(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143487
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電池モジュール、電池モジュールの製造方法及びレーザ溶接の検査方法
(51)【国際特許分類】
H01M 50/50 20210101AFI20241003BHJP
B23K 26/00 20140101ALI20241003BHJP
B23K 26/21 20140101ALI20241003BHJP
H01M 50/528 20210101ALI20241003BHJP
【FI】
H01M50/50 201A
B23K26/00 B
B23K26/21 G
B23K26/00 P
H01M50/528
H01M50/50 201Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056202
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】507357232
【氏名又は名称】株式会社AESCジャパン
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(74)【代理人】
【識別番号】100127236
【弁理士】
【氏名又は名称】天城 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良成
(72)【発明者】
【氏名】藤田 創平
(72)【発明者】
【氏名】武藤 優
【テーマコード(参考)】
4E168
5H043
【Fターム(参考)】
4E168AA02
4E168BA14
4E168BA42
4E168BA87
4E168BA88
4E168CB04
4E168CB07
4E168CB24
4E168DA02
4E168DA32
4E168DA42
4E168DA43
4E168EA15
4E168EA17
4E168KA02
4E168KA15
5H043AA19
5H043CA08
5H043DA10
5H043DA11
5H043DA13
5H043FA02
5H043FA40
5H043HA17F
5H043HA35F
5H043JA13F
5H043KA08F
5H043KA09F
(57)【要約】 (修正有)
【課題】レーザ溶接の品質に影響を与える要因を簡易に検査する。
【解決手段】電池モジュールは、正極タブ120に形成されたレーザ溶接部200と、正極タブ120におけるレーザ溶接部200の両側に形成された左側レーザエッチングマーク210及び右側レーザエッチングマーク220と、を備えている。レーザ溶接の検査方法は、レーザ溶接部が形成される被加工対象に形成されたレーザエッチングマークと、予め設計されたレーザエッチングマークと、の異同を検査する工程を備える。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被加工対象に形成されたレーザ溶接部と、
前記被加工対象における前記レーザ溶接部の両側の少なくとも一方に形成されたレーザエッチングマークと、
を備える電池モジュール。
【請求項2】
前記レーザエッチングマークが角部を有する、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項3】
前記レーザエッチングマークが、少なくとも部分的に互いに重なる複数のパターンを有する、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項4】
前記レーザエッチングマークが、中心が互いに重なる複数のパターンを有する、請求項1に記載の電池モジュール。
【請求項5】
前記レーザエッチングマークと、予め設計されたレーザエッチングマークと、の異同が検査される、請求項1~4のいずれか一項に記載の電池モジュール。
【請求項6】
被加工対象にレーザ溶接部を形成する工程と、
前記被加工対象における前記レーザ溶接部の両側の少なくとも一方にレーザエッチングマークを形成する工程と、
を備える、電池モジュールの製造方法。
【請求項7】
レーザ溶接部が形成される被加工対象に形成されたレーザエッチングマークと、予め設計されたレーザエッチングマークと、の異同を検査する工程を備える、レーザ溶接の検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電池モジュール、電池モジュールの製造方法及びレーザ溶接の検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複数の電池セルを備える様々な電池モジュールが開発されている。例えば、特許文献1又は2に記載されているように、電池モジュールには、レーザによって形成された識別子が設けられていることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2019/193869号
【特許文献2】特開2006-40875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電池モジュールには、例えば電池セルのタブ同士の接合やタブ及びバスバーの接合、筐体の組み立て等の様々な被加工対象の接合においてレーザ溶接が用いられることがある。レーザ溶接には、耐衝撃強度、耐振動強度、耐環境試験等の様々な品質が要求される。しかしながら、レーザ溶接に用いられるレーザ溶接装置には、経時変化による異常が発生したり、被加工対象には、タブの変形や筐体の組込み精度異常等の様々な異常が発生したりすることがある。このような異常が生じる場合、レーザ溶接の接合不良やレーザ溶接部の抵抗値異常等のレーザ溶接不良を抑制することが難しくなることがある。一方、このようなレーザ溶接不良をレーザ溶接モニタリング(LWM)や抵抗値測定等の方法で検知することがある。しかしながら、このような方法を用いても、レーザ溶接不良の即時的な原因究明やレーザ溶接不良の経時変化への対応が比較的難しいことがある。また、このようなレーザ溶接不良の発生の頻度はランダムである場合があり、レーザ溶接不良の予兆を把握することは比較的難しいことがある。よって、レーザ溶接不良が生じた場合、レーザ溶接のラインを止めて、レーザ溶接不良の生じた前後のレーザ溶接部を例えば破壊検査で検査することが必要な場合がある。したがって、レーザ溶接の品質に影響を与える要因を簡易に検査することが比較的難しいことがある。
