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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143478
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】薬剤バイアル保持チャック
(51)【国際特許分類】
   A61J 3/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61J3/00 310K
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056187
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000153030
【氏名又は名称】株式会社ジェイ・エム・エス
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 秀俊
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA05
4C047BB01
4C047CC14
4C047EE02
4C047GG02
4C047HH06
(57)【要約】
【課題】外径や長さの異なる複数種の薬剤バイアルをしっかりと保持できるようにする。
【解決手段】薬剤バイアル保持チャック1は、薬剤バイアルを径方向両側から挟持する第1挟持部材10及び第2挟持部材20と、第1挟持部材10及び第2挟持部材20の少なくとも一方を他方に接離する方向に駆動する駆動部30と、第1挟持部材10が有する第1挟持面11において薬剤バイアルの軸線に沿った第1の方向に互いに間隔をあけて複数箇所に配置され、第1の方向に対して交差する第2の方向に延びる弾性材からなる複数の第1滑り止め部15とを備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤が収容された薬剤バイアルを保持する薬剤バイアル保持チャックであって、
前記薬剤バイアルを径方向両側から挟持する第1挟持部材及び第2挟持部材と、
前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の少なくとも一方を他方に接離する方向に駆動する駆動部と、
前記第1挟持部材が有する第1挟持面において前記薬剤バイアルの軸線に沿った第1の方向に互いに間隔をあけて複数箇所に配置され、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に延びる弾性材からなる複数の第1滑り止め部とを備えていることを特徴とする薬剤バイアル保持チャック。
【請求項2】
請求項1に記載の薬剤バイアル保持チャックにおいて、
前記第2挟持部材が有する第2挟持面において前記薬剤バイアルの軸線に沿った第1の方向に互いに間隔をあけて複数箇所に配置され、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に延びる弾性材からなる複数の第2滑り止め部を備えていることを特徴とする薬剤バイアル保持チャック。
【請求項3】
請求項1に記載の薬剤バイアル保持チャックにおいて、
前記第1挟持面には、前記第2の方向に延びる複数の第1溝が前記第1の方向に互いに間隔をあけて形成され、
前記第1滑り止め部は、前記第1溝に嵌め込まれた状態で前記第1挟持面に保持されていることを特徴とする薬剤バイアル保持チャック。
【請求項4】
請求項3に記載の薬剤バイアル保持チャックにおいて、
前記第1溝の長手方向に直交する方向の断面形状は、180°を超える中心角を持った円弧状をなしており、
前記第1滑り止め部の長手方向に直交する方向の断面形状は、円形であることを特徴とする薬剤バイアル保持チャック。
【請求項5】
請求項4に記載の薬剤バイアル保持チャックにおいて、
前記第1溝の長手方向に直交する方向の断面よりも大きく設定された断面を有する前記第1滑り止め部が前記第1溝に嵌め込まれていることを特徴とする薬剤バイアル保持チャック。
【請求項6】
請求項1に記載の薬剤バイアル保持チャックにおいて、
