IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三浦工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-船舶用発電システム 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143500
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】船舶用発電システム
(51)【国際特許分類】
   F01K 23/10 20060101AFI20241003BHJP
   F01K 25/10 20060101ALI20241003BHJP
   F01K 23/02 20060101ALI20241003BHJP
   F01D 17/00 20060101ALI20241003BHJP
   F02C 6/12 20060101ALI20241003BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20241003BHJP
   B63H 21/14 20060101ALI20241003BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F01K23/10 Q
F01K25/10 P
F01K23/02 P
F01D17/00 B
F01D17/00 C
F01D17/00 P
F02C6/12
F01N5/02 A
B63H21/14
B63H21/38 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056219
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000175272
【氏名又は名称】三浦工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126000
【弁理士】
【氏名又は名称】岩池 満
(74)【代理人】
【識別番号】100145713
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 竜太
(72)【発明者】
【氏名】真鍋 敦行
(72)【発明者】
【氏名】安部 元
【テーマコード(参考)】
3G071
3G081
【Fターム(参考)】
3G071AB01
3G071BA10
3G071FA06
3G071HA05
3G081BA08
3G081BA18
3G081BA20
3G081BB04
3G081BC03
3G081BC07
3G081BD10
3G081DA14
3G081DA30
(57)【要約】
【課題】船舶の内燃機関からの排ガスを排ガスエコノマイザの熱源流体として利用しつつ、有機ランキンサイクル発電システムの熱源流体として利用する場合に、排ガスからの熱回収効率を向上させる。
【解決手段】船舶用発電システム1であって、作動媒体Rを循環させる循環回路LCと、循環ポンプ22と、排気タービン66からの排ガスE2で作動媒体Rを加熱するメイン加熱器12と、膨張機16と、冷却器20と、発電機18と、作動媒体Rの流量を調節する流量調節手段40と、を備える。メイン加熱器12で利用後の排ガスE2は、排ガスエコノマイザ68の熱源流体として利用される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船体の推進力を得る内燃機関と、前記内燃機関に燃料を供給する燃料供給手段と、前記内燃機関に過給空気を供給する過給機と、前記過給機に連結され、前記内燃機関からの排ガスにより回転される排気タービンと、前記排気タービンからの排ガスを用いて蒸気を生成する排ガスエコノマイザと、を備える船舶に用いられる発電システムであって、
水よりも低沸点の作動媒体を循環させる循環回路と、
作動媒体を前記循環回路内に流通させる循環ポンプと、
前記循環ポンプからの作動媒体を熱源流体により加熱するメイン加熱器と、
前記メイン加熱器で加熱後の作動媒体の膨張エネルギーにより回転される膨張機と、
前記膨張機を通過後の作動媒体を冷却用流体により冷却する冷却器と、
前記膨張機に連結され、前記膨張機の回転により駆動される発電機と、を備え、
