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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143451
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
   E02F 9/16 20060101AFI20241003BHJP
   B60H 1/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/16 C
B60H1/00 102R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056142
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】398071668
【氏名又は名称】株式会社日立建機ティエラ
(74)【代理人】
【識別番号】110002457
【氏名又は名称】弁理士法人広和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳井 陽介
(72)【発明者】
【氏名】山本 大介
【テーマコード(参考)】
2D015
3L211
【Fターム(参考)】
2D015EB01
2D015EC01
3L211AA09
3L211BA01
3L211DA14
(57)【要約】
【課題】 暖房装置から供給される暖気の温度低下を抑制し、暖房効率を向上できるようにする。
【解決手段】 キャブボックス16の右面部16Dと運転席21との間で、前後方向に延び、前側デフロスタ30と後側デフロスタ31に接続されて、暖気を後側デフロスタ31に導く接続ダクト32を備えている。この上で、接続ダクト32は、一部がキャブ14内に露出して配置され、右面部16Dおよび左面部16Cから離間した位置でフロア部材15に取り付けられている。
【選択図】 図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造体をなすフレームと、
前記フレームに設けられ、右面部、左面部および下面部を有するボックス状のキャブと、
前記キャブ内に設けられた運転席と、
前記キャブ内に暖気を供給する暖房装置と、
前記キャブ内に設けられ、前記暖房装置から供給される暖気を吹き出す吹出装置と、
を備え、
前記吹出装置は、
前記キャブ内に配置されたデフロスタと、
前記右面部と前記運転席との間、または前記左面部と前記運転席との間で、前後方向に延び、前記デフロスタに接続されて、暖気を前記デフロスタに導く接続ダクトと、
を備えてなる建設機械において、
前記接続ダクトは、一部が前記キャブ内に露出して配置され、前記右面部および前記左面部から離間した位置で前記下面部に取り付けられたことを特徴とする建設機械。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械において、
前記運転席の右側に配置された操作装置と、
前記キャブの前記右面部の上側に設けられた右窓と、
を備え、
前記接続ダクトの一部は、前記操作装置よりも高く、前記右窓よりも低い位置に配置されていることを特徴とする建設機械。
【請求項3】
請求項1に記載の建設機械において、
前記デフロスタは、前記キャブ内の前側に配置された前側デフロスタと後側に配置された後側デフロスタとからなり、
前記接続ダクトは、前記前側デフロスタと前記後側デフロスタとを接続していることを特徴とする建設機械。
【請求項4】
請求項1に記載の建設機械において、
前記キャブの右側には、外気を前記暖房装置に導く外気導入ダクトが設けられ、
前記接続ダクトは、前後方向の途中位置で分割された前分割部材と後分割部材とにより構成され、
前記前分割部材は、前記外気導入ダクトに沿って延びる円筒状のホースとして形成されていることを特徴とする建設機械。
【請求項5】
請求項1に記載の建設機械において、
前記接続ダクトは、前後方向の途中位置で分割された前分割部材と後分割部材とにより構成され、
前記後分割部材は、鉛直方向の側面が長尺となる角筒状のダクトとして形成されていることを特徴とする建設機械。
【請求項6】
請求項1に記載の建設機械において、
前記フレームに設けられ、原動機および熱交換装置の少なくともいずれかを格納する機器収容室を備え、
