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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143464
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】表示体
(51)【国際特許分類】
   G09F 9/00 20060101AFI20241003BHJP
   G02B 5/02 20060101ALI20241003BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20241003BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20241003BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G09F9/00 313
G02B5/02 B
G02B5/00 Z
B32B7/023
B32B27/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056170
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000102980
【氏名又は名称】リンテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108833
【弁理士】
【氏名又は名称】早川 裕司
(74)【代理人】
【識別番号】100162156
【弁理士】
【氏名又は名称】村雨 圭介
(74)【代理人】
【識別番号】100176407
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 理啓
(72)【発明者】
【氏名】倉本 達己
(72)【発明者】
【氏名】福島 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】片桐 麦
(72)【発明者】
【氏名】草間 健太郎
【テーマコード(参考)】
2H042
4F100
5G435
【Fターム(参考)】
2H042AA02
2H042AA03
2H042AA10
2H042AA19
2H042AA26
2H042BA02
2H042BA12
2H042BA15
2H042BA20
4F100AA21
4F100AK25
4F100AK42
4F100AK51
4F100AL01
4F100AR00A
4F100AR00B
4F100AR00C
4F100BA02
4F100BA03
4F100BA07
4F100BA44A
4F100DD06
4F100DD06A
4F100DD06C
4F100DE01
4F100EJ08
4F100EJ54
4F100GB48
4F100JB14
4F100JN18A
4F100JN18C
4F100YY00A
4F100YY00C
5G435AA01
5G435BB04
5G435BB05
5G435BB12
5G435BB13
5G435FF06
5G435GG17
5G435HH04
(57)【要約】
【課題】視認角度の違いによる輝度の変化が良好に均一化した表示体を提供する。
【解決手段】屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた規則的内部構造を有するとともに、光拡散微粒子を含有する、少なくとも一層の光拡散制御層11と、光拡散制御層11の片面側に積層された表示装置12とを備える表示体1であって、表示装置12を点灯させた状態において、表示体1における光拡散制御層11側の面から0.3cmの位置にて、前記面に対して垂直な方向を0°として-70°から70°の範囲で測定される輝度分布における、輝度の角度に対する傾きの最大値(最大傾き)の、前記面に対して垂直な方向に出射する光の輝度に対する割合(最大傾き/0°輝度)が、0.01以上、0.35以下である表示体1。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた規則的内部構造を有するとともに、光拡散微粒子を含有する、少なくとも一層の光拡散制御層と、
前記光拡散制御層の片面側に積層された表示装置と
を備える表示体であって、
前記表示装置を点灯させた状態において、前記表示体における前記光拡散制御層側の面から0.3cmの位置にて、前記面に対して垂直な方向を0°として-70°から70°の範囲で測定される輝度分布における、輝度の角度に対する傾きの最大値(最大傾き)の、前記面に対して垂直な方向に出射する光の輝度に対する割合(最大傾き/0°輝度)が、0.01以上、0.35以下である
ことを特徴とする表示体。
【請求項2】
前記規則的内部構造は、屈折率が異なる複数の板状領域をシート面に沿った任意の一方向に交互に配置してなるルーバー構造であることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【請求項3】
前記板状領域における長手方向と直交する方向は、前記光拡散制御層の厚さ方向に対して傾斜していることを特徴とする請求項2に記載の表示体。
【請求項4】
前記表示体は、前記光拡散制御層を二層以上備えており、
前記板状領域の傾斜の方向は、複数の前記光拡散制御層同士において異なっている
ことを特徴とする請求項3に記載の表示体。
【請求項5】
前記表示装置を点灯させた状態において、前記表示体における前記光拡散制御層側の面から0.3cmの位置にて測定される輝度について、前記面に対して垂直な方向に出射する光の輝度に対する、前記面に対して45°の方向に出射する光の輝度の割合(45°輝度/0°輝度)は、50%以上、99%以下であることを特徴とする請求項1に記載の表示体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の表示体(ディスプレイ)、例えば、テレビ、パソコン用モニター、デジタルサイネージ、スマートフォン、タブレット端末等の表示体は、一般的に、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)装置等の表示装置を備えるものとなっている。
【0003】
上述した表示装置は、通常、正面方向(表示面に対して垂直な方向)から見たときの明るさに比べて、斜め方向から見たときの明るさが低下する傾向にある。
【0004】
このような視認角度の違いによる明るさの違いを均一化する目的で、光の入射角度によって光の拡散および透過を制御できる光学部材を使用した表示体が検討されている(例えば、特許文献1)。当該表示体では、表示装置の表示面に上記光学部材が積層されており、当該光学部材が、表示装置からの光を斜め方向にも拡散させ、その結果、視認者は、斜め方向から見た場合も所定の明るさで表示内容を視認することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-115421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示される表示体は、表示面を見る角度を、正面方向から斜め方向に徐々に変化させていったときに、ある角度で明るさが大きく低下するものであった。特許文献1に開示される表示体は、この点で、視認角度の違いによる輝度の変化の均一化が不十分であった。
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、視認角度の違いによる輝度の変化が良好に均一化した表示体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた規則的内部構造を有するとともに、光拡散微粒子を含有する、少なくとも一層の光拡散制御層と、前記光拡散制御層の片面側に積層された表示装置とを備える表示体であって、前記表示装置を点灯させた状態において、前記表示体における前記光拡散制御層側の面から0.3cmの位置にて、前記面に対して垂直な方向を0°として-70°から70°の範囲で測定される輝度分布における、輝度の角度に対する傾きの最大値(最大傾き)の、前記面に対して垂直な方向に出射する光の輝度に対する割合(最大傾き/0°輝度)が、0.01以上、0.35以下であることを特徴とする表示体を提供する(発明1)。
【0009】
上記発明(発明1)において、前記規則的内部構造は、屈折率が異なる複数の板状領域をシート面に沿った任意の一方向に交互に配置してなるルーバー構造であることが好ましい(発明2)。
【0010】
上記発明(発明2)において、前記板状領域における長手方向と直交する方向は、前記光拡散制御層の厚さ方向に対して傾斜していることが好ましい(発明3)。
【0011】
上記発明(発明3)において、前記表示体は、前記光拡散制御層を二層以上備えており、前記板状領域の傾斜の方向は、複数の前記光拡散制御層同士において異なっていることが好ましい(発明4)。
【0012】
上記発明(発明1)において、前記表示装置を点灯させた状態において、前記表示体における前記光拡散制御層側の面から0.3cmの位置にて測定される輝度について、前記面に対して垂直な方向に出射する光の輝度に対する、前記面に対して45°の方向に出射する光の輝度の割合(45°輝度/0°輝度)は、50%以上、99%以下であることが好ましい(発明5)。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る表示体は、視認角度の違いによる輝度の変化が良好に均一化している。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る表示体を示す断面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る表示体の別の例を示す断面図である。
図3】種々の表示体についての、視認角度と輝度との関係を示すグラフである。