【0005】
本発明の目的の一例は、レーザ溶接の品質に影響を与える要因を簡易に検査することにある。本発明の他の目的は、本明細書の記載から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、以下のとおりである。
[1]
被加工対象に形成されたレーザ溶接部と、
前記被加工対象における前記レーザ溶接部の両側の少なくとも一方に形成されたレーザエッチングマークと、
を備える電池モジュール。
[2]
前記レーザエッチングマークが角部を有する、[1]に記載の電池モジュール。
[3]
前記レーザエッチングマークが、少なくとも部分的に互いに重なる複数のパターンを有する、[1]又は[2]に記載の電池モジュール。
[4]
前記レーザエッチングマークが、中心が互いに重なる複数のパターンを有する、[1]~[3]のいずれか一に記載の電池モジュール。
[5]
前記レーザエッチングマークと、予め設計されたレーザエッチングマークと、の異同が検査される、[1]~[4]のいずれか一に記載の電池モジュール。
[6]
被加工対象にレーザ溶接部を形成する工程と、
前記被加工対象における前記レーザ溶接部の両側の少なくとも一方にレーザエッチングマークを形成する工程と、
を備える、電池モジュールの製造方法。
[7]
レーザ溶接部が形成される被加工対象に形成されたレーザエッチングマークと、予め設計されたレーザエッチングマークと、の異同を検査する工程を備える、レーザ溶接の検査方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明の上記態様によれば、レーザ溶接の品質に影響を与える要因を簡易に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態に係る電池モジュールの一部分の斜視図である。
【
図2】実施形態に係るレーザ溶接部の断面を示す図である。
【
図3】被加工対象をレーザ溶接するためのレーザ溶接装置の一例を示す図である。
【
図4】レーザ溶接部の形成方法の第1例を説明するための図である。
【
図5】レーザ溶接部の形成方法の第2例を説明するための図である。
【
図6】実施形態に係る左側第1レーザエッチングパターン、レーザ溶接部及び右側第1レーザエッチングパターンを形成する方法を説明するための図である。
【
図7】実施形態に係る左側レーザエッチングマーク及び右側レーザエッチングマークを形成する方法を説明するための図である。
【
図8】実施形態に係る第1レーザエッチングパターンを形成する方法を示す図である。
【
図9】第1レーザエッチングパターンにおけるレーザ出力及びレーザスポットサイズの関係の一例を示すグラフである。
【
図10】第1レーザエッチングパターンにおけるレーザスポットサイズの測定方法を説明するための図である。
【
図11】エッチングモードにおける被加工対象の断面図である。
【
図12】溶融モードにおける被加工対象の断面図である。
【
図13】第1レーザエッチングパターンの形状の異常の第1例を示す図である。
【
図14】第1レーザエッチングパターンの形状の異常の第2例を示す図である。
【
図15】第1レーザエッチングパターンの形状の異常の第3例を示す図である。
【
図16】第1レーザエッチングパターンの形状の異常の第4例を示す図である。
【
図17】第1レーザエッチングパターンの形状の異常の第5例を示す図である。
【
図18】レーザエッチングマークの形状の異常の第1例を示す図である。
【
図19】レーザエッチングマークの形状の異常の第2例を示す図である。
【
図20】変形例に係るレーザエッチングマークを示す図である。
【
図21】実施形態に係るレーザ溶接の検査方法の他の例を説明するための図である。
【
図22】実施形態に係るレーザ溶接の検査方法の他の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態及び変形例について、図面を用いて説明する。すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0010】
図1は、実施形態に係る電池モジュール10の一部分の斜視図である。
図2は、実施形態に係るレーザ溶接部200の断面を示す図である。
【0011】
各図には、説明のため、互いに直交するX軸、Y軸及びZ軸が図示されている。以下、必要に応じて、X軸、Y軸及びZ軸に平行な方向を、それぞれ、X方向、Y方向及びZ方向という。以下、必要に応じて、X軸を示す矢印によって示される側を+X側といい、X軸を示す矢印によって示される側の反対側を-X側という。以下、必要に応じて、Y軸を示す矢印によって示される側を+Y側といい、Y軸を示す矢印によって示される側の反対側を-Y側という。以下、必要に応じて、Z軸を示す矢印によって示される側を+Z側といい、Z軸を示す矢印によって示される側の反対側を-Z側という。以下、必要に応じて、Z軸に垂直な方向をXY平面方向といい、Y軸に垂直な方向をZX平面方向といい、X軸に垂直な方向をYZ平面方向という。以下、必要に応じて、Z方向に対して平行な方向の周りの回転方向をθ方向という。
【0012】
一部の図におけるX軸、Y軸又はZ軸を示すX付き白丸は、当該白丸によって示される軸の矢印が紙面の手前から奥に向けて指し示されていることを示している。X軸、Y軸又はZ軸を示す黒点付き白丸は、当該白丸によって示される軸の矢印が紙面の奥から手前に向けて指し示されていることを示している。
【0013】
実施形態に係る電池モジュール10は、複数の電池セル100を備えている。各電池セル100は、XY平面方向に対して略平行に延在している。各電池セル100は、Z方向に対して略平行な厚みを有している。複数の電池セル100は、Z方向に対して略平行に積層されている。各電池セル100は、不図示の電池要素、外装材110、正極タブ120及び負極タブ130を有している。一例において、電池要素は、Z方向に交互に積層された複数の正極及び複数の負極を含んでいる。Z方向に隣り合う正極及び負極は、不図示のセパレータによって互いに隔てられている。ただし、電池要素の構造は、この例に限定されない。
【0014】
外装材110は、不図示の電池要素と、不図示の電解液と、を収容している。外装材110は、例えば、アルミラミネートからなっている。
【0015】
