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  • 特開-鋳型および鋳型の再利用方法 図1
  • 特開-鋳型および鋳型の再利用方法 図2
  • 特開-鋳型および鋳型の再利用方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143503
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】鋳型および鋳型の再利用方法
(51)【国際特許分類】
   B22C 9/02 20060101AFI20241003BHJP
   B22C 5/04 20060101ALI20241003BHJP
   B22C 1/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
B22C9/02 103D
B22C5/04
B22C1/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056224
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】内田 龍貴
(72)【発明者】
【氏名】水田 和甫
【テーマコード(参考)】
4E092
【Fターム(参考)】
4E092AA01
4E092AA04
4E092AA47
(57)【要約】
【課題】鋳型の再利用が環境へ与える負荷を低減する。
【解決手段】鋳型は、セラミックス粒子とアルカリ分との混合物からなる無焼成セラミックス(10)で形成されている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス粒子とアルカリ分との混合物からなる無焼成セラミックスで形成されていることを特徴とする鋳型。
【請求項2】
請求項1に記載の鋳型を解砕して、粒子表面が再活性化されたセラミックス粒子とアルカリ分とに分離する解砕ステップと、
前記セラミックス粒子と前記アルカリ分とを水溶液で混合したアルカリ混合物を得る混錬ステップと、
前記混錬ステップで混錬された前記アルカリ混合物を低温加熱して、前記無焼成セラミックスを得る取得ステップと、
を有していることを特徴とする鋳型の再利用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、鋳型および鋳型の再利用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バインダに水ガラスを用いた中子砂の再利用方法が開示されている。この再利用方法は、中子を300℃から550℃までの間の温度で加熱する加熱工程を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-15813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、環境への負荷低減の観点から、そのような高温で加熱する熱処理を用いない鋳型の再利用方法が望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る鋳型は、セラミックス粒子とアルカリ分との混合物からなる無焼成セラミックスで形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、鋳型を再利用する際に環境へ与える負荷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本開示の一実施形態に係る鋳型を模式的に示した図である。
図2】(a)本開示の一実施形態に係る鋳型に用いられる無焼成セラミックを模式的に示した図である。(b)複数のセラミック粒子の結合の説明に用いる図である。
図3】本開示の一実施形態に係る鋳型の再利用方法を例示したフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本開示の一実施形態に係る鋳型の一例を模式的に示した図である。図1に示す鋳型1は、中子2および主型3を備えている。中子2および主型3は、無焼成セラミックで形成されている。中子2は、主型3の中へ配置されている。中子2と主型3との間には、溶融した材料を流し入れるための隙間4が設けられている。
【0009】
図2の(a)は、本開示の一実施形態に係る鋳型に用いられる無焼成セラミックを模式的に示した図である。図2の(a)に示す無焼成セラミックス10は、複数のセラミック粒子11が結合して形成されている。ここで、セラミック粒子11としては、シリカ(SiO)、アルミナ(Al)、酸化鉄(Fe)、酸化カルシウム(CaO)、酸化マグネシウム(MgO)、酸化ナトリウム(NaO)、チタニア(TiO)、酸化カリウム(KO)、ジルコニア(ZrO)およびそれらの任意の組み合わせの複合酸化物、ならびに炭化ケイ素(SiC)が例示される。セラミック粒子11は、メカノケミカル処理により粒子表面が活性化されている。
