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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143508
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】車両制御システム、及び車両
(51)【国際特許分類】
   B60L 15/20 20060101AFI20241003BHJP
   B60L 7/14 20060101ALI20241003BHJP
   B62M 7/00 20100101ALI20241003BHJP
   B62J 45/00 20200101ALI20241003BHJP
【FI】
B60L15/20 Z
B60L7/14
B62M7/00
B62J45/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056231
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005326
【氏名又は名称】本田技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002505
【氏名又は名称】弁理士法人航栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】中河原 正樹
(72)【発明者】
【氏名】能勢 翼
【テーマコード(参考)】
5H125
【Fターム(参考)】
5H125AA01
5H125AB03
5H125CB05
5H125EE41
5H125EE42
5H125EE52
5H125EE58
(57)【要約】
【課題】乗員からの駆動指示に応じて速やかに車両を加速させることを可能とし、車両における操作性を向上させる。
【解決手段】駆動源としてのモータ311と、モータ311によって駆動される後輪RWと、後輪RWに摩擦制動力を発生させることが可能なRrブレーキユニット62と、を備える自動二輪車1を制御する制御システムCTRであって、モータ311は、後輪RWに駆動力又は回生制動力を発生させることが可能であり、制御システムCTRは、モータ311及びRrブレーキユニット62を制御可能に構成され、自動二輪車1の運転者RDからの駆動指示があった場合に、後輪RWに回生制動力及び/又は摩擦制動力を発生させてから駆動力を発生させる。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動源としてのモータ(311)と、前記モータによって駆動される駆動輪(RW)と、前記駆動輪に摩擦制動力を発生させることが可能な制動装置(62)と、を備える車両(1)を制御する車両制御システム(ECU、65、70、CTR)であって、
前記モータは、前記駆動輪に駆動力又は回生制動力を発生させることが可能であり、
前記車両制御システムは、
前記モータ及び前記制動装置を制御可能に構成され、
前記車両の乗員からの駆動指示があった場合に、前記回生制動力及び/又は前記摩擦制動力を発生させてから前記駆動力を発生させる、
車両制御システム。
【請求項2】
請求項1に記載の車両制御システムであって、
前記車両制御システムは、
前記駆動指示があった場合に、前記回生制動力及び前記摩擦制動力を発生させるとともに、前記回生制動力及び前記摩擦制動力のうち前記回生制動力から先に発生させる、
車両制御システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の車両制御システムであって、
前記車両は、前記車両の走行速度である車速を検出する車速センサ(Se4)をさらに備え、
前記車両制御システムは、
前記駆動指示があった場合に、前記車速センサによって検出された前記車速が所定値以上であることに基づいて前記回生制動力及び/又は前記摩擦制動力を発生させる、
車両制御システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の車両制御システムであって、
前記車両は、前記車両の走行速度である車速を検出する車速センサ(Se4)をさらに備え、
前記車両制御システムは、
前記駆動指示があった場合に、前記車速センサによって検出された前記車速に基づいて、当該車速の低下量が所定の範囲に収まるように前記回生制動力及び/又は前記摩擦制動力を発生させる、
車両制御システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の車両制御システムであって、
前記車両は、前記車両の走行速度である車速を検出する車速センサ(Se4)をさらに備え、
前記車両制御システムは、
前記駆動指示があった場合に、前記車速センサによって検出された前記車速に基づいて、前記駆動輪に発生させる制動力の目標値となる目標制動力を導出し、
前記目標制動力に基づいて前記回生制動力及び/又は前記摩擦制動力を発生させる、
車両制御システム。
【請求項6】
請求項5に記載の車両制御システムであって、
前記車両制御システムは、前記車速が高いほど大きな前記目標制動力を導出する、
車両制御システム。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の車両制御システムであって、
前記車両は、前記車両のロール角又はロール角速度を検出するセンサ(IMU)をさらに備え、
前記車両制御システムは、
前記センサによって検出された前記ロール角又は前記ロール角速度に基づいて、前記ロール角を取得可能に構成され、
前記駆動指示があった場合に、前記ロール角に基づいて、前記駆動輪に発生させる制動力の目標値となる目標制動力を導出し、
前記目標制動力に基づいて前記回生制動力及び/又は前記摩擦制動力を発生させる、
車両制御システム。
【請求項8】
請求項7に記載の車両制御システムであって、
前記車両制御システムは、前記ロール角が大きいほど小さな前記目標制動力を導出する、
車両制御システム。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の車両制御システムであって、
前記車両は、前記車両のロール角又はロール角速度を検出するセンサ(IMU)をさらに備え、
前記車両制御システムは、
前記センサによって検出された前記ロール角又は前記ロール角速度に基づいて、前記ロール角を取得可能に構成され、
前記駆動指示があった場合に、前記ロール角に基づいて、前記駆動力を発生させる際の前記モータの出力トルクの目標値となる目標駆動トルクを導出するとともに、前記出力トルクが当該目標駆動トルクとなるように前記モータを制御し、
前記目標駆動トルクを導出する際には、前記ロール角が大きいほど小さな前記目標駆動トルクを導出する、
車両制御システム。
【請求項10】
請求項1に記載の車両制御システムであって、
前記車両は、前記車両のロール角又はロール角速度を検出するセンサ(IMU)をさらに備え、
前記車両制御システムは、
前記センサによって検出された前記ロール角又は前記ロール角速度に基づいて、前記ロール角及び前記ロール角速度を取得可能に構成され、
前記駆動指示があった際の前記ロール角及び前記ロール角速度がそれぞれ所定値以下である場合には、前記回生制動力及び前記摩擦制動力のうち前記摩擦制動力のみを発生させる、
車両制御システム。
【請求項11】
駆動源としてのモータ(311)と、前記モータによって駆動される駆動輪(RW)と、前記駆動輪に摩擦制動力を発生させることが可能な制動装置(62)と、車両制御システム(ECU、65、70、CTR)と、を備える車両(1)であって、
前記モータは、前記駆動輪に駆動力又は回生制動力を発生させることが可能であり、
前記車両制御システムは、
前記モータ及び前記制動装置を制御可能に構成され、
前記車両の乗員からの駆動指示があった場合に、前記回生制動力及び/又は前記摩擦制動力を発生させてから前記駆動力を発生させる、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両制御システム、及び車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、電動二輪車がコーナリング中であると判定され且つ所定の移行条件が成立したときに、運転者からの運転指令に応じて電動モータの出力を制御する通常モード、及び電動モータの出力を通常モードに対して異ならせる非通常モードのうち一方のモードから他方のモードへの移行を禁止するようにした技術があった(例えば下記特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許5767701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の従来技術にあっては、乗員からの駆動指示に対して車両を速やかに加速させる点については十分に検討されておらず、この点に改善の余地があった。
【0005】
本発明は、乗員からの駆動指示に応じて車両を速やかに加速させることを可能にし、車両における操作性を向上させることが可能な車両制御システム、及び車両を提供する。そして、延いては交通の安全性を改善して、持続可能な輸送システムの発展に寄与するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、
駆動源としてのモータ(311)と、前記モータによって駆動される駆動輪(RW)と、前記駆動輪に摩擦制動力を発生させることが可能な制動装置(62)と、を備える車両(1)を制御する車両制御システム(ECU、65、70、CTR)であって、
前記モータは、前記駆動輪に駆動力又は回生制動力を発生させることが可能であり、
前記車両制御システムは、
前記モータ及び前記制動装置を制御可能に構成され、
前記車両の乗員からの駆動指示があった場合に、前記回生制動力及び/又は前記摩擦制動力を発生させてから前記駆動力を発生させる、
車両制御システムである。
【0007】
また、本発明の他の一態様は、
駆動源としてのモータ(311)と、前記モータによって駆動される駆動輪(RW)と、前記駆動輪に摩擦制動力を発生させることが可能な制動装置(62)と、車両制御システム(ECU、65、70、CTR)と、を備える車両(1)であって、
前記モータは、前記駆動輪に駆動力又は回生制動力を発生させることが可能であり、
前記車両制御システムは、
前記モータ及び前記制動装置を制御可能に構成され、
前記車両の乗員からの駆動指示があった場合に、前記回生制動力及び/又は前記摩擦制動力を発生させてから前記駆動力を発生させる、
車両である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乗員からの駆動指示に応じて車両を速やかに加速させることを可能にし、車両における操作性を向上させることが可能な車両制御システム、及び車両を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態の自動二輪車1を左側からみた側面図である。
図2】自動二輪車1のハンドル51を上方からみた上面図である。
図3】自動二輪車1の機能的構成の一例を示すブロック図である。
図4】自動二輪車1の動作の一例を示すタイムチャートである。
図5】自動二輪車1の電子制御ユニットECUが実行する処理の一例を示すフローチャートである。
図6図5のステップS4に示した旋回状態判別処理の一例を示すフローチャートである。
図7図5のステップS5に示した立ち上がり時ブレーキ協調制御の一例を示すフローチャート(その1)である。
図8図5のステップS5に示した立ち上がり時ブレーキ協調制御の一例を示すフローチャート(その2)である。
図9図5のステップS5に示した立ち上がり時ブレーキ協調制御の一例を示すフローチャート(その3)である。
図10図5のステップS6に示した倒し込み時ブレーキ協調制御、及び図5のステップS7に示した旋回中ブレーキ協調制御の一例を示すフローチャートである。
