(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143479
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】混練装置
(51)【国際特許分類】
B01F 27/116 20220101AFI20241003BHJP
B01F 27/722 20220101ALI20241003BHJP
B01F 27/723 20220101ALI20241003BHJP
B01F 27/74 20220101ALI20241003BHJP
B01F 33/70 20220101ALI20241003BHJP
B01J 3/00 20060101ALI20241003BHJP
B29B 7/18 20060101ALI20241003BHJP
B01F 27/1143 20220101ALI20241003BHJP
【FI】
B01F27/116
B01F27/722
B01F27/723
B01F27/74
B01F33/70
B01J3/00 A
B29B7/18
B01F27/1143
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056189
(22)【出願日】2023-03-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人科学技術振興機構、研究成果展開事業「超臨界CO2を用いた革新的なゴム混練プロセスの開発」委託研究、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】東 孝祐
(72)【発明者】
【氏名】原田 祥
(72)【発明者】
【氏名】岡本 幸也
(72)【発明者】
【氏名】川崎 亮太
(72)【発明者】
【氏名】山田 紗矢香
(72)【発明者】
【氏名】西村 真
【テーマコード(参考)】
4F201
4G036
4G078
【Fターム(参考)】
4F201AJ08
4F201BA01
4F201BC02
4F201BC12
4F201BK01
4F201BK14
4F201BK26
4F201BK54
4G036AC37
4G078AA13
4G078AA30
4G078AB06
4G078AB07
4G078BA01
4G078BA07
4G078CA01
4G078DA09
4G078DA10
4G078EA01
4G078EA15
(57)【要約】
【課題】超臨界状態または亜臨界状態の作動流体を用いて材料を混練する場合でも、材料に高い応力を付与できるようにする。
【解決手段】混練装置1は、混練室10aと、第一ロータ50と、第二ロータ60と、を備える。第一ロータ50の周方向における第一最外径円弧部51の長さは、第一仮想円50cの全周の長さの1/2以上である。第二ロータ60の周方向における第二最外径円弧部61の長さは、第二仮想円60cの全周の長さの1/2以上である。第二最外径円弧部61は、第一回転軸50aと第二回転軸60aとの間(A)で、第一最外径円弧部51と向かい合う場合がある。
【選択図】
図15
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超臨界状態または亜臨界状態の作動流体の存在下で、材料を混練させる部分である混練室と、
前記混練室の内部に配置され、第一回転軸を中心に回転する第一ロータと、
前記混練室の内部に配置され、前記第一ロータと平行に配置され、前記第一ロータと隣り合うように配置され、第二回転軸を中心に、前記第一ロータの回転方向とは逆向きに回転する第二ロータと、
を備え、
前記第一ロータは、前記第一回転軸が延びる方向から見たときに前記第一回転軸を中心とする円弧状であるとともに前記第一ロータのうち最も径方向外側の部分である第一最外径円弧部を備え、
前記第二ロータは、前記第二回転軸が延びる方向から見たときに前記第二回転軸を中心とする円弧状であるとともに前記第二ロータのうち最も径方向外側の部分である第二最外径円弧部を備え、
前記第一ロータの周方向における前記第一最外径円弧部の長さは、前記第一回転軸が延びる方向から見たときに前記第一最外径円弧部を通るとともに前記第一回転軸を中心とする仮想円である第一仮想円の全周の長さの1/2以上であり、
前記第二ロータの周方向における前記第二最外径円弧部の長さは、前記第二回転軸が延びる方向から見たときに前記第二最外径円弧部を通るとともに前記第二回転軸を中心とする仮想円である第二仮想円の全周の長さの1/2以上であり、
前記第二最外径円弧部は、前記第一回転軸と前記第二回転軸との間で、前記第一最外径円弧部と向かい合う場合がある、
混練装置。
【請求項2】
請求項1に記載の混練装置であって、
前記第一ロータと前記第二ロータとの最小間隔は、前記混練室の内面と前記第一ロータとの最小間隔よりも小さく、前記混練室の内面と前記第二ロータとの最小間隔よりも小さい、
混練装置。
【請求項3】
請求項1に記載の混練装置であって、
前記第一ロータは、前記第一ロータの径方向における内側に凹んだ形状を有する第一凹部を備え、
前記第二ロータは、前記第二ロータの径方向における内側に凹んだ形状を有する第二凹部を備える、
混練装置。
【請求項4】
請求項3に記載の混練装置であって、
前記第二凹部は、前記第一回転軸と前記第二回転軸との間で、前記第一凹部と向かい合う場合がある、
混練装置。
【請求項5】
請求項3に記載の混練装置であって、
前記第一ロータは、
前記第一回転軸を含む第一基部と、
前記第一基部から径方向外側に突出する2つ以上の第一凸部と、
を備え、
前記第一凹部は、前記第一ロータの周方向に隣り合う2つの前記第一凸部により形成される第一凸部間凹部を備え、
前記第二ロータは、
前記第二回転軸を含む第二基部と、
前記第二基部から径方向外側に突出する2つ以上の第二凸部と、
を備え、
前記第二凹部は、前記第二ロータの周方向に隣り合う2つの前記第二凸部により形成される第二凸部間凹部を備える、
混練装置。
【請求項6】
請求項5に記載の混練装置であって、
前記第二凸部は、前記第一回転軸と前記第二回転軸との間で、前記第一凸部と向かい合う場合がある、
混練装置。
【請求項7】
請求項6に記載の混練装置であって、
2つの前記第二凸部は、前記第一回転軸と前記第二回転軸との間で、2つの前記第一凸部と向かい合う場合がある、
混練装置。
【請求項8】
請求項6に記載の混練装置であって、
前記第一ロータの径方向における前記第一凸部の外側端部である第一凸部先端部は、前記第一回転軸が延びる方向から見たときに前記第一回転軸を中心とする円弧状であり、
前記第二ロータの径方向における前記第二凸部の外側端部である第二凸部先端部は、前記第二回転軸が延びる方向から見たときに前記第二回転軸を中心とする円弧状である、
混練装置。
【請求項9】
請求項8に記載の混練装置であって、
前記第一凸部先端部は、前記第一最外径円弧部であり、
前記第二凸部先端部は、前記第二最外径円弧部である、
混練装置。
【請求項10】
請求項5に記載の混練装置であって、
前記第一ロータの径方向における、前記第一回転軸から前記第一凸部間凹部までの最小長さは、前記第一ロータの径方向における、前記第一回転軸から前記第一基部の外側の面までの最大長さよりも小さく、
前記第二ロータの径方向における、前記第二回転軸から前記第二凸部間凹部までの最小長さは、前記第二ロータの径方向における、前記第二回転軸から前記第二基部の外側の面までの最大長さよりも小さい、
混練装置。
【請求項11】
請求項1に記載の混練装置であって、
前記第一ロータは、前記第一回転軸を中心として所定ねじれ方向にねじれた形状を有する第一ねじれ部を備え、
前記第二ロータは、前記第二回転軸を中心として前記所定ねじれ方向にねじれた形状を有する第二ねじれ部を備える、
混練装置。
【請求項12】
請求項1に記載の混練装置であって、
前記混練室は、
前記第一回転軸を中心とする内周面を有し、前記第一ロータを収容する第一ロータ収容室と、
前記第二回転軸を中心とする内周面を有し、前記第二ロータを収容する第二ロータ収容室と、
前記第一ロータ収容室および前記第二ロータ収容室から上に延び、前記第一回転軸と前記第二回転軸との間に配置されるロータ軸間上部室と、
を備える、
混練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、材料を混練する混練装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に、従来の混練装置が記載されている。同文献に記載の混練装置は、翼を有するロータ(特許文献1の要約、
図2などを参照)を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
超臨界状態または亜臨界状態の作動流体を用いて材料を混練する場合は、大気圧で混練する場合に比べ、材料の粘度が低下する。それに伴い、混練装置が材料に付与できる応力が低下し、材料の分散が不十分となるおそれがある。そのため、超臨界状態または亜臨界状態の作動流体を用いて材料を混練する場合でも、材料に高い応力を付与できることが望まれる。
【0005】
そこで、本発明は、超臨界状態または亜臨界状態の作動流体を用いて材料を混練する場合でも、材料に高い応力を付与することができる、混練装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
混練装置は、混練室と、第一ロータと、第二ロータと、を備える。前記混練室は、超臨界状態または亜臨界状態の作動流体の存在下で、材料を混練させる部分である。前記第一ロータは、前記混練室の内部に配置され、第一回転軸を中心に回転する。前記第二ロータは、前記混練室の内部に配置され、前記第一ロータと平行に配置され、前記第一ロータと隣り合うように配置され、第二回転軸を中心に、前記第一ロータの回転方向とは逆向きに回転する。前記第一ロータは、第一最外径円弧部を備える。前記第一最外径円弧部は、前記第一回転軸が延びる方向から見たときに前記第一回転軸を中心とする円弧状であるとともに前記第一ロータのうち最も径方向外側の部分である。前記第二ロータは、第二最外径円弧部を備える。前記第二最外径円弧部は、前記第二回転軸が延びる方向から見たときに前記第二回転軸を中心とする円弧状であるとともに前記第二ロータのうち最も径方向外側の部分である。前記第一ロータの周方向における前記第一最外径円弧部の長さは、第一仮想円の全周の長さの1/2以上である。前記第一仮想円は、前記第一回転軸が延びる方向から見たときに前記第一最外径円弧部を通るとともに前記第一回転軸を中心とする仮想円である。前記第二ロータの周方向における前記第二最外径円弧部の長さは、第二仮想円の全周の長さの1/2以上である。前記第二仮想円は、前記第二回転軸が延びる方向から見たときに前記第二最外径円弧部を通るとともに前記第二回転軸を中心とする仮想円である。前記第二最外径円弧部は、前記第一回転軸と前記第二回転軸との間で、前記第一最外径円弧部と向かい合う場合がある。
【発明の効果】
【0007】
