(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143514
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】車両制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/12 20120101AFI20241003BHJP
B60W 40/08 20120101ALI20241003BHJP
B60W 60/00 20200101ALI20241003BHJP
【FI】
B60W50/12
B60W40/08
B60W60/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056238
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】山本 勇作
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241DA13Z
3D241DA39Z
3D241DA49Z
3D241DA52Z
3D241DB02Z
3D241DB05Z
3D241DB09Z
3D241DB10Z
3D241DD02Z
(57)【要約】
【課題】無意識操作が車両制御へ与える影響を好適に抑制する。
【解決手段】操作部材の操作量を、車両の制御に反映させる車両制御装置(1)であって、車両の挙動変化に起因するドライバが意図しないドライバによる操作部材の操作である無意識操作が生じる蓋然性を推定する蓋然性推定部(101)と、蓋然性推定部(101)により推定された蓋然性が高いほど、ドライバによる無意識操作の操作量に対する車両の制御量を抑制する制御量抑制制御を実行する抑制部(103)と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドライバによる操作部材の操作量を、前記車両の制御に反映させる車両制御装置であって、
前記車両の挙動変化に起因する前記ドライバが意図しない前記ドライバによる前記操作部材の操作である無意識操作が生じる蓋然性を推定する蓋然性推定部と、
前記蓋然性推定部により推定された前記蓋然性が高いほど、前記ドライバによる前記無意識操作の操作量に対する前記車両の制御量を抑制する制御量抑制制御を実行する抑制部と、
を備えている車両制御装置。
【請求項2】
前記蓋然性推定部は、前記車両の自動制御による前記車両の制御量、前記車両の走行状態、前記車両の走行環境、および前記ドライバの状態の少なくともいずれか一つに基づいて、前記蓋然性を推定する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項3】
前記蓋然性推定部は、前記ドライバの姿勢変化に基づいて、前記蓋然性を推定する、請求項1に記載の車両制御装置。
【請求項4】
前記抑制部は、前記制御量抑制制御の実行中に前記ドライバが行った操作に、前記ドライバが意図した前記ドライバによる前記操作部材の操作である意識操作が含まれていた場合に、当該制御量抑制制御により抑制された前記車両の制御量のうち前記意識操作に対応する制御量を、当該制御量抑制制御の実行後に実行する前記車両の制御に反映する、請求項1に記載の車両制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は車両制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の挙動変化によって、ドライバに慣性力が働き、ドライバに操作意思が無くても無意識に車両の操作部材を操作してしまう場合がある。特許文献1に記載の従来技術では、ドライバ意図があると判断する操作量の閾値が規定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来技術では、ドライバに操作意思がない場合の操作量を車両の制御に反映させないようにするためには、操作量の閾値を大きくする必要がある。そうすると、ドライバに操作意思がある場合の操作量が車両の制御に反映されるまでに要する時間が長くなってしまう。
