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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143469
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ずり搬出装置
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/12 20060101AFI20241003BHJP
   G05D 1/43 20240101ALI20241003BHJP
   G01S 17/89 20200101ALI20241003BHJP
【FI】
E21D9/12 B
G05D1/02 L
G01S17/89
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056177
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391015236
【氏名又は名称】大裕株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】戸田 一生
(72)【発明者】
【氏名】今村 新吾
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄介
(72)【発明者】
【氏名】笠原 伸正
【テーマコード(参考)】
2D054
5H301
5J084
【Fターム(参考)】
2D054AC20
2D054DA21
2D054DA32
2D054GA13
2D054GA25
2D054GA82
5H301AA01
5H301BB02
5H301GG08
5H301MM07
5H301MM10
5J084AA04
5J084AB20
5J084AC02
5J084EA26
5J084EA27
(57)【要約】
【課題】
運搬回数を重ねた場合においても誤差が発生することなく、クラッシャ装置のホッパーにホイールローダからずりを投入する。
【解決手段】
トンネル内を自動運転するホイールローダ2と、ホイールローダ2からずりを受け入れるホッパー31を備えたクラッシャ装置30と、ずりを搬送するベルトコンベア4と、を備える。遠距離用LiDAR装置27を備え、クラッシャ装置30は、広視野近距離用LiDAR装置37を備える。ホイールローダ2は、遠距離用LiDAR装置27からの情報データと受信した広視野近距離用LiDAR装置37からの情報データに基づき、地図情報を最新の地図情報に更新し、更新された地図情報と、遠距離用LiDAR装置27からの情報データと受信した広視野近距離用LiDAR装置37からの情報データに基づきSLAMによる位置及び姿勢の算出を行う。
【選択図】 図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネル内を自動運転するずり積込機と、ずりを積み込んだずり積込機からずりを受け入れるずり受入装置と、を備えるずり搬出装置であって、
前記ずり積込機は、遠距離用LiDAR装置と、地図情報を格納する第1記憶部と、ずり積込機用通信装置と、前記遠距離用LiDAR装置からの情報データと前記第1記憶部の地図情報に基づきSLAMによる前記ずり積込機の位置推定及び姿勢推定を行うずり積込機用制御装置とを備え、
前記ずり受入装置は、広視野近距離用LiDAR装置と、ずり受入装置用通信装置とを備え、
前記ずり積込機用通信装置は、前記広視野近距離用LiDAR装置からの情報データを受信し、前記ずり積込機用制御装置は、前記遠距離用LiDAR装置からの情報データと受信した前記広視野近距離用LiDAR装置からの情報データに基づき、前記第1記憶部に格納された地図情報を最新の地図情報に更新し、更新した地図情報を前記第1記憶部に格納させ、前記第1記憶部に格納された更新された地図情報と、前記遠距離用LiDAR装置からの情報データと受信した前記広視野近距離用LiDAR装置からの情報データに基づきSLAMによる位置及び前記ずり積込機の姿勢の推定を行う、
ずり搬出装置。
【請求項2】
前記ずり受入装置は、地図情報を格納する第2記憶部と、ずり受入装置用制御装置を更に備え、
前記ずり受入装置用通信装置は、前記遠距離用LiDAR装置からの情報データを受信し、
前記ずり受入装置用制御装置は、前記広視野近距離用LiDAR装置からの情報データと受信した前記遠距離用LiDAR装置からの情報データに基づき、前記第2記憶部に格納された地図情報を最新の地図情報に更新して、広域の地図情報を作成し、前記ずり受入装置用通信装置から広域の地図情報をトンネル坑外に送信する、
