(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143447
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ログハウスの梁受け金物
(51)【国際特許分類】
E04B 1/58 20060101AFI20241003BHJP
E04B 2/70 20060101ALI20241003BHJP
E04B 1/48 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E04B1/58 506L
E04B2/70
E04B1/48 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056137
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】592190969
【氏名又は名称】株式会社アールシーコア
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100126147
【弁理士】
【氏名又は名称】川上 成年
(72)【発明者】
【氏名】原田 喜秀
(72)【発明者】
【氏名】松本 仁
(72)【発明者】
【氏名】橘 明隆
【テーマコード(参考)】
2E002
2E125
【Fターム(参考)】
2E002GA03
2E002GA04
2E002JA01
2E002JB02
2E125AA02
2E125AA13
2E125AA53
2E125AB11
2E125AC23
2E125AE16
2E125AG03
2E125AG04
2E125AG12
2E125AG45
2E125BB11
2E125BC02
2E125BD01
2E125BE08
2E125BF03
2E125CA05
2E125CA14
(57)【要約】
【課題】 意匠性や経済性を向上することが可能なログハウスの梁受け金物を提供する。
【解決手段】 第1ログ壁又は第2ログ壁と接合するためのログ壁取付部と、梁と接合するための梁取付部と、を有し、ログ壁取付部は、呼び径dのボルト締結用の、上から1列の3つのログ壁取付穴を有し、第1番目のログ壁取付穴の中心は、第1上ログ材の下面部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、第2番目のログ壁取付穴の中心は、第2上ログ材の下部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、第3番目のログ壁取付穴の中心は、第1下ログ材の下部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、第1番目のログ壁取付穴の中心と第2番目のログ壁取付穴の中心との間隔、及び、第2番目のログ壁取付穴の中心と第3番目のログ壁取付穴の中心との間隔は、それぞれ4d以上であるログハウスの梁受け金物である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1上ログ材、第2上ログ材、第1下ログ材、及び、第2下ログ材が交互に組み合い構成された第1ログ壁及び第2ログ壁と、前記第1ログ壁又は前記第2ログ壁に結合する梁と、を有する丸太組構法における、前記第1ログ壁又は前記第2ログ壁と、前記梁との結合に用いられるログハウスの梁受け金物であって、
前記ログハウスの梁受け金物は、
前記第1ログ壁又は前記第2ログ壁と接合するためのログ壁取付部と、前記梁と接合するための梁取付部と、を有し、
前記ログ壁取付部は、呼び径dのボルト締結用の、上から1列の3つのログ壁取付穴を有し、
上から第1番目の前記ログ壁取付穴の中心は、
前記第1上ログ材の下部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、
上から第2番目の前記ログ壁取付穴の中心は、
前記第2上ログ材の下部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、
上から第3番目の前記ログ壁取付穴の中心は、
前記第1下ログ材の下部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、
前記第1番目のログ壁取付穴の中心と前記第2番目のログ壁取付穴の中心との間隔、及び、前記第2番目のログ壁取付穴の中心と前記第3番目のログ壁取付穴の中心との間隔は、それぞれ4d以上であり、
前記梁側取付部は、上から1列の梁取付穴を有する、
ことを特徴とするログハウスの梁受け金物。
【請求項2】
第1上ログ材、第2上ログ材、第1中ログ材、第2下ログ材、及び、第1下ログ材が交互に組み合い構成された第1ログ壁及び第2ログ壁と、前記第2ログ壁又は前記第1ログ壁に結合する梁と、を有する丸太組構法における、前記第1ログ壁又は前記第2ログ壁と、前記梁との結合に用いられるログハウスの梁受け金物であって、
前記ログハウスの梁受け金物は、
前記第1ログ壁又は前記第2ログ壁と接合するためのログ壁取付部と、前記梁と接合するための梁取付部と、を有し、
前記ログ壁取付部は、呼び径dのボルト締結用の、上から1列の4つのログ壁取付穴を有し、
上から第1番目の前記ログ壁取付穴の中心は、
前記第1上ログ材の下部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、
上から第2番目の前記ログ壁取付穴の中心は、
前記第2上ログ材の下部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、
上から第3番目の前記ログ壁取付穴の中心は、
前記第1中ログ材の下部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、
上から第4番目の前記ログ壁取付穴の中心は、
