(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143510
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】集塵装置
(51)【国際特許分類】
B01D 45/08 20060101AFI20241003BHJP
B01D 46/00 20220101ALI20241003BHJP
B23Q 11/00 20060101ALI20241003BHJP
B23K 9/32 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
B01D45/08
B01D46/00 F
B23Q11/00 M
B23K9/32 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056233
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000232760
【氏名又は名称】日本無機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000165
【氏名又は名称】弁理士法人グローバル・アイピー東京
(72)【発明者】
【氏名】氏家 裕司
(72)【発明者】
【氏名】北山 治
(72)【発明者】
【氏名】林 嗣郎
【テーマコード(参考)】
3C011
4D031
4D058
【Fターム(参考)】
3C011BB03
4D031AB02
4D031AB04
4D031AB06
4D031BA03
4D031DA01
4D031DA05
4D058JA12
4D058JA14
4D058QA01
4D058QA07
4D058QA08
4D058QA13
4D058UA25
(57)【要約】
【課題】省スペースでありながら、フィルタへの引火を抑えることができ、さらに、吸い込んだ微粒子がダクト内に残り難く、メンテナンス性に優れた集塵装置を提供する。
【解決手段】実施形態の集塵装置は、金属の溶接の際に飛散する微粒子を除去するための集塵装置であって、微粒子を含む空気を吸い込む吸込口を先端部に有し、前記吸込口の位置及び向きを調節可能に構成されたダクトと、前記ダクトの前記先端部と反対側の接続端部が接続され、前記ダクトを通って取り込まれた空気を通過させるフィルタを有する装置本体と、を備え、前記ダクトは、吸い込んだ空気の流路上に配置され、微粒子の一部が衝突するよう構成された構造体を有している。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属の溶接の際に飛散する微粒子を除去するための集塵装置であって、
微粒子を含む空気を吸い込む吸込口を先端部に有し、前記吸込口の位置及び向きを調節可能に構成されたダクトと、
前記ダクトの前記先端部と反対側の接続端部が接続され、前記ダクトを通って取り込まれた空気を通過させるフィルタを有する装置本体と、を備え、
前記ダクトは、吸い込んだ空気の流路上に配置され、微粒子の一部が衝突するよう構成された構造体を有している、ことを特徴とする集塵装置。
【請求項2】
前記構造体は、前記ダクト内を空気が流れる方向と直交する前記ダクトの流路断面に対し傾斜した壁部を有している、請求項1に記載の集塵装置。
【請求項3】
前記壁部を第1の壁部というとき、前記構造体は、前記第1の壁部に対し前記流路の下流側に設けられた少なくとも1つの第2の壁部をさらに有している、請求項2に記載の集塵装置。
【請求項4】
前記第2の壁部の1つに衝突した微粒子が前記先端部の側に溜まるための溜まり部が形成されるよう、前記壁部のうち、当該第2の壁部の1つに対して前記流路の上流側に位置する他の壁部は前記ダクトの内壁に接続されている、請求項3に記載の集塵装置。
【請求項5】
前記壁部は、前記流路断面の中心を通る前記ダクトの中心線の回りに回転するよう構成されている、請求項2又は3に記載の集塵装置。
【請求項6】
前記構造体は、前記ダクトの前記流路の方向の両端部のうち前記先端部の側に配置されている、請求項1又は2に記載の集塵装置。