上記の混練装置により、超臨界状態または亜臨界状態の作動流体を用いて材料を混練する場合でも、材料に高い応力を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】第1実施形態の混練装置1を軸方向Zから見た断面図である。
【
図3】
図1に示す混練装置1での材料Mの速度分布を示す図である。
【
図4】
図1に示す混練装置1を軸方向Zから見たときの材料Mの粒子分配を示す図である。
【
図5】第2実施形態の混練装置201を軸方向Zから見た断面図である。
【
図7】
図5に示す混練装置201での材料Mの速度分布を示す図である。
【
図8】
図5に示す混練装置201を軸方向Zから見たときの材料Mの粒子分配を示す図である。
【
図9】
図5に示す混練装置201を上下方向Yから見たときの材料Mの粒子分配を示す図である。
【
図10】第3実施形態の混練装置301を軸方向Zから見た断面図である。
【
図12】
図10に示す混練装置301での材料Mの速度分布を示す図である。
【
図13】
図10に示す混練装置301を軸方向Zから見たときの材料Mの粒子分配を示す図である。
【
図14】
図10に示す混練装置301を上下方向Yから見たときの材料Mの粒子分配を示す図である。
【
図15】第4実施形態の混練装置401を軸方向Zから見た断面図である。
【
図16】
図15に示す第一ロータ50と第二ロータ60とを軸方向Zから見た図である。
【
図18】
図15に示す1つの第一凸部453と1つの第二凸部463とが向かい合う場合の
図15相当図である。
【
図19】
図15に示す混練装置401での材料Mの速度分布を示す図である。
【
図20】
図15に示す混練装置401を軸方向Zから見たときの材料Mの粒子分配を示す図である。
【
図21】
図15に示す混練装置401を上下方向Yから見たときの材料Mの粒子分配を示す図である。
【
図22】比較例(例D1、例D2)の回転翼を示す斜視図である。
【
図23】材料に付与できる最大せん断応力を示すグラフである。
【
図24】材料に付与できる最大伸長応力を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1実施形態)
図1~
図4を参照して、第1実施形態の混練装置1について説明する。
【0010】
混練装置1(混練機)は、
図1に示すように、超臨界状態または亜臨界状態の作動流体を用いて、材料M(
図3参照(以下の材料Mについても同様))を混練する装置である。以下では、「超臨界状態または亜臨界状態」を、「超臨界状態など」ともいう。混練装置1は、例えばバッチ式である。混練装置1では、超臨界状態などの作動流体が材料Mに膨潤し、材料Mが溶融し、材料Mの粘度が低下した状態で、材料Mが混練される。
【0011】
この混練装置1で混練される材料Mは、例えば、主材料と、副材料と、を含む。主材料は、例えば高分子材料を含み、具体的には例えば、ゴム(タイヤ用ゴムなど)または樹脂を含む。副材料は、主材料に添加(配合)される添加剤(配合剤)などである。副材料は、無機物を含んでもよく、有機物を含んでもよい。具体的には例えば、主材料がゴムである場合、副材料は、シリカ、カップリング剤、加硫剤などである。
【0012】
この混練装置1に用いられる作動流体は、超臨界状態の流体(超臨界流体)、または、亜臨界状態の流体(亜臨界流体)である。混練装置1は、超臨界混練装置、または、亜臨界混練装置である。超臨界流体の温度は、臨界温度(Tc)以上であり、超臨界流体の圧力は、臨界圧力(Pc)以上である。超臨界流体は、液体および気体の特性を有する。超臨界流体は、液体と同様に溶質を融解させる力(溶解性)と、気体と同様に溶質を拡散させる力(拡散性)と、を有する。亜臨界流体の特性(溶解性および拡散性)は、超臨界流体の特性とほぼ同じである。亜臨界流体の温度(T)および圧力(P)は、例えば次のいずれかの条件を満たす。以下の各例の温度(T)および臨界温度(Tc)のそれぞれの単位は摂氏である。[亜臨界状態の例1]T≧Tc、かつ、P<Pc、を満たす。[亜臨界状態の例2]T<Tc、かつ、P<Pc、かつ、Tが常温よりも十分高く、かつ、Pが常圧(大気圧)よりも十分高い。[亜臨界状態の例3]0.5<T/Tc<1.0、かつ、0.5<P/Pc、を満たす。[亜臨界状態の例4]0.5<T/Tc、かつ、0.5<P/Pc<1.0、を満たす。[亜臨界状態の例5]臨界温度(Tc)が0℃以下の場合、0.5<P/Pcを満たす。
【0013】
作動流体を構成する物質は、できるだけ容易に、超臨界状態または亜臨界状態とすることが可能な物質であることが好ましい。作動流体の極性と材料Mの極性との差は、作動流体に材料Mが溶解できる程度に小さい。作動流体を構成する物質は、例えば二酸化炭素である。二酸化炭素の臨界温度(Tc)は、31℃である。二酸化炭素の臨界圧力(Pc)は、7.4MPaである。二酸化炭素は、例えば、31℃以上、かつ7.1MPa以上であれば、亜臨界状態である。二酸化炭素は、例えば、20℃の場合、15MPa以上であれば、亜臨界状態である。なお、作動流体を構成する物質は、二酸化炭素でなくてもよく、例えば窒素などでもよい。作動流体は、亜臨界状態よりも、超臨界状態であることが好ましい。作動流体が超臨界状態の場合は、亜臨界状態の場合よりも、材料Mがより混練される。
【0014】
この混練装置1は、チャンバ10と、ロータ40と、を備える。
【0015】
(混練装置1に関する方向)
混練装置1に関する方向には、横方向X、上下方向Y、および、軸方向Zなどがある。軸方向Zは、後述する第一回転軸50aおよび第二回転軸60aが延びる方向である。横方向Xは、軸方向Zと直交する方向であって、軸方向Zから見たときに第一回転軸50aと第二回転軸60aとを結ぶ直線が延びる方向である。横方向Xは、水平方向でもよく、水平方向でなくてもよい。横方向Xにおいて、第二回転軸60aから第一回転軸50aに向かう側(向き)を横方向第一側X1とし、横方向第一側X1とは反対側を横方向第二側X2とする。上下方向Yは、軸方向Zおよび横方向Xのそれぞれに直交する方向である。上下方向Yは、鉛直方向でもよく、特に断らない限り鉛直方向でなくてもよい。上下方向Yにおける一方側を下側Y2とする。後述するように、第一ロータ50と第二ロータ60とは互いに逆向きに回転するところ、第一ロータ50の横方向第二側X2の部分、および、第二ロータ60の横方向第一側X1の部分の、それぞれの移動の向きを、下側Y2とする。上下方向Yにおいて、下側Y2とは反対側を上側Y1とする。上側Y1は、鉛直方向の上でもよく、特に断らない限り鉛直方向の上でなくてもよい。後述する、第一回転軸50aを中心とする第一仮想円50cの半径方向を、第一径方向という。第一仮想円50cの円周方向を、第一周方向という。後述する、第二回転軸60aを中心とする第二仮想円60cの半径方向を、第二径方向という。第二仮想円60cの円周方向を、第二周方向という。
【0016】
チャンバ10は、材料Mを混練させるための容器である。チャンバ10は、混練室10aを備える。
【0017】
混練室10aは、材料Mを混練させる部分である。混練室10aは、超臨界状態などの作動流体の存在下(雰囲気下)で、材料Mを混練させる部分である。混練室10aは、チャンバ10の内部に配置される。混練室10aは、材料Mを混練させる空間(混練空間)と、混練空間を形成する(囲む)チャンバ10の内面と、を含む。混練室10aは、混練室10aの内部の作動流体が超臨界状態などの状態を維持できるように、密閉される。混練室10aは、ロータ収容室20と、ロータ軸間上部室30と、を備える。
【0018】
ロータ収容室20は、ロータ40を収容する部分である。ロータ収容室20は、ロータ40を収容する空間(ロータ収容空間)と、ロータ収容空間を形成するチャンバ10の内面と、を含む。ロータ40が2つ設けられる場合は、ロータ収容室20は、第一ロータ収容室21と、第二ロータ収容室22と、を備える。
【0019】
第一ロータ収容室21は、第一ロータ50を収容する。第一ロータ収容室21は、第一回転軸50a(後述)を中心とする内周面を有する。第一ロータ収容室21の内周面は、軸方向Zから見たときに、第一回転軸50aを中心とする円弧状である。
【0020】
第二ロータ収容室22は、第二ロータ60を収容する部分である。第二ロータ収容室22は、第二回転軸60a(後述)を中心とする内周面を有する。第二ロータ収容室22の内周面は、軸方向Zから見たときに、第二回転軸60aを中心とする円弧状である。第一ロータ収容室21の空間および第二ロータ収容室22の空間(すなわちロータ収容室20のロータ収容空間)は、軸方向Zから見たときに、略メガネ状である。
【0021】
ロータ軸間上部室30は、混練室10a内に入れることが可能な材料Mの量(例えば混練装置1による生産量)を増加させる。ロータ軸間上部室30は、第一ロータ収容室21および第二ロータ収容室22から、上側Y1(ここでは鉛直方向における上)に延びる。ロータ軸間上部室30は、ロータ軸間領域Aに配置される。ロータ軸間領域Aは、第一回転軸50aと第二回転軸60aとの、横方向Xにおける間の領域である。ロータ軸間領域Aは、第一回転軸50aよりも横方向第二側X2、かつ、第二回転軸60aよりも横方向第一側X1の領域である。ロータ軸間上部室30の少なくとも一部は、ロータ軸間領域Aに配置される。ロータ軸間上部室30の一部が、ロータ軸間領域Aよりも横方向X外側に配置されてもよい。
【0022】
このロータ軸間上部室30の形状は、様々に(任意に)設定可能である。
図1に示す例では、ロータ軸間上部室30の横方向第一側X1の内面(「左側面」という)は、第一ロータ収容室21の上側Y1部分(例えば上側Y1端部)から上側Y1に延びる。ロータ軸間上部室30の左側面は、第一ロータ収容室21のうち、第一回転軸50aの真上の位置から上側Y1に延びる。ロータ軸間上部室30の左側面は、上側Y1ほど横方向第二側X2に配置されるように、上下方向Yに対して傾斜する方向に延びる。ロータ軸間上部室30の左側面は、上下方向Yと一致する方向に延びてもよい。ロータ軸間上部室30の横方向第二側X2の内面(右側面)は、ロータ軸間上部室30の左側面と横方向Xに対称(例えば左右対称)に設けられてもよく、対称に設けられなくてもよい。
【0023】
ロータ40は、混練室10aに対して回転することで、材料Mを混練する。ロータ40は、ロータ収容室20に収容される。ロータ40は、複数設けられ、例えば2つ設けられ、3つ以上設けられてもよい。複数のロータ40のうち、隣り合う2つのロータ40を、第一ロータ50および第二ロータ60とする。
【0024】
第一ロータ50は、複数のロータ40の1つである。第一ロータ50は、第一回転軸50aを中心に回転する。第一回転軸50aは、混練室10aに対する(チャンバ10に対する)第一ロータ50の回転軸である。第一ロータ50は、混練室10aの内部に配置(収容)され、第一ロータ収容室21の内部に配置(収容)される。
図2に示すように、第一ロータ50は、第一回転軸50aが延びる方向に延びるように設けられる。
