(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143513
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】多孔質シリカ粒子及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 33/18 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C01B33/18 D
C01B33/18 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056237
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000190024
【氏名又は名称】日揮触媒化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120086
【弁理士】
【氏名又は名称】▲高▼津 一也
(72)【発明者】
【氏名】江上 美紀
(72)【発明者】
【氏名】荒金 宏忠
(72)【発明者】
【氏名】村口 良
【テーマコード(参考)】
4G072
【Fターム(参考)】
4G072AA25
4G072BB05
4G072DD01
4G072DD02
4G072DD03
4G072GG01
4G072GG03
4G072HH18
4G072LL06
4G072MM32
4G072MM36
4G072QQ01
4G072RR12
4G072RR15
4G072TT01
4G072TT06
4G072TT09
4G072TT30
4G072UU17
(57)【要約】 (修正有)
【課題】担持物質の性能をより効果的に発揮させることができる多孔質シリカ粒子、及びその製造方法の提供。
【解決手段】多孔質二次粒子が連結した三次粒子から構成され、下記の要件を満たす多孔質シリカ粒子。
(1)平均粒子径が50~1000μm
(2)比表面積が30~250m
2/g
(3)細孔容積が0.10~0.75ml/g
(4)細孔径分布において、2~50nmの範囲の細孔径(Pms
1)のメソ孔ピークと、50超~2000nmの範囲の細孔径(Pms
2)のマクロ孔ピークを有し、前記細孔径(Pms
1)のメソ孔ピークは、1つのピークであるか、2つのピークである
(5)(Pms
1)×0.75~(Pms
1)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の容積と、(Pms
2)×0.75~(Pms
2)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の容積との合計細孔容積が、全細孔容積の40%以上
(6)空隙率が15~65%
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質二次粒子が連結した三次粒子から構成され、下記(1)~(6)の要件を満たすことを特徴とする多孔質シリカ粒子。
(1)平均粒子径が50~1000μmの範囲
(2)比表面積が30~250m2/gの範囲
(3)細孔容積が0.10~0.75ml/gの範囲
(4)細孔径分布(X軸:細孔径[Ps]、Y軸:細孔容積を細孔径で微分した値)において、2~50nmの範囲の細孔径(Pms1)のメソ孔ピークと、50超~2000nmの範囲の細孔径(Pms2)のマクロ孔ピークを有し、前記細孔径(Pms1)のメソ孔ピークは、細孔径(Pms1a)の1つのピークであるか、細孔径(Pms1a)及び細孔径(Pms1b)の2つのピークである
(5)(Pms1)×0.75~(Pms1)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の容積と、(Pms2)×0.75~(Pms2)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の容積との合計細孔容積が、全細孔容積の40%以上
(6)空隙率が15~65%の範囲
【請求項2】
前記メソ孔ピークが1つのピークであり、下記(5A)の要件を満たすことを特徴とする請求項1記載の多孔質シリカ粒子。
(5A)(Pms1a)×0.75~(Pms1a)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積が、全細孔容積の20~70%の範囲、かつ、(Pms2)×0.75~(Pms2)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積が、全細孔容積の10~50%の範囲
【請求項3】
前記メソ孔ピークが2つのピークであり、下記(5B)の要件を満たすことを特徴とする請求項1記載の多孔質シリカ粒子。
(5B)(Pms1a)×0.75~(Pms1a)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積が、全細孔容積の1~50%の範囲、かつ、(Pms1b)×0.75~(Pms1b)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積が、全細孔容積の1~50%の範囲、かつ、(Pms2)×0.75~(Pms2)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積が、全細孔容積の10~50%の範囲
【請求項4】
粒子径変動係数が2~10%の範囲、かつ平均粒子径が10~300nmの球状シリカ微粒子である一次粒子の分散液を準備するA工程と、
前記A工程で得られた一次粒子を含む噴霧液を気流中に噴霧して球状シリカ微粒子集合体である二次粒子を調製するB工程と、
前記B工程で得られた二次粒子と、粒子径変動係数が2~10%の範囲、平均粒子径が10~300nm、かつ前記A工程で調製された一次粒子と同等又はこれを超える平均粒子径の球状シリカ微粒子であるバインダー粒子とを、二次粒子及びバインダー粒子の質量割合(二次粒子:バインダー粒子)98:2~60:40で混合し、混合粒子分散液を調製するC工程と、
前記C工程で得られた混合粒子を含む噴霧液を気流中に噴霧して二次粒子集合体である三次粒子を調製するD工程と、
前記D工程で得られた三次粒子を温度150~600℃の範囲で加熱処理するE工程と、
を有することを特徴とする多孔質シリカ粒子の製造方法。
【請求項5】
前記バインダー粒子の平均粒子径が150nm以下であることを特徴とする請求項4記載の多孔質シリカ粒子の製造方法。
【請求項6】
