(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143489
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】磁気冷凍システム及び設備
(51)【国際特許分類】
F25B 21/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F25B21/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056205
(22)【出願日】2023-03-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)2021年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「グリーンイノベーション基金事業/大規模水素サプライチェーンの構築/革新的な液化、水素化、脱水素技術の開発/水素液化機向け大型高効率機器の開発」の委託研究成果について、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000000974
【氏名又は名称】川崎重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】仮屋 大祐
(72)【発明者】
【氏名】岡本 城彦
(57)【要約】
【課題】冷却対象の冷却効率を高め、且つ、磁気冷凍機を小型化する。
【解決手段】磁気冷凍システムは、液体状のプロセス流体が充填された作業容器、作業容器内に配置された磁気作動物質、及び、作業容器の外に配置されて磁気作動物質の励磁と消磁が可能な磁石を有する磁気冷凍機と、作業容器へ液体状のプロセス流体を供給するフィードラインと、作業容器から排出されたプロセス流体が流れる寒冷排出ラインと、作業容器から排出されたプロセス流体が流れる温熱排出ラインとを備える。断熱励磁により磁気作動物質を発熱させ、フィードラインから作業容器へプロセス流体を供給し、磁気作動物質の発熱によって昇温したプロセス流体を温熱排出ラインへ排出し、断熱消磁により磁気作動物質を吸熱させ、フィードラインから作業容器へプロセス流体を供給し、磁気作動物質の吸熱によって降温したプロセス流体を寒冷排出ラインへ排出する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体状のプロセス流体が充填された作業容器、前記作業容器内に配置された磁気作動物質、及び、前記作業容器の外に配置されて前記磁気作動物質の励磁と消磁が可能な磁石を有する磁気冷凍機と、
前記磁気冷凍機の前記作業容器と接続されて前記作業容器へ液体状の前記プロセス流体を供給する少なくとも1本のフィードラインと、
前記磁気冷凍機の前記作業容器と接続されて前記作業容器から排出された前記プロセス流体が流れる寒冷排出ラインと、
前記磁気冷凍機の前記作業容器と接続されて前記作業容器から排出された前記プロセス流体が流れる温熱排出ラインと、を備え、
断熱励磁により前記磁気作動物質を発熱させ、前記フィードラインから前記作業容器へ前記プロセス流体を供給するとともに前記磁気作動物質の発熱によって昇温した前記プロセス流体を前記温熱排出ラインへ排出し、断熱消磁により前記磁気作動物質を吸熱させ、前記フィードラインから前記作業容器へ前記プロセス流体を供給するとともに前記磁気作動物質の吸熱によって降温した前記プロセス流体を前記寒冷排出ラインへ排出するように構成されている、
磁気冷凍システム。
【請求項2】
前記温熱排出ラインは、前記プロセス流体を冷却する冷却器と、前記冷却器で冷却された前記プロセス流体を貯溜するバッファタンクとを有し、
前記少なくとも1本のフィードラインは、前記バッファタンクに貯溜された前記プロセス流体を供給する前記フィードラインを含む、
請求項1に記載の磁気冷凍システム。