図2に示す例では、第一ロータ50は、第一回転軸50aを中心とする円柱状(ロール状)である。なお、
図2では、チャンバ10を想像線(二点鎖線)で示した(
図6、
図11、
図17、
図22も同様)。
図1に示すように、第一ロータ50は、第一最外径円弧部51を備える。
【0025】
第一最外径円弧部51は、軸方向Zから見たときに第一回転軸50aを中心とする円弧状であるとともに、第一ロータ50のうち最も第一径方向外側の部分である。第一ロータ50が円柱状である場合は、第一最外径円弧部51は、第一ロータ50の第一径方向外側の部分の全体(第一ロータ50の外周部の全周)である。この例では、第一最外径円弧部51は、第一仮想円50cの全周と一致する。第一仮想円50cは、軸方向Zから見たときに、第一最外径円弧部51を通るとともに第一回転軸50aを中心とする仮想円である。第一仮想円50cは、軸方向Zに直交する仮想円である。
【0026】
この第一最外径円弧部51は、次の条件α1を満たす。[条件α1]第一ロータ50の周方向(第一周方向)における第一最外径円弧部51の長さ(周長)は、第一仮想円50cの全周の長さの1/2以上である。例えば、
図1に示す例では、第一周方向における第一最外径円弧部51の長さは、第一仮想円50cの全周の長さと等しい。第一ロータ50は、軸方向Zに延びるように設けられるところ(
図2参照)、上記[条件α1]は、第一ロータ50の、少なくとも一部の軸方向Z位置(軸方向Zにおける位置)において満たされる。上記[条件α1]は、第一ロータ50の軸方向Zの全体で満たされることが好ましい。上記[条件α1]は、第一ロータ50の軸方向Zの一部で満たされてもよい。
【0027】
第二ロータ60は、複数のロータ40の1つであり、第一ロータ50とは別のロータ40である。第二ロータ60は、第二回転軸60aを中心に回転する。第二回転軸60aは、混練室10aに対する(チャンバ10に対する)第二ロータ60の回転軸である。第二ロータ60は、第一ロータ50の回転方向とは逆向きに回転する。これは、第一ロータ50と第二ロータ60との隙間(例えば後述するロータ最外径部隙間Agなど)で、材料Mに伸張応力を付与するためである。具体的には例えば、軸方向Zの一方側から見たときに、第一ロータ50が右回りに回転する場合は、第二ロータ60は、左回りに回転する。第二ロータ60の回転速度の大きさ(回転数)は、第一ロータ50の回転速度の大きさと等しい、または、略等しい。なお、第二ロータ60の回転速度の大きさは、第一ロータ50の回転速度の大きさと相違してもよい。
【0028】
この第二ロータ60は、混練室10aの内部に配置(収容)され、第二ロータ収容室22の内部に配置(収容)される。
図2に示すように、第二ロータ60は、第一ロータ50と平行に配置される。さらに詳しくは、第一ロータ50が延びる方向(すなわち第一回転軸50aが延びる方向)と、第二ロータ60が延びる方向(すなわち第二回転軸60aが延びる方向)と、は平行である。
図1に示すように、第二ロータ60は、第一ロータ50と隣り合うように配置される。さらに詳しくは、第二ロータ60は、第一仮想円50cと第二仮想円60cとの間に、横方向Xのわずかな隙間(後述するロータ最外径部隙間Ag、ロータ間クリアランスL3)ができるように配置される。
【0029】
この第二ロータ60の構成(構造、形状など)は、例えば、第一ロータ50の構成と同様である。具体的には例えば、第二ロータ60は、第二回転軸60aを中心とする円柱状(ロール状)である(
図2参照)。なお、第二ロータ60の構成は、第一ロータ50の構成と異なってもよい(以下で説明する他の実施形態でも同様)。第二ロータ60の構成は、第一ロータ50の構成と略等しい構成でもよく、第一ロータ50の構成と全く異なる構成でもよい。以下では、第一ロータ50の構成と第二ロータ60の構成とが等しい場合について説明する。第二ロータ60は、第一最外径円弧部51と同様の、第二最外径円弧部61を備える。
【0030】
第二最外径円弧部61は、軸方向Zから見たときに第二回転軸60aを中心とする円弧状であるとともに、第二ロータ60のうち最も第二径方向外側の部分である。
図1に示す例では、第二最外径円弧部61は、第二仮想円60cの全周と一致する。第二仮想円60cは、軸方向Zから見たときに、第二最外径円弧部61を通るとともに、第二回転軸60aを中心とする仮想円である。第二仮想円60cは、軸方向Zに直交する仮想円である。第二最外径円弧部61は、次の条件α2を満たす。[条件α2]第二ロータ60の周方向(第二周方向)における第二最外径円弧部61の長さは、第二仮想円60cの全周の長さの1/2以上である。
【0031】
(最外径円弧部の対向)
この第二最外径円弧部61は、ロータ軸間領域Aで、第一最外径円弧部51と向かい合う(横方向Xに向かい合う)場合がある。以下では、第一ロータ50の要素(ここでは第一最外径円弧部51)と第二ロータ60の要素(ここでは第二最外径円弧部61)とが「向かい合う」ことは、ロータ軸間領域Aで横方向Xに向かい合うことを意味する。第二最外径円弧部61と第一最外径円弧部51とが向かい合うとき、第二最外径円弧部61の上下方向Yにおける範囲(上下範囲)は、第一最外径円弧部51の上下範囲の、少なくとも一部に含まれる。
【0032】
この第二最外径円弧部61と第一最外径円弧部51とが、向かい合わない場合があってもよい(以下の「向かい合う場合がある」についても同様)。さらに詳しくは、
図1に示す例では、第一ロータ50の外周部の全周が第一最外径円弧部51であり、第二ロータ60の外周部の全周が第二最外径円弧部61であるため、第二最外径円弧部61は、第一最外径円弧部51と常に向かい合う。一方、第一ロータ50または第二ロータ60の形状によっては、第二最外径円弧部61は、第一最外径円弧部51と向かい合わない場合がってもよい。
【0033】
例えば、第二最外径円弧部61は、第一最外径円弧部51と、あるタイミングで向かい合い、他のタイミングで向かい合っていなくてもよい。第二最外径円弧部61は、第一最外径円弧部51と、周期的に向かい合ってもよい。上記[条件α1]および[条件α2]が満たされる場合は、第一ロータ50および第二ロータ60の少なくともいずれかが1回転する間に、第二最外径円弧部61は、第一最外径円弧部51と向かい合うタイミングがある。
【0034】
例えば、第二最外径円弧部61と第一最外径円弧部51とは、軸方向Zにおけるある位置で向かい合い、軸方向Zにおける他の位置で向かい合っていなくてもよい。
【0035】
第二最外径円弧部61と第一最外径円弧部51とが向かい合ったときの、第二最外径円弧部61と第一最外径円弧部51との隙間を、ロータ最外径部隙間Agとする。ロータ軸間領域A内、かつ、混練室10aの内部の空間(ロータ40が存在する部分を除く)には、ロータ隙間上部Ay1およびロータ隙間下部Ay2がある。ロータ隙間上部Ay1は、第一仮想円50cと第二仮想円60cとの隙間部分(例えばロータ最外径部隙間Ag)よりも上側Y1、かつ、この隙間の近傍の領域である。ロータ隙間下部Ay2は、第一仮想円50cと第二仮想円60cとの隙間部分(例えばロータ最外径部隙間Ag)よりも下側Y2、かつ、この隙間の近傍の領域である。
【0036】
(クリアランスについて)
混練装置1に関する隙間には、第一クリアランスL1と、第二クリアランスL2と、ロータ間クリアランスL3と、がある。
【0037】
第一クリアランスL1は、混練室10aの内面と、第一ロータ50と、の最小間隔(間隔の最小値)である。第一クリアランスL1は、第一ロータ収容室21の内周面と、第一仮想円50cと、の第一径方向における間隔である。
【0038】
第二クリアランスL2は、混練室10aの内面と、第二ロータ60と、の最小間隔である。第二クリアランスL2は、第二ロータ収容室22の内周面と、第二仮想円60cと、の第二径方向における間隔である。
【0039】
ロータ間クリアランスL3は、第一ロータ50と第二ロータ60との最小間隔である。ロータ間クリアランスL3は、第一仮想円50cと第二仮想円60cとの横方向Xにおける間隔である。ロータ間クリアランスL3は、ロータ最外径部隙間Agの最小間隔である。ロータ間クリアランスL3は、0よりも大きい。すなわち、第一仮想円50cと第二仮想円60cとは重ならず、第一ロータ50と第二ロータ60とは噛み合わない(混練装置1は噛みあい型ではない)。
【0040】
ロータ間クリアランスL3は、第一クリアランスL1よりも小さく、第二クリアランスL2よりも小さいことが好ましい。第一クリアランスL1および第二クリアランスL2が大きい(具体的にはロータ間クリアランスL3よりも大きい)ことで、ロータ40とチャンバ10との隙間での材料Mの発熱量が抑制される。その結果、混練装置1での長時間の混練が可能になる。
【0041】
また、ロータ間クリアランスL3が小さい(具体的には第一クリアランスL1および第二クリアランスL2のそれぞれよりも小さい)ことで、ロータ最外径部隙間Agで材料Mに安定して応力をかけることができる。この理由は、次の通りである。ロータ間クリアランスL3が大きい場合は、ロータ最外径部隙間Agに供給される材料Mよりも、ロータ最外径部隙間Agから排出される材料Mが多くなり得る。すると、ロータ隙間上部Ay1に材料Mがたまりにくくなり、ロータ最外径部隙間Agに材料Mが供給されないタイミングが多くなり、ロータ最外径部隙間Agで材料Mに応力をかけられないタイミングが多くなる。よって、ロータ間クリアランスL3が小さい(具体的には第一クリアランスL1および第二クリアランスL2のそれぞれよりも小さい)ことが好ましい。
【0042】
(作動)
混練装置1は、以下のように作動するように構成される。材料Mおよび作動流体が、密閉された混練室10a内に入れられた状態とされる(
図3参照)。この状態で、ロータ40が、混練室10aに対して回転する。ロータ隙間上部Ay1の材料Mは、第一ロータ50と第二ロータ60との隙間(この例ではロータ最外径部隙間Ag)に移動する。材料Mがロータ最外径部隙間Agを通るときに、上下方向Yの伸長流れ(後述)が材料Mに生じ、伸長応力が材料Mに付与される(作用する)。ロータ最外径部隙間Agを通った材料Mは、ロータ隙間下部Ay2に移動し、ロータ収容室20の内面とロータ40との隙間を通り、ロータ隙間上部Ay1に戻る。ロータ40が継続して回転することで、材料Mは、この移動を繰り返す。これにより、材料Mが、分配され(分配混合され、分配が進展し)、材料Mの偏り(混ざりムラ)が減る。具体的には、主材料における副材料の偏りが減る。また、材料Mが、分散され、材料Mが細かく散らばる。具体的には、材料Mの副材料が、主材料中に細かく散らばる。
【0043】
(超臨界状態などの作動流体が用いられることによる作用)
