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特開2024-143477異機種の建設機械の運転操作を行う遠隔操作装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143477
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】異機種の建設機械の運転操作を行う遠隔操作装置
(51)【国際特許分類】
   H04Q 9/00 20060101AFI20241003BHJP
   E02F 9/20 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H04Q9/00 331Z
H04Q9/00 301B
E02F9/20 N
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056186
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391015236
【氏名又は名称】大裕株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087538
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 和久
(74)【代理人】
【識別番号】100085213
【弁理士】
【氏名又は名称】鳥居 洋
(72)【発明者】
【氏名】戸田 一生
(72)【発明者】
【氏名】今村 新吾
(72)【発明者】
【氏名】片山 雄介
(72)【発明者】
【氏名】笠原 伸正
【テーマコード(参考)】
2D003
5K048
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003BA04
2D003CA02
2D003DA04
2D003DB08
2D003DC07
5K048AA02
5K048BA25
5K048DA02
5K048DB01
5K048DC01
5K048EB02
5K048EB12
5K048GC06
5K048HA01
5K048HA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】特定のデータ記憶フォーマットの情報が得られない異機種の建設機械を共用の遠隔操作装置で操作可能とする。
【解決手段】遠隔操作室10は、共用の操作部14と、操作部14からの指令信号により建設機械30の制御信号を生成する操作制御部11と、操作制御部13からの制御信号をそれぞれの建設機械に対応する制御フォーマットの建設機械用制御信号に変換するデータ変換部13と、データ変換部13からの建設機械用制御信号を建設機械30に送信すると共に、建設機械30からの各種状態を示す状態信号を受信する送受信部12と、を備える。データ変換部13は、送受信部12を介して建設機械30からの各種状態信号を受け取り、受け取った各種状態信号に基づいて建設機械30の各種動作を学習し、学習の結果を用いて操作部14の制御信号を建設機械30に対応した建設機械用制御信号に変換する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建設機械と遠隔装置との間で制御信号を含む情報データを送受信し、異なる制御フォーマットを備える異機種の建設機械を運転操作する遠隔操作装置であって、
共用の操作部と、前記操作部からの指令信号により建設機械の制御信号を生成する操作制御部と、前記操作制御部からの制御信号をそれぞれの建設機械に対応する制御フォーマットの建設機械用制御信号に変換するデータ変換部と、前記データ変換部からの建設機械用制御信号を前記建設機械に送信すると共に、前記建設機械からの各種状態を示す状態信号を受信する送受信部とを備え、
前記データ変換部は、前記送受信部から建設機械の各種状態信号を受け取り、受け取った各種状態信号に基づいて前記建設機械の各種動作を学習し、学習結果を用いて前記操作部の前記制御信号と前記建設機械の建設機械用制御信号の対応関係を算出し、算出した対応関係に基づき前記操作部の前記制御信号を前記建設機械用制御信号に変換する、
異機種の建設機械の運転操作を行う遠隔操作装置。
【請求項2】
前記データ変換部は、前記各種状態信号に基づいて前記建設機械の各種動作を機械学習し、機械学習の結果を用いて前記操作部からの前記建設機械の制御信号を建設機械に対応した制御フォーマットに変換する変換テーブルを作成し、作成した前記変換テーブルに基づいて、前記操作制御部から前記制御信号をそれぞれの建設機械に対応した前記建設機械用制御信号に変換する、
請求項1に記載の異機種の建設機械の運転操作を行う遠隔操作装置。
【請求項3】
前記建設機械は、SLAMを用いた自動運転のための地図情報を得るためにトンネル坑内を移動して作業を行い、この作業に基づく各種動作の状態信号を前記データ変換部に与える、
