(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143488
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ガス液化システム
(51)【国際特許分類】
F25J 1/00 20060101AFI20241003BHJP
F25B 21/00 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F25J1/00 C
F25B21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056204
(22)【出願日】2023-03-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「グリーンイノベーション基金事業/大規模水素サプライチェーンの構築/革新的な液化、水素化、脱水素技術の開発/水素液化機向け大型高効率機器の開発」の委託研究成果について、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 大祐
(72)【発明者】
【氏名】岡本 城彦
【テーマコード(参考)】
4D047
【Fターム(参考)】
4D047AA01
4D047AA02
4D047AA03
4D047AB03
4D047AB07
4D047CA09
4D047CA11
4D047CA17
4D047DB01
(57)【要約】
【課題】原料ガスを液化するガス液化システムにおいて原料ガスの液化効率を改善する。
【解決手段】ガス液化システムは、原料ガスを冷媒との熱交換によって冷却することにより液化する複数段の熱交換器と、複数段の熱交換器で生じた液化ガスを断熱膨張により降圧及び降温する膨張装置と、膨張装置で降圧及び降温した液化ガスを更に降温する磁気冷凍機と、液化ガスを収容する液化ガスタンクと、磁気冷凍機と液化ガスタンクとを接続し磁気冷凍機から液化ガスタンクへ液化ガスを送る送液ラインと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料ガスを冷媒との熱交換によって冷却することにより液化する複数段の熱交換器と、
前記複数段の熱交換器で生じた液化ガスを断熱膨張により降圧及び降温する膨張装置と、
前記膨張装置で降圧及び降温した前記液化ガスを更に降温する磁気冷凍機と、
前記液化ガスを収容する液化ガスタンクと、
前記磁気冷凍機と前記液化ガスタンクとを接続し前記磁気冷凍機から前記液化ガスタンクへ前記液化ガスを送る送液ラインと、を備える、
ガス液化システム。
【請求項2】
前記磁気冷凍機は、液体状の熱媒体が充填された作業容器、前記作業容器内に配置された磁気作動物質、前記作業容器の外に配置されて前記磁気作動物質の励磁と消磁が可能な磁石、前記冷媒との熱交換により前記熱媒体を冷却する冷却器、及び、前記作業容器及び前記冷却器を通り前記熱媒体が循環する熱媒体循環流路、を有する、
請求項1に記載のガス液化システム。
【請求項3】
前記複数段の熱交換器のうち前記原料ガスが最後に通過する最終段熱交換器は、前記原料ガスと熱交換させる液体状の前記冷媒を蓄えた液体貯槽であり、前記冷却器は前記液体貯槽に貯えられた液体状の前記冷媒の一部と前記熱媒体とを熱交換させるように構成されている、
請求項2に記載のガス液化システム。
【請求項4】
前記熱媒体と前記液化ガスは同じ物質であり、
前記磁気冷凍機は、断熱励磁により前記磁気作動物質を発熱させ、前記作業容器へ液体状の前記熱媒体を供給するとともに前記磁気作動物質の発熱によって昇温した前記熱媒体を前記熱媒体循環流路へ排出し、断熱消磁により前記磁気作動物質を吸熱させ、前記作業容器へ前記液化ガスを供給するとともに前記磁気作動物質の吸熱によって降温した前記液化ガスを前記送液ラインへ排出するように構成されている、
請求項2又は3に記載のガス液化システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスを液化するガス液化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、天然ガスや水素等のガスを冷却により液化するガス液化システムが知られている。この種のガス液化システムが特許文献1に開示されている。
【0003】