前記第2下ログ材の下部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、
前記第1番目のログ壁取付穴の中心と前記第2番目のログ壁取付穴の中心との間隔、前記第2番目のログ壁取付穴の中心と前記第3番目のログ壁取付穴の中心との間隔、及び、前記第3番目のログ壁取付穴の中心と前記第4番目のログ壁取付穴の中心との間隔は、それぞれ4d以上であり、
前記梁側取付部は、上から1列の梁取付穴を有する、
ことを特徴とするログハウスの梁受け金物。
【請求項3】
前記梁側取付部の上から第1番目の梁取付穴は、上方への切り欠きを有することを特徴とする請求項1または2に記載のログハウスの梁受け金物。
【請求項4】
前記第1上ログ材、前記第2上ログ材、前記第1下ログ材、前記第1中ログ材、もしくは、前記第2下ログ材1の下面に溝部がある場合には、前記下部は、前記第1上ログ材、前記第2上ログ材、前記第1下ログ材、前記第1中ログ材、もしくは、前記第2下ログ材1の下面に備わる溝部の最深部である、ことを特徴とする請求項1または2に記載のログハウスの梁受け金物。
【請求項5】
前記第1ログ壁は、桁側ログ壁又は妻側ログ壁の一方であり、前記第2ログ壁は、桁側ログ壁又は妻側ログ壁の他方である、ことを特徴とする請求項1または2に記載のログハウスの梁受け金物。
【請求項6】
請求項1または2に記載のログハウスの梁受け金物を用いて、前記第1ログ壁若しくは前記第2ログ壁と前記梁とを結合したログハウスの結合構造。
【請求項7】
請求項1または2に記載のログハウスの梁受け金物を用いて建築されたログハウス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ログハウスの梁受け金物に関する。
【背景技術】
【0002】
ログハウスはいわゆる丸太組構法により建築される。丸太組構法は、ログ材を横に積み上げて造る構法である。ログ材の上面には実部があり、下面には溝部があり、上下のログ材の実部と溝部を係合させて、ログ材を積層させることによりログハウスのログ壁が構成される。
【0003】
ログハウス用の梁受け金物では、梁受け金物のボルトが2本で設計上不足のない場合は、1列のボルト配置となっている。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、梁受け金物のボルト配置を1列とした場合、必要以上に大きなサイズ(すなわち、梁せいより大きな高さの梁受け金物)や厚みの梁受け金物になりやすく、意匠性や経済性を欠くという課題があった。
【0006】
本発明は、このような従来の問題を解決するためになされたもので、意匠性や経済性を向上したログハウスの梁受け金物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、第1上ログ材、第2上ログ材、第1下ログ材、及び、第2下ログ材が交互に組み合い構成された第1ログ壁及び第2ログ壁と、第1ログ壁又は第2ログ壁に結合する梁と、を有する丸太組構法における、第1ログ壁又は第2ログ壁と、梁との結合に用いられるログハウスの梁受け金物であって、ログハウスの梁受け金物は、第1ログ壁又は第2ログ壁と接合するためのログ壁取付部と、梁と接合するための梁取付部と、を有し、ログ壁取付部は、呼び径dのボルト締結用の、上から1列の3つのログ壁取付穴を有し、上から第1番目のログ壁取付穴の中心は、第1上ログ材の下部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、上から第2番目のログ壁取付穴の中心は、第2上ログ材の下部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、上から第3番目のログ壁取付穴の中心は、第1下ログ材の下部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、第1番目のログ壁取付穴の中心と第2番目のログ壁取付穴の中心との間隔、及び、第2番目のログ壁取付穴の中心と第3番目のログ壁取付穴の中心との間隔は、それぞれ4d以上であり、梁側取付部は、梁取付穴を有するログハウスの梁受け金物である。
【0008】
本発明は、第1上ログ材、第2上ログ材、第1中ログ材、第2下ログ材、及び、第1下ログ材が交互に組み合い構成された第1ログ壁及び第2ログ壁と、第2ログ壁又は第1ログ壁に結合する梁と、を有する丸太組構法における、第1ログ壁又は第2ログ壁と、梁との結合に用いられるログハウスの梁受け金物であって、ログハウスの梁受け金物は、第1ログ壁又は第2ログ壁と接合するためのログ壁取付部と、梁と接合するための梁取付部と、を有し、ログ壁取付部は、呼び径dのボルト締結用の、上から1列の4つのログ壁取付穴を有し、上から第1番目のログ壁取付穴の中心は、第1上ログ材の下部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、上から第2番目のログ壁取付穴の中心は、第2上ログ材の下部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、上から第3番目のログ壁取付穴の中心は、第1中ログ材の下部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、上から第4番目のログ壁取付穴の中心は、第2下ログ材の下部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にあり、第1番目のログ壁取付穴の中心と第2番目のログ壁取付穴の中心との間隔、第2番目のログ壁取付穴の中心と第3番目のログ壁取付穴の中心との間隔、及び、第3番目のログ壁取付穴の中心と第4番目のログ壁取付穴の中心との間隔は、それぞれ4d以上であり、梁側取付部は、梁取付穴を有するログハウスの梁受け金物である。