請求項1に記載のずり搬出装置。
【請求項3】
前記ずり受入装置用制御装置は、前記広視野近距離用LiDAR装置からの情報データと受信した前記遠距離用LiDAR装置からの情報データに基づき、トンネル内の3次元画像情報データを作成し、前記ずり受入装置用通信装置から前記3次元画像情報をトンネル坑外に送信する、
請求項2に記載のずり搬出装置。
【請求項4】
前記ずり受入装置は、ずりを積み込んだずり積込機からずりを受け入れるホッパーと、前記ホッパーに受け入れられたずりを粉砕するクラッシャ装置と、前記クラッシャ装置で粉砕されたずりを搬送するベルトコンベアと、を備える請求項1~3のいずれかに記載のずり搬出装置。
【請求項5】
前記ずり積込機はホイールローダであり、前記クラッシャ装置は自走式クラッシャ装置である、
請求項4に記載のずり搬出装置。
【請求項6】
前記ホイールローダの天板にLiDAR用再帰性反射材を設け、前記クラッシャ装置のホッパーにLiDAR用再帰性反射材を設けた、
請求項5に記載のずり搬出装置。
【請求項7】
前記遠距離用LiDAR装置は、測定距離が少なくとも100m、水平方向に360度測定可能であり、
前記広視野近距離用LiDARは、測定距離が少なくとも40m、水平方向に360度、垂直方向に少なくとも±45度~55度である、
請求項1~3のいずれかに記載のずり搬出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル坑内のずりを搬出するずり搬出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の自動運転技術の開発が盛んである。建設業界においても自動運転技術が注目されている。
【0003】
GPS(global positioning system)等の位置情報が届かないトンネル坑内での無人建設機械の自動運転を行うことが提案されている(特許文献1)。
【0004】
上記特許文献1に記載された技術は、GPS等の位置情報が届かないトンネル坑内での無人建設機械の自動運転を実現するために、建設機械の周辺環境を示す地図作成と自己位置推定を3次元で同時に行うSLAM(Simultaneous Localization and Mapping)技術を用いて、位置情報を随時取得し、施工現場の周辺環境変化に的確に対応して自動運転する。
【0005】
上記特許文献1においては、周囲の情報を得るセンサとして、LiDAR(Light Detection And Ranging)を用いることが開示されている。LiDARは、レーザ光を照射して、その反射光の情報をもとに対象物までの距離や対象物の形などを計測するもので、トンネル内の環境が悪い状況においても周囲の情報を得ることができる。
【0006】
トンネル工事においては、トンネルの切羽で発生するずりをトンネル坑外に排出する。特許文献2には、切羽で発生したずりをホイールローダで掬い上げ、自走可能なクラッシャ装置に運搬し、クラッシャ装置で破砕されたずりをベルトコンベアで搬送し、トンネル坑外に搬出することが開示されている。1回の発破により生じたずりを運搬するために、ホイールローダは、切羽とクラッシャ装置の間を30~100回程度往復する。上述したように、建設現場での自動化が望まれており、ホイールローダでの作業においても自動化が望まれている。
【0007】
非特許文献1の「鹿島のトンネルの自動化施工がいよいよ実用化段階へ!実坑道での施工に挑戦」の記事には、ホイールローダでずりを掬い上げ、ホッパーへの投入まで、一連のずり出しを自動化することが記載されている。自動化を行うために、GPSが届かない坑内に「坑内GPS」と坑内に高精度スキャナを設置し、自己位置推定と周辺地図を同時に作成するSLAM技術を採用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2023-13441号公報
【特許文献2】特開2022-118427号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】「鹿島のトンネルの自動化施工がいよいよ実用化段階へ!実坑道での施工に挑戦」(URL:https://ken-it.world/it/2021/10/a4csel-for-tunnel-realized.html(2023年2月21日最終閲覧))