図4】本発明における光拡散制御層の内部構造を模式的に示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について説明する。
図1には、本発明の一実施形態に係る表示体の一例の断面図が示される。本実施形態に係る表示体1は、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた規則的内部構造を有するとともに、光拡散微粒子を含有する、少なくとも一層の光拡散制御層11と、光拡散制御層11の片面側に積層された表示装置12とを備える。
【0016】
本実施形態に係る表示体1は、上述の通り、光拡散制御層11を少なくとも一層備えるものである。図1には、光拡散制御層11を一層備える表示体1が示されている。一方、図2には、二層の光拡散制御層(それぞれ光拡散制御層11aおよび光拡散制御層11b)を備える表示体1’が示されている。
【0017】
さらに、本実施形態に係る表示体1,1’では、表示装置12を点灯させた状態において、表示体1,1’における光拡散制御層11側の面(表示面)から0.3cmの位置にて、上記面に対して垂直な方向を0°として-70°から70°の範囲で測定される輝度分布における、輝度の角度に対する傾きの最大値(最大傾き)の、上記面に対して垂直な方向に出射する光の輝度に対する割合(最大傾き/0°輝度)が、0.01以上、0.35以下である。
【0018】
本実施形態に係る表示体1,1’は、表示面を斜めから方向から見た場合であっても十分な明るさで視認することができ、且つ、見る角度を正面方向から斜め方向に動かしていった場合に、明るさの急激な変化を認識することなく視認することができる。このような効果が得られる理由としては、以下が考えられる。但し、以下の理由に限られるものではない。
【0019】
図3は、種々の視認角度から表示体を見た場合における、視認角度(横軸)と輝度(縦軸)との関係を示すグラフである。ここで、横軸に係る視認角度とは、視認者(または測定機器)と表示面における任意の一点とを結ぶ線分と、表示面とのなす角を示すものである。また、縦軸に係る輝度は、視認角度0°の位置(正面)から見たときの輝度に対する割合として示されている。
【0020】
図3では、A~Cの3種の表示体のグラフが示されている。そのうち、Aで示される表示体は、光拡散制御層といった特別な光学素子を備えていない、表示装置のみからなる表示体である。Bで示される表示体は、先行技術としても存在するような、従来の光拡散制御層(屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた規則的内部構造を有するもの)が表示装置に積層されてなる表示体である。そして、Cで示される表示体は、本実施形態に係る表示体1,1’に相当するものであり、本実施形態における光拡散制御層(すなわち、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた規則的内部構造を有するとともに、光拡散微粒子を含有するもの)が表示装置に積層されてなるものである。
【0021】
表示体Aでは、視認角度を正面(0°)から斜め方向に変化させていくにつれて、輝度がなだらかに低下し、±60°付近においては、正面(0°)付近に比べて4割を切る輝度となっている。一方、表示体Bでは、表示装置から所定の方向(特に斜め方向)に出射する光が、従来の光拡散制御層によって適度に拡散されるものとなる。その結果、表示体Bでは、±60°付近における輝度が、正面(0°)付近に比べて5割ほどに維持されている。すなわち、表示体Bは、斜め方向(特に、45°~70°および-45°~-70°の範囲)から見た場合に、表示体Aに比べて明るく視認できるものとなっている。
【0022】
しかしながら、表示体Bは、10°付近~20°付近および-10°付近~-20°付近(破線で囲った範囲)において、視認角度の変化に対する輝度の変化が急激に生じることがわかる。すなわち、表示体Bでは、正面方向から斜め方向に視認角度を変化させた場合に、明るさが急激に暗くなる。
【0023】
一方、本実施形態に係る表示体に相当する表示体Cでは、斜め方向から見た場合の輝度の低下が大きく抑制されているとともに、表示体Bで見られたような輝度の急激な低下も生じていないものとなっている。これは、光拡散制御層中の上述した規則的内部構造の作用による、斜め方向から見た場合の輝度が向上する効果と、光拡散制御層に含有される光拡散微粒子の作用(全体的に光を散乱させる作用)による、輝度の急激な変化を緩和する効果とが組み合わさった結果であると考えられる。
【0024】
さらに、本実施形態に係る表示体は、最大傾き/0°輝度の値が0.01以上、0.35以下となっていることにより、視認角度の変化に対する輝度の急激な変化の発生が抑制される。この観点から、最大傾き/0°輝度は、0.05以上であることがより好ましく、特に0.10以上であることが好ましく、さらには0.15以上であることが好ましく、中でも0.16以上であることが好ましい。また、最大傾き/0°輝度は、0.30以下であることがより好ましく、特に0.25以下であることが好ましく、さらには0.22以下であることが好ましく、中でも0.20以下であることが好ましい。なお、上記最大傾き/0°輝度の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0025】
以上の結果、本実施形態に係る表示体は、視認角度の違いによる輝度の変化が良好に均一化したものとなっている。
【0026】
1.光拡散制御層
本実施形態における光拡散制御層11は、屈折率が相対的に低い領域中に屈折率が相対的に高い複数の領域を備えた規則的内部構造を有するとともに、光拡散微粒子を含有する限り、その具体的な内部構造や組成等は限定されない。
【0027】
(1)規則的内部構造
上述した規則的内部構造とは、屈折率が相対的に低い領域中に、複数の屈折率が相対的に高い領域が所定の規則性をもって配置されてなる内部構造をいうものである。例えば、光拡散制御層11の表面と平行な平面で切断した光拡散制御層11の断面をみた場合に、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い領域が、上記断面内の少なくとも1方向に沿って、同程度のピッチをもって繰り返して配置されてなる内部構造を指す。そして、ここにおける規則的内部構造は、屈折率が相対的に高い領域が光拡散制御層11の厚さ方向に延在してなるものである点で、一方の相が他方の相中に明確な規則性なく存在してなる相分離構造や、海成分中にほぼ球状の島成分が存在してなる海島構造とは区別されるものである。
【0028】
上記の規則的内部構造によれば、光拡散制御層11の表面に対して、所定の入射角度範囲内で入射した入射光を、所定の開き角をもって強く拡散しながら出射させることができる(このときの入射角度範囲を、「入射光拡散角度領域」という場合がある)。一方、上記入射角度範囲外の入射となる場合、拡散することなく透過させるか、または、入射角度範囲内の入射光の場合よりも弱い拡散にて出射させることができる。
【0029】
上記規則的内部構造の具体例としては、屈折率が異なる複数の板状領域をシート面に沿った任意の一方向に交互に配置してなるルーバー構造が挙げられる。図4には、光拡散制御層11内部のルーバー構造を模式的に示した斜視図が示される。図4に示されように、ルーバー構造では、屈折率が相対的に低い領域202中に屈折率が相対的に高い複数の板状領域201が配置されている。また、規則的内部構造の別の例としては、屈折率が相対的に低い領域中に、屈折率が相対的に高い複数の柱状物をシート膜厚方向に林立させてなるカラム構造が挙げられる。これらのうち、輝度の均一化をより良好に達成し易くなるという観点からは、規則的内部構造はルーバー構造であることが好ましい。
【0030】
上記ルーバー構造では、上記板状領域における長手方向と直交する方向が、光拡散制御層11の厚さ方向に対して傾斜していることが好ましい。また、上記カラム構造では、上記柱状物が、光拡散制御層11の厚さ方向に対して傾斜していることが好ましい。これにより、上述した最大傾き/0°輝度の値を満たし易くなり、輝度の均一化をより良好に達成し易いものとなる。さらに、本実施形態に係る表示体1,1’が、光拡散制御層11を二層以上備えている場合には、板状領域および柱状物の傾斜の方向は、複数の光拡散制御層11同士において異なっていることが好ましい。特に、表示体1,1’が光拡散制御層11を二層備えている場合には、板状領域および柱状物は正反対の方向に傾斜していることが好ましい。
【0031】
本実施形態における光拡散制御層11は、上述したルーバー構造およびカラム構造以外の構造を有していてもよい。例えば、光拡散制御層11は、規則的内部構造として、上述したルーバー構造における板状領域が、光拡散制御層11の厚さ方向の途中において屈曲してなる構造を有していてもよい。また、光拡散制御層11は、規則的内部構造として、上述したカラム構造における柱状物が、光拡散制御層11の厚さ方向の途中において屈曲してなる構造を有していてもよい。あるいは、光拡散制御層11は、ルーバー構造およびカラム構造や、上述した屈曲を有する構造を任意の組み合わせで積層してなる規則的内部構造を有したものであってもよい。
【0032】
(2)組成
本実施形態における光拡散制御層11の組成は、上述したような規則的内部構造を形成し易いという観点から、高屈折率成分と、当該高屈折率成分よりも低い屈折率を有する低屈折率成分と、光拡散微粒子とを含有する光拡散制御層用組成物を硬化させたものであることが好ましい。特に、高屈折率成分および低屈折率成分は、それぞれ、1個または2個の重合性官能基を有するものであることが好ましい。
【0033】
(2-1)高屈折率成分