前記メイン加熱器は、前記排気タービンからの排ガスを熱源流体として利用し、利用後の排ガスを前記排ガスエコノマイザの熱源流体として排出する船舶用発電システム。
【請求項2】
前記循環ポンプから供給される作動媒体の流量を調節する流量調節手段と、
前記メイン加熱器から前記排ガスエコノマイザに向けて排出される排ガスの温度を検知する温度検知手段と、
発電システムの運転を制御する制御手段と、を備え、
前記制御手段は、前記温度検知手段の検知温度が、目標排気温度になるように前記流量調節手段を制御する、請求項1に記載の船舶用発電システム。
【請求項3】
前記目標排気温度は、船内蒸気利用設備における必要蒸気量に応じて設定される、請求項2に記載の船舶用発電システム。
【請求項4】
前記過給機からの過給空気を熱源流体として、前記循環ポンプからの作動媒体を加熱するサブ加熱器を備え、
前記メイン加熱器は、前記排気タービンからの排ガスを熱源流体として、前記サブ加熱器で加熱後の作動媒体を加熱する、請求項1から3のいずれかに記載の船舶用発電システム。
【請求項5】
前記流量調節手段は、前記循環ポンプの駆動モータの回転数を制御可能なインバータ装置であり、
前記制御手段は、前記インバータ装置を介して前記駆動モータの回転数を制御することにより、作動媒体の流量を調節する、請求項2または3に記載の船舶用発電システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用発電システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、有機ランキンサイクルを利用した船舶用発電システムが知られている。例えば、特許文献1には、船舶のディーゼルエンジン(推進用主機)から排出される排ガスから熱回収する第1排熱回収器1(排ガスエコノマイザ)と、ディーゼルエンジンに設けられた過給機の空気冷却器3から熱回収する第2排熱回収器5と、これら排熱回収器1,5から排熱を受け取る熱媒が循環する熱媒経路7と、熱媒経路7の熱媒から熱を受け取る有機流体経路9と、を備える排熱回収発電装置10が開示されている。この排熱回収発電装置10は、有機流体経路9に設けられた単一の蒸発器60にて、熱媒経路7を流通する熱媒からの入熱で有機流体を蒸発し、有機流体ガスでタービン62を回転駆動させることにより、発電機68で発電させる。
【0003】
また、特許文献2には、水より低沸点の作動媒体が循環する循環流路10に、作動媒体ポンプ15の吐出側から順に蒸発器11および過熱器12が設けられた発電装置が開示されている。この発電装置は、蒸気や温水等の加熱媒体を過熱器12および蒸発器11の順に流通させて、作動媒体を蒸発させつつ過熱し、作動媒体ガスでスクリュ膨張機13を回転駆動させることにより、発電機18で発電させる。また、発電装置は、過熱器12の出口側での過熱度が所定の目標値になるように作動媒体ポンプ15の回転数を制御するポンプ制御手段を備え、蒸発器11の出口側での作動媒体の温度が飽和温度未満である場合に、過熱度に対する所定の目標値を上げることで、作動媒体の循環流量を低減させる制御を行う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-149332号公報
【特許文献2】特開2014-47632号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のシステムは、圧縮空気および排ガスに含まれる排熱を一旦熱媒に吸収させる構成であるため、熱回収用に少なくとも3つの熱交換器(1,5,60)と熱媒循環ポンプが必要である。また、熱交換器(1,5)に流入させる圧縮空気や排ガスの流量を調節するために、複数のバルブも必要であることから、据付工事を含む設備費用が高額になりやすい。そこで、特許文献2のシステムのように、熱回収用に2つの熱交換器(11,12)を用いて、それぞれに圧縮空気および排ガスを流通させると共に、これらの熱源流体の流量を調節しないように構成することが考えられる。
【0006】
ところで、多くの商用船舶では、ディーゼルエンジンの補機として排ガスエコノマイザを搭載しており、排ガスを熱源流体として給水から蒸気を発生させている。この蒸気は、エンジンの主要な燃料である重油の予熱や、船員の船内生活のために活用されているが、航行中と停泊中では使用量が異なる。つまり、排ガスエコノマイザのみでは、熱回収効率を高めるには限界がある。