請求項1または2に記載の異機種の建設機械の運転操作を行う遠隔操作装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メーカ、機種などが異なる建設機械を操作可能にする共用の遠隔操作装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、車両の自動運転技術の開発が盛んである。建設業界においても自動運転技術が注目されている。種々のメーカで自動運転や遠隔操作が可能な建設機械が開発されている。
【0003】
建設機械の機種が異なれば同じメーカでも操作系が異なる。また、メーカが異なれば、同じ機種の建設機械でも操作系が異なる。このため、機種、メーカの操作系に対応し、それぞれの建設機械を制御するために、建設機械の各機器等に関する制御項目とその操作信号を割り付けた独自の制御フォーマットに基づいて制御指令を与える構成が取られている。複数のメーカや複数の機種の建設機械が存在する建設現場においては、遠隔操作を行うためにはそれぞれの機種、メーカに対応した制御フォーマットに基づいた制御指令を与える遠隔操作用の無線操縦装置が必要となる。
【0004】
そこで、異なる制御フォーマットをそれぞれ備えた複数の建設機械を共用の送受信機を使って遠隔操作を行う遠隔操作装置が提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1の遠隔操作装置は、共用の指令器、受信器及びデータ変換器を備える。共用の指令器から、操縦指令信号、操作指令信号などの所要のデータ信号を、予め設定された基準データ記憶フォーマットに基づき送信し、そのデータ信号を共用の受信器を介して共用のデータ変換器に送り、同データ変換器では前記基準データ記憶フォーマットに基づくデータ信号を、特定の建設機械に設定された特定のデータ記憶フォーマットに基づくデータに変換する。変換した信号を建設機械の制御装置に送信して、異なる機種の建設機械を共用の遠隔操作装置により操作する。
【0005】
また、建設機械は油圧機器を用いて種々の動作を行っている。油圧機器は、油圧ポンプから供給される油をコントロールバルブにより制御し、油圧モータや油圧シリンダー等が駆動される。油圧モータや油圧シリンダーの動作はセンサにより検出され、センサの検出出力によりコントロールバルブが制御される。
【0006】
建設機械は、経年変化による所望の動作が得られないことがある。例えば、上記したセンサは、経年変化により変位量が変化し、測定誤差が生じる。この測定誤差により、所望の油圧動作が得られない場合が生じる。このため、経年変化に対応して、制御信号等を書き換えるなどの整備等が必要になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001-268656号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した特許文献1においては、データ変換器が特定の建設機械に設定された特定のデータ記憶フォーマットに基づくデータに変換するため、建設機械に設定された特定のデータ記憶フォーマットの情報を予め入手する必要がある。換言すれば、特定のデータ記憶フォーマットの情報を得られない建設機械においては、建設機械を操作するためのデータ変換を行うことができず、共用の遠隔操作装置を使用することはできない。
【0009】
また、建設機械に設定された特定のデータ記憶フォーマットの情報を予め入手している場合においても経年変化による制御信号を書き換えることはできず、正確な遠隔操作ができない虞がある。
【0010】
本発明者は、特定のデータ記憶フォーマットの情報が得られない建設機械においても共用の遠隔操作装置を使用することができると共に、経年変化にも対応することができる異機種の建設機械の運転操作を行う遠隔操作装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者等は、特定のデータ記憶フォーマットの情報が得られない建設機械においても共用の遠隔操作装置を使用する装置を検討した。本発明者等は、鋭意検討の結果、以下のような構成に想到した。
【0012】
本発明の一実施形態に係る異機種の建設機械の運転操作を行う遠隔操作装置は、共用の操作部と、前記操作部からの指令信号により建設機械の制御信号を生成する操作制御部と、前記操作制御部からの制御信号をそれぞれの建設機械に対応する制御フォーマットの建設機械用制御信号に変換するデータ変換部と、前記データ変換部からの建設機械用制御信号を前記建設機械に送信すると共に、前記建設機械からの各種状態を示す状態信号を受信する送受信部とを備える。前記データ変換部は、前記送受信部を介して前記建設機械からの各種状態信号を受け取り、受け取った各種状態信号に基づいて前記建設機械の各種動作を学習し、学習の結果を用いて前記操作部の制御信号を建設機械に対応した前記建設機械用制御信号に変換し、前記送受信部から前記建設機械に前記建設機械用制御信号を送信し、前記建設機械を遠隔操作する。
