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  • 特開-フラックス、及び、カートリッジ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143495
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】フラックス、及び、カートリッジ
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
B23K35/363 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056211
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000143215
【氏名又は名称】株式会社弘輝
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】久野 香織
(72)【発明者】
【氏名】行方 一博
(72)【発明者】
【氏名】内田 令芳
(57)【要約】
【課題】空隙及び亀裂の発生を抑制すると共に、塗布形状を保つことができるフラックス、及び、カートリッジを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明に係るフラックスは、ロジン成分と、チキソトロピック成分と、溶剤成分と、を含むBGA/CSP実装及びリペア用のフラックスであって、前記チキソトロピック成分が、ビスアマイド化合物を含み、前記ロジン成分の含有量が、フラックス全体に対して、40.0質量%以上70.0質量%以下であり、前記ロジン成分の酸価が、80mgKOH/g以上210mgKOH/g以下であり、前記ビスアマイド化合物の含有量が、フラックス全体に対して、2.0質量%以上9.0質量%以下である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロジン成分と、チキソトロピック成分と、溶剤成分と、を含むBGA/CSP実装及びリペア用のフラックスであって、
前記チキソトロピック成分が、ビスアマイド化合物を含み、
前記ロジン成分の含有量が、フラックス全体に対して、40.0質量%以上70.0質量%以下であり、
前記ロジン成分の酸価が、80mgKOH/g以上210mgKOH/g以下であり、
前記ビスアマイド化合物の含有量が、フラックス全体に対して、2.0質量%以上9.0質量%以下である、フラックス。
【請求項2】
前記ロジン成分は、軟化点が110℃以上の高軟化点ロジンを含み、
前記高軟化点ロジンの含有量が、前記ロジン成分に対して、10.0質量%以上である、請求項1に記載のフラックス。
【請求項3】
フラックスと、該フラックスを収容する容器と、を備えたシリンジ状のカートリッジであって、
前記フラックスが、請求項1又は2に記載のフラックスである、カートリッジ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フラックス、及び、カートリッジに関する。
【背景技術】
【0002】
電子部品の接合等に用いられるはんだ材料は、はんだ合金とフラックスとを含む。該フラックスは、はんだ付け性を向上させるために配合されるものであり、樹脂成分、活性剤成分、溶剤成分、酸化防止成分、チキソトロピック成分(チクソ剤成分)等の各種成分を含む。
【0003】
例えば、BGA(Ball grid array)等の実装において、はんだバンプを基板又は電子部品に接合する場合、前記フラックスは、それ単独で基板又は電子部品に供給されることもある。例えば、特許文献1及び2には、フラックスを電子部品のはんだバンプ等に転写する方法が開示されている。このような転写方法においては、スキージを用いて転写ステージの表面にフラックスを引き延ばしてフラックス塗膜を形成した後、該フラックス塗膜の上に電子部品に設けられたはんだバンプを着地させることにより、フラックスを転写させる。
【0004】
上述のようなフラックスとして、例えば、特許文献3には、ベース樹脂、溶剤、活性剤、及びチキソ剤を有し、前記チキソ剤が、炭素数2~10の脂肪族及び/又は炭素数6~10の芳香族プライマリージアミン類と、炭素数12~36の多価カルボン酸類及び/又は炭素数12~30の無置換又はヒドロキシ置換脂肪族モノカルボン酸類とのポリアミド化合物を含有するポリアミド成分を含有する半導体用のフラックスが開示されている。
【0005】
また、特許文献4には、活性剤として、N-アセチルイミダゾール、N-アセチルフタルイミド、又は、テトラアセチルエチレンジアミンから選択される少なくとも一つを含有する、タックフラックスに適用可能なフラックスが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2011-139085号公報
【特許文献2】特開2007-103866号公報