本開示の一態様は、無意識操作が車両制御へ与える影響を好適に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る車両制御装置は、車両のドライバによる操作部材の操作量を、前記車両の制御に反映させる車両制御装置であって、前記車両の挙動変化に起因する前記ドライバが意図しない前記ドライバによる前記操作部材の操作である無意識操作が生じる蓋然性を推定する蓋然性推定部と、前記蓋然性推定部により推定された前記蓋然性が高いほど、前記ドライバによる前記無意識操作の操作量に対する前記車両の制御量を抑制する制御量抑制制御を実行する抑制部と、を備えている。
【発明の効果】
【0006】
本開示の一態様によれば、無意識操作が車両制御へ与える影響を好適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態1に係る車両制御装置の構成を示す図である。
【
図4】第1無意識操作の影響の抑制に関する説明に用いる図である。
【
図5】本開示の実施形態1に係る車両制御装置における、増加モードまたは低下モードにおける制動支援制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】本開示の実施形態2に係る車両制御装置における、増加モードまたは低下モードにおける制動支援制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】本開示の実施形態3に係る車両制御装置による操舵支援制御における制御量抑制制御の処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
〔実施形態1〕
(車両制御装置の構成)
図1は、本開示の実施形態1に係る車両制御装置の構成を示す図である。
図1に示す車両制御装置1は、制御部10、記憶部11、操作量検出部12、走行状態検出部13、走行環境検出部14、およびドライバ状態検出部15を備えている。以下では、車両制御装置1が搭載された車両のことを車両Vと記載する。
【0009】
制御部10は、例えばCPU(Central Processing Unit)であり、プログラムを記憶部11から読み出して実行する。
記憶部11は、例えばHDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)等を有している。記憶部11は、制御部10が実行するプログラムを記憶している。また、記憶部11は、制御部10がワークスペースとして使用するRAM(Random Access Memory)等を有している。
【0010】
操作量検出部12は、車両Vの操作部材の操作量を検出する。車両Vの操作部材としては、アクセルペダル、ブレーキペダル、ステアリングホイールが考えられる。
走行状態検出部13は、車両Vの走行状態を検出する。車両Vの走行状態としては、車両Vの速度、車両Vの前後方向、左右方向、および上下方向の3方向の加速度、車両Vのピッチ方向、ヨー方向、およびロール方向の3方向の角速度、ならびにマスタシリンダ圧が考えられる。走行状態検出部13は、例えば、車速センサ、3軸加速度センサ、3軸角速度センサ、およびマスタシリンダ圧センサを有している。
【0011】
走行環境検出部14は、車両Vの走行環境を検出する。車両Vの走行環境とは、車両Vが走行している道路の路面状況、ならびに車両Vの周囲の道路形状、道路標識および道路標示が考えられる。路面状況、道路形状、道路標識および道路標示は、地図情報等から検出することができる。地図情報は、例えば、車両Vに搭載されているナビゲーションシステムに記憶されているものを使用することができる。路面状況には、例えば、舗装されているか否かに関する情報が含まれる。道路形状には、道路の幅、車線数、カーブの曲率、カーブの長さ等が含まれる。
ドライバ状態検出部15は、車両Vを運転するドライバの状態を検出する。ドライバの状態とは、ドライバの姿勢が考えられる。ドライバの姿勢は、車内カメラの撮影画像、カーシート圧センサの検出結果等に基づいて検出することができる。
【0012】
(車両制御装置の機能)
制御部10は、記憶部11に記憶されているプログラムを実行することにより、自動制御部100、蓋然性推定部101、無意識操作量推定部102、および抑制部103として機能する。
【0013】
自動制御部100は、車両Vの自動制御を行う。自動制御部100が行う車両Vの自動制御としては、運転支援制御、自動運転制御、姿勢制御が考えられる。
【0014】
