(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143520
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】インダクタ、及びDC-DCコンバータ
(51)【国際特許分類】
H01F 37/00 20060101AFI20241003BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20241003BHJP
H01F 17/04 20060101ALI20241003BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01F37/00 A
H01F37/00 H
H01F37/00 C
H01F17/00 C
H01F17/04 F
H01F17/04 A
H01F27/32 140
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056245
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】黒田 朋史
(72)【発明者】
【氏名】小松 聖虎
(72)【発明者】
【氏名】五島 浩成
【テーマコード(参考)】
5E044
5E070
【Fターム(参考)】
5E044CA03
5E044CA09
5E044CB01
5E044CB03
5E070AA01
5E070AB04
5E070AB08
5E070BA11
5E070BB03
5E070CA07
5E070CB15
(57)【要約】
【課題】インダクタンスのバラツキを抑制しつつ、コイル導体と磁性ブロックとの間の絶縁性を確保するインダクタ、及びDC-DCコンバータを提供する。
【解決手段】インダクタ1では、第1の導体部4Aの第1の対向面4Aaと第1の磁性ブロック2Aとの間、及び第2の導体部4Bの第2の対向面4Abと第2の磁性ブロック2Bとの間には、第1の絶縁体10Aが配置される。インダクタ1は、第1の磁性ブロック2Aと第2の磁性ブロック2Bとの間であって、コイル導体3及び絶縁体10Aが配置されない領域に配置される磁性材料20を有する。磁性ブロック2A,2B間が磁性材料で埋められることにより、インダクタ1の磁路におけるエアギャップの発生が抑制される。エアギャップの発生が抑制することで、当該エアギャップの大きさのバラツキに起因するインダクタンスのバラツキを低減することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の方向に互いに離間して対向する状態で配置される、直方体状の第1の磁性ブロック、及び第2の磁性ブロックと、
前記第1の方向と直交する第2の方向に延びる第1の導体部を有するコイル導体と、を備え、
前記第1の導体部は、前記第1の方向において、前記第1の磁性ブロックと前記第2の磁性ブロックとの間に配置され、
前記第1の導体部は、前記第1の磁性ブロックとの第1の対向面、及び前記第2の磁性ブロックとの第2の対向面を有し、
前記第1の対向面と前記第1の磁性ブロックとの間、及び前記第2の対向面と前記第2の磁性ブロックとの間には、第1の絶縁体が配置され、
前記第1の磁性ブロックと前記第2の磁性ブロックとの間であって、前記コイル導体及び前記絶縁体が配置されない領域に配置される磁性材料を有する、インダクタ。
【請求項2】
前記磁性材料は、前記第1の磁性ブロック、及び前記第2の磁性ブロックに接するように配置される、請求項1に記載されたインダクタ。
【請求項3】
前記絶縁体は、少なくとも絶縁層と、接着層と、を含む、請求項1に記載されたインダクタ。
【請求項4】
前記第1の導体部の前記第1の対向面、及び前記第2の対向面の少なくとも一部は、それぞれ前記第1の磁性ブロックの前記第1の導体部に対する第3の対向面、及び前記第2の磁性ブロックの前記第1の導体部に対する第4の対向面と平行である、請求項1に記載されたインダクタ。
【請求項5】
