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  • 特開-振動板及びスピーカユニット 図1
  • 特開-振動板及びスピーカユニット 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143527
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】振動板及びスピーカユニット
(51)【国際特許分類】
   H04R 7/02 20060101AFI20241003BHJP
   H04R 9/02 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H04R7/02
H04R9/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056255
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000112565
【氏名又は名称】フォスター電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003937
【氏名又は名称】弁理士法人前川知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒沢 哲太
(72)【発明者】
【氏名】中山 利周
(72)【発明者】
【氏名】中川 智貴
【テーマコード(参考)】
5D012
5D016
【Fターム(参考)】
5D012FA02
5D016AA05
5D016AA09
5D016AA12
5D016BA02
5D016FA01
5D016FA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】薄型化しつつ所望の放音を実現することができる振動板及びスピーカユニットを提供する。
【解決手段】スピーカユニットにおいて、振動板100のコーン型の本体部120は、周方向に山部及び谷部が繰り返しており、山部120aの稜線r及び谷部120bの谷線tは、本体部120の径方向にそれぞれ延びている。これら山部120aと谷部120bとは、本体部120の中心軸cを挟んで対向しており、それぞれ奇数個である。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーン型の本体部を有する振動板であって、
前記振動板の本体部は、周方向に山部及び谷部が繰り返しており、
前記山部の稜線及び前記谷部の谷線は、前記本体部の径方向にそれぞれ延びており、
前記山部と前記谷部とが前記本体部の中心軸を挟んで対向している、
振動板。
【請求項2】
コーン型の本体部を有する振動板であって、
前記振動板の本体部は、周方向に山部及び谷部が繰り返しており、
前記山部の稜線及び前記谷部の谷線は、前記本体部の径方向にそれぞれ延びており、
前記山部と前記谷部とがそれぞれ奇数個である、
振動板。
【請求項3】
前記谷部に、前記山部と同方向に盛り上がった膨出部を有している請求項1又は2に記載の振動板。
【請求項4】
前記膨出部は、前記谷部の谷線上の一部が盛り上がった形状をなしている請求項3に記載の振動板。
【請求項5】
前記本体部は、径方向の内側から外側に向けて中心軸方向の一側に傾斜しており、
前記本体部の外周縁を折曲線として、前記中心軸方向の他側に折り曲げられた外周部が形成されている請求項1又は2に記載の振動板。
【請求項6】
前記折曲線は、周方向に山部及び谷部が繰り返して形成されている請求項5に記載の振動板。
【請求項7】
前記山部の稜線及び前記谷部の谷線は、径方向外側に向けて周方向の間隔が広くなる請求項1又は2に記載の振動板。
【請求項8】
前記山部の稜線及び前記谷部の谷線は、径方向外側に向けて中心軸方向の間隔が広くなる請求項1又は2に記載の振動板。
【請求項9】
請求項3に記載の振動板と、
前記振動板の内周縁と接続されるボイスコイルボビンと、
前記ボイスコイルボビンを振動可能に支持するダンパと、を備え、
前記中心軸方向から視て前記膨出部の少なくとも一部分は、前記ダンパの範囲と被っている、
スピーカユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、振動板及びスピーカユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカユニットは、例えば下記特許文献1に記載のように、磁気回路と、磁気回路のギャップに配置されるボイスコイルボビンと、ボイスコイルボビンのボイスコイルに接続される信号伝達回路と、ボイスコイルボビンの周面に取り付けられた振動板とを備えている。スピーカユニットにおいては、信号伝達回路からボイスコイルに信号が伝達されると、ボイスコイルを有するボイスコイルボビンから振動板に振動が伝達し、振動板の振動によって放音されるようになっている。また、下記特許文献2に記載のような断面V字形の波ひだを形成した振動板も開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-120691号公報
