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特開2024-143445窒化物半導体装置およびその製造方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143445
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】窒化物半導体装置およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20241003BHJP
   H01L 29/41 20060101ALI20241003BHJP
   H01L 29/417 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01L29/80 U
H01L29/80 H
H01L29/44 L
H01L29/44 S
H01L29/50 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056135
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100133514
【弁理士】
【氏名又は名称】寺山 啓進
(74)【代理人】
【識別番号】100135714
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 一生
(74)【代理人】
【識別番号】100167612
【弁理士】
【氏名又は名称】安藤 直行
(72)【発明者】
【氏名】四方 啓太
【テーマコード(参考)】
4M104
5F102
【Fターム(参考)】
4M104AA04
4M104AA07
4M104BB02
4M104BB04
4M104BB05
4M104BB14
4M104BB17
4M104BB36
4M104CC01
4M104DD33
4M104DD34
4M104DD37
4M104DD52
4M104DD53
4M104DD72
4M104DD79
4M104EE06
4M104EE14
4M104EE16
4M104EE17
4M104FF02
4M104GG12
4M104HH20
5F102GB01
5F102GB02
5F102GC01
5F102GD01
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ10
5F102GK04
5F102GK08
5F102GL04
5F102GL07
5F102GM04
5F102GQ01
5F102GR01
5F102GR09
5F102GS09
5F102GV05
5F102GV06
5F102GV07
5F102GV08
5F102HC01
5F102HC10
5F102HC15
(57)【要約】
【課題】簡易な構造で基板の反りを低減する窒化物半導体装置を提供する。
【解決手段】窒化物半導体装置1は、互いに対向する第1面2aと第2面2bとで両面を定義された基板10と、基板10の第1面2aに設けられ、活性領域300と不活性領域200を含む窒化物半導体層12を備える。不活性領域200は、窒化物半導体層12の少なくとも一部が除去されて基板10に到達する開口領域101、102、103、104、105、106、107、108、109、110を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向する第1面と第2面とで両面を定義された基板と、
前記基板の前記第1面に設けられ、活性領域と不活性領域を含む窒化物半導体層と
を備え、
前記不活性領域は、前記窒化物半導体層の少なくとも一部が除去されて前記基板に到達する開口領域を有する、窒化物半導体装置。
【請求項2】
前記窒化物半導体層は、
第1の窒化物半導体層と、
前記第1の窒化物半導体層とヘテロ接合を形成する第2の窒化物半導体層とを備え、
前記第1の窒化物半導体層は、前記第2の窒化物半導体層との界面に、2次元電子ガス層を備え、
前記活性領域は、平面視で前記2次元電子ガス層を含む、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項3】
前記基板は、4H-SiC結晶構造の炭化珪素基板である、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項4】
前記基板は、6H-SiC結晶構造の炭化珪素基板である、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項5】
前記基板は、シリコン基板である、請求項1に記載の窒化物半導体装置。
【請求項6】
前記基板の反りは、100mm換算で1μm以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項7】
前記基板は、前記窒化物半導体層に向いた方向に100mm換算で10μm以上の凸の反りを有し、前記窒化物半導体層が前記基板に対し働く応力が引っ張り応力である、請求項1~4のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項8】
前記基板は、前記窒化物半導体層に向いた方向に100mm換算で20μm以上の凸の反りを有し、前記窒化物半導体層が前記基板に対し働く応力が引っ張り応力である、請求項1~4のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項9】
前記基板は、前記窒化物半導体層に向いた方向と逆方向に100mm換算で10μm以上の凸の反りを有し、前記窒化物半導体層が前記基板に対し働く応力が圧縮応力である、請求項1~4のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項10】
前記基板は、前記窒化物半導体層に向いた方向と逆方向に100mm換算で20μm以上の凸の反りを有し、前記窒化物半導体層が前記基板に対し働く応力が圧縮応力である、請求項1~4のいずれか1項に記載の窒化物半導体装置。
【請求項11】
前記第2の窒化物半導体層に設けられたドレイン電極、ソース電極、およびゲート電極を備え、
前記ソース電極は、前記基板を貫通する導電層を介して、前記基板の前記第2面に形成したグランド電極に接続されている、請求項2に記載の窒化物半導体装置。
【請求項12】
前記ゲート電極は、前記ドレイン電極と前記ソース電極の間に配置される、請求項11に記載の窒化物半導体装置。
【請求項13】
前記開口領域は、前記活性領域から見て、前記ドレイン電極、前記ソース電極、および前記ゲート電極が配列される第1方向に位置する前記不活性領域に少なくとも配置される、請求項11又は12に記載の窒化物半導体装置。
【請求項14】
前記開口領域は、前記活性領域から見て、前記ドレイン電極、前記ソース電極、および前記ゲート電極が延びる第2方向に位置する前記不活性領域に少なくとも配置される、請求項11又は12に記載の窒化物半導体装置。
【請求項15】
互いに対向する第1面と第2面とで両面を定義された基板の前記第1面に窒化物半導体層を形成し、
前記窒化物半導体層に活性領域と不活性領域を形成し、