上記高屈折率成分の好ましい例としては、芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルが挙げられ、特に複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましく挙げられる。複数の芳香環を含有する(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸ビフェニル、(メタ)アクリル酸ナフチル、(メタ)アクリル酸アントラシル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニル、(メタ)アクリル酸ビフェニルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ナフチルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸アントラシルオキシアルキル、(メタ)アクリル酸ベンジルフェニルオキシアルキル等、これらの一部がハロゲン、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化アルキル等によって置換されたもの等が挙げられる。これらの中でも、良好な規則的内部構造を形成し易いという観点から、(メタ)アクリル酸ビフェニルが好ましく、具体的には、o-フェニルフェノキシエチルアクリレート、o-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート等が好ましい。なお、本明細書において、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸及びメタクリル酸の両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0034】
高屈折率成分の(重量平均)分子量は、150~2500であることが好ましく、特に200~1500であることが好ましく、さらには250~1000が好ましい。これにより、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層11を形成し易くなる。なお、上記高屈折率成分が、分子構造に基づいて理論分子量を特定可能である場合には、高屈折率成分の(重量平均)分子量とは、当該理論分子量(重量平均分子量ではない分子量)を指すものとする。一方、上記高屈折率成分が、例えば高分子成分であることに起因して、上述した理論分子量が特定困難である場合には、高屈折率成分の(重量平均)分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値として得られる重量平均分子量をいうものとする。
【0035】
高屈折率成分の屈折率は、1.45~1.70であることが好ましく、特に1.50~1.65であることが好ましく、さらには1.56~1.59であることが好ましい。これにより、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層11を形成し易くなるとともに、上述した最大傾き/0°輝度の値および後述する物性を満たし易いものとなる。なお、本明細書における屈折率とは、光拡散制御層用組成物を硬化する前における所定の成分の屈折率を意味し、また、当該屈折率は、JIS K0062:1992に準じて測定したものである。
【0036】
光拡散制御層用組成物中の高屈折率成分の含有量は、低屈折率成分100質量部に対して、25~400質量部であることが好ましく、40~300質量部であることがより好ましく、特に80~250質量部であることが好ましく、さらには120~200質量部であることが好ましい。これにより、形成される光拡散制御層11の規則的内部構造において、高屈折率成分に由来する領域と低屈折率成分に由来する領域とが所望の割合で存在するものとなる。その結果、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層11を形成し易くなるとともに、後述する物性を満たし易いものとなる。
【0037】
(2-2)低屈折率成分
上記低屈折率成分の好ましい例としては、ウレタン(メタ)アクリレート、側鎖に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル系ポリマー、(メタ)アクリロイル基含有シリコーン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられるが、特にウレタン(メタ)アクリレートを使用することが好ましい。
【0038】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物、(b)ポリアルキレングリコール、および(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートから形成されるものであることが好ましい。
【0039】
上述した(a)イソシアナート基を少なくとも2つ含有する化合物の好ましい例としては、2,4-トリレンジイソシアナート、2,6-トリレンジイソシアナート、1,3-キシリレンジイソシアナート、1,4-キシリレンジイソシアナート等の芳香族ポリイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート等の脂肪族ポリイソシアナート、イソホロンジイソシアナート(IPDI)、水素添加ジフェニルメタンジイソシアナート等の脂環式ポリイソシアナート、およびこれらのビウレット体、イソシアヌレート体、さらにはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、ヒマシ油等の低分子活性水素含有化合物との反応物であるアダクト体(例えば、キシリレンジイソシアナート系3官能アダクト体)等が挙げられる。これらの中でも、脂環式ポリイソシアナートであることが好ましく、特にイソシアナート基を2つのみ含有する脂環式ジイソシアナートが好ましい。
【0040】
上述した(b)ポリアルキレングリコールの好ましい例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコール、ポリヘキシレングリコール等が挙げられ、中でも、ポリプロピレングリコールであることが好ましい。
【0041】
なお、(b)ポリアルキレングリコールの重量平均分子量は、2300~19500であることが好ましく、特に3000~14300であることが好ましく、さらには4000~12300であることが好ましい。
【0042】
上述した(c)ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの好ましい例としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0043】
上述した(a)~(c)の成分を材料としたウレタン(メタ)アクリレートの合成は、常法に従って行うことができる。このとき(a)~(c)の成分の配合割合は、ウレタン(メタ)アクリレートを効率的に合成する観点から、モル比にて、(a)成分:(b)成分:(c)成分=1~5:1:1~5の割合とすることが好ましく、特に1~3:1:1~3の割合とすることが好ましい。
【0044】
低屈折率成分の重量平均分子量は、3000~20000であることが好ましく、特に5000~15000であることが好ましく、さらには7000~13000であることが好ましい。これにより、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層11を形成し易くなるとともに、上述した最大傾き/0°輝度の値および後述する物性を満たし易いものとなる。
【0045】
低屈折率成分の屈折率は、1.30~1.59であることが好ましく、1.40~1.50であることがより好ましく、特に1.46~1.48であることが好ましい。これにより、所望の規則的内部構造を有した光拡散制御層11を形成し易くなるとともに、上述した最大傾き/0°輝度の値および後述する物性を満たし易いものとなる。
【0046】
(2-3)光拡散微粒子
上記光拡散微粒子としては、特に限定されないものの、後述する物性を満たし易くなる観点から、好ましい例としては、無機系微粒子、有機系微粒子、シリコーン樹脂のような、無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物からなるシリコーン系微粒子(例えばモメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製のトスパールシリーズ)、有機系樹脂とシリコーン樹脂とのハイブリッド微粒子などが挙げられる。光拡散微粒子は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
無機系微粒子としては、例えば、シリカ、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(ITO)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物;フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物などからなる微粒子が挙げられる。上記の中でも、金属酸化物が好ましく、特に酸化チタンまたは酸化亜鉛が好ましく、さらに酸化チタンが好ましい。なお、無機系微粒子の表面は、有機化合物等によって化学修飾されていてもよい。
【0048】
無機系微粒子の形状としては、真球状のような定形、不定形等のいずれであっても良いが、少量で光拡散性を効率的に発揮できる観点から、不定形であることが好ましい。
【0049】
本実施形態における無機系微粒子は、いわゆるナノ粒子であることが好ましい。具体的に、無機系微粒子の平均粒径は、10~1000nmであることが好ましく、50~700nmであることがより好ましく、特に100~500nmであることが好ましく、さらには200~300nmであることが好ましい。これにより、上述した最大傾き/0°輝度の値および後述する物性を満たし易くなり、所望の光拡散性を達成し易くなって、輝度の急激な変化をより抑制し易くなる。なお、無機系微粒子の平均粒径は、レーザー回折・散乱法によって測定したものとする。
【0050】