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記した非特許文献1においては、ホイールローダでずりを掬い上げ、ホッパーへの投入まで、一連のずり出しを自動化することが記載されている。しかし、自動化を行うために、坑内にGPSシステムの設置と高精度スキャナの設置を必要としている。このため、ずり出し作業の前に坑内へかかる設備の設置を行っておく必要がある。特に、トンネル工事の進行に伴い、これらの設備の更新が必要となり、作業性が悪い。
【0011】
ずり出し作業は、トンネルの掘削の発破直後に行うために、トンネルという閉空間においては、粉塵や火薬の煙が発生し、視界が非常に悪い。上記した特許文献1に開示されたLiDARを用いれば、トンネル内の周囲の情報を得ることができる。
【0012】
ところで、特許文献2に記載されているように、1回の発破により生じたずりを運搬するために、ホイールローダは、切羽とクラッシャ装置の間を30~100回程度往復する。
【0013】
特許文献1に記載されている自動運転システムを用いることにより、トンネル坑内において自動運転を行うことができる。しかし、1回の発破により生じたずりを運搬するために、切羽とクラッシャ装置の間を30~100回程度往復すると、SLAM技術を用いて自己位置を推定し、地図を更新していっても誤差が蓄積し、ホイールローダとクラッシャ装置との地図の位置がずれる。
【0014】
クラッシャ装置のホッパーにホイールローダから確実にずりを投入するためには、クラッシャ装置に対するホイールローダのトンネルの前後方向の位置とクラッシャ装置のホッパーの高さ方向の位置を正確に把握する必要がある。しかしながら、運搬回数を重ねる毎に誤差が蓄積すると、クラッシャ装置のホッパーにずりがうまく投入できずに周囲にずりが散乱する虞があった。
【0015】
本発明は、運搬回数を重ねた場合においても誤差が発生することなく、確実にクラッシャ装置のホッパーにホイールローダからずりを投入することができるずり搬送装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は、運搬回数を重ねた場合においてもホイールローダとクラッシャ装置との推定位置の誤差の発生を抑制することを検討した。本発明者等は、鋭意検討の結果、以下のような構成に想到した。
【0017】
本発明の一実施形態に係るずり搬出装置は、トンネル内を自動運転するずり積込機と、ずりを積み込んだずり積込機からずりを受け入れるずり受入装置装置と、を備える。前記ずり積込機は、遠距離用LiDAR装置と、地図情報を格納する第1記憶部と、ずり積込機用通信装置と、前記遠距離用LiDAR装置からの情報データと前記第1記憶部の地図情報に基づきSLAMによる位置及び前記ずり積込機の姿勢の算出を行うずり積込機用制御装置とを備える。前記ずり受入装置は、広視野近距離用LiDAR装置と、ずり受入装置用通信装置とを備える。前記ずり積込機用通信装置は、前記広視野近距離用LiDAR装置からの情報データを受信し、前記ずり積込機用制御装置は、前記遠距離用LiDAR装置からの情報データと受信した前記広視野近距離用LiDAR装置からの情報データに基づき、前記第1記憶部に格納された地図情報を最新の地図情報に更新し、更新した地図情報を前記第1記憶部に格納させ、前記第1記憶部に格納された更新された地図情報と、前記遠距離用LiDAR装置からの情報データと受信した前記広視野近距離用LiDAR装置からの情報データに基づきSLAMによる位置及び前記ずり積込機の姿勢の算出を行うように構成される。
【0018】
本発明の一実施形態に係るずり搬出装置は、ずり受入装置の広視野近距離LiDAR装置からの情報データとずり積込機の遠距離用LiDAR装置からの情報データに基づき、地図情報を最新の地図情報に更新する。これにより、地図情報は、ずり受入装置の位置を基準とした地図情報に更新されるので、運搬回数に関係なく、ずり受入装置の位置とずり積込機との位置を正確に推定することができる。さらに、広視野近距離LiDAR装置からの情報データによりずり積込機の上下方向の姿勢も正確に推定できる。これにより、ずり受入装置にずりを正確に投入することができる。
【0019】
また、本発明の一実施形態に係るずり搬出装置は、ずり受入装置に、地図情報を格納する第2記憶部と、ずり受入装置用制御装置を更に備える。前記ずり受入装置用通信装置は、前記遠距離用LiDAR装置からの情報データを受信し、前記ずり受入装置用制御装置は、前記広視野近距離用LiDAR装置からの情報データと受信した前記遠距離用LiDAR装置からの情報データに基づき、前記第2記憶部に格納された地図情報を最新の地図情報に更新して、広域の地図情報を作成し、前記ずり受入装置用通信装置から広域の地図情報をトンネル坑外に送信するように構成することができる。