前記第1の方向において、前記第1の導体部から前記絶縁層、及び前記接着層の順に配置される、請求項3に記載されたインダクタ。
【請求項6】
前記絶縁層は、前記第1の方向及び前記第2の方向と直交する第3の方向における前記第1の導体部の表面を覆う部分をさらに備える、請求項3に記載されたインダクタ。
【請求項7】
前記磁性材料の透磁率は5以上である、請求項1に記載されたインダクタ。
【請求項8】
前記第1の磁性ブロック及び前記第2の磁性ブロックは、それぞれ磁性薄帯が複数積層されて構成され、
前記第1の磁性ブロック、及び前記第2の磁性ブロックの前記第1の導体部に対する第3の対向面、及び第4の対向面は、凹凸部を有する、請求項1に記載されたインダクタ。
【請求項9】
前記コイル導体は、
前記第2の方向に延びるとともに前記第1の磁性ブロックと前記第2の磁性ブロックとの間に配置される第2の導体部と、
前記第1の導体部と前記第2の導体部とを連結する連結部と、を更に備え、
前記第2の導体部は、前記第1の磁性ブロックとの第5の対向面、及び前記第2の磁性ブロックとの第6の対向面を有し、
前記第5の対向面と前記第1の磁性ブロックとの間、及び前記第6の対向面と前記第2の磁性ブロックとの間には、第2の絶縁体が配置される、請求項1に記載されたインダクタ。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載のインダクタを備える、DC-DCコンバータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、インダクタ、及びDC-DCコンバータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、EIコアと称される一対の磁性ブロックと、一対の磁性ブロックの間に配置されるコイル導体と、を備えるインダクタが知られている(例えば、特許文献1)。一対の磁性ブロック同士は接着剤等によって接合されている。コイル導体において、各磁性ブロックに対する対向面には、絶縁膜が配置されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述のインダクタにおいては、磁性ブロックのうちEコアの中脚部の寸法を短くすることによって磁性ブロック間にエアギャップを形成し、透磁率を下げることで飽和特性を改善することが知られている。しかしながら、当該構造においては、Eコアの中脚部と外脚部との寸法加工精度によってエアギャップの厚みにバラツキが生じてしまう。また、一対の磁性ブロックを接合するときに接着剤が必要となることで、エアギャップの厚みにバラツキが生じてしまう。エアギャップのバラツキが大きいことにより、インダクタンスのバラツキが大きくなってしまう。
【0005】
そこで、本開示は、インダクタンスのバラツキを抑制しつつ、コイル導体と磁性ブロックとの間の絶縁性を確保するインダクタ、及びDC-DCコンバータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係るインダクタは、第1の方向に互いに離間して対向する状態で配置される、直方体状の第1の磁性ブロック、及び第2の磁性ブロックと、第1の方向と直交する第2の方向に延びる第1の導体部を有するコイル導体と、を備え、第1の導体部は、第1の方向において、第1の磁性ブロックと第2の磁性ブロックとの間に配置され、第1の導体部は、第1の磁性ブロックとの第1の対向面、及び第2の磁性ブロックとの第2の対向面を有し、第1の対向面と第1の磁性ブロックとの間、及び第2の対向面と第2の磁性ブロックとの間には、第1の絶縁体が配置され、第1の磁性ブロックと第2の磁性ブロックとの間であって、コイル導体及び絶縁体が配置されない領域に配置される磁性材料を有する。
【0007】
