(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143525
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電動制動装置
(51)【国際特許分類】
B60T 13/74 20060101AFI20241003BHJP
F16D 65/18 20060101ALI20241003BHJP
F16D 121/24 20120101ALN20241003BHJP
F16D 125/48 20120101ALN20241003BHJP
F16D 129/06 20120101ALN20241003BHJP
F16D 127/06 20120101ALN20241003BHJP
【FI】
B60T13/74 G
F16D65/18
F16D121:24
F16D125:48
F16D129:06
F16D127:06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056253
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】301065892
【氏名又は名称】株式会社アドヴィックス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】北原 康利
(72)【発明者】
【氏名】勝山 智徳
【テーマコード(参考)】
3D048
3J058
【Fターム(参考)】
3D048BB53
3D048CC49
3D048HH18
3J058AA43
3J058AA48
3J058AA53
3J058AA63
3J058AA69
3J058AA73
3J058AA78
3J058BA64
3J058CC13
3J058CC15
3J058DB23
3J058FA01
(57)【要約】
【課題】組付けが容易な電動制動装置を提供する。
【解決手段】電動制動装置(BRK)は、車両の車輪(WHL)と一体となって回転する回転部材(KTB)に摩擦部材(MSB)を押し付けることにより制動力を発生させ、電気モータ(MTR)から摩擦部材までの動力の伝達経路の一部であり、電気モータに同期して回転する回転部(RCHまたはGR)と、回転部に設けられた被検出部(MAG)の回転を検出することにより、電気モータの回転角を検出する回転角検出部(MKA)と、を備えている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の車輪と一体となって回転する回転部材に摩擦部材を押し付けることにより前記車輪に制動力を発生させる電動制動装置であって、
電気モータから前記摩擦部材までの動力の伝達経路の一部であり、前記電気モータに同期して回転する回転部と、
前記回転部に設けられた被検出部の回転を検出することにより、前記電気モータの回転角を検出する回転角検出部と、
を備えていることを特徴とする電動制動装置。
【請求項2】
前記電気モータは、第1方向に回転することにより、前記摩擦部材を前記回転部材に押し付ける前記動力を発生させ、
前記回転部は、前記車両が停止しているときに前記電気モータが前記第1方向とは反対の第2方向に回転することを拘束するラチェット歯車であることを特徴とする、請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項3】
前記回転部は、前記電気モータの回転の回転速度を減速する減速歯車であることを特徴とする、請求項1に記載の電動制動装置。
【請求項4】
前記ラチェット歯車と噛み合い可能な爪部材を備え、
前記ラチェット歯車が前記爪部材と噛み合っていないときに、前記電気モータが前記第1方向および前記第2方向に回転することを許容し、前記ラチェット歯車および前記被検出部は、一体となって、前記電気モータが回転する方向に回転し、
前記ラチェット歯車が前記爪部材と噛み合っているときに、前記電気モータが前記第2方向に回転しないように拘束することを特徴とする、請求項2に記載の電動制動装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は電動制動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電気モータの回転子の位置を検出する回転角センサ、ラチェット歯車を有するロック機構および電気モータの動力を押圧部材に伝達するための動力伝達機構を備えている電動制動装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電動制動装置では、電気モータの回転角を検出するための回転角検出部を、ブレーキECUの基板に設けることが検討されている。回転角検出部をブレーキECUの基板に設ける場合、電気モータの回転子とは別に被検出部を設けることがあるが、被検出部、回転角センサ、ラチェット歯車、および減速部材の歯車がそれぞれ個別に組み付けられることがあり、組付け工程が煩雑となっていた。