前記第1挟持部材の前記第1挟持面は、前記第1の方向に延びる2つの面が互いに所定の角度で交差することによって形成されていることを特徴とする薬剤バイアル保持チャック。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、薬剤が収容された薬剤バイアルを保持する薬剤バイアル保持チャックに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1には、薬剤を調合する際に使用されるシステムが開示されている。特許文献1に開示されているシステムは、薬剤バイアル及びシリンジが収容される安全キャビネットと、安全キャビネット内部で動作するロボットアームとを備えている。ロボットアームにより、安全キャビネット内部で薬剤バイアル及びシリンジを移動させて調合プロセスにおける各工程を操作者の介入なしに、ソフトウェアに基づいて実行可能になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2016-536079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているようなシステムは、薬剤を操作者の介入なしに調製可能なシステムであり、薬剤自動調製装置等と呼ばれている。薬剤自動調製装置を用いた薬剤自動調製の際には、調製デバイスに対して薬剤バイアルを脱着する脱着工程がある。
【0005】
脱着工程において、調製デバイスに対して薬剤バイアルを装着する際には調製デバイスを薬剤バイアルに押し込む一方、装着されている薬剤バイアルを調製デバイスから切り離す際には、薬剤バイアルを保持具で保持した状態で調製デバイスから引き抜く操作を行うことになる。薬剤バイアルを調製デバイスから引き抜く際には薬剤バイアルをしっかりと保持しておく必要があり、そうしなければ引き抜き動作によって薬剤バイアルが保持具から離脱し、落下、破損してしまうおそれがある。
【0006】
ところが、薬剤バイアルの胴部の外径は例えば20mm~52mm程度の範囲でばらついでおり、また薬剤バイアルの長さは例えば38mm~100mm程度の範囲でばらついている。このようなばらつきのある複数の薬剤バイアルを共通の保持具でしっかりと保持することは難しいと考えられる。よって、例えば小径用の保持具、大径用の保持具等、複数種の保持具を用意し、薬剤バイアルの径に応じた保持具への交換作業が必要になり、操作が煩雑になる。
【0007】
本開示は、かかる点に鑑みたものであり、その目的とするところは、外径や長さの異なる複数種の薬剤バイアルをしっかりと保持できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本開示の一態様では、薬剤が収容された薬剤バイアルを保持する薬剤バイアル保持チャックを前提とすることができる。薬剤バイアル保持チャックは、前記薬剤バイアルを径方向両側から挟持する第1挟持部材及び第2挟持部材と、前記第1挟持部材及び前記第2挟持部材の少なくとも一方を他方に接離する方向に駆動する駆動部と、前記第1挟持部材が有する第1挟持面において前記薬剤バイアルの軸線に沿った第1の方向に互いに間隔をあけて複数箇所に配置され、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に延びる弾性材からなる複数の第1滑り止め部とを備えている。
【0009】
この構成によれば、駆動部で駆動される第1挟持部材及び第2挟持部材によって薬剤バイアルが径方向両側から挟持される。このとき、第1挟持部材及び第2挟持部材の少なくとも一方を他方に接離する方向に移動するので、外径が大きな薬剤バイアルの場合には第1挟持部材及び第2挟持部材の間隔を広くし、一方、外径が小さな薬剤バイアルの場合には第1挟持部材及び第2挟持部材の間隔を狭くすることで、外径の異なる複数種の薬剤バイアルを挟持することが可能になる。
【0010】
薬剤バイアルが挟持されると、第1挟持部材の第1挟持面に配置されている複数の第1滑り止め部が薬剤バイアルの外面に押し付けられる。各第1滑り止め部は弾性材からなるものなので、各第1滑り止め部は、薬剤バイアルの外面に沿うように変形する。これにより、薬剤バイアルの外径の異なっても、複数の第1滑り止め部が薬剤バイアルの外面に確実に接触して滑り止め効果を発揮する。また、複数の第1滑り止め部が薬剤バイアルの軸線に沿った方向に互いに間隔をあけて配置されているので、薬剤バイアルの長さが短くても長くても、第1滑り止め部が薬剤バイアルの外面に接触する。