ここで、超臨界状態などの作動流体が用いられない密閉式混練機を、「従来の密閉式混練機」という。超臨界状態などの作動流体が用いられる場合は、従来の密閉式混練機に比べ、低温でも材料Mの混練が可能であり、材料Mの発熱を抑制することができる。また、超臨界状態などの作動流体が用いられる場合は、従来の密閉式混練機に比べ、材料Mの粘度が低下し、材料Mの流動性が改善するため、材料Mがより分配される。また、超臨界状態などの作動流体が用いられる場合は、従来の密閉式混練機に比べ、異なる物質同士の界面の濡れ性が改善される。例えば、界面の濡れ性の改善について、ゴムとシリカとが混練される場合について説明する。シリカは、凝集性が高い。また、親水性のシリカは、親油性のゴムとなじみにくい。しかし、超臨界状態などの作動流体が用いられる場合は、シリカ同士の凝集が抑制され、シリカがゴムとなじみやすくなる。その結果として、シリカが配合されたゴムの物性が向上する。
【0044】
(超臨界状態などの作動流体が用いられることによる課題)
上記のように、超臨界状態などの作動流体が用いられる場合は、従来の密閉式混練機に比べ、材料Mの粘度が低下する。そのため、従来の密閉式混練機と同様の装置構成を有する装置において、超臨界状態などの作動流体が用いられた場合は、従来の密閉式混練機に比べ、装置が材料Mに付与できる応力が小さくなる。すると、分散に物理的な力を必要とする材料Mでは、材料Mの分散が進みにくくなる(分散性が低下する、分散性能が不十分となる)。以下では、この課題の詳細をさらに説明する。
【0045】
(せん断応力について)
従来の密閉式混練機では、回転翼(混練装置1におけるロータ40に相当)とチャンバとの間で、材料Mにせん断応力がかけられる。これにより、材料Mが昇温および溶融し、材料Mが流動性を持ち、材料Mが分配および分散される。ここで、せん断応力(σ)は、粘度(η)と、せん断速度(γ)より次式(数1)のように表される。
【0046】
【0047】
超臨界状態などの作動流体が用いられる場合は、従来の密閉式混練機よりも低温での混練が可能となるため、材料Mの昇温による粘度(η)の低下は抑えることができる。しかし、超臨界状態などの作動流体が用いられる場合は、材料Mの粘度(η)が低下する。それに伴い、材料Mに付与できるせん断応力(σ)は、従来の密閉式混練機に比べ、同等以下となる。
【0048】
また、材料Mにせん断流れが生じる場合は、材料Mに力がかかっても、材料Mが回転するため、材料Mそのものに応力が加わらない可能性がある。
【0049】
そのため、従来の密閉式混練機と同様の装置構成を有する装置において、超臨界状態などの作動流体が用いられた場合は、超臨界状態などの作動流体が用いられない従来の密閉式混練機に対して、材料Mに付与できるせん断応力を高めることは困難である。
【0050】
(伸長応力について)
一方、材料Mを引き延ばす流れ(伸長流れ)が材料Mに生じる場合は、材料Mは回転しない。そのため、伸長流れは、せん断流れに比べ、材料Mに応力を加える効率が高い。また、伸長粘度は、せん断粘度よりも高い。よって、伸長応力を材料Mに付与する場合、せん断応力を材料Mに付与する場合に比べ、材料Mに付与できる応力を高くすることができる。
【0051】
ここで、例えば
図22に示すような、従来の密閉式混練機の回転翼では、材料Mを引き延ばす伸長流れを起こすことは困難である。そのため、材料Mに伸長応力を付与する(伸長応力を誘起させる)ことが難しい。
【0052】
そこで、
図1に示す混練装置1は、超臨界状態などの作動流体を用いて材料Mの粘度が低下(従来の密閉式混練機に比べ低下)した場合であっても、材料Mに高い応力を付与できるように構成される。具体的には、混練装置1は、材料Mに高い伸長応力を付与できるように構成される。さらに具体的には、混練装置1は、上記[条件α1]および上記[条件α2]を満たすように構成される。
【0053】
なお、超臨界状態などの作動流体が用いられない従来の密閉式混練機において、回転翼を、本実施形態のロータ40と同様の構成としても、材料Mの発熱量が大きくなり、材料Mの粘度が低下し、材料Mに十分高い応力を付与することができない。一方、本実施形態の混練装置1では、超臨界状態などの作動流体が用いられるので、材料Mの発熱量が抑制され、材料Mの粘度の低下が抑制され、材料Mに高い応力を付与することができる。
【0054】
(解析)
混練装置1の混練性能を評価するため、材料Mの速度分布(
図3参照)、および、粒子分配(
図4参照)を解析にて評価した。
【0055】
(速度分布)
図3に、材料Mの速度分布の解析結果を示す。
図4に示す例では、t/Tが、0、2.2、および3のそれぞれの時の、材料Mの速度分布を示す。上記「T」は、第一ロータ50および第二ロータ60の回転の周期であり、tは時間である。
図4では、材料Mの速度の大きさを、グレーの色の濃さで示す。グレーの色が薄いほど材料Mが遅く、濃い(黒に近い)ほど材料Mが速いことを示す。
【0056】
t/T=0の状態は、ロータ40が回転する前の初期状態であり、材料Mの速度が0の状態である。初期状態では、材料Mは、ロータ収容室20(
図1参照)の内面とロータ40との間、第一ロータ50と第二ロータ60との隙間(例えばロータ最外径部隙間Ag)、および、ロータ隙間上部Ay1にある。初期状態では、材料Mの上面(ここでは鉛直方向における上の面)は、ロータ40の上端と同じ高さ(または略同じ高さ)にある。
【0057】
t/T=2.2の状態(およびt/T=3の状態)では、材料Mの速度は、ロータ最外径部隙間Agで最大となる。この結果により、ロータ最外径部隙間Agで、材料Mに伸長流れが生じ、材料Mに伸長応力が作用していることが示される。また、t/T=2.2の状態(およびt/T=3の状態)では、材料Mは、ロータ隙間上部Ay1に溜まっており、ロータ最外径部隙間Agから材料Mが浮き上がっている。材料Mが、ロータ隙間上部Ay1に溜まっているので、ロータ最外径部隙間Agに材料Mが安定して供給される。なお、t/T=2.2以前に材料Mの速度分布が定常状態となるため、t/T=2.2とt/T=3とで材料Mの速度分布は概ね等しい。
【0058】
(粒子分配)
図4に、軸方向Zから見た、材料Mの粒子分配の解析結果を示す。この解析では、ロータ隙間上部Ay1での材料Mを分配させる性能(分配性能、分配混合性能)を評価した。具体的には、この解析では、初期状態(t/T=0の状態)でロータ隙間上部Ay1に配置した粒子(材料M)が、どのように移動するかを評価した。
図4に示す例では、t/Tが、0、1、および3のそれぞれの時の、粒子の位置(分配状況)を示す。
【0059】
t/T=1の状態(およびt/T=3の状態)では、粒子は、ロータ隙間上部Ay1に留まっていること(ロータ隙間上部Ay1から移動しにくい、ロータ隙間上部Ay1に滞留している)ことが示される(後述)。
【0060】
(第1の発明の効果)
図1に示す混練装置1による効果は、次の通りである。混練装置1は、混練室10aと、第一ロータ50と、第二ロータ60と、を備える。混練室10aは、超臨界状態または亜臨界状態の作動流体の存在下で、材料Mを混練させる部分である。第一ロータ50は、混練室10aの内部に配置され、第一回転軸50aを中心に回転する。第二ロータ60は、混練室10aの内部に配置され、第一ロータ50と平行に配置され(
図2参照)、第一ロータ50と隣り合うように配置される。第二ロータ60は、第二回転軸60aを中心に、第一ロータ50の回転方向とは逆向きに回転する。第一ロータ50は、第一最外径円弧部51を備える。第一最外径円弧部51は、第一回転軸50aが延びる方向(軸方向Z)から見たときに第一回転軸50aを中心とする円弧状であるとともに、第一ロータ50のうち最も径方向外側(第一径方向外側)の部分である。第二ロータ60は、第二最外径円弧部61を備える。第二最外径円弧部61は、第二回転軸60aが延びる方向(軸方向Z)から見たときに第二回転軸60aを中心とする円弧状であるとともに、第二ロータ60のうち最も径方向外側(第二径方向外側)の部分である。
【0061】
[構成1-1]第一ロータ50の周方向(第一周方向)における第一最外径円弧部51の長さは、第一仮想円50cの全周の長さの1/2以上である(上記[条件α1])。第一仮想円50cは、第一回転軸50aが延びる方向(軸方向Z)から見たときに、第一最外径円弧部51を通るとともに第一回転軸50aを中心とする仮想円である。
【0062】
[構成1-2]第二ロータ60の周方向(第二周方向)における第二最外径円弧部61の長さは、第二仮想円60cの全周の長さの1/2以上である(上記[条件α2])。第二仮想円60cは、第二回転軸60aが延びる方向(軸方向Z)から見たときに、第二最外径円弧部61を通るとともに第二回転軸60aを中心とする仮想円である。
【0063】
[構成1-3]第二最外径円弧部61は、第一回転軸50aと第二回転軸60aとの間で(ロータ軸間領域Aで)、第一最外径円弧部51と向かい合う場合がある。
【0064】
上記[構成1-3]では、第一最外径円弧部51と第二最外径円弧部61とが向かい合う場合がある。さらに、第一最外径円弧部51は、上記[構成1-1]の条件を満たし、第二最外径円弧部61は、上記[構成1-2]の条件を満たす。よって、第一ロータ50および第二ロータ60の少なくともいずれかが1回転する間に、第一最外径円弧部51と第二最外径円弧部61とが向かい合う。したがって、上記[構成1-1]、[構成1-2]、および[構成1-3]により、第一ロータ50および第二ロータ60の少なくともいずれかが1回転する間に、第一最外径円弧部51と第二最外径円弧部61との隙間(ロータ最外径部隙間Ag)を材料Mが通る。ロータ最外径部隙間Agを材料Mが通ることで、ロータ最外径部隙間Agが延びる方向(上下方向Y)の伸長流れを材料Mに生じさせ、材料Mに伸長応力を付与することができる。したがって、超臨界状態または亜臨界状態の作動流体の存在下での材料Mの混練でも、材料Mに高い応力を付与することができる。その結果、混練装置1による材料Mの分散性能(材料Mを細かく散らばらせる性能)を向上させることができる。
【0065】
(第2の発明の効果)
[構成2]第一ロータ50と第二ロータ60との最小間隔(ロータ間クリアランスL3)は、第一クリアランスL1よりも小さく、第二クリアランスL2よりも小さい。第一クリアランスL1は、混練室10aの内面と第一ロータ50との最小間隔である。第二クリアランスL2は、混練室10aの内面と第二ロータ60との最小間隔である。
【0066】
上記[構成2]では、ロータ間クリアランスL3が小さく、具体的には第一クリアランスL1および第二クリアランスL2のそれぞれよりも小さい。よって、ロータ隙間上部Ay1の材料Mが不足することが抑制され、ロータ隙間上部Ay1からロータ最外径部隙間Agに材料Mを安定して供給することができる。よって、混練装置1は、ロータ最外径部隙間Agで、材料Mに応力を安定して付与することができる。また、上記[構成2]では、第一クリアランスL1および第二クリアランスL2が大きく、具体的にはロータ間クリアランスL3よりも大きい。よって、混練室10aの内面とロータ40との隙間での、材料Mの発熱量を抑制することができる。その結果、混練装置1による材料Mの長時間の混練が可能になる。
【0067】
(第12の発明の効果)
混練室10aは、第一ロータ収容室21と、第二ロータ収容室22と、ロータ軸間上部室30と、を備える。第一ロータ収容室21は、第一回転軸50aを中心とする内周面を有し、第一ロータ50を収容する。第二ロータ収容室22は、第二回転軸60aを中心とする内周面を有し、第二ロータ60を収容する。