【0007】
そこで、本発明は、船舶の内燃機関からの排ガスを排ガスエコノマイザの熱源流体として利用しつつ、有機ランキンサイクル発電システムの熱源流体として利用する場合に、排ガスからの熱回収効率を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の船舶用発電システムは、船体の推進力を得る内燃機関と、前記内燃機関に燃料を供給する燃料供給手段と、前記内燃機関に過給空気を供給する過給機と、前記過給機に連結され、前記内燃機関からの排ガスにより回転される排気タービンと、前記排気タービンからの排ガスを用いて蒸気を生成する排ガスエコノマイザと、を備える船舶に用いられる船舶用発電システムであって、水よりも低沸点の作動媒体を循環させる循環回路と、作動媒体を前記循環回路内に流通させる循環ポンプと、前記循環ポンプからの作動媒体を熱源流体により加熱するメイン加熱器と、前記メイン加熱器で加熱後の作動媒体の膨張エネルギーにより回転される膨張機と、前記膨張機を通過後の作動媒体を冷却用流体により冷却する冷却器と、前記膨張機に連結され、前記膨張機の回転により駆動される発電機と、を備え、前記メイン加熱器は、前記排気タービンからの排ガスを熱源流体として利用し、利用後の排ガスを前記排ガスエコノマイザの熱源流体として排出する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、船舶の内燃機関からの排ガスを排ガスエコノマイザの熱源流体として利用しつつ、有機ランキンサイクル発電システムの熱源流体として利用する場合に、排ガスからの熱回収効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態の船舶用発電システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態の船舶用発電システム1の概略を示す図である。本実施形態の船舶用発電システム1は、船舶100の排熱を用いて、有機ランキンサイクル(ORC)により発電するシステムであり、内燃機関60の稼働に伴う過給空気および排ガスを熱源流体として利用する。なお、ORC発電システムは、熱源流体系統と作動媒体系統の2つの熱サイクルを利用して発電することから、バイナリー発電システムともいわれる。
【0012】
1.船舶の主機および補機の構成
本実施形態の船舶100は、例えばLNG(液化天然ガス)の運搬船であって、船体の推進力を得る内燃機関60と、内燃機関60に燃料F1,F2を供給する燃料供給手段62と、内燃機関60に過給空気A2を供給する過給機64と、過給機64に連結され、内燃機関60からの排ガスE1により回転される排気タービン66と、排気タービン66からの排ガスE2を用いて蒸気Sを生成する排ガスエコノマイザ68と、を備える。
【0013】
内燃機関60は、主機と呼ばれる2サイクルのディーゼルエンジンであり、ベンチュリーミキサー72と、排気チャンバー74と、を備えている。また、内燃機関60は、燃料種として重油に加えて積載貨物であるLNGの一部も利用可能となっており、燃料供給手段62は、LNGタンクおよび気化器を有する第1燃料供給手段62Aと、重油タンクおよび予熱器を有する第2燃料供給手段62Bと、から構成されている。第1燃料供給手段62Aは、第1燃料ラインLF1を介してベンチュリーミキサー72の吸入部と接続されている。第2燃料供給手段62Bは、第2燃料ラインLF2を介してベンチュリーミキサー72の吸入部と接続されている。なお、図中では、LNGを符号F1、重油を符号F2で表示している。
【0014】
内燃機関60は、船舶100の航行状況等に応じて、3つの燃焼モードの切り替えが行われる。具体的には、第1の燃焼モードは、ガス燃料F1であるLNGを単一供給するLNG専焼モードである。第2の燃焼モードは、油燃料F2である重油およびガス燃料F1であるLNGを同時供給するLNG・重油混焼モードである。第3の燃焼モードは、油燃料F2である重油を単一供給する重油専焼モードである。
【0015】