【請求項7】
前記ダクトは、
ダクト本体と、
前記ダクト本体と共に前記流路を形成するよう、前記ダクト本体に対し前記流路の方向に着脱可能なダクト付加体と、を有し、
前記構造体は、前記ダクト付加体に設けられている、請求項1又は2に記載の集塵装置。
【請求項8】
前記ダクト付加体よりも前記先端部の側に位置する前記ダクト本体の部分は金属製である、請求項7に記載の集塵装置。
【請求項9】
前記ダクト付加体よりも前記先端部の側に位置する前記ダクト本体の部分の内壁面は、前記流路の方向に平坦である、請求項7に記載の集塵装置。
【請求項10】
前記フィルタは、前記ダクトの前記接続端部における開口を通る気流の方向と平行な方向に空気が前記フィルタを通過するように配置されている、請求項1又は2に記載の集塵装置。
【請求項11】
前記装置本体は、微粒子に遠心力を作用させて分離するための旋回流が形成される、壁面に囲まれた空間を有しない、請求項1又は2に記載の集塵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接の際に飛散する微粒子を除去する集塵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の溶接中に飛散するスラグや金属粒の微粒子(スパッタ)は、溶接箇所やその周辺の金属の表面に付着して、溶接品質の妨げとなる。そのため、溶接中に発生したスパッタを、集塵装置を用いて除去することが行われている。しかし、高温のスパッタが集塵装置内に吸い込まれると、集塵フィルタや集塵装置内に堆積した粉塵に引火して火災が発生するリスクがある。
【0003】
特許文献1には粉塵類の回収装置が記載されている。この回収装置によれば、ミストや粉塵は、吸込みホースから周囲の空気と一緒に第1スクリーンタンクに吸い込まれ、第1スクリーンタンク内に生ずる旋回気流とサイクロンによる空気流速の低下現象により、比較的重いものが落下し、ついで、第2スクリーンタンクにおいて空気中に残留するミストや微粉塵が捕集される、とされている。また、捕集されたミストや粉塵は、第1スクリーンタンク及び第2スクリーンタンクの取り出し部から夫々回収することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の回収装置は、第1スクリーンタンクを内蔵しており、容積が大きくなっている。そのため、設置場所が制限されやすい。また、第1スクリーンタンクを取り出して掃除することは困難なため、回収装置内に粉塵が残りやすい。また、蛇腹の吸込みホースは、フレキシブルで、発生したスパッタに近づけやすい反面、蛇腹をなすホースの波状の部分にスパッタが溜まりやすい。そのため、流路が狭まって、ホースが詰まる場合がある。
【0006】
本発明は、省スペースでありながら、フィルタへの引火を抑えることができ、さらに、吸い込んだ微粒子がダクト内に残り難く、メンテナンス性に優れた集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示は、以下の態様を包含する。
態様1
金属の溶接の際に飛散する微粒子を除去するための集塵装置であって、
微粒子を含む空気を吸い込む吸込口を先端部に有し、前記吸込口の位置及び向きを調節可能に構成されたダクトと、
前記ダクトの前記先端部と反対側の接続端部が接続され、前記ダクトを通って取り込まれた空気を通過させるフィルタを有する装置本体と、を備え、
前記ダクトは、吸い込んだ空気の流路上に配置され、微粒子の一部が衝突するよう構成された構造体を有している、ことを特徴とする集塵装置。
【0008】
態様2
前記構造体は、前記ダクト内を空気が流れる方向と直交する前記ダクトの流路断面に対し傾斜した壁部を有している、態様1に記載の集塵装置。
【0009】
態様3
前記壁部を第1の壁部というとき、前記構造体は、前記第1の壁部に対し前記流路の下流側に設けられた少なくとも1つの第2の壁部をさらに有している、態様2に記載の集塵装置。
【0010】
態様4