【0068】
[構成12]ロータ軸間上部室30は、第一ロータ収容室21および第二ロータ収容室22から上に延び、第一回転軸50aと第二回転軸60aとの間に配置される。
【0069】
上記[構成12]により、混練室10aにロータ軸間上部室30が設けられない場合(具体的には、ロータ収容室20のみが設けられる場合)に比べ、混練室10aに入れることが可能な材料Mの量を増やすことができる。よって、混練装置1で混練できる材料Mの量(例えば生産量)を増やすことができる。
【0070】
(第2実施形態)
図5~
図9を参照して、第2実施形態の混練装置201について、第1実施形態との相違点を説明する。なお、第2実施形態の混練装置201のうち、第1実施形態との共通点については、説明を省略する。共通点の説明を省略することについては、後述する他の実施形態の説明も同様である。
【0071】
相違点は、
図5に示すように、第一ロータ50が、第一凹部257を備えること、および、第二ロータ60が、第二凹部267を備えることである。
【0072】
第一凹部257は、材料Mをより分配させる(材料Mの偏りを減らす、混ざりムラを減らす)ための部分である。第一凹部257は、ロータ隙間上部Ay1の材料Mを取り込み、材料Mをロータ隙間下部Ay2に移動させるための部分である。第一凹部257は、第一径方向内側(第一ロータ50の径方向における内側)に凹んだ形状を有する。第一凹部257は、第一最外径円弧部51から、第一径方向内側に凹んだ形状を有する。第一凹部257は、第一仮想円50cよりも第一径方向内側に設けられる。第一凹部257の「凹んだ形状」は、例えば溝状である(
図6参照)。第一凹部257は、軸方向Zから見たときに、曲線を含んでもよく、例えば弧状(円弧状または円弧でない弧状)を含んでもよい。第一凹部257は、軸方向Zから見たときに、直線を含んでもよい(
図16参照)。例えば、第一凹部257は、軸方向Zから見たときに、
図16に示す第一凸部間凹部457aの形状でもよく、第一凸部間外側凹部457cの形状でもよい(それぞれの形状については後述)。
図5に示す、第一ロータ50の外周部のうち、第一凹部257の部分は、第一最外径円弧部51には含まれない。第一ロータ50が第一凹部257を備える場合も、第一最外径円弧部51について、上記[条件α1]が満たされる。
【0073】
第二ロータ60は、例えば、第一ロータ50と同様に構成される。第二ロータ60は、第二凹部267を備える。
【0074】
第二凹部267は、材料Mをより分配させるための部分であり、ロータ隙間上部Ay1の材料Mを取り込み、材料Mをロータ隙間下部Ay2に移動させるための部分である。第二凹部267は、第二径方向内側に凹んだ形状を有する(詳細は第一凹部257の説明を参照)。第二ロータ60が第二凹部267を備える場合も、第二最外径円弧部61について、上記[条件α2]が満たされる。
【0075】
(発熱の抑制)
第一ロータ50に第一凹部257があることにより、材料Mの発熱が抑制される。さらに詳しくは、第一ロータ収容室21の内面と、第一凹部257とが、第一径方向に向かい合ったとする(図示なし)。このとき、第一ロータ収容室21の内面と、第一凹部257との隙間は、第一ロータ収容室21の内面と、第一最外径円弧部51と、の最小隙間(第一クリアランスL1)よりも広い。よって、第一ロータ50の外周部の全周が第一最外径円弧部51である場合(
図1参照)に比べ、材料Mの発熱が抑制される。その結果、混練装置201での長時間の混練が可能になる。第一凹部257と同様に、第二凹部267によっても、材料Mの発熱が抑制される。
【0076】
(生産量の増加)
第一ロータ50に第一凹部257があることにより、第一ロータ50の外周部の全周が第一最外径円弧部51である場合(
図1参照)に比べ、混練室10a内に入れることが可能な材料Mの量が増える。よって、例えば、混練装置201による生産量を増加させることができる。第一凹部257と同様に、第二凹部267があることによっても、混練室10a内に入れることが可能な材料Mの量が増える。
【0077】
(材料Mの取り込み)
第一凹部257は、ロータ隙間上部Ay1の材料Mを取り込む。さらに詳しくは、ロータ隙間上部Ay1の材料Mは、第一凹部257に入る。第一凹部257に入った材料Mは、第一ロータ50の(第一凹部257の)回転に伴って、ロータ隙間上部Ay1からロータ隙間下部Ay2に移動する(
図7のt/T=2.2の状態を参照)。このように、ロータ隙間上部Ay1の材料Mが、第一凹部257に取り込まれる。よって、ロータ隙間上部Ay1で滞留する材料Mが減り、材料Mがより分配される(混練装置1の分配性能が向上する)。第一凹部257と同様に、第二凹部267により、材料Mが取り込まれる。
【0078】
(凹部の対向)
第二凹部267は、ロータ軸間領域Aで、第一凹部257と向かい合う場合があることが好ましい。第二凹部267と第一凹部257が向かい合うとき、第二凹部267の上下方向Yにおける範囲(上下範囲)は、第一凹部257の上下範囲の、少なくとも一部に含まれる。第二凹部267と第一凹部257とが向かい合うことにより、第二凹部267と第一凹部257との間の空間に、ロータ隙間上部Ay1の材料Mを取り込むことができる。よって、ロータ隙間上部Ay1で滞留する材料Mをより減らすことができる。なお、第一ロータ50に第一凹部257が設けられ、第二ロータ60に第二凹部267が設けられる場合に、第一凹部257と第二凹部267とが向かい合う場合があることが好ましいが、これらが向かい合う場合が無くてもよい。
【0079】
(解析)
混練装置201での、材料Mの速度分布(
図7参照)および粒子分配(
図8参照)の解析結果について説明する。
【0080】
(速度分布)
図7に、材料Mの速度分布の解析結果を示す。t/T=2.2の状態に示すように、ロータ隙間上部Ay1の材料Mは、第一凹部257(
図5参照)および第二凹部267(
図5参照)により取り込まれている。
【0081】
(粒子分配)
ここで、
図4に、第1実施形態の混練装置1での、軸方向Zから見た粒子分配の解析結果を示す。上記のように、t/T=0のとき(初期状態のとき)に、ロータ隙間上部Ay1に粒子(材料M)が配置される。この粒子は、その後も(t/Tが2、および3の状態でも)ロータ隙間上部Ay1に留まっている。そのため、混練の条件(例えば、材料Mの種類、混練時間など)によっては、材料Mの分配が不十分となる可能性がある。具体的には、材料Mの混ざりムラが生じる可能性がある。
【0082】
図8に、本実施形態の混練装置201での、軸方向Zから見た粒子分配の解析結果を示す。
図8に示す結果では、ロータ隙間上部Ay1で滞留する粒子は、第1実施形態におけるロータ隙間上部Ay1で滞留する粒子よりも少ない(
図4参照)。また、
図8では、第一周方向および第二周方向への粒子の分配が進展していることも示される。具体的には、t/T=3の状態では、粒子は、第一ロータ50および第二ロータ60の略全周にわたって存在する。なお、
図8のt/T=3の状態を示す図では、材料Mを示す粒子の一部にのみ符号を付した(
図13、および
図20も同様)した。なお、
図9に、混練装置201での軸方向Zの粒子分配の解析結果を示す(後述)。
【0083】
図5に示す混練装置201による効果は、次の通りである。
【0084】
(第3の発明の効果)
[構成3-1]第一ロータ50は、第一ロータ50の径方向(第一径方向)における内側に凹んだ形状を有する第一凹部257を備える。
【0085】
[構成3-2]第二ロータ60は、第二ロータ60の径方向(第二径方向)における内側に凹んだ形状を有する第二凹部267を備える。
【0086】
上記[構成3-1]により、次の効果が得られる。第一凹部257は、ロータ隙間上部Ay1の材料Mを取り込むことができる。よって、ロータ隙間上部Ay1で滞留する材料Mを減らすことができる。よって、混練装置201は、材料Mをより分配させることができる。よって、混練装置201による材料Mの分配性能(材料Mの偏りを減らす性能)を向上させることができる。
【0087】
上記[構成3-1]により、混練室10aの内面(具体的には、第一ロータ収容室21の内面)と第一凹部257との隙間を確保することができる。よって、第一ロータ50に第一凹部257が設けられない場合に比べ、材料Mの発熱量を抑制することができる。その結果、混練装置201による材料Mの長時間の混練が可能になる。
【0088】
上記[構成3-1]により、混練室10aの内面(具体的には、第一ロータ収容室21の内面)と第一凹部257との隙間を確保することができる。よって、第一凹部257が設けられない場合に比べ、混練室10aに入れることが可能な材料Mの量を増やすことができる。よって、混練装置1で混練できる材料Mの量(例えば生産量)を増やすことができる。
【0089】
上記[構成3-1]の第一凹部257による効果と同様の効果が、上記[構成3-2]の第二凹部267によっても得られる。よって、2つのロータ40のうち一方のみが凹部(第一凹部257)を備える場合に比べ、上記[構成3-1]により得られる効果と同様の効果が、より得られる。
【0090】
(第4の発明の効果)
[構成4]第二凹部267は、第一回転軸50aと第二回転軸60aとの間(ロータ軸間領域A)で、第一凹部257と向かい合う場合がある。
【0091】
上記[構成4]により、第一凹部257および第二凹部267は、第一凹部257と第二凹部267とが向かい合う場合がない場合に比べ、ロータ隙間上部Ay1の材料Mを多く取り込むことができる。よって、混練装置201は、ロータ隙間上部Ay1で滞留する材料Mを、より減らすことができる。よって、混練装置201は、材料Mをより分配させることができる。
【0092】
(第3実施形態)
図10~
図14を参照して、第3実施形態の混練装置301について、主に第2実施形態との相違点を説明する。主な相違点は、
図11に示す第一ロータ50の第一ねじれ部358、および、第二ロータ60の第二ねじれ部368である。
【0093】
第一ロータ50は、第一ねじれ部358を備える。なお、第一ロータ50は、第一傾斜部359(
図10参照)を備えてもよい。
【0094】
第一ねじれ部358は、材料Mを軸方向Zに分配させるための部分である。第一ねじれ部358は、軸方向Zへの材料Mの流れを誘起し、軸方向Zへの材料Mの分配を進展させるための部分である(
図14参照)。第一ねじれ部358は、第一回転軸50aを中心として「所定ねじれ方向」にねじれた形状を有する。すなわち、軸方向Zから見た第一ねじれ部358の断面形状は、軸方向Zにおける位置が変わるにしたがって、「所定ねじれ方向」に回転する形状である。上記「所定ねじれ方向」は、軸方向Zの一方側から見たときに右回りまたは左回りの方向である。具体的には、第一凹部257は、第一回転軸50aを中心軸とする螺旋状である。第一ねじれ部358は、第一ロータ50の軸方向Zの全体(または略全体)にわたって設けられる。なお、第一ねじれ部358は、第一ロータ50の軸方向Zの一部のみに設けられてもよい。