前記下面部は、前記キャブと前記機器収容室を区画する隔壁であることを特徴とする建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャブ内に暖気を供給する暖房装置を備えた建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械の代表例としての油圧ショベルは、自走可能な下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に設けられた上部旋回体と、上部旋回体の前側に回動可能に設けられた作業装置と、により構成されている。油圧ショベルの上部旋回体は、支持構造体をなすフレームと、フレームに設けられ、右面部を有するボックス状のキャブと、キャブ内の後側に設けられた運転席と、運転席の右側に設けられ、コンソールの前側に操作レバーを有する右操作レバー装置と、を備えている。
【0003】
また、油圧ショベルは、寒冷地や冷凍施設でも快適に作業を行えるように、キャブ内に暖気を供給する暖房装置と、キャブ内に設けられ、暖房装置からダクトを通じて供給される暖気を吹き出す吹出装置と、を備えている(特許文献1)。これにより、特許文献1の油圧ショベルは、寒冷地や冷凍施設で作業を行う場合でも、吹出装置から吹き出される暖気によってキャブ内を暖めることができる。また、このダクトは、オペレータの右側に位置する操作装置に隣接した位置で露出して配置されており、輻射熱によってオペレータの右腕等を暖めることもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-245894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1のダクトは、直接、外気と触れるキャブの右面部に取り付けられている。従って、特許文献1の油圧ショベルでは、外気が低温である場合にダクト内に暖気を流通させると、ダクト内の暖気の熱がキャブの右面部に伝わって暖気の温度が下がってしまう。このために、キャブ内を暖房するときの暖房効率が悪くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した従来技術の問題に鑑みなされたもので、本発明の目的は、暖房装置から供給される暖気の温度低下を抑制できるようにした建設機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、支持構造体をなすフレームと、前記フレームに設けられ、右面部、左面部および下面部を有するボックス状のキャブと、前記キャブ内に設けられた運転席と、前記キャブ内に暖気を供給する暖房装置と、前記キャブ内に設けられ、前記暖房装置から供給される暖気を吹き出す吹出装置と、を備え、前記吹出装置は、前記キャブ内に配置されたデフロスタと、前記右面部と前記運転席との間、または前記左面部と前記運転席との間で、前後方向に延び、前記デフロスタに接続されて、暖気を前記デフロスタに導く接続ダクトと、を備えてなる建設機械において、前記接続ダクトは、一部が前記キャブ内に露出して配置され、前記右面部および前記左面部から離間した位置で前記下面部に取り付けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、暖房装置から供給される暖気の温度低下を抑制することができ、暖房効率を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態に係る油圧ショベルの左側面図である。
図2】上部旋回体を図1中の矢示II-II方向から示す断面図である。
図3】上部旋回体を図1中の矢示III-III方向から示す断面図である。
図4】キャブの内部を示す断面図である。
図5】上部旋回体の右後側の熱交換装置、外気吸込口等を示す斜視図である。
図6】キャブ内の暖房装置、吹出装置等を示す断面図である。
図7】キャブの右面部と接続ダクトとの関係を図6中の矢示VII-VII方向から示す断面図である。
図8】接続ダクトを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る建設機械の実施形態を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、図1ないし図8を参照しつつ詳細に説明する。
【0011】
図1において、油圧ショベル1は、自走可能なクローラ式の下部走行体2と、下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、上部旋回体3の前側に揺動と回動が可能に設けられたスイング式の作業装置4と、により構成されている。
【0012】