【0013】
本発明の一実施形態に係る異機種の建設機械の運転操作を行う遠隔操作装置は、建設機械を動作させる。そして、各動作に対応する各種状態信号をデータ変換部が受け取り、受け取った各種状態信号に基づいて建設機械の各種動作を学習し、学習の結果を用いて前記操作部からの建設機械の制御信号を建設機械に対応した前記建設機械用制御信号に変換する。これにより、予め建設機械に対応した制御フォーマットなどを入手できない場合においても、共用の操作部からの制御信号を建設機械に対応した建設機械用制御信号に変換して送信し、建設機械の遠隔操作を行うことができる。さらに、建設機械を動作させた状態信号を得ることができるので、経年変化等があってもこれから運転させる建設機械の状態に応じた制御信号を生成することができる。この結果、建設機械の経年変化に対応した制御が行える。
【0014】
また、本発明の一実施形態に係る異機種の建設機械の運転操作を行う遠隔操作装置の前記データ変換部は、前記各種状態信号に基づいて建設機械の各種動作を学習し、学習の結果を用いて前記操作部からの建設機械の制御信号を建設機械に対応した制御フォーマットに変換する変換テーブルを作成し、作成した変換テーブルに基づいて、前記操作制御部から前記制御信号をそれぞれの建設機械に対応した前記建設機械用制御信号に変換するように構成できる。
【0015】
上記の構成によれば、予め学習の結果を用いて前記操作部からの建設機械の制御信号を建設機械に対応した制御フォーマットに変換する変換テーブルを作成する。これにより、変換テーブルに基づき、建設機械用制御信号に変換して建設機械に送信することができるので、データ変換が容易に行える。
【0016】
また、前記建設機械は、SLAMを用いた自動運転のための地図情報を得るためにトンネル坑内を移動して作業を行い、この作業に基づく各種動作の状態信号を前記データ変換部に与えるように構成することができる。
【0017】
上記のように、トンネル坑内の移動と作業の状態をデータ変換部に与えることにより、トンネル坑内の作業に対応した建設機械用制御信号を得ることができる。
【0018】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくても本発明を実施できることが明らかである。
【0019】
よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【発明の効果】
【0020】
本発明の一実施形態によれば、予め建設機械に対応した制御フォーマットなどを入手できない場合においても、共用の操作装置からの制御信号を建設機械に対応した建設機械用制御信号に変換して送信し、建設機械の遠隔操作を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1図1は、本発明の実施形態にかかる異機種の建設機械の運転操作を行う遠隔操作装置の構成を示すブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態にかかる建設機械の構成を示すブロック図である。
図3図3は、本発明の実施形態に係るデータ変換部の構成を示すブロック図である。
図4図4は、SLAM技術を用いてずりを搬出する状態を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、本発明の実施形態に係る異機種の建設機械の運転操作を行う遠隔操作装置に基づいて具体的に説明する。なお、本発明に係る異機種の建設機械の運転操作を行う遠隔操作装置は、下記の実施形態に示したものに限定されず、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。
【0023】
図1に示されている本発明の実施形態にかかる異機種の建設機械の運転操作を行う遠隔操作装置は、遠隔操作室10と、遠隔操作対象となる複数の建設機械30と、遠隔操作室10と複数の建設機械30とを接続する無線通信ネットワーク20と、を有する。
【0024】
無線通信ネットワーク20は、高速無線通信LANで構成され、遠隔操作室10と複数の建設機械30との間を接続する。遠隔操作室10と複数の建設機械30は、無線通信ネットワーク20を介してデータの送受信が行われる。図1に示す実施形態に示す遠隔操作対象の建設機械30は、バックホウ30a、ホイールローダ30bである。建設機械30は、バックホウ30a、ホイールローダ30bに限らず、他の建設機械、例えば、油圧ショベル、ミニ油圧ショベル、ロードローラ、ブルドーザ、ダンプトラック、スキッドステアローダ、土工用振動ローダ、履帯式ローダ、コンパクタ、モータグレーダー、クレーン車なども遠隔操作対象にできる。
【0025】