【0095】
第一傾斜部359は、
図10に示すように、第一最外径円弧部51と第一凹部257との、第一周方向における間に設けられる。第一傾斜部359は、第一凹部257よりも、第一周方向における外側の両側に設けられる。第一傾斜部359は、第一凹部257(第一径方向内側に凹んだ形状)には含まれない。
図10に示す例では、第一傾斜部359は、軸方向Zから見たときに、直線状である。なお、第一傾斜部359の有無は、材料Mの速度分布(
図12参照)および粒子分配(
図13および
図14参照)にほとんど影響しない。また、第一傾斜部359の、第一周方向における第一凹部257側の端部(すなわち、第一凹部257の、第一周方向における外側の端部)の、第一径方向における位置は、第一仮想円50c上でも、第一仮想円50cよりも第一径方向内側でもよい。
【0096】
第二ロータ60は、例えば、第一ロータ50と同様の構成を備える。
図11に示すように、第二ロータ60は、第二ねじれ部368と、第二傾斜部369(
図10参照)と、を備える。
【0097】
第二ねじれ部368は、第二回転軸60aを中心として「所定ねじれ方向」にねじれた形状を有する。この「所定ねじれ方向」は、第一ねじれ部358のねじれの方向(「所定ねじれ方向」)と同じ方向である。第二ねじれ部368は、第二ロータ60の軸方向Zの全体(または略全体)にわたって設けられる。なお、第二ねじれ部368は、第二ねじれ部368の軸方向Zの一部のみに設けられてもよい。第二ねじれ部368の少なくとも一部は、第一ねじれ部358の少なくとも一部と、横方向Xに向かい合う。
【0098】
(ねじれ部の作用)
第一ねじれ部358および第二ねじれ部368により、材料Mが軸方向Zに分配される。さらに詳しくは、上記のように、第一ロータ50と第二ロータ60とは互いに逆向きに回転する。また、第一ねじれ部358と第二ねじれ部368とで、ねじれの方向が同じである。よって、第一ロータ50の回転に伴う軸方向Zへの材料Mの移動の向きと、第二ロータ60の回転に伴う軸方向Zへの材料Mの移動の向きと、が互いに逆向きになる。よって、材料Mが軸方向Zに分配されやすい(混練装置301の軸方向Zの分配性能が向上する)(
図14参照)。
【0099】
なお、第一ねじれ部358と第二ねじれ部368とで、ねじれの方向が逆である場合は、第一ロータ50の回転に伴う軸方向Zへの材料Mの移動の向きと、第二ロータ60の回転に伴う軸方向Zへの材料Mの移動の向きと、が同じになる。すると、材料Mが、軸方向Zの一方に偏り、軸方向Zの分配が不十分となる場合がある。ここで、通常、混練室10aを密閉するためのシールが、混練室10a内でのロータ40の軸方向Zにおける端部に設けられる。材料Mが軸方向Zの一方に偏ると、材料Mがこのシールを大きい力で押し、シールに影響を及ぼす可能性がある。よって、第一ねじれ部358と第二ねじれ部368とで、ねじれの方向が同じ(所定ねじれ方向)であることが好ましい。
【0100】
(解析)
混練装置301での材料Mの速度分布(
図12参照)および粒子分配(
図13および
図14参照)の解析結果について説明する。ここでは、第一ねじれ部358が、第一ロータ50の軸方向Zの全体にわたって設けられる場合について説明する(第二ねじれ部368と第二ロータ60との関係も同様)。この例では、軸方向Zから見た第一ロータ50の断面形状は、軸方向Z位置(軸方向Zにおける位置)によって異なる(第二ロータ60も同様)。
図12に示す速度分布の解析結果は、t/T=2.2の状態のときに、第一凹部257と第二凹部267とが向かい合うような、軸方向Z位置での結果を示す。また、
図13に示す粒子分配の解析結果は、t/Tが0、1、および3のときに 第一凹部257および第二凹部267が
図13に示すような配置になるような、軸方向Z位置での結果を示す。この
図13に示す軸方向Z位置では、第一凹部257(
図10参照)と第二凹部267(
図10参照)とは、向かい合わない。
【0101】
(軸方向の粒子分配)
ここで、
図9に、第2実施形態の混練装置201での、軸方向Zの粒子分配(上下方向Yから見た粒子分配)の解析結果を示す。この例では、軸方向Zへの材料Mの分配は不十分である。この理由は、次の通りである。
図5に示す、ロータ収容室20の内面とロータ40との間には、材料Mが詰まっている。そのため、軸方向Zにおける圧力変化が材料Mに生じにくく、材料Mの軸方向Zへの流れが生じにくい。そのため、軸方向Zへの材料Mの分配が不十分となっている。
【0102】
図14に、本実施形態の混練装置301での、軸方向Zの粒子分配の解析結果を示す。t/T=3の状態のように、第一ロータ50の回転に伴う軸方向Zへの材料Mの移動の向きと、第二ロータ60の回転に伴う軸方向Zへの材料Mの移動の向きと、が互いに逆向きになっている。よって、軸方向Zへの材料Mの流れが生じ、軸方向Zへの材料Mの分配が進展する。なお、
図13に、混練装置301での、軸方向Zから見た粒子分配の解析結果を示す(後述)。
【0103】
図11に示す混練装置301による効果は、次の通りである。
【0104】
(第11の発明の効果)
[構成11]第一ロータ50は、第一回転軸50aを中心として「所定ねじれ方向」にねじれた形状を有する第一ねじれ部358を備える。第二ロータ60は、第二回転軸60aを中心として上記「所定ねじれ方向」にねじれた形状を有する第二ねじれ部368を備える。
【0105】
上記[構成11]により、第一ロータ50の回転に伴う軸方向Zへの材料Mの移動の向きと、第二ロータ60の回転に伴う軸方向Zへの材料Mの移動の向きと、を互いに逆向きにすることができる。よって、混練装置301は、材料Mを軸方向Zに分配させることができる。よって、混練装置301による材料Mの軸方向Zへの分配性能を向上させることができる。
【0106】
(第4実施形態)
図15~
図21などを参照して、第4実施形態の混練装置401について、主に第3実施形態との相違点を説明する。主な相違点は、
図15に示すように、第一ロータ50に第一凸部453があり、第二ロータ60に第二凸部463があることである。
【0107】
第一ロータ50は、第一基部452と、第一凸部453と、を備える。
【0108】
第一基部452は、第一回転軸50aを含む部分である。
図15に示す例では、第一基部452は、第一ロータ50のうち第一凸部453以外の部分である。
図16に示すように、第一基部452の外周部は、第一凸部間凹部底部457a1(後述)と、第一接続部457c1(後述)と、第一基部最外径円弧部452cと、を含む。第一基部最外径円弧部452cは、第一最外径円弧部51である。
【0109】
第一凸部453は、第一基部452から第一径方向外側に突出する部分(突起、翼)である。第一凸部453は、2つ以上設けられる。第一凸部453は、
図16に示す例では2つ設けられ、3つ以上設けられてもよい。第一ロータ50は、略円柱状(略ロール状)の第一基部452と、翼状の第一凸部453と、の両方を有する、ハイブリッドロータである。複数の第一凸部453の構成は、互いに等しいまたは略等しい。
図16に示す例では、2つの第一凸部453の構成は、互いに第一周方向に対称である。以下では、1つの第一凸部453について説明する。第一凸部453の第一周方向における幅は、第一径方向外側ほど狭くなってもよく(先細りの形状でもよく)、一定でもよい。第一凸部453は、第一凸部基端部453bと、第一凸部側面部453sと、第一凸部先端部453tと、を備える。
【0110】
第一凸部基端部453bは、第一凸部453の第一径方向内側の端部(基端部)である。
【0111】
第一凸部側面部453sは、第一凸部453の、第一周方向外側を向く面(側面)である。第一凸部側面部453sは、第一凸部453の第一周方向外側の両側に設けられる。第一凸部側面部453sは、軸方向Zから見たとき、直線を含んでもよく、曲線(例えば弧状など)を含んでもよい。
図16に示す例では、第一凸部側面部453sは、軸方向Zから見たとき、直線のみを有する。
【0112】
第一凸部先端部453tは、第一凸部453の第一径方向外側の端部(先端部)である。第一凸部先端部453tは、軸方向Zから見たときに、直線を含んでもよく、曲線を含んでもよい。軸方向Zから見た第一凸部先端部453tは、弧状を含んでもよく、例えば円弧でない弧状を含んでもよく、例えば円弧状を含んでもよい。軸方向Zから見た第一凸部先端部453tは、第一回転軸50aを中心としない円弧状を含んでもよく、第一回転軸50aを中心とする円弧状を含んでもよい。軸方向Zから見た第一凸部先端部453tは、第一仮想円50cよりも第一径方向内側に配置される部分(例えば円弧状部分など)を含んでもよい。軸方向Zから見た第一凸部先端部453tは、第一仮想円50cに沿って延びる円弧状を含んでもよい。すなわち、第一凸部先端部453tは、第一最外径円弧部51を含んでもよい。第一凸部453であって第一最外径円弧部51である部分を、第一凸部最外径円弧部453tcとする。
【0113】
第一凹部257は、第一凸部間凹部457aと、第一凸部間外側凹部457cと、を備える。
【0114】
第一凸部間凹部457aは、第一周方向(第一ロータ50の周方向)に隣り合う2つの第一凸部453により形成される。ここで、第一ロータ50に第一凸部453が2つある場合、2つの第一凸部453の間の領域として、第一周方向の距離が短い方の領域と、第一周方向の距離が長い方の領域と、がある。この場合、第一凸部間凹部457aは、第一周方向の距離が短い方の、2つの第一凸部453の間の領域に形成される。第一凸部間凹部457aは、第一凸部間凹部底部457a1を備える。
【0115】
第一凸部間凹部底部457a1は、第一凸部間凹部457aの第一径方向内側の部分(底部)である。第一凸部間凹部底部457a1は、2つの第一凸部453それぞれの第一凸部基端部453bの間に設けられる。第一凸部間凹部底部457a1は、軸方向Zから見たときに、直線を含んでもよく、曲線(例えば弧状)を含んでもよい。軸方向Zから見た第一凸部間凹部底部457a1は、円弧状でない弧状を含んでもよく、円弧状を含んでもよい。
【0116】
第一凸部間外側凹部457cは、第一凸部453の「第一凸部間外側」に設けられる。上記「第一凸部間外側」は、第一凸部453に対して、第一凸部間凹部457aとは反対側(第一周方向における反対側)である。第一凸部間外側凹部457cは、第一凸部453により形成される。さらに詳しくは、第一凸部間外側凹部457cは、第一凸部間外側を向く第一凸部側面部453sと、第一接続部457c1(後述)と、により形成される。第一凸部間外側凹部457cは、2つの第一凸部453のそれぞれの第一凸部453間外側に(合計2つ)設けられる。第一凸部間外側凹部457cの大きさは、第一凸部間凹部457aよりも小さい。さらに詳しくは、軸方向Zから見たとき、第一仮想円50cと1つの第一凸部間外側凹部457cとで囲まれた面積は、第一仮想円50cと第一凸部間凹部457aとで囲まれた面積よりも狭い。
【0117】