【請求項3】
前記磁気冷凍機の前記作業容器は、前記磁気作動物質と前記プロセス流体とが直接的に接触して熱交換するように構成されている、
請求項1又は2に記載の磁気冷凍システム。
【請求項4】
ガスを冷却により液化することにより液化ガスを生成する液化装置と、
前記液化ガスを収容するタンクと、
前記液化装置と接続された前記フィードライン、前記タンクに接続された前記寒冷排出ライン、及び、前記液化装置で生成された前記液化ガスを前記プロセス流体として前記液化ガスを冷却する前記磁気冷凍機を有する請求項1に記載の磁気冷凍システムと、を備える、
設備。
【請求項5】
液体を収容するタンクと、
前記タンクと接続された前記フィードライン、前記タンクと接続された前記寒冷排出ライン、及び、前記タンクから前記フィードラインへ流入した前記液体を前記プロセス流体として冷却する前記磁気冷凍機を有する請求項1に記載の磁気冷凍システムと、を備える、
設備。
【請求項6】
液体を収容するタンクと、
前記タンクと接続され、前記液体を貯蔵する貯蔵容器又は前記液体を消費する消費機器へ供給する液体供給ラインと、
前記液体供給ラインに配置されて前記液体を昇圧する昇圧器と、
前記液体供給ラインの前記昇圧器より下流に接続された戻しラインと、
前記戻しラインと接続された前記フィードライン、前記タンクと接続された前記寒冷排出ライン、及び、前記戻しラインから前記フィードラインへ流入した前記液体を前記プロセス流体として冷却する前記磁気冷凍機とを有する請求項1に記載の磁気冷凍システムと、を備える、
設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、磁気冷凍機を備える磁気冷凍システム、及び、磁気冷凍システムを備える設備に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、励磁と消磁を繰り返すことで磁性体の温度が可逆的に変化する磁気熱量効果を利用して対象物の冷却を行う磁気冷凍機が知られている。磁気冷凍機は、低温の気体を冷却して液化するために用いられる。特許文献1は、この種の磁気冷凍機を備えるボイルオフガスの再液化システムを開示する。
【0003】
特許文献1に開示されたボイルオフガスの再液化システムは、励磁及び消磁が可能な磁界形成部、磁気作業物質の昇温によって蓄熱される温端部、及び磁気作業物質の降温によって蓄冷される冷却部を含み、低温液化ガスの貯留タンク内に発生したボイルオフガスを冷却部で液化する磁気冷凍機と、磁気冷凍機の温端部に冷媒を循環させて温端部の蓄熱を吸収する冷凍機とを、備える。磁気冷凍機において、磁気作業物質と温端部及び冷却部との熱の移動は熱スイッチで制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1の磁気冷凍機において、温端部は磁気作業物質の発した熱を回収した熱媒体によって蓄熱されており、冷却部では磁気作業物質の吸熱によって冷却された熱媒体によって蓄冷されている。蓄冷された冷却部とボイルオフガスとが熱交換することによって、ボイルオフガスが冷却されて液化する。この磁気冷凍機では、冷却の対象がガスであることから、冷却効率の向上の観点から改善の余地が残されている。
【0006】
本開示は以上の事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、磁気冷凍機を備える磁気冷凍システムにおいて、冷却対象の冷却効率を高め、且つ、磁気冷凍機の小型化を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の一態様に係る磁気冷凍システムは、
液体状のプロセス流体が充填された作業容器、前記作業容器内に配置された磁気作動物質、及び、前記作業容器の外に配置されて前記磁気作動物質の励磁と消磁が可能な磁石を有する磁気冷凍機と、