【0020】
上記のように、本発明の一実施形態に係るずり搬出装置のずり受入装置用制御装置は、広視野近距離用LiDAR装置からの情報データと受信した前記遠距離用LiDAR装置からの情報データに基づき、最新の広域の地図情報を作成し、その地図情報をトンネル坑外に通信する。これにより、粉塵や火薬の煙が発生し、視界が非常に悪いトンネルであってもトンネル坑外で作業している現場に最新の地図情報を与えることができる。
【0021】
また、本発明の一実施形態に係るずり搬出装置のずり受入装置用制御装置は、前記広視野近距離用LiDAR装置からの情報データと受信した前記遠距離用LiDAR装置からの情報データに基づき、トンネル内の3次元画像情報を作成し、前記ずり受入クラッシャ装置用通信装置から前記3次元画像情報をトンネル坑外に送信するように構成することができる。
【0022】
上記のように、本発明の一実施形態に係るずり搬出装置は、広視野近距離用LiDAR装置からの情報データと受信した前記遠距離用LiDAR装置からの情報データに基づき、最新のトンネル内の3次元画像を作成し、その3次元画像をトンネル坑外に通信する。これにより、粉塵や火薬の煙が発生し、視界が非常に悪いトンネルであってもトンネル坑外で作業している現場の最新の3次元画像情報を与えることができ、作業の進捗状況をトンネル坑外で確認することができる。
【0023】
また、本発明の一実施形態に係るずり搬出装置のずり受入装置は、ずりを積み込んだずり積込機からずりを受け入れるホッパーと、前記ホッパーに受け入れられたずりを粉砕するクラッシャ装置と、前記クラッシャ装置で粉砕されたずりを搬送するベルトコンベアと、を備える。
【0024】
また、本発明の一実施形態に係るずり搬出装置は、前記ずり積込機をホイールローダ、前記クラッシャ装置を自走式クラッシャ装置で構成することができる。
【0025】
本発明の一実施形態に係るずり搬出装置は、自走式クラッシャ装置を用いることで、トンネルの掘削が進んだ時にはクラッシャ装置を前方に移動させ、トンネルの掘削が進んでもホイールローダの移動量を多くすることがなくなる。これにより、運搬時間が延びることが抑制できる。
【0026】
また、本発明の一実施形態に係るずり搬出装置は、前記ホイールローダの天板にLiDAR用再帰性反射材を設け、前記クラッシャ装置のホッパーにLiDAR用再帰性反射材を設けることができる。
【0027】
LiDAR用再帰性反射材を設けることで、ホイールローダの位置、ホッパー位置を確実に推定することができる。これにより、ずりのホッパーへの投入が確実に行える。
【0028】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくても本発明を実施できることが明らかである。
【0029】
よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0030】
本発明の一実施形態によれば、クラッシャ装置の広視野近距離LiDAR装置からの情報データとずり積込機の遠距離用LiDAR装置からの情報データに基づき、地図情報を最新の地図情報に更新することにより、地図情報は、クラッシャ装置の位置を基準とした地図情報に更新されるので、運搬回数に関係なく、クラッシャ装置の位置とずり積込機との位置を正確に推定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1図1は、本発明の実施形態に係るずり搬出装置の概略構成図であり、ホイールローダが切羽の近傍に位置する状態を示してる。
図2図2は、本発明の実施形態に係るずり搬出装置の概略構成図であり、ホイールローダがクラッシャ装置の近傍に位置する状態を示してる。
図3図3は、本発明の実施形態に用いられるホイールローダがずりをホッパーに投入する状態を示す模式図である。
図4図4は、本発明の実施形態に用いられるホイールローダを示す模式図である。
図5図5は、本発明の実施形態に用いられるクラッシャ装置を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
次に、本発明の実施形態に係るずり搬出装置について図面に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係るずり搬出装置は、下記の実施形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0033】