本開示の一側面に係るDC-DCコンバータは、上述のインダクタを備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一側面によれば、インダクタンスのバラツキを抑制しつつ、コイル導体と磁性ブロックとの間の絶縁性を確保するインダクタ、及びDC-DCコンバータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本実施形態における電子部品の斜視図である。
【
図3】
図1のIII-III線に沿った断面図である。
【
図4】第1の導体部及び絶縁体の拡大断面図である。
【
図5】変形例に係るインダクタの磁性ブロックである。
【
図8】
図1に示したインダクタが用いられるDC-DCコンバータの回路を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
まず、
図1、
図2を参照して、本実施形態におけるインダクタ1の概略構成を説明する。
図1は、本実施形態におけるインダクタ1の斜視図である。
図2は、インダクタ1の展開図である。
図3は、
図1のIII-III線に沿った断面図である。本実施形態におけるインダクタ1は、磁性ブロック2A,2BをX軸方向に積層することによって形成されている。本実施形態において、X軸方向、Y軸方向、及び、Z軸方向は、互いに直交している。X軸方向が請求項における「第1の方向」に該当し、X軸方向と直交するZ軸方向が請求項における「第2の方向」に該当し、X軸方向及びZ軸方向と直交するY軸方向が請求項における「第3の方向」に該当する。
【0012】
図1に示すように、インダクタ1は、第1の磁性ブロック2Aと、第2の磁性ブロック2Bと、コイル導体3と、を備える。インダクタ1は
図8に示すDC-DCコンバータ100の回路のチョークコイルに採用され得る。
【0013】
DC-DCコンバータ100は、直流入力電圧が入力される一対の入力端子と、一対の出力端子と、一対の入力端子の高電位側に直列接続されるスイッチング素子およびチョークコイルと、スイッチング素子とチョークコイルとの接続点と一対の入力端子の低電位側との間に接続されるダイオードと、一対の出力端子間に接続されるコンデンサと、を備えている。このDC-DCコンバータ100は、図示しない制御回路からの制御信号に基づき、スイッチング素子のオンとオフが切り替えられることで、入力直流電圧を降圧する降圧コンバータとして動作する。なお、DC-DCコンバータ100は、スイッチング素子、チョークコイル、ダイオードによる変換部を複数備え、これら変換部が並列接続されたマルチフェーズコンバータであってもよく、各変換部のチョークコイルとして上記インダクタ1が採用され得る。
【0014】
第1の磁性ブロック2A及び第2の磁性ブロック2Bは、X軸方向に互いに離間して対向する状態で配置される。磁性ブロック2A,2Bは、直方体状の形状を有する。本実施形態では、X軸方向に扁平な直方体状の形状を有する。磁性ブロック2A,2Bは、同形状を有している。磁性ブロック2A,2Bは、例えば、MnZn系フェライト、NiZn系フェライトなどの焼結磁心、軟磁性金属板を積層して形成した積層磁心などの磁性材料によって構成することができる。磁性ブロック2A,2Bの透磁率は1000以上であってもよい。また、磁性ブロック2A,2Bは、磁気特性がほぼ同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0015】
図2に示すように、第1の磁性ブロック2Aは、対向面2Aa(第3の対向面)と、主面2Abと、端面2Ac,2Adと、側面2Ae,2Afと、を有する。対向面2Aaは、X軸方向においてコイル導体3と対向する面である。主面2Abは、X軸方向において対向面2Aaと反対側の面である。対向面2AaはX軸方向の負側に配置され、主面2AbはX軸方向の正側に配置される。端面2Ac,2Adは、Y軸方向に対向する面である。端面2AcはY軸方向の正側に配置され、端面2AdはY軸方向の負側に配置される。側面2Ae,2Afは、Z軸方向に対向する面である。側面2AeはZ軸方向の正側に配置され、側面2AfはZ軸方向の負側に配置される。
【0016】