前記磁気冷凍機の前記作業容器と接続されて前記作業容器へ液体状の前記プロセス流体を供給する少なくとも1本のフィードラインと、
前記磁気冷凍機の前記作業容器と接続されて前記作業容器から排出された前記プロセス流体が流れる寒冷排出ラインと、
前記磁気冷凍機の前記作業容器と接続されて前記作業容器から排出された前記プロセス流体が流れる温熱排出ラインと、を備え、
断熱励磁により前記磁気作動物質を発熱させ、前記フィードラインから前記作業容器へ前記プロセス流体を供給するとともに前記磁気作動物質の発熱によって昇温した前記プロセス流体を前記温熱排出ラインへ排出し、断熱消磁により前記磁気作動物質を吸熱させ、前記フィードラインから前記作業容器へ前記プロセス流体を供給するとともに前記磁気作動物質の吸熱によって降温した前記プロセス流体を前記寒冷排出ラインへ排出するように構成されているものである。
【0008】
また、本開示に係る設備は、上記の磁気冷凍システムを備えるものである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、磁気冷凍機を備える磁気冷凍システムにおいて、冷却対象の冷却効率を高め、且つ、磁気冷凍機の小型化を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本開示に係る磁気冷凍システムの概略構成を示す図である。
【
図2】
図2は、磁気冷凍システムが適用された液化設備の概略構成図である。
【
図3】
図3は、磁気冷凍システムが適用された低温液体貯蔵設備の概略構成図である。
【
図4】
図4は、磁気冷凍システムが適用された液体供給設備の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して本開示の実施の形態を説明する。
図1は本開示に係る磁気冷凍システム10の概略構成を示す図である。
【0012】
《磁気冷凍システム10の構成》
図1に示す磁気冷凍システム10は、磁気冷凍機2と、磁気冷凍機2へ冷却の対象であるプロセス流体を供給する第1フィードライン3と、磁気冷凍機2からプロセス流体を排出する寒冷排出ライン4と、磁気冷凍機2から排熱する温熱排出ライン5と、磁気冷凍機2から排出されたプロセス流体を磁気冷凍機2へ供給する第2フィードライン6とを備える。
【0013】
<磁気冷凍機2>
磁気冷凍機2は、作業容器21と、作業容器21の中に配置された磁気作動物質22と、作業容器21の外に配置された磁石23とを備える。
【0014】
作業容器21は、内部にプロセス流体が充填された冷凍作業室20を有する。作業容器21は、第1端21aと、第1端21aから離れて配置された第2端21bとを有する。作業容器21の第1端21aには、プロセス流体の流入口である入口24及び戻り口27が配置されている。作業容器21の第2端21bには、プロセス流体の流出口である寒冷出口25及び温熱出口26が配置されている。冷凍作業室20においてプロセス流体は第1端21aから第2端21bへ向けて流れる。
【0015】
磁気作動物質22は磁気冷凍材料と称される磁性体からなる。磁気作動物質22は、作業容器21内において第1端21aと第2端21bの間に配置されている。即ち、磁気作動物質22は作業容器21内におけるプロセス流体の流れの中に配置されている。磁気作動物質22には、プロセス流体の流路が設けられている。磁気作動物質22の態様は特に限定されないが、例えば、磁気作動物質22は容器に収容された多数の粒子からなり、粒子同士の間にプロセス流体が通過できる流路が形成されたものである。
【0016】
磁石23は、磁気作動物質22に励磁及び消磁が切り替え可能な磁界を形成するものである。例えば、磁石23は永久磁石であって、磁石23が磁気作動物質22に対し相対的に移動することによって励磁と消磁とを切り替え可能である。また、例えば、磁石23は電磁石であって、電磁石への電流の供給の有無によって励磁及び消磁を切り替え可能である。
【0017】
<第1フィードライン3>