特許文献1には、水素ガス等の原料ガスを液化する原料ガス液化装置が開示されている。この原料ガス液化装置は、原料ガス源から液化ガスタンクへ原料ガスを流れるフィードラインと、フィードラインに配置された複数段の熱交換器及びジュールトムソン弁とを備える。フィードラインには高圧の原料ガスが供給され、この原料ガスはフィードラインを通過する間に、複数段の熱交換器の各々で冷媒との熱交換によって段階的に原料ガスの逆転温度以下まで冷却されたのち、ジュールトムソン弁で断熱膨張することにより低温常圧の液体となって、液化ガスタンクへ送られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のようにガス液化システムによって生成された低温常圧の液化ガスが液化ガスタンクへ送液される過程で、外部からの入熱や圧損による減圧などに起因して、液化ガスの一部が気化してボイルオフガスが生じることがある。液化ガスタンクへの送液中にボイルオフガスが生じると、ガス液化システムの原料ガスの液化効率が低下する。
【0006】
本開示は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、原料ガスを液化するガス液化システムにおいて原料ガスの液化効率を改善することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係るガス液化システムは、
原料ガスを冷媒との熱交換によって冷却することにより液化する複数段の熱交換器と、
前記複数段の熱交換器で生じた液化ガスを断熱膨張により降圧及び降温する膨張装置と、
前記膨張装置で降圧及び降温した前記液化ガスを更に降温する磁気冷凍機と、
前記液化ガスを収容する液化ガスタンクと、
前記磁気冷凍機と前記液化ガスタンクとを接続し前記磁気冷凍機から前記液化ガスタンクへ前記液化ガスを送る送液ラインと、を備えるものである。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、原料ガスを液化するガス液化システムにおいて原料ガスの液化効率を改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態に係るガス液化システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る磁気冷凍機の概略構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図1は、本開示の一実施形態に係るガス液化システム100の概略構成を示すブロック図である。本実施形態に係るガス液化システム100は、原料ガスを冷却することにより、低温常圧の液化ガスを生成するものである。原料ガスは、常温常圧で気体であり、且つ、常圧の沸点が窒素ガスの沸点(-196℃)よりも低い物質である。このような原料ガスとして水素ガス、ヘリウムガス、ネオンガスなどが例示される。
【0011】
《ガス液化システム100の概略構成》
図1に示すガス液化システム100は、原料ガスが流れるフィードライン1を備える。フィードライン1は、複数段の熱交換器7A,7B,7C,7Dと、膨張装置14と、磁気冷凍機2と、これらの要素を接続する配管等により構成されている。膨張装置14は、液化ガスを断熱膨張させる膨張タービン、又は、液化ガスをジュールトムソン膨張させるジュールトムソン弁である。磁気冷凍機2は送液ライン93によって液化ガスタンク94と接続されている。
【0012】
複数段の熱交換器7A,7B,7C,7Dは、初段熱交換器7A、第1中間段熱交換器7B、第2中間段熱交換器7C、及び最終段熱交換器7Dを含む。
図1には4段の熱交換器7A,7B,7C,7Dが示されているが、ガス液化システム100が備える熱交換器の数は4段に限定されない。また、複数段の熱交換器7A,7B,7C,7Dは、原料ガスを段階的に冷却することにより原料ガスを液化できればよく、本実施形態の構成に限定されない。
【0013】
初段熱交換器7Aにおいて、原料ガスは気体状の冷媒及び予冷用の窒素ガスと熱交換する。また、第2中間段熱交換器7Cにおいて、原料ガスは気体状の冷媒と熱交換する。本実施形態では冷媒として水素が用いられている。但し、冷媒は、水素に限定されず、常温常圧で気体であり且つ沸点が原料ガスと同じ又はそれ以下の物質であればよい。このような冷媒として、水素、ヘリウム、ネオンなどが例示される。
【0014】