【0011】
前記第2挟持部材が有する第2挟持面において前記薬剤バイアルの軸線に沿った第1の方向に互いに間隔をあけて複数箇所に配置され、前記第1の方向に対して交差する第2の方向に延びる弾性材からなる複数の第2滑り止め部を備えていてもよい。これにより、薬剤バイアルに対して径方向両側から複数の第1滑り止め部及び第2滑り止め部を接触させることができる。
【0012】
前記第1挟持面には、前記第2の方向に延びる複数の第1溝が前記第1の方向に互いに間隔をあけて形成されていてもよい。この場合、前記第1滑り止め部は、前記第1溝に嵌め込まれた状態で前記第1挟持面に保持することができる。すなわち、第1滑り止め部が劣化した場合には、第1溝から第1滑り止め部を取り外した後、新しい第1滑り止め部を第1溝に嵌め込めばよく、第1滑り止め部の交換が容易に行える。
【0013】
前記第1溝の長手方向に直交する方向の断面形状は、180°を超える中心角を持った円弧状をなしていてもよい。この場合、前記第1滑り止め部の長手方向に直交する方向の断面形状を円形とすることで、第1溝に嵌め込まれた第1滑り止め部が脱落し難くなる。
【0014】
前記第1溝の長手方向に直交する方向の断面よりも大きく設定された断面を有する前記第1滑り止め部が前記第1溝に嵌め込まれていてもよい。すなわち、第1溝の断面よりも大きな断面を有する第1滑り止め部が第1溝に嵌め込まれると、第1滑り止め部が弾性変形して第1溝の開放部分から突出するような形状になる。これにより、第1滑り止め部を薬剤バイアルに確実に接触させることができる。
【0015】
前記第1挟持部材の前記第1挟持面は、前記第1の方向に延びる2つの面が互いに所定の角度で交差することによって形成されていてもよい。これにより、外径の異なる複数種の薬剤バイアルのそれぞれの外面に対応するように第1挟持面を形成できる。
【発明の効果】
【0016】
以上説明したように、弾性材からなる滑り止め部を、薬剤バイアルの軸線に沿った第1の方向に互いに間隔をあけて複数配置するとともに、第1の方向に対して交差する第2の方向に延びるように形成したので、外径や長さの異なる複数種の薬剤バイアルをしっかりと保持できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態1に係る薬剤バイアル保持チャックの斜視図である。
図2】薬剤バイアルを保持した図1相当図である。
図3図2の部分断面図である。
図4】第1挟持部材の部分断面図である。
図5】第1挟持面近傍を拡大して示す斜視図である。
図6】本発明の実施形態2に係る薬剤バイアル保持チャックの一部を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。
【0019】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1に係る薬剤バイアル保持チャック1を示すものである。薬剤バイアル保持チャック1は、例えば薬剤自動調製装置(図示せず)の一部として使用される器具であり、薬剤が収容された薬剤バイアル100を保持するために用いられる。薬剤自動調製装置では、各種調製デバイス(図示せず)に対して薬剤バイアル100(図2に示す)を脱着する脱着工程が行われる。脱着工程において、調製デバイスに対して薬剤バイアル100を装着する際には調製デバイスを薬剤バイアルに押し込む一方、装着されている薬剤バイアル100を調製デバイスから切り離す際には、薬剤バイアル100を薬剤バイアル保持チャック1で保持した状態で調製デバイスから引き抜く操作を行うことになる。尚、調製デバイスは、薬剤バイアル100内に溶解液を注入することや、薬剤バイアル100内の薬液を吸入することが可能に構成されている。
【0020】
薬剤バイアル100は、特に限定されるものではないが、例えば粉末製剤としての抗がん剤が収容された薬剤バイアル等であり、例えばガラス等で構成されている。薬剤バイアル100は透光性を有していてもといし、遮光性を有していてもよい。また、薬剤バイアル100には、乾燥凍結剤等が収容されていてもよい。
【0021】