前記C工程における二次粒子とバインダー粒子の質量割合(二次粒子:バインダー粒子)が95:5~75:25であることを特徴とする請求項4記載の多孔質シリカ粒子の製造方法。
【請求項7】
前記B工程で得られた二次粒子を温度150~600℃の範囲で加熱処理するF工程を有することを特徴とする請求項4記載の多孔質シリカ粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酵素、触媒等の担体として有用な多孔質シリカ粒子、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリカ微粒子を噴霧乾燥することにより微粒子の集合体(多孔質粒子)を製造する技術は古くから知られており、例えば、特許文献1には、平均粒子径250nm以下の一次粒子を含むコロイド液を噴霧乾燥することにより平均粒子径1~20μmの無機シリカ粒子を製造する技術が開示されている。
【0003】
また、このような技術を利用して、担体用粒子として有用な多孔質シリカ粒子を製造することが提案されている(特許文献2参照)。この多孔質シリカ粒子は、粒子内部に形成されたメソ細孔の径の均一性が高いことから、金属微粒子からなる触媒物質の凝集を抑制して触媒性能を効果的に発揮させることができるという特徴を有する。
【0004】
また、メソ細孔に加えてマクロ細孔を有する多孔質シリカを製造することも提案されている(特許文献3、4参照)。
【0005】
【特許文献1】特開昭61-270201号公報
【特許文献2】特開2010-138021号公報
【特許文献3】国際公開2003-2458号
【特許文献4】特開2009-73681号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
多孔質シリカ粒子は、上記のように、触媒の担体等として有用であり、担体としてのさらなる性能の向上が求められている。
【0007】
本発明の課題は、担持物質の性能をより効果的に発揮させることができる多孔質シリカ粒子、及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定の要件を満たす三次粒子から構成される多孔質シリカ粒子が、担体用粒子として極めて有用であることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、多孔質二次粒子が連結した三次粒子から構成され、下記(1)~(6)の要件を満たす多孔質シリカ粒子に関する。
(1)平均粒子径が50~1000μmの範囲
(2)比表面積が30~250m2/gの範囲
(3)細孔容積が0.10~0.75ml/gの範囲
(4)細孔径分布(X軸:細孔径[Ps]、Y軸:細孔容積を細孔径で微分した値)において、2~50nmの範囲の細孔径(Pms1)のメソ孔ピークと、50超~2000nmの範囲の細孔径(Pms2)のマクロ孔ピークを有し、前記細孔径(Pms1)のメソ孔ピークは、細孔径(Pms1a)の1つのピークであるか、細孔径(Pms1a)及び細孔径(Pms1b)の2つのピークである
(5)(Pms1)×0.75~(Pms1)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の容積と、(Pms2)×0.75~(Pms2)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の容積との合計細孔容積が、全細孔容積の40%以上
(6)空隙率が15~65%の範囲
【0010】
また、本発明は、粒子径変動係数(CV値)が2~10%の範囲、かつ平均粒子径が10~300nmの球状シリカ微粒子である一次粒子の分散液を準備するA工程と、前記A工程で得られた一次粒子を含む噴霧液を気流中に噴霧して球状シリカ微粒子集合体である二次粒子を調製するB工程と、前記B工程で得られた二次粒子と、粒子径変動係数が2~10%の範囲、平均粒子径が10~300nm、かつ前記A工程で調製された一次粒子と同等又はこれを超える平均粒子径の球状シリカ微粒子であるバインダー粒子とを、二次粒子及びバインダー粒子の質量割合(二次粒子:バインダー粒子)98:2~60:40で混合し、混合粒子分散液を調製するC工程と、前記C工程で得られた混合粒子を含む噴霧液を気流中に噴霧して二次粒子集合体である三次粒子を調製するD工程と、前記D工程で得られた三次粒子を温度150~600℃の範囲で加熱処理するE工程と、を有する多孔質シリカ粒子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、担持物質の性能をより効果的に発揮させることができる多孔質シリカ粒子、及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の触媒等を担持した多孔質シリカ粒子をカラムに充填して反応させる状態を示す概略図である。
【
図2】従来の触媒等を担持した多孔質シリカ粒子をカラムに充填して反応させる状態を示す概略図である。
【
図3】従来の触媒等を担持した多孔質シリカ粒子をカラムに充填して反応させる状態を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[多孔質シリカ粒子]
本発明の多孔質シリカ粒子は、多孔質二次粒子が連結した三次粒子から構成されており、下記(1)~(6)の要件を満たす。
【0014】
(1)平均粒子径が50~1000μmの範囲
(2)比表面積が30~250m2/gの範囲
(3)細孔容積が0.10~0.75ml/gの範囲
(4)細孔径分布(X軸:細孔径[Ps]、Y軸:細孔容積を細孔径で微分した値)において、2~50nmの範囲の細孔径(Pms1)のメソ孔ピークと、50超~2000nmの範囲の細孔径(Pms2)のマクロ孔ピークを有し、前記細孔径(Pms1)のメソ孔ピークは、細孔径(Pms1a)の1つのピークであるか、細孔径(Pms1a)及び細孔径(Pms1b)の2つのピークである
(5)(Pms1)×0.75~(Pms1)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の容積と、(Pms2)×0.75~(Pms2)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の容積との合計細孔容積が、全細孔容積の40%以上
(6)空隙率が15~65%の範囲
【0015】
本発明の多孔質シリカ粒子(