以下の説明において単に「上流/下流」と言うときは、トンネル5の坑内51におけるずり搬送の上流/下流を意味する。図1及び図2は、本発明の実施形態に係るずり搬出装置1の概略構成図であり、図1は、ホイールローダ2が切羽53の近傍に位置する状態、図2は、ホイールローダ2がクラッシャ装置30の近傍に位置する状態を示してる。
【0034】
ずり搬出装置1は、トンネル5の切羽53の発破で発生したずり(岩石)56を坑口52側に搬送し、トンネル5の外に搬出する。すなわち、上流側は切羽53側、下流側は坑口52側である。図1及び図2に示すように、ずり搬出装置1は、切羽53の近傍のずり56を積み込むずり積込機としてのホイールローダ2と、ホイールローダ2に積み込まれたずりを受け入れるずり受入装置3とを備える。本実施形態において、ずり受入装置3は、ホッパー31を備えたクラッシャ装置30と、クラッシャ装置30により粉砕されたずりを搬送するベルトコンベア4とを備えている。ベルトコンベア4は、クラッシャ装置30の下流側に接続され、坑口52近傍まで延在する。
【0035】
本実施形態のホイールローダ2は、トンネル5の坑内51を下流側から上流側に自動運転によって移動し、切羽53近傍で自動運転によりずりを積み込む。そして、ホイールローダ2は、下流側へ自動運転により移動し、ずり受入装置3まで来ると停止する。そして、ホイールローダ2に積み込まれたずりをずり受入装置3としてのクラッシャ装置30のホッパー31へ投入する(図3参照)。ホイールローダ2は、これらの動作を自動運転により行う。さらに、このホイールローダ2は、遠隔操作と作業者による手動運転を行うことができる。
【0036】
本実施形態のずり受入装置3を構成するクラッシャ装置30は、クローラ32を備えた自走式クラッシャ装置である。切羽53と自走式クラッシャ装置30との間は、50m~100m程度離れており、ホイールローダ2は、この50m~100mの間を30~100回程度、自動運転により往復し、ずり出し作業を行う。
【0037】
工事の進捗に伴い自走式のクラッシャ装置30は、上流側に移動し、ずり出し作業の段取り替えが行われる。段取り替え時には、自動運転の準備工程が行われる。自動運転の準備工程として、作業者がトンネル5の坑内51を手動運転によりホイールローダ2を運転し、切羽53近傍のずり56を積み込み、自走式のクラッシャ装置30の位置まで戻り、ホッパー31にずり56を投入するまでの作業を行う。この一連の作業により、自動運転に必要な地図情報、作業の姿勢情報を取得し、地図情報及び姿勢情報を含む自動運転に関する自動運転用制御情報を第1記憶部21及び第2記憶部33(図4図5参照)に格納する。この格納された自動運転用制御情報に基づいて、SLAMによるホイールローダ2の位置推定及び姿勢推定を行って、ホイールローダ2の自動運転が行われる。
【0038】
トンネル5の坑内51においては、測位用衛星からの電波が届かず、全球測位衛星システム(GNSS:Global Navigation Satellite System)を使用することができない。そこで、本実施形態においては、SLAM技術を用いて、自動運転時のホイールローダ2の位置推定とホイールローダ2の姿勢推定を行う。
【0039】
図1及び図2に従い、本発明の実施形態につき説明する。
図1及び図2に示すずり搬出装置1は、トンネル5の坑内51を自動運転によってずり積込機としてのホイールローダ2が切羽53近傍とずり受入装置3としてのクラッシャ装置30との間を移動する。ずり搬出装置1は、トンネルの種類を限定せずに様々な種類のトンネルに用いることができる。また、ずり積込機は、ホイールローダには限らず、ずりを積み込み、搬送する建設機械であればその種類は限定されない。
【0040】
最初に、図1及び図2を参照して、ずり搬出装置1における自動運転の仕組みの概要を説明する。予め、作業者によるずり搬出動作により得られた地図情報及び姿勢情報を含む自動運転に関する自動運転用制御情報がホイールローダ2の第1記憶部21及びずり受入装置3としてのクラッシャ装置30の第2記憶部33に格納されている。
【0041】
ホイールローダ2は、第1記憶部21に格納された地図情報に設定された経路上を移動する。ホイールローダ2が移動する経路は、準備工程により予め設定されている。ホイールローダ2は、その経路上をなぞるようにして移動する。
【0042】
トンネル5の坑内51には測位用衛星からの電波が届かず、GNSSを用いた自己位置の推定を行えない。そのため、本実施形態ではSLAMを用いた位置推定技術により、準備工程時のホイールローダ2の位置推定および自動運転時におけるホイールローダ2の位置推定を行う。