第2の磁性ブロック2Bは、対向面2Ba(第4の対向面)と、主面2Bbと、端面2Bc,2Bdと、側面2Be,2Bfと、を有する。対向面2Baは、X軸方向においてコイル導体3と対向する面である。主面2Bbは、X軸方向において対向面2Baと反対側の面である。対向面2BaはX軸方向の正側に配置され、主面2BbはX軸方向の負側に配置される。端面2Bc,2Bdは、Y軸方向に対向する面である。端面2BcはY軸方向の正側に配置され、端面2BdはY軸方向の負側に配置される。側面2Be,2Bfは、Z軸方向に対向する面である。側面2BeはZ軸方向の正側に配置され、側面2BfはZ軸方向の負側に配置される。
【0017】
図1に示すように、磁性ブロック2A,2Bは、X軸方向から見て端面2Ac,2Ad及び側面2Ae,2Afと、端面2Bc,2Bd及び側面2Be,2Bfと、が重なるように、Y-Z面内で同位置に配置される。なお、製造誤差等により生じる範囲内の位置ずれは、「同位置」に含まれるものとする。
【0018】
コイル導体3は、第1の導体部4Aと、第2の導体部4Bと、連結部6と、第1の端子部7Aと、第2の端子部7Bと、を備える。コイル導体3の材料は、例えば、Cu、Ag、Au、Al、Ni、Snなどから選ばれる金属で構成される。
【0019】
導体部4A,4Bは、Z軸方向に延びる、X軸方向において、第1の磁性ブロック2Aと第2の磁性ブロック2Bとの間に配置される。第1の導体部4Aは、Y軸方向の正側に配置され、第2の導体部4Bは、Y軸方向の負側に配置される。連結部6は、第1の導体部4Aと第2の導体部4Bとを連結する部材である。連結部6は、導体部4A,4BのZ軸方向の正側の端部同士に接続され、Y軸方向に延びる。第1の端子部7Aは、第1の導体部4AのZ軸方向の負側の端部に設けられ、Y軸方向の正側へ延びる。第2の端子部7Bは、第2の導体部4BのZ軸方向の負側の端部に設けられ、Y軸方向の負側へ延びる。端子部7A,7Bは、基板101の電極102に接合される。これにより、インダクタ1が基板101に実装される。
【0020】
図2に示すように、第1の導体部4Aは、対向面4Aa(第1の対向面)と、対向面4Ab(第2の対向面)と、側面4Ac,4Adと、を有する。対向面4Aaは、X軸方向において第1の磁性ブロック2Aと対向する面である。対向面4Abは、X軸方向において第2の磁性ブロック2Bと対向する面である。対向面4AaはX軸方向の正側に配置され、対向面4AbはX軸方向の負側に配置される。側面4Ac,4Adは、Y軸方向に対向する面である。側面4AcはY軸方向の正側に配置され、側面4AdはY軸方向の負側に配置される。
【0021】
第2の導体部4Bは、対向面4Ba(第5の対向面)と、対向面4Bb(第6の対向面)と、側面4Bc,4Bdと、を有する。対向面4Baは、X軸方向において第1の磁性ブロック2Aと対向する面である。対向面4Bbは、X軸方向において第2の磁性ブロック2Bと対向する面である。対向面4BaはX軸方向の正側に配置され、対向面4BbはX軸方向の負側に配置される。側面4Bc,4Bdは、Y軸方向に対向する面である。側面4BcはY軸方向の負側に配置され、側面4BdはY軸方向の正側に配置される。
【0022】
なお、対向面4Aa,4Baと、連結部6及び端子部7A,7BのX軸方向の正側の面は、同一平面状に配置される。対向面4Ab,4Bbと、連結部6及び端子部7A,7BのX軸方向の負側の面は、同一平面状に配置される。第1の導体部4Aの対向面4Aa、及び対向面4Abの少なくとも一部は、それぞれ第1の磁性ブロック2Aの第1の導体部4Aに対する対向面2Aa、及び第2の磁性ブロック2Bの第1の導体部4Aに対する対向面2Baと平行である。第2の導体部4Bの対向面4Ba、及び対向面4Bbの少なくとも一部は、それぞれ第1の磁性ブロック2Aの第2の導体部4Bに対する対向面2Aa、及び第2の磁性ブロック2Bの第2の導体部4Bに対する対向面2Baと平行である。
【0023】
次に、
図3を参照して、インダクタ1の断面形状について詳細に説明する。