【0005】
本開示の一態様は、組付けが容易な電動制動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本開示の一態様に係る電動制動装置は、車両の車輪と一体となって回転する回転部材に摩擦部材を押し付けることにより前記車輪に制動力を発生させる電動制動装置であって、電気モータから前記摩擦部材までの前記動力の伝達経路の一部であり、前記電気モータに同期して回転する回転部と、前記回転部に設けられた被検出部の回転を検出することにより、前記電気モータの回転角を検出する回転角検出部と、を備えている。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一態様によれば、電動制動装置を容易に組み付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本開示の一実施形態に係る電動制動装置の構成を示す図である。
【
図2】本開示の一実施形態に係るロック機構の説明に用いる図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(電動制動装置の構成)
図1は、本開示の一実施形態に係る電動制動装置の構成を示す図である。
図1に示す電動制動装置BRKは、車両に搭載されている。電動制動装置BRKを搭載している車両は、ブレーキペダル等の制動操作部材BPと、車輪WHLと、車輪WHLと一体になって回転する回転部材KTBとを備えている。電動制動装置BRKは、キャリパCRPと、検出部材MKAと、電子制御ユニットECUとを備えている。
【0010】
図1に示すキャリパCRPは、浮動型の電動キャリパである。キャリパCRPは、電気モータMTRと、ロック機構LOKと、減速部材GSKと、シャフトSFTと、動力変換部材NJBと、押圧部材PSNと、押圧力取得部FBAと、2つの摩擦部材MSBとを有している。
【0011】
電気モータMTRは、押圧部材PSNを駆動するための動力源である。電気モータMTRの回転により、動力伝達部材INPが回転軸Jinを中心に回転する。
減速部材GSKは、複数の減速歯車GRを有している。複数の減速歯車GRは、動力伝達部材INPに固定されている第1歯車GR1と、シャフトSFTに固定されている第2歯車GR2とを含んでいる。減速部材GSKは、動力伝達部材INPの回転を、回転速度を減じてシャフトSFTに伝達する。シャフトSFTは、回転軸Jpsを中心に回転可能である。
【0012】
動力変換部材NJBは、例えば、ボールねじ機構である。動力変換部材NJBは、シャフトSFTの回転動力を直線動力に変換し、押圧部材PSNに伝達する。
押圧部材PSNは、例えば、ピストンである。押圧部材PSNは、動力変換部材NJBから伝達された直線動力により、回転軸Jpsに平行な方向に移動し、摩擦部材MSBを押圧する。摩擦部材MSBは、車両の車輪WHLと一体となって回転する回転部材KTBに対向する位置に配置されている。
押圧力取得部FBAは、押圧部材PSNが摩擦部材MSBを押す力である押圧力を取得する。
【0013】
ロック機構LOKは、車両の駐車ブレーキに用いられラチェット歯車RCHと、ソレノイドSOLとを有している。ラチェット歯車RCHは、回転軸Jinを中心に回転することができる。被検出部MAGは、磁石であって、ロック機構LOKのラチェット歯車RCHと一体となっている。ロック機構LOKについては、後に詳述する。
【0014】
検出部材MKAは、磁気検出方式の回転角検出部であって、被検出部MAGの位置または向きを検出する。検出部材MKAは、電子制御ユニットECUの基板上に配置されている。電子制御ユニットECUは、検出部材MKAにより検出された被検出部MAGの位置または向きに基づいて、電気モータMTRの回転角度を検出することができる。電子制御ユニットECUは、検出した電気モータMTRの回転角度に基づいて、電気モータMTRおよびロック機構LOKを制御する。
【0015】
電気モータMTRの回転は、減速部材GSKにより押圧部材PSNに伝達される。電気モータMTRが正転方向に回転した場合、押圧部材PSNは、摩擦部材MSBを回転部材KTBに押し付ける。一方、電気モータMTRが正転方向とは反対の逆転方向に回転したとき、摩擦部材MSBが回転部材KTBから離れる。