【特許文献3】特開2022-80429号公報
【特許文献4】特開2018-24023号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献3及び4に記載されたようなフラックスは、例えば、シリンジ状の容器に充填されて顧客へ納品されることがあり、その際、保管する目的で冷却する場合がある。ところが、シリンジ状の容器に充填された前記フラックスを冷却すると、固化したフラックスに空隙(所謂、引け巣)、亀裂等が発生する虞がある。空隙又は亀裂が発生したフラックスは、塗布不良等の不具合を生じさせる一因となるため、出荷することができず破棄せざるを得ない。特に、近年、実装部品の高積載化が進んでおり、PoP実装(Package on Package実装)等の3次元実装が行われている。斯かる3次元実装においては、わずかな空隙及び亀裂であっても不具合を生じさせる虞があることから、より一層、空隙及び亀裂の発生を抑制することが求められている。
【0008】
また、シリンジ状の容器に充填されたフラックスを、ディスペンサにより塗布した際に、塗布形状を保つことができるフラックスが望まれている。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、空隙及び亀裂の発生を抑制すると共に、塗布形状を保つことができるフラックス、及び、カートリッジを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るフラックスは、ロジン成分と、チキソトロピック成分と、溶剤成分と、を含むBGA/CSP実装及びリペア用のフラックスであって、前記チキソトロピック成分が、ビスアマイド化合物を含み、前記ロジン成分の含有量が、フラックス全体に対して、40.0質量%以上70.0質量%以下であり、前記ロジン成分の酸価が、80mgKOH/g以上210mgKOH/g以下であり、前記ビスアマイド化合物の含有量が、フラックス全体に対して、2.0質量%以上9.0質量%以下である。
【0011】
本発明に係るカートリッジは、フラックスと、該フラックスを収容する容器と、を備えたシリンジ状のカートリッジであって、前記フラックスが、上述のフラックスである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、空隙及び亀裂の発生を抑制すると共に、塗布形状を保つことができるフラックス、及び、カートリッジを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態に係るカートリッジ1の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態に係るフラックス、及び、カートリッジについて説明する。
【0015】
<フラックス>
本実施形態に係るフラックスは、ロジン成分と、チキソトロピック成分と、溶剤成分と、を含む。
【0016】
(ロジン成分)
ロジン成分は、ロジン系樹脂を含む。ロジン系樹脂としては、ロジン、及び、ロジン誘導体が挙げられる。ロジン誘導体としては、例えば、水素添加ロジン、重合ロジン、不均化ロジン、酸変性ロジン(例えば、マレイン酸変性ロジン、アクリル酸変性ロジン等)、酸変性水添ロジン(例えば、マレイン酸変性水添ロジン、アクリル酸変性水添ロジン等)、ロジンエステル、ペンタエリスリトールエステル等が挙げられる。なお、前記ロジン系樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0017】
前記ロジン成分の酸価は、80mgKOH/g以上210mgKOH/g以下である。前記ロジン成分の酸価は、はんだに十分な濡れ性を付与させる観点から、120mgKOH/g以上であることが好ましく、140mgKOH/g以上であることがより好ましい。また、前記ロジン成分の酸価は、フラックスが保形性を維持する観点から、180mgKOH/g以下であることが好ましく、160mgKOH/g以下であることがより好ましい。前記ロジン成分の酸価は、前記ロジン系樹脂の酸価に、フラックス全体に対する前記ロジン系樹脂の含有量(質量%)を乗じた値(前記ロジン系樹脂を併用する場合には、各ロジン系樹脂の酸価に、フラックス全体に対する各ロジン系樹脂の含有量(質量%)をそれぞれ乗じた値の和)を、フラックス全体に対するロジン成分の含有量(質量%)で除することにより求められる。ここで、酸価とは、試料1g中に含まれる酸性成分を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を表す。前記ロジン系樹脂の酸価は、JIS K 2501:2003の電位差滴定法に準拠して測定される。
【0018】