前記第2の壁部の1つに衝突した微粒子が前記先端部の側に溜まるための溜まり部が形成されるよう、前記壁部のうち、当該第2の壁部の1つに対して前記流路の上流側に位置する他の壁部は前記ダクトの内壁に接続されている、態様3に記載の集塵装置。
【0011】
態様5
前記壁部は、前記流路断面の中心を通る前記ダクトの中心線の回りに回転するよう構成されている、態様2又は3に記載の集塵装置。
【0012】
態様6
前記構造体は、前記ダクトの前記流路の方向の両端部のうち前記先端部の側に配置されている、態様1から5のいずれか1項に記載の集塵装置。
【0013】
態様7
前記ダクトは、
ダクト本体と、
前記ダクト本体と共に前記流路を形成するよう、前記ダクト本体に対し前記流路の方向に着脱可能なダクト付加体と、を有し、
前記構造体は、前記ダクト付加体に設けられている、態様1から6のいずれか1項に記載の集塵装置。
【0014】
態様8
前記ダクト付加体よりも前記先端部の側に位置する前記ダクト本体の部分は金属製である、態様7に記載の集塵装置。
【0015】
態様9
前記ダクト付加体よりも前記先端部の側に位置する前記ダクト本体の部分の内壁面は、前記流路の方向に平坦である、態様7又は8に記載の集塵装置。
【0016】
態様10
前記フィルタは、前記ダクトの前記接続端部における開口を通る気流の方向と平行な方向に空気が前記フィルタを通過するように配置されている、態様1から9のいずれか1項に記載の集塵装置。
【0017】
態様11
前記装置本体は、微粒子に遠心力を作用させて分離するための旋回流が形成される、壁面に囲まれた空間を有しない、態様1から10のいずれか1項に記載の集塵装置。
【発明の効果】
【0018】
上記態様によれば、省スペースでありながら、フィルタへの引火を抑えることができ、さらに、吸い込んだ微粒子がダクト内に残り難く、メンテナンス性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本実施形態の一例による集塵装置の装置本体の内部構造を示す図である。
【
図2】本実施形態の一例による集塵装置のダクトを示す外観図である。
【
図3】一例による構造体の内部構造を示す、(a)斜視図及び(b)側面図である。
【
図4】一例による構造体の内部構造を示す、(a)斜視図及び(b)側面図である。
【
図5】一例による構造体の内部構造を示す、(a)斜視図及び(b)側面図である。
【
図6】一例による構造体の内部構造を示す、(a)斜視図及び(b)側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本実施形態の集塵装置について説明する。
【0021】
図1は、本実施形態の集塵装置の装置本体の内部構造を示す図である。
図2は、本実施形態の集塵装置のダクトを示す外観図である。
【0022】
集塵装置1は、金属の溶接の際に飛散する微粒子(以降、単に微粒子ともいう)を除去するための装置である。このような微粒子は、スパッタと呼ばれ、スラグや金属粒を含む。スパッタは、主に、アーク溶接やガス溶接などの溶融接合(融接)、ろう又ははんだを用いて接合するろう付及びはんだ付(ろう接)により発生する。
【0023】
集塵装置1は、ダクト10と、装置本体20と、を備える。
【0024】
ダクト10は、内部に空気の流路となる空洞を有する長尺状の部材である。ダクト10は、微粒子を含む空気を吸い込む吸込口11aを、先端部11に有している。ダクト10は、吸込口11aの位置及び向きを調節可能に構成されている。このようなダクト10は、吸込口11aを、溶接中に発生し、飛散するスパッタに近づけやすいので、溶接箇所やその周辺の金属の表面にスパッタが付着して溶接品質を妨げることを抑えられる。ダクト10は、好ましくは、流路が延びる方向(以降、流路の方向という)の少なくとも一部の区間が伸縮するよう構成され、吸込口11aの位置及び向きを調節可能になっている。
【0025】
装置本体20は、ダクト10と接続される集塵装置1の部分である。装置本体20には、ダクト10の先端部11に対し、流路の方向の反対側のダクト10の接続端部12が接続される。