図3に示すように、対向面4Aaと第1の磁性ブロック2Aとの間、及び対向面4Abと第2の磁性ブロック2Bとの間には、絶縁体10A(第1の絶縁体)が配置される。対向面4Baと第1の磁性ブロック2Aとの間、及び対向面4Bbと第2の磁性ブロック2Bとの間には、絶縁体10B(第2の絶縁体)が配置される。
【0024】
本実施形態では、第1の導体部4Aに対する絶縁体10Aは、対向面4Aa上に形成される絶縁部11Aと、対向面4Ab上に形成される絶縁部12Aと、を有する。側面4Ac,4Ad上には絶縁部は形成されていない。第2の導体部4Bに対する絶縁体10Bは、対向面4Ba上に形成される絶縁部11Bと、対向面4Bb上に形成される絶縁部12Bと、を有する。側面4Bc,4Bd上には絶縁部は形成されていない。なお、
図2において、コイル導体3に対してハッチングが付された部分は、絶縁体10A,10Bが配置される箇所である。なお、対向面4Aa,4Ba側も同趣旨の範囲に絶縁体10A,10Bが形成される。なお、連結部6も磁性ブロック2A,2Bに挟まる場合は絶縁体が形成されてもよい。
【0025】
図4(a)は、絶縁体10Aの構成を詳細に示す断面図である。
図4(a)に示すように、X軸方向において、第1の導体部4Aから絶縁層14、及び接着層13の順に配置される。絶縁層14は、絶縁体10Aの絶縁性を発揮する層である。絶縁層14として、ポリイミド、エポキシ、ウレタン、絶縁テープ、セラミック、ガラスなどを採用してよい。なお、接着層13は、磁性粉を含む樹脂であってもよく、磁性材料であってもよい。接着層13は、磁性ブロック2A、2Bと接着するための層である。接着層13として、エポキシ、アクリルなどを採用してよい。
【0026】
なお、
図4(b)に示すように、絶縁層14は、Y軸方向における第1の導体部4Aの表面(側面4Ac,4Ad)を覆う部分をさらに備えてよい。絶縁体10Aは、第1の導体部4Aの側面4Ac上に形成される絶縁部16Aと、側面4Ad上に形成される絶縁部17Aと、を有する。絶縁部16A,17Aは、絶縁層14を有する。また、
図4(c)に示すように、絶縁部16A,17Aが絶縁層14のみならず接着層13を有していてもよい。
【0027】
図3に示すように、第1の磁性ブロック2Aと第2の磁性ブロック2Bとの間であって、コイル導体3及び絶縁体10A,10Bが配置されない領域に配置される磁性材料20を有する。磁性材料20は、第1の磁性ブロック2Aの対向面2Aaと、第2の磁性ブロック2Bの対向面2Baと、第1の導体部4Aの側面4Ac,4Adと、第2の導体部4Bの側面4Bc,4Bdと、絶縁体10A,10Bの側面と、に接するように配置される。なお、X軸方向から見たときに、磁性材料20のY軸方向の両側の端面は、端面2Ac,2Bc,2Ad,2Bdと一致し、磁性材料20のZ軸方向の両側の側面は、側面2Ae,2Be,2Af,2Bfと一致する。
【0028】
磁性材料20の透磁率は5以上であってよく、20以上であってよい。この場合、コイル導体3がさらに厚くなったとしても、高いインダクタンスを得ることができ、コイル導体3の電気抵抗をさらに下げることができる。磁性材料20の透磁率は100以下であってよく、50以下であってよい。磁性材料20は、磁性ブロック2A,2Bよりも低い透磁率であってよい。磁性材料20は、第1の磁性ブロック2A、及び第2の磁性ブロック2Bに接するように配置される。磁性材料20として、軟磁性金属粉末と樹脂の混合物などを採用してよい。軟磁性金属粉末として、鉄-ケイ素合金、パーマロイ、センダスト、アモルファス、ナノ結晶合金あるいはその混合物を用いることができる。樹脂として、エポキシなどの熱硬化性樹脂を用いることができる。磁性材料20の厚み(すなわち磁性ブロック2A,2B間の距離)は、0.2~3.0mmであってよい。
【0029】
次に、本実施形態に係るインダクタ1、及びDC-DCコンバータ100の作用・効果について説明する。
【0030】