過給機64は、排気タービン66の作動により、船外からの空気A1を吸入すると共に、この空気A1を圧縮して過給空気A2を生成する機器である。過給機64の吸入部は、吸気ラインLA3を介して図示しないエアフィルタと接続されている。過給機64の吐出部は、第1送気ラインLA1を介してインタークーラー70の高温側流路の入口部と接続されている。
【0016】
インタークーラー70は、冷却水W1との熱交換によって過給空気A2に含まれる圧縮熱を除去する熱交換器である。インタークーラー70の高温側流路の出口部は、第2送気ラインLA2を介してベンチュリーミキサー72の入口部と接続されている。また、インタークーラー70の低温側流路には、航行中の海域から汲み上げた海水、あるいは船内のセントラル冷却設備に循環させている清水を、冷却水W1として流入出させるための第1冷却水ラインLW1が接続されている。
【0017】
ベンチュリーミキサー72は、過給空気A2を駆動流体として、空気流のベンチュリー効果を利用して燃料F1,F2の吸入を行い、混合気を生成する機器である。生成された混合気は、内燃機関60の燃焼室に供給される。排気チャンバー74は、燃焼室から連続的に流出する燃焼ガスの運動エネルギーを利用して混合気の充填効率を高める機器である。内燃機関60の稼働中、排気チャンバー74に流入した燃焼ガスは、チャンバー内で膨張しながら排ガスE1として排出される。排気チャンバー74の出口部は、第1排ガスラインLE1を介して排気タービン66の入口部と接続されている。
【0018】
排気タービン66は、排気チャンバー74から排出される排ガスE1の熱エネルギーの一部を回収し、過給機64を駆動させる機器である。排気タービン66の内部では、排ガスE1の膨張エネルギーが運動エネルギーに変換され、羽根車の回転軸を駆動させる。羽根車の回転軸は、カップリング等で連結された過給機64の回転軸を従動させる。排気タービン66の出口部は、第2排ガスラインLE2を介して排ガスエコノマイザ68のシェル入口部と接続されている。
【0019】
本実施形態の排ガスエコノマイザ68は、排気タービン66を通過した排ガスE2の持つ熱エネルギーを利用する蒸気発生装置の一種であり、図示しない気水分離ドラムと共に排ガスボイラを構成している。排ガスエコノマイザ68は、排ガスE2が流通するシェルの内部に多数の蒸気管(伝熱管)が配置されている。各蒸気管の一側は、給水W3を分配するための給水ヘッダ(管寄せ)と連結され、各蒸気管の他側は、蒸気Sを集合するための蒸気ヘッダ(管寄せ)と連結されている。給水ヘッダには、気水分離ドラム内部の貯留水を給水W3として導くための給水ラインLW3が接続されている。一方、蒸気ヘッダには、発生した蒸気Sを再び気水分離ドラムに戻すための蒸気ラインLSが接続されている。気水分離ドラムで分離後の蒸気Sは、重油の予熱等に利用される。排ガスエコノマイザ68のシェル出口部は、第3排ガスラインLE3を介して船舶100の煙突と接続されており、熱回収後の排ガスE3は、煙突から船外に放出される。
【0020】
2.船舶用発電システムの構成
本実施形態の船舶用発電システム1は、循環ポンプ22、第1加熱器10(サブ加熱器)、第2加熱器12(メイン加熱器)、膨張機16、および冷却器20を含む。これらの機器は、上述の順に作動媒体Rの循環回路LCにより環状に接続されている。この循環回路LCは、船内で水平方向および鉛直方向に広範囲にわたって敷設されるため、作動媒体Rの輸送管路ということもできる。また、船舶用発電システム1は、システムの運転を制御する制御手段30を備える。
【0021】
循環回路LCを循環する作動媒体Rとして、水よりも沸点が低い高分子有機化合物が用いられる。作動媒体Rは、例えばHFC-245fa(化学名:1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1気圧における沸点:15.3℃)等のフロン系媒体である。また、イソペンタン(1気圧における沸点:27.8℃)や、ペンタン(1気圧における沸点:36.1℃)等のノンフロン系媒体用いてもよい。なお、作動媒体Rには、高分子有機化合物よりも高沸点の潤滑油が混合されている。
【0022】
循環ポンプ22は、潤滑油を含む作動媒体Rを循環回路LC内に流通させるための機器であり、流量調節手段40により駆動される。本実施形態において、流量調節手段40は、循環ポンプ22の駆動モータの回転数を制御可能なインバータ装置である。駆動モータは、インバータ装置の可変電圧可変周波数制御機能を利用して回転数が調整される。