【0016】
図2は、本開示の一実施形態に係るロック機構の説明に用いる図である。
図2に示すように、ロック機構LOKは、ラチェット歯車RCHと、ソレノイドSOLと、爪部材TSUと、弾性部材SPRとを有している。爪部材TSUは、ラチェット歯車RCHの歯と噛み合い可能である。
図2の(a)は、爪部材TSUがラチェット歯車RCHと噛み合っていない状態を示している。
図2の(b)は、爪部材TSUがラチェット歯車RCHと噛み合った状態を示している。
【0017】
ラチェット歯車RCHは、動力伝達部材INPに固定されている。ラチェット歯車RCHおよび被検出部MAGは、ラチェット歯車RCHの側面視において、動力伝達部材INPと同軸である。ラチェット歯車RCHは、電気モータMTRの回転角度が0度にあるとき、所定の歯が爪部材TSUと噛み合い可能である。ラチェット歯車RCHは、電気モータMTRの回転角度が正転方向Fwdに所定角度回転するごとに、所定の歯が爪部材TSUと噛み合い可能である。ラチェット歯車RCHは、歯に方向性を有している。ラチェット歯車RCHは、爪部材TSUと噛み合った状態で、正転方向には回転することができるが、逆転方向には回転することができない。
【0018】
ラチェット歯車RCHには、被検出部MAGが埋め込まれている。そのため、組み立てる部品点数が削減され、電動制動装置BRKの組み立てが容易になっている。また、動力伝達部材INPの軸長を短縮することができる。
【0019】
被検出部MAGは、ラチェット歯車RCHと一体となって回転可能である。被検出部MAGは、ラチェット歯車RCHの側面視において正円形を有しており、N極およびS極を有している。例えば、被検出部MAGは、ラチェット歯車RCHの側面視において、半円形のN極およびS極を有している。
【0020】
被検出部MAGは、ラチェット歯車RCHに対して、所定の向きに配置されている。すなわち、ラチェット歯車RCHが所定位置にあるとき、被検出部MAGのN極およびS極の位置は予め決められている。検出部材MKAは、被検出部MAGの位置を検出することにより、ラチェット歯車RCHの角度変化を検出することができ、電気モータMTRの回転角度を検出することができる。
【0021】
弾性部材SPRは、例えばバネである。弾性部材SPRは、爪部材TSUがラチェット歯車RCHから離れる解除方向Dtrに爪部材TSUを付勢している。
【0022】
ソレノイドSOLは、ラチェット歯車RCHの歯先円C1に対向する位置に配置されている。ソレノイドSOLは、プルソレノイドであって、コイルCOL、ベース(固定鉄芯)BAS、プランジャ(可動鉄芯)PLN、プッシュバーPBR、ハウジングHSG、および、エアギャップスペーサAGSを有している。
【0023】
コイルCOL、および、ベースBASは、ハウジングHSGの内に収められている。ハウジングHSGは、キャリパCRPに固定されている。
プッシュバーPBRは、一端が爪部材TSUに連結され、他端がプランジャPLNに固定されている。
【0024】
コイルCOLの巻き線に電流が流れることにより、磁界が発生する。ベースBASは、コイルCOLに磁界が発生したとき、プランジャPLNを噛み合い方向Dtsに吸引する。噛み合い方向Dtsは、弾性部材SPRが爪部材TSUを付勢する解除方向Dtrとは反対の方向である。ベースBASがプランジャPLNを吸引する力は、弾性部材SPRの付勢力よりも強い。プランジャPLNが弾性部材SPRの付勢力に抗してベースBASに吸引されることにより、爪部材TSUは、ラチェット歯車RCHに向けて噛み合い方向Dtsに突出し、
図2の(b)のように、ラチェット歯車RCHと噛み合う。一方、コイルCOLに電流が流れていないとき、爪部材TSUは、弾性部材SPRの付勢力により、解除方向Dtrに移動し、
図2の(a)のように、ラチェット歯車RCHとの噛み合いは解除される。プランジャPLNとベースBASとの間には、エアギャップスペーサAGSが設けられている。
【0025】
ロック機構LOKが
図2の(a)の状態にあるとき、ロック機構LOKは、動力伝達部材INPが正転方向Fwdおよび逆転方向Rvsに回転することを許容する。
電気モータMTRが正転方向Fwdに回転すると、動力伝達部材INPならびに動力伝達部材INPに固定されているラチェット歯車RCHおよび減速部材GSKの第1歯車GR1が正転方向Fwdに回転する。電気モータMTRの回転は、減速部材GSKによりシャフトSFTに伝達される。シャフトSFTの回転動力は、動力変換部材NJBにより直線動力に変換される。この直線動力により、押圧部材PSNが摩擦部材MSBを回転部材KTBに押し付ける。