【0043】
ホイールローダ2は、遠距離用LiDAR装置27を備え、遠距離用LiDAR装置27は、ホイールローダ2の位置である計測位置からみた計測範囲における物体表面の各被計測点を座標点として、各座標点の位置(座標)を点群データとして取得する。この点群データを用いてSLAMによる位置推定が行われる。
【0044】
ホイールローダ2は、SLAMを用いて位置推定を行い、切羽53へ移動し、ずり56の検出を行う。ホイールローダ2は、ずり56の検出を行うとずりを積み込む。ずりを積み込んだホイールローダ2は下流側のずり受入装置3としてのクラッシャ装置30へ移動する。ホイールローダ2は、ずり受入装置3としてのクラッシャ装置30まで、SLAMを用いた位置推定技術により移動する。ずり受入装置3としてのクラッシャ装置30まで到達すると、ホイールローダ2は停止する。そして、ホイールローダ2はずり受入装置3としてのクラッシャ装置30のホッパー31へずりを投入する。投入後、ホイールローダ2は、上流側の切羽53に向かって移動し、ずりの積み込みを行う。ずりがなくなるまで上記の動作を繰り返す。
【0045】
本実施形態は、ホイールローダ2は遠距離用LiDAR装置27を、ずり受入装置3としてのクラッシャ装置30は広視野近距離用LiDAR装置37を備える。そして、ホイールローダ2とクラッシャ装置30との間でそれぞれ取得した点群データを送受信する。このため、ホイールローダ2とずり受入装置3としてのクラッシャ装置30は通信装置を備え、相互の情報の送受信が行われる。
【0046】
図4に示すように、ホイールローダ2は、ずり積込機用通信装置22を備え、遠距離用LiDAR装置27で取得した遠距離点群データをずり受入装置3としてのクラッシャ装置30に送信する。また、図5に示すように、ずり受入装置3としてのクラッシャ装置30は、ずり受入装置用通信装置34を備え、広視野近距離用LiDAR装置37で取得した広視野近距離点群データをホイールローダ2に送信する。
【0047】
ホイールローダ2のずり積込機用通信装置22は、ずり受入装置3としてのクラッシャ装置30から送信された広視野近距離点群データを受信する。ホイールローダ2は遠距離点群データと広視野近距離点群データを統合する。
【0048】
ずり受入装置3としてのクラッシャ装置30のずれ受入装置用通信装置34は、ホイールローダ2から送信された遠距離点群データを受信する。ずり受入装置3としてのクラッシャ装置30は、広視野近距離点群データと遠距離点群データを統合する。
【0049】
ずり受入装置3としてのクラッシャ装置30の広視野近距離用LiDAR装置37は、ずり受入装置3としてのクラッシャ装置30の固定位置を中心とした位置情報と環境情報の広視野近距離点群データを取得する。この位置情報と環境情報の広視野近距離点群データは、ホイールローダ2に通信により与えられ、後述するように、ホイールローダ2の第1記憶部21に格納された地図情報は、ずり受入装置3としてのクラッシャ装置30を基準とした最新の地図情報に更新される。ホイールローダ2はクラッシャ装置30を基準とした最新の地図情報に基づき、ずり受入装置3としてのクラッシャ装置30のホッパー31にずりを投入する。
【0050】
上述したように、ずり受入装置3としてのクラッシャ装置30とホイールローダ2とは、相互通信を行い、互いの点群データからなる情報を統合し、トンネル5の坑内51におけるホイールローダ2の位置、ホイールローダ2とずり受入装置3としてのクラッシャ装置30の各位置関係など情報を算出する。そして、トンネル5の坑内51とホイールローダ2、ずり受入装置3としてのクラッシャ装置30の各位置関係の情報に基づく広域の地図情報をトンネル5の坑外の監視室8に送信する。監視室8内には、モニタ(図示せず)を備え、モニタにトンネル5の坑内51の状況が表示される。これにより、作業者は、監視室8内でトンネル5の坑内51の状況を把握することができる。
【0051】
次に、本実施形態のずり積込機としてのホイールローダ2の構成について、図4を参照して説明する。
【0052】
ホイールローダ2は、トンネル工事に利用される車両であり、トンネル5の坑内51を移動可能である。ホイールローダ2は、車体部20、第1記憶部21と、ずり積込機用通信装置22、ずり積込機用制御装置23と、センサ部24と、ホイール部25、バケット26と、を備える。
【0053】