【0023】
第1加熱器10は、循環ポンプ22から送出された作動媒体R(媒体液R)を加熱する熱交換器である。第1加熱器10は、熱回収量を補完するためのサブ加熱器の位置付けである。第1加熱器10の高温側流路は、第1送気ラインLA1の途中に接続されており、過給機64からの過給空気A2を熱源流体として、低温側流路を流通する作動媒体Rを加熱する。後述するように、第1加熱器10は、循環ポンプ22から供給される作動媒体Rの流量が調節されることにより蒸発器として作動する。すなわち、第1加熱器10の低温側流路の入口部から流入した媒体液は、過給空気A2からの入熱によって飽和蒸気(湿り蒸気)となり、出口部から流出するまでに過熱蒸気となる。
【0024】
第2加熱器12は、第1加熱器10により加熱された後の作動媒体R(媒体ガスR)を加熱する熱交換器である。第2加熱器12は、所要の熱回収量を確保するためのメイン加熱器の位置付けである。第2加熱器12の高温側流路は、第2排ガスラインLE2の途中に接続されており、排気タービン66からの排ガスE2を熱源流体として、低温側流路を流通する作動媒体Rを加熱する。後述するように、第2加熱器12は、循環ポンプ22から供給される作動媒体Rの流量が調節されることにより過熱器として作動する。すなわち、第2加熱器12の低温側流路の入口部から流入した過熱蒸気は、排ガスE3からの入熱によってさらに過熱され、出口部から流出するまでにより高温の過熱蒸気となる。
【0025】
膨張機16は、過熱状態にある作動媒体R(媒体ガスR)の膨張エネルギーを運動エネルギーに変換し、回転軸を駆動させる機器である。膨張機16の本体は、例えばツインスクリュ式の膨張機構を有する。スクリュロータの回転軸は、カップリング等で連結された発電機18の回転軸を従動させる。本実施形態の膨張機16は、給油式であり、作動媒体Rを膨張空間に供給する第1供給口と、潤滑油の一部を膨張空間に供給する第2供給口と、潤滑油の残部を軸受部に供給する第3供給口と、膨張空間を通過した作動媒体Rを排出する第1排出口と、膨張空間を通過した潤滑油を排出する第2排出口と、軸受部を通過した潤滑油を排出する第3排出口と、を有している(それぞれ図示せず)。
【0026】
膨張機16の上流側の循環回路LCには、油分離器14が設けられている。油分離器14は、第2加熱器12から送給される作動媒体Rから潤滑油を分離する機器である。油分離器14へは、上流側から過熱蒸気と潤滑油が混相流の状態で流入する一方で、油分離器14からは、下流側へ向けて過熱蒸気と潤滑油が別個に流出する。油分離器14には、潤滑油のみを取り出す給油ラインLOが接続されている。分離後の過熱蒸気は、循環回路LCを流通しながら第1供給口から膨張空間に供給される。分離後の潤滑油は、給油ラインLOを通じて第2供給口から膨張空間に供給されると共に、第3供給口から軸受部に供給される。第1排出口から排出される膨張蒸気と、第2,第3排出口から排出される潤滑油は、膨張機16の出口部に設けられた混合室にて再混合される。
【0027】
冷却器20は、膨張機16で温度降下し、かつ体積増加した作動媒体R(媒体ガスR)を凝縮させる熱交換器である。冷却器20の高温側流路は、循環回路LCの途中に接続されており、冷却水W2を冷却用流体として作動媒体Rを冷却する。冷却器20の低温側流路には、航行中の海域から汲み上げた海水、あるいは船内のセントラル冷却設備に循環させている清水を、冷却水W2として流入出させるための第2冷却水ラインLW2が接続されている。なお、第2冷却水ラインLW2には、必要に応じて冷却水ポンプが設けられていてもよい。
【0028】
発電機18は、膨張機16と連結されており、膨張空間内で作動媒体Rが膨張してスクリュロータが回転されることにより駆動される。本実施形態の発電機18は、例えば永久磁石同期発電機である。この永久磁石同期発電機は、スクリュロータの一方に接続された回転軸を有しており、この回転軸がスクリュロータの回転に伴って回転することにより電力を発生させる。
【0029】
第2加熱器12の高温側流路の出口部付近には、温度検知手段44が設けられている。温度検知手段44は、第2加熱器12から排ガスエコノマイザ68に向けて排出される排ガスE2の温度を検知するセンサである。温度検知手段44の検知信号は、後述する制御手段30に入力される。