【0010】
図2の(b)は、複数のセラミック粒子の結合の説明に用いる図である。図2の(b)に示すセラミック粒子11は、その粒子表面に活性表面31が形成されている。複数のセラミック粒子11は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ分20が溶解したアルカリ水溶液に混合され、100℃以下の温度で加熱することで粒子同士が結合する。図2の(a)では、複数のセラミック粒子11の活性表面31が結合することにより結合部30が形成されている。複数のセラミック粒子11の活性表面31のうち、結合部30が形成されなかった部位には、アルカリ分20が付着している。
図1に示した鋳型1は、図2に示したアルカリ分20が溶解したアルカリ水溶液で形成される無焼成セラミックス10で形成されている。
【0011】
図3は、本開示の一実施形態に係る鋳型の再利用方法を例示したフローチャートである。図3に示すように、本開示の一実施形態に係る鋳型1の再利用方法は、解砕ステップS100、pH調整ステップS200、型入れステップS300、固化ステップS400、鋳造ステップS500、および回収ステップS600を有している。
【0012】
図3に示す鋳型1の再利用方法では、解砕ステップS100から回収ステップS600までの各ステップを繰り返し実行する。以下では、鋳造ステップS500から順に説明する。
鋳造ステップS500では、鋳型1を用いて鋳物が鋳造される。鋳物の鋳造に使用された鋳型1は、鋳型1から鋳物を取り出すときに破壊される。
回収ステップS600では、鋳造ステップS500において破壊された鋳型1の欠片を回収する。
【0013】
解砕ステップS100では、回収ステップS600にて回収された鋳型1の欠片を粒状態になるまで解砕し、セラミック粒子11の粒子表面からアルカリ分20を剥離させる。これにより、セラミック粒子11の粒子表面が再活性化され、活性表面31が形成される。
【0014】
pH調整ステップS200は、混錬ステップの一例である。pH調整ステップS200では、鋳型1のpH調整のため、アルカリ性の水溶液のpHを適切に調整する。pH調整ステップS200では、解砕ステップS100で解砕された鋳型1に、解砕された鋳型1の質量に合わせた水またはアルカリ溶液を加えることにより、混合物の質量とpHが調整される。解砕ステップS100においてセラミック粒子11の粒子表面から剥離されたアルカリ分20を水溶液に溶解させることにより、混合物のpHを調整することにしてもよい。鋳型1は、その表面のpHが鋳型1の強度に影響を与える可能性がある。例えば、鋳型1のpHを所定値よりも高くすることにより、鋳型1の強度が向上する可能性がある。
【0015】
型入れステップS300では、pH調整ステップS200で鋳型1から、粒子表面を再活性化させた無焼成セラミックス10のセラミック粒子11と分解されたアルカリ分を得て、水またはアルカリ水溶液で混合されたアルカリ混合物を鋳型1の金型に入れる。鋳型1の金型とは、無焼成セラミックス10を用いて、中子2および主型3を鋳造するための金型である。
【0016】
固化ステップS400では、型入れステップS300においてセラミック粒子11を入れた鋳型1の金型を100℃以下の温度で加熱し、無焼成セラミックス10を固化させる。これにより、無焼成セラミックス10を再利用した鋳型1が形成される。
鋳造ステップS500では、固化ステップS400において形成された鋳型1を用いて新たな鋳物が鋳造される。
【0017】
〔まとめ〕
本開示の一態様に係る鋳型は、無焼成セラミックスで形成されている。
本開示では、無焼成セラミックスで鋳型を形成することにより、従来よりも低温で鋳型を再利用することができる。その結果、鋳型を再利用する際に環境へ与える負荷を低減することができる。
【0018】
本開示の一態様に係る鋳型の再利用方法は、鋳型を解砕して、粒子表面が再活性化されたセラミックス粒子とアルカリ分とに分離する解砕ステップと、前記セラミックス粒子と前記アルカリ分とを水溶液で混合したアルカリ混合物を得る混錬ステップと、前記混錬ステップで混錬された前記アルカリ混合物を低温加熱して、前記無焼成セラミックスを得る取得ステップと、を有している。
アルカリ分を除去するための工程の中に加熱する加熱処理が含まれていないため、鋳型を再利用する際のエネルギ消費が少なく、環境へ与える負荷を低減することができる。
【0019】
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0020】
1 鋳型
10 無焼成セラミックス
31 活性表面
S100 解砕ステップ
S200 pH調整ステップ(混錬ステップ)
S300 型入れステップ
S400 固化ステップ

図1
図2
図3