正極タブ120は、電池要素の正極に電気的に接続されている。正極タブ120は、例えば、アルミニウム及びアルミニウム合金の少なくとも一方からなっている。正極タブ120の表面には、耐食性保護被膜やめっき膜等の二次加工が施されていてもよい。ただし、正極タブ120を構成する材料は、電気導電率が比較的高い材料、すなわち、電気抵抗率が比較的低い材料であれば、この例に限定されない。
【0016】
負極タブ130は、電池要素の負極に電気的に接続されている。負極タブ130は、例えば、銅及び銅合金の少なくとも一方からなっている。負極タブ130の表面には、耐食性保護被膜やめっき膜等の二次加工が施されていてもよい。ただし、負極タブ130を構成する材料は、電気導電率が比較的高い材料、すなわち、電気抵抗率が比較的低い材料であれば、この例に限定されない。正極タブ120を構成する材料及び負極タブ130を構成する材料は、同一であってもよいし、又は異なっていてもよい。
【0017】
各電池セル100において、正極タブ120及び負極タブ130は、外装材110におけるY方向の互いに反対側に引き出されている。ただし、正極タブ120及び負極タブ130の引き出し方法は、この例に限定されない。例えば、正極タブ120及び負極タブ130は、外装材110の+Y側又は-Y側の同一の辺から引き出されていてもよい。この例において、正極タブ120及び負極タブ130は、X方向に対して略平行に並んでいる。
【0018】
実施形態では、電気的に並列に接続された複数の電池セル100を含むセル群が複数電気的に直列に接続されている。
図1に示す例では、各々が2つの電池セル100を含む8つのセル群が模式的に図示されている。ただし、実際の電池モジュール10に含まれるセル群の数は、
図1に示す例に限定されない。
図1に示す例では、+Z側から3つ目のセル群に含まれる2つの電池セル100から-Y側に向けて2つの正極タブ120が引き出されており、+Z側から4つ目のセル群に含まれる2つの電池セル100から-Y側に向けて2つの負極タブ130が引き出されている。
図2に示すように、これらの正極タブ120及び負極タブ130は、レーザ溶接部200によって互いに接合されている。よって、
図1に示す例において、+Z側から3つ目のセル群に含まれる2つの電池セル100と、+Z側から4つ目のセル群に含まれる2つの電池セル100と、は電気的に直列に接続されている。正極タブ120及び負極タブ130のこのような接合部は、電池モジュール10の+Y側及び-Y側において交互に設けられている。よって、
図1に示す例では、8つのセル群が電気的に直列に接続されている。
【0019】
複数の電池セル100の電気的接続の態様は、上述した例に限定されない。例えば、電気的に並列に接続された3つ以上の電池セル100を含むセル群が複数電気的に直列に接続されていてもよい。或いは、単一の電池セル100が複数単に直列に接続されていてもよい。
【0020】
正極タブ120及び負極タブ130を互いに接合する方法は、レーザ溶接単独であってもよいし、又はレーザ溶接と他の接合方法との組み合わせであってもよい。例えば、かしめ技術、FSW(摩擦攪拌接合)、超音波接合、TIG(Tungsten Inert Gas)溶接、MIG(Metal Inert Gas)溶接等の接合方法が組み合わされてもよい。
【0021】
レーザ溶接部200は、正極タブ120及び負極タブ130の接合部に対して正極タブ120が位置する側からのレーザ照射によって形成されている。
図2に示す例において、レーザ溶接部200は、正極タブ120及び負極タブ130の接合部に対して+Z側からのレーザ照射によって形成されている。
図2に示すように、レーザ溶接部200は、少なくとも部分的に負極タブ130に達している。よって、正極タブ120及び負極タブ130は、互いに接合されている。
【0022】
図3は、被加工対象Wをレーザ溶接するためのレーザ溶接装置50の一例を示す図である。
図3に示す例において、被加工対象Wは、Z方向に略垂直なステージ550に搭載されている。被加工対象Wは、レーザ溶接装置50によって以下のようにしてレーザ溶接されている。ただし、被加工対象Wをレーザ溶接するためのレーザ溶接装置の構造は、
図3に示すレーザ溶接装置50の構造に限定されない。
【0023】
図3に示すように、レーザ発振器502から光ファイバ504を経由してレーザビームBが出射されている。レーザビームBは、ビームエキスパンダ506及びフォーカスレンズ508を順に通過して、ガルバノミラー光学系510に入射している。ビームエキスパンダ506によって、レーザビームBのビーム径が拡大されている。フォーカスレンズ508をレーザビームBの光軸に対して略平行な方向に移動させることで、被加工対象WにおけるレーザビームBのフォーカスのZ方向内の位置が調整可能になっている。
【0024】
レーザビームBは、ガルバノミラー光学系510に入射した後、集光レンズ512を通過して可動ミラー514に入射する。レーザビームBは、可動ミラー514によって反射された後、カバーガラス516を通過して、被加工対象Wに照射されている。可動ミラー514によって、レーザビームBの被加工対象WにおけるX方向及びY方向の照射位置が調整可能になっている。
【0025】
光ファイバ504の先端部、ビームエキスパンダ506、フォーカスレンズ508及びガルバノミラー光学系510は、移動ユニット520によってXY平面方向に移動可能になっている。移動ユニット520によって、レーザビームBの被加工対象WにおけるX方向、Y方向及びZ方向の照射位置が調整可能になっている。
【0026】
ステージ550は、X方向、Y方向、Z方向及びθ方向に可動になっている。ステージ550によって、レーザビームBの被加工対象WにおけるX方向、Y方向、Z方向及びθ方向の照射位置が調整可能になっている。
【0027】
図2に示す例では、互いに接合される2つの正極タブ120及び2つの負極タブ130が、
図3に示す被加工対象Wに相当している。この例では、正極タブ120及び負極タブ130の接合部に対して+Z側からレーザビームBが照射されている。
【0028】
被加工対象Wの溶接条件は、溶接される材料が同種であるか、又は異種であるかに応じて異なることがある。例えば、異種材料が溶接される場合、アルミニウム-銅等の異種材料の溶接部には、溶接条件が最適条件からずれていると、高融点下で金属間化合物膜(IMC)が形成されることがある。IMCが形成される場合、IMCの硬度の高さやIMCの脆さ等の不具合が生じることがある。或いは、アルミニウム-アルムニウム等の同種材料の溶接部には、溶接条件が最適条件からずれていると、溶接部位の溶融割れ等の不具合が生じることがある。よって、これらの不具合を避けるため、被加工対象Wの溶接条件は、最適条件に設定されている必要がある。被加工対象Wの溶接条件は、レーザ溶接装置50のレーザ発振器502の異常やガルバノミラー光学系510等の各種光学系の異常等の各種異常によって、最適条件からずれることがある。よって、レーザ溶接装置50の当該各種異常は、レーザ溶接部200の接合強度に影響を及ぼすことがある。換言すると、本実施形態は、後述する検査においてレーザ溶接部200の接合強度の良否を判定することに用いることができる。