第1フィードライン3は、磁気冷凍機2の作業容器21の入口24と接続されている。第1フィードライン3は、配管等で構成される。第1フィードライン3を流れるプロセス流体は、液体状である。但し、第1フィードライン3を流れるプロセス流体は、厳密に液体状に限定されず、液体中に僅かに気泡が存在する気液二相状態であってもよい。第1フィードライン3にはフィード弁32が配置されている。フィード弁32は開閉弁又は流量調整弁であって、フィード弁32は第1フィードライン3と作業容器21との連通と遮断とを切り替える。フィード弁32の開放時には第1フィードライン3から磁気冷凍機2へプロセス流体が供給され、フィード弁32の閉止時には第1フィードライン3から磁気冷凍機2へのプロセス流体の供給が阻止される。
【0018】
<寒冷排出ライン4>
寒冷排出ライン4は、磁気冷凍機2の作業容器21の寒冷出口25と接続されている。寒冷排出ライン4は配管等で構成される。定常運転時において、作業容器21へ流入したプロセス流体よりも低温のプロセス流体、即ち、作業容器21で冷却されたプロセス流体が寒冷排出ライン4へ排出される。寒冷排出ライン4には、寒冷排出弁41が配置されている。寒冷排出弁41は開閉弁又は流量調整弁であって、寒冷排出弁41は作業容器21と寒冷排出ライン4との連通と遮断とを切り替える。寒冷排出弁41の開放時には作業容器21から寒冷排出ライン4へプロセス流体が排出され、寒冷排出弁41の閉止時には作業容器21から寒冷排出ライン4へのプロセス流体の排出が阻止される。
【0019】
<温熱排出ライン5>
温熱排出ライン5は、磁気冷凍機2の作業容器21の温熱出口26と接続されている。温熱排出ライン5は配管等で構成される。定常運転時において、作業容器21へ流入したプロセス流体よりも高温のプロセス流体、即ち、作業容器21で昇温されたプロセス流体が温熱排出ライン5へ排出される。温熱排出ライン5には、温熱排出弁52が配置されている。温熱排出弁52は開閉弁又は流量調整弁であって、温熱排出弁52は作業容器21と温熱排出ライン5との連通と遮断とを切り替える。温熱排出弁52の開放時には作業容器21から温熱排出ライン5へプロセス流体が排出され、温熱排出弁52の閉止時には作業容器21から温熱排出ライン5へのプロセス流体の排出が阻止される。
【0020】
温熱排出ライン5の温熱排出弁52より下流には冷却器51が配置されている。冷却器51は、温熱排出ライン5を流れるプロセス流体と冷媒との熱交換により、プロセス流体を冷却する。冷却器51で冷却されたプロセス流体は、バッファタンク54へ送られ、バッファタンク54で貯溜される。
【0021】
<第2フィードライン6>
第2フィードライン6は、バッファタンク54と作業容器21の戻り口27とを接続している。第2フィードライン6は配管等で構成される。バッファタンク54に貯溜されている液体状のプロセス流体は、第2フィードライン6を通じて作業容器21内の冷凍作業室20へ戻される。作業容器21、温熱排出ライン5、及び第2フィードライン6によって、プロセス流体の循環流路50が形成されている。
【0022】
第2フィードライン6には、ポンプ55が配置されている。ポンプ55はバッファタンク54に貯えられたプロセス流体を昇圧して作業容器21へ送り出す。第2フィードライン6のポンプ55より下流には戻し弁53が配置されている。戻し弁53は開閉弁又は流量調整弁であって、戻し弁53は第2フィードライン6と作業容器21との連通と遮断とを切り替える。戻し弁53の開放時に第2フィードライン6から磁気冷凍機2へプロセス流体が供給され、戻し弁53の閉止時には第2フィードライン6から磁気冷凍機2へのプロセス流体の供給が阻止される。
【0023】
《磁気冷凍システム10の運転方法》