図1)は、多孔質二次粒子が連結した三次粒子から構成されていることから、反応液又は反応ガス(以下、単に反応液という)が三次粒子内のマクロ孔をスムーズに流通し、粒子のメソ孔内に素早く拡散することで、メソ孔内に担持された担持物質と反応液が効率的に接触するため、担持物質の性能を効果的に発揮させることができる。一方、本発明の三次粒子と同様の大きさの二次粒子を用いる場合(
図2)には、かかる粒子は、そもそも製造時に欠損や割れが生じて均一な粒子の製造が困難である上、反応液が粒子の内部まで拡散しにくく、二次粒子表面近傍の担持物質にしか接触しないため、反応液と担持物質との接触が不十分で、担持物質の性能を十分に発揮させることができない。また、本発明の三次粒子を構成する小径の二次粒子を用いる場合(
図3)には、粉体としての取り扱いが困難な上、粒子間の隙間が小さく反応液が流れにくく、反応液と担持物質とが効率的に接触せず、担持物質の性能を十分に発揮させることができない。さらに、粒子と反応液の分離も困難である。
【0016】
本発明の多孔質シリカ粒子は、所定の機能を有する機能性物質を担持して用いることができる。例えば、酵素担体用、触媒担体用、吸着剤担体用等を例示することができ、酵素担体用又は触媒担体用が好ましい。本発明の多孔質シリカ粒子を機能性物質の担持用として用いる場合、バッチ式容器に収容して用いてもよく、連続式のカラムに収容して用いてもよいが、カラムに収容して連続式として用いる場合、特に本発明の効果が発揮される。また、本発明の多孔質シリカ粒子は、担持物質を担持することなく、吸着材として用いることもできる。
【0017】
以下、各要件について説明する。
(1)平均粒子径
本発明の多孔質シリカ粒子の平均粒子径は、50~1000μmの範囲である。本発明の粒子は、多孔質二次粒子が連結した三次粒子から構成されており、特許文献2に示されるような二次粒子から構成される従来の粒子に比較して大きな粒子である。このような平均粒子径であることにより、粉体として取り扱いが容易であると共に、カラム等に粒子を充填した場合に、粒子間にある程度の隙間を確保することができ、反応液をスムーズに流通させて反応液と担持物質とを効率的に接触させることができる。平均粒子径は、80~800μmの範囲が好ましく、100~500μmの範囲がより好ましい。
【0018】
本発明の平均粒子径は、レーザー回折・散乱法により測定したものである。
【0019】
(2)比表面積
本発明の多孔質シリカ粒子の比表面積は、30~250m2/gの範囲である。比表面積が30m2/g未満であると、担体として用いる場合、大量に使用する必要があり、経済的に不利である。また、比表面積が250m2/gを超えると反応生成物の再吸着などが起こりやすく反応効率が低下する恐れがあり、また、粒子の強度が不充分となる恐れがある。比表面積は、40~250m2/gの範囲が好ましく、40~200m2/gの範囲がより好ましい。
【0020】
本発明の比表面積は、窒素ガスを用いたBET法により測定したものである。
【0021】
(3)細孔容積
本発明の多孔質シリカ粒子の細孔容積は、0.10~0.75ml/gの範囲である。細孔容積が0.10ml/g未満であると、担体として用いる場合、担持物質の担持量が少なくなるため、大量に使用する必要があり、経済的に不利である。細孔容積が0.75ml/gを超えると、粒子の強度が不充分となる。細孔容積は、0.20~0.60ml/gの範囲が好ましく、0.30~0.50未満ml/gの範囲がより好ましい。
【0022】
本発明の細孔容積は、メソ孔(2~50nm)とマクロ孔(50超~2000nm)の細孔容積の合計であり、メソ孔については、窒素を用いたBJH法で、マクロ孔については、水銀圧入法により測定する。また、細孔分布、細孔径(ピーク値)も同様に、それぞれBJH法と水銀圧入法によって求める。
【0023】
なお、本発明の多孔質シリカ粒子におけるマクロ孔の細孔容積の割合は、粒子全体の細孔容積の10%以上であることが好ましく、15~75%であることがより好ましく、20~70%であることがさらに好ましい。
【0024】
(4)細孔分布におけるピーク
本発明の多孔質シリカ粒子は、細孔径分布(X軸:細孔径[Ps]、Y軸:細孔容積を細孔径で微分した値)において、2~50nmの範囲の細孔径(Pms1)のメソ孔ピークと、50超~2000nmの範囲の細孔径(Pms2)のマクロ孔ピークを有し、細孔径(Pms1)のメソ孔ピークは、細孔径(Pms1a)の1つのピークであるか、細孔径(Pms1a)及び細孔径(Pms1b)の2つのピーク(Pms1a<Pms1b)である。すなわち、本発明の多孔質シリカ粒子は、メソ孔領域のピーク1つとマクロ孔領域のピーク1つを有する態様と、メソ孔領域のピーク2つとマクロ孔領域のピーク1つを有する態様とを含む。本発明の多孔質シリカ粒子は、メソ孔領域の比較的シャープなピークとマクロ孔領域のピークを有することから、触媒機能等を有する担持物質を、メソ孔内に凝集を抑制した状態で担持しつつ、カラム等に充填した際、マクロ孔を介して反応液がスムーズに流通し、反応液と担持物質との接触が効率的に行われる。ピーク細孔径(Pms1)は、2~40nmの範囲が好ましく、3~30nmの範囲がより好ましい。ピーク細孔径(Pms2)は、200~1500nmの範囲が好ましく、500~1300nmの範囲がより好ましい。
【0025】
ここで、細孔径(Pms2)のピークに基づくマクロ孔は、二次粒子間に形成される細孔(二次粒子を結合するバインダー粒子によって形成された細孔)である。また、メソ孔ピークが、細孔径(Pms1a)及び細孔径(Pms1b)の2つのピークである(Pms1a<Pms1b)場合の細孔径(Pms1b)のピークに基づくメソ孔も、二次粒子間に形成される細孔である。なお、細孔径(Pms1a)のピークに基づくメソ孔は、二次粒子内の細孔であり、バインダー粒子の添加量が増加することにより、細孔径(Pms1a)のピークに基づくメソ孔の細孔容積1aは減少し、細孔径(Pms1b)のピークに基づくメソ孔の細孔容積1bは増加する。
【0026】
(5)細孔容積の割合
本発明の多孔質シリカ粒子は、(Pms1)×0.75~(Pms1)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の容積と、(Pms2)×0.75~(Pms2)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の容積との合計細孔容積が、全細孔容積の40%以上である。なお、メソ孔領域に細孔径Pms1a及びPms1bの2つのピークを有する場合、Pms1に基づく細孔の容積は、Pms1aに基づく細孔の容積とPms1bに基づく容積の和である。