前記ロジン成分の含有量は、フラックス全体に対して、40.0質量%以上70.0質量%以下である。前記ロジン成分の含有量は、フラックスが保形性を維持する観点から、フラックス全体に対して、45.0質量%以上であることが好ましく、50.0質量%以上であることがより好ましい。また、前記ロジン成分の含有量は、フラックスが印刷性を確保する観点から、フラックス全体に対して、67.0質量%以下であることが好ましく、65.0質量%以下であることがより好ましい。なお、前記ロジン成分に前記ロジン系樹脂が2種以上含まれる場合、前記含有量は前記ロジン系樹脂の合計含有量である。
【0019】
前記ロジン成分は、フラックスに耐熱性を付与する観点から、軟化点が110℃以上の高軟化点ロジンを含むことが好ましい。高軟化点ロジンとしては、例えば、重合ロジン、酸変性ロジン、ロジン変性マレイン酸樹脂、重合ロジンエステル等が挙げられる。なお、高軟化点ロジンは、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0020】
前記ロジン系樹脂の軟化点は、JIS K 2207:2006に規定された軟化点試験方法(環球法)により測定される。
【0021】
前記高軟化点ロジンの含有量は、フラックスの熱ダレ性を向上させる観点から、前記ロジン成分に対して、10.0質量%以上であることが好ましく、30.0質量%以上であることがより好ましく、40.0質量%以上であることが特に好ましい。また、前記高軟化点ロジンの含有量は、フラックスが印刷性を確保する観点から、前記ロジン成分に対して、70.0質量%以下であることが好ましく、65.0質量%以下であることがより好ましく、62.0質量%以下であることが特に好ましい。なお、前記高軟化点ロジンが2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。
【0022】
(チキソトロピック成分)
チキソトロピック成分は、ビスアマイド化合物を含む。ビスアマイド化合物としては、例えば、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスヒドロキシステアリン酸アミド、エチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミド、ヘキサメチレンビスベヘン酸アミド、ヘキサメチレンビス-12-ヒドロキシステアリン酸アミド、N,N’-ジステアリルアジピン酸アミド、N,N’-キシリレンビス-12-ヒドロキシステアリルアミド等が挙げられる。なお、ビスアマイド化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0023】
前記ビスアマイド化合物は、示差熱分析で得られる一又は複数の吸熱ピークがすべて120℃以上150℃以下の範囲で観測されるビスアマイド化合物であることが好ましい。前記ビスアマイド化合物が、示差熱分析で得られる一又は複数の吸熱ピークがすべて120℃以上150℃以下の範囲で観測されるビスアマイド化合物であることにより、フラックスの保形性を維持しつつ、はんだ溶融前にはんだに対して濡れ広がることができる。示差熱分析で得られる一又は複数の吸熱ピークがすべて120℃以上150℃以下の範囲で観測されるビスアマイド化合物としては、例えば、メチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリン酸アマイド、エチレンビス12-ヒドロキシステアリン酸アマイド、エチレンビスベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アマイド、ヘキサメチレンベヘン酸アマイド、ヘキサメチレンビス12-ヒドロキシステアリン酸アマイド、N,N’-ジステアリルアジピンアマイド、N,N’-ジステアリルセバシン酸アマイド、キシレンビス12-ヒドロキシステアリルアミド等が挙げられる。なお、本明細書において吸熱ピークとは、吸熱量が10J/g以上のピークをいう。示差熱分析は、示差走査熱量計(Thermo plus DSC 8230、リガク社製)を用いて、下記の条件で行うことができる。
【0024】
測定温度範囲:30~300℃
昇温速度:10℃/min
測定雰囲気:窒素雰囲気下、流量30mL/min
試料量:10mg
【0025】
前記ビスアマイド化合物の含有量は、フラックス全体に対して、2.0質量%以上9.0質量%以下である。前記ビスアマイド化合物の含有量は、フラックスに保形性を付与する観点から、フラックス全体に対して、3.0質量%以上であることが好ましく、4.0質量%以上であることがより好ましい。また、前記ビスアマイド化合物の含有量は、フラックスの引け巣発生、亀裂の発生防止、印刷性の悪化防止の観点から、フラックス全体に対して、8.0質量%以下であることが好ましく、7.0質量%以下であることがより好ましい。
【0026】