図11図5のステップS8に示した直線加速ブレーキ協調制御の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の車両制御システム、及び車両の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。図面は、符号の向きに見るものとする。以下の実施形態は特許請求の範囲に記載の発明を限定するものではなく、実施形態で説明されている特徴の組み合わせのすべてが発明に必須のものとは限らない。実施形態で説明されている複数の特徴のうち2つ以上の特徴が任意に組み合わされてもよい。また、以下では、同一又は類似の要素には同一又は類似の符号を付して、その説明を適宜省略又は簡略化することがある。
【0011】
本明細書等では説明を簡単且つ明確にするために、前後、左右、上下の各方向は、車両の乗員である運転者から見た方向にしたがって記載し、図面には、車両の前方をFr、後方をRr、左方をL、右方をR、上方をU、下方をD、として示す。
【0012】
<車体の構造>
図1に示すように、本発明の車両の一実施形態としての自動二輪車1は、車体フレーム10と、車体フレーム10に装着されて自動二輪車1の少なくとも一部の外面を覆うカウル部材20と、前輪FW及び後輪RWと、車体フレーム10に搭載されたパワーユニット31と、を備える鞍乗型車両である。
【0013】
パワーユニット31は、前輪FWと後輪RWとの間に配置され、車体フレーム10に固定されている。パワーユニット31は、自動二輪車1の駆動源としてのモータ311を備える。
【0014】
モータ311は、後述する動力伝達ユニット40を介して後輪RWと連結され、電力が供給されることによって自動二輪車1を走行させる駆動力を後輪RWへ出力する、いわゆるトラクションモータである。すなわち、自動二輪車1において、後輪RWは、駆動源としてのモータ311によって駆動される駆動輪となっている。
【0015】
また、モータ311は、後輪RW側から入力された運動エネルギーを電気エネルギーに変換するエネルギー回生(以下、「回生発電」とも称する)を行うことで、当該エネルギー回生に伴う制動力(以下、「回生制動力」とも称する)を後輪RWに発生させることもできる。
【0016】
自動二輪車1は、自動二輪車1の駆動源(換言すると動力源)であるパワーユニット31のモータ311で発生した動力を後輪RWに伝達する動力伝達ユニット40を備える。
【0017】
動力伝達ユニット40は、パワーユニット31(例えばモータ311)の出力軸に連結されてパワーユニット31の出力軸と一体に回転するドライブスプロケット41と、後輪RWと一体に同軸回転するドリブンスプロケット42と、ドライブスプロケット41とドリブンスプロケット42とに掛け回されるチェーン43と、を備える。パワーユニット31から出力される回転動力は、ドライブスプロケット41及びチェーン43を介してドリブンスプロケット42に伝達され、後輪RWは、ドリブンスプロケット42に伝達されたパワーユニット31の回転動力によって回転駆動する。
【0018】
自動二輪車1は、後輪RWの左右両側に配置されるとともに前後方向に延在する左右一対のスイングアーム11を備える。左右一対のスイングアーム11は、後端部で後輪RWを支持している。左右一対のスイングアーム11の前端部は、それぞれ車体フレーム10に設けられた不図示のスイングアームピボットに軸支されている。左右一対のスイングアーム11はそれぞれ、スイングアームピボットを支点軸として、上下に回動可能となっている。左右一対のスイングアーム11は、後輪RWを車体フレーム10に連結するための骨組みとしての機能を有すると同時に、後輪RWに入力された衝撃を吸収する緩衝装置の一部としての機能も有する。
【0019】
自動二輪車1は、後輪RWに入力された衝撃を吸収する緩衝装置の一部としての機能する左右一対の不図示のリヤサスペンションを備える。左右一対のリヤサスペンションは、それぞれ上端部が車体フレーム10に連結し、下端部が左右のスイングアーム11に連結する。左右一対のリヤサスペンションは、それぞれ、例えば、円筒形状を有するダンパーユニットと、当該ダンパーユニットを取り囲むように巻回されたコイルスプリングと、を備える。後輪RWに入力された衝撃は、スイングアーム11を介して、リヤサスペンションで減衰される。
【0020】
自動二輪車1は、前輪FWの左右両側に配置される左右一対のフロントフォーク13を備える。左右一対のフロントフォーク13は、下方に向かうにしたがって前方に傾斜して上下方向に延在する円筒形状を有し、下端部で前輪FWを支持している。左右一対のフロントフォーク13は、前輪FWを車体フレーム10に連結するための骨組みとしての機能を有すると同時に、前輪FWに入力された衝撃を吸収する緩衝装置としての機能も有する。前輪FWに入力された衝撃は、フロントフォーク13で減衰される。
【0021】
自動二輪車1は、車体フレーム10に対して回動自在に支持されて左右一対のフロントフォーク13を支持する転舵ユニット50を備える。
【0022】
より具体的に説明すると、転舵ユニット50は、左右方向に延在し前輪FWを転舵する回動自在なバー形状のハンドル51と、左右のフロントフォーク13の上端部同士を連結固定するトップブリッジ52と、トップブリッジ52よりも下方で左右のフロントフォーク13を連結固定するアンダーブラケット53と、を備える。したがって、左右のフロントフォーク13は、トップブリッジ52とアンダーブラケット53とに固定される。
【0023】
転舵ユニット50は、アンダーブラケット53と一体に形成された不図示のステムシャフトを備える。ステムシャフトは、左右のフロントフォーク13の左右方向中間点で、アンダーブラケット53の上面から上方に向かって後方に傾斜して上下方向に延在している。車体フレーム10の前端にはヘッドパイプ10aが設けられており、ステムシャフトは、車体フレーム10のヘッドパイプ10aを挿通して、トップブリッジ52の上面からボルト等の締結部材によって、上端部がトップブリッジ52に固定される。
【0024】
したがって、自動二輪車1の運転者RDがハンドル51を回動させると、転舵ユニット50は、ステムシャフト(車体フレーム10のヘッドパイプ10a)を軸に一体に回動する。このとき、転舵ユニット50のトップブリッジ52及びアンダーブラケット53に固定された左右のフロントフォーク13と、左右のフロントフォーク13の下端部に支持された前輪FWも、ステムシャフト(車体フレーム10のヘッドパイプ10a)を軸に転舵ユニット50と一体に回動する。このようにして、ハンドル51は、前輪FWを転舵する。これにより、自動二輪車1の運転者RDは、走行時にハンドル51を回動することによって前輪FWを転舵して、自動二輪車1を左右方向に旋回させることができる。
【0025】
すなわち、自動二輪車1において、転舵ユニット50は、車体フレーム10に操舵(換言すると転舵)自在に支持される操舵装置となっており、前輪FWは、この転舵ユニット50に回転自在に支持される操舵輪(換言すると転舵輪)となっている。
【0026】
図2も参照して、左右方向に延在するハンドル51の左端部には、左側ハンドルグリップ51aが設けられている。自動二輪車1の運転者RDは、走行時において、左手で左側ハンドルグリップ51aを握持する。左右方向に延在するハンドル51の右端部には、アクセルグリップ51bが設けられている。自動二輪車1の運転者RDは、走行時において、右手でアクセルグリップ51bを握持する。
【0027】
アクセルグリップ51bは、運転者RDからの駆動指示に相当する駆動操作を受け付ける駆動指示入力装置の一例である。アクセルグリップ51bは、左右方向から見て時計回り及び反時計回りに回動可能である。そして、運転者RDが、例えば、右手で握持したアクセルグリップ51bを、右側から見て反時計回りに回動させるほど、自動二輪車1における駆動力を大きくする旨の駆動操作(換言すると駆動指示)となり、これによってモータ311からの出力トルク及び後輪RWに発生する駆動力が増加し得る。一方、運転者RDが、例えば、右手で握持したアクセルグリップ51bを、右側から見て時計回りに回動させるほど、自動二輪車1における駆動力を小さくする旨の駆動操作となり、これによってモータ311からの出力トルク及び後輪RWに発生する駆動力が低下し得る。
【0028】
ハンドル51の右側部分には、運転者RDからの制動指示に相当する制動操作を受け付ける第1制動指示入力装置の一例としてのFrブレーキレバー55が設けられている。Frブレーキレバー55は、自動二輪車1の走行時において、運転者RDが右手をアクセルグリップ51bから離すことなく操作可能なように、アクセルグリップ51bの前方を左右方向に延在するように設けられている。運転者RDによってFrブレーキレバー55が操作されたとき(すなわち制動操作が行われたとき)、前輪FWに設けられた油圧式制動装置であるFrブレーキユニット61(図3を用いて後述)が動作して、前輪FWを制動する。Frブレーキユニット61によって前輪FWに発生する制動力を、以下、「Fr摩擦制動力」とも称する。
【0029】
また、自動二輪車1の車体の右側には、運転者RDからの制動操作を受け付ける第2制動指示入力装置の一例としてのRrブレーキペダル57が設けられている。Rrブレーキペダル57は、例えば、自動二輪車1の走行時において、運転者RDが右足のつま先で操作可能なように、右足を載せる右足ステップ(不図示)の前方を左右方向に延在するように設けられている。運転者RDによってRrブレーキペダル57が操作されたとき、後輪RWに設けられた油圧式制動装置であるRrブレーキユニット62(図3を用いて後述)が動作して、後輪RWを制動する。Rrブレーキユニット62によって後輪RWに発生する制動力を、以下、「Rr摩擦制動力」とも称する。
【0030】
また、自動二輪車1は、いわゆる前後輪連動ブレーキシステムを有していてもよい。すなわち、例えば、運転者RDによってFrブレーキレバー55が操作されたとき、Frブレーキユニット61が動作して前輪FWを制動するとともに、Rrブレーキユニット62も動作して後輪RWを制動するようにしてもよい。同様に、例えば、運転者RDによってRrブレーキペダル57が操作されたとき、Rrブレーキユニット62が動作して後輪RWを制動するとともに、Frブレーキユニット61も動作して前輪FWを制動するようにしてもよい。さらに、Fr摩擦制動力及びRr摩擦制動力の配分が自動的に最適化されるようにしてもよい。
【0031】
自動二輪車1は、運転者RDが着座可能な乗員シート21を備える。乗員シート21は、ハンドル51の後方を前後方向に延在し、車体フレーム10の上部に配置される。乗員シート21は、車体フレーム10に固定されている。なお、乗員シート21は、運転者RDに加えて、運転者RDの後方に同乗者が着座可能であってもよい。
【0032】
自動二輪車1は、自動二輪車1全体を統括制御するコンピュータとしての電子制御ユニットECUを備える。電子制御ユニットECUは、例えば、各種演算を行うプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)、各種情報を記憶する記憶装置(例えばフラッシュメモリ)、電子制御ユニットECUの内部と外部とのデータの入出力を制御する入出力装置(インターフェース)等を含んで構成される。電子制御ユニットECUは、例えば、乗員シート21の下方、カウル部材20によって囲まれた空間に配置される。ただし、電子制御ユニットECUの配置位置は、これに限られず、自動二輪車1における任意の位置に配置されてよい。
【0033】
自動二輪車1には、イグニッションスイッチ(不図示)が搭載されており、自動二輪車1は、運転者RDによってイグニッションスイッチが操作されると、電子制御ユニットECUを含む自動二輪車1の電源システムがオン状態となり、電子制御ユニットECUによる各種制御対象の制御が開始される。
【0034】
電子制御ユニットECUは、例えば、運転者RDの駆動操作(換言すると駆動指示)に応じた駆動力が駆動輪である後輪RWに発生するように、モータ311を制御し得る。また、電子制御ユニットECUは、運転者RDの制動操作(換言すると制動指示)及び/又は駆動操作に応じて、適切なFr摩擦制動力及び/又はRr摩擦制動力が発生するように、Frブレーキユニット61やRrブレーキユニット62を制御し得る。