【0027】
全細孔容積の40%未満であると、細孔径分布が不均一であり、比較的大きな細孔に応力が集中し、実用上強度が弱くなるなどの問題が生じ易くなる。合計細孔容積は、全細孔容積の50%以上が好ましく、55~80%がより好ましい。
【0028】
また、(Pms1)×0.75~(Pms1)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積は、全細孔容積の20~70%の範囲が好ましく、30~50%の範囲がより好ましい。また、(Pms2)×0.75~(Pms2)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積は、全細孔容積の10~50%の範囲が好ましく、20~40%の範囲がより好ましい。
【0029】
また、(Pms1)×0.75~(Pms1)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積は、メソ孔領域(2~50nm)の全細孔容積の50~80%の範囲が好ましく、60~80%の範囲がより好ましい。また、(Pms2)×0.75~(Pms2)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積は、マクロ孔領域(50超~2000nm)の全細孔容積の20~80%の範囲が好ましく、30~70%の範囲がより好ましい。
【0030】
ここで、メソ孔ピークが1つのピークである場合、本発明の多孔質シリカ粒子は、下記(5A)の要件を満たすことが好ましい。
【0031】
(5A)(Pms1a)×0.75~(Pms1a)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積が、全細孔容積の20~70%の範囲、かつ、(Pms2)×0.75~(Pms2)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積が、全細孔容積の10~50%の範囲
【0032】
(Pms1a)×0.75~(Pms1a)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積は、全細孔容積の20~50%の範囲がより好ましい。また、(Pms2)×0.75~(Pms2)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積は、全細孔容積の10~30%の範囲が好ましい。
【0033】
また、メソ孔ピークが2つのピークである場合、本発明の多孔質シリカ粒子は、下記(5B)の要件を満たすことが好ましい。
【0034】
(5B)(Pms1a)×0.75~(Pms1a)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積が、全細孔容積の1~50%の範囲、かつ、(Pms1b)×0.75~(Pms1b)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積が、全細孔容積の1~50%の範囲、かつ、(Pms2)×0.75~(Pms2)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積が、全細孔容積の10~50%の範囲
【0035】
(Pms1a)×0.75~(Pms1a)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積は、全細孔容積の10~40%の範囲がより好ましい。また、(Pms1b)×0.75~(Pms1b)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積は、全細孔容積の10~40%の範囲がより好ましい。(Pms2)×0.75~(Pms2)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積は、全細孔容積の20~40%の範囲がより好ましい。
【0036】
なお、本発明の多孔質シリカ粒子は、細孔径が5nm未満の細孔が、全細孔容積の5%以上であることが好ましい。
【0037】
(6)空隙率
本発明の多孔質シリカ粒子は、空隙率が15~65%の範囲である。空隙率が15%未満であると、担体として用いる場合、担持できる物質の量が僅かとなり、実用的ではない。空隙率が65%を超えると、粒子の強度を保てなくなる場合がある。空隙率は、30~60%の範囲が好ましく40~55%の範囲がより好ましい。
【0038】
本発明の空隙率は、BJH法と水銀注入法により求めた細孔容積から、下記式(1)による計算によって求められるものである。
【0039】
空隙率(%)=細孔容積/(細孔容積+0.4545)*100・・・式(1)
0.4545(cm3/g)=シリカ1gの体積(シリカの密度=2.2g/cm3より算出)
【0040】
本発明の多孔質シリカ粒子は、所望により表面処理されていてもよい。表面処理により、粒子の強度を向上させることができる。担体として使用する場合には、担持物質との親和性を高め、担持力を高める効果がある。また、吸着材として使用する場合には、選択性を高め、目標とする吸着質の吸着効率を高める効果が期待される。
【0041】
例えば、下記一般式で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解物を、酸又はアルカリと共に添加することにより、粒子の表面に有機官能基を有するシリカ系被覆層を形成することができる。
【0042】
一般式:RnSi(OR′)4-n
〔但し、RおよびR′は、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基、ビニル基またはアクリル基から選ばれる炭化水素基であり、nは0、1、2または3の整数である。〕
【0043】
本発明の多孔質シリカ粒子は、用途によって各種形状を採用することができ、例えば、楕円形、真円形等の球状のものの他、円柱状、棒状等の各種形状が挙げられる。
【0044】
[多孔質シリカ粒子の製造方法]