第一接続部457c1は、第一凸部453の第一凸部間外側の第一凸部基端部453bと、第一基部最外径円弧部452cと、を接続する部分である。第一接続部457c1は、軸方向Zから見たときに、直線を含んでもよく、曲線を含んでもよい。
【0118】
(第一最外径円弧部51の長さ)
第一ロータ50に第一凸部453が設けられる場合も、第一最外径円弧部51について、上記[条件α1]が満たされる。具体的には、
図16に示す例では、第一最外径円弧部51の第一周方向における長さは、第一基部最外径円弧部452cの第一周方向における長さと、第一凸部最外径円弧部453tcの第一周方向における長さと、の和である。この和は、第一仮想円50cの全周の長さの1/2以上である。
【0119】
なお、
図16に示す例において、第一凸部先端部453tが第一最外径円弧部51を有さない場合は、第一最外径円弧部51の第一周方向における長さは、第一基部最外径円弧部452cの第一周方向における長さである。この場合、第一基部最外径円弧部452cの第一周方向における長さは、第一仮想円50cの全周の長さの1/2以上である。
【0120】
第二ロータ60は、例えば、第一ロータ50と同様の構成を備える。第二ロータ60は、第二基部462と、第二凸部463と、を備える。第二基部462は、第二回転軸60aを含む。第二凸部463は、第二基部462から第二径方向外側に突出し、複数設けられる。第二凸部463は、第一凸部453と同様に、第二凸部先端部463tを備える。第二凸部先端部463tは、第二凸部最外径円弧部463tcを備えてもよい。第二凸部最外径円弧部463tcは、軸方向Zから見たときに、第二仮想円60cに沿って延びる円弧状であり、第二最外径円弧部61を構成する。
【0121】
また、第二凹部267は、第一凹部257と同様に、第二凸部間凹部467aと、第二凸部間外側凹部467cと、を備える。
【0122】
(凸部の対向)
[例A1]
図15に示すように、第二凸部463は、第一凸部453と向かい合う(ロータ軸間領域Aで横方向Xに向かい合う)場合があることが好ましい。この場合、第一凸部453と第二凸部463との隙間を材料Mが通ることで、材料Mに上下方向Yの伸長流れが生じる。よって、材料Mに伸長応力を付与することができる。
【0123】
図16に示すように、第一凸部先端部453tが第一回転軸50aを中心とする円弧状であることが好ましい。また、第二凸部先端部463tが第二回転軸60aを中心とする円弧状であることが好ましい。[例A2]これらの場合に、第二凸部先端部463tが、第一凸部先端部453tと向かい合う場合(
図15参照)があることが好ましい。この場合、第一凸部先端部453tが第一回転軸50aを中心とする円弧状でない場合、および、第二凸部先端部463tが第二回転軸60aを中心とする円弧状でない場合、のそれぞれの場合などに比べ、より大きい伸長応力を材料Mに付与することができる。
【0124】
第一凸部先端部453tが第一凸部最外径円弧部453tcであることが好ましい。また、第二凸部先端部463tが第二凸部最外径円弧部463tcであることが好ましい。[例A3]第二凸部最外径円弧部463tcが、第二凸部最外径円弧部463tcと向かい合う場合(
図15参照)があることが好ましい。この場合、例えば、上記[例A2]であって上記[例A3]でない場合などに比べ、より大きい伸長応力を材料Mに付与することができる。
【0125】
[例B1]2つの第二凸部463は、2つの第一凸部453と向かい合う場合があることが好ましい。この場合、1つの第一凸部453と1つの第二凸部463とが向かい合う場合(
図18参照)に比べ、第一凸部453と第二凸部463との隙間を材料Mが通るタイミングが増える。よって、第一凸部453と第二凸部463との隙間で、材料Mに伸長応力を付与できるタイミングを増やすことができる。
【0126】
2つの第一凸部453それぞれの第一凸部先端部453tが、第一回転軸50aを中心とする円弧状であることが好ましい。2つの第二凸部463それぞれの第二凸部先端部463tが第二回転軸60aを中心とする円弧状であることが好ましい。[例B2]これらの場合に、2つの第一凸部453と、2つの第二凸部463とが、向かい合う場合があることが好ましい。この場合、例えば、上記[例B1]であって上記[例B2]でない場合などに比べ、より大きい伸長応力を材料Mに付与することができる。
【0127】
2つの第一凸部先端部453tのそれぞれが、第一凸部最外径円弧部453tcであることが好ましい。また、2つの第二凸部先端部463tのそれぞれが、第二凸部最外径円弧部463tcであることが好ましい。[例B3]この場合に、2つの第二凸部463それぞれの第二凸部最外径円弧部463tcと、2つの第一凸部453それぞれの第一凸部最外径円弧部453tcと、が向かい合う場合があることが好ましい。この場合、例えば、上記[例B2]であって上記[例B3]でない場合などに比べ、より大きい伸長応力を材料Mに付与することができる。
【0128】
(凹部の対向)
上記[例A1]~[例B3]のように第一凸部453と第二凸部463とが向かい合う結果、第一凹部257と第二凹部267とが向かい合う(
図15および
図18参照)。さらに詳しくは、第一凸部453と第一周方向に隣り合う第一凹部257と、第二凸部463と第二周方向に隣り合う第二凹部267と、が向かい合う。よって、第一凹部257と第二凹部267とが向かい合うことによる作用が得られる(第2実施形態を参照)。
【0129】
上記[例B1]~[例B3]のように、2つの第一凸部453と2つの第二凸部463とが向かい合う結果、第一凸部間凹部457aと第二凸部間凹部467aとが向かい合う。また、第一凸部間凹部457aと第二凸部間凹部467aとが向かい合うのと同時、または、ロータ40の回転に伴って、第一凸部間外側凹部457cと第二凸部間外側凹部467cとが向かい合う。よって、2つの第一凸部453と2つの第二凸部463とが向かい合う場合(
図15参照)は、1つのみの第一凸部453と1つのみの第二凸部463とが向かい合う場合(
図18参照)に比べ、ロータ隙間上部Ay1の材料Mを多く取り込むことができる。
【0130】
なお、ロータ40に第一凸部453および第二凸部463が設けられる場合に、第一凸部453と第二凸部463とが向き合う場合がなくてもよい。この場合でも、第一凹部257および第二凹部267があることによる作用(第2実施形態参照)が得られる。
【0131】
(凹部の深さ)
図15に示すように、第一凸部間凹部457aの深さは、第一凹部257による作用(第2実施形態参照)が十分得られる深さであることが好ましい。例えば、第一凸部間凹部457aの深さは、ロータ隙間上部Ay1の材料Mを十分に取り込める深さであることが好ましい。具体的には、
図16に示すように、下記の長さd1は、下記の長さd2よりも小さいことが好ましく、長さd2の2/3よりも小さいことがより好ましい。長さd1は、第一径方向における、第一回転軸50aから第一凸部間凹部457aまでの最小長さである。長さd2は、第一径方向における、第一回転軸50aから第一基部452の外側の面までの最大長さである。
【0132】
第一凸部間凹部457aの深さと同様に、第二凸部間凹部467aの深さは、第二凹部267による作用(第2実施形態参照)が十分得られる深さであることが好ましい。具体的には、下記の長さd3は、下記の長さd4よりも小さいことが好ましく、長さd4の2/3よりも小さいことがより好ましい。長さd3は、第二径方向における、第二回転軸60aから第二凸部間凹部467aまでの最小長さである。長さd4は、第二径方向における、第二回転軸60aから第二基部462の外側の面までの最大長さである。
【0133】
(解析)
混練装置401での材料Mの速度分布を
図19に示し、粒子分配を
図20および
図21に示す。
【0134】
ここで、軸方向Zから見た粒子分配の解析結果について、
図8に示す混練装置201での結果と、
図13に示す混練装置301での結果と、を比較する。すると、混練装置201に比べ、混練装置301の方が、ロータ隙間上部Ay1での粒子の滞留が多くなっている。この原因は次の通りである。混練装置201と混練装置301とを比較すると、軸方向Zから見た第一ロータ50および第二ロータ60の断面形状は、ほぼ同じである。しかし、
図11に示すように、混練装置301は、混練装置201(
図6参照)にはない第一ねじれ部358および第二ねじれ部368を備える。その結果、第一凹部257と第二凹部267とが対向しない部分が増える。さらに詳しくは、
図6に示す混練装置201では、ある軸方向Z位置において、第一凹部257と第二凹部267とが対向しているとき、他の軸方向Z位置においても、第一凹部257と第二凹部267とが対向する。一方、
図11に示す混練装置301では、一部の軸方向Z位置において第一凹部257と第二凹部267とが対向するとき、他の軸方向Z位置において第一凹部257と第二凹部267とが対向しない。その結果、
図13に示すように、混練装置301では、混練装置201(
図8参照)に比べ、ロータ隙間上部Ay1で滞留する材料Mの量が増加し、材料Mの分配が悪化した。
【0135】
そこで、
図15に示すように、本実施形態の混練装置401は、第一凸部453および第二凸部463を備える。混練装置401では、混練装置301(
図10参照)に比べ、第一凸部453および第二凸部463が(第一凸部間凹部457aおよび第二凸部間凹部467aが)、ロータ隙間上部Ay1の材料Mを多く取り込むことができる。
図20に、軸方向Zから見た粒子分配の解析結果を示す。この
図20では、混練装置301(
図13参照)に比べ、混練装置401では、ロータ隙間上部Ay1の粒子の滞留が抑制されることが示されている(t/T=3の状態を参照)。また、混練装置401では、第一周方向および第二周方向への粒子の分配が進展していることが示されている。また、
図21に、軸方向Zの粒子分配の解析結果を示す。この
図21では、軸方向Zへの材料Mの分配も進展していることが示されている。
【0136】
(比較)
図22に示す比較例の回転翼と、
図17に示す混練装置401のロータ40と、について、材料Mに付与できる最大せん断応力および最大伸長応力を比較した(
図23および
図24参照)。比較例の回転翼(「ミキサ」ともいう)は、
図22に示すような3翼であり、
図16に示す第一最外径円弧部51および第二最外径円弧部61を備えない(またはわずかしか備えない)。なお、
図23および
図24に示す最大せん断応力および最大伸長応力の数値は、各例どうしの応力の比較や、最大せん断応力の大きさと最大伸長応力の大きさとの比較などを容易にするために示した一例にすぎない。
【0137】
(せん断応力の比較)
比較例のミキサ(
図22参照)で材料Mを混練する例として、
図23に示すように、下記の例D1および例D2を設定する。例D1は、超臨界状態の作動流体を用いて、比較例のミキサで材料Mを混練する例である。この例D1では、ミキサの回転数は60rpmである。例D2は、超臨界状態の作動流体を用いることなく、大気圧雰囲気で、比較例のミキサで材料Mを混練する例である。この例D2では、ミキサの回転数は60rpmである。