本実施形態における無機系微粒子の屈折率は、1.8~3であることが好ましく、2.0~2.9であることがより好ましく、特に2.2~2.8であることが好ましく、さらには2.5~2.7であることが好ましい。これにより、上述した最大傾き/0°輝度の値および後述する物性を満たし易くなり、所望の光拡散性を達成し易くなって、輝度の急激な変化をより抑制し易くなる。なお、光拡散微粒子の屈折率は、例えば次の方法により測定することができる。すなわち、スライドガラス上に微粒子を載せ、屈折率標準液を微粒子上に滴下し、カバーガラスを被せ試料を作製する。当該試料を顕微鏡で観察し、微粒子の輪郭が最も見づらくなった屈折率標準液の屈折率を微粒子の屈折率とする。
【0051】
有機系微粒子としては、例えば、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、エポキシ樹脂、それらの共重合体または混合物等が挙げられる。
【0052】
有機系微粒子、シリコーン系微粒子およびハイブリッド微粒子の形状としては、光拡散が均一な球状の微粒子が好ましい。これら微粒子の遠心沈降光透過法による平均粒径は、0.1~20μmであることが好ましく、1~10μmであることがより好ましく、3~7μmであることが特に好ましく、4~5μmであることがさらに好ましい。これにより、上述した最大傾き/0°輝度の値および後述する物性を満たし易くなり、所望の光拡散性を達成し易くなって、輝度の急激な変化をより抑制し易くなる。
【0053】
なお、上記遠心沈降光透過法による平均粒径は、微粒子1.2gとイソプロピルアルコール98.8gとを十分に撹拌したものを測定用試料とし、遠心式自動粒度分布測定装置(堀場製作所社製,CAPA-700)を使用して測定したものである。
【0054】
本実施形態における有機系微粒子、シリコーン系微粒子およびハイブリッド微粒子の屈折率は、1.2~3であることが好ましく、1.3~2であることがより好ましく、特に1.35~1.6であることが好ましく、さらには1.4~1.5であることが好ましい。これにより、上述した最大傾き/0°輝度の値および後述する物性が満たされ易くなり、所望の光拡散性を達成し易くなって、輝度の急激な変化をより抑制し易くなる。
【0055】
光拡散制御層用組成物中における光拡散微粒子の含有量は、光拡散微粒子として無機系微粒子を用いる場合、高屈折率成分および低屈折率成分の合計量100質量部に対して、0.001~10質量部であることが好ましく、0.01~5質量部であることがより好ましく、特に0.03~1質量部であることが好ましく、さらには0.06~0.7質量部であることが好ましく、中でも0.09~0.4質量部が好ましい。これにより、上述した最大傾き/0°輝度の値および後述する物性が満たされ易くなり、所望の光拡散性を達成し易くなって、輝度の急激な変化をより抑制し易くなる。
【0056】
また、光拡散制御層用組成物中における光拡散微粒子の含有量は、光拡散微粒子として有機系微粒子、シリコーン系微粒子またはハイブリッド微粒子を用いる場合、高屈折率成分および低屈折率成分の合計量100質量部に対して、0.001~10質量部であることが好ましく、0.01~7質量部であることがより好ましく、特に0.1~4質量部であることが好ましく、さらには0.5~2質量部であることが好ましく、中でも0.8~1.5質量部が好ましい。これにより、上述した最大傾き/0°輝度の値および後述する物性が満たされ易くなり、所望の光拡散性を達成し易くなって、輝度の急激な変化をより抑制し易くなる。
【0057】
(2-4)その他の成分
前述した光拡散制御層用組成物は、高屈折率成分、低屈折率成分および光拡散微粒子以外に、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、多官能性モノマー(重合性官能基を3つ以上有する化合物)、光重合開始剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、酸素吸収剤、帯電防止剤、重合促進剤、重合禁止剤、赤外線吸収剤、可塑剤、希釈溶剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
【0058】
上述した添加剤の中でも、光拡散制御層用組成物は、光重合開始剤を含有することが好ましい。これにより、所望の規則的内部構造を有する光拡散制御層11を効率的に形成し易いものとなる。
【0059】
光重合開始剤の例としては、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン-n-ブチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、アセトフェノン、ジメチルアミノアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-プロパン-1-オン、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル-2-(ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン、ベンゾフェノン、p-フェニルベンゾフェノン、4,4-ジエチルアミノベンゾフェノン、ジクロロベンゾフェノン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-ターシャリーブチルアントラキノン、2-アミノアントラキノン、2-メチルチオキサントン、2-エチルチオキサントン、2-クロロチオキサントン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、ベンジルジメチルケタール、アセトフェノンジメチルケタール、p-ジメチルアミン安息香酸エステル、オリゴ[2-ヒドロキシ-2-メチル-1-[4-(1-メチルビニル)フェニル]プロパン]等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0060】
光重合開始剤を使用する場合、光拡散制御層用組成物中の光重合開始剤の含有量は、高屈折率成分と低屈折率成分との合計量100質量部に対して、0.2~20質量部とすることが好ましく、特に0.5~15質量部とすることが好ましく、さらには1~10質量部とすることが好ましい。これにより、光拡散制御層11を効率的に形成し易いものとなる。
【0061】
光拡散制御層用組成物は、紫外線吸収剤を含有することも好ましい。これにより、所望の規則的内部構造(例えば屈曲構造)を有する光拡散制御層11を効率的に形成し易いものとなる。
【0062】
光拡散制御層用組成物が紫外線吸収剤を含有する場合、後述する光安定剤と併用することも好ましい。この理由は次の通りである。光拡散制御層11は、所定の条件下(たとえば、外光が照射される環境下で使用され、光拡散制御層11と、当該光拡散制御層11よりも外光入射側に位置する紫外線吸収層とを備えた積層体に用いられる場合等)において、経時的に液状化したり黄変する不具合が発生する場合がある。しかしながら、紫外線吸収剤および光安定剤を含有することにより、光拡散制御層11の液状化および黄変を抑制する効果が得られる。なお、本明細書における「外光」は、対象物(ここでは積層体)の外側から当該対象物に入射される光であって、直射日光、天空光、地物反射光の他、各種照明又はデバイスの光を含み、ガラスやプラスチック等の透光部材を透過した光も含まれる。
【0063】
紫外線吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シアノアクリレート系、サリチル酸エステル系等が挙げられ、1種を単独で使用してもよく、または2種以上を併用してもよい。中でも、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物またはトリアジン系化合物が好ましく、特にベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。これらの化合物は、前述した高屈折率成分および低屈折率成分との相溶性が良好であり、また、着色の程度も低い。
【0064】
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、2,2-ジヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン-5-スルホン酸水和物、2-ヒドロキシ-4-n-オクチルオキシベンゾフェノン等が好ましく挙げられる。ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2-(2-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)-2H-ベンゾトリアゾール、オクチル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]フェニル)プロピオネート、2-エチルヘキシル-3-[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-(5-クロロ-2H-ベンゾトリアゾール-2-イル]フェニル)プロピオネート、ベンゼンプロパン酸-3-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)-5-(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシ-アルキルエステル等が好ましく挙げられる。トリアジン系化合物としては、例えば、2,4-ビス[2-ヒドロキシ-4-ブトキシフェニル]-6-(2,4-ジブトキシフェニル)-1,3-5-トリアジン、2-[4,6-ジ(2,4-キシリル)-1,3,5-トリアジン-2-イル]-5-オクチルオキシフェノール等が好ましく挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0065】