蓋然性推定部101は、ドライバによる操作部材の操作のうち、車両Vの挙動変化に起因するドライバが意図しない無意識操作が生じる蓋然性を推定する。無意識操作としては、車両Vの制動中に発生した慣性力により、ドライバがブレーキペダルを無意識に踏み込む操作が考えられる。
【0015】
無意識操作量推定部102は、ドライバによる操作部材の操作のうち無意識操作の操作量(以下、無意識操作量)を推定する。無意識操作量推定部102は、例えば、自動制御部100による車両Vの制御量、操作量検出部12により検出された車両Vの走行状態、走行状態検出部13により検出された車両Vの走行状態、走行環境検出部14により検出された車両Vの走行環境、およびドライバ状態検出部15により検出された車両Vを運転するドライバの状態の少なくともいずれか一つに基づいて、無意識操作量の予想値を導出する。
【0016】
実施形態1に係る蓋然性推定部101は、無意識操作量推定部102の推定結果に基づいて、無意識操作が生じる蓋然性を推定する。すなわち、蓋然性推定部101は、自動制御部100による車両Vの制御量、操作量検出部12により検出された車両Vの走行状態、走行状態検出部13により検出された車両Vの走行状態、走行環境検出部14により検出された車両Vの走行環境、およびドライバ状態検出部15により検出された車両Vを運転するドライバの状態の少なくともいずれか一つに基づいて無意識操作が生じる蓋然性を推定する。例えば、蓋然性推定部101は、無意識操作量推定部102が導出した無意識操作量の予想値が0である場合に無意識操作が生じる蓋然性なしと推定し、無意識操作量推定部102が導出した無意識操作量の予想値が0でない場合に無意識操作が生じる蓋然性ありと推定する。
【0017】
抑制部103は、蓋然性推定部101により推定された蓋然性が高いほど、ドライバによる無意識操作量に対する車両Vの制御量を抑制する制御量抑制制御を行う。抑制部103は、蓋然性推定部101が蓋然性ありと推定したときに制御量抑制制御を行い、蓋然性推定部101が蓋然性なしと推定したときには制御量抑制制御を行わない。
【0018】
本開示の実施形態1では、自動制御部100は、車両Vの制動操作を支援する運転支援制御(以下、制動支援制御)を行うものとする。
蓋然性推定部101は、車両Vの制動中に発生した慣性力により、ドライバがブレーキペダルを無意識に踏み込む操作(以下、第1無意識操作)の蓋然性を推定するものとする。
実施形態1に係る無意識操作量推定部102は、車両Vの減速度に基づいて、無意識操作量を推定する。車両Vの減速度が大きいとき、車両Vのドライバの姿勢は、ピッチ方向に大きく変化する傾向がある。無意識操作量推定部102は、車両Vの減速度に基づいて、無意識操作量の予想値を導出する。
抑制部103は、制動支援制御中に、第1無意識操作による無意識操作量を抑制する制御量抑制制御を行う。
【0019】
図2は、制動支援制御の説明に用いる図である。
図2の(a)は、車両Vのドライバによるブレーキ操作量の時間変化の一例を示す。
図2の(b)は、(a)に示すブレーキ操作による車両Vの加減速制御量の時間変化を示す。
図2の(b)において、加減速制御量が0より大きいとき車両Vは加速し、加減速制御量が0より小さいとき車両Vは減速する。以下では、加減速制御量が0より小さく、加減速制御量の絶対値が増加することを、車両Vの減速度が増加すると記載する。
【0020】
図2の(a)に示す例では、車両Vのドライバは、タイミングT1に、車両Vのブレーキペダルの操作を開始する。自動制御部100は、タイミングT5に車両Vがスムーズに停車するように、車両Vの加減速制御量を制御する。車両Vの減速度は、タイミングT1からタイミングT2までの期間は、ドライバが行ったブレーキ操作量に応じて変化している。自動制御部100は、タイミングT2から、ドライバが行ったブレーキ操作量に車両Vがスムーズに停車するように、車両Vの加減速制御量を制御する制御量である支援制御量を加えることにより、車両Vの減速度を所定の要求減速度まで増加させる制御を開始する。自動制御部100は、タイミングT2から所定時間後のタイミングT3に車両Vの減速度を低下させる制御を開始する。自動制御部100は、タイミングT3と車両Vが停車するタイミングT5との間のタイミングT4までに、車両Vの減速度を0近傍まで低下させる。自動制御部100は、タイミングT4から所定時間の間、車両Vの減速度を0近傍の値で保持する。車両Vが停車するタイミングT5は、車両Vの減速度が0近傍の値で保持されている期間に含まれる。車両Vが停車するタイミングT5には、車両Vの減速量が0近傍まで低下しているため、停車時に車両Vがピッチ方向に揺れるカックンブレーキの発生を防ぐことができる。以下、自動制御部100がタイミングT2からタイミングT3までに行う制御のことを増加モードと称する。自動制御部100がタイミングT3からタイミングT4までに行う制御のことを低下モードと称する。