図1に示す例の装置本体20には、接続端部12が接続される本体側接続部21が設けられている。
図1において、ダクト10の図示は省略される。
【0026】
装置本体20は、ダクト10を通って装置本体20内に取り込まれた空気を通過させるフィルタ30を有する。フィルタ30は、例えば、ガラス繊維又は有機繊維の不織布からなる図示されない濾材を備える集塵フィルタである。濾材は、例えば、プリーツ形状を有しており、プリーツ間隔を保つための部材と共に、枠体に取り囲まれて保持されている。濾材の濾過性能は、特に制限されないが、中性能フィルタであれば、計数法で20~99%の濾材を使用することができる。
【0027】
図1に示す例の装置本体20は、フィルタ30に対して装置本体20内の空気の流路の上流側に配置されたプレフィルタ40をさらに有する。濾材は、例えば、ガラス繊維(湿式不織布、長繊維、短繊維)または合成繊維を繊維材料とする、マット状、フェルト状のものが用いられる。プレフィルタ40は、濾過性能が、例えば、質量法で30~99%の濾材(不図示)を備えている。プレフィルタ40は、
図1に示す例において、濾過性能の異なるものを複数重ねて配置することができる。
【0028】
装置本体20は、さらに、送風機50、排気口(不図示)、キャスタ60を備える。送風機50は、図示されないファン及びモータを備え、外部から電源が供給されることによりファンを回転駆動して、ダクト10の吸込口11aから吸い込んで排気口から排出される空気の流れを形成する。吸込口11aにおける吸引風速は、好ましくは10m/s以上であり、より好ましくは12m/s以上である。このような風速で空気を吸引することにより、熱をもった微粒子を速く冷却でき、ダクト10内を流れる微粒子がダクト10の内壁や後述する構造体70に付着することを抑制できる。そのため、ダクト10内に残った微粒子を取り除くための掃除がしやすくなる。
【0029】
排気口は、
図1の奥行方向を向く集塵装置1の側面をなす筐体の部分の破線で囲んだ領域内に設けられた複数の孔(不図示)を含む。キャスタ60は、筐体の底部に設けられ、溶接の現場で、集塵装置1を移動させることができる。
【0030】
ダクト10は、
図3~
図6に示すように、空気の流路上に配置される構造体70を有している。
図3~
図6は、それぞれ、後述するダクト付加体13の内側に配置された構造体70を示す図である。構造体70は、吸い込んだ微粒子の一部が衝突するよう構成されている。そのため、構造体70は、吸い込んだ空気の流路上に流路断面の一部を遮るように配置される。これにより、ダクト10内に吸い込まれた空気に含まれる微粒子を払い落とし、熱をもった微粒子が装置本体20内に入り込むのを抑えることができる。構造体70は、吸い込んだ微粒子の少なくとも一部が衝突するものであり、全部が衝突するものであってもよい。
【0031】
このように、吸い込んだ空気に含まれる微粒子を構造体70に衝突させて、装置本体20内に入り込む前に払い落とすことができるので、上述の集塵装置1によれば、熱をもった微粒子が濾材に引火し、フィルタ30、40が燃えることを防止できる。そして、構造体70は装置本体20の外側に配置されているので、装置本体20内に微粒子を払い落とすための空間や装置を確保する必要がなく、装置本体20を小型化でき、省スペースな集塵装置1を構成することができる。さらに、集塵装置1によれば、微粒子を構造体70に衝突させて払い落とせるので、ダクト10内に微粒子が残り難い。ダクト10内に微粒子が残っているとしても、構造体70を含むダクト10の一部あるいはダクト10全体を交換もしくは清掃することで、微粒子を取り除くことができるので、ダクト10内に残った微粒子によってダクト10が詰まることを防止できる。すなわち、集塵装置1によれば、省スペースでありながら、フィルタ30、40への引火を抑えることができ、さらに、吸い込んだ微粒子がダクト10内に残り難く、メンテナンス性に優れる。
【0032】
なお、ダクト10内に残る微粒子には、ダクト10の内壁や後述する溜まり部10aに溜まった微粒子のほか、構造体70やダクト10の内壁に付着した微粒子も含まれる。