【0035】
<モータ及びブレーキユニットの制御に関する自動二輪車の構成>
図3に示すように、自動二輪車1は、モータ311、Frブレーキユニット61、及びRrブレーキユニット62の制御に関する構成として、例えば、電子制御ユニットECUと、Frブレーキユニット61と、Rrブレーキユニット62と、加圧モジュレータ65と、モータ311と、電力供給ユニット70と、慣性計測ユニットIMUと、Frブレーキ液圧センサSe1と、Rrブレーキ液圧センサSe2と、アクセル開度センサSe3と、車速センサSe4と、を含んで構成される。
【0036】
Frブレーキユニット61は、例えば、「ブレーキフルード」と称される作動油による油圧(以下、「ブレーキ液圧」とも称する)を利用して前輪FWを制動可能に構成された油圧式制動装置である。なお、以下では、Frブレーキユニット61におけるブレーキ液圧を、後述するRrブレーキユニット62におけるブレーキ液圧と区別して、「Frブレーキ液圧」とも称する。また、Rrブレーキユニット62におけるブレーキ液圧については、「Rrブレーキ液圧」とも称する。
【0037】
より具体的には、本実施形態では、Frブレーキユニット61は、油圧ディスクブレーキとなっており、Frブレーキレバー55に対する操作(すなわち制動操作)に応じたFrブレーキ液圧を発生させるFrマスタシリンダと、前輪FWの側方に取り付けられて前輪FWと一体に回転するFrブレーキディスクと、このFrブレーキディスクを挟んで制動させるFrブレーキキャリパ等を含んで構成されている。Frブレーキキャリパには、前輪FWと一体に回転するFrブレーキディスクを挟むように配置されたブレーキパッドや、Frブレーキ液圧が高まることによって押し出されてブレーキパッドをFrブレーキディスクに押し付けるピストン等が設けられている。
【0038】
このようなFrブレーキユニット61によれば、運転者RDのFrブレーキレバー55に対する操作(すなわち制動操作)に応じたFr摩擦制動力が発生するように前輪FWを制動することができる。なお、ここでは、Frブレーキユニット61が油圧ディスクブレーキであるものとしたが、これに限られない。例えば、Frブレーキユニット61は、油圧ドラムブレーキであってもよい。
【0039】
Rrブレーキユニット62も、例えば、Frブレーキユニット61と同様に、油圧ディスクブレーキとなっており、Rrブレーキペダル57に対する操作(すなわち制動操作)に応じたRrブレーキ液圧を発生させるRrマスタシリンダと、後輪RWの側方に取り付けられて後輪RWと一体に回転するRrブレーキディスクと、このRrブレーキディスクを挟んで制動させるRrブレーキキャリパ等を含んで構成されている。Rrブレーキキャリパには、後輪RWと一体に回転するRrブレーキディスクを挟むように配置されたブレーキパッドや、Rrブレーキ液圧が高まることによって押し出されてブレーキパッドをRrブレーキディスクに押し付けるピストン等が設けられている。
【0040】
このようなRrブレーキユニット62によれば、運転者RDのRrブレーキペダル57に対する操作(すなわち制動操作)に応じたRr摩擦制動力が発生するように後輪RWを制動することができる。なお、ここでは、Rrブレーキユニット62が油圧ディスクブレーキであるものとしたが、これに限られない。例えば、Rrブレーキユニット62は、油圧ドラムブレーキであってもよい。
【0041】
加圧モジュレータ65は、例えば、電動モータ、この電動モータによって駆動されるポンプ、及び電子制御ユニットECUからの指示にしたがって上記の電動モータを制御するMCU(Micro Controller Unit)等を含み、電子制御ユニットECUからの指示にしたがって、Frブレーキ液圧及び/又はRrブレーキ液圧、すなわちFr摩擦制動力及び/又はRr摩擦制動力を制御可能に構成される。また、加圧モジュレータ65のMCUは、後述するFrブレーキ液圧センサSe1、Rrブレーキ液圧センサSe2、車速センサSe4等の検出値を電子制御ユニットECUに渡したりもする。
【0042】
なお、加圧モジュレータ65は、運転者RDの制動操作によって前輪FW及び/又は後輪RWがロックされたこと又はロックされそうなことを検知した場合に、Frブレーキ液圧及び/又はRrブレーキ液圧を自動的に調整することで前輪FW及び/又は後輪RWのロックを抑制するABS(Antilock Braking System)モジュレータであってもよい。
【0043】
電力供給ユニット70は、電子制御ユニットECUからの指示にしたがってモータ311に電力を供給する装置であり、例えば、電力源としてのバッテリ71と、電力変換装置72と、を含んで構成される。
【0044】
バッテリ71は、例えば、複数の蓄電セルを直列に接続することで高電圧(例えば100[V])を出力可能に構成され、電力変換装置72を介してモータ311と接続される。バッテリ71の蓄電セルとしては、例えば、リチウムイオン電池やニッケル水素電池を用いることができる。
【0045】
電力変換装置72は、例えば、インバータを含んで構成され、バッテリ71から出力される直流を交流へ変換し、変換した交流を、交流モータ(例えば三相交流モータ)によって実現されるモータ311へ供給する。また、電力変換装置72は、例えばDC/DCコンバータをさらに含んで構成され、バッテリ71とモータ311との間で授受される電力の電圧を変換してもよい。
【0046】
また、モータ311は、後輪RWに回生制動力を発生させて回生発電を行うと、発電した電力(交流)を電力変換装置72へ出力する。この場合、電力変換装置72は、モータ311から出力される交流を直流に変換し、変換した直流をバッテリ71へ供給する。これにより、自動二輪車1は、後輪RWに回生制動力を発生させた際にモータ311が発電した電力によってバッテリ71を充電することもできる。
【0047】
本実施形態の自動二輪車1において、電子制御ユニットECUと、電子制御ユニットECUからの指示にしたがってモータ311を制御可能な電力供給ユニット70と、電子制御ユニットECUからの指示にしたがってRrブレーキユニット62等を制御可能な加圧モジュレータ65とは、モータ311及びRrブレーキユニット62等を制御可能な制御システムCTRを構成する。この制御システムCTRは、本発明の車両制御システムの一例である。
【0048】
なお、本実施形態では、電子制御ユニットECUと、電力供給ユニット70と、加圧モジュレータ65とのそれぞれを別体とした例を説明するが、これに限られない。例えば、加圧モジュレータ65の内部に電子制御ユニットECUが設けられていてもよく、より具体的な一例としては、前述した加圧モジュレータ65のMCUが電子制御ユニットECUとして機能するようにしてもよい。
【0049】
慣性計測ユニットIMUは、車体フレーム10(すなわち自動二輪車1)のピッチ方向、ロール方向及びヨー方向の各角速度と、車体フレーム10の前後方向、左右方向及び上下方向の各加速度とを検出可能に構成されたセンサである。慣性計測ユニットIMUによる各角速度及び各加速度の検出値は、検出信号として電子制御ユニットECUへ送られる。
【0050】
Frブレーキ液圧センサSe1は、Frブレーキ液圧を検出可能に構成された圧力センサである。Frブレーキ液圧センサSe1によるFrブレーキ液圧の検出値は、検出信号として加圧モジュレータ65へ送られ、さらに加圧モジュレータ65を介して電子制御ユニットECUへ送られる。なお、Frブレーキ液圧センサSe1の検出値は、電子制御ユニットECUへ直接送られるようにしてもよい。
【0051】
Rrブレーキ液圧センサSe2は、Rrブレーキ液圧を検出可能に構成された圧力センサである。Rrブレーキ液圧センサSe2によるRrブレーキ液圧の検出値は、検出信号として加圧モジュレータ65へ送られ、さらに加圧モジュレータ65を介して電子制御ユニットECUへ送られる。なお、Rrブレーキ液圧センサSe2の検出値は、電子制御ユニットECUへ直接送られるようにしてもよい。
【0052】
アクセル開度センサSe3は、アクセルグリップ51bの回動量、すなわち運転者RDによって行われた駆動操作における操作量をあらわすアクセル開度を検出するセンサである。アクセル開度センサSe3によるアクセル開度の検出値は、検出信号として電子制御ユニットECUへ送られる。これにより、電子制御ユニットECUは、アクセル開度(すなわち運転者RDの駆動操作)に応じた駆動力が後輪RWに発生するように、電力供給ユニット70を介して、モータ311を制御することが可能となる。なお、以下では、アクセル開度を0とすることを「アクセルオフ」とも称し、アクセル開度を0よりも大きくすることを「アクセルオン」とも称する。
【0053】
車速センサSe4は、例えば、前輪FWの回転数を検出することで、自動二輪車1の走行速度である車速を検出可能に構成されたセンサである。車速センサSe4による車速(又は前輪FWの回転数)の検出値は、検出信号として加圧モジュレータ65へ送られ、さらに加圧モジュレータ65を介して電子制御ユニットECUへ送られる。なお、車速センサSe4の検出値は、電子制御ユニットECUへ直接送られるようにしてもよい。
【0054】
<電子制御ユニットが行う制御の概要>
本実施形態では、特に、自動二輪車1のコーナリングによる旋回直後の立ち上がりにおいて、運転者RDの駆動操作に対して自動二輪車1を速やかに加速させることで、自動二輪車1の操作性を向上させることを狙っている。
【0055】
図4に示すタイムチャートは、コーナリング中の自動二輪車1の動作の一例を示しており、具体的には、図4中の(a)は自動二輪車1のロール角、図4中の(b)はアクセル開度、図4中の(c)は後輪RWの駆動力、図4中の(d)はRrブレーキ液圧(すなわちRr摩擦制動力)、図4中の(e)は後輪RWの垂直荷重(「RW垂直荷重」と図示)をあらわしている。
【0056】
自動二輪車1のコーナリングに際して、例えば、運転者RDは、自動二輪車1を旋回させる前に、まず、アクセルオフとして駆動力をカットするとともに、制動操作を行うことでFrブレーキユニット61及び/又はRrブレーキユニット62を動作させることによって、自動二輪車1を減速させる。そして、自動二輪車1が道路のコーナーに差し掛かると、運転者RDは、ブレーキリリースしつつ、自動二輪車1を倒し込み(いわゆるバンクさせ)、自動二輪車1を傾斜状態としてコーナーを旋回する。そして、自動二輪車1がコーナーの出口に近づくと、運転者RDは、自動二輪車1を徐々に直立状態に戻しつつ、アクセルオンすることで加速させて、コーナーから脱出する。
【0057】
図4に示す例において、時期t0から時期t1までの期間は、自動二輪車1が道路のコーナーを旋回している期間である。自動二輪車1が道路のコーナーをスムーズに旋回できるように、この期間には、例えば、自動二輪車1の倒し込み(バンク)、アクセルオフ、及びブレーキオフといった操作が行われ得る。このような操作が行われると、自動二輪車1のロール角の絶対値は0[deg]よりも大きくなるとともに、アクセル開度、駆動力、及びRrブレーキ液圧(換言するとRr摩擦制動力)は0となったりする。そして、駆動力及びRr摩擦制動力が0となると、後輪RWの垂直荷重は、駆動力又はRr摩擦制動力が0より大きい場合に比べて小さくなる。
【0058】
そして、自動二輪車1がコーナーの出口に近づいた時期t1から、運転者RDは、自動二輪車1を徐々に直立状態に戻していく。これにより、時期t1後、自動二輪車1のロール角の絶対値は0[deg]に向けて徐々に小さくなっていく。そして、時期t1後の時期t2から、運転者RDは、駆動操作を行ってアクセルオンとし、アクセル開度を徐々に高めていく。
【0059】
ところで、自動二輪車1が道路のコーナーを旋回しているときには、自動二輪車1がスムーズに旋回できるように、後輪RWの垂直荷重を小さくするような操作が行われ得る。したがって、自動二輪車1がコーナーの出口に近づいて運転者RDが駆動操作を行う際の後輪RWの垂直荷重は小さくなっていることが想定される。後輪RWの垂直荷重が小さいと、後輪RWに駆動力を発生させたとしても、その駆動力を効率よく路面に伝達することは難しい。