上部旋回体3は、フレームとしての旋回フレーム5を備え、旋回フレーム5の後部には、作業装置4との重量バランスを取るためのカウンタウエイト6が設けられている。カウンタウエイト6は、大きな重量を得るために旋回フレーム5から上側に大きく立ち上がっている。具体的には、カウンタウエイト6は、後述するキャブ14(キャブボックス16)の高さ寸法の半分程度の高さ寸法を有している。
【0013】
また、図3に示すように、旋回フレーム5の後側には、機器収容室5Aが設けられ、機器収容室5Aには、原動機としてのエンジン7および熱交換装置9を格納している。機器収容室5Aの上側は、後述のフロア部材15で覆われている。エンジン7は、カウンタウエイト6の前側の機器収容室5Aに位置し、左右方向に延びる横置き状態で配設されている。なお、原動機としては、エンジンと電動モータからなるハイブリッド式の原動機、または電動モータを用いることもできる。
【0014】
エンジン7の右側には、冷却ファン7Aが設けられている。冷却ファン7Aは、回転することにより、後述の外装カバー13を構成する熱交換カバー13Cの外気流入口13C1から外気を吸込み、後述の熱交換装置9に供給する。一方、エンジン7の左側には、油圧ポンプ8が取付けられている。油圧ポンプ8は、エンジン7によって駆動されることにより、後述の作動油タンク11から供給される作動油を加圧して各種油圧アクチュエータに供給する。
【0015】
図3図5に示すように、熱交換装置9は、エンジン7の冷却ファン7Aに対面するように、旋回フレーム5の右後側に設けられている。熱交換装置9は、エンジン冷却水を冷却するラジエータ9A、作動油を冷却するオイルクーラ9B等からなる。熱交換装置9は、外装カバー13の熱交換カバー13Cと協働して外気が流入する外気流入室10を形成している。この外気流入室10には、後述する外気導入ダクト27の導入口27Aが配設されている。
【0016】
作動油タンク11は、旋回フレーム5の右側に設けられている。作動油タンク11は、各種油圧アクチュエータに供給する作動油を貯える容器を構成している。燃料タンク12は、作動油タンク11の前側となる旋回フレーム5の右前部に設けられている。燃料タンク12は、エンジン7に供給する燃料を貯える容器を構成している。
【0017】
外装カバー13は、旋回フレーム5上に設けられている。外装カバー13は、エンジン7、油圧ポンプ8、熱交換装置9、作動油タンク11、燃料タンク12等を覆っている。外装カバー13は、カウンタウエイト6から上側に延びてエンジン7の後側を覆ったエンジンカバー13A(図1参照)と、エンジンカバー13Aの左側に連続するように前側に延び、油圧ポンプ8の左側を覆ったポンプカバー13Bと、図2に示すように、エンジンカバー13Aの右側に連続するように前側に延び、熱交換装置9の上側と右側を覆った熱交換カバー13Cと、熱交換カバー13Cから前側に延び、作動油タンク11、燃料タンク12を覆ったタンクカバー13Dと、を含んで構成されている。
【0018】
熱交換カバー13Cは、熱交換装置9(ラジエータ9A、オイルクーラ9B)に対面する位置に外気流入口13C1を有している。これにより、外気は、外気流入口13C1を通って外気流入室10に流入し、熱交換装置9や外気導入ダクト27の導入口27Aに向けて流通する。
【0019】
図1図2に示すように、キャブ14は、旋回フレーム5の左側に設けられている。キャブ14の内部は、オペレータが搭乗して各種操作を行うための居住空間となっている。キャブ14は、後述するフロア部材15、キャブボックス16等により構成されている。
【0020】
図6に示すように、下面部としてのフロア部材15は、キャブ14の床面を構成している。フロア部材15は、前側に位置してオペレータが搭乗する足載せ部15Aと、足載せ部15Aの後部から立ち上がったステップ状の運転席台座15Bと、を備えている。運転席台座15Bは、エンジン7等を覆うカバーと、後述の運転席21を取り付けるための台座と、を兼ねている。即ち、フロア部材15は、キャブ14と機器収容室5Aとを区画する隔壁である。
【0021】
また、フロア部材15の後側には、ダクトブラケット15Cが設けられ、ダクトブラケット15Cには、後分割部材34のブラケット34Eが取り付けられている。この場合、フロア部材15は、熱を発するエンジン7等の機器(熱源)を覆っているから、エンジン7等が発する熱は、機器収容室5Aと一緒にフロア部材15を暖める。つまり、外気が低温である場合に、直接外気と触れる右面部16Dに比べて、フロア部材15の方が温度が高くなる。そのため、後分割部材34は、相対的に温度の低い右面部16Dに取り付けられるよりも、相対的に温度の高いフロア部材15に取り付けられた方が熱を奪われ難い。よって、後分割部材34がフロア部材15に取り付けられることにより、後分割部材34および後分割部材34の内部を流通する暖気を冷め難くすることができる。