薬剤自動調製装置では、薬剤バイアル100内に溶解液を注入した後、粉末製剤及び溶解液が収容された薬剤バイアル100を振とうすることで粉末製剤を溶解液に溶解させることができる。溶解液は、例えば生理的食塩水等を挙げることができるが、これに限られるものではない。粉末製剤を溶解液に溶解させた後、患者への投与が行われる。尚、薬剤バイアル100の材質や形状は特に限定されない。また、薬剤バイアル100に収容されている粉末製剤は、抗がん剤以外の薬剤であってもよい。
【0022】
薬剤バイアル100は、底部101と、胴部102と、肩部103と、首部104と、キャップ105とを備えている。図示しないが、キャップ105には注射針を穿刺可能な栓体が設けられており、注射器を利用して薬剤バイアル100内に溶解液を所定量注入することが可能になっている。
【0023】
底部101は底面視で円形に近い形状とされている。胴部102は、底部101の周縁部から上方へ立ち上がるように形成されており、概ね底部101の径と等しい外径を有する円筒状をなしている。肩部103は、胴部102の上端部から薬剤バイアル100の径方向中央部へ接近するように延びており、薬剤バイアル100の径方向中央部へ接近すればするほど上に位置するように傾斜している。首部104は、肩部103の径方向内側の端部から上方へ延びる円筒状をなしている。キャップ105は、首部104の上端部に嵌合しており、首部104の外径よりも大きな外径を有している。
【0024】
粉末製剤が収容されている薬剤バイアル100は、高さ方向の寸法や外径の異なる複数種のものがある。例えば薬剤バイアル100の容量が小さなものでは、胴部102の高さ方向の寸法が短くなって薬剤バイアル100の背が低くなる一方、薬剤バイアル100の容量が大きなものでは、胴部102の高さ方向の寸法が長くなって薬剤バイアル100の背が高くなる。胴部102の高さ方向の寸法が変わることで、肩部103の高さ方向の位置及び首部104の高さ方向の位置が変わる。また、胴部102の外径を小さくすることで薬剤バイアル100の容量を小さくすることや、胴部102の外径を大きくすることで薬剤バイアル100の容量を大きくすることもある。
【0025】
薬剤バイアル保持チャック1は、薬剤バイアル100を径方向両側から挟持する第1挟持部材10及び第2挟持部材20と、第1挟持部材10及び第2挟持部材20を互いに接離する方向に駆動する駆動部30とを備えている。薬剤バイアル100は、その軸線が上下方向となる姿勢とされて第1挟持部材10及び第2挟持部材20により挟持される。図1図3に示すように、薬剤バイアル保持チャック1の左右方向と奥行方向とを定義するが、これは説明のために定義するだけであり、薬剤バイアル保持チャック1の使用時の方向を限定するものではなく、どのような向きで薬剤バイアル保持チャック1を使用してもよい。
【0026】
駆動部30は、筐体31と、筐体31の内部に収容された電動モータ(図示せず)と、電動モータの回転運動を直線運動に変換する運動変換機構(図示せず)とを備えている。筐体31は、左右方向に長く形成されており、例えば基台(図示せず)等に固定されていてもよいし、ロボットアーム(図示せず)等で把持されていてもよい。電動モータには、外部の制御部(図示せず)が接続されており、制御部を介して制御信号が入力されるようになっている。また、制御部には、操作スイッチ等を含む操作部(図示せず)が接続されていてもよい。例えば制御部が所定のタイミングで電動モータを正転方向または逆転方向させることで、第1挟持部材10及び第2挟持部材20を動作させることが可能になっている。制御部により、薬剤バイアル100の挟持力を設定することができる。薬剤バイアル100の強度や材質等に対応するように挟持力を設定することで、薬剤バイアル100を安全に保持できる。また、制御部により、第1挟持部材10及び第2挟持部材20の移動速度を調整することもできる。
【0027】
運動変換機構は、例えば送りネジ機構等で構成することができる。送りネジ機構は、ネジ棒とナットとを含んでおり、ネジ棒は筐体31の内部において左右方向に沿うように配置されている。電動モータによってネジ棒を回転させると、筐体31に対して回転不能に支持されたナットが左右方向にのみ直線移動する。例えば、2組の送りネジ機構を設けておき、一方の送りネジ機構のナットに第1移動部材33を固定し、他方の送りネジ機構のナットに第2移動部材34を固定することで、第1移動部材33と第2移動部材34を同時に移動させることができる。このような動きを実現することが可能であればよいので、運動変換機構は送りネジ機構に限定されるものではない。