前記窒化物半導体層の一部を選択的にエッチングして、前記活性領域に前記窒化物半導体層を貫通する貫通領域を形成し、前記不活性領域に前記窒化物半導体層を貫通する開口領域を形成し、
前記貫通領域を前記基板に対してエッチングの選択比の高い材料の導電層で埋め込み、
前記窒化物半導体層の上に絶縁層を形成し、
前記絶縁層をエッチングで開口して、前記窒化物半導体層とオーミック接触するドレイン電極およびソース電極を形成し、
前記絶縁層をエッチングで除去して、前記窒化物半導体層とショットキー接触するゲート電極を形成し、
前記基板の前記第2面から前記基板の一部を選択的にエッチングして、前記導電層に到達する貫通孔を形成し、
前記貫通孔に、前記導電層に接触する第1電極層を形成し、
前記第2面に前記第1電極層に接触する第2電極層を形成する、窒化物半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、窒化物半導体装置およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)は高速スイッチングデバイスや高周波増幅デバイスとして広く実用化されている。また、大きなバンドギャップを有する窒化物半導体をHEMT構造に使用することで、高速動作と高耐圧化を実現することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-077865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の目的は、簡易な構造で基板の反りを低減する窒化物半導体装置およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述した課題を解決するために、本開示の一態様は、互いに対向する第1面と第2面とで両面を定義された基板と、基板の第1面に設けられ、活性領域と不活性領域を含む窒化物半導体層を備え、不活性領域は、窒化物半導体層の少なくとも一部が除去されて基板に到達する開口領域を有する窒化物半導体装置である。
【0006】
本開示の他の一態様は、互いに対向する第1面と第2面とで両面を定義された基板の第1面に窒化物半導体層を形成し、窒化物半導体層に活性領域と不活性領域を形成し、窒化物半導体層の一部を選択的にエッチングして、活性領域に窒化物半導体層を貫通する貫通領域を形成し、不活性領域に窒化物半導体層を貫通する開口領域を形成し、貫通領域を基板に対してエッチングの選択比の高い材料の導電層で埋め込み、窒化物半導体層の上に絶縁層を形成し、絶縁層をエッチングで開口して、窒化物半導体層とオーミック接触するドレイン電極およびソース電極を形成し、絶縁層をエッチングで除去して、窒化物半導体層とショットキー接触するゲート電極を形成し、基板の第2面から基板の一部を選択的にエッチングして導電層に到達する貫通孔を形成し、貫通孔に導電層に接触する第1電極層を形成し、第2面に第1電極層に接触する第2電極層を形成する、窒化物半導体装置の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様および他の一態様によれば、簡易な構造で基板の反りを低減する窒化物半導体装置およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態に係る窒化物半導体装置の平面図である。
図2A図2Aは、図1のI-I線に沿う断面図である。
図2B図2Bは、図1のII-II線に沿う断面図である。
図2C図2Cは、第1の窒化物半導体層と第2の窒化物半導体層との積層構造の断面図である。
図2D図2Dは、基板と窒化物半導体領域が上に凸の反りを有する例の断面図である。
図2E図2Eは、基板と窒化物半導体領域が下に凸の反りを有する例の断面図である。
図3A図3Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のI-I線に沿う断面図である。
図3B図3Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のII-II線に沿う断面図である。
図4A図4Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のI-I線に沿う断面図である。
図4B図4Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のII-II線に沿う断面図である。
図5A図5Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のI-I線に沿う断面図である。
図5B図5Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のII-II線に沿う断面図である。
図6A図6Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のI-I線に沿う断面図である。
図6B図6Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のII-II線に沿う断面図である。
図7A図7Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のI-I線に沿う断面図である。
図7B図7Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のII-II線に沿う断面図である。
図8A図8Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のI-I線に沿う断面図である。
図8B図8Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のII-II線に沿う断面図である。
図9A図9Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のI-I線に沿う断面図である。
図9B図9Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のII-II線に沿う断面図である。
図10A図10Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のI-I線に沿う断面図である。
図10B図10Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のII-II線に沿う断面図である。
図11A図11Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のI-I線に沿う断面図である。
図11B図11Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のII-II線に沿う断面図である。
図12A図12Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のI-I線に沿う断面図である。