【0060】
そこで、本実施形態では、図4に示すように、電子制御ユニットECUは、運転者RDからの駆動指示に相当する駆動操作があった場合には、モータ311による回生制動力及び/又はRrブレーキユニット62によるRr摩擦制動力を発生させてから駆動力を発生させる。これにより、図4に示すように、駆動力の発生前に後輪RWの垂直荷重を増加させることができるため、駆動力を発生させた際に駆動力を効率よく路面に伝達することが可能となる。したがって、運転者RDの駆動操作(すなわち駆動指示)に応じて自動二輪車1を速やかに加速させることが可能となり、自動二輪車1における操作性を向上させることが可能となる。そして、延いては交通の安全性を改善し、持続可能な輸送システムの発展に寄与できる。
【0061】
より具体的には、電子制御ユニットECUは、例えば、運転者RDの駆動操作があった時期t2から所定期間Tだけ回生制動力を発生させるようにモータ311を制御し、時期t2から所定期間Tが経過した時期t3以降は運転者RDの駆動操作に応じた駆動力を発生させるようにモータ311を制御する。これにより、運転者RDの駆動操作に応じて自動二輪車1を加速させることが可能となる。なお、所定期間Tは、例えば、自動二輪車1の製造者等によって電子制御ユニットECUにあらかじめ設定される。
【0062】
ところで、油圧式制動装置であるRrブレーキユニット62によるRr摩擦制動力は、モータ311による回生制動力に比べて、発生するまでに時間を要することがある。これは、例えば、加圧モジュレータ65の電動モータによってポンプの駆動を開始してからRrブレーキ液が立ち上がるまでに時間がかかるためである。
【0063】
そこで、図4に示すように、電子制御ユニットECUは、運転者RDの駆動操作(すなわち駆動指示)があった場合に、回生制動力及びRr摩擦制動力を発生させるとともに、回生制動力及びRr摩擦制動力のうち回生制動力から先に発生させるようにしてもよい。これにより、Rrブレーキユニット62によるRr摩擦制動力が発生する前から、後輪RWに対して速やかに制動力を発生させて後輪RWの垂直荷重を増加させることが可能となる。
【0064】
また、電子制御ユニットECUは、例えば、上記の所定期間Tでは後の時期になるにつれて、回生制動力を低下させつつ、Rr摩擦制動力を増加させていく。すなわち、電子制御ユニットECUは、所定期間Tでは後の時期になるにつれて、後輪RWの垂直荷重を確保するための制動力を、回生制動力からRr摩擦制動力に持ち替えていく。これにより、所定期間Tにおける後輪RWの制動力(すなわち後輪RWの垂直荷重)を確保できるとともに、所定期間Tが経過した際に駆動力を速やかに発生させることが可能となる。そして、電子制御ユニットECUは、所定期間Tが経過した時期t3から、すなわち駆動力の発生開始とともに、Rr摩擦制動力を漸減させていく。これにより、駆動力の発生開始とともに後輪RWの制動力が急変して、自動二輪車1の挙動が不安定になるのを回避できる。
【0065】
ところで、運転者RDの駆動操作に応じて発生させた回生制動力及び/又はRr摩擦制動力によって車速が低下してしまうと、自動二輪車1の操舵が不安定になったり、駆動操作を行った運転者RDに違和感を与えてしまったりするおそれがある。
【0066】
このような事態が発生するのを抑制する観点から、電子制御ユニットECUは、運転者RDの駆動操作(すなわち駆動指示)があった場合に、車速センサSe4によって検出された車速に基づいて、車速の低下量が所定の範囲(例えば駆動操作があったときの車速-5[km/h]の範囲内)に収まるように回生制動力及び/又はRr摩擦制動力を発生させるようにすることが好ましい。このように、運転者RDの駆動操作があった場合に、車速の低下量が所定の範囲に収まるように回生制動力及び/又はRr摩擦制動力を発生させることで、回生制動力及び/又はRr摩擦制動力を発生させることによって車速が低下し過ぎるのを抑制することが可能となる。したがって、車速が低下し過ぎることによって、自動二輪車1の操舵が不安定になったり、駆動操作を行った運転者RDに違和感を与えてしまったりするのを回避できる。
【0067】
また、例えば、駆動源がエンジン(内燃機関)である車両では、一般的に、乗員の駆動指示から駆動力が発生するまでにタイムラグが発生する。したがって、自動二輪車1の運転者RDがこのような車両に乗り慣れた者である場合には、駆動操作の直後に駆動力を発生させてしまうと、運転者RDに違和感を与え得る。
【0068】
これに対して、電子制御ユニットECUは、運転者RDの駆動操作があってから所定期間Tが経過した後に駆動力を発生させることができるため、駆動力の発生が早すぎるために運転者RDに違和感を与えてしまうのも抑制できる。
【0069】
<電子制御ユニットが実行する具体的な処理の一例>
以下、図5図11を参照して、電子制御ユニットECUが実行する具体的な処理の一例について説明する。電子制御ユニットECUは、例えば、イグニッションスイッチが操作されることにより自動二輪車1の電源システムがオン状態(いわゆるイグニッションオン)となると、図5に示す処理を実行する。
【0070】
図5に示す処理において、電子制御ユニットECUは、まず、車速センサSe4の検出値から車速を取得し(ステップS1)、アクセル開度センサSe3の検出値からアクセル開度を取得する(ステップS2)。さらに、電子制御ユニットECUは、慣性計測ユニットIMUの検出値からロール角速度を取得するとともに当該ロール角速度を時間積分することによりロール角を取得する(ステップS3)。
【0071】
次に、電子制御ユニットECUは、ステップS1~ステップS3の各処理により得られたパラメータ等を用いて、自動二輪車1の旋回状態を判別するための旋回状態判別処理を実行する(ステップS4)。詳細は図6を用いて後述するが、本実施形態では、旋回状態判別処理の処理結果(以下、単に「判別結果」とも称する)として、「倒し込み時」、「旋回中」、「立ち上がり時」、「直線加速」、及び「制御非介入」のうちのいずれかが得られるようになっている。
【0072】
旋回状態判別処理によって「立ち上がり時」の判別結果が得られた場合、電子制御ユニットECUは、立ち上がり時ブレーキ協調制御を実行して(ステップS5)、ステップS9の処理へ進む。立ち上がり時ブレーキ協調制御の詳細については図7図9を用いて後述する。
【0073】
旋回状態判別処理によって「倒し込み時」の判別結果が得られた場合、電子制御ユニットECUは、倒し込み時ブレーキ協調制御を実行して(ステップS6)、ステップS9の処理へ進む。倒し込み時ブレーキ協調制御の詳細については図10を用いて後述する。
【0074】
旋回状態判別処理によって「旋回中」の判別結果が得られた場合、電子制御ユニットECUは、旋回中ブレーキ協調制御を実行して(ステップS7)、ステップS9の処理へ進む。旋回中ブレーキ協調制御の詳細については図10を用いて後述する。
【0075】
旋回状態判別処理によって「直線加速」の判別結果が得られた場合、電子制御ユニットECUは、直線加速ブレーキ協調制御を実行して(ステップS8)、ステップS9の処理へ進む。直線加速ブレーキ協調制御の詳細については図11を用いて後述する。また、旋回状態判別処理によって「制御非介入」の判別結果が得られた場合、電子制御ユニットECUは、そのままステップS9の処理へ進む。
【0076】
次に、電子制御ユニットECUは、自動二輪車1の電源システムがオフ状態(いわゆるイグニッションオフ)とされたか否かを判定する(ステップS9)。イグニッションオフとされていない場合(ステップS9;No)、電子制御ユニットECUは、ステップS1の処理に復帰する。一方、イグニッションオフとされた場合(ステップS9;Yes)、電子制御ユニットECUは、図5に示す処理を終了する。
【0077】
<旋回状態判別処理>
図5のステップS4に示した旋回状態判別処理において、図6に示すように、電子制御ユニットECUは、まず、「倒し込み時」と判別するための所定の第1判別条件が成立したか否かを判定する(ステップS11)。コーナリング時において、自動二輪車1が倒し込まれているときには、車速が所定値以上、且つロール角の絶対値が所定値以下、且つロール角速度の絶対値が所定値以上となると考えられる。そこで、第1判別条件は、例えば、車速が所定値以上、且つロール角の絶対値が所定値以下、且つロール角速度の絶対値が所定値以上であることとされる。これにより、実際に自動二輪車1が倒し込まれているときに、旋回状態判別処理によって「倒し込み時」と精度よく判別することが可能となる。
【0078】
ステップS11の処理において、電子制御ユニットECUは、例えば、図5のステップS1の処理により取得した車速が所定値以上、且つ図5のステップS3の処理により取得したロール角の絶対値が所定値以下、且つ図5のステップS3の処理により取得したロール角速度の絶対値が所定値以上である場合のみ、第1判別条件が成立したと判定して(ステップS11;Yes)、今回の旋回状態判別処理による判別結果を「倒し込み時」とし(ステップS12)、図6に示す旋回状態判別処理を終了する。
【0079】
一方、車速、ロール角、及びロール角速度のうちの少なくともいずれか1つが第1判別条件として規定された条件を満たさなかった場合、電子制御ユニットECUは、第1判別条件が成立しないと判定して(ステップS11;No)、ステップS13の処理へ進む。
【0080】
そして、電子制御ユニットECUは、「旋回中」と判別するための所定の第2判別条件が成立したか否かを判定する(ステップS13)。コーナリング時において、自動二輪車1が旋回中であるときには、車速が所定値以上、且つロール角の絶対値が所定値以上、且つロール角速度の絶対値が所定値以下となると考えられる。そこで、第2判別条件は、例えば、車速が所定値以上、且つロール角の絶対値が所定値以上、且つロール角速度の絶対値が所定値以下であることとされる。これにより、実際に自動二輪車1が旋回中であるときに、旋回状態判別処理によって「旋回中」と精度よく判別することが可能となる。
【0081】
ステップS13の処理において、電子制御ユニットECUは、例えば、図5のステップS1の処理により取得した車速が所定値以上、且つ図5のステップS3の処理により取得したロール角の絶対値が所定値以上、且つ図5のステップS3の処理により取得したロール角速度の絶対値が所定値以下である場合のみ、第2判別条件が成立したと判定して(ステップS13;Yes)、今回の旋回状態判別処理による判別結果を「旋回中」とし(ステップS14)、図6に示す旋回状態判別処理を終了する。
【0082】
一方、車速、ロール角、及びロール角速度のうちの少なくともいずれか1つが第2判別条件として規定された条件を満たさなかった場合、電子制御ユニットECUは、第2判別条件が成立しないと判定して(ステップS13;No)、ステップS15の処理へ進む。
【0083】
そして、電子制御ユニットECUは、「立ち上がり時」と判別するための所定の第3判別条件が成立したか否かを判定する(ステップS15)。コーナリング時において、自動二輪車1が傾斜状態から直立状態に向けて戻されているときには、車速が所定値以上、且つロール角の絶対値が所定値以上、且つロール角速度の絶対値が所定値以上、且つアクセル開度が所定値以上となると考えられる。そこで、第3判別条件は、例えば、車速が所定値以上、且つロール角の絶対値が所定値以上、且つロール角速度の絶対値が所定値以上、且つアクセル開度が所定値以上であることとされる。これにより、実際に自動二輪車1が傾斜状態から直立状態に向けて戻されているときに、旋回状態判別処理によって「立ち上がり時」と精度よく判別することが可能となる。
【0084】
ステップS15の処理において、電子制御ユニットECUは、例えば、図5のステップS1の処理により取得した車速が所定値以上、且つ図5のステップS3の処理により取得したロール角の絶対値が所定値以上、且つ図5のステップS3の処理により取得したロール角速度の絶対値が所定値以上、且つ図5のステップS2の処理により取得したアクセル開度が所定値以上である場合のみ、第3判別条件が成立したと判定して(ステップS15;Yes)、今回の旋回状態判別処理による判別結果を「立ち上がり時」とし(ステップS16)、図6に示す旋回状態判別処理を終了する。