上記のような多孔質シリカ粒子は、例えば、以下のような方法により製造することができる。すなわち、本発明の多孔質シリカ粒子の製造方法は、粒子径変動係数が2~10%の範囲、かつ平均粒子径が10~300nmの球状シリカ微粒子である一次粒子の分散液を準備するA工程と、前記A工程で得られた一次粒子を含む噴霧液を気流中に噴霧して球状シリカ微粒子集合体である二次粒子を調製するB工程と、前記B工程で得られた二次粒子と、粒子径変動係数が2~10%の範囲、平均粒子径が10~300nm、かつ前記A工程で調製された一次粒子と同等又はこれを超える平均粒子径の球状シリカ微粒子であるバインダー粒子とを、二次粒子及びバインダー粒子の質量割合(二次粒子:バインダー粒子)98:2~60:40で混合し、混合粒子分散液を調製するC工程と、前記C工程で得られた混合粒子を含む噴霧液を気流中に噴霧して二次粒子集合体である三次粒子を調製するD工程と、前記D工程で得られた三次粒子を温度150~600℃の範囲で加熱処理するE工程と、を有する。
【0045】
以下、各工程について説明する。
(A工程)
A工程では、粒子径変動係数が2~10%の範囲、かつ平均粒子径が10~300nmの球状シリカ微粒子である一次粒子の分散液を準備する。
【0046】
具体的に、例えば、平均粒子径10~300nm、好ましくは平均粒子径10~100nmの球状シリカ微粒子の分散液を調製し、遠心分離処理を行って、粗大粒子を分離し、粒子径変動係数を2~10%の範囲に調整することにより、粒子径分布が単分散相を示す所望の球状シリカ微粒子分散液を調製する。
【0047】
遠心分離処理条件については、通常は、球状シリカ微粒子分散液の濃度が1~50質量%で、遠心力が500~20000×gの範囲が推奨される。
【0048】
なお、上記所定の球状シリカ微粒子分散液を購入して使用してもよい。
【0049】
本発明の一次粒子の平均粒子径及び粒子径変動係数(CV値)は、画像解析法により測定されるものである。
【0050】
(B工程)
B工程では、A工程で得られた一次粒子を含む噴霧液を気流中に噴霧して球状シリカ微粒子集合体である二次粒子を調製する。
【0051】
噴霧液の溶媒としては、水または有機溶媒を用いることができる。有機溶媒としては、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの1価アルコール、エチレングリコール等の多価アルコール等が挙げられる。
【0052】
噴霧液中の粒子濃度としては、2~60質量%の範囲が好ましく、4~50質量%の範囲がより好ましい。この濃度範囲で噴霧乾燥を行うことにより、安定して所望の二次粒子を得ることができる。
【0053】
噴霧乾燥方法としては、回転ディスク法、加圧ノズル法、2流体ノズル法など従来公知の方法を採用することができる。特に、特公平2-61406号公報に開示された2流体ノズル方法は、粒子径分布の均一な二次粒子を得ることができ、また平均粒子径をコントロールすることが容易であるので好ましい。
【0054】
このときの乾燥温度は、一次粒子分散液の濃度、処理速度等によっても異なるが、例えば、噴霧乾燥器(スプレードライヤー)の入口温度が100~300℃の範囲が好ましく、出口温度が40~100℃の範囲が好ましい。さらに好適には、入口温度210~250℃の範囲、出口温度50~55℃の範囲である。噴霧速度は、噴霧乾燥器の形状等にも依存するが、例えば、0.1~3L/時間の範囲が好ましい。
【0055】
このB工程(及び後述するF工程)を経た二次粒子は、例えば、以下の要件を満たす。
a)平均粒子径が、好ましくは0.5~50μm、より好ましくは5~30μm
b)比表面積が、好ましくは30~250m2/g
c)細孔容積が、好ましくは0.10~0.25ml/g、より好ましくは0.12~0.20ml/g
d)細孔径分布(X軸:細孔径、Y軸:細孔容積を細孔径で微分した値)におけるピーク値の細孔径(D1)が、好ましくは2~50nm、より好ましくは3~45nm
e)(D1)×0.75~(D1)×1.25nmの範囲内の細孔径を有する細孔の合計細孔容積が、全細孔容積(すなわち、全メソ細孔容積)の好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上
f)空隙率が、好ましくは5~50%、より好ましくは10~30%
g)真球度が、好ましくは0.90~1.00
【0056】
(C工程)
C工程では、B工程で得られた二次粒子と、粒子径変動係数が2~10%の範囲、平均粒子径が10~300nm、かつA工程で調製された一次粒子と同等又はこれを超える平均粒子径の球状シリカ微粒子であるバインダー粒子とを、二次粒子及びバインダー粒子の質量割合(二次粒子:バインダー粒子)98:2~60:40で混合し、混合粒子分散液を調製する。
【0057】
バインダー粒子がA工程で調製した一次粒子の平均粒子径より小さい粒子の場合、バインダー粒子が二次粒子の細孔(メソ孔)に侵入し、二次粒子の細孔が塞がれる恐れがある。また、バインダー粒子が上記割合よりも少ないと、二次粒子間の結合力が弱く、目的とする構造体を製造できない。一方、バインダー粒子が上記割合よりも多いと、十分なマクロ孔が形成できず、粒子内部の拡散を促進する効果が得られない。
【0058】
バインダー粒子としては、A工程で調製した一次粒子を用いてもよいし、別途調製した一次粒子を用いてもよい。別途調製する場合は、A工程で調製した一次粒子と同等又はこれを超える平均粒子径の一次粒子を用いる。バインダー粒子の平均粒子径は、200nm以下が好ましく、150nm以下がより好ましい。バインダー粒子の調製方法は、A工程の方法と同様である。
【0059】
二次粒子及びバインダー粒子の質量割合(二次粒子:バインダー粒子)は、95:5~75:25が好ましく、90:10~70:30がより好ましい。
【0060】
(D工程)
D工程では、C工程で得られた混合粒子を含む噴霧液を気流中に噴霧して二次粒子集合体である三次粒子を調製する。
【0061】
D工程の処理は、基本的にB工程の処理と同様である。ただし、D工程においては、大径粒子を得るため、回転式ディスク(アトマイザー)や一流体ノズル等を用い、大きな液滴を噴霧し、乾燥させることが好ましい。また、スラリー中の二次粒子が沈降しないよう、撹拌を行いながら供給することが好ましい。
【0062】
(E工程)
E工程では、D工程で得られた二次粒子を温度150~600℃の範囲で加熱処理する。加熱処理により、二次粒子同士の結合力を高めることができる。加熱処理温度が150℃未満であると、結合力の向上効果が認められない場合がある。一方、600℃を超えると、粒子が収縮するおそれがあり、最終的に得られる二次粒子間の空隙が小さくなる場合がある。
【0063】
本発明の多孔質シリカ粒子の製造方法においては、B工程で得られた二次粒子を加熱処理するF工程を有していてもよい。
(F工程)