【特許文献2】特開昭63-274296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、例えば車載用等のスピーカユニットは、限られたスペースに搭載されるために全体として薄型化されるよう望まれている。そこで、本発明者らは、スピーカユニット全体を薄型化する手段として、スピーカユニットの構成要素である振動板を薄型化する手段について種々の研究を重ねている。
【0005】
しかし、振動板の薄型化は、振動板の剛性の低下を伴うことがある。振動板の剛性が低下すると、振動板上でボイスコイルの振動とは別の振動が発生する、いわゆる分割共振が生じやすくなる。分割共振が生じると、スピーカの使用帯域で周波数特性の落ち込み(ディップ)が生じ、所望の放音を実現することが難しくなるという問題が生ずる。特許文献2のように振動板に波ひだを形成することで剛性を高めることも可能であるが、さらなる改良が望まれている。
【0006】
本開示は、このような問題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、薄型化しつつ所望の放音を実現することができる振動板及びスピーカユニットを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る振動板は、コーン型の本体部を有する振動板であって、前記振動板の本体部は、周方向に山部及び谷部が繰り返しており、前記山部の稜線及び前記谷部の谷線は、前記本体部の径方向にそれぞれ延びており、前記山部と前記谷部とが前記本体部の中心軸を挟んで対向している。
【0008】
また、本開示に係る振動板は、コーン型の本体部を有する振動板であって、前記振動板の本体部は、周方向に山部及び谷部が繰り返しており、前記山部の稜線及び前記谷部の谷線は、前記本体部の径方向にそれぞれ延びており、前記山部と前記谷部とがそれぞれ奇数個である。
【0009】
また、本開示に係るスピーカユニットは、前記谷部に、前記山部と同方向に盛り上がった膨出部を有している上述の振動板と、前記振動板の内周縁と接続されるボイスコイルボビンと、前記ボイスコイルボビンを振動可能に支持するダンパと、を備え、前記中心軸方向から視て前記膨出部の少なくとも一部分は、前記ダンパの範囲と被っている。
【発明の効果】
【0010】
本開示に係る振動板及びスピーカユニットによれば、薄型化しつつ所望の放音を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本開示に係るスピーカユニットの一実施形態を示す概略断面図である。
図2】本開示に係る振動板の一実施形態を示す全体斜視図である。
図3】本開示に係る振動板の一実施形態を示す部分平面図である。
図4】本開示に係る振動板の一実施形態を示す部分拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図1図4を参照しつつ、本開示に係る振動板及びスピーカユニットの一実施形態について説明する。なお、図1における各部の寸法は、実際の寸法ではなく簡略化して示したものである。
【0013】
(スピーカユニットの構成)
まず、本開示に係るスピーカユニットの構成について図1を主に参照しながら説明する。スピーカユニット1は、本開示に係るスピーカユニットの一実施形態であり、例えば車両のドアにおけるベースボックスに搭載される車載スピーカである。スピーカユニット1は、図1に示す中心軸cを中心として各部が回転体形状をなしている。具体的にはスピーカユニット1は、ヨーク10と、マグネット20と、プレート30と、フレーム40と、錦糸線一体型ダンパ50と、ボイスコイルボビン60と、振動板100と、エッジ部140とを備えている。図1に示す中心軸cは、振動板100の径方向中心を通過する直線であり、振動板100及びボイスコイルボビン60の振動方向でもある。図1に示す「一側」、「他側」は、中心軸cの延在方向(以下「軸方向」という。)一方側、他方側をそれぞれ意味している。
【0014】
ヨーク10(継鉄)は、磁気回路を構成するための強磁性体であり、薄型円盤状の土台部11と、土台部11の径方向中心から軸方向一側に突出する円柱状のポール部12とを備えている。マグネット20は、磁気回路を構成するための永久磁石であり、環状に形成されてヨーク10の土台部11に載置されている。プレート30は、磁気回路を構成するための強磁性体であり、環状に形成されてマグネット20に載置されている。ヨーク10とマグネット20とプレート30とによって外磁型磁気回路が構成されている。
【0015】