【0022】
キャブボックス16は、フロア部材15と共にキャブ14を構成している。キャブボックス16は、フロア部材15上にオペレータの居住空間を形成している。図1図2図4に示すように、キャブボックス16は、前面部16A、後面部16B、左面部16C、右面部16Dおよび天面部16Eによりボックス状に形成されている。また、前面部16Aと左面部16Cとの間には、上下方向に延びて左前ピラー16Fが設けられ、前面部16Aと右面部16Dとの間には、上下方向に延びて右前ピラー16Gが設けられ、後面部16Bと左面部16Cとの間には、上下方向に延びて左後ピラー16Hが設けられ、後面部16Bと右面部16Dとの間には、上下方向に延びて右後ピラー16Jが設けられている。また、キャブボックス16の左面部16Cには、前後方向の中間部から前側の乗降口を開閉するドア16K(図1図2参照)が設けられている。
【0023】
図6に示すように、右面部16Dは、フロア部材15の運転席台座15Bのステップ形状に合わせて、後側部位16D1が熱交換装置9よりも高く形成され、前側部位16D2が足載せ部15Aまで低く形成されている。図7に示すように、右面部16Dは、例えば、複数枚の板体を組み合わせたパネル材として形成されている。なお、前面部16A、後面部16B、左面部16Cも同様の構造を持ったパネル材によって形成されている。また、各ピラー16F~16Jは、異形なパイプ部材として形成されている。
【0024】
前窓17は、キャブボックス16の前面部16Aに設けられている。前窓17は、オペレータに広い前方視界を提供するために、前面部16Aの下部から上部までの広範囲に設けられている。前窓17は、透明な窓ガラスとして形成されている。
【0025】
後窓18は、キャブボックス16の後面部16Bに設けられている。左窓19は、キャブボックス16の左面部16Cに設けられている。さらに、右窓20は、キャブボックス16の右面部16Dの上側に設けられている。そして、後窓18、左窓19、右窓20は、透明な窓ガラスとして形成されている。
【0026】
図4に示すように、右窓20は、右前ピラー16Gと右後ピラー16Jとの間に配置されている。右窓20は、オペレータに広い右方視界を提供するために、右面部16Dの後下部から上部までの広範囲に設けられている。右窓20の下端の位置は、後述する運転席21の背もたれ21Bを立てた状態で、背もたれ21Bの上下方向の中間部の上側寄りに配置されている。
【0027】
図2に示すように、運転席21は、フロア部材15の運転席台座15B上に設けられている。これにより、運転席21は、キャブボックス16内の後側に配置されている。運転席21は、オペレータが座る座面21Aと、座面21Aの後部から立ち上がった背もたれ21Bと、を備えている。背もたれ21Bは、前後方向に回動することができ、着座姿勢を自由に設定することができる。
【0028】
作業用の左操作レバー装置22は、運転席21の座面21Aの左側に設けられている。左操作レバー装置22は、前後方向に延びたコンソール22Aの前側に、作業装置4等を動作させるときにオペレータによって操作される操作レバー22Bを備えている。
【0029】
操作装置としての作業用の右操作レバー装置23は、運転席21の座面21Aの右側に設けられている。右操作レバー装置23は、前後方向に延びたコンソール23Aの前側に、作業装置4等を動作させるときにオペレータによって操作される操作レバー23Bを備えている。コンソール23Aは、キャブボックス16の右面部16Dから左側に離れた位置に配置されている。これにより、右面部16Dとコンソール23Aとの間には、後述の接続ダクト32を配置するのに十分な空間を形成することができる。具体的には、右面部16Dとコンソール23Aとの間は、接続ダクト32の左右方向の幅寸法よりも大きな寸法をもって離間している。
【0030】
操作装置としてのスイッチボックス24は、右操作レバー装置23の後側に配置され、フロア部材15に取り付けられている。具体的には、スイッチボックス24は、上面24Aに各種スイッチ、レバー、ランプを備えたボックス体からなり、キャブボックス16の右面部16Dと運転席21の背もたれ21Bとの間に配置されている。スイッチボックス24の上面24Aの位置は、右窓20、右操作レバー装置23のコンソール23Aの上面よりも低い位置に設定されている。