F工程は、B工程の後C工程の前に設けられる工程であり、F工程では、B工程で得られた二次粒子を温度150~600℃の範囲で加熱処理する。加熱処理により、一次粒子同士の結合力を高めることができる。加熱処理温度が150℃未満であると、結合力の向上効果が認められない場合がある。一方、600℃を超えると、二次粒子が収縮するおそれがあり、最終的に得られる多孔質二次粒子の空隙が小さくなる場合がある。
【0064】
本発明の多孔質シリカ粒子の製造方法においては、上記E工程に続いて、所望により、以下のG~I工程の処理を行ってもよい。
【0065】
(G工程)
G工程では、E工程で得られた加熱処理した三次粒子の分散液を調製する。具体的には、加熱処理した三次粒子を、室温~40℃まで放冷または冷却し、水および/または有機溶媒に分散させた分散液を調製する。有機溶媒としては、エタノール、プロパノール、ブタノールなどの1価アルコール、エチレングリコール等の多価アルコール等を用いることができる。分散液の粒子濃度としては、0.1~40質量%の範囲が好ましく、0.5~20質量%の範囲がより好ましい。
【0066】
(H工程)
H工程では、G工程で得られた分散液に、次のi)又はii)を添加して三次粒子の外表面の表面処理を行う。
i)酸又はアルカリ
ii)酸又はアルカリと次の一般式で表される有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解物
一般式:RnSi(OR′)4-n
〔但し、R及びR′は、炭素数1~18のアルキル基、炭素数1~18のアリール基、ビニル基及びアクリル基から選ばれる炭化水素基であり、nは0、1、2又は3の整数である。〕
【0067】
前記i)の場合の酸又はアルカリについては、通常は、酸又はアルカリの水溶液が使用される。酸又はアルカリの種類については特に制限されるものではないが、塩酸水溶液、ホウ酸水溶液、アンモニウム水溶液等が挙げられる。
【0068】
前記ii)の場合の酸又はアルカリについては、i)の場合と同様に定義される。
また、前記一般式で表される有機ケイ素化合物としては、具体的に、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン、3,3,3-トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、メチル-3,3,3-トリフルオロプロピルジメトキシシラン、β-(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシトリプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、トリメチルシラノール、メチルトリクロロシラン、メチルジクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、フェニルトリクロロシラン、ジフェニルジクロロシラン、ビニルトリクロルシラン、トリメチルブロモシラン、ジエチルシラン等が挙げられる。
【0069】
なお、有機ケイ素化合物及び/又はその部分加水分解物と共に添加される酸又はアルカリは、加水分解のための触媒としても機能するが、所望により加水分解用の触媒を添加してもよい。加水分解触媒として、アルカリ金属の水酸化物や、アンモニア水、アミン等の塩基性のものを用いた場合、加水分解後これらの塩基性触媒を除去して、酸性溶液にして用いることもできる。また、有機酸や無機酸などの酸性触媒を用いて加水分解物を調製した場合、加水分解後、イオン交換等によって酸性触媒を除去することが好ましい。なお、得られた有機ケイ素化合物の加水分解物は、水溶液の形態で使用することが望ましい。ここで、水溶液とは、加水分解物がゲルとして白濁した状態になく透明性を有している状態を意味する。
【0070】
(I工程)
I工程では、H工程で得られた分散液から、シリカ粒子を分離し、乾燥した後、100~300℃で加熱処理する。これにより、表明処理が施された多孔質シリカ粒子が得られる。
【実施例0071】
以下、本発明の実施例を具体的に説明するが、本発明の技術的範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0072】
[実施例1-1]
(一次粒子の準備)
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:Cataloid SI-30、平均粒子径12nm、濃度30質量%)1667gを遠心分離機(株式会社コクサン製、連続高速遠心機H-660)のローター(型式:QNS、容量:1L)に連続的に注入し、7000Gにて400g/分の速度で通液し、液を連続して回収することにより、粗大粒子の遠心分離処理を行った。粗大粒子はローター内に沈殿した。
【0073】
回収して得られたシリカゾルの水希釈品(シリカ濃度15質量%)2000gを陽イオン交換し、pH=2.0に調整した後、珪酸液(シリカ濃度4.8質量%)を、[シリカゾル中のシリカ]/[珪酸液中のシリカ]=9/1の比率になるように加え、さらにスラリー濃度が5%となるよう純水を添加して希釈し、攪拌してスラリーを調製した。
【0074】
(二次粒子の調製)
得られたスラリーをスプレードライヤーに供し、入口温度240℃、出口温度が50~55℃になるよう調整した乾燥気流中に、二流体ノズルの一方に2L/hrの流量で、他方のノズルに気体圧力を0.75MPaの流量で供給して噴霧乾燥し、球状シリカ微粒子集合体からなる粉体を得た。この粉体を450℃で3時間焼成して多孔質シリカ粒子A1(二次粒子)を得た。
【0075】
(バインダー粒子の準備)
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:Cataloid SI-30、平均粒子径12nm、濃度30質量%)1667gを遠心分離機(株式会社コクサン製、連続高速遠心機H-660)のローター(型式:QNS、容量:1L)に連続的に注入し、7000Gにて400g/分の速度で通液し、液を連続して回収することにより、粗大粒子の遠心分離処理を行った。粗大粒子はローター内に沈殿した。
回収して得られたシリカゾルを水で希釈し、シリカ濃度15質量%のスラリー2000gを調製した。
【0076】
(三次粒子の造粒)
二次粒子を純水に分散させたものを撹拌しながら上記バインダー粒子を加え、二次粒子とバインダー粒子の固形分比が90:10、シリカ濃度30質量%のスラリーを調製した。
得られたスラリーをスプレードライヤーに供し、入口温度240℃、出口温度が100℃になるよう調整した乾燥気流中に、アトマイザーで供給して噴霧乾燥し、多孔質シリカ粒子A(二次粒子)と球状シリカ微粒子(バインダー粒子)からなる粉体を得た。この粉体を450℃で3時間焼成して多孔質シリカ粒子B1-1(三次粒子)を得た。