フレーム40は、概略円環状に形成されており、ベースボックスの取付部(図示せず)に支持されている。フレーム40は、ポール部12の径方向外側において錦糸線一体型ダンパ50のダンパ51を支持する第1フレーム部41と、ポール部12の径方向外側においてエッジ部140を支持する第2フレーム部42とを備えている。第1フレーム部41と第2フレーム部42とは共に上記取付部に支持されており、第1フレーム部41はさらにプレート30にも支持(載置)されている。
【0016】
錦糸線一体型ダンパ50は、ボイスコイルボビン60を振動可能に支持する可撓性の薄板環状部材であり、ダンパ51と錦糸線52とを備えている。ダンパ51には、波紋状のコルゲーション部が形成されている。ダンパ51の外縁側は第1フレーム部41に取り付けられており、ダンパ51の内縁側はボイスコイルボビン60の導電体63における外周面に取り付けられている。錦糸線52は、ダンパ51の一側面に沿ってダンパ51の径方向に延びた帯状のリード線であり、ダンパ51に編み込まれてダンパ51と一体をなしている。
【0017】
ボイスコイルボビン60は、ボビン本体61と、ボイスコイル62と、導電体63とを備えている。ボビン本体61は、振動板100の内周縁と接続されており、ボイスコイル62をなす線材を巻き付けるための筒状のボビンである。ボビン本体61は、その筒内Hの軸方向他側にてヨーク10のポール部12が挿入されるように配置されている。ボビン本体61の材料としては、例えば、ポリイミド(PI)等の樹脂材料、クラフト紙等の紙材料、又はアルミニウム合金等の金属材料を用いることができる。ボイスコイル62は、ボビン本体61の軸方向他側端部における巻付箇所に巻回されている。この巻付箇所は、ヨーク10とマグネット20とプレート30とによって構成されている外磁型磁気回路の磁気ギャップに位置している。導電体63は、中心軸cを対称に一対に設けられており、具体的には、中心軸cに対して180°回転対称に一対に設けられている。導電体63は、図1に示す接合部Xにおいて、例えば半田を用いた溶接等により、ボイスコイル62の両端部と錦糸線52の一端とに接続されている。
【0018】
振動板100は、ボイスコイル62への通電に応じてボビン本体61を介して振動するように構成されており、ボビン本体61の径方向においてボビン本体61を中心とする略環状に形成されている。振動板100は、径方向において内側から外側に向けて順番に、内周部110、本体部120、外周部130を有している。外周部130は、エッジ部140に接続されている。
【0019】
図2に示すように、本体部120は、全体として径方向内側から外側に向かうにつれて軸方向他側から軸方向一側に傾斜したいわゆるコーン型をなしている。また、本体部120は、周方向においては、山部120a及び谷部120bが繰り返された形状をなしている。詳しくは、山部120aは、軸方向他側から軸方向一側に向けて突出している箇所であり、谷部120bは、軸方向一側から軸方向他側に向けて突出している箇所である。本実施形態の本体部120は、周方向において、いわゆる正弦波状に、頂点が湾曲した山部120aと谷部120bが連続している。山部120aと谷部120bとの境界となる基準面(正弦波における変位0となる面)は、山部120aの稜線rと谷部120bの谷線tとの中間位置となる。
【0020】
山部120aの稜線r及び谷部120bの谷線tは、本体部120の径方向にそれぞれ延びており、つまり中心軸cから放射状に延びている。さらに、山部120aと谷部120bとは中心軸cを挟んで対向している。例えば、図3に示すように、中心軸cに垂直な仮想線Aを稜線rと重なるように描くと、その稜線rから中心軸cを挟んだ反対側には谷線tが位置している。また山部120aと谷部120bとの関係として、山部120a及びその稜線rと、谷部120b及びその谷線tとは、それぞれ奇数個(図1においては19個)ずつ形成されている。また、互いに隣接する山部120aの稜線rと谷部120bの谷線tとは、本体部120の径方向外側に向かうにつれて、周方向の間隔が広くなるように形成されている。一方、本体部120の径方向の長さとしては、山部120aの稜線rは、谷部120bの谷線tよりも短く形成されている。また、互いに隣接する山部120aの稜線rと谷部120bの谷線tとは、本体部120の径方向外側に向かうにつれて、軸方向の間隔も広くなるように形成されている。つまり、径方向外側に向かうにつれて、山部120aは高くなり、谷部120bは深くなる。
【0021】
また、本体部120は、谷部120bに膨出部121を有している。膨出部121は、本体部120の各谷部120bにおいて山部120aと同方向(軸方向一側)に盛り上がっており、具体的には、谷部120bの谷線t上の一部(本体部120の径方向における一部)が盛り上がった形状をなしている。膨出部121の少なくとも一部は、軸方向から視たダンパ51の範囲(図1、3に示す範囲R)と被っている。つまり、膨出部121の少なくとも一部は、軸方向においてダンパ51の領域に投影可能な位置に設けられている。膨出部121の軸方向一側端部は、本体部120の山部120aにおける稜線rよりも軸方向他側に位置している。本実施形態では、それぞれの膨出部121の盛上高さは同じである。