電気モータMTRが逆転方向に回転すると、動力伝達部材INPならびに動力伝達部材INPに固定されているラチェット歯車RCHおよび減速部材GSKの第1歯車GR1が逆転方向Rvsに回転する。電気モータMTRの回転は、減速部材GSKによりシャフトSFTに伝達される。
シャフトSFTの回転動力は、動力変換部材NJBにより直線動力に変換される。この直線動力により、摩擦部材MSBが回転部材KTBから離れる。
【0026】
ロック機構LOKが
図2の(a)の状態にあるとき、ラチェット歯車RCHと一体となっている被検出部MAGは、動力伝達部材INPと一体となって回転する。検出部材MKAは、被検出部MAGの位置を検出することにより、電気モータMTRの回転角を適切に検出することができる。
【0027】
車両の駐車中は、ロック機構LOKが
図2の(b)に示す状態となり、車両の停止状態が維持される。ロック機構LOKが
図2の(b)に示す状態のとき、ロック機構LOKは、動力伝達部材INPが正転方向Fwdに回転することを許容するが、動力伝達部材INPが逆転方向Rvsに回転しないように拘束する。
【0028】
車両の駐車中は、ロック機構LOKの拘束により、動力伝達部材INPおよび被検出部MAGは逆転方向Rvsに回転しない。そのため、ロック機構LOKが
図2の(b)の状態にあるときも、検出部材MKAは、被検出部MAGの位置を検出することにより、電気モータMTRの回転角を適切に検出することができる。
【0029】
〔変形例〕
上記実施形態では、被検出部MAGは、ラチェット歯車RCHの側面から見た側面視において、半円形のN極およびS極を有し、全体として正円形を有している磁石としたが、これに限定されない。検出部材MKAに対向する面にN極およびS極を有していれば、被検出部MAGの形状は正円形でなくてもよい。
また、被検出部MAGは、ラチェット歯車RCH以外の歯車に設けることにしてもよい。例えば、減速部材GSKの第1歯車GR1または第2歯車GR2に設けることにしてもよい。
上記実施形態では、被検出部MAGおよび検出部MKAは、磁気検出方式の回転角検出部であるとしたが、これに限定されず、静電容量方式等、任意の方式の回転角検出部であってもよい。
【0030】
〔まとめ〕
本開示の一態様に係る電動制動装置は、車両の車輪と一体となって回転する回転部材に摩擦部材を押し付けることにより前記車輪に制動力を発生させる電動制動装置であって、電気モータから前記摩擦部材までの前記動力の伝達経路の一部であり、前記電気モータに同期して回転する回転部と、前記回転部に設けられた被検出部の回転を検出することにより、前記電気モータの回転角を検出する回転角検出部と、を備えている。
本開示の一態様に係る電動制動装置では、電気モータは、第1方向に回転することにより、前記摩擦部材を前記回転部材に押し付ける前記動力を発生させ、前記回転部は、前記車両が停止しているときに前記電気モータが前記第1方向とは反対の第2方向に回転することを拘束するラチェット歯車である。
本開示の一態様に係る電動制動装置では、前記回転部は、前記電気モータの回転の回転速度を減速する減速歯車である。
従来の電動制動装置では、回転角センサ、回転角センサにより位置を検出される被検出部、ラチェット歯車、および減速機構の歯車がそれぞれ個別に配置されているため、組付け工程が煩雑となる。本開示によれば、被検出部がラチェット歯車または減速機構の歯車と一体となっているため、容易に組み付けることができる。
【0031】
本開示の一態様に係る電動制動装置は、前記ラチェット歯車と噛み合い可能な爪部材を備え、前記ラチェット歯車が前記爪部材と噛み合っていないときに、前記電気モータが前記第1方向および前記第2方向に回転することを許容し、前記ラチェット歯車および前記被検出部は、一体となって、前記電気モータが回転する方向に回転し、前記ラチェット歯車が前記爪部材と噛み合っているときに、前記電気モータが前記第2方向に回転しないように拘束する。
本開示によれば、回転角検出部は、ラチェット歯車と爪部材との噛み合いによらず、電気モータの回転角に対する、ラチェット歯車の歯の相対位置を把握することができる。
【0032】
〔付記事項〕
本開示は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本開示の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0033】
Fwd 正転方向
GR1 第1歯車
GR2 第2歯車
KTB 回転部材
LOK ロック機構
MAG 被検出部
MKA 回転角検出部
MSB 摩擦部材
MTR 電気モータ
RCH ラチェット歯車
Rvs 逆転方向
WHL 車両の車輪