【0030】
制御手段30は、循環流量制御部31、負荷率情報取得部32、および燃料種情報取得部33を備える。循環流量制御部31は、第2加熱器12での熱回収量を変更させるように、流量調節手段40(インバータ装置)を制御する。負荷率情報取得部32は、内燃機関60の負荷率に関する情報を取得する。負荷率は、例えばディーゼルエンジンの最大回転数を100%として特定される。燃料種情報取得部33は、内燃機関60に供給される燃料種に関する情報を取得する。具体的には、燃料種情報取得部33は、内燃機関60の燃焼モード情報(LNG専焼モード、LNG・重油混焼モード、重油専焼モード)を利用して燃料種を特定する。
【0031】
ここで、熱回収および発電の仕組みについて説明する。作動媒体Rは、循環ポンプ22が駆動されることにより昇圧され、循環回路LCを図1に示す矢印の方向に流れる。作動媒体Rは、第1加熱器10および第2加熱器12において、上述した熱源流体(過給空気A2,排ガスE2)からの熱回収により加熱されて過熱蒸気となる。高温・高圧の過熱蒸気となった作動媒体Rは、膨張機16のスクリュロータを回転させて発電機18を駆動する。スクリュロータを通過後に低温・低圧の膨張蒸気となった作動媒体Rは、冷却器20で冷却されて凝縮液となる。凝縮液となった作動媒体Rは、循環ポンプ22によって第1加熱器10および第2加熱器12に再度送り込まれる。このように、作動媒体Rが循環回路LCを循環しながら状態変化を繰り返すことで、熱エネルギーを電気エネルギーに変換させることが可能になる。
【0032】
3.作動媒体の循環流量制御
循環流量制御部31は、循環ポンプ22の駆動中、温度検知手段44の検知温度が、目標排気温度になるように、流量調節手段40を制御する。具体的には、まず循環流量制御部31は、負荷率情報取得部32により取得された内燃機関60の負荷率に関する第1情報、および燃料種情報取得部33により取得された燃料種に関する第2情報を参照し、船内蒸気利用設備における必要蒸気量を推定する。制御手段30のメモリには、第1情報と必要蒸気量の関係、および第2情報と必要蒸気量の関係が格納されている。
【0033】
例えば、内燃機関60が高負荷率で稼働しているときは、重油の予熱や船内生活のためにより多くの蒸気Sが必要であると判断する。また、例えば、内燃機関60が低負荷率で稼働しているときは、あまり蒸気Sが必要でないと判断する。
【0034】
必要蒸気量を推定後、循環流量制御部31は、第2加熱器12から排ガスエコノマイザ68に向けて排出される排ガスE2の目標排気温度を設定する。船内蒸気利用設備において多量の蒸気Sを必要とする場合には、排ガスエコノマイザ68への供給熱量を増加させるべく、上位の目標排気温度が設定される。逆に、船内蒸気利用設備において少量の蒸気Sしか必要としない場合には、排ガスエコノマイザ68への供給熱量を減少させるべく、下位の目標排気温度が設定される。そして、循環流量制御部31は、温度検知手段44の検知温度が設定された目標排気温度になるように、インバータ装置を介して循環ポンプ22の駆動モータを制御する。これにより、第2加熱器12では、必要蒸気量に応じて排ガスE2からの熱回収量が増減されつつ、作動媒体Rが過熱蒸気の状態で流出することになる。
【0035】
循環流量制御部31は、インバータ装置に対し、例えばPIDアルゴリズムを用いて駆動モータに出力する駆動周波数を指示する。具体的には、温度検知手段44の検知温度(測定値:PV)と目標排気温度(目標値:SV)の偏差がゼロになるように、駆動周波数(操作量:MV)を演算し、これをインバータ装置に指示信号として出力する。そして、インバータ装置は、入力された指示信号に対応した駆動周波数にて駆動モータを制御する。これにより、循環ポンプ22の回転数が調整される。
【0036】
以上説明した実施形態の船舶用発電システムによれば、以下の効果を奏する。
【0037】