【0021】
図3は、第1無意識操作の説明に用いる図である。
図3の(a)は、車両Vのドライバによるブレーキ操作量の時間変化の一例を示す。
図3の(a)に示す例では、自動制御部100がタイミングT2に車両Vの減速度を増加させたことに伴う慣性力により、タイミングT6に第1無意識操作が発生している。
図3の(b)は、(a)に示すブレーキ操作による車両Vの加減速制御量の時間変化を示す。
図3の(b)に実線で示すように、タイミングT3からタイミングT4までの低下モードにおける車両Vの減速度は、第1無意識操作の操作量相当分だけ増加する。そのため、車両Vを停車させるタイミングT5において、車両Vの減速度が所定値まで下がりきらず、車両Vの乗員が違和を感じるおそれがある。
【0022】
そこで、抑制部103は、増加モードおよび低下モードにおいて、第1無意識操作の影響を抑制する。
図4は、第1無意識操作の影響の抑制に関する説明に用いる図である。
図4の(a)に示すように、抑制部103は、タイミングT2からタイミングT4までの期間に、不感帯Xを設定する。不感帯Xは、タイミングT2におけるブレーキ操作量B(以下、基準操作量B)から、その基準操作量Bに所定値ΔBを加算した閾値B+ΔBまでの値域を有している。自動制御部100は、タイミングT2からタイミングT4までの期間、すなわち増加モードおよび低下モードの間、ブレーキ操作量が不感帯Xの範囲内で変化したとしても、第1無意識操作によるものとみなし、その変化を加減速制御量に反映させない。すなわち、自動制御部100は、基準操作量Bに基づいて、加減速制御量を制御する。このようにすることで、自動制御部100は、タイミングT4までに、車両Vの減速度を0近傍まで低下させることができる。以下、増加モードおよび低下モードの間に反映させなかったブレーキ操作量のことを、未反映量と記載する。
【0023】
自動制御部100は、タイミングT4の後、増加モードおよび低下モードにおける未反映量を、加減速制御量に反映させる。例えば、自動制御部100は、
図4の(b)に点線で示すように、タイミングT4の後、増加モードおよび低下モードにおける未反映量のうち、車両Vのドライバの意識操作によるブレーキ操作量を、加減速制御量に反映させる。意識操作とは、車両Vのドライバが操作意思を持って操作部材を操作することである。未反映量が車両Vのドライバの意識操作によるものであるか否かは、車両Vのドライバの姿勢が変化したか否かに基づいて判定することができる。車両Vのドライバが意識的にレーキペダルを踏みこむ場合、車両Vのドライバの姿勢は変化しない可能性が高い。自動制御部100は、タイミングT4の後、車両Vのドライバの姿勢が変化することなく、足が動いたとき未反映量を、意識操作に対応するブレーキ操作量として、加減速制御量に反映させる。
【0024】
タイミングT2からタイミングT4までの期間に、ブレーキ操作量が閾値B+ΔBを超えた場合、自動制御部100は、閾値B+ΔBを超えたブレーキ操作量を、車両Vのドライバが意識的に行った操作によるものと推定する。自動制御部100は、閾値B+ΔBを超えたブレーキ操作量から閾値B+ΔBを減じたブレーキ操作量を加減速制御量に反映させ、閾値B+ΔBまでのブレーキ操作量を未反映量として、タイミングT4の後に加減速制御量に反映させる。
【0025】
(車両制御装置の処理)
図5は、本開示の実施形態1に係る車両制御装置における、増加モードまたは低下モードにおける制動支援制御の処理の流れを示すフローチャートである。
図5に示す一連の処理は、車両Vの走行中に、制御部10によって、所定の実行周期で繰り返し実行される。
【0026】
S100において、制御部10は、制動支援制御の増加モードまたは低下モードであるか否かを判定する。制御部10は、制動支援制御の増加モードまたは低下モードである場合は(S100:YES)、S101の処理に進む。一方、制御部10は、制動支援制御の増加モードおよび低下モードのいずれでもない場合は(S100:NO)、S109の処理に進む。