【0022】
図2に示すように、振動板100の内周部110は、基部111と回避部112とからなる。回避部112としては、第1回避部112A、第2回避部112Bの2つが形成されている。第1回避部112Aと第2回避部112Bとは、中心軸cを挟んで対向しており、第1回避部112Aは隣接する一対の山部120a間に形成され、第2回避部112Bは隣接する一対の谷部120b間に形成されている。回避部112は、図1に示す接合部Xよりも軸方向一側に位置しており、本体部120の径方向において本体部120の内縁の一部からボビン本体61の外周面に接するまで延在している。回避部112(112A、112B)は、図1に示す接合部Xを回避する形状として軸方向一側に突出するように形成されている。具体的には、図4に示すように、回避部112(112A、112B)は、一対の側壁部112a、112bと、一対の側壁部112a、112bの軸方向一側端部に設けられる天板部112cとを備えている。一対の側壁部112a、112bと天板部112cとはそれぞれ鈍角を形成している。
【0023】
回避部112(112A、112B)の天板部112cは、軸方向から視て略台形状に形成され、図1に示す導電体63に対して軸方向一側にそれぞれ位置し、ボビン本体61の径方向において中心軸cに対して点対称(すなわち、ボビン本体61の回転対称)となるように設けられている。つまり、回避部112(112A、112B)の天板部112cは、ボビン本体61の軸線に対して均等な角度で回転対称となっており、言い換えればボビン本体61の軸線を通る平面に対して面対称となっており、さらに言い換えればボビン本体61の軸線に垂直な平面において点対称となっている。
【0024】
図1及び図2に示すように、外周部130は、本体部120の径方向外縁から環状に形成されており、軸方向他側に向かって、すなわち、軸方向において錦糸線一体型ダンパ50に向かって、本体部120の外周縁を折曲線pとして折り曲げられている。この折曲線pにおいては、周方向において、本体部120の谷線tに沿って径方向外側に突出する山部p1と、本体部120の稜線rに沿って径方向内側に突出する谷部p2とが、繰り返して形成されている。折曲線pも正弦波形状をなしている。軸方向に対する外周部130の折曲角度は、軸方向に対する本体部120の傾斜角度よりも鋭角となっている。
【0025】
図1に示すように、エッジ部140は、全体的に軸方向一側(つまり、外周部130の折曲方向とは反対側)に向かって凸の断面半円状をなしている。本体部120の径方向において、エッジ部140の内周縁が外周部130の外周縁と貼り付けられており、エッジ部140の外周縁は第2フレーム部42に取り付けられている。
【0026】
なお、図示は省略するが、スピーカユニット1は、ボビン本体61の筒内Hへのダストの侵入を防止するために、ボビン本体61の軸方向一側端部を覆うように設けられるキャップを備えている。
【0027】
(スピーカユニットの動作)
図1に示すように、信号伝達回路(図示せず)から錦糸線52及び導電体63を介してボイスコイル62に電力が供給されると、ヨーク10、マグネット20及びプレート30により構成される磁気回路の磁気ギャップに位置するボイスコイル62に電磁力が発生する。この電磁力によりボイスコイル62が振動し、この振動がボイスコイル62からボビン本体61を介して振動板100に伝達し、振動板100から音が発生する。
【0028】
(スピーカユニットの効果)
スピーカユニット1は、コーン型の本体部120を有する振動板100を備え、本体部120は、周方向に山部120a及び谷部120bが繰り返しており、山部120aの稜線r及び谷部120bの谷線tは、本体部120の径方向にそれぞれ延びている。このため、スピーカユニット1によれば、振動板100を薄型化しても、本体部120における山部120a及び谷部120bにより振動板100の剛性を高く維持することができ、振動板100による所望の放音を実現することができる。
【0029】
特に、スピーカユニット1においては、本体部120における山部120aの稜線rと谷部120bの谷線tとが中心軸cを挟んで対向しているため、本体部120の径方向上における折れ目が生じにくくなっている。このため、スピーカユニット1によれば、振動板100の剛性をさらに高く維持することができ、振動板100による所望の放音をさらに容易に実現することができる。
【0030】