図12B図12Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のII-II線に沿う断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示の窒化物半導体装置の実施形態を説明する。なお、説明を簡単かつ明確にするために、図面に示される構成要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。また、理解を容易にするために、断面図では、ハッチング線が省略されている場合がある。添付の図面は、本開示の実施形態を例示するに過ぎず、本開示を制限するものとみなされるべきではない。
【0010】
以下の詳細な記載は、本開示の例示的な実施形態を具体化する装置および方法を含む。この詳細な記載は本来説明のためのものに過ぎず、本開示の実施形態またはこのような実施形態の適用および使用を限定することを意図しない。
【0011】
以下の説明においては、XY平面に広がる基板に垂直な方向をZ方向、Z方向に直交し、電極の延伸する方向をY方向、Z方向およびY方向に垂直な電極の配列する方向をX方向とする。
【0012】
(実施形態)
(窒化物半導体装置の平面レイアウト)
図1は、実施形態に係る窒化物半導体装置の平面図である。窒化物半導体装置1は、絶縁層16と、絶縁層16上に形成されたソース電極18Eおよびドレイン電極20Eとを含んでいてよい。なお、図1に示される互いに直交するXYZ軸のZ軸向は、後述する基板10の第1面2a(図2A図2C参照)と直交する方向である。本明細書において使用される「平面視」という用語は、明示的に別段の記載がない限り、Z方向に沿って上方から窒化物半導体装置1を視ることをいう。
【0013】
絶縁層16は、ソース電極18Eとドレイン電極20Eとを絶縁することができる任意の絶縁材料から構成することができる。例えば、絶縁層16は、SiO2、SiN、SiON、Al23、AlN、AlON、HfO、HfN、HfON、HfSiON、AlON、またはそれらの任意の組み合わせを含んでいてよい。
【0014】
ソース電極18Eおよびドレイン電極20Eは、1つまたは複数の導電材料から構成することができる。例えば、ソース電極18Eおよびドレイン電極20Eの各々は、Au、Ti、TiN、Pt、Cu、Al、AlSiCu、AlCu、またはそれらの任意の組み合わせを含んでいてよい。
【0015】
図1に示すように、ソース電極18Eは、複数本配置されていてもよい。図示の例では、ソース電極18Eは、Y方向に延び、かつ複数のソース電極18Eは、X方向に配列されている。同様に、ドレイン電極20Eは、ベース部20Aと、ベース部20Aに接続された複数のドレインフィンガー20Bとを含んでいてよい。図示の例では、ベース部20Aは、X方向に延び、かつ複数のドレインフィンガー20Bは、Y方向に延びている。なお、本開示において、X方向およびY方向を、それぞれ「第1方向」および「第2方向」とも呼ぶ。複数のソース電極18Eと、複数のドレインフィンガー20Bとは、互いに離隔されつつ、交互に配置されていてよい。図示の例では、複数のソース電極18Eと、複数のドレインフィンガー20Bとは、X方向に交互に並んで配列されている。
【0016】
窒化物半導体装置1は、ゲート配線19Aと、ゲート配線19Aに接続された複数のゲート電極19とをさらに含んでいてよい。ゲート配線19Aおよび複数のゲート電極19は、ソース電極18Eおよびドレイン電極20Eよりも下層に配置されると共に、絶縁層16によって覆われていてよい。
【0017】
図示の例では、ゲート配線19Aは、X方向に延び、かつ複数のゲート電極19は、Y方向に延びている。各ゲート電極19は、平面視で複数のソース電極18のうちの1つと、複数のドレインフィンガー20Bのうちの1つとの間に配置されていてよい。図示の例では、各ゲート電極19は、平面視で、X方向に互いに対向するソース電極18とドレインフィンガー20Bとの間に配置されている。ゲート配線19Aは、平面視で、複数のソース電極18Eと、複数のドレインフィンガー20Bとの間に延びていてよい。ゲート電極19のさらなる詳細については、図2A図2Cを参照して後述する。
【0018】
また、窒化物半導体装置1は、平面視で2次元電子ガス層を含む活性領域300と2次元電子ガス層を含まない不活性領域200を含む。図1において、活性領域300を破線で囲んで示している。窒化物半導体装置1は、不活性領域200の少なくとも一部に、窒化物半導体層12が除去され、基板10に到達する開口領域101、102、103、104、105、106、107、108、109、110を含む。開口領域の詳細については後述する。
【0019】
(窒化物半導体装置の断面構造)
図2Aは、図1のI-I線に沿う断面図である。図2Bは、図1のII-II線に沿う断面図である。図2Cは、第1の窒化物半導体層と第2の窒化物半導体層との積層構造の断面図である。
【0020】
窒化物半導体装置1は、互いに対向する第1面2aと第2面2bとで両面を定義された基板10と、基板10の第1面2aに配置された窒化物半導体層12を含む。基板10は、例えば六方晶系の炭化珪素基板(SiC基板)である。第1面2aおよび第2面2bは、基板10の主面であり、第1面2aを基板10の表面、第2面2bを基板10の裏面とも称する。第1面2aは、基板10のうち、窒化物半導体層12がエピタキシャル成長される面である。第1面2aは、第1方向(X方向)および平面視で第1方向と直交する第2方向(Y方向)と平行である。
【0021】
基板10は、オフ角θoffを有するSiC基板である。第1面2aは、c面に対して特定の結晶方向にオフ角θoffで傾斜している。オフ角θoffは、2°以上6°以下であってよい。より好ましくは、オフ角θoffは、3°以上5°以下であってよく、さらに好ましくは、3.5°以上4.5°以下であってもよい。なお、本開示において、「c面」という用語は、六方晶系のSiC結晶の(0001)面を指すものとして用いられている。
【0022】
本実施形態では、特定の結晶方向は、[11-20]方向であってよい。すなわち、第1面2aは、c面に対して[11-20]方向に2°以上6°以下のオフ角θoffで傾斜していてよい。なお、本開示の結晶方向や面を表す指数において、マイナス符号が前に付されている数字(例えば、[11-20]方向の場合の「2」)は、バーが上に付された当該数字を意味するものとする。
【0023】
基板10は、4H-SiC基板であってよい。ここで、「4H」とは、SiC結晶のポリタイプを表している。以下では、基板10が4H-SiC基板である場合を例示的に説明する。基板10は、導電性であってよい。基板10の抵抗率は、例えば0.01Ω・cm以上0.03Ω・cm以下であってよい。本実施形態では、基板10の抵抗率は、約0.02Ω・cmであってよい。また、基板10の厚さは、例えば30μm以上300μm以下であってよい。本実施形態では、基板10は、150μmの厚さを有していてよい。
【0024】
窒化物半導体層12は、基板10の第1面2a上にエピタキシャル成長されている。本実施形態では、窒化物半導体層12は、基板10上に形成されたバッファ層と、バッファ層上に形成された半絶縁性層とを含んでいてよい。
【0025】