【0029】
図4は、レーザ溶接部200の形成方法の第1例を説明するための図である。
【0030】
図4においてレーザ溶接部200に付された丸は、+Z側から照射されたレーザによって生成されるスポットを示している。
図4に示す例では、正極タブ120の左側から右側にかけて複数の複数のスポットがX方向に対して略平行に連続的に生成されて、レーザ溶接部200が形成されている。レーザ発振器502は、溶接目的や被加工対象物Wの特徴等の所定条件から、連続発振CW(連続波)タイプと、パルス発振タイプと、のいずれか一方にすることができる。
図4に示す例では、レーザ発振器502は、連続発振CWタイプとなっている。
【0031】
図5は、レーザ溶接部200の形成方法の第2例を説明するための図である。
図5に示す第2例は、以下の点を除いて、
図4に示した第1例と同様である。
【0032】
図5においてレーザ溶接部200の右側に仮想的に付された破線矢印によって示されるように、
図5に示す例では、ウォブリング溶接が行われている。
図5に示す例では、正極タブ120左側から右側にかけて複数のスポットが右回りに連続的に生成されて、レーザ溶接部200が形成されている。
【0033】
図4及び
図5に例示されるレーザ溶接においては、レーザ溶接装置50の長時間の稼働によって、レーザ溶接装置50の各可動素子の消耗や、各種光学レンズの熱レンズ効果等の現象が発生することがある。例えば、可動ミラー514の動作異常による可動ミラー514の焼き付きや可動ミラー514の変位、ビームエキスパンダ506、フォーカスレンズ508、集光レンズ512、カバーガラス516等の各種光学系レンズによるレーザビームBの遮断や各種光学系レンズの透過率の減少といった現象が発生することがある。このような現象を日常のプリメンテナンスで発見することは比較的難しいことがある。また、上述した現象の予兆を把握することも比較的難しいことがある。さらに、単に生産設備を停止してメンテナンスする頻度を上げるのでは生産性が低下してしまう。
【0034】
図6は、実施形態に係る左側第1レーザエッチングパターン212(以下、単に、左側第1パターン212という。)、レーザ溶接部200及び右側第1レーザエッチングパターン222(以下、単に、右側第1パターン222という。)を形成する方法を説明するための図である。
図7は、実施形態に左側レーザエッチングマーク210(以下、単に、左側マーク210という。)及び右側レーザエッチングマーク220(以下、単に、右側マーク220という。)を形成する方法を説明するための図である。以下、説明のため、必要に応じて、-X側を左側といい、+X側を右側という。ただし、当該左側及び当該右側は、電池モジュール10の使用時の方向を必ずしも意味するものではない。
【0035】
まず、
図6に示すように、+Z側からのレーザ照射によって、正極タブ120の左側部分に左側第1パターン212を形成する。左側第1パターン212は、略∞形状となっている。
【0036】
次いで、
図6に示すように、+Z側からのレーザ照射によって、正極タブ120の左側部分から右側部分にかけてレーザ溶接部200を形成する。レーザ溶接部200は、X方向に対して略平行に延在している。左側第1パターン212は、レーザ溶接部200の左側の端部に対して左側に位置している。
【0037】
次いで、
図6に示すように、+Z側からのレーザ照射によって、正極タブ120の右側部分に右側第1パターン222を形成する。左側第1パターン212の形状及び右側第1パターン222の形状は、略同一となっている。右側第1パターン222は、レーザ溶接部200の右側の端部に対して右側に位置している。左側第1パターン212及び右側第1パターン222は、レーザ溶接部200のX方向の左右の両側の位置している。
【0038】
次いで、
図7に示すように、+Z側からのレーザ照射によって、正極タブ120の左側部分に左側第2レーザエッチングパターン214(以下、単に、左側第2パターン214という。)を形成する。左側第1パターン212及び左側第2パターン214は、略対称パターンとなっている。左側第1パターン212及び左側第2パターン214は、少なくとも部分的に互いに重なっている。よって、左側第1パターン212及び左側第2パターン214を有する左側マーク210が形成されている。左側マーク210は、略正方形によって囲まれた略+形状となっている。
【0039】
次いで、
図7に示すように、+Z側からのレーザ照射によって、正極タブ120の右側部分に右側第2レーザエッチングパターン224(以下、単に、右側第2パターン224という。)を形成する。右側第1パターン222及び右側第2パターン224は、略対称パターンとなっている。右側第1パターン222及び右側第2パターン224は、少なくとも部分的に互いに重なっている。よって、右側第1パターン222及び右側第2パターン224を有する右側マーク220が形成されている。右側マーク220は、略正方形によって囲まれた略+形状となっている。左側マーク210及び右側マーク220は、レーザ溶接部200のX方向の左右の両側の位置している。
【0040】
レーザ溶接部200を形成するためのレーザ照射の最適条件は、概ね、被加工対象Wの種類に応じて予め決定されている。例えば、被加工対象Wがアルミニウム合金及び銅合金であってアルミニウム合金及び銅合金が互いにレーザ溶接される場合、レーザ照射の最適条件は、例えば、レーザ波長1064nm、合焦時のレーザスポット直径72μm、レーザ出力1000Wである。この最適条件は、被加工対象Wの周囲環境、ガス雰囲気等の被加工対象Wの外部環境が一定であれば、一定となる。
【0041】
左側マーク210及び右側マーク220を形成するためのレーザ出力は、レーザ溶接部200を形成するためのレーザ照射の最適条件におけるレーザ出力より低くなっている。左側マーク210及び右側マーク220は、
図9~