図23に示すように、例D1では、例D2の約1/3しか、材料Mにせん断応力が付与されない。
【0138】
図17に示すロータ40で材料Mを混練する例として、
図23に示すように、下記の例E1および例E2を設定する。例E1および例E2のそれぞれは、超臨界状態の作動流体を用いて、ロータ40で材料Mを混練する例である。ロータ40の回転数は、例E1では60rpmであり、例E2では90rpmである。
図23に示すように、例E1の最大せん断応力は、例D1とほぼ同じであった。例E2の最大せん断応力は、例E1の最大せん断応力の約1.5倍であった。例E2の最大せん断応力は、例D2と比べると小さく、例D2の約1/2であった。この結果では、ロータ40の回転数を上げても、最大せん断応力は大きくは増加しないことが示されている。
【0139】
なお、
図23に示すグラフの最大応力Fmaxは、例D1、例D2の混練機において、
図22に示すものとは異なる回転翼を用いて、クリアランス等の条件を調整し、大気圧雰囲気で材料Mを混練した場合に、材料Mに与えることができる最大せん断応力である。
【0140】
(伸長応力の比較)
図24に、上記の例D1、例D2、例E1、および例E2において、材料Mに付与できる最大伸長応力を示す。
図24に示すように、例E1の最大伸長応力は、例D2の最大伸長応力の約2.5倍であった。また、例E2の最大伸長応力は、例D2の最大伸長応力の約4倍であった。このように、比較例のミキサ(
図22参照)の例D1、例D2に比べ、ロータ40の例E1、例E2では、大きい伸長応力が作用することが示される。また、
図24に示す例では、例E2の最大伸長応力は、例D2の最大せん断応力(
図23参照)とほぼ同じであった。
【0141】
図15に示す混練装置401による効果は、次の通りである。
【0142】
(第5の発明の効果)
[構成5-1]第一ロータ50は、第一基部452と、2つ以上の第一凸部453と、を備える。第一基部452は、第一回転軸50aを含む。第一凸部453は、第一基部452から径方向外側(第一径方向外側)に突出する。
【0143】
[構成5-2]第一凹部257は、第一凸部間凹部457aを備える。第一凸部間凹部457aは、第一ロータ50の周方向(第一周方向)に隣り合う2つの第一凸部453により形成される。
【0144】
[構成5-3]第二ロータ60は、第二基部462と、2つ以上の第二凸部463と、を備える。第二基部462は、第二回転軸60aを含む。第二凸部463は、第二基部462から径方向外側(第二径方向外側)に突出する。
【0145】
[構成5-4]第二凹部267は、第二凸部間凹部467aを備える。第二凸部間凹部467aは、第二ロータ60の周方向(第二周方向)に隣り合う2つの第二凸部463により形成される。
【0146】
上記[構成5-1]により、第一凸部453は、第一ロータ50の回転に伴って、ロータ隙間上部Ay1の材料Mを、第一ロータ50と第二ロータ60との間に移動させることができる。また、上記[構成5-2]により、ロータ隙間上部Ay1の材料Mは、第一凸部間凹部457aに入る(取り込まれる)ことができる。そして、第一ロータ50の回転に伴って、第一凸部間凹部457aは、ロータ隙間上部Ay1の材料Mを、ロータ隙間下部Ay2に移動させる(取り込む)ことができる。第一ロータ50と同様に、上記[構成5-3]および上記[構成5-4]により、第二ロータ60の回転に伴って、第二凸部間凹部467aは、ロータ隙間上部Ay1の材料Mを、ロータ隙間下部Ay2に移動させる(取り込む)ことができる。したがって、ロータ隙間上部Ay1で滞留する材料Mを減らすことができる。よって、混練装置401は、材料Mをより分配させることができる。
【0147】
(第6の発明の効果)
[構成6]第二凸部463は、第一回転軸50aと第二回転軸60aとの間で(ロータ軸間領域Aで)、第一凸部453と向かい合う場合がある。
【0148】
上記[構成6]により、第一凸部453と第二凸部463とが向かい合ったときに、第一凸部453と第二凸部463との隙間で、材料Mに伸長応力を付与することができる。よって、混練装置401は、材料Mをより分散させることができる。
【0149】
また、第一凸部453と第二凸部463とが向かい合う結果、第一凸部453と第一周方向に隣り合う第一凹部257と、第二凸部463と第二周方向に隣り合う第二凹部267と、が向かい合う。よって、第一凹部257と第二凹部267とが向かい合う場合がない場合に比べ、ロータ隙間上部Ay1の材料Mを多く取り込むことができる。よって、ロータ隙間上部Ay1で滞留する材料Mを、より減らすことができる。よって、混練装置401は、材料Mをより分配させることができる。
【0150】
(第7の発明の効果)
[構成7]2つの第二凸部463は、第一回転軸50aと第二回転軸60aとの間で(ロータ軸間領域Aで)、2つの第一凸部453と向かい合う場合がある。
【0151】
上記[構成7]により、1つのみの第一凸部453と1つのみの第二凸部463とが向かい合う場合(
図18参照)に比べ、第一凸部453と第二凸部463との隙間を材料Mが通るタイミングが多くなる。よって、第一凸部453と第二凸部463との隙間で、材料Mに伸長応力を付与するタイミングを多くすることができる。
【0152】
また、2つの第一凸部453と2つの第二凸部463とが向かい合う結果、第一凸部間凹部457aと第二凸部間凹部467aとが向かい合う。よって、第一凸部間凹部457aと第二凸部間凹部467aとが向かい合う場合がない場合に比べ、ロータ隙間上部Ay1の材料Mを多く取り込むことができる。よって、ロータ隙間上部Ay1で滞留する材料Mを、より減らすことができる。よって、混練装置401は、材料Mをより分配させることができる。
【0153】
(第8の発明の効果)
[構成8]
図16に示すように、第一凸部先端部453tは、第一回転軸50aが延びる方向(軸方向Z)から見たときに第一回転軸50aを中心とする円弧状である。第一凸部先端部453tは、第一ロータ50の径方向(第一径方向)における第一凸部453の外側端部である。第二凸部先端部463tは、第二回転軸60aが延びる方向(軸方向Z)から見たときに第二回転軸60aを中心とする円弧状である。第二凸部先端部463tは、第二ロータ60の径方向(第二径方向)における第二凸部463の外側端部である。
【0154】
上記[構成8]および上記[構成6]により、次の効果が得られる。第一凸部先端部453tと第二凸部先端部463tとが上記の円弧状でない場合に比べ、第一凸部先端部453tと第二凸部先端部463tとが向かい合ったとき(
図15参照)に、材料Mに伸長応力をより確実に付与することができる。よって、混練装置401は、材料Mをより分散させることができる。
【0155】
上記[構成8]と上記[構成7]とを備える場合は、2つの円弧状の第一凸部先端部453tと2つの円弧状の第二凸部先端部463tとが向かい合う場合がある(
図15参照)。この場合は、1つのみの円弧状の第一凸部先端部453tと1つのみの円弧状の第二凸部先端部463tとが向かい合う場合に比べ、第一凸部先端部453tと第二凸部先端部463tとの隙間で、材料Mに伸長応力を付与するタイミングを多くすることができる。
【0156】
(第9の発明の効果)
[構成9]第一凸部先端部453tは、第一最外径円弧部51である。第二凸部先端部463tは、第二最外径円弧部61である。
【0157】
上記[構成9]により、第一凸部先端部453tが第一最外径円弧部51でない、または、第二凸部先端部463tが第二最外径円弧部61でない場合に比べ、より大きい伸長応力を材料Mに付与することができる。
【0158】
(第10の発明の効果)
[構成10]下記の長さd1は、下記の長さd2よりも小さい。長さd1は、第一ロータ50の径方向(第一径方向)における、第一回転軸50aから第一凸部間凹部457aまでの最小長さである。長さd2は、第一ロータ50の径方向(第一径方向)における、第一回転軸50aから第一基部452の外側の面までの最大長さである。下記の長さd3は、長さd4よりも小さい。長さd3は、第二ロータ60の径方向(第二径方向)における、第二回転軸60aから第二凸部間凹部467aまでの最小長さである。長さd4は、第二ロータ60の径方向(第二径方向)における、第二回転軸60aから第二基部462の外側の面までの最大長さである。
【0159】
上記[構成10]により、第一凸部間凹部457aの大きさ(深さ)、および、第二凸部間凹部467aの大きさ(深さ)を確保することができる。よって、第一凸部間凹部457aおよび第二凸部間凹部467aに取り込まれる、ロータ隙間上部Ay1(
図15参照)の材料Mの量を確保することができる。よって、
図15に示す混練装置401は、ロータ隙間上部Ay1の材料Mの滞留をより減らすことができる。
【0160】
(変形例)
上記実施形態は様々に変形されてもよい。例えば、互いに異なる実施形態の構成要素(変形例を含む)どうしが組み合わされてもよい。例えば、上記実施形態の変形例どうしが様々に組み合わされてもよい。例えば、上記実施形態の構成要素(変形例を含む)の数が変更されてもよく、構成要素の一部が設けられなくてもよい。例えば、構成要素の配置は変更されてもよい。例えば、構成要素の包含関係は様々に変更されてもよい。例えば、ある上位の構成要素に含まれる下位の構成要素として説明したものが、この上位の構成要素に含まれなくてもよく、他の構成要素に含まれてもよい。例えば、互いに異なる複数の部材や部分として説明したものが、一つの部材や部分とされてもよい。例えば、一つの部材や部分として説明したものが、互いに異なる複数の部材や部分に分けて設けられてもよい。例えば、各構成要素は、各特徴(作用機能、配置、形状、作動など)の一部のみを有してもよい。
【0161】
具体的には例えば、
図15に示す第一ロータ50は、第一凸部453を1つのみ備えてもよい。また、例えば、第一ロータ50が第一凸部453を備える場合に、第一凸部間凹部457aが設けられなくてもよい。また、例えば、第一ロータ50が第一凸部453を備える場合に、第一ロータ50が第一ねじれ部358(
図17参照)を備えなくてもよい。また、第一ロータ50が第一凸部453を備えない場合に、第一ロータ50が2つ以上の第一凹部257(
図6参照)を備えてもよい。
【符号の説明】
【0162】
1、201、301、401 混練装置
10a 混練室
21 第一ロータ収容室
22 第二ロータ収容室
30 ロータ軸間上部室
50 第一ロータ
50a 第一回転軸
50c 第一仮想円
51 第一最外径円弧部
60 第二ロータ
60a 第二回転軸
60c 第二仮想円
61 第二最外径円弧部
257 第一凹部
267 第二凹部
358 第一ねじれ部
368 第二ねじれ部
452 第一基部
453 第一凸部
453t 第一凸部先端部
457a 第一凸部間凹部
462 第二基部
463 第二凸部
463t 第二凸部先端部
467a 第二凸部間凹部
A ロータ軸間領域(第一回転軸と第二回転軸との間)