【0033】
構造体70は、
図3~
図6に示す例のように、ダクト10内を空気が流れる方向と直交するダクト10の流路断面に対して傾斜した壁部71を有していることが好ましい。これにより、空気の流れを過度に妨げないようにしつつ、吸い込んだ空気に含まれる比較的サイズの大きい微粒子を払い落とすことができる。なお、比較的サイズの小さい粒子はフィルタ30、40に到達するが、比較的サイズの小さい粒子のもつ熱量は小さいため、仮に装置本体20内に入り込んでも、フィルタ30、40に引火するリスクは低い。壁部71の表面は平滑面であることが好ましい。壁部71の流路断面に対する傾斜角度は、例えば、20度以上であり、30度以上である。一方、壁部71の流路断面に対する傾斜角度が大きすぎると、吸い込んだ空気の流速が速い場合に、微粒子が十分に冷却されずに装置本体20内に取り込まれるおそれがあるため、壁部71の流路断面に対する傾斜角度は、80度以下であることが好ましく、60度以下であることが好ましい。
【0034】
壁部71を第1の壁部というとき、構造体70は、
図3及び
図4に示す例のように、第1の壁部71に対し流路の下流側に設けられた少なくとも1つの第2の壁部72をさらに有していることが好ましい。すなわち、構造体70は、流路の方向に複数の壁部71、72を有していることが好ましい。これにより、ダクト10内に吸い込んだ空気中の微粒子が壁部71、72と衝突する機会が増え、より多くの微粒子を払い落とすことができる。また、微粒子が壁部71、72と衝突する機会を増やすことで、上流側に流れた微粒子が装置本体20内に入り込むまでの時間を稼ぎ、微粒子を十分に冷却できるので、フィルタ30、40の引火のリスクを減らす効果が増す。このような観点から、流路の方向に隣り合う2つの壁部を流路の方向に見たときの、壁部それぞれが流路断面を遮る領域は、
図3及び
図4に示す例の壁部のように、互いに異なっていることが好ましく、一部が重なっていることがより好ましい。これにより、隣り合う2つの壁部のうち下流側の壁部に衝突した微粒子を、後述する溜まり部10aに導きやすくなる。なお、
図4に示す例の構造体70は、複数の第2の壁部72a、72b、72c、72d、72e、72f、72gを有している。以降、わかりやすく説明するため、第2の壁部72a~72gをまとめて第2の壁部72という場合がある。第2の壁部72は、
図4に示す例のように、流路断面に対し傾斜していることが好ましい。
【0035】
さらに、
図3及び
図4に示す例のように、第2の壁部72の1つに衝突した微粒子がダクト10の先端部11の側に溜まるための溜まり部10aが形成されるよう、壁部71、72のうち、当該第2の壁部72の1つに対して流路の上流側に位置する他の壁部71又は72はダクト10の内壁に接続されていることが好ましい。このような溜まり部10aには、壁部72に衝突して払い落とされた微粒子が集まりやすいので、ダクト10あるいはダクト10の一部を清掃する際に、微粒子を取り除きやすい。また、ダクト10内に吸い込む空気の風量を大きくすることで、溜まり部10aに溜まった微粒子を装置本体20内に意図的に取り込み、プレフィルタ40に捕集させることができる。微粒子のもつ熱量は、溜まり部10aに溜まっている間に十分に小さくなっているので、フィルタ30,40に引火することはない。また、プレフィルタ40に捕集させた微粒子は、外部に取り出せない装置本体内の部分に微粒子が堆積した場合と比べ、装置本体20内から取り除きやすい。ダクト10内に吸い込む空気の風量の調節は、例えば、溶接中に集塵装置1を稼働させるときの通常の風量(基準風量)よりも、ファンの回転数を上げるように送風機50を稼働させることで行われる。
【0036】
壁部71は、
図5に示す例のように、流路断面の中心を通るダクト10の中心線Cの回りに、ダクト10の内壁に対して回転するよう構成されていることも好ましい。
図5に示す例の壁部71は、ハブに取り付けられた複数の羽根からなる。