【0031】
走行用のレバー・ペダル装置25(図2図3参照)は、下部走行体2を走行させるときにオペレータによって操作されるもので、フロア部材15の足載せ部15Aの前側に設けられている。
【0032】
暖房装置26は、キャブ14内に暖気を供給するものである。暖房装置26は、後述の外気導入ダクト27を通じて吸い込んだ空気をヒータコアで暖めてブロア(いずれも図示せず)でキャブ14内に供給する。暖房装置26は、例えば、フロア部材15の右側に右面部16Dに対面して設けられている。
【0033】
暖房装置26は、例えば、エンジン7を冷却して温度上昇した冷却水が流通するヒータコアと、外部から吸い込んだ空気をヒータコアに向けて送風するブロア(いずれも図示せず)と、を備えている。これにより、暖房装置26は、ブロアによって外部から吸込んだ空気をヒータコアで暖めて(加熱して)吐出することができる。従って、暖房装置26は、ブロアの風量を増減させることで、キャブ14内の温度を調整することができる。なお、暖房装置26は、電熱線等を用いて空気を暖める電気式とすることもできる。
【0034】
暖房装置26は、上面の後側が吸込部26Aとなり、前側が吐出部26Bとなっている。吸込部26Aには、外気導入ダクト27が接続されている。また、吐出部26Bには、後述する吹出装置28の吐出ダクト29が接続されている。
【0035】
外気導入ダクト27は、キャブ14の右側に設けられている。外気導入ダクト27は、外気を暖房装置26に導くものである。外気導入ダクト27は、図5に示すように、外気の流れ方向の上流側が導入口27Aとなって外気流入室10の上部に開口している。一方、外気流入室10の上部から前側に向けて斜め下側に延びた下流側は、接続口27Bとなって暖房装置26の吸込部26Aに接続されている。外気導入ダクト27のうち、運転席21の右側に位置する長さ方向の中間部位は、接続ダクト32の下側に近接した位置を接続ダクト32に沿って延びている。導入口27Aには、外気に含まれる塵埃等を捕らえて除去するためのフィルタ27Cが装着されている。導入口27Aは、熱交換装置9よりも高い位置に配置されている。
【0036】
外気導入ダクト27は、例えば、導入口27Aと暖房装置26との間を直線状に結ぶダクトとして形成されている。従って、外気導入ダクト27は、導入口27Aと暖房装置26との間を短い距離で接続することができる。これにより、外気導入ダクト27では、空気が流れるときの抵抗が小さくなるから、外気導入ダクト27は、空気を円滑に流通させることができる。
【0037】
次に、本実施形態の特徴部分となる吹出装置28の構成、機能等について詳しく説明する。
【0038】
吹出装置28は、キャブ14内に設けられている。吹出装置28は、暖房装置26から供給される暖気をキャブ14内に吹き出すものである。吹出装置28は、後述の吐出ダクト29、前側デフロスタ30、後側デフロスタ31、接続ダクト32を備えている。
【0039】
吐出ダクト29は、暖房装置26の前側に位置して吐出部26Bに接続されている。吐出ダクト29は、暖房装置26の吐出部26Bの前部から上側に延びた角筒体として形成されている。また、吐出ダクト29の左面には、前窓17や運転席21に座ったオペレータの脚に向けて調和空気を吹き付ける吹出口29A,29Bが設けられている。さらに、吐出ダクト29の上部には、前側デフロスタ30が取り付けられている。
【0040】
前側デフロスタ30は、キャブ14の右側、具体的には、キャブ14の右前角部に配置されている。前側デフロスタ30は、吐出ダクト29の上部に取り付けられている。前側デフロスタ30は、例えば、右窓20の下端よりも僅かに低い高さ位置に配置されている。前側デフロスタ30は、右前ピラー16Gの左斜め後側に配置されている。
【0041】
前側デフロスタ30は、吐出ダクト29の上部に取り付けられた取付筒部30Aと、取付筒部30A上に水平方向に回転可能に設けられた回転筒部30Bと、回転筒部30Bに設けられた暖気の吹出口30Cと、を備えている。吹出口30Cは、斜め上側にも暖気を吹き出すことができるように、斜面状に形成されている。また、吹出口30Cには、暖気の吹き出し方向を上下に調整するためのルーバ(図示せず)が設けられている。これにより、前側デフロスタ30は、前後方向、左右方向、上下方向の様々な方向に暖気を吹き出すことができる。
【0042】