前記チキソトロピック成分は、ビスアマイド化合物以外のその他の化合物を含んでいてもよい。前記その他の化合物としては、例えば、ヒマシ硬化油、モノアマイド化合物、ポリアマイド化合物、カオリン、コロイダルシリカ、有機ベントナイト、ガラスフリット等が挙げられる。前記モノアマイド化合物としては、例えば、カプロン酸アマイド、カプリル酸アマイド、ラウリン酸アマイド、ミリスチン酸アマイド、パルミチン酸アマイド、ステアリン酸アマイド、アラキジン酸アマイド、ベヘン酸アマイド、パルミトレイン酸アマイド、オレイン酸アマイド、エイコセン酸アマイド、エルカ酸アマイド、エライジン酸アマイド、リノール酸アマイド、リノレン酸アマイド、リシノール酸アマイド等が挙げられる。前記ポリアマイド化合物としては、例えば、脂肪族ポリアミド化合物であるターレンVA-79、AMX-6096A、WH-215、WH-255、EMSOLDER(以上、共栄社化学社製)、SP-10、SP-500(以上、東レ社製)、グリルアミドL20G、グリルアミドTR55(以上、エムスケミ-・ジャパン社製)等、主鎖にベンゼン環、ナフタレン環等の環式化合物含む芳香族ポリアミド化合物(半芳香族ポリアミド化合物又は全芳香族ポリアミド化合物)であるJH-180(伊藤製油社製)等が挙げられる。なお、前記その他の化合物は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記その他の化合物の含有量は、フラックスの塗布性及びはんだの濡れ性を向上させる観点から、前記チキソトロピック成分に対して、50.0質量%以下であることが好ましく、30.0質量%以下であることがより好ましい。なお、前記その他の化合物が2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。
【0028】
(溶剤成分)
溶剤成分は、例えば、ジエチレングリコールモノヘキシルエーテル(ヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールジブチルエーテル(ジブチルジグリコール)、ジエチレングリコールモノ2-エチルヘキシルエーテル(2エチルヘキシルジグリコール)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルジグリコール)、トリエチレングリコールモノブチルエーテル(ブチルトリグリコール)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールn-ブチルエーテル等のグリコールエーテル類;n-ヘキサン、イソヘキサン、n-ヘプタン等の脂肪族系化合物;酢酸イソプロピル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル等のエステル類;メチルエチルケトン、メチル-n-プロピルケトン、ジエチルケトン等のケトン類;エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、イソブタノール等のアルコール類等の溶剤を含む。なお、前記溶剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記溶剤成分の含有量は、フラックスの塗布性を向上させる観点から、フラックス全体に対して、15.0質量%以上であることが好ましく、20.0質量%以上であることがより好ましく、25.0質量%以上であることが特に好ましい。また、前記溶剤成分の含有量は、はんだの濡れ性やフラックの保形性を向上させる観点から、フラックス全体に対して、50.0質量%以下であることが好ましく、45.0質量%以下であることがより好ましく、40.0質量%以下であることが特に好ましい。なお、前記溶剤成分に前記溶剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。
【0030】
(その他の樹脂成分)
本実施形態に係るフラックスはロジン成分以外のその他の樹脂成分を含んでいてもよい。その他の樹脂成分は、例えば、テルペンフェノール樹脂、フェノール樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体、ポリ乳酸、ポリスチレン等の樹脂を含む。なお、前記樹脂は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記その他の樹脂成分の含有量は、フラックスの保形性を向上させる観点から、フラックス全体に対して、5.0質量%以上であることが好ましく、10.0質量%以上であることがより好ましい。また、前記その他の樹脂成分の含有量は、はんだの濡れ性を向上させる観点から、フラックス全体に対して、20.0質量%以下であることが好ましく、15.0質量%以下であることがより好ましい。なお、前記その他の樹脂成分に前記樹脂が2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。
【0032】
(活性剤成分)
本実施形態に係るフラックスは、活性剤成分を含んでいてもよい。前記活性剤成分は、例えば、有機酸系活性剤、アミン系化合物、アミノ酸、ハロゲン系活性剤等の活性剤を含む。なお、前記活性剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0033】
