化炭素含有量が減じられた被処理ガス(処理済ガス)は、前記吸収搭2の上部から排出される仕組みとなされている。
【0033】
なお、本実施形態においては、被処理ガスとして100度以上の高温ガス(例えば、150~250℃の工場排出ガス。)を想定している。そのため、前記吸収搭2における二酸化炭素のアルカリ性水溶液に対する溶存効率を向上すべく、前記吸収搭2に導入する前の段階で被処理ガスを冷却装置(C)に通過させることによって50℃以下に減温している。又、前記吸収搭2にも冷却ジャケット(図示せず)が装備されており、前記吸収搭2は、その稼働中に内部に貯留されているアルカリ性水溶液の液温が40℃を超えないように(より好ましくは30度以下に)制御されている。
【0034】
‐脱離搭3‐
前記脱離搭3は、二酸化炭素を溶存させたアルカリ性水溶液を導入し得る内部空間を有してなり、アルカリ性水溶液の液温を50~100℃に上昇させることによって、溶存させた二酸化炭素を脱離させる役割を担う。即ち、前記脱離搭は、前記本発明処理方法における脱離工程を実行するための設備である。本実施形態においては、前記脱離搭3内に配された配管に蒸気を通過させることによって、前記脱離搭3内に導入されたアルカリ性水溶液の液温が50~100℃(より好ましくは、60~80℃)になるように制御されている。又、脱離搭3内に導入されたアルカリ性水溶液は加温による二酸化炭素の脱離後、冷却されて前記吸収搭2に戻される仕組みとなされている。
【0035】
なお、前記吸収搭2に戻されたアルカリ性水溶液には脱離しなかった二酸化炭素が溶存しているが、脱離した二酸化炭素の容量分の二酸化炭素吸収能が残存している。即ち、当初のアルカリ性水溶液の二酸化炭素吸収能を100として、前記脱離搭3における二酸化炭素の脱離量が40であるとすれば、前記吸収搭2に戻されたアルカリ性水溶液の二酸化炭素吸収能は40となることが確認されている。そして、前記吸収搭2にて再利用されるアルカリ性水溶液に40の二酸化炭素を吸収させた後、前記脱離搭3にて二酸化炭素を脱離させた場合、その脱離量は40になることが確認されている。
【0036】
‐回収容器4‐
前記回収容器4は、前記脱離搭3においてアルカリ性水溶液から脱離させた二酸化炭素を貯蔵する役割を担う。即ち、前記回収容器4は、前記本発明処理方法における改修工程を実行するための設備である。本実施形態においては、前記回収容器4として可搬式高圧ガス容器(ボンベ)を用いた。
【0037】
前記構成を有する二酸化炭素処理施設1は、工場から排出される排気ガスのように多量に排気される被処理ガスに含まれる二酸化炭素を回収するための施設である。前記二酸化炭素処理施設1では、前記吸収搭2においてアルカリ性水溶液に吸収させた二酸化炭素を前記脱離搭3において50~100℃の比較的低温にて脱離させることから、少ない熱エネルギーで二酸化炭素を回収することができる。
【0038】
ところで、本実施形態においては、前記脱離搭3内に導入されたアルカリ性水溶液の液温を上昇させるための熱源として蒸気が用いられているが、アルカリ性水溶液の液温を上昇させるための熱源は特に限定されない。例えば、被処理ガスとして100℃以上の高温ガスが選択されている場合にあっては、
図2に示すように、前記脱離搭3において被処理ガスとアルカリ性水溶液との熱交換によってアルカリ性水溶液の液温を上昇させ、熱交換後の温度が低下した被処理ガスを前記吸収搭2に導入すれば、アルカリ性水溶液の液温を上昇させるための熱エネルギーがより少なくなる。
【0039】
又、
図3に示すように、アルカリ性水溶液の循環経路に電気分解処理装置5を設け、アルカリ性水溶液に対して電気分解処理を行えば、アルカリ性水溶液に溶存している二酸化炭素の一部を別の物質に変性させることができる。電気分解処理により、アルカリ性水溶液に溶存している二酸化炭素の一部を別の物質に変性させた場合、前記吸収搭2にて再利用されるアルカリ性水溶液の二酸化炭素吸収能が向上することが確認されている。
【0040】
<実施例>
‐アルカリ性水溶液‐
下記表1に実施例1~5に係るアルカリ性水溶液及び比較例に係るアミン溶液の処方を示す(25℃の温度条件下)。なお、表中「MEA」はモノエタノールアミン、「DEA」はジエタノールアミン、「TEA」はトリエタノールアミンを意味する。
【0041】
【0042】
‐二酸化炭素吸収工程‐
高濃度二酸化炭素ガス(99.9%)をアルミニウムバッグBに封入し、チュービングポンプを用いて各実施例に係るアルカリ性水溶液(及び比較例に係るモノエタノールアミン液)に導入(バブリング)した。なお、二酸化炭素ガスの導入は、液温40℃の条件下、13.0ml/分の導入量で90分間行った。その結果、各アルカリ性水溶液(及びモノエタノールアミン液)について上記表1に記載の二酸化炭素吸収能が確認された。
【0043】
‐脱離工程、回収工程‐
二酸化炭素を溶存させた各実施例に係るアルカリ性水溶液(及び比較例に係るモノエタノールアミン液)の液温を上昇させることによって二酸化炭素を脱離させ、脱離させた二酸化炭素を回収し、液温ごとの二酸化炭素脱離量を測定した。その結果を下記表2に示す。
【0044】
【0045】
表2に示す結果からわかるように、各実施例に係るアルカリ性水溶液に溶存させた二酸化炭素は、液温が上昇するにつれアルカリ性水溶液から脱離し、液温が80℃に上昇するまでに25~50%、100℃に上昇させた場合は30~55%の脱離量が確認された。
【0046】
一方、モノエタノールアミン液に溶存させた二酸化炭素については、液温が100℃に上昇しても全くと言っていいほど脱離が確認されなかった。
【0047】
これより、本発明処理方法によれば比較的少ないエネルギーで二酸化炭素を含有する被処理ガスから二酸化炭素を回収することができることが確認された。
【0048】
なお、本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形で実施することができる。そのため、上述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。本発明の範囲は特許請求の範囲によって示すものであって、明細書本文には、なんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、被処理ガス中の二酸化炭素を回収する手段として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0050】
1 二酸化炭素処理施設
2 吸収搭
3 脱離搭
4 回収容器
5 電気分解処理装置