【発明の効果】
【0009】
本発明のログハウスの梁受け金物によれば、意匠性や経済性を向上することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図10】「木質構造設計規準・同解説-許容応力度・許容耐力設計法」からの抜粋図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して実施形態のログハウスの梁受け金物について説明する。なお、実施形態では、2本のログ材及び3本のログ材を1つの部材としてみなす場合について説明するが、1つの部材としてみなすログ材の数はこれに限られず、4本以上であってもよい。
【0012】
図9は、一般的なログハウスの外観を示す。妻側ログ壁Aは、ログハウスの短辺側の外壁である。桁側ログ壁Dは、ログハウスの長手方向の外壁である。ログハウスは、妻側ログ壁Aを構成するログ材と、桁側ログ壁Dを構成するログ材とが、ノッチ部分で交互に組み合い構成される。このような構造を一般的に、丸太組構法という。
【0013】
(実施形態1)
(金物形状)
図1(a)は実施形態1のログハウスの梁受け金物の平面図であり、
図1(b)は実施形態1のログハウスの梁受け金物の左側面図であり、
図1(c)は実施形態1のログハウスの梁受け金物の正面図である。なお、
図1(a)、(b)、(c)の梁受け金物は、平面視で梁に対し線対称に左右1対の梁受け金物があり、そのうち左側の梁受け金物の図である。
【0014】
ログハウスの梁受け金物1は、後述する桁側ログ壁又は妻側ログ壁と接合するためのログ壁取付部10と、後述する梁と接合するための梁取付部20と、を有する。ログハウスの梁受け金物1は、ほぼL字断面の部材である。ログハウスの梁受け金物1の高さをh1とする。実施形態1では、h1は240mmである。また、梁受け金物1の板厚は4.5mmである。
【0015】
ログ壁取付部10は、呼び径dのボルト締結用の、上から1列の3つのログ壁取付穴11a、11b、11cを有する。ログ壁取付穴11a、11b、11cは、梁取付部20からl1の距離に1列に整列する。ログ壁取付穴11aと11bの間隔をp11、ログ壁取付穴11bと11cの間隔をp12とする。実施形態1では、p11は90mmであり、p12は95mmである。実施形態1ではdは16mmである。
【0016】
梁取付部20は、上から1列の3つの梁取付穴21a、21b、21cを有する。梁取付穴21a、21b、21cは、ログ壁取付部10からl2の距離に1列に整列する。梁取付穴21aと21bの間隔をp21、梁取付穴21bと21cの間隔をp22とする。梁取付穴21aのみ、上方への切り欠き開放部を有する。実施形態1ではp21は70mmであり、p22は75mmである。
【0017】
(妻側壁に取りつく形態)
図2は、実施形態1のログハウスの梁受け金物を用いて、妻側ログ壁と梁とを結合した構成を示す図である。
図2(a)は、ログ壁の断面からみた図であり、
図2(b)は、梁の断面からみた図である。
図2は、ログ15段の妻側ログ壁Aの梁受け金物が取り付けられる上2.5段分の図面である。
【0018】
妻側ログ壁Aは妻側上ログ材A1と妻側下ログ材A2とその他のログ材が積み重ねられて構成される。妻側上ログ材A1の溝部Agと妻側下ログ材A2の実部Apとが係合することにより、ログ材の幅方向の位置決めがされる。妻側上ログ材A1は、幅がt、高さ0.5hの、いわゆる半段ログ材である。なお、ログハウスの構造によっては、妻側上ログ材A1は半段ログでなくともよい。妻側下ログ材A2は、幅がt、高さhのログ材である。実施形態1では、hは180mmであり、tは113mmである。
【0019】
また、実施形態1では、妻側上ログ材A1と妻側下ログ材A2は、下面にほぼ台形断面の溝部Agを有する。妻側下ログ材A2は、上面にほぼ台形断面の実部Apを有する。
【0020】
梁Bは高さBwの木材である。実施形態1ではBwは240mmである。高さBwはログ材の高さhより大きい。実施形態1では、梁Bの高さBwとログハウスの梁受け金物の高さh1とは同一である。
【0021】
妻側ログ壁Aと梁Bとは、妻側上ログ材A1の上面と梁Bの上面とが面一になるとともに、妻側ログ壁Aに対し梁Bが垂直になるように、ログハウスの梁受け金物1を介して結合する。
【0022】
ログハウスの梁受け金物1は、ログ壁取付部10が妻側ログ壁Aの妻側上ログ材A1と妻側下ログ材A2に対し、ログ壁取付穴11a、11b、11cを貫通したボルトCにより取り付けられ、梁取付部20が梁Bに対し、梁取付穴21a、21b、21cを貫通したボルトEにより取り付けられる。これにより、梁Bは、妻側ログ壁Aにログハウスの梁受け金物1により固定される。
【0023】
(組み立て法)
次に、妻側ログ壁Aに梁Bを結合する組み立て方法について説明する。
1.受け側である妻側ログ壁Aにログハウスの梁受け金物1を先付けし仮締めする。
2.掛側である梁Bの最上段のボルト用貫通穴にボルトEを差込む。
3.ログハウスの梁受け金物1の梁取付穴21aの切り欠き部から、梁Bの最上段のボルト用貫通穴にボルトEを差し込むことにより、ログハウスの梁受け金物1に梁Bを掛け、受側に引き寄せる。
4.掛け側梁BのボルトEを設置、仮締め
5.妻側ログ壁AのボルトCを本締め
6.掛け側梁BのボルトEを本締め
【0024】
実施形態1のログハウスの梁受け金物1によれば、梁取付穴21aの切り欠き部から、梁Bの最上段のボルト用貫通穴にボルトEを侵入させて、固定するため、妻側ログ壁Aに大入れ等の欠き込みが不要となる。これにより、ログ積み上げ後の大入れ部の現場調整が不要になる。また、ログハウスの梁受け金物1で梁Bを引き込む形になるため、ボルト締め付けでの梁引き寄せによる過剰な増し締め(すなわち、ボルトのめり込み)がなくなる。
【0025】
(桁側壁に取りつく形態)