バッファ層は、例えば、基板10と半絶縁性層との間の熱膨張係数の不整合に起因する基板10の反りや、窒化物半導体装置1におけるクラックの発生を抑制することができる任意の材料によって構成することができる。例えば、バッファ層は、窒化アルミニウム(AlN)層、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層、および異なるアルミニウム(Al)組成を有するグレーテッドAlGaN層のうちの少なくとも1つを含むことができる。バッファ層は、単一のAlN層、単一のAlGaN層、AlGaN/GaN超格子構造を有する層、AlN/AlGaN超格子構造を有する層、またはAlN/GaN超格子構造を有する層によって構成されていてもよい。本実施形態では、バッファ層は、基板10の第1面2a上に形成されたAlN層である第1バッファ層と、AlN層上に形成されたAlGaN層である第2バッファ層を含んでいてよい。バッファ層の厚さは、5nm以上2μm以下であってよい。本実施形態では、バッファ層は、約0.8μmの厚さを有していてよい。
【0026】
半絶縁性層は、不純物がドーピングされたGaN層であってよい。半絶縁性層は、リーク電流を抑制するために設けることができる。不純物は、例えば炭素(C)もしくは鉄(Fe)であってよい。あるいは、不純物は、CおよびFeの両方であってもよい。不純物は、アクセプタ濃度Naとドナー濃度Ndとの差(Na-Nd)が1×1017cm-3程度となるようにGaN層にドーピングされていてよい。半絶縁性層の厚さは、1μm以上10μm以下であってよい。本実施形態では、半絶縁性層は、2μmの厚さを有していてよい。
【0027】
窒化物半導体層12は、図2Cに示すように、第1の窒化物半導体層としての電子走行層120と、第1の窒化物半導体層とヘテロ接合を形成する第2の窒化物半導体層としての電子供給層122とを備える。第1の窒化物半導体層は、第2の窒化物半導体層との界面に、2次元電子ガス層121を備える。活性領域300は、平面視で2次元電子ガス層121を含む。不活性領域200は、平面視で2次元電子ガス層121を含まない。言い換えると、不活性領域200は、窒化物半導体装置1の主電流が流れない領域である。
【0028】
電子走行層120は、半絶縁性層上に形成されていてよい。電子走行層120は、窒化物半導体によって構成されている。電子走行層120は、GaNによって構成することができる。本実施形態では、電子走行層120は、ドナー型不純物がドーピングされたn型GaN層であってよい。別の例では、電子走行層120は、アンドープのGaN層であってもよい。電子走行層120の厚さは、0.05μm以上1μm以下であってよい。本実施形態では、電子走行層120は、約0.2μmの厚さを有していてよい。
【0029】
第2の窒化物半導体層である電子供給層122は、電子走行層120よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成されている。本実施形態では、電子供給層122は、AlGa1-xNによって構成されていてよく、ここで、0<x≦1であり、より好ましくは、0.1<x<0.3である。なお、Al組成が大きくなるほど、AlGaNのバンドギャップは大きくなる。本実施形態では、X=0.2であってよい。電子供給層122の厚さは、1nm以上100nm以下であってよい。本実施形態では、電子供給層122は、約20nmの厚さを有していてよい。
【0030】
電子走行層120と電子供給層122とは、互いに異なる格子定数を有する窒化物半導体によって構成されている。したがって、電子走行層120を構成する窒化物半導体(例えば、GaN)と電子供給層122を構成する窒化物半導体(例えば、AlGaN)とは、格子不整合系のヘテロ接合を形成する。電子走行層120および電子供給層122の自発分極と、ヘテロ接合界面付近の結晶歪みに起因するピエゾ分極とによって、ヘテロ接合界面付近における電子走行層120の伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ準位よりも低くなる。これにより、電子走行層120と電子供給層122とのヘテロ接合界面に近い位置(例えば、界面から数nm程度の範囲内)において、電子走行層120内に2次元電子ガス層121が形成されている。電子走行層120内の2次元電子ガス層121は、窒化物半導体装置1のチャネルとして機能する。電子走行層120に生成される2次元電子ガス層121のシートキャリア密度は、電子供給層122のAl組成および厚さのうちの少なくとも一方を増加させることにより増加させることができる。
【0031】
窒化物半導体装置1は、電子供給層122上に形成された絶縁層14をさらに含んでいてよい。絶縁層14に、電子供給層122の表面を露出させるソースコンタクト開口14S、ドレインコンタクト開口14D、およびゲートコンタクト開口14Gが形成されている。ソースコンタクト開口14Sとドレインコンタクト開口14Dとは、X方向に離隔されている。ゲートコンタクト開口14Gは、X方向に離隔されたソースコンタクト開口14Sとドレインコンタクト開口14Dとの間に位置している。絶縁層14は、SiO2、SiN、SiON、Al23、AlN、AlON、HfO、HfN、HfON、HfSiON、AlON、またはそれらの任意の組み合わせを含んでいてよい。
【0032】
本実施形態では、絶縁層14は、SiNであってよい。絶縁層14の厚さは、例えば10nm以上200nm以下であってよい。本実施形態では、絶縁層14は、約100nmの厚さを有していてよい。
【0033】
窒化物半導体装置1は、窒化物半導体層12上に配置されたゲート電極19、ソース電極18、およびドレイン電極20を含む。ソース電極18とドレイン電極20とは、第1方向(X方向)に離隔されている。ゲート電極19は、第1方向に離隔されたソース電極18とドレイン電極20との間に配置されている。ソース電極18、ドレイン電極20、およびゲート電極19は、2次元電子ガス層121を介した第1方向の電子の走行を可能にするように配置されている。ソース電極18は、ソースコンタクト開口14Sを介して電子供給層122に接している。ドレイン電極20は、ドレインコンタクト開口14Dを介して電子供給層122に接している。ゲート電極19は、ゲートコンタクト開口14Gを介して電子供給層122に接している。
【0034】
ソース電極18およびドレイン電極20は、窒化物半導体層12とオーミックコンタクトを形成することができる任意の材料から構成することができる。本実施形態では、ソース電極18およびドレイン電極20は、Ti層およびAl層を含んでいてよい。その場合、Ti層は、窒化物半導体層12とAl層との間に位置していてよい。一例では、Ti層は、約20nmの厚さを有すると共に、Al層は、約300nmの厚さを有していてよい。別の例では、ソース電極18およびドレイン電極20は、Ta層およびAl層を含んでいてもよい。さらに別の例では、ソース電極18およびドレイン電極20は、Ti層、Al層、Ni層、およびAu層を、窒化物半導体層12に近い側からこの順に含んでいてもよい。
【0035】