また、スピーカユニット1においては、本体部120における山部120aの稜線rと谷部120bの谷線tとがそれぞれ奇数個であるため、本体部120の径方向上における折れ目が生じにくくなっている。このため、スピーカユニット1によれば、振動板100の剛性をさらに高く維持することができ、振動板100による所望の放音をさらに容易に実現することができる。
【0031】
さらに、スピーカユニット1においては、振動板100の本体部120の谷部120bに、本体部120の山部120aと同方向に盛り上がった膨出部121を有している。このため、スピーカユニット1によれば、振動板100の剛性を膨出部121により高めることができるため、振動板100による所望の放音をさらに容易に実現することができる。
【0032】
スピーカユニット1において、膨出部121は、本体部120における谷部120bの谷線t上の一部が盛り上がった形状をなしている。このため、スピーカユニット1によれば、膨出部121の盛上高さを高くしても、膨出部121を隣接する山部120aの間の範囲内に収容することができるため、振動板100の薄型化を維持することができる。さらには、本体部120が、谷線tを折り目とした折り曲げと、本体部120の周方向を折り目とした折り曲げとに強くなるため、振動板100の剛性をさらに高めることができる。よって、振動板100による所望の放音をさらに容易に実現することができる。
【0033】
スピーカユニット1において、振動板100の本体部120は、本体部120の径方向の内側から外側に向けて軸方向一側に傾斜しており、外周部130は、本体部120の外周縁を折曲線pとして軸方向他側に折り曲げられている。このため、スピーカユニット1によれば、振動板100の剛性をさらに高めることができるため、振動板100をさらに薄型化することができ、振動板100による所望の放音をさらに容易に実現することができる。
【0034】
折曲線pは、周方向に山部p1及び谷部p2が繰り返して形成されている。このため、スピーカユニット1によれば、分割共振が生じやすい領域(折曲線p)を分散させることができるため、周波数特性の落ち込み(ディップ)を抑制することができる。よって、振動板100による所望の放音をさらに容易に実現することができる。
【0035】
スピーカユニット1において、本体部120の山部120aの稜線r及び谷部120bの谷線tは、本体部120の径方向外側に向かうにつれて周方向の間隔が広くなっている。このため、スピーカユニット1によれば、本体部120において分割共振が生じやすい領域(稜線r及び谷線t)を全体に分散させることができるため、本体部120の各所における周波数特性の落ち込み(ディップ)を抑制することができる。よって、振動板100による所望の放音をさらに容易に実現することができる。
【0036】
スピーカユニット1において、本体部120の山部120aの稜線r及び谷部120bの谷線tは、本体部120の径方向外側に向かうにつれて軸方向の間隔が広くなっている。このため、スピーカユニット1によれば、本体部120において分割振動が生じやすい領域(稜線r及び谷線t)を全体に分散させることができるため、本体部120の各所における周波数特性の落ち込み(ディップ)を抑制することができる。よって、振動板100による所望の放音をさらに容易に実現することができる。
【0037】
スピーカユニット1は、本体部120の谷部120bに本体部120の山部120aと同方向に盛り上がった膨出部121を有する振動板100と、振動板100の内周縁と接続されるボビン本体61と、ボビン本体61を振動可能に支持するダンパ51とを備え、軸方向から視て膨出部121の少なくとも一部分は、ダンパ51の範囲と被っている。このため、スピーカユニット1によれば、ダンパ51と振動板100との軸方向における距離が膨出部121の設置個所においては特に長くなり、振動板100の振動時における可動域を広く確保することができるため、振動板100によるダンパ51への干渉を回避することができ、かつ、振動板100による所望の放音をさらに容易に実現することができる。
【0038】
スピーカユニット1において、膨出部121の軸方向一側端部は、本体部120の山部120aにおける稜線rよりも軸方向他側に位置している。このため、スピーカユニット1によれば、膨出部121により振動板100の剛性を確保しつつ、膨出部121を隣接する山部120aの間に収容することにより振動板100をさらに薄型化することができる。
【0039】
スピーカユニット1において、本体部120の径方向において、本体部120における山部120aの稜線rは、本体部120における谷部120bの谷線tよりも短く形成されている。このため、スピーカユニット1によれば、稜線rが谷線tよりも長い場合に比較して、振動板100を薄型化することができる。
【0040】