図3は、実施形態1のログハウスの梁受け金物を用いて、桁側ログ壁と梁とを結合した構成を示す図である。
図3(a)は、ログ壁の断面からみた図であり、
図3(b)は、梁の断面からみた図である。
図3は、ログ15段の桁側ログ壁Dの梁受け金物が取り付けられる上3段分の図面である。
【0026】
桁側ログ壁Dは桁側上ログ材D1と桁側下ログ材D2とその他のログ材が積み重ねられて構成される。桁側上ログ材D1の溝部Dgと桁側下ログ材D2の実部Dpとが係合することにより、ログ材の幅方向の位置決めがされる。桁側上ログ材D1及び桁側下ログ材D2は、幅がt、高さhのログ材である。
【0027】
桁側ログ壁Dと梁Bとは、桁側上ログ材D1の上面と梁Bの上面とが面一になるとともに、桁側ログ壁Dに対し梁Bが垂直になるように、ログハウスの梁受け金物1を介して結合する。
【0028】
ログハウスの梁受け金物1は、ログ壁取付部10が桁側ログ壁Dの桁側上ログ材D1と桁側下ログ材D2に対し、ログ壁取付穴11a、11b、11cを貫通したボルトCにより取り付けられ、梁取付部20が梁Bに対し、梁取付穴21a、21b、21cを貫通したボルトEにより取り付けられる。これにより、梁Bは、桁側ログ壁Dにログハウスの梁受け金物1により固定される。なお、組み立て法は上記した。
【0029】
(穴位置のルールの説明)
図10は、「木質構造設計規準・同解説-許容応力度・許容耐力設計法-(日本建築学会)」の抜粋である。本書によれば、せん断力を受けるボルトの配置は以下の表1に規定される。dは、固定に用いるボルトの呼び径である。e
2、rについては、
図10に示す寸法である。
【0030】
【0031】
実施形態のログハウスの梁受け金物のログ壁取付穴11aから11cの配置について説明する。
【0032】
図4は、実施形態1のログハウスの梁受け金物を用いて、妻側ログ壁Aと梁とを結合した部分(図の左)と、桁側ログ壁Dと梁とを結合した部分(図の右)を並べた図である。図に示すように、実施形態1のログハウスの梁受け金物は、左右各々一種類の金物で、妻側ログ壁Aと梁Bとを結合し、桁側ログ壁Dと梁Bとを結合する。
【0033】
実施形態1のログハウスの梁受け金物1は、妻側ログ壁Aと梁Bとを結合し、桁側ログ壁Dと梁Bとを、左右各々一種類の金物で結合するために、下記のログ壁取付穴11aから11cの配置に定められる。
【0034】
(条件3)
妻側ログ壁Aと梁Bとを結合した場合に、ログハウスの梁受け金物1の上から第1番目のログ壁取付穴11aの中心位置X1は、妻側上ログ材A1の下面から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にある。なお、dは、ボルトCの呼び径である。
【0035】
実施形態1ではdは16mmである。X1は60mmである。よって、表1の(条件3)を充足している。
【0036】
また、妻側上ログ材A1の下面に溝部Agがある場合には、ログ壁取付穴11aの中心位置X1は、妻側上ログ材A1の溝部Agの最深部(底面)から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にある。(なお、ログ材の下面、及び、溝部の最深部を総称して下部とする。)
【0037】
桁側ログ壁Dと梁Bとを結合した場合に、ログハウスの梁受け金物1の上から第2番目のログ壁取付穴11bの中心位置X2は、桁側上ログ材D1の下面から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にある。
【0038】
実施形態1ではdは16mmである。X2は60mmである。よって、表1の(条件3)を充足している。
【0039】
また、桁側上ログ材D1の下面に溝部Dgがある場合には、ログ壁取付穴11bの中心位置X2は、桁側上ログ材D1の溝部Dgの最深部(底面)から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にある。
【0040】
妻側ログ壁Aと梁Bとを結合した場合に、ログハウスの梁受け金物1の上から第3番目のログ壁取付穴11cの中心位置X3は、妻側下ログ材A2の下面から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にある。
【0041】
実施形態1ではdは16mmである。X3は55mmである。よって、表1の(条件3)を充足している。
【0042】
また、妻側下ログ材A2の下面に溝部Agがある場合には、ログ壁取付穴11cの中心位置X3は、妻側下ログ材A2の溝部Agの最深部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にある。
【0043】
(条件1)
ログハウスの梁受け金物1の第1番目のログ壁取付穴11aの中心と第2番目のログ壁取付穴11bの中心との間隔p11、及び、第2番目のログ壁取付穴11bの中心と第3番目のログ壁取付穴11cの中心との間隔p12は、それぞれ4d以上である。
【0044】
実施形態1ではdは16mmである。p11は90mm、p12は95mmである。よって、表1の(条件1)を充足している。
【0045】
(条件2)
木質構造設計規準によると妻側ログ壁側、桁側ログ壁側の梁受け金物のログ壁取付穴11aから11cのボルトの下側のe2は、表1に示す荷重負担側になり、4d以上となる(条件2)。
【0046】
ログ1段を部材とした場合、X1とX2とX3について、4d以上の条件2を満たす場合、ログ1段の高さとの関係上、ログハウスの梁受け金物が大型になってしまう。
【0047】
そこで、複数のログ材を一体のログ壁とみなすことで、妻側ログ壁A又は桁側ログ壁Dの最下部からログ壁取付穴11cのボルトまでの距離とすることで4d以上の条件2を満たすことができる。
【0048】