本実施形態に係るインダクタ1は、X軸方向に互いに離間して対向する状態で配置される、直方体状の第1の磁性ブロック2A、及び第2の磁性ブロック2Bと、Z軸方向に延びる第1の導体部4Aを有するコイル導体3と、を備える。第1の導体部4Aは、X軸方向において、第1の磁性ブロック2Aと第2の磁性ブロック2Bとの間に配置され、第1の導体部4Aは、第1の磁性ブロック2Aとの第1の対向面4Aa、及び第2の磁性ブロック2Bとの第2の対向面4Abを有し、第1の対向面4Aaと第1の磁性ブロック2Aとの間、及び第2の対向面4Abと第2の磁性ブロック2Bとの間には、第1の絶縁体10Aが配置され、第1の磁性ブロック2Aと第2の磁性ブロック2Bとの間であって、コイル導体3及び絶縁体10Aが配置されない領域に配置される磁性材料20を有する。
【0031】
このインダクタ1では、第1の導体部4Aの第1の対向面4Aaと第1の磁性ブロック2Aとの間、及び第1の導体部4Aの第2の対向面4Abと第2の磁性ブロック2Bとの間には、第1の絶縁体10Aが配置される。従って、コイル導体3と磁性ブロック2A,2Bとの絶縁性を確保することができる。また、インダクタ1は、第1の磁性ブロック2Aと第2の磁性ブロック2Bとの間であって、コイル導体3及び絶縁体10Aが配置されない領域に配置される磁性材料20を有する。このように、磁性ブロック2A,2B間が磁性材料で埋められることにより、インダクタ1の磁路におけるエアギャップの発生が抑制される。エアギャップの発生が抑制されることで、当該エアギャップの大きさのバラツキに起因するインダクタンスのバラツキを低減することができる。以上より、インダクタンスのバラツキを抑制しつつ、コイル導体と磁性ブロックとの間の絶縁性を確保することができる。
【0032】
ここで、インダクタ1のインダクタンスは磁気抵抗に反比例する。磁気抵抗は、透磁率(μ)に反比例し、磁路長(Le)に比例する。すなわち「Le/μ」に比例する全体の磁気抵抗は一対の磁性ブロックの磁気抵抗とエアギャップの磁気抵抗の和で近似できる。比較例として一対の磁性ブロックの間にエアギャップが存在する構成について検討する。例えば、磁性ブロックの透磁率が2000以上、エアギャップの透磁率が1であるとする。このとき、例えば磁性ブロックの磁路長が10mmであるとすると、エアギャップの磁路長が10μmから20μmに増加すると、磁気抵抗が67%も変化する。
【0033】
これに対し、本実施形態のようなインダクタ1の構成によれば、磁性ブロックの透磁率が2000以上であり、磁性材料20の透磁率が20であるとする。例えば、磁性ブロック2A,2Bの磁路長が10mm、磁性材料20の磁路長が200μmのとき、磁気抵抗は10μmのエアギャップと同等になる。例えば磁性材料20の磁路長が200μmから210μmに増加したとき、磁気抵抗は3%しか変化しない。このように、インダクタ1の各構成要素のバラツキによって磁性材料20の厚みが多少変化してもインダクタンスのバラツキを抑制することができる。また、本実施形態のように磁性ブロック、コイル導体3、絶縁体10A,10Bを配置することにより、一対の磁性ブロックの間の距離、すなわち磁性材料20の厚み寸法は、コイル導体3および絶縁体10A,10Bの寸法で規定できる。絶縁体10A,10Bの厚みはコイル導体3に比べて十分に薄いので、コイル導体3の厚みを制御するだけで磁性材料20の寸法のバラツキを制御することが容易になる。
【0034】
磁性材料20は、第1の磁性ブロック2A、及び第2の磁性ブロック2Bに接するように配置される。この場合、磁性材料20と磁性ブロック2A,2Bとの間のエアギャップの発生を抑制することができ、インダクタンスのバラツキを抑制することができる。本実施形態では、磁性材料20は、磁性ブロック2A,2Bのうち、コイル導体3や絶縁体10A,10Bが配置されない領域の全面に対して配置される。ただし、磁性材料20のZ軸方向に対向する側面やY軸方向に対向する端面が、磁性ブロック2A,2Bの端面や側面と一致しない場合などのように、磁性ブロック2A,2Bのうち、コイル導体3や絶縁体10A,10Bが配置されない領域の全面に対して配置されなくともよい。この場合、磁性材料20は、磁性ブロック2A,2Bのうち、コイル導体3や絶縁体10A,10Bが配置されない領域におけるほぼ全面(半分以上の面積を占める領域)に対して配置されてよい。