図5に示す例の壁部71は、吸い込んだ空気を受けることで回転し、壁部71によって遮られる流路断面の領域は常に変化する。ダクト10の曲がり具合によっては、微粒子が通過する流路断面の領域に偏りが生じ、壁部71が壁部71に衝突し難くなる場合がある。そのため、壁部71が回転し、壁部71が遮る流路断面の領域を変化させることで、微粒子が通過する流路断面の領域の偏りに起因して壁部に衝突しない微粒子が増えるのを抑えることができる。
【0037】
図3~
図6に示した構造体70は、具体的に、下記のように構成されている。なお、
図3~
図6に示す矢印は、ダクト10に吸い込まれた空気が流れる方向を表す。
図3~
図6に示す壁部71、72は、理解のしやすさのため、適宜、厚さ(板厚)を省略して表している。
【0038】
図3に示す例の構造体70は、2つの壁部71、72を有している。壁部71は、円錐の頂点を含む部分(頂部)を省略して開口した円錐の残りの側面をなす形状を有し、開口した部分がそれ以外の部分に対し流路の下流側に位置するように配置される。壁部71の最も上流側に位置する部分はダクト10の内壁に接続され、壁部71の下流側に、ダクト10の内壁と壁部71とに囲まれた溜まり部10aが形成されている。一方、壁部72は、ダクト10の内壁に接続されず、壁部71とは部材を介して接続されている。
【0039】
図4に示す例の構造体70は、ダクト10の内壁の一端に接続し、当該一端から、流路断面に対し傾斜して流路を横切るように延び、途中で終端する壁部71、72b、72d、72fと、ダクト10の内壁の、上記一端と反対側の他端に接続し、当該他端から、流路断面に対し、壁部71、72b、72d、72fが傾斜する側と反対側に傾斜して流路を横切るように延び、途中で終端する壁部72a、72c、72e、72gと、を有しており、これら2種類の壁部が流路の方向に交互に配置されている。壁部71、72a~72fの下流側には溜まり部10aが形成されている。
【0040】
図5に示す回転体のハブは、流路を横切るようにダクト10の内壁の間に掛け渡した支持部材(不図示)に回転自在に支持される。
【0041】
図6に示す例の壁部71は、流路断面の中心を通るダクト10の中心線Cの回りを回りながら流路の方向に延びる螺旋形状を有している。中心線Cの回りを壁部71が回る回数は、微粒子を払い落としつつ吸い込む空気の風量を確保する観点から、好ましくは2~6回である。
【0042】
構造体70は、
図3~
図6に示す例に制限されず、他の形態を有するよう構成されていてもよい。また、ダクト10には、異種又は同種の複数の構造体70が流路の方向に並ぶように配置されていてもよい。これにより、サイズのより小さい微粒子を払い落とす効果が増す。
【0043】
構造体70は、ダクト10の流路の方向の両端部11、12のうち先端部11の側に配置されていることが好ましい。先端部11の側とは、ダクト10の流路の長さ方向の中心よりも先端部11の側のダクト10の部分を意味する。これにより、吸込口11aに近い位置で微粒子を構造体70に衝突させることができ、ダクト10内に残る微粒子の量を低減できる。そのため、ダクト10の清掃をしやすくなる。
図2に示す例のダクト10は、流路の断面積が吸込口11aに向かって大きくなる逆テーパー形状の先端部11を有しており、この先端部11の下流側に隣接して、構造体70が設けられる後述するダクト付加体13が設けられている。ダクト付加体13は、ダクト本体14と共に流路を形成する管を有している。
【0044】
ダクト10は、
図2に示す例のように、ダクト本体14と、ダクト付加体13と、を有していることが好ましい。ダクト本体14は、ダクト付加体13以外のダクト10の部分である。構造体70は、ダクト付加体13に設けられている。ダクト付加体13は、ダクト本体14と共に流路を形成するよう、ダクト本体14に対し流路の方向に着脱可能である。このような構成によれば、ダクト10を清掃する際に、ダクト付加体13をダクト本体14から取り外して、ダクト付加体13及びダクト本体14それぞれ個別に清掃できるので、清掃がしやすい。また、微粒子が残りやすいダクト付加体13の交換や、ダクト10全体、あるいは、ダクト付加体13よりも先端部11の側のダクト本体14の部分の交換もしやすい。特に、ダクト付加体13は、構造体70に微粒子が付着し、清掃が困難な場合があるため、このようにダクト本体14から取り外せることは有効である。