しかしながら、ログ壁は、上下のログ材の実部と溝部を係合させて、ログ材を積層させているため、実部と溝部を係合させている箇所近傍へのボルトの配置を避ける必要がある。このため、X1とX2とX3は、荷重非負担側と同様の1.5d以上を条件とする(条件3)。
【0049】
以上説明したように、実施形態1のログハウスの梁受け金物は、積み重ねられた複数のログ材(妻側上ログ材A1と妻側下ログ材A2、及び、桁側上ログ材D1と桁側下ログ材D2)を一体のログ壁とみなし、木質構造設計規準からみた、ログハウスの梁受け金物におけるボルトの適正な位置、及び、ログ材端部からの適正な位置を実現している。これにより、ログ1段を部材とする場合と比較して、ログハウスの梁受け金物のサイズや厚みを低減でき、意匠性や経済性を向上することができる。さらに、木質構造設計規準を充足するため、耐力も確保される。
【0050】
さらに、複数のログ材を一体のログ壁とみなしログハウスの梁受け金物におけるボルトの縦1列の配置を実現している。これにより、ログ壁のダボの配置や開口部の設計の自由度が増し、意匠性や経済性を向上することが可能となる。
【0051】
また、本来妻側、桁側で多種の金物が必要なところ、実施形態のログハウスの梁受け金物は、妻側、桁側で左右各々共通の金物とできるため、経済性が向上する。なお、実施形態のログハウスの梁受け金物は、平面視で梁に対し線対称に左右1対の梁受け金物となる。
【0052】
また、実施形態のログハウスの梁受け金物1の梁取付穴21aの切り欠き部を有する。これにより、ログ壁への大入れ加工自体が不要になるため、仕入れ先の加工の手間、現場での加工の手間を軽減することができる。また、ログの断面欠損が無くなり、安全性の向上や部材サイズを小さくできる。
【0053】
(実施形態2)
(金物形状)
図5(a)は実施形態2のログハウスの梁受け金物の平面図であり、
図5(b)は実施形態2のログハウスの梁受け金物の左側面図であり、
図5(c)は実施形態2のログハウスの梁受け金物の正面図である。なお、
図5(a)、(b)、(c)の梁受け金物は、平面視で梁に対し線対称に左右1対の梁受け金物があり、そのうち左側の梁受け金物の図である。
【0054】
ログハウスの梁受け金物1は、後述する桁側ログ壁又は妻側ログ壁と接合するためのログ壁取付部10と、後述する梁と接合するための梁取付部20と、を有する。ログハウスの梁受け金物1は、ほぼL字断面の部材である。ログハウスの梁受け金物1の高さをh1とする。実施形態2では、h1は330mmである。また、梁受け金物1の板厚は4.5mmである。
【0055】
ログ壁取付部10は、呼び径dのボルト締結用の、上から1列の4つのログ壁取付穴11a、11b、11c、11dを有する。ログ壁取付穴11a、11b、11c、11dは、梁取付部20からl1の距離に1列に整列する。ログ壁取付穴11aと11bの間隔をp11、ログ壁取付穴11bと11cの間隔をp12、ログ壁取付穴11cと11dの間隔をp13とする。実施形態2では、p11は90mmであり、p12は95mmであり、p13は85mmである。実施形態2ではdは16mmである。
【0056】
梁取付部20は、上から1列の4つの梁取付穴21a、21b、21c、21dを有する。梁取付穴21a、21b、21c、21dは、ログ壁取付部10からl2の距離に1列に整列する。梁取付穴21aと21bの間隔をp21、梁取付穴21bと21cの間隔をp22、梁取付穴21cと21dの間隔をp23とする。梁取付穴21aのみ、上方への切り欠き開放部を有する。実施形態2ではp21は70mmであり、p22は70mmであり、p23は70mmである。
【0057】
(妻側壁に取りつく形態)
図6は、実施形態2のログハウスの梁受け金物を用いて、妻側ログ壁と梁とを結合した構成を示す図である。
図6(a)は、ログ壁の断面からみた図であり、
図6(b)は、梁の断面からみた図である。
図6は、ログ15段の妻側ログ壁Aの梁受け金物が取り付けられる上2.5段分の図面である。
【0058】
妻側ログ壁Aは妻側上ログ材A1と妻側中ログ材A2と妻側下ログ材A3とその他のログ材が積み重ねられて構成される。妻側上ログ材A1の溝部Agと妻側下ログ材A2の実部Apとが係合し、妻側中ログ材A2の溝部Agと妻側下ログ材A3の実部Apとが係合することにより、ログ材の幅方向の位置決めがされる。妻側上ログ材A1は、幅がt、高さ0.5hの、いわゆる半段ログ材である。なお、ログハウスの構造によっては、妻側上ログ材A1は半段ログでなくともよい。妻側中ログ材A2及び妻側下ログ材A3は、幅がt、高さhのログ材である。実施形態2では、hは180mmであり、tは113mmである。
【0059】
また、実施形態2では、妻側上ログ材A1と妻側中ログ材A2と妻側下ログ材A3は、下面にほぼ台形断面の溝部Agを有する。妻側中ログ材A2と妻側下ログ材A3は、上面にほぼ台形断面の実部Apを有する。
【0060】
梁Bは高さBwの木材である。実施形態2ではBwは330mmである。高さBwはログ材の高さhより大きい。実施形態2では、梁Bの高さBwとログハウスの梁受け金物の高さh1とは同一である。
【0061】
妻側ログ壁Aと梁Bとは、妻側上ログ材A1の上面と梁Bの上面とが面一になるとともに、妻側ログ壁Aに対し梁Bが垂直になるように、ログハウスの梁受け金物1を介して結合する。
【0062】
ログハウスの梁受け金物1は、ログ壁取付部10が妻側ログ壁Aの妻側上ログ材A1と妻側中ログ材A2と妻側下ログ材A3に対し、ログ壁取付穴11a、11b、11c、11dを貫通したボルトCにより取り付けられ、梁取付部20が梁Bに対し、梁取付穴21a、21b、21c、21dを貫通したボルトEにより取り付けられる。これにより、梁Bは、妻側ログ壁Aにログハウスの梁受け金物1により固定される。妻側ログ壁Aに梁Bを結合する組み立て方法及びその効果は上記と同様なので省略する。
【0063】
(桁側壁に取りつく形態)