第1中間段熱交換器7Bは、液体窒素を貯える液体窒素貯槽となっており、液体窒素貯槽に液体窒素が供給される。第1中間段熱交換器7Bにおいて、原料ガスは冷媒及び液体窒素と熱交換して、液体窒素と同等の温度まで冷却される。第1中間段熱交換器7Bで熱交換により温められた液体窒素は気化し、窒素ガスは初段熱交換器7Aへ送られて熱交換に利用される。
【0015】
最終段熱交換器7Dは、液体状の冷媒を貯える液化冷媒貯槽となっており、液化冷媒貯槽に液体状の冷媒が供給される。最終段熱交換器7Dにおいて、原料ガスは液体状の冷媒と熱交換して、液体状の冷媒と同等の温度まで冷却される。最終段熱交換器7Dで熱交換を終えた原料ガスの大部分は液化されている。最終段熱交換器7Dで熱交換により温められた冷媒は気化し、気化した冷媒は第2中間段熱交換器7Cへ送られて熱交換に利用される。
【0016】
複数段の熱交換器7A,7B,7C,7Dで利用される媒体は循環利用される。ガス液化システム100は、冷媒が循環する冷媒循環ライン8を備える。冷媒循環ライン8は、複数段の熱交換器7A,7B,7C,7D、膨張タービン81、及び圧縮機82を通る。冷媒循環ライン8は、圧縮機82から最終段熱交換器7Dまでの往路85と、最終段熱交換器7Dから圧縮機82までの復路86とを有する。
【0017】
冷媒循環ライン8の往路85では、圧縮機82から送り出された冷媒は初段熱交換器7A、第1中間段熱交換器7B、及び、膨張タービン81を順に通って最終段熱交換器7Dへ至る。第1中間段熱交換器7Bを出た冷媒は、膨張タービン81で膨張により液化して、最終段熱交換器7Dへ流入する。膨張タービン81に代えて、冷媒をジュールトムソン膨張により液化するジュールトムソン弁が用いられてもよい。
【0018】
冷媒循環ライン8の復路86では、最終段熱交換器7Dから出た気体状の冷媒が第2中間段熱交換器7C及び初段熱交換器7Aを順に通って圧縮機82へ流入する。
【0019】
《ガス液化システム100による液化方法》
続いて、上記構成のガス液化システム100による原料ガスの液化方法を説明する。フィードライン1には、原料ガス源から第1圧力且つ第1温度の原料ガスが供給される。第1圧力は、大気圧より高く、限定されないが5乃至10MPaと例示される。第1温度は、常温又は常温近傍の温度である。
【0020】
フィードライン1へ供給された原料ガスは、初段熱交換器7A、第1中間段熱交換器7B、第2中間段熱交換器7C、及び、最終段熱交換器7Dをこの順番で通過することにより段階的に冷却され、第1圧力且つ第2温度の液体(即ち、液化ガス)となって膨張装置14へ流入する。ここで、膨張装置14へ流入する液化ガスは、厳密に液体に限定されず、液体に気泡が混入した気液混相流であってもよい。第2温度は、第1温度よりも低く、最終段熱交換器7Dの液体状の冷媒と同等の温度である。
【0021】
膨張装置14に流入した第1圧力且つ第2温度の液化ガスは、断熱膨張によって降圧及び降温し、第2圧力且つ第3温度の液化ガスとなって膨張装置14から流出する。第2圧力は、第1圧力より低く、大気圧より高く、特に限定されないが1.3乃至2MPaと例示される。第2圧力は、液化ガスタンク94の耐圧仕様に対応した圧力であって、常圧よりも若干高い程度が好ましい。第3温度は第2温度よりも低い。
【0022】
膨張装置14から出た第2圧力且つ第3温度の液化ガスは磁気冷凍機2へ流入し、磁気冷凍機2で更に降温して、第2圧力且つ第4温度の液化ガスとなる。第4温度は、第3温度よりも低く、第2圧力の液化ガスの融点より高く沸点より低い。但し、第4温度は第2圧力の液化ガスの融点より低く、磁気冷凍機2によって液化ガスは過冷却状態まで冷却されてもよい。なお、
図1には1段の磁気冷凍機2が示されているが、フィードライン1には直列的に配置された複数段の磁気冷凍機2が設けられていてもよい。この場合、液化ガスは各段の磁気冷凍機2で段階的に降温する。磁気冷凍機2で降温した液化ガスは、送液ライン93を通じて液化ガスタンク94へ送液される。
【0023】
《磁気冷凍機2の構成》
ここで、磁気冷凍機2の構成について詳細に説明する。磁気冷凍機2は、フィードライン1において膨張装置14の下流に配置されている。磁気冷凍機2は、膨張装置14から送られた液化ガスを更に冷却して、送液ライン93へ排出する。送液ライン93へ流出した液化ガスは、送液ライン93を通じて液化ガスタンク94へ送られ、液化ガスタンク94に貯えられる。このように、液化ガスが磁気冷凍機2で沸点よりも低い温度まで冷却された状態で送液ライン93へ流入することによって、送液ライン93で送液途中の液化ガスの気化を抑制できる。これにより、原料ガスの液化効率が高まる。