スピーカユニット1において、本体部120は、周方向において正弦波状に頂点が湾曲した山部120aと谷部120bとが連続している。このため、スピーカユニット1によれば、本体部120が非正弦波状(例えば三角形波状)であると仮定した場合に比較して、本体部120の成型性が高まるために本体部120を容易に所望の形状にすることができ、かつ、本体部120の表面が滑らかになるため本体部120における分割共振の発生を抑制することができる。よって、本体部120の各所における周波数特性の落ち込み(ディップ)を抑制することができるため、振動板100による所望の放音をさらに容易に実現することができる。
【0041】
(その他)
上記一実施形態は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。すなわち、本開示に係る振動板及びスピーカユニットは、上記一実施形態の他にも様々な実施形態で実施されることが可能である。これら実施形態は全て、本発明の範囲及び要旨に含まれ、特許請求の範囲に記載された発明に含まれるものとする。
【0042】
上記一実施形態において、本体部120における山部120aの稜線rと谷部120bの谷線tとが中心軸cを挟んで対向しているが、これら稜線r及び谷線tとは必ずしも対向していなくてもよい。ただし、振動板100の剛性を高めるためには、少なくともこれら山部20aと谷部120bとが中心軸cを挟んで対向していることが好ましい。
【0043】
上記一実施形態において、本体部120における山部120aの稜線r及び谷部120bの谷線tの個数はそれぞれ19個であるが、これらの個数は19個以外であってもよい。ただし、振動板100の剛性を高めるためには、これらの個数がそれぞれ奇数個であることが好ましい。
【0044】
上記一実施形態においては、稜線rが谷線tよりも短く形成されているが、稜線rが谷線tよりも長く形成されていてもよい。
【0045】
上記一実施形態においては、膨出部121を全ての谷線tの上部に設けているが、膨出部121を一部の谷線tの上部のみに設けてもよい。ただし、膨出部121を全ての谷線tの上部に設ければ、振動板100の剛性をより高めることができる。また、それぞれの膨出部121の盛上高さは互いに異なっていてもよい。
【0046】
上記一実施形態においては、振動板100が一対(2つ)の回避部112(112A、112B)を備えているが、回避部112の個数は少なくとも接合部Xの個数と同じであればよい。また、回避部112の天板部112cの形状は、上記一実施形態のような略台形状以外にも、半円状、三角形状、矩形状であってもよい。なお、振動板100においては必ずしも回避部112を設ける必要はない。
【0047】
上記一実施形態においては、ヨーク10、マグネット20及びプレート30によって外磁型磁気回路を形成しているが、外磁型磁気回路に代えて内磁型磁気回路を形成してもよい。
【0048】
上記一実施形態の技術的特徴を抽出して以下に例示する。
[1]
コーン型の本体部を有する振動板であって、
前記振動板の本体部は、周方向に山部及び谷部が繰り返しており、
前記山部の稜線及び前記谷部の谷線は、前記本体部の径方向にそれぞれ延びており、
前記山部と前記谷部とが前記本体部の中心軸を挟んで対向している、
振動板。
[2]
コーン型の本体部を有する振動板であって、
前記振動板の本体部は、周方向に山部及び谷部が繰り返しており、
前記山部の稜線及び前記谷部の谷線は、前記本体部の径方向にそれぞれ延びており、
前記山部と前記谷部とがそれぞれ奇数個である、
振動板。
[3]
前記谷部に、前記山部と同方向に盛り上がった膨出部を有している[1]又は[2]に記載の振動板。
[4]
前記膨出部は、前記谷部の谷線上の一部が盛り上がった形状をなしている[3]に記載の振動板。
[5]
前記本体部は、径方向の内側から外側に向けて中心軸方向の一側に傾斜しており、
前記本体部の外周縁を折曲線として、前記中心軸方向の他側に折り曲げられた外周部が形成されている[1]~[4]のいずれか1つに記載の振動板。
[6]
前記折曲線は周方向に山部及び谷部が繰り返して形成されている[5]に記載の振動板。
[7]
前記山部の稜線及び前記谷部の谷線は、径方向外側に向けて周方向の間隔が広くなる[1]~[6]のいずれか1つに記載の振動板。
[8]
前記山部の稜線及び前記谷部の谷線は、径方向外側に向けて中心軸方向の間隔が広くなる[1]~[7]のいずれか1つに記載の振動板。
[9]
上記[1]~[8]のいずれか1つに記載の振動板と、
前記振動板の内周縁と接続されるボイスコイルボビンと、
前記ボイスコイルボビンを振動可能に支持するダンパと、を備え、
前記中心軸方向から視て前記膨出部の少なくとも一部分は、前記ダンパの範囲と被っている、
スピーカユニット。
【符号の説明】
【0049】
1 スピーカユニット
51 ダンパ
60 ボイスコイルボビン
100 振動板
120 本体部
120a 山部
120b 谷部
121 膨出部
130 外周部
c 中心軸
p 折曲線
p1 山部
p2 谷部
R 範囲
r 稜線
t 谷線
図1
図2
図3
図4