後側デフロスタ31は、キャブ14の右側、具体的には、キャブ14の右後角部に配置されている。後側デフロスタ31は、後述の接続ダクト32を構成する後分割部材34の後部34Bの上側に取り付けられている。後側デフロスタ31は、少なくとも一部分が後窓18の下端、右窓20の下端よりも高い位置に配置されている。後側デフロスタ31は、右後ピラー16Jの左斜め前側に配置されている。
【0043】
後側デフロスタ31は、前側デフロスタ30と同様に構成されている。具体的には、後側デフロスタ31は、後分割部材34の後部34B上に取り付けられた取付筒部31Aと、取付筒部31A上に水平方向に回転可能に設けられた回転筒部31Bと、回転筒部31Bに設けられた暖気の吹出口31Cと、を備えている。吹出口31Cは、斜め上側にも暖気を吹き出すことができるように、斜面状に形成されている。また、吹出口31Cには、暖気の吹き出し方向を上下に調整するためのルーバ(図示せず)が設けられている。これにより、後側デフロスタ31は、前後方向、左右方向、上下方向の様々な方向に暖気を吹き出すことができる。
【0044】
図4図6に示すように、接続ダクト32は、キャブ14内に位置し、キャブボックス16の右面部16Dと運転席21との間で、右面部16Dに沿って前後方向に延びて設けられている。接続ダクト32は、暖気を後側デフロスタ31に導くもので、吐出ダクト29を介して前側デフロスタ30と後側デフロスタ31とを接続している。具体的には、接続ダクト32は、前側が吐出ダクト29に接続され、後側が後側デフロスタ31に接続されている。この上で、接続ダクト32は、キャブボックス16の右面部16Dおよび左面部16Cから離間した位置に、一部がキャブ14内に露出して配置されている。また、接続ダクト32は、操作装置としての右操作レバー装置23、スイッチボックス24よりも高く、右窓20よりも低い位置に配置されている。
【0045】
接続ダクト32は、キャブ14内の前側に配置された吐出ダクト29から後側の後面部16Bに向け、斜め上側に傾斜して設けられている。接続ダクト32は、前後方向の途中位置、例えば、スイッチボックス24の前部位置で分割されている。これにより、接続ダクト32は、前分割部材33と後分割部材34とにより構成されている。
【0046】
前分割部材33は、接続ダクト32の上流側となる前側に位置している。前分割部材33は、円筒状のホースとして形成されている。前分割部材33は、前側に向けて斜め下側に延びた外気導入ダクト27に沿うように、後側に向けて斜め上側に延びている。また、前分割部材33の前部33Aは、暖房装置26の上側近傍で吐出ダクト29の後面に接続されている。さらに、前分割部材33の後部33Bは、スイッチボックス24の前部位置(右操作レバー装置23のコンソール23Aの位置)で後分割部材34の前部34Aに接続されている。
【0047】
これにより、前分割部材33と外気導入ダクト27とは、近接して並んだ状態でコンパクトに配置することができる。一方で、前分割部材33は、円筒状のホースとして形成しているから、外気導入ダクト27との接触部位を小さく抑えることができる(線接触状態)。これにより、外気導入ダクト27内を流通する外気によって前分割部材33内を流通する暖気の温度が低下するのを抑制することができる。
【0048】
後分割部材34は、接続ダクト32の下流側となる後側に位置している。後分割部材34は、前分割部材33の後側に連続するように、後側に向けて斜め上側に延びている。後分割部材34は、前部34Aがスイッチボックス24の前部位置で前分割部材33の後部33Bに接続されている。一方、後分割部材34の後部34Bは、キャブ14内の右後の角部で後側デフロスタ31を取り付けるための取付台となっている。ここで、図4に示すように、接続ダクト32の一部となる後分割部材34は、長さ方向の中間部から後側がスイッチボックス24の上面24Aよりも高い位置に配置されている。これにより、後分割部材34は、オペレータの右腕や右腰等に対面するようにキャブ14内に露出している。
【0049】
図7に示すように、後分割部材34は、キャブボックス16の右面部16Dとスイッチボックス24との間に配置されている。また、後分割部材34は、キャブボックス16の右面部16Dから離間した位置に配置されている。具体的には、後分割部材34は、右面部16Dと離間寸法Sをもって離間している。従って、後分割部材34と右面部16Dとの間には、離間寸法Sの厚みをもって空気による断熱層を形成することができる。これにより、後分割部材34内を流通する暖気の熱は、右面部16D側に逃げ難くなるから、暖気は、設定温度を維持した状態で後側デフロスタ31に供給することができる。
【0050】