【0024】
図2は、本開示の一実施形態に係る磁気冷凍機2の概略構成を示すブロック図である。
図2に示す磁気冷凍機2は、作業容器21と、作業容器21の中に配置された磁気作動物質22と、作業容器21の外に配置された磁石23と、冷媒が循環する熱媒体循環流路50とを備える。この磁気冷凍機2では、磁気冷凍機2から排出される温熱を輸送する冷媒は、フィードライン1から流入する液化ガスと同じ物質である。
【0025】
作業容器21は、プロセス流体且つ熱媒体である液化ガスが充填された冷凍作業室20を有する。作業容器21は、第1端21aと、第1端21aから離れて配置された第2端21bとを有する。作業容器21の第1端21aには、液化ガスの流入口である入口24及び戻り口27が配置されている。作業容器21の第2端21bには、液化ガスの流出口である寒冷出口25及び温熱出口26が配置されている。冷凍作業室20において液化ガスは第1端21aから第2端21bへ向けて流れる。
【0026】
磁気作動物質22は磁気冷凍材料と称される磁性体からなる。磁気作動物質22は、作業容器21内において第1端21aと第2端21bの間に配置されている。即ち、磁気作動物質22は作業容器21内における液化ガスの流れの中に配置されている。磁気作動物質22には、液化ガスの流路が設けられている。磁気作動物質22の態様は特に限定されないが、例えば、磁気作動物質22は容器に収容された多数の粒子からなり、粒子同士の間に液化ガスが通過できる流路が形成されたものである。
【0027】
磁石23は、磁気作動物質22に励磁及び消磁が切り替え可能な磁界を形成するものである。例えば、磁石23は永久磁石であって、磁石23が磁気作動物質22に対し相対的に移動することによって励磁と消磁とを切り替え可能である。また、例えば、磁石23は電磁石であって、電磁石への電流の供給の有無によって励磁及び消磁を切り替え可能である。
【0028】
作業容器21の入口24には、フィードライン1が接続されている。フィードライン1から入口24を通じて作業容器21の冷凍作業室20へ、液化ガスが流入する。但し、冷凍作業室20へ供給される液化ガスは、厳密に液体状に限定されず、液体中に僅かに気泡が存在する気液混相状態であってもよい。フィードライン1の膨張装置14の下流且つ磁気冷凍機2の上流にはフィード弁32が配置されている。フィード弁32は開閉弁又は流量調整弁であって、フィード弁32はフィードライン1と作業容器21との連通と遮断とを切り替える。フィード弁32の開放時にはフィードライン1から磁気冷凍機2へ液化ガスが供給され、フィード弁32の閉止時にはフィードライン1から磁気冷凍機2への液化ガスの供給が阻止される。
【0029】
作業容器21の寒冷出口25は送液ライン93と接続されている。定常運転時において、作業容器21へ流入した液化ガスよりも低温の液化ガス、即ち、作業容器21で冷却された液化ガスが送液ライン93へ排出される。送液ライン93には、寒冷排出弁41が配置されている。寒冷排出弁41は開閉弁又は流量調整弁であって、寒冷排出弁41は作業容器21と送液ライン93との連通と遮断とを切り替える。寒冷排出弁41の開放時には作業容器21から送液ライン93へ液化ガスが排出され、寒冷排出弁41の閉止時には作業容器21から送液ライン93への液化ガスの排出が阻止される。
【0030】
作業容器21の温熱出口26は温熱排出ライン5と接続されている。温熱排出ライン5は配管等で構成される。定常運転時において、作業容器21へ流入した液化ガスよりも高温の液化ガス、即ち、作業容器21で昇温された液化ガスが温熱排出ライン5へ排出される。温熱排出ライン5には、温熱排出弁52が配置されている。温熱排出弁52は開閉弁又は流量調整弁であって、温熱排出弁52は作業容器21と温熱排出ライン5との連通と遮断とを切り替える。温熱排出弁52の開放時には作業容器21から温熱排出ライン5へ液化ガスが排出され、温熱排出弁52の閉止時には作業容器21から温熱排出ライン5への液化ガスの排出が阻止される。
【0031】
温熱排出ライン5の温熱排出弁52より下流には冷却器51が配置されている。冷却器51は、温熱排出ライン5を流れる液化ガスを冷却する。冷却器51は、冷媒循環ライン8を流れる冷媒と温熱排出ライン5を流れる液化ガスとを熱交換させるように構成されている。例えば、冷却器51は、最終段熱交換器7Dである液化冷媒貯槽に貯えられた液体状の冷媒と温熱排出ライン5を流れる液化ガスとが熱交換するように構成される。但し、冷却器51の構成は限定されず、複数段の熱交換器7A,7B,7C,7Dのうち少なくとも1つで原料ガスと熱交換に利用された冷媒と、温熱排出ライン5を流れる液化ガスとを熱交換させるように構成されていればよい。