図1に示す実施形態においては、バックホウ30a、ホイールローダ30bが無線通信ネットワーク20を介して遠隔操作室10と接続されている。バックホウ30a、ホイールローダ30bは、遠隔操作室10からの操作により、操作機器など各種機器の動作が行われる。さらに、この実施形態のバックホウ30a、ホイールローダ30bは、自動制御により所定の動作の自動運転が可能であり、遠隔操作室10から自動制御コマンドを送信することにより、自動運転制御動作に移行する。自動運転は、例えば、所定の動作を繰り返して行うなど、予め、動作手順などのプログラムをメモリに格納し、メモリからプログラムを読み出し、建設機械30(バックホウ30a、ホイールローダ30b)の車両制御部300が所定の動作を行うように建設機械30(バックホウ30a、ホイールローダ30b)の各機器を制御する。
【0026】
図1及び図2に従い、本発明の実施形態にかかる建設機械30の構成を説明する。建設機械30は、この実施形態においては、バックホウ30a、ホイールローダ30bである。遠隔操作により、それぞれの建設機械30の操作が行われる。建設機械30の種類に応じて動作は異なるが、操作機器301の動作により、それぞれの建設機械30の動作が行われる。例えば、バックホウ30aであれば、遠隔操作により操作機器301の動作が制御され、クローラの動作、旋回体の旋回動作、ブームなどの動作が行われる。ホイールローダ30bも同様に遠隔操作により操作機器301の動作が制御され、各建設機械特有の動作が行われる。
【0027】
この実施形態においては、バックホウ30a、ホイールローダ30bも遠隔操作における制御構成は、基本的には同じである。これらのバックホウ30a、ホイールローダ30bを含めた建設機械30の構成を説明する。
【0028】
図1及び図2に示すように、建設機械30(バックホウ30a、ホイールローダ30b)のそれぞれは、車両制御部300と、車両用送受信部310と、操作機器301とエンジン302を搭載機器として備えている。車両制御部300は、演算処理装置により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータ及びソフトウェアを読み取り、当該データを対象としてソフトウェアに従った演算処理を実行し、各種機器の動作を制御する。
【0029】
車両制御部300は、車両用送受信部310と接続される。車両用送受信部310は、無線通信ネットワーク20を介して遠隔操作室10の操作室用送受信部12に接続される。
【0030】
車両制御部300は、車両用送受信部310との間でデータの送受信が行われる。車両用送受信部310は、無線通信ネットワーク20を介して遠隔操作室10の操作室用送受信部12との間でデータの送受信が行われる。
【0031】
車両制御部300は、操作機器301と、エンジン302とに接続され、これら機器の動作を制御する。
【0032】
車両制御部300は、遠隔操作室10から無線通信ネットワーク20を介して送られ、車両用送受信部310に受信された建設機械30の動作を制御する制御データに基づき、操作機器301、エンジン302等の動作を制御する。
【0033】
エンジン302は、例えば、図示しない油圧装置等を駆動し、建設機械30の各種機器、例えば、ショベル、ブーム等の駆動、旋回体の旋回駆動を行う駆動源として機能する。また、エンジン302は、クローラ、車輪を駆動させて建設機械30を移動させる駆動源として機能する。
【0034】
また、車両制御部300は、各種機器の実際の動作量、例えば、アーム、バケット、走行などの実際の動作量を変位センサなどにより検出し、検出した動作の各種状態を示す状態信号を車両用送受信部310に与える。建設機械30からの各種状態信号は、車両用送受信部310から無線通信ネットワーク20を介して遠隔操作室10の操作室用送受信部12に送られる。
【0035】
建設機械30は、遠隔操作が可能ものであれば、その形式、制御方式は問わない。例えば、遠隔操作及び自動運転用に構成された建設機械に限らず、作業者が運転するものを自動運転ができるように改良したものであってもよい。
【0036】
図1に従い、本発明の実施形態にかかる遠隔操作室10の構成を説明する。遠隔操作室10は、内部に、操作制御部11と、操作室用送受信部12と、データ変換部13と、液晶パネルなどからなるモニタ15と、遠隔操作用の入力装置としての操作部14とを備える。
【0037】
操作制御部11は、演算処理装置により構成され、メモリなどの記憶装置から必要なデータ及びソフトウェアを読み取り、当該データを対象としてソフトウェアに従った演算処理を実行し、各種機器の動作を制御する。操作制御部11は、例えば、パーソナルコンピュータにより構成することができる。
【0038】
操作制御部11からの操作制御信号は、データ変換部13に与えられる。データ変換部13は、操作制御部11からの制御信号をそれぞれの建設機械30に対応する制御フォーマットの建設機械用制御信号に変換する。
【0039】
データ変換部13は、操作室用送受信部12と接続される。操作室用送受信部12は、無線通信ネットワーク20を介して建設機械30の車両用送受信部310に接続される。