【0028】
第1移動部材33は、筐体31の上面から露出するように配設されており、筐体31の左右方向中心部よりも左側部分で左右方向に直線移動するようになっている。第2移動部材34は、筐体31の上面から露出するように配設されており、筐体31の左右方向中心部よりも右側部分で左右方向に直線移動するようになっている。第1移動部材33に第1挟持部材10が固定され、また、第2移動部材34に第2挟持部材20が固定されている。
【0029】
この実施形態では、第1移動部材33及び第2移動部材34が移動するようになっているので、第1挟持部材10及び第2挟持部材20も同様に移動することになる。具体的には、第1挟持部材10が右方向へ移動するとともに第2挟持部材20が左方向へ移動することで、第1挟持部材10及び第2挟持部材20が互いに接近する方向に移動する。また、第1挟持部材10が左方向へ移動するとともに第2挟持部材20が右方向へ移動することで、第1挟持部材10及び第2挟持部材20が互いに離れる方向に移動する。尚、第1挟持部材10を固定しておき、第2挟持部材20のみ左右方向に移動させてもよいし、第2挟持部材20を固定しておき、第1挟持部材10のみ左右方向に移動させてもよい。
【0030】
第1挟持部材10は、例えば金属や硬質樹脂材からなる高剛性な部材で構成されており、第1移動部材33に固定された状態で筐体31の上面から上方へ突出ように配置される。第1挟持部材10の第1移動部材33への固定構造は特に限定されるものではないが、例えばネジやボルト等の締結部材を利用した締結構造を採用することができる。これにより、第1挟持部材10を第1移動部材33に対して着脱自在に取り付けることができる。
【0031】
第2挟持部材20は、第1挟持部材10と同様に構成されており、第1挟持部材10と同様に第2移動部材34に対して着脱自在に取り付けられている。第2挟持部材20は、第2移動部材34に固定された状態で筐体31の上面から上方へ突出し、第1挟持部材10と左右方向に対向するように配置される。
【0032】
第1挟持部材10における右側部分は、第2挟持部材20と対向する部分である。第1挟持部材10における右側部分には、第1挟持面11が設けられている。第1挟持面11は、第1挟持部材10の手前側に位置する手前側面11aと、第1挟持部材10の奥側に位置する奥側面11bとを有している。手前側面11a及び奥側面11bは上下方向に延びており、手前側面11a及び奥側面11bが互いに所定の角度で交差することにより、第1挟持面11が形成されている。
【0033】
具体的に説明すると、手前側面11aは、第1挟持部材10の手前側の端部近傍から奥側へ向かい、奥側へ行くほど左に位置するように、即ち、第2挟持部材20から離れるように形成されている。奥側面11bは、第1挟持部材10の奥側の端部近傍から手前側へ向かい、手前側へ行くほど左に位置するように、即ち、第2挟持部材20から離れるように形成されている。これにより、第1挟持面11は、奥行方向中央部が最も左に位置し、手前側へ行くほど、及び奥側へ行くほど右に位置するように形成されることになり、平面視で右に向けて開放したV字状となる。手前側面11aと奥側面11bとが接続されており、手前側面11aと奥側面11bとのなす角度は、特に限定されるものではないが、例えば90°以上130°の範囲で設定することができ、この実施形態では120°とされている。尚、図示しないが、手前側面11aと奥側面11bとが接続されていなくてもよく、手前側面11aと奥側面11bとの間に隙間が形成されていてもよい。
【0034】
第1挟持部材10における右側部分の下部には、右へ向けて延びる第1延出部12が設けられている。第1延出部12は、筐体31の上面に沿うように形成されている。薬剤バイアル100の底部101が第1延出部12の上面に載置されるようになっている。
【0035】
図4に示すように、手前側面11aには、奥行方向に延びる複数の手前側第1溝11cが上下方向に互いに間隔をあけて形成されている。手前側面11aが奥側へ行くほど左に位置するように形成されることから、手前側第1溝11cも奥側へ行くほど左に位置するように形成されることになる。