【0077】
[実施例1-2]
三次粒子の造粒において、二次粒子とバインダー粒子の固形分比を80:20とする以外は実施例1-1と同様にして、多孔質シリカ粒子B1-2(三次粒子)を得た。
【0078】
[実施例1-3]
三次粒子の造粒において、二次粒子とバインダー粒子の固形分比を70:30とする以外は実施例1-1と同様にして、多孔質シリカ粒子B1-3(三次粒子)を得た。
【0079】
[実施例1-4]
三次粒子の造粒において、二次粒子とバインダー粒子の固形分比を60:40とする以外は実施例1-1と同様にして、多孔質シリカ粒子B1-4(三次粒子)を得た。
【0080】
[実施例2-1]
三次粒子の造粒において、バインダー粒子として、シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:Cataloid SI-80P、平均粒子径80nm、濃度40質量%)を下記のように準備して用いた以外は実施例1-1と同様にして、多孔質シリカ粒子B2-1(三次粒子)を得た。
【0081】
(バインダー粒子の準備)
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:Cataloid SI-80P、平均粒子径80nm、濃度40質量%)1000gを遠心分離機(株式会社コクサン製、連続高速遠心機H-660)のローター(型式:QNS、容量:1L)に連続的に注入し、2120Gにて400g/分の速度で通液し、液を連続して回収することにより、粗大粒子の遠心分離処理を行った。粗大粒子はローター内に沈殿した。
回収して得られたシリカゾルを水で希釈し、シリカ濃度15質量%のスラリー2000gを調製した。
【0082】
[実施例2-2]
三次粒子の造粒において、二次粒子とバインダー粒子の固形分比を80:20とする以外は実施例2-1と同様にして、多孔質シリカ粒子B2-2(三次粒子)を得た。
【0083】
[実施例2-3]
三次粒子の造粒において、二次粒子とバインダー粒子の固形分比を70:30とする以外は実施例2-1と同様にして、多孔質シリカ粒子B2-3(三次粒子)を得た。
【0084】
[実施例2-4]
三次粒子の造粒において、二次粒子とバインダー粒子の固形分比を60:40とする以外は実施例2-1と同様にして、多孔質シリカ粒子B2-4(三次粒子)を得た。
【0085】
[実施例3-1]
(一次粒子の準備及び二次粒子の調製)
シリカゾルとして、日揮触媒化成(株)製:Cataloid SI-45P(平均粒子径45nm、濃度40質量%)の水希釈品(シリカ濃度30質量%)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、多孔質シリカ粒子A3(二次粒子)を得た。
【0086】
(バインダー粒子の準備)
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:Cataloid SI-80P、平均粒子径80nm、濃度40質量%)1000gを遠心分離機(株式会社コクサン製、連続高速遠心機H-660)のローター(型式:QNS、容量:1L)に連続的に注入し、2120Gにて400g/分の速度で通液し、液を連続して回収することにより、粗大粒子の遠心分離処理を行った。粗大粒子はローター内に沈殿した。
回収して得られたシリカゾルを水で希釈し、シリカ濃度15質量%のスラリー2000gを調製した。
【0087】
(三次粒子の造粒)
二次粒子を純水に分散させたものを撹拌しながら上記バインダー粒子を加え、二次粒子とバインダー粒子の固形分比が90:10、濃度30%のスラリーを調製した。
得られたスラリーをスプレードライヤーに供し、入口温度240℃、出口温度が100℃になるよう調整した乾燥気流中に、アトマイザーで供給して噴霧乾燥し、多孔質シリカ粒子A(二次粒子)と球状シリカ微粒子(バインダー粒子)からなる粉体を得た。この粉体を450℃で3時間焼成して多孔質シリカ粒子B3-1(三次粒子)を得た。
【0088】
[実施例3-2]
三次粒子の造粒において、二次粒子とバインダー粒子の固形分比を80:20とする以外は実施例3-1と同様にして、多孔質シリカ粒子B3-2(三次粒子)を得た。
【0089】
[実施例3-3]
三次粒子の造粒において、二次粒子とバインダー粒子の固形分比を70:30とする以外は実施例3-1と同様にして、多孔質シリカ粒子B3-3(三次粒子)を得た。
【0090】
[実施例3-4]
三次粒子の造粒において、二次粒子とバインダー粒子の固形分比を60:40とする以外は実施例3-1と同様にして、多孔質シリカ粒子B3-4(三次粒子)を得た。
【0091】
[実施例4-1]
(一次粒子の準備及び二次粒子の調製)
シリカゾルとして、日揮触媒化成(株)製:Cataloid SI-80P、平均粒子径80nm、濃度40質量%の水希釈品(シリカ濃度30質量%)を用いた以外は、実施例1-1と同様にして、多孔質シリカ粒子A4(二次粒子)を得た。
【0092】
(バインダー粒子の準備)
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:Cataloid SI-80P、平均粒子径80nm、濃度40質量%)1000gを遠心分離機(株式会社コクサン製、連続高速遠心機H-660)のローター(型式:QNS、容量:1L)に連続的に注入し、2120Gにて400g/分の速度で通液し、液を連続して回収することにより、粗大粒子の遠心分離処理を行った。粗大粒子はローター内に沈殿した。
回収して得られたシリカゾルを水で希釈し、シリカ濃度15質量%のスラリー2000gを調製した。
【0093】
(三次粒子の造粒)
二次粒子を純水に分散させたものを撹拌しながら上記バインダー粒子を加え、二次粒子とバインダー粒子の固形分比が90:10、シリカ濃度30質量%のスラリーを調製した。
得られたスラリーをスプレードライヤーに供し、入口温度240℃、出口温度が100℃になるよう調整した乾燥気流中に、アトマイザーで供給して噴霧乾燥し、多孔質シリカ粒子A(二次粒子)と球状シリカ微粒子(バインダー粒子)からなる粉体を得た。この粉体を450℃で3時間焼成して多孔質シリカ粒子B4-1(三次粒子)を得た。
【0094】
[実施例4-2]
三次粒子の造粒において、二次粒子とバインダー粒子の固形分比を80:20とする以外は実施例4-1と同様にして、多孔質シリカ粒子B4-2(三次粒子)を得た。
【0095】
[実施例4-3]