ここで、上記構成の磁気冷凍システム10の運転方法を説明する。磁気冷凍システム10は、定常運転前に、磁気冷凍機2の初期冷却を行う。磁気冷凍機2の初期冷却では、(a)断熱励磁行程、(b)排熱励磁行程、(c)断熱消磁行程、及び(d’)初期吸熱消磁行程からなる磁気冷凍サイクルを1回以上繰り返すことにより、所定の初期温度となるまで冷熱を蓄える。初期温度は、プロセス流体の目標冷却温度よりも低い任意の温度である。なお、以下で説明するフィード弁32、寒冷排出弁41、温熱排出弁52、戻し弁53、及びポンプ55の動作は制御装置によって制御されてもよいしオペレータによって手動で操作されてもよい。
【0024】
(a)断熱励磁行程
冷凍作業室20には予めプロセス流体が充填されている。フィード弁32、寒冷排出弁41、温熱排出弁52、及び戻し弁53が閉止された状態で、磁石23によって磁気作動物質22に外部から磁場が印加される。このようにして断熱状態で励磁された磁気作動物質22は発熱する。
【0025】
(b)排熱励磁行程
断熱励磁行程から継続的に磁気作動物質22が励磁され、フィード弁32及び寒冷排出弁41が閉止され、温熱排出弁52及び戻し弁53が開放された状態で、ポンプ55が稼働される。ポンプ55の稼働により、バッファタンク54に貯えられた液体状のプロセス流体が第2フィードライン6を通じて作業容器21へ供給される。作業容器21において磁気作動物質22とプロセス流体は熱交換し、磁気作動物質22はプロセス流体へ熱を放出する。昇温したプロセス流体は、温熱出口26から温熱排出ライン5へ排出される。
【0026】
(c)断熱消磁行程
フィード弁32、寒冷排出弁41、温熱排出弁52、及び戻し弁53が閉止された状態で、磁石23によって磁気作動物質22に印加されていた磁場の強さを減少させる。このようにして断熱状態で消磁された磁石23は周囲から熱を吸収する。
【0027】
(d’)初期吸熱消磁行程
断熱消磁行程から継続的に磁気作動物質22が消磁され、フィード弁32及び寒冷排出弁41が閉止され、温熱排出弁52及び戻し弁53が開放された状態で、ポンプ55が稼働される。ポンプ55の稼働により、バッファタンク54に貯えられた液体状のプロセス流体が第2フィードライン6を通じて作業容器21へ供給される。作業容器21において磁気作動物質22とプロセス流体は熱交換し、磁気作動物質22はプロセス流体の熱を吸収する。磁気作動物質22の吸熱によって降温したプロセス流体は温熱出口26から温熱排出ライン5へ排出される。
【0028】
磁気冷凍システム10では磁気冷凍機2の初期冷却が終わると定常運転が開始される。定常運転中の磁気冷凍システム10は、(a)断熱励磁行程、(b)排熱励磁行程、(c)断熱消磁行程、及び(d)吸熱消磁行程からなる磁気冷凍サイクルによって、第1フィードライン3から供給された液体状のプロセス流体を更に降温して寒冷排出ライン4へ排出する。定常運転中の磁気冷凍サイクルは、初期冷却の磁気冷凍サイクルと比較して(d)吸熱消磁行程のみが異なる。そこで、(d)吸熱消磁行程を詳細に説明して、余の行程の詳細な説明を省略する。
【0029】
(d)吸熱消磁行程
断熱消磁行程から継続的に磁気作動物質22が消磁された状態で、温熱排出弁52及び戻し弁53が閉止され、フィード弁32及び寒冷排出弁41が開放される。第1フィードライン3を通じて作業容器21へプロセス流体が供給される。作業容器21において磁気作動物質22とプロセス流体は熱交換し、磁気作動物質22はプロセス流体の熱を吸収する。磁気作動物質22の吸熱によって降温したプロセス流体は、寒冷出口25から寒冷排出ライン4へ排出される。
【0030】
上記の磁気冷凍システム10の運転方法では、初期冷却の磁気冷凍サイクルにおいては温熱排出ライン5、第2フィードライン6、及び作業容器21からなる循環流路でプロセス流体を循環させる。但し、初期冷却の磁気冷凍サイクルの初期吸熱消磁行程においても定常運転中の吸熱消磁行程と同様に、第1フィードライン3から作業容器21へプロセス流体を供給し、降温したプロセス流体を寒冷出口25から排出してもよい。或いは、第1フィードライン3から作業容器21へプロセス流体を供給し、降温したプロセス流体を温熱出口26から排出してもよい。