紫外線吸収剤を使用する場合、光拡散制御層用組成物中における紫外線吸収剤の含有量は、0.001~5質量%であることが好ましく、0.01~1質量%であることがより好ましく、特に0.02~0.5質量%であることが好ましく、さらには0.06~0.1質量%であることが好ましい。これにより、光拡散制御層用組成物の紫外線照射による硬化も問題なく進行するとともに、所望の規則的内部構造(例えば屈曲構造)を有する光拡散制御層11を効率的に形成し易いものとなる。
【0066】
光拡散制御層用組成物は、光安定剤を含有することも好ましい。これにより、得られる光拡散制御層11は、上述した所定の条件下において、光拡散制御層11の液状化および黄変を抑制する効果を発揮するものとなる。特に、光拡散制御層用組成物は、光安定剤を含有する場合、液状化および黄変を抑制する効果が向上する観点から、上述した紫外線吸収剤と併用することが好ましい。
【0067】
光安定剤としては、特に限定されず、例えば、ヒンダードアミン系化合物からなる光安定剤、ベンゾフェノン系化合物からなる光安定剤、ベンゾトリアゾール系化合物からなる光安定剤等が挙げられる。これらの光安定剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの化合物は、前述した高屈折率成分および低屈折率成分との相溶性が良好であり、また、着色の程度も低い。
【0068】
上述した光安定剤の例の中でも、液状化および黄変抑制効果を発揮するものとなる観点から、ヒンダードアミン系化合物からなる光安定剤を使用することが好ましく、特にカーボネート骨格を有する低塩基性ヒンダードアミン系化合物(以下、「ヒンダードアミン系化合物CL」という場合がある。)であることが好ましい。なお、ヒンダードアミンとは、アミノ基の両隣に嵩高い置換基を有するアミンをいう。また、本明細書における「低塩基性」とは、塩基性が比較的低いことをいい、通常の「塩基性」とは区別される。具体的には、1気圧25℃の水中における塩基解離定数(pKb)が、好ましくは6以上であり、より好ましくは8以上であり、特に好ましくは10以上であり、さらに好ましくは11以上であることをいう。
【0069】
上記ヒンダードアミン系化合物CLは、下記一般式(I)
【化1】

からなる骨格を少なくとも1つ含む化合物であることが好ましい。
【0070】
上記の構造を有するヒンダードアミン系化合物CLは、光拡散制御層11の液状化および黄変の抑制効果に優れる。また、本実施形態におけるヒンダードアミン系化合物CLは、N-O-R骨格を有するものであることにより、低塩基性を良好に示すものとなり、前述した効果がより優れたものとなる。なお、N-O-R骨格ではなく、N-アルキル基骨格、特にN-CH骨格を有するヒンダードアミン系化合物は、塩基性を示す。
【0071】
上記ヒンダードアミン系化合物CLは、上記一般式(I)におけるRが、アルキル基であることが好ましい。当該アルキル基の炭素数は、1~30であることが好ましく、3~25であることがより好ましく、特に7~18であることが好ましく、さらには9~13であることが好ましい。Rがアルキル基であることにより、好ましい低塩基性を示すものとなり、当該アルキル基の炭素数が上記の範囲にあることにより、より好ましい低塩基性を示すものとなる。
【0072】
上記ヒンダードアミン系化合物CLは、上記一般式(I)からなる骨格を1個または2個以上有することが好ましく、2~10個有することがより好ましく、特に2~7個有することが好ましく、さらには2~4個有することが好ましく、2個有することが最も好ましい。上記一般式(I)からなる骨格は、ヒンダードアミン系化合物の末端に存在してもよいし、側鎖に存在してもよいし、末端および側鎖に存在してもよい。なお、ヒンダードアミン系化合物が上記一般式(I)からなる骨格を2個以上有する場合、各Rは同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0073】
上記ヒンダードアミン系化合物CLは、いずれかの位置にカーボネート骨格(-O-C(=О)-O-)を有するものであるが、上記一般式(I)からなる骨格における4位の炭素原子に、カーボネート骨格の末端の酸素原子が結合していることが好ましい。ヒンダードアミン系化合物CLは、この位置にカーボネート骨格を有することにより、光拡散制御層11の液状化および黄変の抑制効果により優れたものとなる。
【0074】
上記ヒンダードアミン系化合物CLとしては、下記構造式(A)
【化2】

で示される化合物であることが特に好ましい。
【0075】
上記構造式(A)で示される化合物におけるRは、上述した一般式(I)からなる骨格におけるRと同様である。上記構造式(A)中の2つのRは同一であってもよいし、異なっていてもよいが、同一であることが好ましい。
【0076】
光安定剤を使用する場合、光拡散制御層用組成物中における光安定剤の含有量は、0.01~10質量%であることが好ましく、0.1~5質量%であることがより好ましく、特に0.3~3質量%であることが好ましく、さらには0.5~2質量%であることが好ましい。これにより、上述した最大傾き/0°輝度の値および後述する物性を満たしながら、前述した液状化および黄変抑制効果を発揮するものとなる。
【0077】
光拡散制御層用組成物は、酸化防止剤を含有することも好ましく、特にヒンダードフェノール系酸化防止剤を含有することが好ましい。これにより、劣化しにくい良好な品質の光拡散制御層11を得ることができる。特に、上述した光安定剤と併用すると、得られる光拡散制御層11は、上述した所定の条件下において、光拡散制御層11の液状化および黄変を抑制する効果を発揮し易いものとなる。
【0078】
酸化防止剤を使用する場合、光拡散制御層用組成物中における酸化防止剤の含有量は、0.001~1質量%であることが好ましく、0.01~0.5質量%であることがより好ましく、特に0.02~0.1質量%であることが好ましい。これにより、上述した最大傾き/0°輝度の値および後述する物性を満たしながら、前述した液状化および黄変抑制効果を発揮するものとなる。
【0079】
(2-5)光拡散制御層用組成物の調製
光拡散制御層用組成物は、前述した高屈折率成分、低屈折率成分および光拡散微粒子、ならびに、所望により光重合開始剤等のその他の添加剤を均一に混合することで調整することができる。
【0080】
上記混合の際には、40~80℃の温度に加熱しながら撹拌し、均一な光拡散制御層用組成物を得てもよい。また、得られる光拡散制御層用組成物が所望の粘度となるように、希釈溶剤を添加して混合してもよい。
【0081】
(2-6)光拡散制御層の形成方法
光拡散制御層11の形成方法としては、従来公知の方法によって形成することができる。例えば、前述した光拡散制御層用組成物を調製し、第1の工程シートの片面に塗布し、塗膜を形成した後、上記塗膜における第1の工程シートとは反対側の面に、第2の工程シートを貼合する。そして、いずれかの工程シート越しに、上記塗膜に対して活性エネルギー線を照射して硬化させることにより、光拡散制御層12を形成することができる。また、上記第2の工程シートを貼合する代わりに、窒素雰囲気下にて上記塗膜に対して活性エネルギー線を照射し、当該塗膜を硬化させてもよい。上記工程シートとしては、例えば、樹脂製シートを使用することができ、また、当該樹脂製シートの少なくとも片面が剥離処理されてなる剥離シートを使用することができる。
【0082】
上記塗布の方法としては、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、バーコート法、ブレードコート法、ダイコート法、およびグラビアコート法等が挙げられる。また、光拡散制御層用組成物は、必要に応じて溶剤を用いて希釈してもよい。
【0083】
なお、上記活性エネルギー線とは、電磁波または荷電粒子線の中でエネルギー量子を有するものをいい、具体的には、紫外線や電子線などが挙げられる。活性エネルギー線の中でも、取扱いが容易な紫外線が特に好ましい。
【0084】
前述したルーバー構造を形成する場合には、活性エネルギー線の光源として線状光源を用い、積層体表面に対して幅方向(TD方向)にはランダムかつ流れ方向(MD方向)には略平行な帯状(ほぼ線状)の光を照射する。なお、上記光の照射角度を調整することで、ルーバー構造内に形成される板状領域の傾斜角度を調整することもできる。
【0085】
活性エネルギー線として紫外線を用いる場合、その照射条件としては、塗膜表面におけるピーク照度を0.1~200mW/cmとすることが好ましい。さらに、塗膜表面における積算光量を、5~300mJ/cmとすることが好ましい。また、上記積層体に対する、活性エネルギー線の光源の相対的な移動速度は、0.1~10m/分とすることが好ましい。
【0086】
なお、より確実な硬化を完了させる観点から、前述したような帯状の光を用いた硬化を行った後に、通常の活性エネルギー線(帯状の光に変換する処理を行っていない活性エネルギー線,散乱光)を照射することも好ましい。このとき、第2の工程シートを貼合する代わりに、窒素雰囲気下にて上記塗膜に対して活性エネルギー線を照射した場合には、塗膜表面がむき出しであるが、均一に硬化させる観点から、塗膜表面に対して、剥離シートを積層してもよい。
【0087】
(2-7)光拡散制御層の厚さ
光拡散制御層11の厚さは、20~700μmであることが好ましく、50~500μmであることがより好ましく、特に80~300μmであることが好ましく、さらには100~250μmであることが好ましく、中でも120~200μmであることが好ましい。これにより、上述した最大傾き/0°輝度の値および後述する物性が満たされ易くなり、所望の光拡散性を発揮し易いものとなる。また、光拡散制御層11の厚さが700μm以下であることで、打痕や潰れの発生を抑制し易いものとなる。
【0088】
2.表示装置
本実施形態における表示装置12は、内部に備わる光源により表示内容を表示することができるものであれば特に限定されない。表示装置12は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、電子ペーパー、電気泳動ディスプレイ、MEMSディスプレイ、固体結晶ディスプレイ等が挙げられる。また、これらのディスプレイにさらにタッチパネルが積層されたものであってもよい。