ゲート電極19は、窒化物半導体層12とショットキー接触する任意の材料から構成することができる。本実施形態では、ゲート電極19は、Ni層およびAu層を含んでいてよい。その場合、Ni層は、窒化物半導体層12とAu層との間に位置していてよい。一例では、Ni層は、10nmの厚さを有すると共に、Au層は、600nmの厚さを有していてよい。
【0036】
ゲート電極19は、第1方向(X方向)に離隔されたソース電極18とドレイン電極20との間に配置されると共に、第2方向(Y方向)に延びている(図1参照)。また、ソース電極18およびドレイン電極20も、第2方向(Y方向)に延びている。すなわち、第2方向(Y方向)に延びるソース電極18、ゲート電極19、およびドレイン電極20は、この順に、第1方向(X方向)に並んでいる。したがって、ソース電極18とドレイン電極20との間において、電子走行層120の2次元電子ガス層121を介して第1方向(X方向)に電子が走行することができる。ソース電極18、ゲート電極19、およびドレイン電極20は、第1方向(X方向)(すなわち電子走行方向)が、基板10の特定の結晶方向(例えば、[11-20])と所定の関係を満たすように配置されている。
【0037】
窒化物半導体装置1は、絶縁層14上に形成された絶縁層16をさらに含んでいてよい。絶縁層16に、ソース電極18の表面を露出させる第1開口16Sと、ドレイン電極20の表面を露出させる第2開口16Dとが形成されている。絶縁層16は、SiO2、SiN、SiON、Al2O3、AlN、AlON、HfO、HfN、HfON、HfSiON、AlON、またはそれらの任意の組み合わせを含んでいてよい。本実施形態では、絶縁層16は、SiOであってよい。また、絶縁層16は、約500nmの厚さを有していてよい。
【0038】
ソース電極18Eおよびドレイン電極20Eは、絶縁層16上に形成されている。ソース電極18Eは、第1開口16Sを介してソース電極18に接続されている。ドレイン電極20Eは、第2開口16Dを介してドレイン電極20に接続されている。
【0039】
図2A図2Cを参照した上記の説明では、1つのソース電極18、1つのドレイン電極20、およびこれらの間に配置されたゲート電極19に焦点を当てている。しかし、窒化物半導体装置1は、窒化物半導体層12上に配置された複数のゲート電極19、複数のソース電極18、および複数のドレイン電極20を含んでいてよい。複数のソース電極18の各々は、第1開口16Sを介して、複数のソース電極18E(図1参照)のうちの1つに接続することができる。同様に、複数のドレイン電極20の各々は、第2開口16Dを介して、複数のドレインフィンガー20B(図1参照)のうちの1つに接続することができる。複数のソース電極18Eと、複数のドレイン電極20Eとは、第1方向(X方向)に交互に配置することができる。また、複数のゲート電極19の各々は、複数のソース電極18Eのうちの1つと複数のドレイン電極20Eのうちの1つとの間に配置することができる。
【0040】
実施形態に係る窒化物半導体装置1は、図1図2Aおよび図2Bに示すように、互いに対向する第1面2aと第2面2bで両面を定義された基板10と、基板10上に設けられ、活性領域300と不活性領域200とを備える窒化物半導体層12とを備える。基板10は、4H-SiC結晶構造のSiC基板の他に、6H-SiC結晶構造のSiC基板であってもよい。6H-SiC結晶構造は、4H-SiC結晶構造と共にSiC基板として使用される頻度が高い。また、基板10は、シリコン基板(Si基板)であってもよい。Si基板と窒化物半導体との熱膨張係数の差が大きいため、基板10にSi基板を用いた場合に、後述する基板10の反りを抑制することによる効果が大きい。
【0041】
上記のように、基板10にSiC基板又はSi基板などが使用される。このため、基板10と窒化物半導体層12との格子定数の違いにより、例えば基板10に窒化物半導体層12を形成した後に基板10を冷却したときなどに、基板10と窒化物半導体層12の積層体(以下、「基体」とも称する。)に反りが生じる。基板10と窒化物半導体層12の接触面積が大きいほど、基体の反りは大きい。窒化物半導体装置1では、基体の反りを抑制するために、不活性領域200に、窒化物半導体層12の一部が除去されて基板10に到達する開口領域101、102、103、104、105、106、107、108、109、110が形成されている。以下において、開口領域101、102、103、104、105、106、107、108、109、110のそれぞれを限定しない場合は、「開口領域100」とも表記する。窒化物半導体層12に開口領域100を形成することにより、基板10と窒化物半導体層12の接触面積が小さくなり、窒化物半導体装置1における基体の反りを抑制することができる。
【0042】
開口領域102、103、104、105、107、108、109、110は、活性領域300から見てドレイン電極20、ソース電極18、およびゲート電極19が延びる第2方向(Y方向)に位置する不活性領域200に配置されている。開口領域は、図示の例では複数配置されているが、一体的に形成されていてもよい。
【0043】
開口領域101、106は、活性領域300から見てドレイン電極20、ソース電極18、およびゲート電極19が配列される第1方向(X方向)に位置する不活性領域200に配置されている。言い換えると、窒化物半導体装置1は、平面視で基板10のX方向の端部に開口領域101、106が配置されている。開口領域101、106は、開口領域102、103、104、105、107、108、109、110に比べて相対的に大きな面積を有する。
【0044】
図2Dは、基板10と窒化物半導体層12が上に凸の反りを有する例の断面図である。ここで、反りの方向を示す「上」は、基板10から見て窒化物半導体層12に向いた方向である。図2Dに示すように、基板10と窒化物半導体層12が上に凸の反りを有する場合には、窒化物半導体層12が基板10に対して働く応力は、矢印TSで示す方向の引っ張り応力である。また、図2Eは、基板10と窒化物半導体層12が下に凸の反りを有する例の断面図である。ここで、反りの方向を示す「下」は、基板10から見て窒化物半導体層12に向いた方向の逆方向である。図2Eに示すように、基板10と窒化物半導体層12が下に凸の反りを有する場合には、窒化物半導体層12が基板10に対して働く応力は、矢印CSで示す方向の圧縮応力である。なお、図2Dでは、X方向に引っ張り応力が働く例を示しているが、Y方向に引っ張り応力が働く場合もある。また、図2Eでは、X方向に圧縮応力が働く例を示しているが、Y方向に圧縮応力が働く場合もある。
【0045】
実施形態に係る窒化物半導体装置1において、基板10の反りは、100mm換算で1μm以下であってもよい。
【0046】
また、基板10は、100mm換算で10μm以上の上に凸の反りを有し、窒化物半導体層12が基板10に対し働く応力が引っ張り応力であってもよい。例えば、基板10が単体で第1面2aが凸の10μm以上の反りを有している場合に、窒化物半導体層12により基板10に引っ張り応力が働く場合には、基板10の単体での反りと引っ張り応力による反りが同じ方向になる。したがって、窒化物半導体層12に開口領域100を形成することによる効果がより有効である。更に、基板10が、100mm換算で20μm以上の上に凸の反りを有し、窒化物半導体層12が基板10に対し働く応力が引っ張り応力である場合にも、窒化物半導体層12に開口領域100を形成することによる効果は有効である。