図7は、実施形態2のログハウスの梁受け金物を用いて、桁側ログ壁と梁とを結合した構成を示す図である。
図7(a)は、ログ壁の断面からみた図であり、
図7(b)は、梁の断面からみた図である。
図7は、ログ15段の桁側ログ壁Dの梁受け金物が取り付けられる上3段分の図面である。
【0064】
桁側ログ壁Dは桁側上ログ材D1と桁側下ログ材D2とその他のログ材が積み重ねられて構成される。桁側上ログ材D1の溝部Dgと桁側下ログ材D2の実部Dpとが係合することにより、ログ材の幅方向の位置決めがされる。桁側上ログ材D1及び桁側下ログ材D2は、幅がt、高さhのログ材である。
【0065】
桁側ログ壁Dと梁Bとは、桁側上ログ材D1の上面と梁Bの上面とが面一になるとともに、桁側ログ壁Dに対し梁Bが垂直になるように、ログハウスの梁受け金物1を介して結合する。
【0066】
ログハウスの梁受け金物1は、ログ壁取付部10が桁側ログ壁Dの桁側上ログ材D1と桁側下ログ材D2に対し、ログ壁取付穴11a、11b、11c、11dを貫通したボルトCにより取り付けられ、梁取付部20が梁Bに対し、梁取付穴21a、21b、21c、21dを貫通したボルトEにより取り付けられる。これにより、梁Bは、桁側ログ壁Dにログハウスの梁受け金物1により固定される。なお、組み立て法は上記した。
【0067】
実施形態2のログハウスの梁受け金物のログ壁取付穴11aから11dの配置について説明する。
【0068】
図8は、実施形態2のログハウスの梁受け金物を用いて、妻側ログ壁Aと梁とを結合した部分(図の左)と、桁側ログ壁Dと梁とを結合した部分(図の右)を並べた図である。図に示すように、実施形態のログハウスの梁受け金物は、左右各々一種類の金物で、妻側ログ壁Aと梁Bとを結合し、桁側ログ壁Dと梁Bとを結合する。
【0069】
実施形態のログハウスの梁受け金物1は、妻側ログ壁Aと梁Bとを結合し、桁側ログ壁Dと梁Bとを、左右各々一種類の金物で結合するために、下記のログ壁取付穴11aから11dの配置に定められる。
【0070】
(条件3)
妻側ログ壁Aと梁Bとを結合した場合に、ログハウスの梁受け金物1の上から第1番目のログ壁取付穴11aの中心位置X1は、妻側上ログ材A1の下面から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にある。なお、dは、ボルトCの呼び径である。
【0071】
実施形態2ではdは16mmである。X1は60mmである。よって、表1の(条件3)を充足している。
【0072】
また、妻側上ログ材A1の下面に溝部Agがある場合には、ログ壁取付穴11aの中心位置X1は、妻側上ログ材A1の溝部Agの最深部(底面)から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にある。
【0073】
桁側ログ壁Dと梁Bとを結合した場合に、ログハウスの梁受け金物1の上から第2番目のログ壁取付穴11bの中心位置X2は、桁側上ログ材D1の下面から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にある。
【0074】
実施形態2ではdは16mmである。X2は60mmである。よって、表1の(条件3)を充足している。
【0075】
また、桁側上ログ材D1の下面に溝部Dgがある場合には、ログ壁取付穴11bの中心位置X2は、桁側上ログ材D1の溝部Dgの最深部(底面)から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にある。
【0076】
妻側ログ壁Aと梁Bとを結合した場合に、ログハウスの梁受け金物1の上から第3番目のログ壁取付穴11cの中心位置X3は、妻側下ログ材A2の下面から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にある。
【0077】
実施形態2ではdは16mmである。X3は55mmである。よって、表1の(条件3)を充足している。
【0078】
また、妻側下ログ材A2の下面に溝部Agがある場合には、ログ壁取付穴11cの中心位置X3は、妻側下ログ材A2の溝部Agの最深部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にある。
【0079】
桁側ログ壁Dと梁Bとを結合した場合に、ログハウスの梁受け金物1の上から第4番目のログ壁取付穴11dの中心位置X4は、桁側下ログ材D2の下面から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にある。
【0080】
実施形態2ではdは16mmである。X4は60mmである。よって、表1の(条件3)を充足している。
【0081】
また、桁側下ログ材D2の下面に溝部Dgがある場合には、ログ壁取付穴11dの中心位置X2は、桁側下ログ材D2の溝部Dgの最深部から1.5dの位置から上、かつ、4dの位置から下にある。
【0082】
(条件1)
ログハウスの梁受け金物1の第1番目のログ壁取付穴11aの中心と第2番目のログ壁取付穴11bの中心との間隔p11、及び、第2番目のログ壁取付穴11bの中心と第3番目のログ壁取付穴11cの中心との間隔p12は、及び、第3番目のログ壁取付穴11cの中心と第4番目のログ壁取付穴11dの中心との間隔p13は、それぞれ4d以上である。
【0083】
実施形態2ではdは16mmである。p11は90mm、p12は95mm、p13は85mmである。よって、表1の(条件1)を充足している。
【0084】
(条件2)
木質構造設計規準によると妻側ログ壁側、桁側ログ壁側の梁受け金物のログ壁取付穴11aから11dのボルトの下側のe2は、表1に示す荷重負担側になり、4d以上となる(条件2)。
【0085】
ログ1段を部材とした場合、X1とX2とX3とX4について、4d以上の条件2を満たす場合、ログ1段の高さとの関係上、ログハウスの梁受け金物が大型になってしまう。