【0036】
手前側第1溝11cの形状は全て同じである。図5に示すように、手前側第1溝11cの長手方向に直交する方向(上下方向)の断面形状は、180°を超える中心角を持った円弧状をなしている。より具体的には、手前側第1溝11cの上縁部は、下へ向けて突出するとともに手前側第1溝11cの長手方向に沿って延びる上側突条部11eを有している。手前側第1溝11cの下縁部は、上へ向けて突出するとともに手前側第1溝11cの長手方向に沿って延びる下側突条部11fを有している。上側突条部11e及び下側突条部11fの形成により、手前側第1溝11cの開放部分の幅W1を、当該手前側第1溝11cの深さ方向中間部の幅W2に比べて狭くすることができる。
【0037】
この実施形態では、図4に示すように6つの手前側第1溝11cが形成されている例について示しているが、手前側第1溝11cの数は6つに限定されるものではなく、2つ以上の任意の数に設定することができる。上側の3つの手前側第1溝11cと、下側の3つの手前側第1溝11cとの間には、第1凹部13が手前側面11aから奥側面11bに亘って形成されている。
【0038】
奥側面11bには、奥行方向に延びる複数の奥側第1溝11dが上下方向に互いに間隔をあけて形成されている。奥側面11bが奥側へ行くほど右に位置するように形成されることから、奥側第1溝11dも奥側へ行くほど右に位置するように形成されることになる。奥側第1溝11dは、手前側第1溝11cと同様に、全て同じ形状であり、6つ形成されている。手前側第1溝11cと奥側第1溝11dとは同じ形状である。手前側第1溝11cと奥側第1溝11dとは同じ高さに配置されている。よって、上側の3つの奥側第1溝11dと、下側の3つの奥側第1溝11dとの間には、第1凹部13が位置することになる。
【0039】
第1挟持部材10及び第2挟持部材20により挟持される時の薬剤バイアル100の軸線は上下方向に延びており、従って、第1挟持部材10が有する第1挟持面11において薬剤バイアル100の軸線に沿った第1の方向は、上下方向となる。また、奥行方向は、上下方向に対して直交しており、第1の方向に対して交差する第2の方向となる。
【0040】
薬剤バイアル保持チャック1は、第1挟持部材10の第1挟持面11において薬剤バイアル100の軸線に沿った上下方向に互いに間隔をあけて複数箇所に配設され、上下方向に対して交差する奥行方向に延びる弾性材からなる複数の第1滑り止め部15を備えている。第1滑り止め部15は、手前側第1溝11c及び奥側第1溝11dにそれぞれ嵌め込まれた状態で第1挟持面11に保持されている。
【0041】
第1滑り止め部15は、例えばゴムや熱可塑性エラストマー等で構成されており、表面の摩擦係数が第1挟持部材10を構成する材料の摩擦係数よりも高い部材からなる。第1滑り止め部15の長手方向に直交する方向の断面形状は、円形である。第1滑り止め部15の外径は、手前側第1溝11cの断面を構成する円弧の径よりも大きく設定されている。従って、手前側第1溝11cの長手方向に直交する方向の断面よりも大きく設定された断面を有する第1滑り止め部15が手前側第1溝11cに嵌め込まれることになる。また、第1滑り止め部15の外径は、手前側第1溝11cの開放部分の幅W1よりも大きく設定されている。
【0042】
第1滑り止め部15を手前側第1溝11cに嵌め込む際には、第1滑り止め部15を手前側第1溝11cの開放部分に押し付ける。これにより、第1滑り止め部15が弾性変形しながら、手前側第1溝11cの開放部分から当該手前側第1溝11cの内部に入っていく。第1滑り止め部15が手前側第1溝11cに完全に入ると、図5に実線で示すように、手前側第1溝11cの開放部分から突出するような形状になる。図5に破線で示している形状は、第1滑り止め部15が弾性変形する前の形状である。奥側第1溝11dにも、同様にして第1滑り止め部15が嵌め込まれている。第1滑り止め部15を取り外す際には、第1滑り止め部15を工具(図示せず)によって掴んで引っ張り出すようにすればよい。
【0043】