【0032】
冷却器51で冷却された液化ガスは、バッファタンク54へ送られ、バッファタンク54で貯溜される。バッファタンク54と作業容器21の戻り口27とは戻しライン6で接続されている。バッファタンク54に貯溜されている液化ガスは、戻しライン6を通じて作業容器21内の冷凍作業室20へ戻される。作業容器21、温熱排出ライン5、及び戻しライン6によって、液化ガスが循環する熱媒体循環流路50が構成されている。熱媒体循環流路50を循環する液化ガスは、磁気冷凍機2で生じた温熱を外部へ輸送する熱媒体として機能する。
【0033】
戻しライン6には、ポンプ55が配置されている。ポンプ55はバッファタンク54に貯えられた液化ガスを昇圧して作業容器21へ送り出す。戻しライン6のポンプ55より下流には戻し弁53が配置されている。戻し弁53は開閉弁又は流量調整弁であって、戻し弁53は戻しライン6と作業容器21との連通と遮断とを切り替える。戻し弁53の開放時に戻しライン6から磁気冷凍機2へ液化ガスが供給され、戻し弁53の閉止時には戻しライン6から磁気冷凍機2への液化ガスの供給が阻止される。
【0034】
《磁気冷凍機2の運転方法》
上記構成の磁気冷凍機2では、初めに磁気作動物質22の初期冷却を行って、磁気作動物質22に寒冷を蓄える。磁気冷凍機2の初期冷却では、(a)断熱励磁行程、(b)排熱励磁行程、(c)断熱消磁行程、及び(d’)初期吸熱消磁行程からなる磁気冷凍サイクルを1回以上繰り返すことにより、所定の初期温度となるまで寒冷を蓄える。初期温度は、液化ガスの目標冷却温度(即ち、前述の第4温度)よりも低い任意の温度である。
【0035】
(a)断熱励磁行程
冷凍作業室20には予め液化ガスが充填されている。フィード弁32、寒冷排出弁41、温熱排出弁52、及び戻し弁53が閉止された状態で、磁石23によって磁気作動物質22に外部から磁場が印加される。このようにして断熱状態で励磁された磁気作動物質22は発熱する。
【0036】
(b)排熱励磁行程
断熱励磁行程から継続的に磁気作動物質22が励磁され、フィード弁32及び寒冷排出弁41が閉止され、温熱排出弁52及び戻し弁53が開放された状態で、ポンプ55が稼働される。ポンプ55の稼働により、バッファタンク54に貯えられた液化ガスが戻しライン6を通じて作業容器21へ供給される。作業容器21において磁気作動物質22と液化ガスは熱交換し、磁気作動物質22は液化ガスへ熱を放出する。昇温した液化ガスは、温熱出口26から温熱排出ライン5へ排出される。
【0037】
(c)断熱消磁行程
フィード弁32、寒冷排出弁41、温熱排出弁52、及び戻し弁53が閉止された状態で、磁石23によって磁気作動物質22に印加されていた磁場の強さを減少させる。このようにして断熱状態で消磁された磁石23は周囲から熱を吸収する。
【0038】
(d’)初期吸熱消磁行程
断熱消磁行程から継続的に磁気作動物質22が消磁され、フィード弁32及び寒冷排出弁41が閉止され、温熱排出弁52及び戻し弁53が開放された状態で、ポンプ55が稼働される。ポンプ55の稼働により、バッファタンク54に貯えられた液化ガスが戻しライン6を通じて作業容器21へ供給される。作業容器21において磁気作動物質22と液化ガスは熱交換し、磁気作動物質22は液化ガスの熱を吸収する。磁気作動物質22の吸熱によって降温した液化ガスは温熱出口26から温熱排出ライン5へ排出される。
【0039】
磁気冷凍機2の初期冷却が終わると定常運転が開始される。定常運転中の磁気冷凍機2は、(a)断熱励磁行程、(b)排熱励磁行程、(c)断熱消磁行程、及び(d)吸熱消磁行程からなる磁気冷凍サイクルによって、フィードライン1から供給された液化ガスを過冷却して送液ライン93へ排出する。定常運転中の磁気冷凍サイクルは、初期冷却の磁気冷凍サイクルと比較して(d)吸熱消磁行程のみが異なる。そこで、(d)吸熱消磁行程を詳細に説明して、余の行程の詳細な説明を省略する。
【0040】
(d)吸熱消磁行程