【0031】
《磁気冷凍システム10の適用例》
上記の磁気冷凍システム10によって、液体状のプロセス流体は、当該プロセス流体の圧力環境下の融点より高く且つ沸点より低い温度まで降温する。但し、磁気冷凍システム10によって、液体状のプロセス流体は過冷却状態まで降温してもよい。このような磁気冷凍システム10は、例えば、低温の液体を貯蔵する設備で低温の液体を更に降温するために利用できる。以下では、上記の磁気冷凍システム10を低温の液体を貯蔵する設備に適用した例を説明する。
【0032】
<適用例1>
図2は、磁気冷凍システム10が適用された液化設備61の概略構成図である。
図2に示す液化設備61は、液化装置62と、タンク63と、磁気冷凍システム10とを備える。液化装置62は、ガスを冷却することにより、液化ガスを生成する装置である。液化されるガスとしては、例えば、天然ガスや水素などが例示される。磁気冷凍システム10の第1フィードライン3は液化装置62と接続されている。液化装置62から第1フィードライン3へ流入したプロセス流体としての液化ガスは、第1フィードライン3を通じて磁気冷凍機2へ供給される。磁気冷凍機2へ供給された液化ガスは、磁気冷凍機2によって冷却される。磁気冷凍システム10の寒冷排出ライン4はタンク63と接続されており、磁気冷凍機2から寒冷排出ライン4へ流出した液化ガスは寒冷排出ライン4を通じてタンク63へ送られる。この液化設備61では、磁気冷凍システム10が具備する冷却器51の冷熱源として、液化設備61でガスを冷却する冷媒を利用できる。
【0033】
<適用例2>
図3は、磁気冷凍システム10が適用された低温液体貯蔵設備65の概略構成図である。
図3に示す低温液体貯蔵設備65は、タンク66と磁気冷凍システム10とを備える。タンク66には、低温液体又は極低温液体が貯蔵されている。このような液体として、LNG、液体水素等が例示される。磁気冷凍システム10の第1フィードライン3はタンク66の液相部と接続されている。タンク66から第1フィードライン3へ流入した低温液体は、第1フィードライン3を通じて磁気冷凍機2へ供給される。磁気冷凍機2へ供給された低温液体は、磁気冷凍機2によって冷却される。磁気冷凍システム10の寒冷排出ライン4はタンク66の液相部と接続されており、磁気冷凍機2から寒冷排出ライン4へ流出した低温液体は寒冷排出ライン4を通じてタンク66へ戻される。この低温液体貯蔵設備65では、磁気冷凍システム10が具備する冷却器51の冷熱源として、タンク66に収容された低温液体が利用されてもよい。このように低温液体貯蔵設備65が磁気冷凍システム10を備えることにより、低温液体貯蔵設備65に貯蔵されている低温液体の温度上昇が抑制され、ボイルオフガスの生成が抑制される。
【0034】
<適用例3>
図4は、磁気冷凍システム10が適用された液体供給設備71の概略構成図である。
図4に示す液体供給設備71は、液体燃料を燃焼する燃焼器などの、液体の消費機器72へ低温の液体を供給する設備である。液体供給設備71は、タンク73と、液体供給ライン74と、戻しライン77と、磁気冷凍システム10とを備える。タンク73には、液体が収容されている。タンク73と消費機器72は液体供給ライン74によって接続されている。タンク73の液体は、液体供給ライン74を通じて消費機器72へ送られる。液体供給ライン74には、昇圧器75が配置されている。昇圧器75は、消費機器72へ供給される液体を昇圧する。昇圧器75として、圧縮により液体を昇圧する圧縮機や、昇温により液体を昇圧する加熱器が用いられてよい。液体供給ライン74の昇圧器75より下流には、戻しライン77が接続されている。液体供給ライン74を流れる液体のうち余剰分が戻しライン77へ流入する。戻しライン77には流量調整弁76が配置されており、液体供給ライン74から戻しライン77へ流入する液体の流量は流量調整弁76によって調整される。