【0085】
一方、車速、ロール角、ロール角速度、及びアクセル開度のうちの少なくともいずれか1つが第3判別条件として規定された条件を満たさなかった場合、電子制御ユニットECUは、第3判別条件が成立しないと判定して(ステップS15;No)、ステップS17の処理へ進む。
【0086】
そして、電子制御ユニットECUは、「直線加速」と判別するための所定の第4判別条件が成立したか否かを判定する(ステップS17)。自動二輪車1がコーナーから脱出して直線路で加速されているときには、車速が所定値以上、且つロール角の絶対値が所定値以下、且つロール角速度の絶対値が所定値以下、且つアクセル開度又は単位時間当たりのアクセル開度の変化量が所定値以上となると考えられる。そこで、第4判別条件は、例えば、車速が所定値以上、且つロール角の絶対値が所定値以下、且つロール角速度の絶対値が所定値以下、且つアクセル開度又はその単位時間当たりの変化量が所定値以上であることとされる。これにより、実際に自動二輪車1がコーナーから脱出して直線路で加速されているときに、旋回状態判別処理によって「直線加速」と精度よく判別することが可能となる。
【0087】
ステップS17の処理において、電子制御ユニットECUは、例えば、図5のステップS1の処理により取得した車速が所定値以上、且つ図5のステップS3の処理により取得したロール角の絶対値が所定値以下、且つ図5のステップS3の処理により取得したロール角速度の絶対値が所定値以下、且つ図5のステップS2の処理により取得したアクセル開度又はそれを時間微分した変化量が所定値以上である場合のみ、第4判別条件が成立したと判定して(ステップS17;Yes)、今回の旋回状態判別処理による判別結果を「直線加速」とし(ステップS18)、図6に示す旋回状態判別処理を終了する。
【0088】
一方、車速、ロール角、ロール角速度、及びアクセル開度(又は変化量)のうちの少なくともいずれか1つが第4判別条件として規定された条件を満たさなかった場合、電子制御ユニットECUは、第4判別条件が成立しないと判定して(ステップS17;No)、ステップS19の処理へ進む。そして、この場合には、電子制御ユニットECUは、今回の旋回状態判別処理による判別結果を「制御非介入」とし(ステップS19)、図6に示す旋回状態判別処理を終了する。
【0089】
なお、詳細は後述するが、本実施形態では、図5のステップS5に示した立ち上がり時ブレーキ協調制御、ステップS6に示した倒し込み時ブレーキ協調制御、ステップS7に示した旋回中ブレーキ協調制御、及びステップS8に示した直線加速ブレーキ協調制御のいずれかが行われることにより、運転者RDの駆動操作に応じて回生制動力及び/又はRr摩擦制動力が発生し得る。そして、立ち上がり時ブレーキ協調制御、倒し込み時ブレーキ協調制御、旋回中ブレーキ協調制御、及び直線加速ブレーキ協調制御のそれぞれが実行される条件となる第1判別条件~第4判別条件は、いずれも「車速が所定値以上」という条件を含む。
【0090】
このため、本実施形態では、電子制御ユニットECUは、運転者RDの駆動操作(すなわち駆動指示)があった場合に、車速センサSe4によって検出された車速が所定値以上であることに基づいて回生制動力及び/又はRr摩擦制動力を発生させることができる。換言すると、電子制御ユニットECUは、運転者RDの駆動操作があった際の車速が所定値未満であった場合には、回生制動力及びRr摩擦制動力を発生させないようにすることができる。これにより、車速が所定値未満(すなわち低速時)であるときに回生制動力及び/又はRr摩擦制動力を発生させて自動二輪車1の操舵が不安定になってしまうのを抑制することが可能となる。
【0091】
<立ち上がり時ブレーキ協調制御>
図5のステップS5に示した立ち上がり時ブレーキ協調制御において、図7に示すように、電子制御ユニットECUは、まず、図5のステップS1の処理により取得した車速、及び図5のステップS3の処理により取得したロール角に基づいて、後輪RWに発生させる制動力の目標値であるRr目標制動力を導出する(ステップS21)。ここでは、電子制御ユニットECUは、例えば、あらかじめ記憶された目標制動力マップを参照し、車速及びロール角に基づいて、Rr目標制動力を導出する。
【0092】
本実施形態では、図7に示すように、目標制動力マップとして、低速時Rr目標制動力マップMp11と、中速時Rr目標制動力マップMp12と、高速時Rr目標制動力マップMp13とが設けられている。そして、電子制御ユニットECUは、例えば、車速が40[km/h]以下である場合には低速時Rr目標制動力マップMp11を、車速が40[km/h]より高く且つ60[km/h]以下である場合には中速時Rr目標制動力マップMp12を、車速が60[km/h]より高い場合には高速時Rr目標制動力マップMp13をそれぞれ参照して、Rr目標制動力を導出する。
【0093】
低速時Rr目標制動力マップMp11、中速時Rr目標制動力マップMp12、及び高速時Rr目標制動力マップMp13の各目標制動力マップは、それぞれのロール角に対応するRr目標制動力を規定したマップ(情報)であり、より具体的には、ロール角が大きくなるほど小さなRr目標制動力を規定したものとなっている。さらに、図7に示すように、車速が高いときに参照される目標制動力マップほど、それぞれのロール角に対して、より大きなRr目標制動力を規定したものとなっている。
【0094】
Rr目標制動力の導出に際し、上記のような目標制動力マップを用いるようにすることで、ロール角が大きいときほど小さなRr目標制動力が導出されるようにして、後輪RWに発生する制動力を小さくすることが可能となる。すなわち、ロール角が大きくなると、後輪RWの摩擦円の左右方向の力が強くなる。このため、仮に、ロール角が大きいときに、後輪RWの摩擦円の前後方向の力となる制動力も大きくしてしまうと、後輪RWのグリップ力の限界を超えて、自動二輪車1が横滑りするおそれがある。これに対し、本実施形態では、ロール角が大きいときほど、後輪RWに発生する制動力を小さくすることで、自動二輪車1の横滑りを抑制でき、交通の安全性の改善を図れる。
【0095】
また、Rr目標制動力の導出に際し、上記のような目標制動力マップを用いるようにすることで、車速が高いときほど大きなRr目標制動力が導出されるようにして、後輪RWに発生する制動力を大きくすることが可能となる。これにより、自動二輪車1の加速性能がより重視される高速走行時ほど、後輪RWに発生する制動力を大きくして、当該制動力によって後輪RWの垂直荷重を大きくすることが可能となる。したがって、その後、駆動力を発生させた際に当該駆動力を効率よく路面に伝達することを可能にし、自動二輪車1を速やかに加速させることが可能となる。
【0096】
なお、図7に示すように、各目標制動力マップにおいて規定されるRr目標制動力には、所定の上限値及び下限値を設けるのが好ましい。このようにすることで、導出されるRr目標制動力を一定の範囲内に納めることが可能となる。
【0097】
次に、電子制御ユニットECUは、ステップS21の処理により導出したRr目標制動力に基づいて、Rrブレーキ液圧の目標値となるRr目標ブレーキ液圧を導出する(ステップS22)。例えば、電子制御ユニットECUは、あらかじめ記憶されたRr目標ブレーキ液圧マップMp2を参照し、Rr目標制動力に基づいて、Rr目標ブレーキ液圧を導出する。
【0098】
図7に示すように、Rr目標ブレーキ液圧マップMp2は、それぞれのRr目標制動力に対応するRr目標ブレーキ液圧を規定したマップであり、より具体的には、Rr目標制動力が大きくなるほど大きなRr目標ブレーキ液圧を規定したものとなっている。これにより、導出されたRr目標制動力に対して、適切なRr目標ブレーキ液圧を導出することが可能となる。
【0099】
次に、電子制御ユニットECUは、自動二輪車1が立ち上がり状態となってから所定時間以上経過したか否かを判定する(ステップS23)。ステップS23の処理において、電子制御ユニットECUは、例えば、旋回状態判別処理による判別結果が「立ち上がり時」以外のものから「立ち上がり時」に変化したときからの経過時間が所定時間以上になったか否かを判定すればよい。ここで、所定時間は、例えば、自動二輪車1の製造者等によって電子制御ユニットECUにあらかじめ設定される。
【0100】
立ち上がり状態となってから所定時間以上経過したと判定した場合(ステップS23;Yes)、電子制御ユニットECUは、後述する図9のステップS34の処理へ進む。なお、詳細は後述するが、この場合、電子制御ユニットECUは、後輪RWに駆動力を発生させることになる。
【0101】
一方、立ち上がり状態となってから所定時間が経過していないと判定した場合(ステップS23;No)、電子制御ユニットECUは、Rrブレーキ液圧センサSe2の検出値を参照して、Rrブレーキ液圧が所定の閾値以下であるか否か判定する(ステップS24)。Rrブレーキ液圧が閾値以下の状態であるとき、Rrブレーキ液圧が低すぎるために、Rrブレーキユニット62はRr摩擦制動力を発生させることができない。すなわち、ステップS24の処理は、Rrブレーキユニット62がRr摩擦制動力を発生可能なRrブレーキ液圧であるか否かを判定する処理とも言える。
【0102】
Rrブレーキ液圧が閾値以下と判定した場合(ステップS24;Yes)、すなわち、Rrブレーキユニット62がRr摩擦制動力を発生可能なRrブレーキ液圧に達していないと判定した場合、電子制御ユニットECUは、ステップS21の処理により導出したRr目標制動力に基づいて、目標回生トルクを導出する(ステップS25)。ステップS25の処理において、電子制御ユニットECUは、例えば、後輪RWの半径や動力伝達ユニット40のレシオ等の各パラメータも参照しつつ、Rr目標制動力を発生させるために必要なモータ311の回生トルクを目標回生トルクとして導出する。そして、電子制御ユニットECUは、モータ311の出力トルクが目標回生トルクとなるように制御する(ステップS26)。これにより、Rr目標制動力に応じた回生制動力を後輪RWに発生させることができる。
【0103】
次に、電子制御ユニットECUは、運転者RDの制動操作によってRrブレーキ液圧が、ステップS22の処理により導出したRr目標ブレーキ液圧以上となったか否かを判定する(ステップS27)。
【0104】
運転者RDの制動操作によってRrブレーキ液圧がRr目標ブレーキ液圧以上となったと判定した場合(ステップS27;Yes)、すなわち、Rr目標制動力以上のRr摩擦制動力が運転者RDの制動操作によって発生していれば、電子制御ユニットECUは、そのまま図5に示す処理を終了する。
【0105】
一方、Rrブレーキ液圧がRr目標ブレーキ液圧未満と判定した場合(ステップS27;No)、Rr目標制動力に対しRrブレーキ液圧が不足しているため、電子制御ユニットECUは、加圧モジュレータ65によってRrブレーキ液圧を昇圧することで(ステップS28)、Rrブレーキ液圧がRr目標ブレーキ液圧に到達するようにして、図5に示す処理を終了する。これにより、Rr目標ブレーキ液圧に応じたRr摩擦制動力を後輪RWに発生させることができる。
【0106】
また、ステップS24の処理において、Rrブレーキ液圧が閾値より大きいと判定した場合(ステップS24;No)、すなわち、Rrブレーキユニット62がRr摩擦制動力を発生可能なRrブレーキ液圧と判定した場合、電子制御ユニットECUは、モータ311の出力トルクが0[N]以下であるか否かを判定する(ステップS29)。ステップS29の処理は、モータ311が後輪RWに駆動力を発生させているか回生制動力を発生させているかを判定する処理とも言える。すなわち、モータ311の出力トルクが0[N]以下の場合には後輪RWに回生制動力が発生していることになり、モータ311の出力トルクが0[N]より大きい場合には駆動力が発生していることになる。
【0107】