図12を用いて後述するエッチングモードにおいて形成されている。例えば、レーザ溶接部200を形成するためのレーザ照射の最適条件が上述した例である場合、左側マーク210及び右側マーク220を形成するためのレーザ出力は、当該最適条件におけるレーザ出力の約1/3、すなわち、約200W~400Wとなる。この例では、レーザエッチングによって被加工対象の表面に約10μm~30μmの深さの凹部が形成される。
【0042】
図6及び
図7に示す例では、正極タブ120におけるレーザ溶接部200のX方向の両側に左側マーク210及び右側マーク220が形成されている。しかしながら、左側マーク210及び右側マーク220の一方は形成されていなくてもよい。
【0043】
以下、左側マーク210及び右側マーク220を説明上特に区別する必要がない場合、左側マーク210及び右側マーク220を、単に、マーク210ということがある。以下、左側第1パターン212及び右側第1パターン222を説明上特に区別する必要がない場合、左側第1パターン212及び右側第1パターン222を、単に、第1パターン212ということがある。以下、左側第2パターン214及び右側第2パターン224を説明上特に区別する必要がない場合、左側第2パターン214及び右側第2パターン224を、単に、第2パターン214ということがある。
【0044】
図8は、実施形態に係る第1パターン212を形成する方法を示す図である。
図8には、説明のため、第1矢印A1~第6矢印A6の6つの矢印が仮想的に図示されている。
図8の第1パターン212に沿って示される丸は、レーザ照射によって生成されるレーザスポットを示している。
【0045】
第1パターン212は、以下のようにして形成されている。なお、第2パターン214は、第1パターン212について以下で説明する方法と、Y軸対称に形成されている。
【0046】
まず、第1矢印A1によって示されるように、-X側から+X側に向けて、X方向に対して略平行に複数のレーザスポットを順に生成する。よって、X方向に対して略平行な第1線パターンL1が生成される。第1線パターンL1は、X方向に対して略平行に並ぶ複数のレーザスポットを含んでいる。
【0047】
次いで、第2矢印A2によって示されるように、-Y側から+Y側に向けて、Y方向に対して略平行に複数のレーザスポットを順に生成する。よって、Y方向に対して略平行な第2線パターンL2が生成される。第2線パターンL2は、Y方向に対して略平行に並ぶ複数のレーザスポットを含んでいる。第1線パターンL1の+X側の端部及び第2線パターンL2の-Y側の端部は、互いに略直交している。よって、第1パターン212は、第1線パターンL1の+X側の端部及び第2線パターンL2の-Y側の端部の交差による略直角な角部を有している。
【0048】
次いで、第3矢印A3によって示されるように、+X側から-X側に向けて、X方向に対して略平行に複数のレーザスポットを順に生成する。よって、X方向に対して略平行な第3線パターンL3が生成される。第3線パターンL3は、X方向に対して略平行に並ぶ複数のレーザスポットを含んでいる。第2線パターンL2の+Y側の端部及び第3線パターンL3の+X側の端部は、互いに略直交している。よって、第1パターン212は、第2線パターンL2の+Y側の端部及び第3線パターンL3の+X側の端部の交差による略直角な角部を有している。
【0049】
次いで、第4矢印A4によって示されるように、+Y側から-Y側に向けて、Y方向に対して略平行に複数のレーザスポットを順に生成する。よって、Y方向に対して略平行な第4線パターンL4が生成される。第4線パターンL4は、Y方向に対して略平行に並ぶ複数のレーザスポットを含んでいる。第3線パターンL3の-X側の端部及び第4線パターンL4の+Y側の端部は、互いに略直交している。よって、第1パターン212は、第3線パターンL3の-X側の端部及び第4線パターンL4の+Y側の端部の交差による略直角な角部を有している。
【0050】
次いで、第5矢印A5によって示されるように、+X側から-X側に向けて、X方向に対して略平行に複数のレーザスポットを順に生成する。よって、X方向に対して略平行な第5線パターンL5が生成される。第5線パターンL5は、X方向に対して略平行に並ぶ複数のレーザスポットを含んでいる。第4線パターンL4の-Y側の端部及び第5線パターンL5の+X側の端部は、互いに略直交している。よって、第1パターン212は、第4線パターンL4の-Y側の端部及び第5線パターンL5の+X側の端部の交差による略直角な角部を有している。
【0051】
次いで、第6矢印A6によって示されるように、-Y側から+Y側に向けて、Y方向に対して略平行に複数のレーザスポットを順に生成する。よって、Y方向に対して略平行な第6線パターンL6が生成される。第6線パターンL6は、Y方向に対して略平行に並ぶ複数のレーザスポットを含んでいる。第5線パターンL5の-X側の端部及び第6線パターンL6の-Y側の端部は、互いに略直交している。よって、第1パターン212は、第5線パターンL5の-X側の端部及び第6線パターンL6の-Y側の端部の交差による略直角な角部を有している。
【0052】
第1パターン212において、第3線パターンL3及び第5線パターンL5は、第1線パターンL1からY方向において略等しい距離に位置している。第1パターン212において、第2線パターンL2及び第6線パターンL6は、第4線パターンL4からX方向において略等しい距離に位置している。
【0053】
図8に示す例において、第1線パターンL1の-X側の端部は、第6線パターンL6の+Y側の端部より-X側に向けて突出している。よって、第1パターン212の形成の開始位置を識別しやすくすることができる。ただし、第1線パターンL1の-X側の端部は、第6線パターンL6の+Y側の端部より-X側に向けて突出していなくてもよい。
【0054】
図9は、第1パターン212におけるレーザ出力及びレーザスポットサイズの関係の一例を示すグラフである。
図10は、第1パターン212におけるレーザスポットサイズの測定方法を説明するための図である。
図11は、エッチングモードにおける被加工対象Wの断面図である。
図12は、溶融モードにおける被加工対象Wの断面図である。
図9~
図12に示す例において、被加工対象Wは、アルミニウム合金である。ただし、被加工対象Wは、アルミニウム合金に限定されず、例えば銅であってもよい。
【0055】
図9に示すグラフの横軸は、第1パターン212を形成するためのレーザ出力(単位:W)を示している。