【0089】
3.その他の構成
本実施形態に係る表示体1,1’は、光拡散制御層11および表示装置12以外の部材を備えていてもよい。例えば、表示体1,1’は、少なくとも一層の透明基材を備えていてもよく、特に、表示体1,1’を保護する目的で、表示体1,1’の最外層側となる面に透明基材が積層されていてもよい。
【0090】
上記透明基材としては、プラスチックフィルム、プラスチック板、ガラス板等が挙げられる。なお、光拡散制御層11を形成する際に工程シートや剥離シートが使用される場合には、これらを上記透明基材として使用してもよい。
【0091】
上記プラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、セロファン、ジアセチルセルロースフィルム、トリアセチルセルロースフィルム、アセチルセルロースブチレートフィルム、ポリ塩化ビニルフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム、エチレン-酢酸ビニル共重合体フィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリメチルぺンテンフィルム、ポリスルフォンフィルム、ポリエーテルエーテルケトンフィルム、ポリエーテルスルフォンフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、アクリル樹脂フィルム、ポリウレタン樹脂フィルム、ノルボルネン系重合体フィルム、環状オレフィン系重合体フィルム、環状共役ジエン系重合体フィルム、ビニル脂環式炭化水素重合体フィルム等のプラスチックフィルムまたはそれらの積層フィルムが挙げられる。中でも、透明性、機械的強度等の面から、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリカーボネートフィルム等が好ましい。なお、SDGsの観点から、上記プラスチックフィルムを構成する材料として、バイオマス度の高い材料を用いてもよいし、リサイクルまたはリユースが可能な材料を用いてもよいし、リサイクルまたはリユースされた材料を用いてもよい。
【0092】
上記プラスチックフィルムの厚さは、ハンドリング性、透明性、機械的強度等の観点から、10~200μmであることが好ましく、15~150μmであることがより好ましく、特に20~100μmであることが好ましく、さらには25~80μmであることが好ましい。
【0093】
上記プラスチック板としては、特に限定されることなく、例えば、アクリル板、ポリカーボネート板等が挙げられる。プラスチック板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.2~10mmであり、好ましくは0.3~5mmであり、より好ましくは0.5~3mmである。
【0094】
上記ガラス板としては、特に限定されることなく、例えば、化学強化ガラス、無アルカリガラス、石英ガラス、ソーダライムガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、アルミノケイ酸ガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス等が挙げられる。ガラス板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.1~10mmであり、好ましくは0.15~5mmであり、より好ましくは0.2~3mmである。
【0095】
また、本実施形態に係る表示体1,1’は、光拡散制御層11および表示装置12の部材同士の固定のために、透明粘着剤層を備えていることも好ましい。当該透明粘着剤層を構成する粘着剤としては、透明性を有する限り特に限定されず、例えば、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤、シリコーン系粘着剤、ウレタン系粘着剤、ポリエステル系粘着剤、ポリビニルエーテル系粘着剤等が挙げられる。これらの中でも、所望の性能を発揮し易いという観点から、アクリル系粘着剤を使用することが好ましい。
【0096】
透明粘着剤層の厚さとしては、1~100μmであることが好ましく、特に5~60μmであることが好ましく、さらには10~30μmであることが好ましい。これにより、表示内容の優れた視認性と、部材同士の強固な固定とを両立し易いものとなる。
【0097】
4.表示体の物性
本実施形態に係る表示体1,1’から表示装置12を省略してなるもの(光拡散制御層12単層または二層以上の光拡散制御層12から構成される積層体)の全光線透過率は、60~100%であることが好ましく、66~99%であることがより好ましく、特に72~95%であることが好ましく、さらには74~90%であることが好ましい。これにより、他の光学特性(ヘイズ値等)を所望の値に調整しながらも、表示体1,1’が優れた視認性を有するものとなる。なお、上記全光線透過率の測定方法の詳細は、後述する試験例の通りである。
【0098】
本実施形態に係る表示体1,1’から表示装置12を省略してなるもの(光拡散制御層12単層または二層以上の光拡散制御層12から構成される積層体)のヘイズ値は、30~100%であることが好ましく、特に40~95%であることが好ましく、さらには50~90%であることが好ましい。これにより、輝度の均一化と、優れた視認性とを高いレベルで両立し易いものとなる。なお、上記ヘイズ値の測定方法の詳細は、後述する試験例の通りである。
【0099】
本実施形態に係る表示体1,1’では、表示面に対して垂直な方向(正面方向)に出射する光の輝度が、表示面から0.3cmの位置にて測定される値として、10~1200cd/mであることが好ましく、20~600cd/mであることがより好ましく、特に30~300cd/mであることが好ましく、さらには35~100cd/mであることが好ましく、中でも40~80cd/mであることが好ましい。
【0100】
また、本実施形態に係る表示体1,1’では、表示面に対して45°の方向に出射する光の輝度が、表示面から0.3cmの位置にて測定される値として、10~1200cd/mであることが好ましく、20~600cd/mであることがより好ましく、特に28~200cd/mであることが好ましく、さらには30~90cd/mであることが好ましく、中でも32~70cd/mであることが好ましい。
【0101】
さらに、本実施形態に係る表示体1,1’では、表示面に対して60°の方向に出射する光の輝度が、表示面から0.3cmの位置にて測定される値として、10~1200cd/mであることが好ましく、20~600cd/mであることがより好ましく、特に24~200cd/mであることが好ましく、さらには25~90cd/mであることが好ましく、中でも26~70cd/mであることが好ましい。
【0102】
本実施形態に係る表示体1,1’は、正面方向、45°方向および60°方向の輝度がそれぞれ上述した範囲であることで、良好に均一化した輝度によって表示することが可能となる。なお、上述した輝度の測定方法の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0103】
本実施形態に係る表示体1,1’では、表示面から0.3cmの位置において、表示面に対して垂直な方向を0°として-70°から70°の範囲で測定される輝度分布における、輝度の角度に対する傾きの最大値(最大傾き)が、0.2~2.5であることが好ましく、0.4~2であることがより好ましく、特に0.6~1.8であることが好ましく、さらには0.7~1.5であることが好ましく、中でも0.8~1.3であることが好ましい。これにより、より良好に均一化した輝度によって表示することが可能となる。
【0104】
本実施形態に係る表示体1,1’では、表示面に対して垂直な方向(正面方向)に出射する光の輝度の、表示装置のみの表示体から正面方向に出射する光の輝度に対する割合(表示体全体の0°輝度/表示装置のみの0°輝度)が、10~95%であることが好ましく、25~85%であることがより好ましく、特に35~75%であることが好ましく、さらには40~65%であることが好ましい。これにより、本実施形態に係る表示体1,1’が十分な輝度を示すものとなる。なお、これらの輝度は、表示面から0.3cmの位置にて測定される値であるものとし、その測定の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0105】
本実施形態に係る表示体1,1’では、表示面に対して垂直な方向(正面方向)に出射する光の輝度に対する、表示面に対して45°の方向に出射する光の輝度の割合(45°輝度/0°輝度)が、50~99%であることが好ましく、60~95%であることがより好ましく、特に65~90%であることが好ましく、さらには70~85%であることが好ましい。これにより、より良好に均一化した輝度によって表示することが可能となる。なお、これらの輝度は、表示面から0.3cmの位置にて測定される値であるものとし、その測定の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0106】
また、本実施形態に係る表示体1,1’では、表示面に対して垂直な方向(正面方向)に出射する光の輝度に対する、表示面に対して60°の方向に出射する光の輝度(60°輝度/0°輝度)の割合が、40~99%であることが好ましく、45~85%であることがより好ましく、特に50~75%であることが好ましく、さらには52~65%であることが好ましい。これにより、より良好に均一化した輝度によって表示することが可能となる。なお、これらの輝度は、表示面から0.3cmの位置にて測定される値であるものとし、その測定の詳細は、後述する試験例に記載の通りである。
【0107】
5.表示体の製造方法