モータ311の出力トルクが0[N]より大きいと判定した場合(ステップS29;No)、電子制御ユニットECUは、後述する図9のステップS34の処理へ進む。一方、モータ311の出力トルクが0[N]以下と判定した場合(ステップS29;Yes)、電子制御ユニットECUは、図8のステップS30の処理へ進む。
【0108】
図8に示すように、次に、電子制御ユニットECUは、現在のRrブレーキ液圧に基づいて、現在のRr摩擦制動力を推定する(ステップS30)。ここでは、電子制御ユニットECUは、例えば、あらかじめ記憶されたRr摩擦制動力マップMp3を参照し、現在のRrブレーキ液圧に基づいて、現在のRr摩擦制動力を推定する。
【0109】
図8に示すように、Rr摩擦制動力マップMp3は、それぞれのRrブレーキ液圧に対応するRr摩擦制動力を規定したマップである。通常、Rrブレーキ液圧が大きくなるほどRr摩擦制動力も大きくなるので、Rr摩擦制動力マップMp3も、Rrブレーキ液圧が大きくなるほど大きなRr摩擦制動力を規定したものとなっている。このようなRr摩擦制動力マップMp3を参照することにより、現在のRrブレーキ液圧から現在のRr摩擦制動力を精度よく推定することが可能となる。
【0110】
次に、電子制御ユニットECUは、図7のステップS21の処理により導出したRr目標制動力、及びステップS30の処理により推定したRr摩擦制動力に基づいて、目標回生制動力を導出する(ステップS31)。一例として、電子制御ユニットECUは、Rr目標制動力からRr摩擦制動力を差し引いた値、すなわちRr目標制動力とRr摩擦制動力との差分を、目標回生制動力として導出すればよい。
【0111】
次に、電子制御ユニットECUは、ステップS31の処理により導出した目標回生制動力に基づいて、目標回生トルクを導出する(ステップS32)。ステップS32の処理において、電子制御ユニットECUは、例えば、後輪RWの半径や動力伝達ユニット40のレシオ等の各パラメータも参照しつつ、目標回生制動力を発生させるために必要なモータ311の回生トルクを目標回生トルクとして導出する。そして、電子制御ユニットECUは、モータ311の出力トルクが目標回生トルクとなるように制御して(ステップS33)、図7のステップS27の処理へ進む。これにより、目標回生制動力に応じた回生制動力を後輪RWに発生させることができる。
【0112】
また、図7のステップS23の処理において、立ち上がり状態となってから所定時間以上経過したと判定した場合(ステップS23;Yes)、電子制御ユニットECUは、図9に示すように、図7のステップS2の処理により取得したアクセル開度、及び図7のステップS3の処理により取得したロール角に基づいて、目標駆動トルクを導出する(ステップS34)。ここでは、電子制御ユニットECUは、例えば、あらかじめ記憶された目標駆動トルクマップを参照し、アクセル開度及びロール角に基づいて、目標駆動トルクを導出する。
【0113】
本実施形態では、図9に示すように、目標駆動トルクマップとして、小ロール時目標駆動トルクマップMp41と、中ロール時目標駆動トルクマップMp42と、大ロール時目標駆動トルクマップMp43とが設けられている。そして、電子制御ユニットECUは、例えば、ロール角の絶対値が15[deg]以下である場合には小ロール時目標駆動トルクマップMp41を、ロール角の絶対値が15[deg]より大きく且つ30[deg]以下である場合には中ロール時目標駆動トルクマップMp42を、ロール角の絶対値が30[deg]より大きい場合には大ロール時目標駆動トルクマップMp43をそれぞれ参照して、目標駆動トルクを導出する。
【0114】
小ロール時目標駆動トルクマップMp41、中ロール時目標駆動トルクマップMp42、及び大ロール時目標駆動トルクマップMp43の各目標駆動トルクマップは、それぞれのアクセル開度に対応する目標駆動トルクを規定したマップであり、より具体的には、アクセル開度が大きくなるほど大きな目標駆動トルクを規定したものとなっている。さらに、図9に示すように、ロール角の絶対値が大きいときに参照される目標駆動トルクマップほど、それぞれのアクセル開度に対して、より小さな目標駆動トルクを規定したものとなっている。
【0115】
目標駆動トルクの導出に際し、上記のような目標駆動トルクマップを用いるようにすることで、ロール角が大きいときほど小さな目標駆動トルクが導出されるようにして、後輪RWに発生する駆動力を小さくすることが可能となる。すなわち、ロール角が大きくなると、後輪RWの摩擦円の左右方向の力が強くなる。このため、仮に、ロール角が大きいときに、後輪RWの摩擦円の前後方向の力となる駆動力も大きくしてしまうと、後輪RWのグリップ力の限界を超えて、自動二輪車1が横滑りするおそれがある。これに対し、本実施形態では、ロール角が大きいときほど、後輪RWに発生する駆動力を小さくすることで、自動二輪車1の横滑りを抑制でき、交通の安全性の改善を図れる。
【0116】
また、目標駆動トルクの導出に際し、上記のような目標駆動トルクマップを用いるようにすることで、アクセル開度が大きいときほど大きな目標駆動トルクが導出されるようにして、後輪RWに発生する駆動力を大きくすることが可能となる。これにより、運転者RDの駆動操作(すなわち運転者RDの意思)にしたがって自動二輪車1を加速させることが可能となり、自動二輪車1の操作性の向上を図れる。
【0117】
なお、図9に示すように、各目標駆動トルクマップにおいて規定される目標駆動トルクには、所定の上限値及び下限値を設けるのが好ましい。このようにすることで、導出される目標駆動トルクを一定の範囲内に納めることが可能となる。
【0118】
そして、電子制御ユニットECUは、目標駆動トルクを導出すると、モータ311の出力トルクが当該目標駆動トルクとなるように制御して(ステップS35)、図7のステップS27の処理へ進む。これにより、アクセル開度(すなわち運転者RDの駆動操作)及びロール角に応じた駆動力を後輪RWに発生させることができる。
【0119】
以上に説明したように、電子制御ユニットECUは、「アクセル開度が所定値以上」という条件を含む第3判別条件が成立することにより、立ち上がり時ブレーキ協調制御を実行することができる。
【0120】
そして、このように運転者RDの駆動操作があったことに応じて実行する立ち上がり時ブレーキ協調制御において、電子制御ユニットECUは、車速センサSe4によって検出された車速に基づいて、後輪RWに発生させる制動力の目標値となるRr目標制動力を導出し(ステップS21を参照)、当該Rr目標制動力に基づいて回生制動力及び/又はRr摩擦制動力を発生させることができる(ステップS26、及びステップS33を参照)。より具体的には、電子制御ユニットECUは、例えば、回生制動力及びRr摩擦制動力の和がRr目標制動力となるように回生制動力及び/又はRr摩擦制動力を発生させればよい。
【0121】
このように、電子制御ユニットECUは、駆動操作に応じて駆動力を発生させる前に、当該駆動操作があった際の車速に応じたRr目標制動力を導出し、当該Rr目標制動力に基づいて回生制動力及び/又はRr摩擦制動力を発生させることで、車速に応じた適切な制動力を後輪RWに発生させてから駆動力を発生させることができ、駆動力を発生させた際に駆動力をより効率よく路面に伝達することが可能となる。
【0122】
また、Rr目標制動力の導出に際し、電子制御ユニットECUは、例えば、車速が高いときほど大きなRr目標制動力を導出する。これにより、自動二輪車1の加速性能がより重視される高速走行時ほど、後輪RWに発生する制動力を大きくして、当該制動力によって後輪RWの垂直荷重を大きくすることが可能となる。したがって、その後、駆動力を発生させた際に当該駆動力を効率よく路面に伝達することを可能にし、自動二輪車1を速やかに加速させることが可能となる。
【0123】
また、前述したように、電子制御ユニットECUは、慣性計測ユニットIMUによって検出されたロール角速度に基づいて、車体フレーム10(すなわち自動二輪車1)のロール角を取得可能に構成される。
【0124】
そして、運転者RDの駆動操作があったことに応じて実行する立ち上がり時ブレーキ協調制御において、電子制御ユニットECUは、自動二輪車1のロール角に基づいて、後輪RWに発生させる制動力の目標値となるRr目標制動力を導出し(ステップS21を参照)、当該Rr目標制動力に基づいて回生制動力及び/又はRr摩擦制動力を発生させることができる(ステップS26、及びステップS33を参照)。より具体的には、電子制御ユニットECUは、例えば、回生制動力及びRr摩擦制動力の和がRr目標制動力となるように回生制動力及び/又はRr摩擦制動力を発生させればよい。
【0125】
このように、電子制御ユニットECUは、駆動操作に応じて駆動力を発生させる前に、当該駆動操作があった際の自動二輪車1のロール角に応じたRr目標制動力を導出し、当該Rr目標制動力に基づいて回生制動力及び/又はRr摩擦制動力を発生させることで、ロール角に応じた適切な制動力を後輪RWに発生させてから駆動力を発生させることができ、駆動力を発生させた際に駆動力をより効率よく路面に伝達することが可能となる。
【0126】
また、Rr目標制動力の導出に際し、電子制御ユニットECUは、例えば、ロール角が大きいときほど小さなRr目標制動力を導出する。これにより、自動二輪車1のロール角が大きいときほど後輪RWに発生する制動力を小さくでき、ロール角が大きいときに後輪RWに発生する制動力を大きくしてしまうことによる自動二輪車1の横滑りを抑制でき、交通の安全性の改善を図れる。
【0127】
さらに、運転者RDの駆動操作があったことに応じて実行する立ち上がり時ブレーキ協調制御において、電子制御ユニットECUは、自動二輪車1のロール角に基づいて、駆動力を発生させる際のモータ311の出力トルクの目標値となる目標駆動トルクを導出するとともに(ステップS34を参照)、出力トルクが当該目標駆動トルクとなるようにモータ311を制御することができる(ステップS35を参照)。
【0128】
また、目標駆動トルクの導出に際し、電子制御ユニットECUは、例えば、ロール角が大きいときほど小さな目標駆動トルクを導出する。これにより、自動二輪車1のロール角が大きいときほど後輪RWに発生する駆動力を小さくでき、ロール角が大きいときに後輪RWに発生する駆動力を大きくしてしまうことによる自動二輪車1の横滑りを抑制でき、交通の安全性の改善を図れる。
【0129】
また、電子制御ユニットECUは、自動二輪車1が立ち上がり状態となってから所定時間以上経過した場合には、後輪RWに駆動力を発生させることができる(ステップS23;Yes、ステップS34、及びステップS35を参照)。これにより、運転者RDの駆動操作から駆動力を発生させるまでの時間が長くなりすぎて、自動二輪車1における操作性がかえって低下してしまうのを抑制することが可能となる。
【0130】
<倒し込み時ブレーキ協調制御、旋回中ブレーキ協調制御>
次に、図5のステップS6に示した倒し込み時ブレーキ協調制御、及び図5のステップS7に示した旋回中ブレーキ協調制御について説明する。なお、本実施形態では、これら倒し込み時ブレーキ協調制御及び旋回中ブレーキ協調制御による処理は同一であるので、ここでは倒し込み時ブレーキ協調制御を例にして説明する。すなわち、旋回中ブレーキ協調制御による処理は、ここで説明する「倒し込み時ブレーキ協調制御」の記載を「旋回中ブレーキ協調制御」と読み替えればよい。
【0131】
倒し込み時ブレーキ協調制御において、図10に示すように、電子制御ユニットECUは、まず、Frブレーキレバー55及びRrブレーキペダル57のうちの少なくとも一方に対する操作、すなわち制動操作があるか否かを判定する(ステップS41)。制動操作がないと判定した場合(ステップS41;No)、電子制御ユニットECUは、そのままステップS48の処理へ進む。
【0132】
制動操作があると判定した場合(ステップS41;Yes)、電子制御ユニットECUは、現在のFrブレーキ液圧及びロール角に基づいて、Rr目標ブレーキ液圧を導出する(ステップS42)。ここでは、電子制御ユニットECUは、例えば、あらかじめ記憶されたRr目標ブレーキ液圧マップMp51~Mp53のいずれかを参照し、現在のFrブレーキ液圧及びロール角に基づいて、Rr目標ブレーキ液圧を導出する。