【0047】
また、基板は、100mm換算で10μm以上の下に凸の反りを有し、窒化物半導体層12が基板10に対し働く応力が圧縮応力であってもよい。例えば、基板10が単体で第2面2bが凸の10μm以上の反りを有している場合に、窒化物半導体層12により基板10に圧縮応力が働く場合には、基板10の単体での反りと圧縮応力による反りが同じ方向になる。したがって、窒化物半導体層12に開口領域100を形成することによる効果がより有効である。更に、基板10が、100mm換算で20μm以上の下に凸の反りを有し、窒化物半導体層12が基板10に対し働く応力が圧縮応力である場合にも、窒化物半導体層12に開口領域100を形成することによる効果は有効である。
【0048】
窒化物半導体層12の電子供給層122には例えばAlGaN、InAlGaNなどの材料が用いられる。エピタキシャル成長用の基板10としては、SiCの他にシリコン(Si)、サファイア(Al23)などの半導体材料がしばしば用いられる。エピタキシャル成長用の基板10と窒化物半導体層12との熱膨張係数の差に起因してエピタキシャル膜形成後に結晶成長装置を室温まで冷却する際、基板10に反りが発生する。
【0049】
このとき、窒化物半導体層12が基板10に対し働く応力が圧縮応力なのか引っ張り応力なのかは、結晶成長の条件や装置の冷却の仕方に依存する。一般的には圧縮応力が働いている場合の方が半導体デバイスとしての性能は高いとされている。SiCなどの化合物半導体基板は結晶成長時の熱勾配や熱揺らぎに起因して単体でも基板反りを有することがある。基板単体の反りの方向とエピタキシャル膜が基板10に働く応力による反りの向きが一致した場合にはより大きな基板10の反りが発生することになる。基板10の反りを改善する方法としては、結晶成長時に電子走行層に応力を意図的に内包させることで結果として基板10の反りを相殺する方法も可能である。例えば、エピタキシャル構造のバッファ層としてAlN/GaNの積層構造を多周期にわたって形成する超格子バッファ又は組成違いのAlGaN層を数層組み合わせたグレーデッドバッファを形成する。これにより、結晶成長時に電子走行層に応力を意図的に内包させることで結果として基板降温時にかかる応力を相殺し基板10の反りを低減することができる。しかしながら、バッファ層の形成などにより応力を意図的に電子走行層に内包させる方法は、デバイスの構造が複雑化し結晶成長に要する時間が長くなるため、製造コストが増大する。
【0050】
実施形態に係る窒化物半導体装置1では、窒化物半導体層12に形成された開口領域により、窒化物半導体層12が基板10に対し働く応力による基板10の反りが低減される。このため、窒化物半導体装置1によれば、簡易な構造で基板10の反りを低減することができる。したがって、製造コストの増大を抑制することができる。
【0051】
(製造方法)
図3A図12Aは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のI-I線に沿う断面図である。図3B図12Bは、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法の一工程を示す図1のII-II線に沿う断面図である。
【0052】
実施形態に係る窒化物半導体装置1の製造方法は、以下の工程を含む。基板10の第1面2aに窒化物半導体層12を形成し、窒化物半導体層12に活性領域300と不活性領域200を形成する。窒化物半導体層12をエッチングして、活性領域300に貫通領域25Eを形成し、不活性領域に開口領域100を形成する。貫通領域25Eを、基板10に対してエッチングの選択比の高い材料の導電層22で埋め込む。窒化物半導体層12上に絶縁層14を形成し、絶縁層14をエッチングで開口して、窒化物半導体層12とオーミック接触するドレイン電極20およびソース電極18を形成し、窒化物半導体層12とショットキー接触するゲート電極19を形成する。第2面2bから基板10の一部を選択的にエッチングして、導電層22に到達する貫通孔25Aを形成する。貫通孔25Aに、導電層22に接触する第1電極層24Eを形成し、基板10の第2面2bに第1電極層24Eに接触する第2電極層24Bを形成する。以下、図面を参照して、実施形態に係る窒化物半導体装置の製造方法を詳述する。
【0053】
(A)まず、図3Aおよび図3Bに示すように、エピタキシャル成長法により、基板10の第1面2aに窒化物半導体層12を形成する。以下の説明において、基板10はSiC基板であるとする。SiC基板は単体としての反りが大きい傾向にあるため、窒化物半導体層12に開口領域を形成することによる基板10の反りを抑制する効果が大きい。
【0054】
(B)次に、図4Aおよび図4Bに示すように、イオン注入技術を用いて、窒化物半導体層12の第1面2aの一部に、不活性領域200を形成する。ここでは、窒化物半導体層12の第1面2aに例えばアルゴン(Ar)をイオン注入して窒化物半導体層12の第1面2a近傍に改質層を形成して、不活性領域200を形成している。アルゴン(Ar)の他には、例えば、窒素、酸素などのイオン注入を実施してもよい。また、不活性領域200にする窒化物半導体層12の一部の上部を反応性イオンエッチング(RIE:Reactive Ion Etching)などのドライエッチングによって除去して、活性領域300としてメサ構造を形成することにより不活性領域200を形成することもできる。ドライエッチングなどの方法によってメサエッチングを実施することにより、不活性領域200の2次元電子ガス層121が形成された部分を除去して、不活性領域200と活性領域300とを分離形成することができる。
【0055】
(C)次に、図5Aおよび図5Bに示すように、窒化物半導体層12の一部を誘導結合プラズマ(ICP:Inductively Coupled Plasma)エッチング技術を用いて選択的にエッチング除去し、基板10が露出するように窒化物半導体層12を開口する。エッチングガスとしては、例えばCl2やBCl3などの塩素系ガスを適用可能である。この結果、活性領域300では、貫通領域25Eが形成され、不活性領域200では、開口領域100が形成される。
【0056】
(D)次に、図6Aおよび図6Bに示すように、活性領域300に開口した貫通領域25Eに、後述の工程においてエッチングストップ層となる導電層22を埋め込む。ここで、導電層22の材料は基板10に対してエッチングの選択比の高いものであればよい。例えば、基板10がSiC基板である場合に、導電層22の材料にニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、酸化インジウムスズ(ITO)などが使用可能である。導電層22の厚さは、例えば約0.3μm~3μm程度である。導電層22の形成では、スパッタリング法、真空蒸着法、めっき形成法のような技術が適用可能である。
【0057】