車体部20は、運転を行う運転室20aを有する。運転室20aの天板20bには、遠距離用LiDAR装置27が設置されている。天板20bには、LiDAR用再帰性反射材20cが設けられている。LiDAR用再帰性反射材20cを設けることにより、クラッシャ装置30の広視野近距離用LiDAR装置37によるホイールローダ2の位置認識を容易にする。
【0054】
遠距離用LiDAR装置27は、レーザセンサ(距離センサ)の技術を用いて周囲の物体の形状を検出する。遠距離用LiDAR装置27は、周囲に多数のレーザ光を照射し、物体に当たって反射したレーザ光を受光する。これにより、遠距離用LiDAR装置27は、周囲の物体の表面の形状を、表面を覆い尽くすような点の座標の集合(点群データ)として取得する。点群データは、例えば相対座標(遠距離用LiDAR装置27の設置位置を原点としたローカル座標)である。
【0055】
遠距離用LiDAR装置27は、測定距離が少なくとも100m、水平方向に360度、垂直方向に±22.5度の範囲で測定可能である。トンネル5という閉空間においては、粉塵や火薬の煙が発生し、視界が非常に悪いが、LiDARであれば、粉塵や火薬の煙などに影響されずに、周囲の物体の表面の形状を得ることができる。
【0056】
ずり積込機用通信装置22は、入力された遠距離用LiDAR装置27の遠距離点群データをクラッシャ装置用通信装置34へ送信する。また、ずり積込機用通信装置22は、ずり受入装置用通信装置34から送信された広視野近距離点群データ(情報データ)を受信する。受信した情報データはずり積込機用制御装置23に与えられる。ずり積込機用制御装置は、遠距離用LiDAR装置27からの遠距離点群データ(情報データ)と受信した広視野近距離用LiDAR装置37からの広視野近距離用点群データ(情報データ)に基づき、第1記憶部21に格納された地図情報を最新の地図情報に更新する。
【0057】
ホイールローダ2は、ホイールローダ2自体の動作を検出するセンサ部24を備える。センサ部24は、例えば、ホイール部25の回転を検出する速度センサ、バケット26の昇降動作等を行う各種油圧シリンダの動作検出センサ、バケット26の重量センサなどの各種センサを含む。これらセンサの出力がずり積込機用制御装置23に与えられる。ずり積込機用制御装置23は、センサ部24からの出力に基づき、各種動作を制御する。
【0058】
図示はしないが、運転室20aにカメラが設置されており、このカメラにより、ホイールローダ2の周囲を撮影する。この撮影データは、ずり積込機用通信装置22を介して監視室8に送信される。監視室8は、カメラによる画像をモニタに表示させることもできる。
【0059】
第1記憶部21は、自動運転用のプログラム、自動運転用の地図情報などが格納されている。ずり積込機用制御装置23は、自動運転用のプログラムに従ってホイールローダ2の動作を制御する。
【0060】
ずり積込機用制御装置23は、遠距離用LiDAR装置27からの情報データと第1記憶部21の地図情報に基づきSLAMによるホイールローダ2の位置及び姿勢の算出を行う。ずり積込機用制御装置23は、算出したホイールローダ2の位置及び姿勢からホイールローダ2の移動及び動作を制御する。ずり積込機用制御装置23は、算出したホイールローダ2の位置及び姿勢の情報を第1記憶部21に出力し、第1記憶部21の地図情報等を更新する。
【0061】
次に、本実施形態のずり受入装置3について、図5を参照して説明する。ずり受入装置3は、ずりが投入されるホッパー31と、ホッパー31に投入されたずりを粉砕し、粉砕したずりをベルトコンベア4に排出するクラッシャ装置30と、クローラ32とを備える。
【0062】
本実施形態のずり受入装置3は、広視野近距離用LiDAR装置37が設けられ、クラッシャ装置30の固定位置を中心とした位置情報と環境情報を取得する。広視野近距離用LiDAR装置37は、測定距離が少なくとも40m、水平方向に360度、垂直方向に少なくとも±45度~55度である。広視野近距離用LiDAR装置37は、近距離の座標点の密度が高く、クラッシャ装置30に近くの物体の上下、左右の点群データを出力する。これにより、クラッシャ装置30の固定位置を中心とした物体の位置、姿勢を詳細に検出することができる。
【0063】
自走式クラッシャ装置3は、広視野近距離用LiDAR装置37と、クラッシャ装置用通信装置34と、広視野近距離用LiDAR装置37からの点群データ(情報データ)とホイールローダ2から送信される点群データ(情報データ)を格納する第2記憶部33と、これらの制御を行うクラッシャ装置用制御装置35を備える。
【0064】