図9に示すグラフの縦軸は、第1パターン212におけるレーザスポットサイズ(単位:μm)を示している。
【0056】
図9に示すグラフのM(X)のプロットは、M(X)=(X1+X2+X3+X4)/4を示している。
図10に示すように、X1は、第2線パターンL2におけるY方向の略中央部におけるX方向の幅を示している。X2は、第4線パターンL4における第1線パターンL1及び第3線パターンL3から略等しい距離に位置する部分におけるX方向の幅を示している。X3は、第4線パターンL4における第1線パターンL1及び第5線パターンL5から略等しい距離に位置する部分におけるX方向の幅を示している。X4は、第6線パターンL6におけるY方向の略中央部におけるX方向の幅を示している。
【0057】
図9に示すグラフのM(Y)のプロットは、M(Y)=(Y1+Y2+Y3+Y4)/4を示している。
図10に示すように、Y1は、第1線パターンL1における第4線パターンL4及び第6線パターンL6から略等しい距離に位置する部分におけるY方向の幅を示している。Y2は、第1線パターンL1における第4線パターンL4及び第2線パターンL2から略等しい距離に位置する部分におけるY方向の幅を示している。Y3は、第3線パターンL3におけるX方向の略中央部におけるY方向の幅を示している。Y4は、第5線パターンL5におけるX方向の略中央部におけるY方向の幅を示している。
【0058】
図9に示すように、レーザ出力240W~350W周辺において、M(X)及びM(Y)は、いずれも、約100μmである。レーザ出力240W~350W周辺においては、レーザ溶接装置50によるレーザ照射がエッチングモードとなっている。エッチングモードでは、
図11に示すように、レーザエッチングによって被加工対象Wの+Z側の面に凹部W1が形成されている。エッチングモードにおけるM(X)及びM(Y)が合焦時のレーザスポット直径の理論値であり又はそれに近似している場合、フォーカスレンズ508の焦点が被加工対象Wに合っているといえる。換言すると、実施形態では、特殊な装置を用いることなく、M(X)及びM(Y)からレーザスポット直径を測定することができる。よって、特殊な装置を用いる場合と比較して、レーザスポット直径を短時間で測定することができる。理論通りのレーザスポット系でない場合でも、上記約100μmを常にデフォルト値として一定に維持すれば同様の測地ができる。
【0059】
図9に示すように、レーザ出力400W以上において、M(X)及びM(Y)は、いずれも、約200μm以上である。レーザ出力400W以上においては、レーザ溶接装置50によるレーザ照射が溶融モードとなっている。溶融モードでは、
図12に示すように、レーザ溶融によって被加工対象Wの+Z側の面に膨張部W2が形成されている。膨張部W2は、溶融した被加工対象Wの体積膨張によって形成されている。
【0060】
図9に例示されるパターンの幅及びレーザ出力の関係は、被加工対象の種類に応じて異なる。これは、被加工対象の材料特性(例えば、レーザ吸収率、熱伝導率、膨張係数等)に応じて、被加工対象をレーザエッチングするためのレーザ出力の閾値が変動し得るためである。よって、
図9に例示されるレーザ出力及びレーザスポットサイズの関係は、被加工対象の種類に応じて予め複数用意していてもよい。
【0061】
次に、
図13~
図17を参照して、レーザ溶接装置50によるレーザ溶接の検査方法の第1例について説明する。
図13~
図17では、実際の第1パターン212の形状と、予め設計された第1パターンの形状と、の異同を検査することで、レーザ溶接を検査している。換言すると、溶接の都度リアルタイムで設備異常等の各種異常の有無や各種異常の予兆を判定することができるとともに、レーザ溶接の品質の安定性を監視することができる。なお、左側第2パターン214、右側第1パターン222及び右側第2パターン224を用いた場合においても、第1パターン212を用いた場合と同様にレーザ溶接を検査することができる。
【0062】
図13は、第1パターン212の形状の異常の第1例を示す図である。
【0063】
図13に示す例においては、第1線パターンL1の-X側の端部と、第1線パターンL1及び第4線パターンL4の交差部と、の間における第1線パターンL1のY方向の幅が、予め設計された幅より狭くなっている。第1パターン212のこの形状の異常から、例えば、レーザ発振器502及びガルバノミラー光学系510のマッチング及び追従機能の低下、レーザ発振器502の初期出力の低下、フォーカスレンズ508の異常等のレーザ溶接装置50の異常や、被加工対象Wのセットミスや治具異常による被加工対象Wの位置ずれ、被加工対象W側の組み立て精度ずれ等の被加工対象W側の異常が推定される。
【0064】
図14は、第1パターン212の形状の異常の第2例を示す図である。
【0065】
図14に示す例において、第1パターン212のすべての線パターンの幅が、予め設計された幅より狭くなっている。第1パターン212のこの形状の異常から、例えば、フォーカスレンズ508の異常、レーザ発振器502の出力低下、ガルバノミラー光学系510の異常等のレーザ溶接装置50の異常や、被加工対象Wのセットミスや治具異常による被加工対象Wの位置ずれ、被加工対象W側の組み立て精度ずれ等の被加工対象W側の異常が推定される。
【0066】
図15は、第1パターン212の形状の異常の第3例を示す図である。
【0067】
図15に示す例において、第1パターン212のすべての線パターンの幅が、予め設計された幅より広くなっている。第1パターン212のこの形状の異常から、ガルバノミラー光学系510の追従機能の低下、ガルバノミラー光学系510の動作不良、レーザ発振器502及びガルバノミラー光学系510の同期不良、レーザ発振器502の出力過剰又は低下等のレーザ溶接装置50の異常、特に、フォーカスレンズ508の動作異常によるレーザフォーカスの異常が推定される。
【0068】
図16は、第1パターン212の形状の異常の第4例を示す図である。
【0069】
図16に示す例において、第1線パターンL1の+X側の端部から第2線パターンL2及び第3線パターンL3を経由して第4線パターンL4の+Y側の端部までの形状が、予め設計された形状から変形している。具体的には、第1線パターンL1の+X側の端部から第2線パターンL2及び第3線パターンL3を経由して第4線パターンL4の+Y側の端部までの形状が略円パターンとなっている。また、第4線パターンL4の-Y側の端部から第5線パターンL5を経由して第6線パターンL6までの形状が、予め設計された形状から変形している。具体的には、第4線パターンL4の-Y側の端部から第5線パターンL5を経由して第6線パターンL6までの形状が、略楕円パターンとなっている。第1パターン212のこの形状の異常から、ガルバノミラー光学系510の追従機能の低下、ガルバノミラー光学系510の動作不良、レーザ発振器502及びガルバノミラー光学系510の同期不良、レーザ発振器502の出力低下、ステージ550の異常等のレーザ溶接装置50の異常が推定される。