本実施形態に係る表示体1,1’の製造方法は特に限定されず、例えば、光拡散制御層11および表示装置12(必要に応じて、透明基材および透明粘着剤層等)をそれぞれ形成・準備した後、所定の層構成となるように積層することで得ることができる。
【0108】
なお、本明細書において、「X~Y」(X,Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「X以上Y以下」の意と共に、「好ましくはXより大きい」或いは「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。また、「X以上」(Xは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはXより大きい」の意を包含し、「Y以下」(Yは任意の数字)と記載した場合、特に断らない限り「好ましくはYより小さい」の意も包含するものである。
【0109】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例0110】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0111】
〔実施例1〕
1.光拡散制御層用組成物の調製
ポリプロピレングリコールとイソホロンジイソシアナートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとを反応させて、重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレートを得た。o-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート60質量部と、上記ポリエーテルウレタンメタクリレート40質量部と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン8質量部と、光拡散微粒子としての酸化チタン微粒子(堺化学工業社製,製品名「R-62N」,平均粒径:0.26μm,屈折率:2.7)0.025質量部とを配合した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、光拡散制御組成物を得た。
【0112】
ここで、前述した重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて以下の条件で測定(GPC測定)した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量である。
<測定条件>
・測定装置:東ソー社製,HLC-8320
・GPCカラム(以下の順に通過):東ソー社製
TSK gel superH-H
TSK gel superHM-H
TSK gel superH2000
・測定溶媒:テトラヒドロフラン
・測定温度:40℃
【0113】
2.光拡散制御層の形成
得られた光拡散制御組成物を、長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ188μm;第1のPETフィルム;工程シートとしての役割も有する)の片面に塗布し、厚さ約200μmの塗膜を形成した。これにより、当該塗膜と第1のPETフィルムとからなる積層体を得た。
【0114】
続いて、得られた積層体を、コンベア上に載置した。このとき、積層体における塗膜側の面が上側となるとともに、第1のPETフィルムの長手方向がコンベアの流れ方向と平行になるようにした。そして、積層体を載置したコンベアに対して、線状の高圧水銀ランプに集光用のコールドミラーが付属した紫外線照射装置(アイグラフィックス社製,製品名「ECS-4011GX」)を設置した。当該装置は、帯状(ほぼ線状)に集光された紫外線を対象に照射することができる。なお、上記装置の設置の際には、上記高圧水銀ランプの長手方向と、コンベアの流れ方向とが直交するように上記紫外線照射装置を設置した。
【0115】
さらに、高圧水銀ランプの長手方向から眺めた場合において、積層体表面に対する法線を基準として、積層体に対して高圧水銀ランプから照射される紫外線の照射角度が33°となるように設定した。なお、ここにおける照射角度とは、積層体における高圧水銀ランプの直下の位置を基準として、コンベアの流れの下流側に向けて紫外線を照射した場合には、積層体表面に対する法線と当該紫外線とのなす鋭角をプラスの表記にて記載したものとし、コンベアの流れの上流側に向けて紫外線を照射した場合には、積層体表面に対する法線と当該紫外線とのなす鋭角をマイナスの表記にて記載したものとする。
【0116】
その後、コンベアを作動させて、上記積層体を1.0m/分の速度で移動させながら、塗膜表面におけるピーク照度2.5mW/cm、積算光量40.0mJ/cmの条件で紫外線を照射することにより、積層体中の塗膜を硬化させた(当該硬化を、便宜的に「一次硬化」という場合がある。)。
【0117】
続いて、積層体における塗膜側の面に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(第2のPETフィルム)を積層した後、当該フィルムを介して、塗膜に対し、ピーク照度190mW/cm、積算光量180mJ/cmの条件で紫外線(散乱光)を照射することで、積層体中の塗膜を硬化させた(当該硬化を、便宜的に「二次硬化」という場合がある。)。なお、上述したピーク照度および積算光量は、受光器を取り付けたUV METER(アイグラフィックス社製,製品名「アイ紫外線積算照度計UVPF-A1」)を上記塗膜の位置に設置して測定したものである。
【0118】
以上の一次硬化および二次硬化により、上述した塗膜が十分に硬化し、光拡散制御層となった。これにより、厚さ50μmの第2のPETフィルムと、厚さ200μmの光拡散制御層と、厚さ188μmの第1のPETフィルムとがこの順に積層されてなる積層体を得た。当該積層体は、2つ作製した。また、光拡散制御フィルムの厚さは、定圧厚さ測定器(宝製作所社製,製品名「テクロック PG-02J」)を用いて測定したものである。
【0119】
なお、上記のように、一次硬化の際に、塗膜の片面を空気に暴露した状態で紫外線を照射し、それにより塗膜を硬化させる方法を、表1では「空気暴露」と表記する。
【0120】
上述の通り形成した光拡散制御層の断面の顕微鏡観察等を行ったところ、光拡散制御層の内部に、図4に示されるように、複数の板状領域201が所定の間隔をもって複数平行に配置されたルーバー構造が形成されていることが確認された。また、上述した板状領域201における長手方向と直交する方向は、光拡散制御層の厚さ方向に対して傾斜していることが確認された。このルーバー構造は、光拡散制御フィルムの厚さ方向の途中において屈曲してなるものであった。
【0121】
3.透明粘着剤層の形成
アクリル酸2-エチルへキシル67.2質量部と、メタクリル酸メチル5質量部と、メタクリル酸8質量部と、酢酸ビニル18質量部と、アクリル酸0.4質量部と、4-ヒドロキシブチルアクリレート1.4質量部とを溶液重合法により重合させて、アクリル系共重合体を得た。当該アクリル系共重合体の重量平均分子量を前述した方法で測定したところ、82万であった。
【0122】
得られたアクリル系重合体100質量部と、架橋剤としてのイソシアネート系架橋剤(三井化学社製、製品名「タケネートD-165N」)0.47質量部とを溶媒中で混合し、粘着剤組成物の塗布液を得た。
【0123】
続いて、ポリエチレンテレフタレートフィルムの片面をシリコーン系剥離剤で剥離処理した剥離シート(厚さ:38μm)の剥離面に対して、上記の通り得られた粘着剤組成物の塗布液を塗布し、加熱により乾燥させることで、上記剥離シート上に、厚さ15μmの透明粘着剤層が形成されてなる積層体を得た。なお、当該積層体は、2つ作製した。
【0124】
4.表示体の形成
上記工程2.で得られた一つ目の積層体における第2のPETフィルムを剥離し、露出した光拡散制御層の露出面に対し、上記工程3.で得られた積層体における透明粘着剤層側の面を貼付した。これにより、第1のPETフィルム/光拡散制御層/透明粘着剤層/剥離シートという層構成を有する積層体(以下「積層体A」という場合がある。)を得た。
【0125】
続いて、上記工程2.で得られた二つ目の積層体から第2のPETフィルムを剥離し、光拡散制御層を露出させた。一方、上記積層体Aから剥離シートを剥離し、透明粘着剤層を露出させた。これらにより露出した、光拡散制御層および透明粘着剤層の露出面同士を貼付した。このとき、2つの光拡散制御層の積層する向きとしては、それらの製造時におけるコンベアの流れ方向が逆方向となるように積層した。これにより、第1のPETフィルム/光拡散制御層/透明粘着剤層/光拡散制御層/第1のPETフィルムという層構成を有する積層体(以下「積層体B」という場合がある。)を得た。
【0126】
さらに、上記積層体Bから一方の第1のPETフィルムを剥離し、露出した光拡散制御層の露出面に対し、上記工程3.で得られた二つ目の積層体における透明粘着剤層側の面を貼付した。これにより、第1のPETフィルム/光拡散制御層/透明粘着剤層/光拡散制御層/透明粘着剤層/剥離シートという層構成を有する積層体(以下「積層体C」という場合がある。)を得た。
【0127】
最後に、上記積層体Cから剥離シートを剥離し、露出した透明粘着剤層の露出面を、液晶表示装置としてのスマートフォン(SAMSUNG製,製品名「GALAXY S6」)の表示面に貼付した。さらに、第1のPETフィルムを剥離した。これにより、光拡散制御層/透明粘着剤層/光拡散制御層/透明粘着剤層/液晶表示装置という層構成を有する表示体を得た。
【0128】
〔実施例2~3、6、8および10〕
光拡散制御層の厚さ、および、光拡散制御層中の光拡散微粒子の配合量を表1に記載の通り変更した以外、実施例1と同様にして表示体を製造した。
【0129】
〔実施例4〕