【0086】
そこで、複数のログ材を一体のログ壁とみなすことで、妻側ログ壁A又は桁側ログ壁Dの最下部からログ壁取付穴11dのボルトまでの距離とすることで4d以上の条件2を満たすことができる。
【0087】
しかしながら、ログ壁は、上下のログ材の実部と溝部を係合させて、ログ材を積層させているため、実部と溝部を係合させている箇所近傍へのボルトの配置を避ける必要がある。このため、X1とX2とX3とX4は、荷重非負担側と同様の1.5d以上を条件とする(条件3)。
【0088】
以上説明したように、実施形態2のログハウスの梁受け金物は、積み重ねられた複数のログ材(妻側上ログ材A1と妻側中ログ材A2と妻側下ログ材A3、及び、桁側上ログ材D1と桁側下ログ材D2)を一体のログ壁とみなし、木質構造設計規準からみた、ログハウスの梁受け金物におけるボルトの適正な位置、及び、ログ材端部からの適正な位置を実現している。これにより、ログ1段を部材とする場合と比較して、ログハウスの梁受け金物のサイズや厚みを低減でき、意匠性や経済性を向上することができる。さらに、木質構造設計規準を充足するため、耐力も確保される。
【0089】
さらに、複数のログ材を一体のログ壁とみなしログハウスの梁受け金物におけるボルトの縦1列の配置を実現している。これにより、ログ壁のダボの配置や開口部の設計の自由度が増し、意匠性や経済性を向上することが可能となる。
【0090】
また、本来妻側、桁側で多種の金物が必要なところ、実施形態のログハウスの梁受け金物は、妻側、桁側で共通の左右各々金物とできるため、経済性が向上する。なお、実施形態のログハウスの梁受け金物は、平面視で梁に対し線対称に左右1対の梁受け金物となる。
【0091】
また、実施形態のログハウスの梁受け金物1の梁取付穴21aの切り欠き部を有する。これにより、ログ壁への大入れ加工自体が不要になるため、仕入れ先の加工の手間、現場での加工の手間を軽減することができる。また、ログの断面欠損が無くなり、安全性の向上や部材サイズを小さくできる。
【0092】
木質構造設計規準では梁の受け側がログ壁の前提はなく、梁の受け側のログ壁のログ1段を部材として考えた場合、部材端部からの必要端空寸法を確保して梁受け金物を設計することになり、設計上、梁受け金物のボルトが3本以上必要になる場合は、必要以上に大きなサイズや厚みの梁受け金物になる。この課題を解決するために、これまでは、ボルトを縦2列に配置していた。(
図11参照)。
【0093】
しかしながら、縦2列のボルト配置にした場合、鉛直方向の荷重による偶力による梁受け金物の回転で、ボルト部の木部材へのめり込みが大きくなることや梁受け金物の変形が大きくなることで接合部の強度低下につながりやすい。
【0094】
また、縦2列にボルトを配置することで、ボルトを配置した縦2列分の近傍にログ壁のダボが配置できなくなり、これにより開口部の設計に制限が生じるなどの課題がある。
【0095】
そこで、梁受け金物のボルト配置を縦2列ではなく縦1列に配置することを前提とするが、この場合、前述した通り、必要以上に大きなサイズや厚みの梁受け金物 になり、意匠性や経済性を欠くという課題が生じる。
【0096】
実施形態のログハウスの梁受け金物によれば、複数のログ材を一体のログ壁とみなしログハウスの梁受け金物におけるボルトの縦1列の配置を実現している。これにより、ログ壁のダボの配置や開口部の設計の自由度が増し、意匠性や経済性を向上することが可能となる。
【0097】
(評価例:実施形態1)
以下に、実施形態1の評価例について説明をする。なお、本発明は以下の評価例に限定されない。評価は、実施形態1のログハウスの梁受け金物1の耐力試験の結果と、計算により得られた耐力とを比較することにより行う。
【0098】
まず、実施形態1のログハウスの梁受け金物1と木材の接合部の短期基準接合耐力(せん断)を評価した。試験方法は以下の通りである。
【0099】
(試験条件)
・ログ材側面(上・中・下段)を加力梁芯から両端側にそれぞれ325mmの位置でM16ボルトと角座金 t9×□80を用いて50N・mのトルク管理にて拘束する。
・接合金物と接合具は15N・mのトルク管理で接合する。
【0100】
(加力方法)
・試験の加力は一方向の単調加力とする。
・加力は最大荷重に達した後、最大荷重の80%に荷重が低下するまで、または仕口の機能が失われるまで(変位30mm以上)行う。
・最大荷重は、破壊荷重時の変位が30mm以下の場合には、これを最大荷重として扱い、変位が30mmを超える場合には、変位が30mmに達するまでの荷重の最大値を最大荷重とする。
・加力点は加力梁の中央部とし、めり込み破壊が生じないように加圧面積を十分確保すべく、加圧面寸法150mm×500mmの加圧板を介して、加力梁上部より加力した。
【0101】
(試験体固定方法)
・大梁材の固定方法は鋼製治具による片側2点支持とする。
・ログ材側面(上・中・下段)を加力梁芯から両端側にそれぞれ325mmの位置でM16ボルトと角座金 t9×□80を用いて50N・mのトルク管理にて拘束する。
【0102】
(短期基準接合耐力の算定)
・短期基準接合耐力は、降伏耐力Py又は最大荷重Pmaxの2/3の平均値に、それぞれのばらつき係数を乗じて算出した値のうち小さい方とする。
・ばらつき係数は、母集団の分布形を正規分布とみなし、統計的処理に基づく信頼水準75%の95%下側許容限界値をもとに次式により求める。
・ばらつき係数=1-CV・K ただし、CV:変動係数、K:定数2.336(n=6)
【0103】
(試験結果)
ログハウスの梁受け金物1の6つの試験体の試験結果を
図12に示す。
図12に示される6つの試験体の降伏耐力Pyの平均値が104.44kN、標準偏差が4.923、変動係数(標準偏差/平均値)が0.047となり、ばらつき係数は0.890となる。降伏耐力Pyの平均値に、ばらつき係数を乗じた結果、短期基準接合耐力は92.94kNとなる。