【0035】
絶縁体10Aは、少なくとも絶縁層14と、接着層13と、を含んでよい。これにより、絶縁層14で絶縁性を確実に確保しつつ、磁性ブロック2A、2Bにコイル導体3を固定することができる。
【0036】
第1の導体部4Aの対向面4Aa、及び対向面4Abの少なくとも一部は、それぞれ第1の磁性ブロック2Aの第1の導体部4Aに対する対向面2Aa、及び第2の磁性ブロック2Bの第1の導体部4Aに対する対向面2Baと平行であってよい。この場合、第1の導体部4Aと磁性ブロック2A、2Bとの間にエアギャップが生じることを抑制できる。
【0037】
X軸方向において、第1の導体部4Aから絶縁層14、及び接着層13の順に配置されてよい。この場合、第1の導体部4A側において絶縁層14で絶縁性を確実に確保しつつ、磁性ブロック2A,2Bにおいて当該磁性ブロック2A、2Bにコイル導体3を固定することができる。
【0038】
絶縁層14は、Y軸方向における第1の導体部4Aの表面を覆う部分をさらに備えてよい。この場合、更に、絶縁性をさらに確保することができる。
【0039】
磁性材料20の透磁率は5以上であってよい。この場合、コイル導体3が厚くなったとしても、高いインダクタを得ることができ、コイル導体3の電気抵抗を下げることができる。
【0040】
コイル導体3は、Z軸方向に延びるとともに第1の磁性ブロック2Aと第2の磁性ブロック2Bとの間に配置される第2の導体部4Bと、第1の導体部4Aと第2の導体部4Bとを連結する連結部6と、を更に備え、第2の導体部4Bは、第1の磁性ブロック2Aとの対向面4Ba、及び第2の磁性ブロック2Bとの対向面4Bbを有し、対向面4Baと第1の磁性ブロック2Aとの間、及び対向面4Bbと第2の磁性ブロック2Bとの間には、第2の絶縁体10Bが配置されてよい。このように第2の導体部を設けることで、複数の導体部が存在する場合において、インダクタンスのバラツキを抑制することができる。
【0041】
本実施形態に係るDC-DCコンバータ100は、上述のインダクタを備える。
【0042】
このDC-DCコンバータ100によれば、インダクタ1のインダクタンスのバラツキが小さいため、出力波形のバラツキが小さいDC-DCコンバータを得ることができる。
【0043】
本開示は、上述の実施形態に限定されない。
【0044】
図5に示すように、第1の磁性ブロック2A及び第2の磁性ブロック2Bは、それぞれ軟磁性金属板40が複数積層されて構成されてよい。軟磁性金属板40はアモルファス合金やFe基ナノ結晶合金などの磁性薄帯を用いることができる。また、第1の磁性ブロック2A、及び第2の磁性ブロック2Bの第1の導体部4Aに対する対向面2Aa、及び対向面2Baは、凹凸部41を有してよい。この場合、凹凸部41に磁性材料20が入り込むことで磁性ブロック2A,2Bと磁性材料20との密着性を高め、構造を安定させることができる。また、凹凸部41に磁性材料20が満たされることでエアギャップを減少させることができ、インダクタンスの変動を抑制することができる。
【0045】
なお、磁性ブロック2A,2Bが凹凸部を有する場合も、請求項における「直方体状」に含まれるものとする。また、磁性ブロック2A,2Bを磁性薄帯で構成した場合もフェライトで構成した場合も表面は粗さを有するため、この粗さを考慮したうえで直方体状を構成している。つまり、「直方体状」とは、厳密な直方体に限られず、全体として直方体と捉えられるものが含まれる。
【0046】
導体部の本数は特に限定されない。例えば
図6に示すように、磁性ブロック2A,2B間には、一本の第1の導体部4Aだけが配置されていてもよい。また、
図7に示すように、磁性ブロック2A,2B,2Cが積層され、それぞれの間に一対の導体部4A,4Bが配置されることで、四本の導体部が設けられてもよい。