【0027】
S101において、制御部10は、無意識操作量推定部102として機能し、増加モードにおける実減速度に基づいて、無意識操作量の予想値を導出する。
【0028】
S102において、制御部10は、蓋然性推定部101として機能し、無意識操作が生じる蓋然性があるか否かを判定する。制御部10は、S101において導出された無意識操作量の予想値が0でない場合、無意識操作が生じる蓋然性があると判定し(S102:YES)、S103の処理に進む。制御部10は、S101において導出された無意識操作量の予想値が0である場合、無意識操作が生じる蓋然性がないと判定し(S102:NO)、S104の処理に進む。
S103において、制御部10は、抑制部103として機能し、ブレーキ操作量に不感帯Xを適用して、操作制御量を導出する。
S104において、制御部10は、ブレーキ操作量に不感帯Xを適用することなく、操作制御量を導出する。
S105において、制御部10は、自動制御部100として機能し、制動支援制御による支援制御量を、S103またはS104において導出された操作制御量に加算して、加減速制御量を算出する。
【0029】
続くS106において、制御部10は、ドライバ状態検出部15の検出結果に基づいて、ドライバの姿勢に変化があったか否かを判定する。制御部10は、ドライバの姿勢に変化がなかった場合は(S106:YES)、意識操作量の推定量を未反映量に加算し(S107)、S108の処理に進む。意識操作量の推定量とは、例えば、ブレーキ操作量から基準操作量Bを減じた値である。制御部10は、S107において意識操作量の推定量を加算した未反映量を、タイミングT4の後に加減速制御量に反映させる。
【0030】
一方、S106において、制御部10は、ドライバの姿勢に変化があった場合は(S106:NO)、S108の処理に進む。
S108において、制御部10は、基準操作量Bに基づいて、不感帯Xを設定する。制御部10は、不感帯Xを、タイミングT2における基準操作量Bから、その基準操作量Bに所定値ΔBを加算した値B+ΔBまでの範囲に設定する。
S109において、制御部10は、ブレーキ操作量に基づいて、不感帯Xを設定する。
不感帯Xは、例えば、自動制御部による加減速制御量の要求値とする。また、タイミングT2からタイミングT4まで加速度センサまたは車輪速から算出する実減速度の変化量から、人に加わる慣性力を推定し、操作部に加わる力や操作部剛性値から、不感帯Xを推定してもよい。
【0031】
〔実施形態2〕
実施形態1に係る車両制御装置1では、増加モードおよび低下モードにおいて、ブレーキ操作量が不感帯Xの範囲内で変化したとき、その変化を加減速制御量に反映させなかった。本開示の実施形態2に係る車両制御装置1では、ブレーキ操作量のうち基準操作量Bを超えた操作量(以下、推定無意識操作量)の一部を、加減速制御量に反映させる。
実施形態2に係る蓋然性推定部101は、推定無意識操作量に基づいて、無意識操作が生じる蓋然性を推定する。
【0032】
図6は、本開示の実施形態2に係る車両制御装置における、増加モードまたは低下モードにおける制動支援制御の処理の流れを示すフローチャートである。
図6に示す一連の処理は、車両Vの走行中に、制御部10によって、所定の実行周期で繰り返し実行される。
【0033】
図6に示す処理では、S101の処理の後にS200の処理に進む。S200において、制御部10は、実施形態2に係る蓋然性推定部101として機能し、推定無意識操作量が所定値A以下か否かを判定する。制御部10は、推定無意識操作量が所定値A以下の場合(S200:YES)、無意識操作が生じる蓋然性ありと推定し、S201の処理に進む。一方、制御部10は、推定無意識操作量が所定値Aより大きい場合(S200:NO)、車両Vのドライバによる意識操作が行われていると推定し、S202の処理に進む。
【0034】
S201において、制御部10は、推定無意識操作量の一部と、基準操作量Bとに応じた操作制御量を導出する。例えば、制御部10は、基準操作量Bに対して、推定無意識操作量と所定係数との積を加算することにより、操作制御量を導出する。所定係数は、S101にて導出された無意識操作量の予想値に基づいて定められる。例えば、S101にて導出された無意識操作量の予想値が0より大きい場合、所定係数は0.5に設定される。所定係数は、無意識操作量の予想値が高いほど大きい値に設定することにしてもよい。