第2挟持部材20は、第1挟持部材10と左右対称形状とされている。すなわち、第2挟持部材20における左側部分は、第1挟持部材10と対向する部分である。第2挟持部材20における左側部分には、第2挟持面21が設けられている。第2挟持面21は、第2挟持部材20の手前側に位置する手前側面21aと、第2挟持部材20の奥側に位置する奥側面21bとを有している。第1挟持面11と同様に、手前側面21a及び奥側面21bは上下方向に延びており、手前側面21aは、第2挟持部材20の手前側の端部近傍から奥側へ向かい、奥側へ行くほど右に位置するように、即ち、第1挟持部材10から離れるように形成されている。奥側面21bは、第2挟持部材20の奥側の端部近傍から手前側へ向かい、手前側へ行くほど右に位置するように、即ち、第1挟持部材10から離れるように形成されている。手前側面21a及び奥側面21bによって形成される第2挟持面21は、奥行方向中央部が最も右に位置し、手前側へ行くほど、及び奥側へ行くほど左に位置するように形成されることになり、平面視で左に向けて開放したV字状となる。
【0044】
第2挟持部材20における左側部分の下部には、左へ向けて延びる第2延出部22が設けられている。第2延出部22は、筐体31の上面に沿うように形成されている。薬剤バイアル100の底部101が第2延出部22の上面に載置されるようになっている。
【0045】
第2挟持部材20の手前側面21aには、奥行方向に延びる複数の手前側第2溝(図示せず)が上下方向に互いに間隔をあけて形成されている。手前側面21aが奥側へ行くほど右に位置するように形成されることから、手前側第2溝も奥側へ行くほど右に位置するように形成されることになる。
【0046】
図3に示すように、第2挟持部材20の奥側面21bには、奥行方向に延びる複数の奥側第2溝21dが上下方向に互いに間隔をあけて形成されている。奥側面21bが奥側へ行くほど左に位置するように形成されることから、奥側第2溝21dも奥側へ行くほど左に位置するように形成されることになる。奥側第2溝21dは、手前側第2溝と同様に、全て同じ形状であり、6つ形成されている。
【0047】
薬剤バイアル保持チャック1は、第2挟持部材20の第2挟持面21において薬剤バイアル100の軸線に沿った上下方向に互いに間隔をあけて複数箇所に配設され、上下方向に対して交差する奥行方向に延びる弾性材からなる複数の第2滑り止め部25を備えている。第2滑り止め部25は、第1滑り止め部15と同様に、手前側第2溝及び奥側第2溝21dにそれぞれ嵌め込まれた状態で第2挟持面21に保持されている。第2滑り止め部25の高さと、第1滑り止め部15の高さとは同じに設定されている。また、第2滑り止め部25と、第1滑り止め部15とは同じ部材で構成されている。尚、第2滑り止め部25の高さと、第1滑り止め部15の高さとは異なっていてもよいし、第2滑り止め部25と、第1滑り止め部15とは異なる部材で構成されていてもよい。
【0048】
次に、上記のように構成された薬剤バイアル保持チャック1の使用方法について説明する。薬剤バイアル100を薬剤バイアル保持チャック1で保持する際には、駆動部30を制御して第1移動部材33及び第2移動部材34を互いに離れる方向に移動させる。これにより、第1挟持部材10及び第2挟持部材20の間隔が広がる。第1挟持部材10及び第2挟持部材20の間隔は、薬剤バイアル100の外径よりも広くしておく。
【0049】
その後、薬剤バイアル100を第1挟持部材10及び第2挟持部材20の間に配置する。このとき、薬剤バイアル100を例えばロボットアーム等により移動させて第1挟持部材10及び第2挟持部材20の間に配置してもよいし、操作者が移動させて第1挟持部材10及び第2挟持部材20の間に配置してもよい。
【0050】
薬剤バイアル100を第1挟持部材10及び第2挟持部材20の間に配置した後、駆動部30を制御して第1移動部材33及び第2移動部材34を互いに接近する方向に移動させる。これにより、第1挟持部材10及び第2挟持部材20の間隔が狭まり、第1挟持部材10に保持されている複数の第1滑り止め部15が薬剤バイアル100の外面に接触し、さらに第2挟持部材20に保持されている複数の第2滑り止め部25が薬剤バイアル100の外面に接触する。よって、薬剤バイアル100が径方向両側から第1挟持部材10及び第2挟持部材20によって挟持される。第1挟持部材10及び第2挟持部材20の動きは制御部によって制御されるものであり、薬剤バイアル100の破損を回避しつつ、薬剤バイアル100が脱落しないように挟持力や移動速度が設定されている。