戻しライン77へ流入した液体は、タンク73に貯蔵されている液体と比較して高温となっている。磁気冷凍システム10の第1フィードライン3は戻しライン77と接続されている。戻しライン77から第1フィードライン3へ流入した液体は、第1フィードライン3を通じて磁気冷凍機2へ供給される。磁気冷凍機2へ供給された液体は、磁気冷凍機2によって冷却される。磁気冷凍システム10の寒冷排出ライン4はタンク73の液相部と接続されており、磁気冷凍機2から寒冷排出ライン4へ流出した液体は寒冷排出ライン4を通じてタンク73へ戻される。この液体供給設備71では、磁気冷凍システム10が具備する冷却器51の冷熱源として、タンク73に収容された液体が利用されてもよい。このように液体供給設備71が磁気冷凍システム10を備えることにより、タンク73から取り出した液体を、磁気冷凍システム10でタンク73に収容されている液体の温度又はそれより低い温度まで冷却してからタンク73へ戻すことが可能である。よって、タンク73に貯蔵されている液体の温度上昇が抑制され、ボイルオフガスの生成が抑制される。なお、上記の液体供給設備71は、タンク73から液体を貯蔵する貯蔵容器へ液体を供給する設備であってもよい。この場合の液体供給設備71の構成は、上記の消費機器72を貯蔵容器に置き換えることにより説明される。
【0035】
以上に磁気冷凍システム10の適用例1乃至3を説明したが、これらの適用例のうち2つ以上が組み合わされてもよい。
【0036】
〔総括〕
本開示の第1の項目に係る磁気冷凍システム10は、
液体状のプロセス流体が充填された作業容器21、作業容器21内に配置された磁気作動物質22、及び、作業容器21の外に配置されて磁気作動物質22の励磁と消磁が可能な磁石23を有する磁気冷凍機2と、
磁気冷凍機2の作業容器21と接続されて作業容器21へ液体状のプロセス流体を供給する少なくとも1本のフィードライン3,6と、
磁気冷凍機2の作業容器21と接続されて作業容器21から排出されたプロセス流体が流れる寒冷排出ライン4と、
磁気冷凍機2の作業容器21と接続されて作業容器21から排出されたプロセス流体が流れる温熱排出ライン5と、を備え、
断熱励磁により磁気作動物質22を発熱させ、フィードライン6から作業容器21へプロセス流体を供給するとともに磁気作動物質22の発熱によって昇温したプロセス流体を温熱排出ライン5へ排出し、断熱消磁により磁気作動物質22を吸熱させ、フィードライン3から作業容器21へプロセス流体を供給するとともに磁気作動物質22の吸熱によって降温したプロセス流体を寒冷排出ライン4へ排出するように構成されているものである。
【0037】
上記構成の磁気冷凍システム10では、磁気冷凍機2へ流入するプロセス流体、磁気冷凍機2から流出する昇温したプロセス流体、及び、磁気冷凍機2から流出する降温したプロセス流体は、いずれも液体状である。このような磁気冷凍機2は、液体状のプロセス流体と磁気作動物質22とを熱交換させる従来の磁気冷凍機と比較して、熱交換効率が高く、効果的にプロセス流体を冷却できる。そのうえ、上記構成の磁気冷凍システム10では、磁気作動物質22から温熱を搬出する媒体として冷却対象と同じプロセス流体が用いられており、作業容器21において温熱を搬出する媒体と冷却対象との流路を共用でき、作業容器21をコンパクトに構成できる。作業容器21の小型化により、磁気冷凍システム10を小型化できる。
【0038】
本開示の第2の項目に係る磁気冷凍システム10は、第1の項目に係る磁気冷凍システム10において、
温熱排出ライン5は、プロセス流体を冷却する冷却器51と、冷却器51で冷却されたプロセス流体を貯溜するバッファタンク54とを有し、
少なくとも1つのフィードライン3,6は、バッファタンク54に貯溜されたプロセス流体を供給するフィードライン6を含むものである。
【0039】