・
図12に示される6つの試験体の最大荷重Pmaxの2/3(図中の2/3P)の平均値が130.61kN、標準偏差が6.537、変動係数(標準偏差/平均値)が0.050となり、ばらつき係数は0.883となる。最大荷重Pmaxの2/3の平均値に、ばらつき係数を乗じた結果、短期基準接合耐力は115.34kNとなる。
・降伏耐力Pyと最大荷重Pmaxの2/3の短期基準接合耐力の小さい方を採用し、92.94kNとなる。
・大梁材の固定方法は鋼製治具による片側2点支持であるため、1か所当たりの短期基準接合耐力を求めるために2で割った結果、試験値46.47kNが求まる。
【0104】
(計算値)
・実験で用いた各種条件を、木質構造設計規準に記載の以下の式および係数を用いて、設計許容せん断耐力を算出する。
・単位接合部の降伏せん断耐力(Py)は、次の式になる。
Py=C・Fe・d・l
記号 Py:単位接合部の降伏せん断耐力(N)
C:接合形式とその破壊形式等によって定まる接合形式係数
Fe:主材の基準支圧強度(N/mm^2)
d:接合具径(mm)
l:主材厚(mm)、主材に接する接合具の長さが主材厚よりも小さい場合は有効長さ。
【0105】
・基準許容せん断耐力
単独の接合具よりなる接合部における基準せん断耐力(P0)は以下の式になる。
P0=jK0・Py
P0:単位接合部の基準許容せん断耐力(N)
Py:単位接合部の降伏せん断耐力(N)
jK0:基準化係数
【0106】
・設計許容せん断耐力
単独の接合具よりなる接合部における設計用許容せん断耐力(Pa)は以下の式になる。
Pa= jKd・jKm・P0
Pa:単位接合部の設計用許容せん断耐力(N)
P0:単位接合部の基準許容せん断耐力(N)
jKd:荷重継続期間影響係数
jKm:含水率影響係数
・以上の式より、設計許容せん断耐力を算出した結果、25.14kNとなる。
【0107】
(計算値と試験値の比較)
・試験値46.47kN / 計算値25.14kN = 余裕率1.85
・短期せん断耐力の採用については、試験値>計算値となることから計算値の採用が問題ない結果となった。
【0108】
このように実施形態1のログハウスの梁受け金物によれば、ログハウスの梁受け金物のサイズや厚みを低減しつつ、計算値の運用でも十分な耐力が確保されていることがわかる。ログ1段を部材とした場合は、X1とX2とX3は、荷重負担側であるので4d以上が必要なところ、実施形態1では、複数のログ材を一体のログ壁とみなすことで、荷重非負担側と同様の1.5d以上が確保されていることにより、余裕率からみても十分な体力が確保されていることがわかり、梁の受け側がログ壁の場合の設計基準を得ることができた。
【0109】
(評価例:実施形態2)
以下に、実施形態2の評価例について説明をする。なお、本発明は以下の評価例に限定されない。評価は、実施形態2のログハウスの梁受け金物1の耐力試験の結果と、計算により得られた耐力とを比較することにより行う。
【0110】
まず、実施形態2のログハウスの梁受け金物1と木材の接合部の短期基準接合耐力(せん断)を評価した。
【0111】
試験条件、加力方法、試験体固定方法、及び、短期基準接合耐力の算定については、実施形態1の評価と同様であるので、記載を省略する。
【0112】
(試験結果)
・6つの試験体の試験結果が
図13となる。
・
図13に示される6つの試験体の降伏耐力Pyの平均値が151.36kN、標準偏差が5.188、変動係数(標準偏差/平均値)が0.034となり、ばらつき係数は0.920となる。降伏耐力Pyの平均値に、ばらつき係数を乗じた結果、短期基準接合耐力は139.24kNとなる。
・
図13に示される6つの試験体の最大荷重Pmaxの2/3(図中の2/3P)の平均値が195.52kN、標準偏差が4.647、変動係数(標準偏差/平均値)が0.024となり、ばらつき係数は0.944となる。最大荷重Pmaxの2/3の平均値に、ばらつき係数を乗じた結果、短期基準接合耐力は184.67kNとなる。
・降伏耐力Pyと最大荷重Pmaxの2/3の短期基準接合耐力の小さい方を採用し、139.24kNとなる。
・大梁材の固定方法は鋼製治具による片側2点支持であるため、1か所当たりの短期基準接合耐力を求めるために2で割った結果、試験値69.62kNが求まる。
【0113】
(計算値)
・実験で用いた各種条件を、木質構造設計規準に記載の以下の式および係数を用いて、設計許容せん断耐力を算出する。算出法は実施形態1の評価と同様であるので記載を省略する。
・設計許容せん断耐力を算出した結果、33.52kNとなる。
【0114】
(計算値と試験値の比較)
・試験値69.62kN / 計算値33.52kN = 余裕率2.08
・短期せん断耐力の採用については、試験値>計算値となることから計算値の採用が問題ない結果となった。
【0115】
このように実施形態2のログハウスの梁受け金物によれば、ログハウスの梁受け金物のサイズや厚みを低減しつつ、計算値の運用でも十分な耐力が確保されていることがわかる。ログ1段を部材とした場合は、X1とX2とX3とX4は、荷重負担側であるので4d以上が必要なところ、実施形態2では、複数のログ材を一体のログ壁とみなすことで、荷重非負担側と同様の1.5d以上が確保されていることにより、余裕率からみても十分な体力が確保されていることがわかり、梁の受け側がログ壁の場合の設計基準を得ることができた。
【0116】
以上、実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。この実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0117】
1:ログハウスの梁受け金物
10;ログ壁取付部
11a、11b、11c:ログ壁取付穴
20:梁取付部
21a、21b、21c:梁取付穴