【0051】
外径が大きな薬剤バイアル100の場合には第1挟持部材10及び第2挟持部材20の間隔を広くすることで、薬剤バイアル100を径方向両側から挟持することができる。一方、外径が小さな薬剤バイアルの場合には第1挟持部材10及び第2挟持部材20の間隔を狭くすることで、薬剤バイアル100を径方向両側から挟持することができる。このように、外径の異なる複数種の薬剤バイアル100を挟持することが可能であり、例えば直径が20mm以上54mm以下の薬剤バイアル100を安定して挟持できる。
【0052】
また、薬剤バイアル100が挟持されると、第1挟持部材10の第1挟持面11に配設されている複数の第1滑り止め部15が薬剤バイアル100の外面に押し付けられる。各第1滑り止め部15は弾性材からなるものなので、各第1滑り止め部15は、薬剤バイアル100の外面に沿うように変形する。これにより、薬剤バイアル100の外径の異なっても、複数の第1滑り止め部15が薬剤バイアル100の外面に確実に接触して滑り止め効果を発揮する。また、複数の第1滑り止め部15が薬剤バイアル100の軸線に沿った方向に互いに間隔をあけて配設されているので、薬剤バイアル100の長さが短くても長くても、第1滑り止め部15が薬剤バイアル100の外面に接触する。例えば長さが38mm以上100mm以下の薬剤バイアル100を安定して挟持できる。
【0053】
第2滑り止め部25も同様である。よって、薬剤バイアル100に対して径方向両側から複数の第1滑り止め部15及び第2滑り止め部15を接触させることができる。
【0054】
長期間の使用によって第1滑り止め部15が劣化することが想定される。第1滑り止め部15が劣化した場合には、第1溝11c、11dから第1滑り止め部15を取り外した後、新しい第1滑り止め部15を第1溝11c、11dに嵌め込めばよく、第1滑り止め部15の交換が容易に行える。第2滑り止め部25も同様に容易に交換できる。
【0055】
(実施形態2)
図6は、本発明の実施形態2に係る薬剤バイアル保持チャック1の一部を示す斜視図である。実施形態2では、第1滑り止め部及び第2滑り止め部が実施形態1のものと異なっており、他の部分は実施形態1と同じであるため、以下、実施形態1と同じ部分には同じ符号を付して説明を省略し、異なる部分について詳細に説明する。
【0056】
実施形態2では、第1挟持面11の手前側面11aと奥側面11bのそれぞれに、第1滑り止め部16を構成する1本の長尺状の弾性部材が保持されている。すなわち、奥側面11bには、複数回屈曲した第1溝11Aが形成されている。第1溝11Aは、手前側から奥側に向けて下降傾斜して延びる第1傾斜部11Aaと、奥側から手前側へ向けて下降傾斜して延びる第2傾斜部11Abとを有しており、第1傾斜部11Aa及び第2傾斜部11Abが屈曲部11Acを介して接続されている。
【0057】
第1滑り止め部16を構成している弾性部材は、第1溝11Aに嵌め込まれた状態で保持されており、第1溝11Aの形状と同様に複数回屈曲した形状とされている。第1滑り止め部16のうち、第1傾斜部11Aaに嵌め込まれた部分と、第2傾斜部11Abに嵌め込まれた部分は、それぞれ上下方向に対して交差する方向に延びる部分であり、これら部分が第1滑り止め部16となる。また、第2挟持面21にも第1滑り止め部16と同様に構成された第2滑り止め部26が設けられている。
【0058】
この実施形態2の場合も、実施形態1と同様な作用効果を奏することができるのに加えて、第1滑り止め部16及び第2滑り止め部26の数を減らすことができるので、部品点数を削減できる。
【0059】
上述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0060】
以上説明したように、本発明に係る薬剤バイアル保持チャックは、例えば薬剤自動調製装置の一部として利用できる。
【符号の説明】
【0061】
1 薬剤バイアル保持チャック
10 第1挟持部材
11 第1挟持面
11c 手前側第1溝
15 第1滑り止め部
20 第2挟持部材
21 第2挟持面
25 第2滑り止め部
30 駆動部
100 薬剤バイアル
図1
図2
図3
図4
図5
図6