低屈折率成分としての、ポリプロピレングリコールとイソホロンジイソシアナートと2-ヒドロキシエチルメタクリレートとを反応させて得られた重量平均分子量9,900のポリエーテルウレタンメタクリレート40質量部(固形分換算値;以下同じ)に対し、高屈折率成分としての、分子量268のo-フェニルフェノキシエトキシエチルアクリレート60質量部と、光重合開始剤としての2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン8質量部と、光拡散微粒子としてのシリコーン樹脂(無機と有機の中間的な構造を有するケイ素含有化合物)からなる微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン社製,製品名「トスパール145L」,平均粒径:4.5μm,屈折率:1.43)0.5質量部と、紫外線吸収剤としてのベンゾトリアゾール系化合物(BASF社製,製品名「チヌビン384-2」)0.08質量部と、光安定剤としての下記構造式(B)で示される、カーボネート骨格を有する低塩基性ヒンダードアミン系化合物(ヒンダードアミン系化合物CL,塩基解離定数pKb:11.3)1.0質量部と、酸化防止剤としてのヒンダードフェノール系酸化防止剤(ADEKA社製,「アデカスタブAO-50」)0.05質量部とを添加した後、80℃の条件下にて加熱混合を行い、光拡散制御層用組成物を得た。当該光拡散制御層用組成物を使用した以外は、実施例1と同様にして表示体を製造した。
【化3】
【0130】
〔実施例5〕
光拡散微粒子の含有量を表1に記載の通り変更した以外、実施例4と同様にして表示体を製造した。
【0131】
〔実施例7〕
実施例1と同様に調製した光拡散制御層用組成物を、長尺のポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ188μm;第1のPETフィルム;工程シートとしての役割も有する)の片面に塗布し、厚さ約135μmの塗膜を形成した。これにより、当該塗膜と第1のPETフィルムとからなる積層体を得た。続いて、当該積層体における塗膜側の面に、厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(第2のPETフィルム)の片面を積層し、第1のPETフィルムと、塗膜と、第2のPETフィルムとがこの順に積層されてなる積層体を得た。
【0132】
当該積層体について、実施例1と同様にして一次硬化および二次硬化を行い、厚さ50μmの第2のPETフィルムと、厚さ135μmの光拡散制御層と、厚さ188μmの第1のPETフィルムとがこの順に積層されてなる積層体を得た。当該積層体に備わる光拡散制御層を使用した以外、実施例1と同様にして表示体を製造した。
【0133】
なお、上記のように、塗膜を2枚のPETフィルムで挟んだ後に一次硬化を行う方法を、表1では「ギャップラミ」と表記する。
【0134】
〔実施例9〕
光拡散制御層の厚さを表1に記載の通り変更した以外、実施例7と同様にして表示体を製造した。
【0135】
〔実施例11〕
光拡散微粒子として、酸化チタン微粒子(堺化学工業社製,製品名「R-62N」,平均粒径:0.26μm,屈折率:2.7)1質量部で使用した以外、実施例4と同様にして表示体を製造した。
【0136】
〔比較例1〕
光拡散微粒子を使用しなかったこと以外、実施例1と同様にして表示体を製造した。
【0137】
〔試験例1〕(全光線透過率およびヘイズ値の測定)
実施例および比較例で作製した表示体における液晶表示装置を省略した積層体(二層の光拡散制御層からなる積層体)について、JIS K7361-1:1997に準じて、分光ヘイズメーター(日本電色工業社製,製品名「SH-7000」)を用いて全光線透過率(%)およびヘイズ値(%)を測定した。結果を表2に示す。
【0138】
〔試験例2〕(変角ヘイズの測定)
実施例および比較例で使用した光拡散制御層(単層)について、変角ヘイズメーター(村上色彩光学研究所社製,製品名「HAZEMETER HM-150N」)を用いて、ヘイズ値が60%以上となる入射光拡散角度領域を測定した。
【0139】
具体的には、光拡散制御層を、上記変角ヘイズメーターにおける積分球開口から測定光の到達位置までの距離が62mmとなるよう設置した。次に、上記到達位置における光拡散制御層の幅方向を回転軸として、光拡散制御層の長手方向(作製時の搬送方向)を回転させることにより、ヘイズ値(%)の変化を測定した。すなわち、光拡散制御層の傾き角度のみを変えることで、光拡散制御層に対する測定光の入射角度を変更し、それぞれの入射角度ごとにヘイズ値(%)を測定した。なお、測定光がプロジェクションスクリーンの法線方向となる入射角度を0°とし、光拡散制御層の長手方向(作製時の搬送方向)の進行方向側が光源に近づく回転方向をプラスとして、-70°~70°の範囲で測定を行った。測定条件の詳細は、次の通りとした。
光源:C光源
測定径:φ18mm
積分球開口径:φ25.4mm
【0140】
そして、測定されたヘイズ値(%)が60%以上となる角度範囲を、入射光拡散角度領域として特定した。入射光拡散角度領域の開始角度および終了角度を表2に示す。なお、入射光拡散角度領域のピークが2つに分かれている例については、一つ目のピークおよび二つ目のピークのそれぞれの開始角度および終了角度を表2に示す。
【0141】
〔試験例3〕(輝度分布の測定)
実施例および比較例で製造した表示体について、液晶表示装置を点灯させて、白色の画面を最大輝度で表示した状態で、イメージング輝度計(Radiant Vision Systems社製,製品名「PrometricI16 IC-PMI16 +Conoscope Lens70° PM-CO-070-I」)を用いて、表示面から0.3cmの位置において、表示面に対して垂直な方向を0°として、-70°から70°の範囲の輝度分布を測定した。なお、参考例として、液晶表示装置のみからなる表示体の輝度分布も測定した。
【0142】
得られた輝度分布から、-60°方向、-45°方向、0°(正面)方向、45°方向および60°方向から測定された輝度を読み取った。それらの結果を表3に示す。
【0143】
また、得られた輝度分布から、輝度の角度に対する傾きの最大値を算出した。具体的には、上記測定により、輝度分布として、-70°から70°に向かって、2985点の座標(角度および輝度)が得られているが、これを角度について-70°側の座標から75個の区間に切り分けた。その結果、-70°側の座標から数えて74個の各区間には、40点の座標が含まれることになり、70°側の1区間のみ25点の座標となる。ここで、25点の座標である区間のみ排除した。そして、区間ごとに、輝度および角度の平均値(40点平均)を算出した。これによって得られた74個の40点平均に基づいて、隣り合う角度の傾きの絶対値の最大値を最大傾きとした。その結果を表3に示す。
【0144】
また、参考例の0°の輝度に対する、各例の0°の輝度の割合(%)を算出した。具体的には、次の式
割合(%)=(各例の0°の輝度)/(参考例の0°の輝度)×100
を算出した。その結果を、0°輝度の参考例に対する割合(%)として表3に示す。
【0145】
また、実施例、比較例および参考例のそれぞれについて、0°の輝度に対する、-60°、-45°、45°および60°の輝度の割合(%)を算出した。具体的には、次の式
割合(%)=(各角度の輝度)/(0°の輝度)×100
を算出した。その結果を表3に示す。
【0146】
さらに、実施例、比較例および参考例のそれぞれについて、0°の輝度に対する最大傾きの値を算出した。すなわち、次の式
(最大傾き)/(0°の輝度)
を算出した。その結果を表3に示す。
【0147】
〔試験例4〕(目視評価)
実施例および比較例で製造した表示体、並びに参考例としての液晶表示装置のみからなる表示体について、液晶表示装置を点灯させて、白色の画面を最大輝度で表示した。その状態で、目視により、(1)正面(0°)方向から見たときの明るさ(正面輝度)、(2)正面方向から見た場合と斜め方向から見た場合との輝度の均一性、および、(3)正面方向から斜め方向に視認角度を変えていく際の急激な輝度変化について、それぞれ以下の基準に基づいて評価した。それらの結果を表4に示す。
【0148】
(1)正面輝度
◎:正面から視認した際に、十分明るかった。
〇:正面から視認した際に、明るかった。
△:正面から視認した際に、わずかに暗かったが、実用上は許容できるレベルであった。
×:正面から視認した際に、暗く、実用上は許容できないレベルであった。
【0149】
(2)輝度の均一性
◎:正面方向と斜め方向において、均一に明るかった。
〇:正面方向と斜め方向において、わずかに明るさが異なっていた。
△:正面方向と斜め方向において、明るさが異なっているが、実用上は許容できるレベルであった。
×:正面方向と斜め方向において、実用上許容できないほど明るさが異なっていた。
【0150】
(3)輝度変化
◎:正面方向から斜め方向に視認角度を変えていく途中で、明るさの変化はなかった。
〇:正面方向から斜め方向に視認角度を変えていく途中で、わずかに暗くなった。
△:正面方向から斜め方向に視認角度を変えていく途中で暗くなったが、実用上は許容できるレベルであった。
×:正面方向から斜め方向に視認角度を変えていく間に、急激に暗くなりすぎた。
【0151】
【表1】
【0152】
【表2】
【0153】
【表3】
【0154】
【表4】
【0155】
表4から分かるように、実施例で得られた表示体は、輝度の均一性に優れるとともに、視認角度を変えていった場合でも急激な輝度変化がないものであった。また、実施例で得られた表示体は、正面方向の輝度も十分であった。以上より、実施例で得られた表示体は、いずれの角度から見た場合でも十分な明るさで画面を視認できるものであった。
【産業上の利用可能性】
【0156】
本発明の表示体は、種々の視認角度から視認され得る表示体として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0157】
1,1’…表示体
11,11a,11b…光拡散制御層
12…表示装置
201…板状領域
202…屈折率が相対的に低い領域
図1
図2
図3
図4