後分割部材34は、四角形状の筒体(管体)として形成されている。また、角筒状のダクトとして形成された後分割部材34は、スイッチボックス24と対面する鉛直方向の側面、即ち、左右の側面が長辺部34Cとなっている。一方、後分割部材34は、水平方向の側面、即ち、上下の側面が短辺部34Dとなっている。長辺部34Cの上下方向の長さ寸法は、短辺部34Dの左右方向の長さ寸法よりも長く設定されている。これにより、後分割部材34は、上下方向に長尺な長方形状の筒体として形成されている。
【0051】
従って、後分割部材34は、運転席21に座ったオペレータの右腕や右腰等に対面するように広い長辺部34Cを配置することができる。この構造では、後分割部材34は、内部を流通する暖気から発せられる輻射熱を広い長辺部34Cからオペレータの右腕や右腰等に向けて供給することができる。これにより、暖房装置26は、前側デフロスタ30、後側デフロスタ31等から吹き出される暖気だけではなく、接続ダクト32からの輻射熱も利用してオペレータを暖めることができる。
【0052】
さらに、図8に示すように、後分割部材34は、前部34Aと後部34Bとに複数のブラケット34Eを有している。そして、各ブラケット34Eは、例えば、フロア部材15のダクトブラケット15C、スイッチボックス24等にボルト止めされている。これにより、後分割部材34は、キャブボックス16の右面部16Dから離間した位置でフロア部材15にブラケット34Eを介して取り付けることができる。なお、後分割部材34は、ブラケット34Eを削除し、フロア部材15に直接的に取り付ける構成としてもよい。
【0053】
本実施形態による油圧ショベル1は、上述の如き構成を有するもので、次に、その動作について説明する。
【0054】
オペレータは、キャブ14内に搭乗し、運転席21に着座する。運転席21に着座したオペレータは、走行用のレバー・ペダル装置25を操作することにより、下部走行体2を走行させることができる。一方、オペレータは、作業用の左操作レバー装置22の操作レバー22Bと右操作レバー装置23の操作レバー23Bとを操作することにより、上部旋回体3を旋回させたり、作業装置4を回動させたりして土砂の掘削作業等を行うことができる。
【0055】
また、寒冷地、冷凍施設のように作業現場の温度が低い場合には、暖房装置26(ブロア)を起動して暖気の温度、風量を設定する。暖房装置26は、外気導入ダクト27から外気を吸い込み、ヒータコアで暖めた後に、吐出ダクト29に吐出する。吐出ダクト29に吐出された暖気の一部は、吹出口29A,29B、前側デフロスタ30の吹出口30Cからキャブ14内の前側空間に吹き出される。また、吐出ダクト29に吐出された暖気の一部は、接続ダクト32内を通って後側デフロスタ31に供給され、吹出口31Cからキャブ14内の後側空間に吹き出される。これにより、暖房装置26は、キャブ14内を暖めて作業環境を良好にすることができる。
【0056】
かくして、本実施形態によれば、キャブボックス16の右面部16Dと運転席21との間で、前後方向に延び、前側デフロスタ30と後側デフロスタ31に接続されて、暖気を後側デフロスタ31に導く接続ダクト32を備えている。この上で、接続ダクト32は、一部がキャブ14内に露出して配置され、右面部16Dおよび左面部16Cから離間した位置でフロア部材15に取り付けられている。
【0057】
従って、接続ダクト32(後分割部材34)と右面部16Dとの間には、離間寸法Sの厚みをもって空気による断熱層を形成することができる。これにより、接続ダクト32内を流通する暖気の熱が右面部16D側に逃げるのを抑制できるから、暖気は、設定温度を維持した状態で後側デフロスタ31に供給することができる。しかも、接続ダクト32の一部(後分割部材34)は、キャブ14内の右側に露出しているから、接続ダクト32の内部を流通する暖気から発せられる輻射熱をオペレータの右腕や右腰等に向けて供給することができる。
【0058】
この結果、キャブ14内を暖房するときには、必要以上に空気を暖める(設定温度を高めに設定する)必要がなくなるから、暖房効率を向上することができる。しかも、前側デフロスタ30、後側デフロスタ31等から吹き出される暖気だけではなく、接続ダクト32からの輻射熱も利用してオペレータを暖めることができるから、この点でも暖房効率を向上することができる。
【0059】