(E)次に、図7Aおよび図7Bに示すように、例えばプラズマCVD(PECVD:plasma-enhanced chemical vapor deposition)法を用いて、窒化物半導体層12上に絶縁層14を形成する。絶縁層14としては、例えば、SiN層を用いる。SiN層の厚さは、約100nmである。他の絶縁層14としては、例えば、SiON、SiO2、Al23、AlN、AlON、HfO、HfN、HfON、HfSiONなどの材料であってもよい。絶縁層14の他の形成方法としては、LPCVD(Low pressure chemical vapor deposition)法、スパッタリング法、原子層堆積(ALD:Atomic Layer Deposition)法、分子線エピタキシャル成長(MBE:Molecular Beam Epitaxial Growth)法などを使用してもよい。なお、絶縁層14は、図7Aに示すように、活性領域300では、導電層22上にも形成されている。また、絶縁層14は、図7Bに示すように、不活性領域200では、基板10とイオン注入層13上に形成される。また、開口領域100において、基板10の第1面2aと窒化物半導体層12の側壁にも絶縁層14が形成される。
【0058】
(F)次に、図8Aおよび図8Bに示すように、絶縁層14にRIEなどで窓開けを行い、絶縁層14の窓開けした領域で窒化物半導体層12とオーミック接触するドレイン電極20、ソース電極18を形成する。ソース電極18は、導電層22上にも延在し、導電層22と電気的に接続される。ドレイン電極20およびソース電極18のオーミック接触は、窒化物半導体層12上に電子線(EB:Electron Beam)蒸着法によりTi/Alを形成し、約500~550℃程度の温度で保持することにより実現することができる。本実施形態ではTi層の厚さは約20nm、Al層の厚さは300nm程度である。ドレイン電極20およびソース電極18は例えばTa/Alなどにより構成されていてもよい。また成膜装置としてはスパッタリングやMBEなどの装置を使用してもよい。
【0059】
(G)次に、図9Aおよび図9Bに示すように、絶縁層14にRIEなどで窓開けを行い、窓開けした領域で窒化物半導体層12とショットキー接触するゲート電極19を形成する。ゲート電極19の材料は窒化物半導体に対しショットキー接触となるものを使用すればよく、ここではNi/Auの積層構造を使用している。Ni層の厚さは約10nm、Au層の厚さは約600nmである。
【0060】
(H)次に、図10Aおよび図10Bに示すように、基板10の一部を第2面2b側からRIEなどのドライエッチングによりエッチングして、基板10を貫通する貫通孔25Aを形成する。基板10がSiC基板である場合、エッチングガスとしてSF6/O2の混合ガスなどのフッ素系ガスを用いてもよい。SF6の代わりにCF4、CHF3を使用してもよい。基板10を第2面2b側からエッチングするには、例えば、ドレイン電極20、ゲート電極19、およびソース電極18の第1面2a側をダミー基板などに貼り付け、第2面2bを上面にした状態で行ってもよい。エッチングストップ層として導電層22を形成しておくことにより、窒化物半導体層12が側面からエッチングされたり、ダミー基板がエッチングされたりすることを防止できる。導電層22は、基板10よりもエッチングレートの低い材料が選択される。
【0061】
(I)次に、図11Aおよび図11Bに示すように、基板10に開口した貫通孔25Aを第1電極層24Eで埋め込むことにより貫通ビア24を形成する。ここではTi/Cuの積層構造をスパッタリング法により形成した後、金メッキを形成することで、貫通ビア24を形成している。第1電極層24Eを形成後、基板10の第2面2b全面に金属蒸着法を用いて第2電極層24Bを形成する。ソース電極18と貫通ビア24は導電層22を介して同電位となる。なお、第2電極層24Bによって貫通孔25Aの全体を埋め込まずに、エッチングストップ層である導電層22とグランド電極である第2電極層24Bが接続されるように、貫通ビア24で貫通孔25Aの内側を被覆するだけでもよい。
【0062】
(J)次に、図12Aおよび図12Bに示すように、ソース電極18、ゲート電極19、ドレイン電極20および絶縁層14の表面を覆う絶縁層16を形成する。図7B図12Bに示すように、窒化物半導体層12を除去した開口領域100においては、基板10の第1面2aに絶縁層14と絶縁層16が配置されているが、その他の層は形成されていない。
【0063】
(K)その後、図2Aおよび図2Bに示すように、絶縁層16に窓開けを行い、ソース電極18と電気的に接続するソース電極18Eを形成し、ドレイン電極20と電気的に接続するドレイン電極20Eを形成し、パッド電極のための積層構造を形成する。なお、このような電極の積層構造は、必ずしも必要ではない。
【0064】
(その他の実施形態)
上述のように、一実施形態について記載したが、開示の一部をなす論述および図面は例示的なものであり、限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替の実施形態、実施例および運用技術が明らかとなろう。このように、本実施形態は、ここでは記載しない様々な実施形態などを含む。
【0065】
[付記]
本開示から把握できる技術的思想を以下に記載する。なお、限定する意図ではなく理解の補助のために、付記に記載される構成要素には、実施形態中の対応する構成要素の参照符号が付されている。参照符号は、理解の補助のために例として示すものであり、各付記に記載された構成要素は、参照符号で示される構成要素に限定されるべきではない。
【0066】
(付記1)
窒化物半導体装置1は、互いに対向する第1面2aと第2面2bで両面を定義された基板10と、第1面2aに設けられ、活性領域300と不活性領域200とを備える窒化物半導体層12とを備える。不活性領域200は、窒化物半導体層12の少なくとも一部が除去されて基板10に到達する開口領域101、102、103、104、105、106、107、108、109、110を有する。付記1の窒化物半導体装置1によれば、開口領域101、102、103、104、105、106、107、108、109、110により基板10の反りが吸収され、基板の反りが低減された窒化物半導体装置を提供できる。
【0067】
(付記2)
付記1に記載の窒化物半導体装置において、窒化物半導体層12は、第1の窒化物半導体層と、第1の窒化物半導体層とヘテロ接合を形成する第2の窒化物半導体層を備える。第1の窒化物半導体層は、第2の窒化物半導体層との界面に、2次元電子ガス層121を備え、活性領域300は、平面視で2次元電子ガス層121を含む。付記2に記載の窒化物半導体装置によれば、HEMT構造の窒化物半導体装置において基板の反りを低減することができる。
【0068】
(付記3)
付記1又は2に記載の窒化物半導体装置において、基板10は、4H-SiC結晶構造の炭化珪素基板(SiC基板)である。SiC基板は単体としての反りが大きい傾向にあるため、窒化物半導体層12に開口領域を形成することによる基板10の反りを抑制する効果が大きい。
【0069】
(付記4)