【0040】
操作室用送受信部12は、無線通信ネットワーク20を介して建設機械30の車両用送受信部310との間でデータの送受信が行われる。
【0041】
操作部14は、操作用タッチパネル、左右のジョイスティック形式の操作レバーなどからなり、操作部14により、対応する遠隔操作対象の建設機械30の作業動作の操作を行い、その操作に基づく制御信号を操作制御部11に与える。操作制御部11は、作業動作の制御信号をデータ変換部13により、建設機械30に対応する制御フォーマットの建設機械用制御信号に変換し、操作室用送受信部12に与える。操作室用送受信部12から無線通信ネットワーク20を介して建設機械30に制御信号が送信される。
【0042】
建設機械30は、送られてきた制御信号に基づき、車両制御部300が操作機器301の動作を制御し、建設機械30が遠隔操作により、作業を行う。
【0043】
図3に従い、データ変換部13の構成について説明する。データ変換部13は、制御部130、状態判別部131、変換テーブル132を備える。
【0044】
データ変換部13は、操作制御部11から操作制御信号を受け取り、受け取った操作制御信号を操作室用送受信部12に与え、操作室用送受信部12から無線通信ネットワーク20を介して建設機械30に送信する。
【0045】
制御部130は、操作制御部11から制御信号を記憶する。操作室用送受信部12を介して受信した建設機械30からの各種状態信号は、状態判別部131に与えられる。状態判別部131は、各種状態信号に基づいて建設機械の各種動作を学習する。制御部130は、状態判別部131の学習結果と操作制御部11から制御信号との対応関係を算出し、算出した対応関係により操作制御部11からの操作制御信号を建設機械用制御信号に変換する。操作制御信号と建設機械用制御信号との対応関係は変換テーブル132に格納される。
【0046】
次に、本実施形態の動作につき説明する。建設機械の機種が異なれば同じメーカでも操作系が異なる。また、メーカが異なれば、同じ機種の建設機械でも操作系が異なる。そこで、この実施形態においては、まず、操作部14により、対応する遠隔操作対象の建設機械30の作業動作の操作を行う。この時、メーカ、建設機械の機種等の情報もデータ変換部13に与える。
【0047】
データ変換部13は、操作制御部11から操作制御信号を受け取り、受け取った操作制御信号を操作室用送受信部12に与え、操作室用送受信部12から無線通信ネットワーク20を介して建設機械30に送信する。
【0048】
まず、予め決められた操作制御信号に基づく制御フォーマットに基づいた建設機械用制御信号を操作室用送受信部12から無線通信ネットワーク20を介して建設機械30に送信する。
【0049】
車両制御部300は、遠隔操作室10から無線通信ネットワーク20を介して送られ、車両用送受信部310に受信された建設機械30の動作を制御する制御データに基づき、操作機器301、エンジン302等の動作を制御する。
【0050】
建設機械30の車両制御部300は、各種機器の実際の動作量、例えば、アーム、バケット、走行などの実際の動作量を変位センサなどにより検出する。そして、建設機械30からの各種状態信号は、車両用送受信部310から無線通信ネットワーク20を介して遠隔操作室10の操作室用送受信部12に送られる。
【0051】
データ変換部13の状態判別部131は、受信した建設機械30からの各種状態信号に基づいて建設機械の各種動作を学習する。制御部130は、状態判別部131の学習結果と操作制御部11から制御信号との対応関係を算出する。これにより、建設機械30の動作に基づく建設機械用制御信号が把握できる。建設機械30を所望の動作をさせるための建設機械用制御信号と操作制御信号の対応関係が得られ、この対応関係を変換テーブル132に格納させる。
【0052】
この事前準備により、予め建設機械30に対応した制御フォーマットなどを入手できない場合においても、共用の操作部14からの制御信号に基づく建設機械30に対応した建設機械用制御信号を得ることができる。
【0053】
上記したように、建設機械30を動作させ、各動作に対応する各種状態信号をデータ変換部13が受け取り、受け取った各種状態信号に基づいて建設機械30の各種動作を学習し、学習の結果を用いて操作部14からの建設機械30の制御信号を建設機械に対応した建設機械用制御信号に変換する。これにより、予め建設機械30に対応した制御フォーマットなどを入手できない場合においても、共用の操作部14からの制御信号を建設機械30に対応した建設機械用制御信号に変換して送信し、建設機械の遠隔操作を行うことができる。また、建設機械30を動作させた状態信号を得ることができるので、経年変化等があってもこれから遠隔操作や自動運転させる建設機械30の状態に応じた制御信号を生成することができる。この結果、建設機械30の経年変化に対応した制御が行える。
【0054】