三次粒子の造粒において、二次粒子とバインダー粒子の固形分比を70:30とする以外は実施例4-1と同様にして、多孔質シリカ粒子B4-3(三次粒子)を得た。
【0096】
[実施例4-4]
三次粒子の造粒において、二次粒子とバインダー粒子の固形分比を60:40とする以外は実施例4-1と同様にして、多孔質シリカ粒子B4-4(三次粒子)を得た。
【0097】
[比較例1]
実施例1-1で製造した多孔質シリカ粒子A1(二次粒子)を、比較例1に係る多孔質シリカ粒子B’1とした。
【0098】
[比較例2]
実施例3-1で製造した多孔質シリカ粒子A3(二次粒子)を、比較例2に係る多孔質シリカ粒子B’2とした。
【0099】
[比較例3]
三次粒子の造粒において、バインダー粒子として、シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:Cataloid SI-30、平均粒子径12nm、濃度30質量%)を下記のように準備して用いた以外は実施例1-1と同様にして、多孔質シリカ粒子B’3(三次粒子)を得た。なお、本比較例においては、細孔径(Pms1a)のピークに基づくメソ孔がバインダー粒子により形成されたものであり、より大きい細孔径(Pms1b)のピークに基づくメソ孔が、二次粒子内の細孔である。
【0100】
(バインダー粒子の準備)
シリカゾル(日揮触媒化成(株)製:Cataloid SI-30、平均粒子径12nm、濃度30質量%)1667gを遠心分離機(株式会社コクサン製、連続高速遠心機H-660)のローター(型式:QNS、容量:1L)に連続的に注入し、7000Gにて400g/分の速度で通液し、液を連続して回収することにより、粗大粒子の遠心分離処理を行った。粗大粒子はローター内に沈殿した。
回収して得られたシリカゾルを水で希釈し、シリカ濃度15質量%のスラリー2000gを調製した。
【0101】
[比較例4]
実施例4-1で製造した多孔質シリカ粒子A4(二次粒子)を、比較例4に係る多孔質シリカ粒子B’4とした。
【0102】
上記製造した実施例の多孔質シリカ粒子B及び比較例の多孔質シリカ粒子B’を用いて評価(通水試験及び酵素反応効率試験)を行った。
【0103】
<通水試験>
(試験方法)
各多孔質シリカ粒子50cm3をガラス製カラム(内径20mm、長さ400mm)に充填し、0.1mPaの圧力で純水を通水した際の空間速度(SV)を測定した。
【0104】
空間速度(SV)=(1時間あたりの通水量)/(多孔質シリカ粒子充填量)(1/Hr)
【0105】
(評価)
〇:SV:3以上
△:SV:1以上3未満
×:SV:1未満
【0106】
<酵素反応効率試験>
(固定化酵素(ラセマーゼ)の比活性試験(L-Alaの円二色性の時間による変化率に基づく比活性の測定))
実施例に係る多孔質シリカ粒子B3-1、B3-2、B3-3、B3-4、及び比較例に係る多孔質シリカ粒子B’2、B’3について、シランカップリング剤(信越化学工業株式会社製「KBM-903」(3-アミノプロピルトリメトキシシラン))を用い、表面処理を行った後、特開2012-16351号公報に記載の方法を用いて、ラセマーゼを固定化した。なお、多孔質シリカ粒子は、担持する酵素(ラセマーゼ)を担持するのに適した20nmのメソ孔(二次粒子の細孔)を有するものを用いた。
【0107】
固定化酵素(酵素固定化用担体に2μgのラセマーゼを吸着してなる相当量)と、基質溶液(10mM L-アラニン、10mM リン酸カリウム、pH7.5)の2.5mlとを試験管中にて混合し、温度30℃の条件下で反応させ、懸濁液を得た。この懸濁液を試料とした。
【0108】
前記懸濁液からなる試料を1cm角の石英セルに入れ、円二色性分散計(日本分光株式会社製、「J-820」)にセットした。セル中の懸濁液はマグネティックスターラーによって攪拌し、セルはペルチェ式温度制御装置により30℃に保った。
【0109】
次に、円二色性分散計のL-アラニンの円偏光の波長204nmにおける楕円率を1秒間隔で5分間測定した。L-アラニンのモル楕円率を23mdeg/mMとして懸濁液中のL-アラニン濃度を計測し、単位時間当たりに転換されるアラニン量から活性を計算した。比活性は次の式から求めた。
【0110】
比活性=[多孔質シリカに固定化した酵素の活性]/[固定化前酵素の活性]
【0111】
(評価)
〇:比活性=0.8以上
△:比活性=0.6以上~0.8未満
×:比活性=0.6未満
【0112】
上記製造した実施例及び比較例の製造条件、製造された多孔質シリカ粒子の性状、評価結果をまとめた表を表1示す。
【0113】
【0114】
なお、各種パラメータの測定方法は以下の通りである。
[多孔質シリカ粒子(二次粒子及び三次粒子)の平均粒子径(レーザー回折・散乱法)]
粒度分析計(セイシン企業社製レーザーマイクロンサイザーLMS-3000)を用いて、乾式で粒度分布を測定し、多孔質シリカ粒子の平均粒子径を算出した。
【0115】
[一次粒子の平均粒子径及び粒子径変動係数(CV値)]
走査型電子顕微鏡(日本電子株式会社製、JSM-5300型)を用いて粒子を撮影(倍率250,000倍)し、この画像の250個の粒子について、画像解析装置(旭化成株式会社製、IP-1000)を用いて、平均粒子径を測定し、粒子径分布に関する変動係数(CV値)を算定した。具体的には、粒子250個について、それぞれの粒子径を測定し、その値から平均粒子径および粒子径の標準偏差を求め、下記式から算定した。
変動係数(CV値)=(粒子径標準偏差(σ)/平均粒子径(Dn))×100(%)
【0116】
[多孔質シリカ粒子(二次粒子及び三次粒子)の比表面積、メソ孔の細孔容積・細孔径]
試料10gをルツボに取り、300℃で1時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却した。ガラスセルに0.15g採取し、Belsorp mini II(日本ベル株式会社製)を使用して真空脱気しながら試料に窒素ガスを吸着させ、比表面積を求めた。また、脱着時のデータから、2~50nmの範囲の細孔容積と細孔径(ピーク値)を算出した。
【0117】
[多孔質シリカ粒子(三次粒子)のマクロ孔の細孔容積・細孔径]
試料10gをルツボに取り、300℃で1時間乾燥後、デシケーターに入れて室温まで冷却し、PM-33(QuntaCrome社製)を使用して水銀圧入法により測定した。水銀を3.5kPa~231MPa(0.5~33000psi)で圧入し、圧力と細孔径と圧入量の関係から細孔分布を求めた。細孔径50~2000nmまでの細孔についての計測結果をもとに、マクロ孔の細孔容積と細孔径(ピーク値)を算出した。