有機酸系活性剤としては、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリン酸、ラウリル酸、ペンタデシル酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ツベルクロステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、リグノセリン酸、グリコール酸等のモノカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、メチルコハク酸、フェニルコハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、ジグリコール酸等のジカルボン酸;ダイマー酸、レブリン酸、乳酸、アクリル酸、安息香酸、サリチル酸、アニス酸、クエン酸、ピコリン酸等のその他の有機酸が挙げられる。
【0034】
アミン系化合物としては、例えば、イミダゾール系化合物、トリアゾール系化合物等が挙げられる。前記イミダゾール系化合物としては、例えば、ベンゾイミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール(2E4MZ)、2-ヘプタデシルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール、1-(4,6-ジアミノ-s-トリアジン-2-イル)エチル-2-ウンデシルイミダゾール、1-ブチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-メチル-2-フェニルイミダゾール等が挙げられる。前記トリアゾール系化合物としては、例えば、ベンゾトリアゾール、1H-ベンゾトリアゾール-1-メタノール、1-メチル-1H-ベンゾトリアゾール等が挙げられる。その他のアミン系化合物としては、例えば、セチルアミン、エルカ酸アミド、3-(ジメチルアミノ)-1,2-プロパンジオール、3,5-ジメチルピラゾール、ジメチルウレア、ヘキサヒドロ-1,3,5-トリフェニル-1,3,5-トリアジン、ピラジンアミド、N-フェニルグリシン、3-メチル-5-ピラゾロン、N-ラウロイルサルコシン、1,3-ジフェニルグアニジン等が挙げられる。
【0035】
アミノ酸としては、例えば、N-アセチルフェニルアラニン(N-アセチル-L-フェニルアラニン、N-アセチル-DL-フェニルアラニン、N-アセチル-D-フェニルアラニン)、N-アセチルグルタミン酸(N-アセチル-L-グルタミン酸)、N-アセチルグリシン、N-アセチルロイシン(N-アセチル-L-ロイシン、N-アセチル-DL-ロイシン、N-アセチル-D-ロイシン)、又は、N-アセチルフェニルグリシン(N-アセチル-N-フェニルグリシン、N-アセチル-L-フェニルグリシン、N-アセチル-DL-フェニルグリシン)等が挙げられる。
【0036】
ハロゲン系活性剤としては、例えば、アミンハロゲン塩、ハロゲン化合物等が挙げられる。アミンハロゲン塩のアミンとしては、例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミン、トリブチルアミン、ジフェニルグアニジン、シクロヘキシルアミン等が挙げられる。アミンハロゲン塩のハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。ハロゲン化合物としては、イソシアヌル酸トリス(2,3-ジブロモプロピル)、2,3-ジブロモ-2-ブテン-1,4-ジオール、2-ブロモ-3-ヨード-2-ブテン-1,4-ジオール、TBA-ビス(2,3-ジブロモプロピルエーテル)、4,4’-ジヨードビフェニル等が挙げられる。
【0037】
前記活性剤成分の含有量は、フラックスの粘度及び粘着力が増加することを防止する観点から、フラックス全体に対して、20.0質量%以下であることが好ましく、10.0質量%以下であることがより好ましい。また、本実施形態に係るフラックスは、洗浄性を高める観点から、活性剤成分を含まないことが特に好ましい。なお、前記活性剤成分に前記活性剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。
【0038】
本実施形態に係るフラックスは、その他の添加剤成分を含んでいてもよい。その他の添加剤成分は、例えば、安定剤、界面活性剤、消泡剤、酸化防止剤、色素等の添加剤を含む。色素は、フラックスの視認性を向上させる観点から、例えば、黒色系の色素、青色系の色素、赤色系色素、緑系色素等であることが好ましい。なお、前記添加剤は、1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0039】
前記その他の添加剤成分の含有量は、例えば、フラックス全体に対して、5.0質量%以下とすることができる。なお、前記その他の添加剤成分に前記添加剤が2種以上含まれる場合、前記含有量は合計含有量である。