【0045】
ダクト付加体13を着脱するための構造には、例えば、ダクト本体14及びダクト付加体13の互いに取り付けられる端部に設けた、嵌め合い構造や雄ネジ及び雌ネジが採用される。また、例えば、ダクト本体14及びダクト付加体13の互いに取り付けられる端部を重ねて、その外周側から、一部が途切れたリング状の部材で締め付けるあるいは緩めることで、ダクト付加体13の着脱を行えるようになっていてもよい。
【0046】
ダクト付加体13よりも先端部11の側に位置するダクト本体14の部分は金属製であることが好ましい。このようなダクト本体14の部分は、
図2に示す例において、ダクト付加体13の下流側に隣接して設けられた先端部11である。このようなダクト本体14の部分には、熱をもった微粒子が接触しやすいので、金属製であると、ダクト本体14の損傷を抑えられる。この観点から、ダクト付加体13及び構造体70も金属製であることが好ましい。金属には、例えば、アルミニウム合金やステンレスを用いることができ、皮膜やめっきで被覆されたものを好ましく用いることができる。
【0047】
先端部11よりも下流側に位置するダクト本体14の部分は、吸込口11aの位置及び向きを調節可能なダクト10の機能を確保するため、蛇腹等の伸縮可能なホースからなるのが好ましい。ダクト付加体13の下流側に流れる微粒子の量は少ないため、伸縮可能なホースの部分(例えば、蛇腹ホースの波状の部分)に微粒子が残ることは少ない。
【0048】
ダクト付加体13よりも先端部11の側に位置するダクト本体14の部分の内壁面は、流路の方向に平坦な平滑面であることが好ましい。蛇腹ホースの波状の部分には、ダクト10内に残る微粒子が溜まりやすいが、このような構成によれば、微粒子が吸込口11aから落下して排出されやすく、ダクト10内に残り難い。
【0049】
フィルタ30は、ダクト10の接続端部12における開口(不図示)を通る気流の方向と平行な方向(
図1の矢印で示す方向)に空気がフィルタ30を通過するように配置されていることが好ましい。集塵装置1には、上述のように、ダクト10に構造体70が設けられており、吸い込んだ空気中の微粒子の多くはダクト10内で払い落とされる。そのため、特許文献1に記載された第1スクリーンタンクのような、微粒子に遠心力を作用させて分離するための旋回流が形成される、壁面に囲まれた空間を、装置本体20内に設ける必要がない。集塵装置1を小型化する観点からは、フィルタ30が上記のように配置されていることが好ましい。そのため、装置本体20は、微粒子に遠心力を作用させて分離するための旋回流が形成される、壁面に囲まれた空間を有しないことが好ましい。
【0050】
ダクト10の接続端部12の、集塵装置1の設置面からの高さ位置は、
図1に示すように、フィルタ30が位置する高さ範囲の中心よりも上方に位置していることが好ましい。金属の溶接中に飛散する微粒子は、空気中を浮遊する塵埃と比べ重いため、落下しやすい。そのため、ダクト10の接続端部12の高さ位置を上記のように高くすることで、落下した微粒子がフィルタ30、40の濾材に捕集されやすくすることができる。
【0051】
以上、本発明の集塵装置について詳細に説明したが、本発明の集塵装置は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更をしてもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0052】
1 集塵装置
10 ダクト
10a 溜まり部
11 先端部
11a 吸込口
12 接続端部
13 ダクト付加体
14 ダクト本体
20 装置本体
21 本体側接続部
30 フィルタ
40 プレフィルタ
50 送風機
60 キャスタ
70 構造体
71 第1壁部
72、72a、72b、72c、72d、72e、72f、72g 第2壁部