【0133】
より具体的には、ステップS42の処理において、電子制御ユニットECUは、例えば、ロール角の絶対値が15[deg]以下である場合にはRr目標ブレーキ液圧マップMp51を、ロール角の絶対値が15[deg]より大きく且つ30[deg]以下である場合にはRr目標ブレーキ液圧マップMp52を、ロール角の絶対値が30[deg]より大きい場合にはRr目標ブレーキ液圧マップMp53をそれぞれ参照して、Rr目標ブレーキ液圧を導出する。
【0134】
図10に示すように、Rr目標ブレーキ液圧マップMp51~Mp53のそれぞれは、それぞれのFrブレーキ液圧(換言するとFr摩擦制動力)に対応するRr目標ブレーキ液圧を規定したマップであり、より具体的には、Frブレーキ液圧が大きくなるほど大きなRr目標ブレーキ液圧を規定したものとなっている。さらに、図10に示すように、ロール角が大きいときに参照されるRr目標ブレーキ液圧マップほど、それぞれのFrブレーキ液圧に対して、より小さなRr目標ブレーキ液圧を規定したものとなっている。
【0135】
Rr目標ブレーキ液圧の導出に際し、上記のようなRr目標ブレーキ液圧マップを用いるようにすることで、ロール角が大きいときほど小さなRr目標ブレーキ液圧が導出されるようにして、後輪RWに発生する制動力を小さくすることが可能となる。このように、ロール角が大きいときほど、後輪RWに発生する制動力を小さくすることで、自動二輪車1の横滑りを抑制でき、交通の安全性の改善を図れる。
【0136】
次に、電子制御ユニットECUは、現在のRrブレーキ液圧が、ステップS42の処理により導出したRr目標ブレーキ液圧以下であるか否かを判定する(ステップS43)。現在のRrブレーキ液圧がRr目標ブレーキ液圧より大きいと判定した場合(ステップS43;No)、すなわちRrブレーキ液圧の昇圧が必要ない場合、電子制御ユニットECUは、そのままステップS50の処理へ進む。
【0137】
現在のRrブレーキ液圧がRr目標ブレーキ液圧以下と判定した場合(ステップS43;Yes)、電子制御ユニットECUは、バッテリ71のSOC(State of Charge)が所定の閾値(例えば90[%])未満であるか否かを判定する(ステップS44)。バッテリ71のSOCが閾値以上と判定した場合(ステップS44;No)、すなわちバッテリ71に十分な空き容量がない場合、電子制御ユニットECUは、そのままステップS50の処理へ進む。
【0138】
バッテリ71のSOCが閾値未満と判定した場合(ステップS44;Yes)、電子制御ユニットECUは、Rrブレーキユニット62が昇温済みであるか否かを判定する(ステップS45)。ステップS45の処理において、電子制御ユニットECUは、例えば、自動二輪車1が直近にイグニッションオンとされたときからのRrブレーキユニット62の動作回数が所定回数以上であること、又はRrブレーキユニット62の動作時間が所定時間以上であることを条件に、昇温済みと判定すればよい。
【0139】
Rrブレーキユニット62が昇温済みでないと判定した場合(ステップS45;No)、すなわち安定したRr摩擦制動力を得るためにRrブレーキユニット62を昇温させた方がよい場合、電子制御ユニットECUは、そのままステップS50の処理へ進む。
【0140】
一方、Rrブレーキユニット62が昇温済みである場合(ステップS45;Yes)、電子制御ユニットECUは、Rr目標ブレーキ液圧と現在のRrブレーキ液圧との差分に基づいて、目標回生トルクを導出する(ステップS46)。ここでは、電子制御ユニットECUは、例えば、あらかじめ記憶された目標回生トルクマップMp6を参照し、Rr目標ブレーキ液圧と現在のRrブレーキ液圧との差分に基づいて、目標回生トルクを導出する。
【0141】
図10に示すように、目標回生トルクマップMp6は、Rr目標ブレーキ液圧とRrブレーキ液圧との差分ごとの目標回生トルクを規定したマップである。Rr目標ブレーキ液圧とRrブレーキ液圧との差分が大きいと、Rr目標制動力に対して十分なRr摩擦制動力を得ることができない。このため、目標回生トルクマップMp6は、Rr目標ブレーキ液圧とRrブレーキ液圧との差分が大きくなるほど大きな目標回生トルクを規定したものとなっている。このような目標回生トルクマップMp6を参照することにより、Rr目標ブレーキ液圧とRrブレーキ液圧との差分を考慮した適切な目標回生トルクを導出することが可能となる。
【0142】
次に、電子制御ユニットECUは、モータ311の出力トルクが、ステップS46の処理により導出した目標回生トルクとなるように制御して(ステップS47)、ステップS48の処理へ進む。これにより、Rrブレーキ液圧がRr目標ブレーキ液圧に対して不足していることによるRr摩擦制動力の不足分を補償するような回生制動力を後輪RWに発生させることができる。
【0143】
次に、電子制御ユニットECUは、現在のRrブレーキ液圧が、ステップS42の処理により導出したRr目標ブレーキ液圧以下であるか否かを判定する(ステップS48)。現在のRrブレーキ液圧がRr目標ブレーキ液圧より大きいと判定した場合(ステップS48;No)、すなわちRrブレーキ液圧の昇圧が必要ない場合、電子制御ユニットECUは、そのまま図10に示す処理を終了する。
【0144】
一方、現在のRrブレーキ液圧がRr目標ブレーキ液圧未満と判定した場合(ステップS48;No)、Rrブレーキ液圧が不足しているため、電子制御ユニットECUは、加圧モジュレータ65によってRrブレーキ液圧を昇圧することで(ステップS49)、Rrブレーキ液圧がRr目標ブレーキ液圧に到達するようにして、図10に示す処理を終了する。これにより、Rr目標ブレーキ液圧に応じたRr摩擦制動力を後輪RWに発生させることができる。
【0145】
また、現在のRrブレーキ液圧がRr目標ブレーキ液圧より大きいと判定した場合(ステップS43;No)、Rr目標制動力に対して十分なRr摩擦制動力を得ることができるため(すなわち回生制動力が不要と考えられるため)、電子制御ユニットECUは、運転者RDの駆動操作に応じた駆動力がそのまま後輪RWに発生するようにモータ311を制御する「通常制御」を行って(ステップS50)、ステップS48の処理へ進む。
【0146】
また、バッテリ71のSOCが閾値以上と判定した場合(ステップS44;No)、及びRrブレーキユニット62が昇温済みでないと判定した場合(ステップS45;No)も、電子制御ユニットECUは、ステップS50の処理へ進み、モータ311を通常制御する。
【0147】
<直線加速ブレーキ協調制御>
図5のステップS8に示した直線加速ブレーキ協調制御において、図11に示すように、電子制御ユニットECUは、アクセル開度の変化量に基づいて、Rr目標ブレーキ液圧を導出する(ステップS61)。ここでは、例えば、電子制御ユニットECUは、あらかじめ記憶されたRr目標ブレーキ液圧マップMp7を参照し、アクセル開度の変化量に基づいて、Rr目標ブレーキ液圧を導出する。
【0148】
図11に示すように、Rr目標ブレーキ液圧マップMp7は、アクセル開度の変化量ごとのRr目標ブレーキ液圧を規定したマップである。また、Rr目標ブレーキ液圧マップMp7は、アクセル開度の変化量が大きくなるほど大きなRr目標ブレーキ液圧を規定したものとなっている。このようなRr目標ブレーキ液圧マップMp7を参照することにより、アクセル開度の変化量、すなわち今後の駆動力の変化量を考慮した適切なRr目標ブレーキ液圧を導出することが可能となる。
【0149】
次に、電子制御ユニットECUは、現在のRrブレーキ液圧が、ステップS61の処理により導出したRr目標ブレーキ液圧以下であるか否かを判定する(ステップS62)。現在のRrブレーキ液圧がRr目標ブレーキ液圧より大きいと判定した場合(ステップS62;No)、すなわちRrブレーキ液圧の昇圧が必要ない場合、電子制御ユニットECUは、そのまま図11に示す処理を終了する。
【0150】
一方、現在のRrブレーキ液圧がRr目標ブレーキ液圧未満と判定した場合(ステップS62;No)、Rrブレーキ液圧が不足しているため、電子制御ユニットECUは、加圧モジュレータ65によってRrブレーキ液圧を昇圧することで(ステップS63)、Rrブレーキ液圧がRr目標ブレーキ液圧に到達するようにして、図11に示す処理を終了する。ステップS63の処理により、ステップS61の処理により導出されたRr目標ブレーキ液圧に応じたRr摩擦制動力を後輪RWに発生させることができる。なお、この場合、後輪RWに回生制動力は発生しないことになる。
【0151】
以上に説明したように、電子制御ユニットECUは、「ロール角の絶対値が所定値以下」という条件と、「ロール角速度の絶対値が所定値以下」という条件と、「アクセル開度又は単位時間当たりのアクセル開度の変化量が所定値以上」という条件と、を含む第4判別条件が成立することにより、直線加速ブレーキ協調制御を実行することができる(ステップS17;Yes、ステップS18、及びステップS8を参照)。すなわち、電子制御ユニットECUは、運転者RDの駆動操作(すなわち駆動指示)があった際の自動二輪車1のロール角及びロール角速度がそれぞれ所定値以下である場合には、直線加速ブレーキ協調制御を実行することができる。
【0152】
そして、直線加速ブレーキ協調制御において、電子制御ユニットECUは、回生制動力及びRr摩擦制動力のうちRr摩擦制動力のみを発生させてから駆動力を発生させるようにする(ステップS61、ステップS62;Yes、及びステップS63を参照)。これにより、運転者RDの駆動操作があった際の自動二輪車1のロール角及びロール角速度がそれぞれ所定値以下であるような、例えば直線加速時には、モータ311が駆動力を速やかに発生可能な状態とし、運転者の駆動操作に応じて自動二輪車1を速やかに加速させることを可能にする。
【0153】
以上に説明したように、本実施形態によれば、運転者RDからの駆動指示に応じて自動二輪車1を速やかに加速させることを可能にし、自動二輪車1における操作性を向上させることが可能な電子制御ユニットECU、及び自動二輪車1を提供できる。そして、延いては交通の安全性を改善して、持続可能な輸送システムの発展に寄与できる。
【0154】
以上、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明したが、本発明が前述した実施形態に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。また、発明の趣旨を逸脱しない範囲において、前述した実施形態における各構成要素を任意に組み合わせてもよい。
【0155】
例えば、以上に説明した例では、ロール角速度を検出可能な慣性計測ユニットIMUを自動二輪車1に設けたが、これに限られない。例えば、このような慣性計測ユニットIMUに代えて又は加えて、自動二輪車1のロール角を検出可能なセンサを自動二輪車1に設け、電子制御ユニットECUが当該センサの検出値からロール角を取得するようにしてもよい。また、このようにした場合、電子制御ユニットECUは、検出されたロール角を時間微分することによって自動二輪車1のロール角速度を取得するようにしてもよい。
【0156】
また、前述した実施形態では、本発明の車両を自動二輪車1といった鞍乗型車両に適用した場合の例について説明したが、これに限られない。すなわち、本発明は、例えば、三輪車又は四輪車といった二輪車以外の車両にも適用することができる。
【0157】
また、前述した実施形態では、本発明の車両制御システムを、自動二輪車1に搭載された電子制御ユニットECUを含む制御システムCTRによって実現した例を説明したが、これに限られない。例えば、前述した電子制御ユニットECUの機能の一部又は全部は、電子制御ユニットECUと通信可能な他のコンピュータ(例えばサーバ)によって実現してもよい。また、前述した電子制御ユニットECUの機能の一部又は全部は、電子制御ユニットECUと、電子制御ユニットECUと通信可能な他のコンピュータとが協働することによって実現されてもよく、例えば、前述した電子制御ユニットECUが行う処理のうちの一部が他のコンピュータによって行われてもよい。