S202において、制御部10は、ブレーキ操作量に応じた操作制御量を導出する。
S203において、制御部10は、S201またはS202にて導出された操作制御量に対して支援制御量を加算して加減速制御量を導出する。
【0035】
このように、無意識操作が生じる蓋然性ありと推定された場合には、推定無意識操作量の一部のみを加減速制御量に反映させることによっても、無意識操作が車両制御に与える影響を抑制することができる。また、推定無意識操作量の一部が加減速制御量に反映されているため、車両Vのドライバが意識的に操作していた場合に、タイミングT4の後に増加モードおよび低下モードにおける未反映量を加減速制御量に反映させなくても、車両Vのドライバが違和を感じにくい。
【0036】
〔実施形態3〕
無意識操作は、ブレーキペダル以外の操作部材についても、生じ得る。例えば、車両Vがカーブを曲がるときには、ロール方向の回転慣性により、車両Vのドライバが無意識にステアリングホイールを回転させる無意識操舵が生じ得る。実施形態3に係る車両制御装置では、自動制御部100は、ステアリングホイールの操舵量に関する操舵支援制御を行う。操舵支援制御では、車両が実際にカーブを曲がるときに無意識操舵の操舵量(以下、無意識操舵量)に対する車両Vの制御量を抑制する制御量抑制制御を行う。
【0037】
図7は、本開示の実施形態3に係る車両制御装置による操舵支援制御における制御量抑制制御の処理の流れを示すフローチャートである。
図7に示す一連の処理は、車両Vの走行中に、制御部10によって、所定の実行周期で繰り返し実行される。
【0038】
S300において、制御部10は、走行環境検出部14の検出結果に基づいて、車両Vから所定距離前方の道路にカーブがあるか否かを判定する。制御部10は、車両Vから所定距離前方の道路にカーブがある場合、ステップS301の処理に進み、車両Vから所定距離前方の道路にカーブがない場合、ステップS301の処理に進む。
【0039】
S301において、制御部10は、車両Vから所定距離前方の道路に位置するカーブの形状に応じて、車両Vがカーブを抜けるために要する時間を推定し、無意識操舵量に対する制御量抑制制御の実行期間を設定する。制御量抑制制御の実行期間は、例えば、S300において車両Vから所定距離前方の道路にカーブがあると判定されたタイミングから、車両Vがカーブを抜けるために要する時間経過したタイミングまでに設定される。
【0040】
S302において、制御部10は、S301において設定された実行期間内か否かを判定する。制御部10は、実行期間内である場合は(S302:YES)、S303の処理に進み、実行期間外である場合は(S302:NO)、S309の処理に進む。
【0041】
S303において、制御部10は、無意識操作量推定部102として機能し、車両Vの前方のカーブの形状に基づいて、無意識操舵量の予想値を導出する。
S304において、制御部10は、蓋然性推定部101として機能し、無意識操舵が生じる蓋然性があるか否か判定する。制御部10は、S302において導出された無意識操舵量の予想値が0でない場合は、無意識操舵が生じる蓋然性があると判定し、S305の処理に進む。一方、制御部10は、S302において導出された無意識操舵量の予想値が0である場合は、無意識操舵が生じる蓋然性がないと判定し、S306の処理に進む。
S305において、制御部10は、ステアリングホイールの操舵量に不感帯Xを適用し、操舵制御量を導出する。
S306において、制御部10は、ステアリングホイールの操舵量に不感帯Xを適用することなく、操舵制御量を導出する。
S307において、制御部10は、操舵支援制御による支援転舵制御量を、操舵支援制御に加算して転舵制御量を導出する。
S308において、制御部10は、制御量抑制制御の実行開始時の操舵量である基準操舵量に基づいて不感帯Xを設定する。制御部10は、不感帯Xを、制御量抑制制御の実行開始時における操舵量から、その操舵量に所定値を加算した値までの範囲に設定する。
S309において、制御部10は、操舵量に基づいて不感帯Xを設定する。制御部10は、例えば、レーンキープの操舵支援制御がある場合、操舵支援制御量から横減速度やロール発生量を推定し不感帯Xと設定する。制御部10は、ドライバーステアリングホイール入力時に作動する、舵角補正制御や、制動力や駆動力によるモーメント制御によって発生する横減速度やロール発生量から不感帯Xを求めてもよい。