付記1又は2に記載の窒化物半導体装置において、基板10は、6H-SiC結晶構造の炭化珪素基板(SiC基板)である。6H-SiC結晶構造は、4H-SiC結晶構造と共にSiC基板として使用される頻度が高い。
【0070】
(付記5)
付記1又は2に記載の窒化物半導体装置において、基板10は、シリコン基板(Si基板)である。Si基板と窒化物半導体との熱膨張係数の差が大きいため、基板10にSi基板を用いた場合に、基板10の反りを抑制することによる効果が大きい。
【0071】
(付記6)
付記1~5のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置において、基板10の反りは、100mm換算で1μm以下である。
【0072】
(付記7)
付記1~5のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置において、基板10は、窒化物半導体層12に向いた方向に100mm換算で10μm以上の凸の反りを有し、窒化物半導体層12が基板10に対し働く応力が引っ張り応力である。
【0073】
(付記8)
付記1~5のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置において、基板10は、窒化物半導体層12に向いた方向に100mm換算で20μm以上の凸の反りを有し、窒化物半導体層12が基板10に対し働く応力が引っ張り応力である。
【0074】
(付記9)
付記1~5のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置において、基板10は、窒化物半導体層12に向いた方向と逆方向に100mm換算で10μm以上の凸の反りを有し、窒化物半導体層12が基板10に対し働く応力が圧縮応力である。
【0075】
(付記10)
付記1~5のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置において、基板10は、窒化物半導体層12に向いた方向と逆方向に100mm換算で20μm以上の凸の反りを有し、窒化物半導体層12が基板10に対し働く応力が圧縮応力である。
【0076】
(付記11)
付記2に記載の窒化物半導体装置において、第2の窒化物半導体層に設けられたドレイン電極20、ソース電極18、およびゲート電極19を備える。ソース電極18は、基板10を貫通する導電層22を介して、基板10の第2面2bに形成したグランド電極となる第2電極層24Bに接続されている。付記11に記載の窒化物半導体装置によれば、ソース電極18を第2面2bからグランド電極と電気的に接続することができるため、チップ面積を小さくすることができる。
【0077】
(付記12)
付記11に記載の窒化物半導体装置において、ゲート電極19は、ドレイン電極20とソース電極18の間に配置される。
【0078】
(付記13)
付記11又は12に記載の窒化物半導体装置において、開口領域101、106は、活性領域300から見てドレイン電極20、ソース電極18、およびゲート電極19が配列される第1方向(X方向)に位置する不活性領域200に少なくとも配置される。
【0079】
(付記14)
付記11~13のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置において、開口領域102、103、104、105、107、108、109、110は、活性領域300から見てドレイン電極20、ソース電極18、およびゲート電極19が延びる第2方向(Y方向)に位置する不活性領域200に少なくとも配置される。
【0080】
(付記15)
窒化物半導体装置1の製造方法は、以下の製造工程を含む。互いに対向する第1面2aと第2面2bとで両面を定義された基板10の第1面2aに、窒化物半導体層12を形成する。窒化物半導体層12に活性領域300と不活性領域200を形成し、窒化物半導体層12の一部を選択的にエッチングして、活性領域300に窒化物半導体層12を貫通する貫通領域25Eを形成し、不活性領域200に窒化物半導体層12を貫通する開口領域101、102、103、104、105、106、107、108、109、110を形成する。貫通領域25Eを、基板10に対してエッチングの選択比の高い材料の導電層22で埋め込む。窒化物半導体層12上に絶縁層14を形成し、絶縁層14をエッチングで開口して、窒化物半導体層12とオーミック接触するドレイン電極20およびソース電極18を形成し、窒化物半導体層12とショットキー接触するゲート電極19を形成する。第2面2bより基板10の一部を選択的にエッチングして、導電層22に到達する貫通孔25Aを形成する。貫通孔25Aに、導電層22に接触する第1電極層24Eを形成し、第2面2bに第1電極層24Eに接触する第2電極層24Bを形成する。付記15の窒化物半導体装置1の製造方法によれば、開口領域101、102、103、104、105、106、107、108、109、110により基板10の反りが吸収され、基板の反りを低減する窒化物半導体装置の製造方法を提供できる。
【0081】
(付記16)
付記15に記載の窒化物半導体装置の製造方法において、不活性領域200は、窒化物半導体層12にイオン注入を実施して形成する。
【0082】
(付記17)
付記15に記載の窒化物半導体装置の製造方法において、不活性領域200は、窒化物半導体層12の上部の一部を除去するメサエッチングを実施して形成する。
【0083】
(付記18)
付記15~17のうちのいずれか1つに記載の窒化物半導体装置の製造方法において、ソース電極18は、導電層22と電気的に接続され、基板10を貫通する第1電極層24Eを介して、第2電極層24Bに接続されている。付記18に記載の窒化物半導体装置の製造方法によれば、ソース電極18を基板10の第2面2bからグランド電極と電気的に接続することができるため、チップ面積を小さくすることができる。
【0084】
以上の説明は単に例示である。本開示の技術を説明する目的のために列挙された構成要素および方法(製造プロセス)以外に、より多くの考えられる組み合わせおよび置換が可能であることを当業者は認識し得る。本開示は、特許請求の範囲を含む本開示の範囲内に含まれるすべての代替、変形、および変更を包含することが意図される。
【符号の説明】
【0085】
1…窒化物半導体装置
2a…第1面
2b…第2面
10…基板
12…窒化物半導体層
13…イオン注入層
14、16…絶縁層
14S…ソースコンタクト開口
14D…ドレインコンタクト開口
14G…ゲートコンタクト開口
16S…第1開口
16D…第2開口
18、18E…ソース電極
19…ゲート電極
19A…ゲート配線
20、20E…ドレイン電極
22…導電層
24…貫通ビア
24B…第2電極層
24E…第1電極層
25A…貫通孔
25E…貫通領域
101、102、103、104、105、106、107、108、109、110…開口領域
120…電子走行層
121…2次元電子ガス層
122…電子供給層
200…不活性領域
300…活性領域
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
図2E
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B