また、運転席21の右側に配置された操作装置としての右操作レバー装置23、スイッチボックス24と、キャブボックス16の右面部16Dの上側に設けられた右窓20と、を備えている。接続ダクト32(後分割部材34)の一部は、操作装置としてのスイッチボックス24よりも高く、右窓20よりも低い位置に配置されている。これにより、接続ダクト32の一部は、オペレータの右腕や右腰等に対面するようにキャブ14内に露出させることができ、接続ダクト32からの輻射熱でオペレータの右腕や右腰等を暖めることができる。
【0060】
また、デフロスタは、キャブ14内の前側に配置された前側デフロスタ30と後側に配置された後側デフロスタ31とからなり、接続ダクト32は、前側デフロスタ30と後側デフロスタ31とを接続している。これにより、接続ダクト32を通じて前側デフロスタ30と後側デフロスタ31との両方から暖気を吹き出すことができる。
【0061】
一方、キャブ14の右側には、外気を暖房装置26に導く外気導入ダクト27が設けられ、接続ダクト32は、前後方向の途中位置で分割された前分割部材33と後分割部材34とにより構成され、前分割部材33は、外気導入ダクト27に沿って延びる円筒状のホースとして形成されている。従って、前分割部材33と外気導入ダクト27とは、近接して並んだ状態でコンパクトに配置することができる。また、円筒状のホースからなる前分割部材33は、外気導入ダクト27との接触部位を小さく抑えることができるから、外気導入ダクト27内を流通する外気によって前分割部材33内を流通する暖気の温度が低下するのを抑制することができる。これにより、暖房効率を向上することができる。
【0062】
また、接続ダクト32は、前後方向の途中位置で分割された前分割部材33と後分割部材34とにより構成され、後分割部材34は、スイッチボックス24と対面する鉛直方向の側面が長尺となる角筒状のダクトとして形成されている。従って、後分割部材34は、鉛直方向の側面が長尺な面を、運転席21に座ったオペレータの右腕や右腰等に対面させることができる。この構造では、後分割部材34は、内部を流通する暖気から発せられる輻射熱をオペレータに向けて効率よく供給することができる。これにより、暖房装置26は、前側デフロスタ30、後側デフロスタ31等から吹き出される暖気だけではなく、接続ダクト32からの輻射熱も利用してオペレータを暖めることができる。
【0063】
さらに、旋回フレーム5に設けられ、エンジン7および熱交換装置9を格納する機器収容室5Aを備え、フロア部材15は、キャブ14と機器収容室5Aを区画する隔壁である。この場合、外気が低温である場合に、直接外気と触れる右面部16Dに比べて、フロア部材15の方が温度が高くなる。そのため、後分割部材34は、相対的に温度の低い右面部16Dに取り付けられるよりも、相対的に温度の高いフロア部材15に取り付けられた方が熱を奪われ難い。よって、後分割部材34がフロア部材15に取り付けられることにより、後分割部材34および後分割部材34の内部を流通する暖気を冷め難くすることができる。
【0064】
なお、実施形態では、接続ダクト32は、前分割部材33と後分割部材34の2部材から形成した場合を例示している。しかし、本発明はこれに限らず、例えば、接続ダクトは、1部材または3部材以上から形成してもよい。
【0065】
また、実施形態では、接続ダクト32は、キャブボックス16の左面部16Cから乗降するために、右面部16Dと運転席21との間に配置している。しかし、本発明はこれに限らず、キャブボックスの右面部から乗降するキャブでは、接続ダクト32を左面部と運転席との間に配置してもよい。
【0066】
さらに、実施形態では、建設機械としてクローラ式の油圧ショベル1を例に挙げて説明した。しかし、本発明はこれに限るものではなく、例えば、ホイール式の下部走行体を備えた油圧ショベルに適用してもよい。さらに、例えば、ホイルローダ、油圧クレーン等の他の建設機械にも広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0067】
1 油圧ショベル(建設機械)
5 旋回フレーム(フレーム)
5A 機器収容室
7 エンジン(原動機)
9 熱交換装置
14 キャブ
15 フロア部材(下面部)
16 キャブボックス
16C 左面部
16D 右面部
21 運転席
23 右操作レバー装置(操作装置)
24 スイッチボックス(操作装置)
26 暖房装置
27 外気導入ダクト
28 吹出装置
30 前側デフロスタ
31 後側デフロスタ
32 接続ダクト
33 前分割部材
34 後分割部材
34C 長辺部
34D 短辺部
S 離間寸法
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8