【0158】
また、前述した実施形態で説明した制御方法は、あらかじめ用意されたプログラムをコンピュータ(換言するとプロセッサ)で実行することによって実現できる。本プログラム(制御プログラム)は、コンピュータが読み取り可能な記憶媒体に記憶され、記憶媒体から読み出されることによって実行される。また、本プログラムは、フラッシュメモリなどの不揮発性(非一過性)の記憶媒体に記憶された形で提供されてもよいし、インターネットなどのネットワークを介して提供されてもよい。本プログラムを実行するコンピュータは、自動二輪車1等の車両に含まれるものであってもよいし、車両と通信可能な外部装置(例えばサーバ)に含まれるものでもあってもよい。
【0159】
本明細書等には少なくとも以下の事項が記載されている。なお、括弧内には、前述した実施形態において対応する構成要素を示しているが、これに限定されるものではない。
【0160】
(1) 駆動源としてのモータ(モータ311)と、前記モータによって駆動される駆動輪(後輪RW)と、前記駆動輪に摩擦制動力を発生させることが可能な制動装置(Rrブレーキユニット62)と、を備える車両(自動二輪車1)を制御する車両制御システム(電子制御ユニットECU、加圧モジュレータ65、電力供給ユニット70、制御システムCTR)であって、
前記モータは、前記駆動輪に駆動力又は回生制動力を発生させることが可能であり、
前記車両制御システムは、
前記モータ及び前記制動装置を制御可能に構成され、
前記車両の乗員(運転者RD)からの駆動指示があった場合に、前記回生制動力及び/又は前記摩擦制動力を発生させてから前記駆動力を発生させる、
車両制御システム。
【0161】
(1)によれば、車両の乗員からの駆動指示があった場合に、駆動輪に回生制動力及び/又は摩擦制動力を発生させてから駆動力を発生させることができる。これにより、駆動力の発生前に駆動輪の垂直荷重を増加させることができるため、駆動力を発生させた際に駆動力を効率よく路面に伝達することが可能となる。したがって、乗員からの駆動指示に応じて車両を速やかに加速させることが可能となり、車両における操作性を向上させることが可能となる。そして、延いては交通の安全性を改善し、持続可能な輸送システムの発展に寄与できる。
【0162】
(2) (1)に記載の車両制御システムであって、
前記車両制御システムは、
前記駆動指示があった場合に、前記回生制動力及び前記摩擦制動力を発生させるとともに、前記回生制動力及び前記摩擦制動力のうち前記回生制動力から先に発生させる、
車両制御システム。
【0163】
制動装置による摩擦制動力は、モータによる回生制動力に比べて、発生するまでに時間を要することがある。(2)によれば、駆動指示があった場合に、回生制動力及び摩擦制動力のうち回生制動力から先に発生させることができるため、制動装置による摩擦制動力が発生する前から、駆動輪に対して速やかに制動力を発生させて駆動輪の垂直荷重を増加させることが可能となる。その為、より車両を速やかに加速させることが可能となり、車両における操作性を向上させることが可能となる。
【0164】
(3) (1)又は(2)に記載の車両制御システムであって、
前記車両は、前記車両の走行速度である車速を検出する車速センサ(車速センサSe4)をさらに備え、
前記車両制御システムは、
前記駆動指示があった場合に、前記車速センサによって検出された前記車速が所定値以上であることに基づいて前記回生制動力及び/又は前記摩擦制動力を発生させる、
車両制御システム。
【0165】
(3)によれば、駆動指示があった場合に、車速が所定値以上であることに基づいて回生制動力及び/又は摩擦制動力を発生させることができるため、車速が所定値未満(すなわち低速時)であるときに回生制動力及び/又は摩擦制動力を発生させて車両の操舵が不安定になってしまうのを抑制することが可能となる。
【0166】
(4) (1)から(3)のいずれかに記載の車両制御システムであって、
前記車両は、前記車両の走行速度である車速を検出する車速センサ(車速センサSe4)をさらに備え、
前記車両制御システムは、
前記駆動指示があった場合に、前記車速センサによって検出された前記車速に基づいて、当該車速の低下量が所定の範囲に収まるように前記回生制動力及び/又は前記摩擦制動力を発生させる、
車両制御システム。
【0167】
(4)によれば、駆動指示があった場合に、車速の低下量が所定の範囲に収まるように回生制動力及び/又は摩擦制動力を発生させることができるため、回生制動力及び/又は摩擦制動力を発生させることによって車速が低下し過ぎるのを抑制することが可能となる。
【0168】
(5) (1)から(4)のいずれかに記載の車両制御システムであって、
前記車両は、前記車両の走行速度である車速を検出する車速センサ(車速センサSe4)をさらに備え、
前記車両制御システムは、
前記駆動指示があった場合に、前記車速センサによって検出された前記車速に基づいて、前記駆動輪に発生させる制動力の目標値となる目標制動力を導出し、
前記目標制動力に基づいて前記回生制動力及び/又は前記摩擦制動力を発生させる、
車両制御システム。
【0169】
(5)によれば、駆動指示があった場合に、車速に応じた目標制動力となるように回生制動力及び/又は摩擦制動力を発生させることができる。これにより、車速に応じた適切な制動力を駆動輪に発生させてから駆動力を発生させることができ、駆動力を発生させた際に駆動力をより効率よく路面に伝達することが可能となる。その為、より車両を速やかに加速させることが可能となり、車両における操作性を向上させることが可能となる。
【0170】
(6) (5)に記載の車両制御システムであって、
前記車両制御システムは、前記車速が高いほど大きな前記目標制動力を導出する、
車両制御システム。
【0171】
(6)によれば、加速性能がより重視される高速走行時には、大きな回生制動力及び/又は摩擦制動力を発生させて駆動輪の垂直荷重を大きくし、駆動力を発生させた際に駆動力を効率よく路面に伝達することを可能にする。その為、より車両を速やかに加速させることが可能となり、車両における操作性を向上させることが可能となる。
【0172】
(7) (1)から(6)のいずれかに記載の車両制御システムであって、
前記車両は、前記車両のロール角又はロール角速度を検出するセンサ(慣性計測ユニットIMU)をさらに備え、
前記車両制御システムは、
前記センサによって検出された前記ロール角又は前記ロール角速度に基づいて、前記ロール角を取得可能に構成され、
前記駆動指示があった場合に、前記ロール角に基づいて、前記駆動輪に発生させる制動力の目標値となる目標制動力を導出し、
前記目標制動力に基づいて前記回生制動力及び/又は前記摩擦制動力を発生させる、
車両制御システム。
【0173】
車両のロール角が大きくなると、駆動輪の摩擦円の左右方向の力が強くなる。このため、仮に、ロール角が大きいときに、駆動輪の摩擦円の前後方向の力となる制動力も大きくしてしまうと、駆動輪のグリップ力の限界を超えて、車両が横滑りするおそれがある。(7)によれば、駆動指示があった場合に、車両のロール角に応じた目標制動力となるように回生制動力及び/又は摩擦制動力を発生させることができる。これにより、車両のロール角に応じた適切な制動力を駆動輪に発生させてから駆動力を発生させることができ、車両の横滑りを抑制しつつ、駆動力を発生させた際に駆動力をより効率よく路面に伝達することが可能となる。
【0174】
(8) (7)に記載の車両制御システムであって、
前記車両制御システムは、前記ロール角が大きいほど小さな前記目標制動力を導出する、
車両制御システム。
【0175】
(8)によれば、車両のロール角が大きいときほど、駆動輪に発生する制動力を小さくすることで、車両の横滑りを抑制でき、交通の安全性の改善を図れる。
【0176】
(9) (1)から(8)のいずれかに記載の車両制御システムであって、
前記車両は、前記車両のロール角又はロール角速度を検出するセンサ(慣性計測ユニットIMU)をさらに備え、
前記車両制御システムは、
前記センサによって検出された前記ロール角又は前記ロール角速度に基づいて、前記ロール角を取得可能に構成され、
前記駆動指示があった場合に、前記ロール角に基づいて、前記駆動力を発生させる際の前記モータの出力トルクの目標値となる目標駆動トルクを導出するとともに、前記出力トルクが当該目標駆動トルクとなるように前記モータを制御し、
前記目標駆動トルクを導出する際には、前記ロール角が大きいほど小さな前記目標駆動トルクを導出する、
車両制御システム。
【0177】
車両のロール角が大きくなると、駆動輪の摩擦円の左右方向の力が強くなる。このため、仮に、ロール角が大きいときに、駆動輪の摩擦円の前後方向の力となる駆動力も大きくしてしまうと、駆動輪のグリップ力の限界を超えて、車両が横滑りするおそれがある。(9)によれば、駆動指示があった場合に、車両のロール角が大きいほど小さな目標駆動トルクを導出するとともに、モータの出力トルクが当該目標駆動トルクとなるようにモータを制御することができる。これにより、車両のロール角に応じた適切な駆動力を発生させることができ、車両の横滑りを抑制して交通の安全性の改善を図りつつも、乗員の駆動指示にしたがって車両を加速させることが可能となり、車両の操作性の向上を図れる。
【0178】
(10) (1)から(9)のいずれかに記載の車両制御システムであって、
前記車両は、前記車両のロール角又はロール角速度を検出するセンサ(慣性計測ユニットIMU)をさらに備え、
前記車両制御システムは、
前記センサによって検出された前記ロール角又は前記ロール角速度に基づいて、前記ロール角及び前記ロール角速度を取得可能に構成され、
前記駆動指示があった際の前記ロール角及び前記ロール角速度がそれぞれ所定値以下である場合には、前記回生制動力及び前記摩擦制動力のうち前記摩擦制動力のみを発生させる、
車両制御システム。
【0179】
(10)によれば、駆動指示があった際の車両のロール角及びロール角速度がそれぞれ所定値以下である場合には、摩擦制動力を発生させて回生制動力を発生させないようにすることができるため、例えば直線加速時には、モータが駆動力を速やかに発生可能な状態とし、乗員からの駆動指示に応じて車両を速やかに加速させることを可能にする。
【0180】
(11) 駆動源としてのモータ(モータ311)と、前記モータによって駆動される駆動輪(後輪RW)と、前記駆動輪に摩擦制動力を発生させることが可能な制動装置(Rrブレーキユニット62)と、車両制御システム(電子制御ユニットECU、加圧モジュレータ65、電力供給ユニット70、制御システムCTR)と、を備える車両(自動二輪車1)であって、
前記モータは、前記駆動輪に駆動力又は回生制動力を発生させることが可能であり、
前記車両制御システムは、
前記モータ及び前記制動装置を制御可能に構成され、
前記車両の乗員(運転者RD)からの駆動指示があった場合に、前記回生制動力及び/又は前記摩擦制動力を発生させてから前記駆動力を発生させる、
車両。
【0181】
(11)によれば、車両の乗員からの駆動指示があった場合に、駆動輪に回生制動力及び/又は摩擦制動力を発生させてから駆動力を発生させることができる。これにより、駆動力の発生前に駆動輪の垂直荷重を増加させることができるため、駆動力を発生させた際に駆動力を効率よく路面に伝達することが可能となる。したがって、乗員からの駆動指示に応じて車両を速やかに加速させることが可能となり、車両における操作性を向上させることが可能となる。そして、延いては交通の安全性を改善し、持続可能な輸送システムの発展に寄与できる。
【符号の説明】
【0182】
1 自動二輪車(車両)
62 Rrブレーキユニット(制動装置)
311 モータ
CTR 制御システム(車両制御システム)
ECU 電子制御ユニット(車両制御システム)
65 加圧モジュレータ(車両制御システム)
70 電力供給ユニット(車両制御システム)
IMU 慣性計測ユニット(センサ)
RW 後輪(駆動輪)
RD 運転者
Se4 車速センサ
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