【0040】
本実施形態に係るフラックスは、BGA/CSP実装及びリペア用のフラックスとして好適に用いることができる。具体的には、PoP実装におけるボールグリッドアレイ(BGA)、CSP部品等の半導体パッケージ部品に関するはんだ付け用フラックス、リペア用のフラックス等として用いることができる。また、そのフラックスはカートリッジからの吐出、転写、又は印刷によりはんだ付け部に塗布される。
【0041】
本実施形態に係るフラックスは、ロジン成分と、チキソトロピック成分と、溶剤成分と、を含むBGA/CSP実装及びリペア用のフラックスであって、前記チキソトロピック成分が、ビスアマイド化合物を含み、前記ロジン成分の含有量が、フラックス全体に対して、40.0質量%以上70.0質量%以下であり、前記ロジン成分の酸価が、80mgKOH/g以上210mgKOH/g以下であり、前記ビスアマイド化合物の含有量が、フラックス全体に対して、2.0質量%以上9.0質量%以下であることにより、空隙及び亀裂の発生を抑制すると共に、塗布形状を保つことができる。また、フラックスをはんだバンプに転写した後に、フラックスがはんだバンプからたれてくることを防止することができる。
【0042】
本実施形態に係るフラックスは、前記ロジン成分が、軟化点が110℃以上の高軟化点ロジンを含み、前記高軟化点ロジンの含有量が、前記ロジン成分に対して、10.0質量%以上であることにより、空隙及び亀裂の発生を抑制すると共に、より一層、塗布形状を保つことができる。
【0043】
<カートリッジ>
以下、本実施形態に係るカートリッジ1について、図面を参照しつつ説明する。図1は、本発明の実施形態に係るカートリッジ1の平面図である。本実施形態に係るカートリッジ1は、フラックス2と、該フラックス2を収容する容器3と、を備えたシリンジ状のカートリッジである。
【0044】
フラックス2を収容可能に構成された容器3は、筒状本体31と、該筒状本体31の軸線方向の一端側の端部に嵌合した封止部材32と、該筒状本体31の軸線方向の他端側の端部に嵌合した蓋材33と、を備える。
【0045】
容器3は、蓋材33を取り外すことで、筒状本体31の軸線方向の他端側の端部から、筒状本体31内にフラックス2を充填可能に構成されている。また、筒状本体31は、軸線方向の一端側の端部が先細りの形状になっている。これにより、容器3は、封止部材32を取り外すことで、筒状本体31の軸線方向の一端側の端部からフラックス2を吐出可能に構成されている。
【0046】
筒状本体31には、封止部材32が取り付けられた状態で、軸線方向の他端側の端部から液体状のフラックス2が充填される。その後、蓋材33を筒状本体31に取り付けることにより、カートリッジ1を製造することができる。なお、フラックス2は、上述のフラックスである。
【0047】
カートリッジ1は、ディスペンサに取り付けて用いることができる。具体的には、シリンジ状のカートリッジ1をカートリッジ1の固定具に取り付け、カートリッジ1の内部に圧力又は力を加えることにより、カートリッジ1に充填されているフラックスの吐出を行う。吐出方法には、圧縮エアによるエアパルス方式及びJET方式、スクリュー形状のロッドを回転させることで吐出を行うスクリュー方式等がある。吐出量は、コントローラにより圧縮エアの流量又は流出時間を変化させたり、カートリッジ1の固定具に付随している温調器によりカートリッジ1内部のフラックスの温度を変化させたりすることによって制御することができる。
【0048】
本実施形態に係るカートリッジ1は、フラックス2と、該フラックス2を収容する容器3と、を備えたシリンジ状のカートリッジ1であって、フラックス2が、上述のフラックスであることにより、フラックスに空隙及び亀裂が発生することを抑制すると共に、フラックスの塗布形状を保つことができる。
【0049】
本発明は、以下の態様を含む。
[1]ロジン成分と、チキソトロピック成分と、溶剤成分と、を含むBGA/CSP実装及びリペア用のフラックスであって、
前記チキソトロピック成分が、ビスアマイド化合物を含み、
前記ロジン成分の含有量が、フラックス全体に対して、40.0質量%以上70.0質量%以下であり、
前記ロジン成分の酸価が、80mgKOH/g以上210mgKOH/g以下であり、
前記ビスアマイド化合物の含有量が、フラックス全体に対して、2.0質量%以上9.0質量%以下である、フラックス。
[2]前記ロジン成分は、軟化点が110℃以上の高軟化点ロジンを含み、
前記高軟化点ロジンの含有量が、前記ロジン成分に対して、10.0質量%以上である、[1]に記載のフラックス。
[3]フラックスと、該フラックスを収容する容器と、を備えたシリンジ状のカートリッジであって、
前記フラックスが、[1]又は[2]に記載のフラックスである、カートリッジ。
【実施例0050】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