【0070】
図17は、第1パターン212の形状の異常の第5例を示す図である。
【0071】
図17に示す例において、第1線パターンL1の+X側の端部から第2線パターンL2及び第3線パターンL3を経由して第4線パターンL4の+Y側の端部までの形状が、予め設計された形状から変形している。具体的には、第1線パターンL1の+X側の端部から第2線パターンL2及び第3線パターンL3を経由して第4線パターンL4の+Y側の端部までの形状が、略楕円パターンとなっている。また、第4線パターンL4の-Y側の端部及び第5線パターンL5の+X側の端部の間の角部と、第5線パターンL5の-X側の端部及び第6線パターンL6の-Y側の端部の間の角部と、が予め設計された形状から変形している。具体的には、これらの角部が丸みを帯びている。左側第1パターン212のこの形状の異常から、ガルバノミラー光学系510の縮小率の異常、ガルバノミラー光学系510の追従機能の低下、レーザ発振器502及びガルバノミラー光学系510の同期不良、各種光学系の異常等のレーザ溶接装置50の異常が推定される。
【0072】
図13~
図17を用いて説明した検査においては、第1パターン212の形状の異常から、レーザ溶接装置50の異常等の各種異常を検出することができ、当該各種異常の予兆を把握することができる。第1パターン212の形状の異常は、顕微鏡観察、自動画像検査等の比較的簡易な方法でよって検出可能である。このような方法によって第1パターン212の形状の異常を観察する場合、生産ラインを止めることなく、インラインでレーザ溶接の品質を検査することも可能である。よって、レーザ溶接の品質に影響を与える要因を比較的簡易に検査することができる。
【0073】
次に、
図18~
図19を参照して、レーザ溶接装置50によるレーザ溶接の検査方法の第2例について説明する。
図18~
図19では、実際のマーク210の形状と、予め設計されたマークの形状と、の異同を検査することで、レーザ溶接を検査している。
【0074】
図18は、マーク210の形状の異常の第1例を示す図である。
【0075】
図18に示す例において、第1パターン212及び第2パターン214の少なくとも一方は、予め設計された位置からY方向にずれている。マーク210のこの形状の異常から、ステージ550のY方向の異常、ガルバノミラー光学系510の機械系の異常、レーザビームBの照射位置の異常等のレーザ溶接装置50の異常や、被加工対象Wの固定治具の異常や被加工対象Wを備える構造物の組み込み異常等の被加工対象物W側の異常が推定される。
【0076】
図19は、マーク210の異常の第2例を示す図である。
【0077】
図19に示す例において、第1パターン212及び第2パターン214の少なくとも一方は、予め設計された位置からX方向及びY方向にずれている。マーク210のこの形状の異常から、ステージ550のX方向及びY方向の異常、ガルバノミラー光学系510の機械系の異常、レーザビームBの照射位置の異常等のレーザ溶接装置50の異常や、被加工対象Wの固定治具の異常や被加工対象Wを備える構造物の組み込み異常等の被加工対象物W側の異常が推定される。
【0078】
図18~
図19を用いて説明した検査においても、
図13~
図17を用いて説明した検査と同様にして、マーク210の形状の異常から、レーザ溶接装置50の異常等の各種異常を検出することができ、当該各種異常の予兆を把握することができる。よって、レーザ溶接の品質に影響を与える要因を比較的簡易に検査することができる。
【0079】
次に、
図7を参照して、レーザ溶接装置50によるレーザ溶接の検査方法の第3例について説明する。
【0080】
この例では、実際の左側マーク210及び右側マーク220の位置と、予め設計された左側マーク及び右側マークの位置と、の異同を検査することで、レーザ溶接を検査している。具体的には、レーザ溶接部200の形成時に発生する熱によって、正極タブ120の伸びや変位等の被加工対象の変形が生じることがある。被加工対象の変形が生じることで、左側マーク210のX方向内の位置と右側マーク220のX方向の内の位置との間のX方向の距離と、左側マーク210のY方向内の位置と右側マーク220のY方向内の位置との間のY方向の距離と、の少なくとも一方が変動し得る。例えば、左側第1パターン212に対する右側第1パターン222の位置の設計位置からのずれによって、レーザ溶接部200の形成時に発生する熱の影響による正極タブ120の変形を把握することができる。さらに、レーザ溶接部200の形成時に発生する熱の影響がなくなった後において、右側第1パターン222及び左側第2パターン214を形成するためのレーザを照射することで、正極タブ120の変形が戻ったり、左側第1パターン212の位置がずれたりすることがあっても、正極タブ120の変形の戻りや、左側第1パターン212の位置のずれ等の正極タブ120の各種変形を把握することができる。よって、左側マーク210及び右側マーク220の位置から、レーザ溶接による被加工対象の変形を推定することができる。したがって、レーザ溶接の品質に影響を与える要因を比較的簡易に検査することができる。
【0081】
加えて、実際のマーク210の形状と、予め設計されたマークの形状と、の異同を検査することで、レーザ溶接を検査してもよい。例えば、レーザ出力に異常が生じてレーザ出力が高くなった場合、マーク210がつぶれてマーク210を読み込むことができなくなる。よって、マーク210のこの異常から、レーザ出力の異常を推定することができる。したがって、レーザ溶接の品質に影響を与える要因を比較的簡易に検査することができる。
【0082】
図20は、変形例に係るレーザエッチングマーク210Aを示す図である。
【0083】