断熱消磁行程から継続的に磁気作動物質22が消磁された状態で、温熱排出弁52及び戻し弁53が閉止され、フィード弁32及び寒冷排出弁41が開放される。フィードライン1を通じて作業容器21へ液化ガスが供給される。作業容器21において磁気作動物質22と液化ガスは熱交換し、磁気作動物質22は液化ガスの熱を吸収する。磁気作動物質22の吸熱によって降温した液化ガスは、寒冷出口25から送液ライン93へ排出される。
【0041】
〔総括〕
本開示の第1の項目に係るガス液化システム100は、
原料ガスを冷媒との熱交換によって冷却することにより液化する複数段の熱交換器7A,7B,7C,7Dと、
複数段の熱交換器7A,7B,7C,7Dで生じた液化ガスを断熱膨張により降圧及び降温する膨張装置14と、
膨張装置14で降圧及び降温した液化ガスを更に降温する磁気冷凍機2と、
液化ガスを収容する液化ガスタンク94と、
磁気冷凍機2と液化ガスタンク94とを接続し磁気冷凍機2から液化ガスタンク94へ液化ガスを送る送液ライン93と、を備えるものである。
【0042】
上記構成のガス液化システム100では、膨張装置14で降圧及び降温した液化ガスは、磁気冷凍機2で更に降温することによって、液化ガスはその沸点よりも低い温度となる。送液ライン93で送液中の液化ガスは、外部からの入熱を受けたり、圧損により減圧したりするが、気化が抑制される。送液中の液化ガスの気化が抑制される結果、ガス液化システム100へ供給された原料ガスの質量に対する、原料ガスから生成されて液化ガスタンク94に収まる液化ガスの質量の割合、即ち、原料ガスの液化効率が高まる。
【0043】
本開示の第2の項目に係るガス液化システム100は、第1の項目に係るガス液化システム100において、
磁気冷凍機2は、液体状の熱媒体が充填された作業容器21、作業容器21内に配置された磁気作動物質22、作業容器21の外に配置されて磁気作動物質22の励磁と消磁が可能な磁石23、冷媒との熱交換により熱媒体を冷却する冷却器51、作業容器21及び冷却器51を通り熱媒体が循環する熱媒体循環流路50と、を有するものである。
【0044】
上記構成のガス液化システム100では、熱交換器7A,7B,7C,7Dで原料ガスを冷却する冷媒を用いて磁気冷凍機2の熱媒体が冷却される。このように、系内の寒冷を効率的に利用される。
【0045】
本開示の第3の項目に係るガス液化システム100は、第2の項目に係るガス液化システム100において、
複数段の熱交換器7A,7B,7C,7Dのうち原料ガスが最後に通過する最終段熱交換器7Dは、原料ガスと熱交換させる液体状の冷媒を蓄えた液体貯槽であり、冷却器51は液体貯槽に貯えられた液体状の冷媒の一部と熱媒体とを熱交換させるように構成されているものである。
【0046】
上記構成の磁気冷凍機2では、熱媒体を液体状の冷媒と熱交換させるので、効果的に熱媒体を冷却できる。
【0047】
本開示の第4の項目に係るガス液化システム100は、第2又は3の項目に係るガス液化システム100において、
熱媒体と液化ガスは同じ物質であり、
磁気冷凍機2は、断熱励磁により磁気作動物質22を発熱させ、作業容器21へ液体状の熱媒体を供給するとともに磁気作動物質22の発熱によって昇温した熱媒体を熱媒体循環流路へ排出し、断熱消磁により磁気作動物質22を吸熱させ、作業容器21へ液化ガスを供給するとともに磁気作動物質22の吸熱によって降温した液化ガスを送液ライン93へ排出するように構成されているものである。
【0048】
上記構成のガス液化システム100では、磁気冷凍機2において磁気作動物質22と液化ガスとが直接的に熱交換することにより、液化ガスが冷却される。よって、液化ガスが磁気作動物質22と間接的に熱交換する場合と比較して、液化ガスを効率的に冷却できる。
【0049】
以上の本開示の議論は、例示及び説明の目的で提示されたものであり、本開示を本明細書に開示される形態に限定することを意図するものではない。例えば、前述の詳細な説明では、本開示の様々な特徴は、本開示を合理化する目的で1つの実施形態に纏められているが、複数の特徴のうち幾つかが組み合わされてもよい。また、本開示に含まれる複数の特徴は、上記で論じたもの以外の代替の実施形態、構成、又は態様に組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0050】
2 :磁気冷凍機
7A,7B,7C,7D:熱交換器
14 :膨張装置
21 :作業容器
22 :磁気作動物質
23 :磁石
50 :熱媒体循環流路
51 :冷却器
93 :送液ライン
94 :液化ガスタンク
100 :ガス液化システム