図7に示す例では、磁性ブロック2B,2C間に追加の導体部4A,4Bが配置される。また、磁性ブロック2Bと導体部4A,4B間に絶縁体10A,10Bの絶縁部11A,11Bが配置される。磁性ブロック2Cと導体部4A,4B間に絶縁体10A,10Bの絶縁部12A,12Bが配置される。また、インダクタ1は、磁性ブロック2B,2Cの間であって、導体部4A,4B及び絶縁体10A、10Bが配置されていない領域に配置される磁性材料20を有する。なお、
図7に示すインダクタ1は、マルチフェーズコンバータの各変換部のチョークコイルが一体化されたインダクタとして用いることもできる。
【0047】
[形態1]
第1の方向に互いに離間して対向する状態で配置される、直方体状の第1の磁性ブロック、及び第2の磁性ブロックと、
前記第1の方向と直交する第2の方向に延びる第1の導体部を有するコイル導体と、を備え、
前記第1の導体部は、前記第1の方向において、前記第1の磁性ブロックと前記第2の磁性ブロックとの間に配置され、
前記第1の導体部は、前記第1の磁性ブロックとの第1の対向面、及び前記第2の磁性ブロックとの第2の対向面を有し、
前記第1の対向面と前記第1の磁性ブロックとの間、及び前記第2の対向面と前記第2の磁性ブロックとの間には、第1の絶縁体が配置され、
前記第1の磁性ブロックと前記第2の磁性ブロックとの間であって、前記コイル導体及び前記絶縁体が配置されない領域に配置される磁性材料を有する、インダクタ。
[形態2]
前記磁性材料は、前記第1の磁性ブロック、及び前記第2の磁性ブロックに接するように配置される、形態1に記載されたインダクタ。
[形態3]
前記絶縁体は、少なくとも絶縁層と、接着層と、を含む、形態1又は2に記載されたインダクタ。
[形態4]
前記第1の導体部の前記第1の対向面、及び前記第2の対向面の少なくとも一部は、それぞれ前記第1の磁性ブロックの前記第1の導体部に対する第3の対向面、及び前記第2の磁性ブロックの前記第1の導体部に対する第4の対向面と平行である、形態1~3の何れか一項に記載されたインダクタ。
[形態5]
前記第1の方向において、前記第1の導体部から前記絶縁層、及び前記接着層の順に配置される、形態3に記載されたインダクタ。
[形態6]
前記絶縁層は、前記第1の方向及び前記第2の方向と直交する第3の方向における前記第1の導体部の表面を覆う部分をさらに備える、形態3に記載されたインダクタ。
[形態7]
前記磁性材料の透磁率は5以上である、形態1~6の何れか一項に記載されたインダクタ。
[形態8]
前記第1の磁性ブロック及び前記第2の磁性ブロックは、それぞれ磁性薄帯が複数積層されて構成され、
前記第1の磁性ブロック、及び前記第2の磁性ブロックの前記第1の導体部に対する第3の対向面、及び第4の対向面は、凹凸部を有する、形態1~7の何れか一項に記載されたインダクタ。
[形態9]
前記コイル導体は、
前記第2の方向に延びるとともに前記第1の磁性ブロックと前記第2の磁性ブロックとの間に配置される第2の導体部と、
前記第1の導体部と前記第2の導体部とを連結する連結部と、を更に備え、
前記第2の導体部は、前記第1の磁性ブロックとの第5の対向面、及び前記第2の磁性ブロックとの第6の対向面を有し、
前記第5の対向面と前記第1の磁性ブロックとの間、及び前記第6の対向面と前記第2の磁性ブロックとの間には、第2の絶縁体が配置される、形態1~8の何れか一項に記載されたインダクタ。
[形態10]
形態1~9の何れか一項に記載のインダクタを備える、DC-DCコンバータ。
【符号の説明】
【0048】
1…インダクタ、2A…第1の磁性ブロック、2Aa…対向面(第3の対向面)、2B…第2の磁性ブロック、2Ba…対向面(第4の対向面)、3…コイル導体、4A…第1の導体部、4Aa…対向面(第1の対向面)、4Ab…対向面(第2の対向面)、4B…第2の導体部、4Ba…対向面(第5の対向面)、4Bb…対向面(第6の対向面)、10A…第1の絶縁体、10B…第2の絶縁体、13…接着層、14…絶縁層、100…DC-DCコンバータ。