また、上記したように、データ変換部13は、各種状態信号に基づいて建設機械30の各種動作を学習し、学習の結果を用いて操作部14からの建設機械30の制御信号を建設機械30に対応した制御フォーマットに変換する変換テーブル132を作成する。作成した変換テーブル132に基づいて、操作制御部11から制御信号をそれぞれの建設機械30に対応した制御フォーマットの建設機械用制御信号に変換する。
【0055】
変換テーブル132に基づき、建設機械用制御信号に変換して建設機械30に送信することができるので、データ変換が容易に行える。
【0056】
次に、SLAMに用いる地図情報等を取得するために建設機械30(ホイールローダ30b)を動作させたときの情報に基づいて学習をする例につき説明する。
【0057】
図4は、SLAM技術を用いてずりを搬出する状態を示す模式図である。図4に従い、SLAM技術を用いてずりをホイールローダ30bの自動運転により搬出する作業について説明する。ホイールローダ30bの自動運転によりトンネル5の切羽53の発破で発生したずり(岩石)56を坑口52側に搬送し、トンネル5の外に搬出する。図4に示すように、ホイールローダ30bと、ホイールローダ30bに積み込まれたずりを受け入れるホッパー41を備えたクラッシャ装置40と、クラッシャ装置40により粉砕されたずりを搬送するベルトコンベア42とを備えている。
【0058】
ホイールローダ30bは、トンネル5の坑内51を下流側から上流側に自動運転によって移動し、切羽53近傍で自動運転によりずり56を積み込む。そして、ホイールローダ30bは、自動運転により移動し、クラッシャ装置40の位置まで来ると停止し、ずり56をホッパー41へ投入する。
【0059】
SLAM技術を用いるため、準備工程により、作業者がホイールローダ30bを運転し、ずり56の搬出動作を行う。この作業により得られた地図情報を含む自動運転に関する自動運転用制御情報を得る。この準備工程の作業中にホイールローダ30bは、この作業に基づく各種動作の状態信号を遠隔操作室10のデータ変換部13に与える。トンネル5の坑内51の移動と作業の状態をデータ変換部13に与えることにより、坑内51の作業に対応した建設機械用制御信号を得ることができる。
【0060】
トンネル5の坑内51には測位用衛星からの電波が届かず、GNSSを用いた自己位置の推定を行えない。そのため、本実施形態ではSLAMを用いた位置推定技術により、準備工程時のホイールローダ30bの位置推定および自動運転時におけるホイールローダ30bの位置推定を行う。
【0061】
ホイールローダ30bは、LiDAR装置30cを備え、LiDAR装置30cは、ホイールローダ30bの位置である計測位置からみた計測範囲における物体表面の各被計測点を座標点として、各座標点の位置(座標)を点群データとして取得する。この点群データを用いてSLAMによる位置推定が行われる。
【0062】
ホイールローダ30bは、SLAMを用いて位置推定を行い、切羽53へ移動し、ずり56の検出を行う。ホイールローダ30bは、ずり56の検出を行うとずり56を積み込む。ずり56を積み込んだホイールローダ30bは下流側のクラッシャ装置40へ移動する。ホイールローダ30bは、クラッシャ装置40まで、SLAMを用いた位置推定技術により移動する。クラッシャ装置40まで到達すると、ホイールローダ30bは停止する。そして、ホイールローダ30bはクラッシャ装置40のホッパー41へずり56を投入する。このようにして、予め投入後、ホイールローダ30bは、上流側の切羽53に向かって移動し、ずり56の積み込みを行う。ずり56がなくなるまで上記の動作を繰り返す。
【0063】
このように、SLAMに用いる地図情報等を取得するために建設機械30(ホイールローダ30b)を動作させたときの情報に基づいて状態信号を得ることができるので、経年変化等があってもこれから自動運転させる建設機械の状態に応じた制御信号を生成することができる。この結果、建設機械の経年変化に対応した制御が行える。
【0064】
上述した実施形態と変形例の任意の組合せもまた本発明の実施形態として有用である。組合せによって生じる新たな実施形態は、組み合わされる各実施形態及び変形例それぞれの効果をあわせもつ。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、メーカ、機種などが異なる建設機械の自動運転を共通の操作装置で操作する遠隔操作装置に利用することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 :遠隔操作室
11 :操作制御部
12 :操作室用送受信部
13 :データ変換部
14 :操作部
15 :モニタ
20 :無線通信ネットワーク
30 :建設機械
30b :ホイールローダ
130 :制御部
131 :状態判別部
132 :変換テーブル
300 :車両制御部
301 :操作機器
302 :エンジン
310 :車両用送受信部
図1
図2
図3
図4