(1)船体の推進力を得る内燃機関60と、内燃機関60に燃料F1,F2を供給する燃料供給手段62と、内燃機関60に過給空気A2を供給する過給機64と、過給機64に連結され、内燃機関60からの排ガスE1により回転される排気タービン66と、排気タービン66からの排ガスE2を用いて蒸気Sを生成する排ガスエコノマイザ68と、を備える船舶に用いられる発電システム1であって、水よりも低沸点の作動媒体Rを循環させる循環回路LCと、作動媒体Rを循環回路LC内に流通させる循環ポンプ22と、循環ポンプ22からの作動媒体Rを熱源流体により加熱する第2加熱器12(メイン加熱器)と、第2加熱器12で加熱後の作動媒体Rの膨張エネルギーにより回転される膨張機16と、膨張機16を通過後の作動媒体Rを冷却用流体により冷却する冷却器20と、膨張機16に連結され、膨張機16の回転により駆動される発電機18と、を備え、第2加熱器12は、排気タービン66からの排ガスE2を熱源流体として利用し、利用後の排ガスE2を排ガスエコノマイザ68の熱源流体として排出する。
【0038】
内燃機関60で発生した排ガスE2の熱量のうち、一部の熱量が第2加熱器12(メイン加熱器)で利用された後、残部の熱量が排ガスエコノマイザ68で利用される。本構成によれば、第2加熱器12に流入する排ガス温度が内燃機関60の負荷率に応じた範囲で安定するので、排ガスE2からの熱回収効率を向上させることができる。
【0039】
(2)上記(1)の船舶用発電システム1において、循環ポンプ22から供給される作動媒体Rの流量を調節する流量調節手段40と、第2加熱器12(メイン加熱器)から排ガスエコノマイザ68に向けて排出される排ガスE2の温度を検知する温度検知手段44と、発電システムの運転を制御する制御手段30と、を備え、制御手段30は、温度検知手段44の検知温度が目標排気温度になるように、流量調節手段40を制御する。
【0040】
第2加熱器12(メイン加熱器)から流出する排ガス温度を目標排気温度に調節するので、目標排気温度の高低よって第2加熱器12で利用する熱量と排ガスエコノマイザ68で利用する熱量の比率が変化する。これにより、蒸気発生量と発電量のバランスを調整することができる。
【0041】
(3)上記(2)の船舶用発電システム1において、目標排気温度は、船内蒸気利用設備における必要蒸気量に応じて設定される。
【0042】
船内蒸気利用設備において多量の蒸気Sを必要とする場合には、目標排気温度を上位に設定し、作動媒体Rの循環流量を減らすことで第2加熱器12での熱回収量を減らすようにする。この運転状態では、排ガスエコノマイザ68に流入する排ガス温度が上昇するので蒸気発生量が増加する一方、システムの発電量は減少する(蒸気偏重運転)。逆に、船内蒸気利用設備において少量の蒸気Sしか必要としない場合には、目標排気温度を下位に設定し、作動媒体Rの循環流量を増やすことで第2加熱器12での熱回収量を増やすようにする。この運転状態では、排ガスエコノマイザ68に流入する排ガス温度が下降するので蒸気発生量が減少する一方、システムの発電量は増加する(電力偏重運転)。これにより、必要蒸気量に蒸気発生量を追従させつつ、余剰の排熱を効率よく発電に利用することができる。
【0043】
(4)上記(1)から(3)の船舶用発電システム1において、過給機64からの過給空気A2を熱源流体として、循環ポンプ22からの作動媒体Rを加熱する第1加熱器10(サブ加熱器)を備え、第2加熱器12(メイン加熱器)は、排気タービン66からの排ガスE2を熱源流体として、第1加熱器10で加熱後の作動媒体Rを加熱する。
【0044】
第1加熱器10(サブ加熱器)での熱回収を追加することにより、システムの総入熱量が増える。これにより、作動媒体Rの循環流量を増やして発電量を増大化することができる。
【0045】
(5)上記(2)または(3)の船舶用発電システム1において、流量調節手段40は、循環ポンプ22の駆動モータの回転数を制御可能なインバータ装置であり、制御手段30は、インバータ装置を介して駆動モータの回転数を制御することにより、作動媒体Rの流量を調節する。
【0046】
インバータ装置の可変電圧可変周波数制御機能を利用して、循環ポンプ22の駆動モータの回転数を制御することで、作動媒体の流量を柔軟にかつ精緻に調節することができる。
【符号の説明】
【0047】
1 船舶用発電システム
12 第2加熱器
16 膨張機
18 発電機
20 冷却器
22 循環ポンプ
40 流量調節手段
66 排気タービン
68 排ガスエコノマイザ
E2 排ガス
R 作動媒体
LC 循環回路
図1