上記構成の磁気冷凍システム10では、磁気作動物質22から温熱を搬出する媒体としてプロセス流体が用いられ、このプロセス媒体は循環利用される。
【0040】
本開示の第3の項目に係る磁気冷凍システム10は、第1又は2の項目に係る磁気冷凍システム10において、
磁気冷凍機2の作業容器21は、磁気作動物質22とプロセス流体とが直接的に接触して熱交換するように構成されているものである。
【0041】
上記構成の磁気冷凍システム10では、磁気作動物質22とプロセス流体とが直接的に熱交換するので、磁気作動物質22とプロセス流体とが媒体を介して間接的に熱交換する場合と比較して、磁気作動物質22とプロセス流体との熱交換効率を高めることができる。
【0042】
本開示の第4の項目に係る設備(即ち、液化設備61)は、
ガスを冷却により液化することにより液化ガスを生成する液化装置62と、
液化ガスを収容するタンク63と、
液化装置62と接続されたフィードライン3、タンク63に接続された寒冷排出ライン4、及び、液化装置62で生成された液化ガスをプロセス流体として液化ガスを冷却する磁気冷凍機2を有する、第1乃至3のいずれかの項目に係る磁気冷凍システム10と、を備えるものである。
【0043】
上記構成の設備61では、磁気冷凍システム10によって冷却された液化ガスがタンク63へ供給されるので、タンク63の液化ガスの温度上昇が抑制され、タンク63において液化ガスの気化を抑制できる。
【0044】
本開示の第5の項目に係る設備(即ち、低温液体貯蔵設備65)は、
液体を収容するタンク66と、
タンク66と接続されたフィードライン3、タンク66と接続された寒冷排出ライン4、及び、タンク66からフィードライン3へ流入した液体をプロセス流体として冷却する磁気冷凍機2を有する、第1乃至3のいずれかの項目に係る磁気冷凍システム10と、を備えるものである。
【0045】
上記構成の設備65では、タンク66に貯蔵されている液体の温度上昇が抑制され、タンク66において液体のボイルオフガスの生成が抑制される。
【0046】
本開示の第6の項目に係る設備(即ち、液体供給設備71)は、
液体を収容するタンク73と、
タンク73と接続され、液体を貯蔵する貯蔵容器又は液体を消費する消費機器72へ供給する液体供給ライン74と、
液体供給ライン74に配置されて液体を昇圧する昇圧器75と、
液体供給ライン74の昇圧器75より下流に接続された戻しライン77と、
戻しライン77と接続されたフィードライン3、タンク73と接続された寒冷排出ライン4、及び、戻しライン77からフィードライン3へ流入した液体をプロセス流体として冷却する磁気冷凍機2とを有する、第1乃至3のいずれかの項目に係る磁気冷凍システム10と、を備えるものである。
【0047】
上記構成の設備71では、タンク73へ液体が戻されることに起因するタンク73に貯蔵されている液体の温度上昇が抑制され、タンク73において液体のボイルオフガスの生成が抑制される。
【0048】
以上の本開示の議論は、例示及び説明の目的で提示されたものであり、本開示を本明細書に開示される形態に限定することを意図するものではない。例えば、前述の詳細な説明では、本開示の様々な特徴は、本開示を合理化する目的で1つの実施形態に纏められているが、複数の特徴のうち幾つかが組み合わされてもよい。また、本開示に含まれる複数の特徴は、上記で論じたもの以外の代替の実施形態、構成、又は態様に組み合わされてもよい。
【符号の説明】
【0049】
2 :磁気冷凍機
3 :第1フィードライン
4 :寒冷排出ライン
5 :温熱排出ライン
6 :第2フィードライン
10 :磁気冷凍システム
21 :作業容器
22 :磁気作動物質
23 :磁石
51 :冷却器
54 :バッファタンク
61 :液化設備
62 :液化装置
63 :タンク
65 :低温液体貯蔵設備
66 :タンク
71 :液体供給設備
72 :燃焼器
73 :タンク
74 :液体供給ライン
75 :昇圧器
77 :戻しライン