レーザエッチングマーク210Aは、外側レーザエッチングパターン212A(以下、単に、外側パターン212Aという。)及び内側レーザエッチングパターン214A(以下、単に、内側パターン214Aという。)を有している。外側パターン212Aは、略正方形枠パターンである。内側パターン214Aは、略正方形パターンである。内側パターン214Aは、外側パターン212Aによって囲まれている。一例において、外側パターン212Aが形成された後、内側パターン214Aが形成されている。この例では、外側パターン212Aによって囲まれた領域が存在する状態で内側パターン214Aを形成することができる。よって、内側パターン214Aが形成された後、外側パターン212Aが形成されている場合と比較して、外側パターン212AのXY平面方向の中心に内側パターン214Aを形成するための目視やカメラ等による検査を簡易にすることができる。ただし、内側パターン214Aが形成された後、外側パターン212Aが形成されていてもよい。或いは、内側パターン214A及び外側パターン212Aは、同時に形成されてもよい。
【0084】
レーザエッチングマーク210Aの設計では、外側パターン212AのXY平面方向の中心と、内側パターン214AのXY平面方向の中心と、がZ方向に互いに重なっている。よって、レーザ溶接装置50に異常が生じた場合、外側パターン212AのXY平面方向の中心と、内側パターン214AのXY平面方向の中心と、が互いにずれることがある。よって、レーザエッチングマーク210Aのこの異常から、レーザ溶接装置50の異常を推定することができる。したがって、レーザ溶接の品質に影響を与える要因を比較的簡易に検査することができる。
【0085】
レーザエッチングマークの形状は、上述した実施形態及び変形例において説明した形状に限定されない。
【0086】
例えば、レーザエッチングマークは、角部を有していればよい。この例においては、角部の丸みから、レーザ溶接装置50の異常を推定することができる。
【0087】
或いは、レーザエッチングマークは、少なくとも部分的に互いに重なる複数のレーザエッチングパターンを有していればよい。この例においては、当該複数のレーザエッチングパターンの位置のずれから、レーザ溶接装置50の異常を推定することができる。
【0088】
或いは、レーザエッチングマークは、中心が互いに重なる複数のレーザエッチングパターンを有していればよい。この例においては、当該複数のレーザエッチングパターンの中心のずれから、レーザ溶接装置50の異常を推定することができる。
【0089】
図21は、実施形態に係るレーザ溶接の検査方法の他の例を説明するための図である。
【0090】
図21に示す例では、正極タブ120及び負極タブ130の各々と、バスバー140と、がレーザ溶接部200によって互いに接合されている。
図21に示す例では、正極タブ120及びバスバー140を互いに接合するレーザ溶接部200がX方向に2つに分断されている。2つの分断されたレーザ溶接部200のX方向の両側には、左側マーク210及び右側マーク220が形成されている。同様に、負極タブ130及びバスバー140を互いに接合するレーザ溶接部200がX方向に2つに分断されている。2つの分断されたレーザ溶接部200のX方向の両側には、左側マーク210及び右側マーク220が形成されている。
【0091】
図21に示す例においても、上述した例と同様にして、左側マーク210及び右側マーク220を用いて、レーザ溶接の品質に影響を与える要因を簡易に検査することができる。また、正極タブ120又は負極タブ130に設けられた左側マーク210及び右側マーク220の検結果から、電池モジュール10又は電池モジュール10を含む製品の製造工程中の各種部品の組み立て位置精度を可視化することができ、電池モジュール10又は電池モジュール10を含む製品の品質保証としても活用することができる。
【0092】
図22は、実施形態に係るレーザ溶接の検査方法の他の例を説明するための図である。
【0093】
図22に示す筐体150は、例えば
図1に示した複数の電池セル100を収容している。筐体150は、トッププレート151、ボトムプレート152、フロントプレート153、リアプレート154、第1サイドプレート155及び第2サイドプレート156を有している。トッププレート151における第1サイドプレート155と重なる部分と、第1サイドプレート155の上端部と、はレーザ溶接部200によって互いに接合されている。レーザ溶接部200の両側には、左側第1パターン212及び右側第1パターン222が形成されている。トッププレート151における第2サイドプレート156と重なる部分と、第2サイドプレート156の上端部と、はレーザ溶接部200によって互いに接合されている。レーザ溶接部200の両側には、左側第1パターン212及び右側第1パターン222が形成されている。
【0094】
図22に示す例においても、上述した例と同様にして、左側第1パターン212及び右側第1パターン222を用いて、レーザ溶接の品質に影響を与える要因を簡易に検査することができる。
【0095】
以上、図面を参照して本発明の実施形態及び変形例について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0096】
10 電池モジュール、50 レーザ溶接装置、100 電池セル、110 外装材、120 正極タブ、130 負極タブ、140 バスバー、150 筐体、151 トッププレート、152 ボトムプレート、153 フロントプレート、154 リアプレート、155 第1サイドプレート、156 第2サイドプレート、200 レーザ溶接部、210 左側レーザエッチングマーク,左側マーク,マーク、210A レーザエッチングマーク、212 左側第1レーザエッチングパターン,左側第1パターン,第1パターン、212A 外側レーザエッチングパターン,外側パターン、214 左側第2レーザエッチングパターン,左側第2パターン,第2パターン、214A 内側レーザエッチングパターン,内側パターン、220 右側レーザエッチングマーク,右側マーク、222 右側第1レーザエッチングパターン,右側第1パターン、224 右側第2レーザエッチングパターン,右側第2パターン、502 レーザ発振器、504 光ファイバ、506 ビームエキスパンダ、508 フォーカスレンズ、510 ガルバノミラー光学系、512 集光レンズ、514 可動ミラー、516 カバーガラス、520 移動ユニット、550 ステージ、A1 第1矢印、A2 第2矢印、A3 第3矢印、A4 第4矢印、A5 第5矢印、A6 第6矢印、B レーザビーム、L1 第1線パターン、L2 第2線パターン、L3 第3線パターン、L4 第4線パターン、L5 第5線パターン、L6 第6線パターン、W 被加工対象