【0042】
〔変形例〕
上記実施形態1では、自動制御部100は、タイミングT4の後に、増加モードおよび低下モードにおける未反映量を、加減速制御量に反映させることとしたが、反映させなくてもよい。タイミングT4の後に、増加モードおよび低下モードにおける未反映量を、加減速制御量に反映させない場合、
図5に示した増加モードまたは低下モードにおける制動支援制御において、S106およびS107の処理を省略してよい。
【0043】
上記実施形態2では、タイミングT4の後に、未反映量を加減速制御量に反映させる処理を行わなかったが、反映させることにしてもよい。
【0044】
〔まとめ〕
本開示の一態様に係る車両制御装置は、車両のドライバによる操作部材の操作量を、前記車両の制御に反映させる車両制御装置であって、前記車両の挙動変化に起因する前記ドライバが意図しない前記ドライバによる前記操作部材の操作である無意識操作が生じる蓋然性を推定する蓋然性推定部と、前記蓋然性推定部により推定された前記蓋然性が高いほど、前記ドライバによる前記無意識操作の操作量に対する前記車両の制御量を抑制する制御量抑制制御を実行する抑制部と、を備えている。
本開示によれば、車両の挙動変化によって生じるドライバによる無意識操作が発生する蓋然性が高いほど、操作量に対する車両の制御量が小さくなる。そのため、無意識操作が発生したとしても、その操作による車両制御への影響を抑制することができる。
【0045】
本開示の一態様に係る車両制御装置では、前記蓋然性推定部は、前記車両の自動制御による前記車両の制御量、前記車両の走行状態、前記車両の走行環境、および前記ドライバの状態の少なくともいずれか一つに基づいて、前記蓋然性を推定する。
無意識操作が生じる蓋然性は、ドライバの姿勢が意図せずに変化してしまう状況で高くなる。そのため、無意識操作が生じる蓋然性は、ドライバ自身の状態や、ドライバに加わる力に関連する。ここで、ドライバに加わる力としては、ドライバに加わる外力や、ドライバに加わる慣性力が考えられる。ドライバに外力が加わる要因としては、車両の走行環境が考えられる。ドライバに慣性力が加わる要因としては、車両の走行状態の変化が考えられる。そこで、本開示では、車両の自動制御による車両の制御量、車両の走行状態、車両の走行環境、及びドライバの状態の少なくともいずれか一つに基づいて、無意識操作が生じる蓋然性を推定するようにしている。したがって、本開示によれば、無意識操作が生じる蓋然性を精度よく推定することができる。
【0046】
本開示の一態様に係る車両制御装置では、前記蓋然性推定部は、前記ドライバの姿勢変化に基づいて、前記蓋然性を推定する。
無意識操作は、ドライバの姿勢変化により生じ得る。したがって本開示によれば、ドライバの姿勢変化に基づいて無意識操作が生じる蓋然性を、精度よく推定することができる。
【0047】
本開示の一態様に係る車両制御装置では、前記抑制部は、前記制御量抑制制御の実行中に前記ドライバが行った操作に、前記ドライバが意図した前記ドライバによる前記操作部材の操作である意識操作が含まれていた場合に、当該制御量抑制制御により抑制された前記車両の制御量のうち前記意識操作に対応する制御量を、当該制御量抑制制御の実行後に実行する前記車両の制御に反映する。
本開示によれば、ドライバの意識操作に対応する制御量を、制御量抑制制御の実行後に実行する制御に反映することで、ドライバの意思を車両挙動に反映させ、ドライバの車両挙動に対する違和感を軽減することができる。
【0048】
本開示の一態様に係る車両制御装置では、前記抑制部は、前記蓋然性推定部により前記蓋然性が高いと推定された前記無意識操作の発生要因に応じた期間に、前記制御量抑制制御を実行する。
【0049】
本開示の一態様に係る車両制御装置は、前記蓋然性が高い前記無意識操作の操作量を推定する無意識操作量推定部を備え、前記抑制部は、前記無意識操作量に対する前記操作量を抑制すべく、所定の前記操作量である基準操作量を基準とする不感帯を設け、前記不感帯内の前記操作量は前記基準操作量として前記制御量を設定する。
【0050】
〔付記事項〕
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0051】
1 車両制御装置
101 蓋然性推定部
102 無意識操作量推定部
103 抑制部