ずり受入装置用通信装置34は、広視野近距離用LiDAR装置37からの点群データ(情報データ)をホイールローダ2に送信すると共にホイールローダ2から送信される点群データ(情報データ)を受信する。ずり受入装置用通信装置34は、広視野近距離点群データと遠距離点群データを統合したデータを監視室8に送信する。
【0065】
本実施形態においては、クラッシャ装置30のホッパー31にLiDAR用再帰性反射材31aを設けている。このLiDAR用再帰性反射材31aにより、ホイールローダ2の遠距離用LiDAR装置27がホッパー31の位置の認識を容易にする。
【0066】
次に、本実施形態の動作につき説明する。ホイールローダ2が自走式クラッシャ装置3に近づくと、ホイールローダ2のずり積込機用通信装置22は、広視野近距離用LiDAR装置37からの情報データを受信する。ずり積込機用制御装置23は、遠距離用LiDAR装置27からの情報データと受信した広視野近距離用LiDAR装置37からの情報データに基づき、第1記憶部21に格納された地図情報を最新の地図情報に更新する。
【0067】
ずり積込機用制御装置23は、更新した地図情報を第1記憶部21に格納させ、第1記憶部21に格納された更新された地図情報と、遠距離用LiDAR装置27からの情報データと受信した広視野近距離用LiDAR装置37からの情報に基づきSLAMによる位置及びホイールローダ2の姿勢の算出を行う。
【0068】
上記したように、第1記憶部21に格納された地図情報は、ずり受入装置3としてのクラッシャ装置30の位置を基準とした地図情報に更新される。この結果、ホイールローダ2の運搬回数に関係なく、クラッシャ装置30の位置とホイールローダ2との位置を正確に推定することができる。さらに、広視野近距離用LiDAR装置37からの情報によりホイールローダ2の上下方向の姿勢も正確に推定できる。これにより、クラッシャ装置30のホッパー31にずり56を正確に投入することができる。
【0069】
上記したように、ずり受入装置用通信装置34は、ホイールローダ2の遠距離用LiDAR装置27からの情報データを受信する。ずり受入装置用制御装置35は、広視野近距離用LiDAR装置37からの情報データと受信した遠距離用LiDAR装置27からの情報データに基づき、第2記憶部33に格納された地図情報を最新の地図情報に更新して、広域の地図情報を作成する。そして、ずり受入装置用通信装置34から広域の地図情報をトンネル坑外の監視室8に送信する。これにより、粉塵や火薬の煙が発生し、視界が非常に悪いトンネル5であってもトンネル坑外で作業している現場に最新の地図情報を与えることができる。
【0070】
ずり受入装置用制御装置35は、広視野近距離用LiDAR装置37からの情報データと受信した遠距離用LiDAR装置27からの情報データに基づき、トンネル5内の3次元画像情報データを作成する。そして、ずり受入装置用通信装置34から3次元画像情報データをトンネル坑外の監視室8に送信する。これにより、粉塵や火薬の煙が発生し、視界が非常に悪いトンネル5であってもトンネル坑外で作業している現場に最新の3次元画像情報を与えることができ、作業の進捗状況をトンネル坑外の監視室8で確認することができる。
【0071】
また、本実施形態においては、自走式のクラッシャ装置を用いることで、トンネル5の掘削が進んだ時には自走式クラッシャ装置を前方に移動させ、トンネル5の掘削が進んでもホイールローダ2の移動量を多くすることがなくなる。これにより、運搬時間が延びることが抑制できる。
【0072】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、特許請求の範囲の趣旨を変えない範囲で実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、トンネル坑内のずりをトンネル坑外に排出するずり搬出装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0074】
1 :ずり搬出装置
2 :ホイールローダ
3 :ずり受入装置
4 :ベルトコンベア
5 :トンネル
20b :天板
20c :LiDAR用再帰性反射材
21 :第1記憶部
22 :ずり積込機用通信装置
23 :ずり積込機用制御装置
27 :遠距離用LiDAR装置
30 :クラッシャ装置
31 :ホッパー
31a :LiDAR用再帰性反射材
33 :第2記憶部
34 :ずり受入装置用通信装置
35 :ずり受入装置用制御装置
37 :広視野近距離用LiDAR装置
図1
図2
図3
図4
図5