【0051】
<フラックスの作製>
表1~表3に示す配合量の各材料を加熱容器に投入し、180℃まで加熱することにより、全材料を溶解させた。その後、室温まで冷却することにより、均一に分散された各実施例及び各比較例のフラックスを得た。なお、表1~表3に示す各配合量は、フラックスに含まれる各成分の含有量と等しい。
【0052】
<カートリッジの作製>
室温まで冷却された各実施例及び各比較例のフラックスを、16時間静置した後、130℃まで加熱することにより溶解させて、シリンジ状の容器にフラックスを30g充填して、室温まで冷却することにより、各実施例及び各比較例のカートリッジを得た。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
【表3】
【0056】
表1~表3に示すフラックスに含まれる各材料の詳細を表4に示す。
【0057】
【表4】
【0058】
<酸価及び軟化点の測定>
ロジン系樹脂の酸価は、JIS K 2501:2003の電位差滴定法により測定した。また、ロジン系樹脂の軟化点は、JIS K 2207:2006に規定された軟化点試験方法(環球法)により測定した。測定結果を表5に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
<吸熱ピーク温度の測定>
各チキソトロピック成分の吸熱ピーク温度は、示差熱分析により測定した。具体的には、示差走査熱量計(Thermo plus DSC 8230、リガク社製)を用いて、下記の条件で行った。示差熱分析で得られた吸熱量が10J/g以上の吸熱ピーク温度を表6に示す。
【0061】
(測定条件)
測定温度範囲:30~300℃
昇温速度:10℃/min
測定雰囲気:窒素雰囲気下、流量30mL/min
試料量:10mg
【0062】
【表6】
【0063】
<外観の評価>
作製した各実施例及び各比較例のカートリッジを常温にて3日間静置させた後、フラックスの外観を目視にて観察した。外観の評価は、フラックスに空隙又は亀裂が発生していない場合には、「〇」と判定し、フラックスに空隙又は亀裂が発生した場合には、「×」と判定した。評価結果を表1~表3に示す。
【0064】
<印刷性の評価>
印刷性は、IPC TM-650 2.4.35 Solder Paste Slump Testの常温静置試験を行い、評価を行った。より詳細には、まず、アルミナ基板の上にメタルマスクIPC-A-21を設置し、該メタルマスクの上に各実施例及び比較例のフラックスを約5g投入し、メタルスキージを用いて手印刷を行った。
【0065】
(印刷条件)
パッドの形状:四角形状(0.33mm×2.03mm)
パッドの材質:OSP処理銅
【0066】
各実施例及び各比較例のフラックスを印刷後、メタルマスクを外して、室温が25±5℃、湿度が50±10%RHの環境下で10分間静置させた。その後、印刷されたフラックス間のスペース(0.45,0.40,0.35,0.30,0.25,0.20,0.15mmの7カ所)を目視にて観察し、ブリッジが発生している箇所を記録した。印刷性の評価は、いずれのスペースにおいてもブリッジが発生していない場合には、「〇」と判定し、ブリッジが発生したものの、0.45~0.30mmのスペースにはブリッジが発生していない場合には、「△」と判定し、0.45~0.30mmのスペースにブリッジが発生するか、フラックスの印刷ができなかった場合には、「×」と判定した。評価結果を表1~表3に示す。
【0067】
<総合評価>
外観の評価及び印刷性の評価がいずれも「〇」である場合には、「A」と判定し、外観の評価が「〇」であって、印刷性の評価が「△」である場合には、「B」と判定した。判定結果が「A」及び「B」である場合には、総合評価を「合格」とした。また、外観の評価が「〇」であって、印刷性の評価が「×」である場合には、「C」と判定し、外観の評価が「×」であって、印刷性の評価が「〇」である場合には、「D」と判定し、外観の評価が「×」であって、印刷性の評価が「△」である場合には、「E」と判定し、外観の評価及び印刷性の評価がいずれも「×」である場合には、「F」と判定した。判定結果が「C」、「D」、「E」及び「F」である場合には、総合評価を「不合格」とした。
【0068】
表1~表3の結果から、本発明の要件をすべて満たす各実施例のフラックスは、外観の評価において、フラックスに空隙又は亀裂が発生していないことから、空隙及び亀裂の発生を抑制することができるといえる。また、本発明の要件をすべて満たす各実施例のフラックスは、印刷性の評価において、少なくとも0.45~0.30mmのスペースにはブリッジが発生していないことから、塗布形状を保つことができるといえる。すなわち、本発明の要件をすべて満たす各実施例のフラックス及びカートリッジは、空隙及び亀裂の発生を抑制すると共に、塗布形状を保つことができる。
【符号の説明】
【0069】
1 カートリッジ
2 フラックス
3 フラックスを収容する容器
図1