(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143529
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】電圧電流変換装置及び電圧制御発振装置
(51)【国際特許分類】
H03F 3/34 20060101AFI20241003BHJP
H03K 3/354 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H03F3/34 230
H03K3/354 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056257
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】320012037
【氏名又は名称】ラピステクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永山 淳
【テーマコード(参考)】
5J500
【Fターム(参考)】
5J500AC22
5J500AF10
5J500AF15
5J500AH10
5J500AH17
5J500AH25
5J500AK04
5J500AK09
5J500AK26
5J500AK32
5J500AT01
(57)【要約】
【課題】制御電圧に応じた周波数を出力可能とする。
【解決手段】電圧制御発振回路10の電流制御部14は、制御電圧Vcntがしきい値電圧を越えることで第1電流生成部20において電流I1が生成される。また、第2電流生成部22では、制御電圧Vcntがゼロからしきい値電圧Vtを越える電圧Vpまでの範囲において、制御電圧Vcntに応じて変化し、制御電圧Vcntが電圧Vpから電圧VDDまでの範囲において、電圧Vpに応じた電流I2を生成する。電流合成部24は、電流I1と電流I2とを合成することで制御電圧Vcntに応じた合成電流Icを生成する。これにより、制御電圧Vcntが0v~電圧VDDの範囲において制御電圧Vcntに応じかつこの範囲で制御電圧Vcntの変化に対して直進性を有する合成電流Icの出力が可能になる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力される制御電圧がトランジスタのしきい値電圧から電源電圧の範囲で動作されて、前記制御電圧に応じた第1電流を生成する第1電流生成部と、
前記制御電圧がゼロから前記しきい値電圧を越える所定の電圧までの範囲において、前記制御電圧に応じて変化し、前記制御電圧が前記所定の電圧から前記電源電圧までの範囲において、前記所定の電圧に応じた第2電流を生成する第2電流生成部と、
前記第1電流と前記第2電流とを合成することで前記制御電圧に応じた合成電流を生成可能とする電流合成部と、
を含む電圧電流変換装置。
【請求項2】
前記第1電流生成部は、ゲートに印加される前記制御電圧に応じた電流を出力する第1トランジスタを含み、
前記第2電流生成部は、ゲートに印加される電圧に応じた電流を出力する第2トランジスタ、及び前記制御電圧がゼロから前記しきい値電圧を越える範囲において、前記制御電圧に応じた電圧であり、前記第2トランジスタのゲートに印加されることで該第2トランジスタが動作される電圧を生成する電圧生成部を含む、請求項1に記載の電圧電流変換装置。
【請求項3】
前記電圧生成部は、
一端が前記電源電圧の電源ラインに接続された第1抵抗値の第1抵抗素子と、
一端が前記第1抵抗素子の前記電源ラインとは反対側に接続され他端が接地ラインに接続されると共に、前記第1抵抗素子との接続点に前記第2トランジスタのゲートが接続された第2抵抗値の第2抵抗素子と、
前記第1抵抗素子と前記第2抵抗素子との前記接続点と前記接地ラインとの間に配置され、ゲートに前記制御電圧が入力される第3トランジスタと、
を含み、前記第1抵抗値と前記第2抵抗値により前記接続点に前記しきい値電圧以上の電圧が生成される請求項2に記載の電圧電流変換装置。
【請求項4】
前記制御電圧が前記しきい値電圧を越える電圧において、前記第3トランジスタが飽和されるように前記第1抵抗値及び前記第2抵抗値が設定されている、請求項3に記載の電圧電流変換装置。
【請求項5】
請求項1に記載の電圧電流変換装置と、
一つのインバータの出力側が次段のインバータの入力側に接続されることで複数のインバータが直列接続されると共に、最終段のインバータの出力側が初段のインバータの入力側に接続され、各々の前記インバータが前記電流合成部において生成された前記合成電流に応じた電流で動作されて、前記制御電圧に応じた周波数の出力信号を出力可能な発振部と、
を含む電圧制御発振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧電流変換装置及び電圧制御発振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、PMOSトランジスタとNMOSトランジスタとのCMOS構成を基本としたインバータにより5段ループが構成されていると共に、各段のインバータがPMOSトランジスタTPを介して電源VDDに接続され、NMOSトランジスタTNを介して接地されたリング発振器が開示されている。また、電源VDD、接地間には、PMOSトランジスタ、NMOSトランジスタが直列に介挿されており、PMOSトランジスタが各段のPMOSトランジスタTPとカレントミラー接続され、NMOSトランジスタが各段のNMOSトランジスタTNとカレントミラー接続されている。これにより、リング発振器は、NMOSトランジスタTNにカレントミラー接続されたNMOSトランジスタのゲートに付与される制御電圧によって各段のインバータの電流が制御され、制御電圧に応じて発振周波数が変更される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、MOSトランジスタ(例えばNMOSトランジスタ)ではゲートの電圧がしきい値(しきい電圧)を越えることで動作する。このため、制御電圧に応じて周波数が変化する発振回路では、制御電圧がNMOSトランジスタのしきい値電圧~電源の電圧VDDの範囲で動作する。
【0005】
電圧制御発振においては、制御電圧の変化に対して周波数変化が直線的に変化すると共に、発振周波数の変化範囲が広いことが好ましい。また、制御電圧の電圧変化に対して発振される周波数範囲を広くする方法としては、制御電圧の電圧変化に対して周波数変化を大きくすることが考えられる。
【0006】
しかしながら、制御電圧の電圧変化に対して周波数変化を大きくした場合、ノイズに対する周波数の揺らぎ(ジッタ)が大きくなってしまい、制御電圧に応じた周波数の出力において改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記事実を鑑みて成されたものであり、制御電圧に応じた周波数を出力可能とするための改善された電圧電流変換装置及び電圧制御発振装置を適用することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の電圧電流変換装置は、入力される制御電圧がトランジスタのしきい値電圧から電源電圧の範囲で動作されて、前記制御電圧に応じた第1電流を生成する第1電流生成部と、前記制御電圧がゼロから前記しきい値電圧を越える所定の電圧までの範囲において、前記制御電圧に応じて変化し、前記制御電圧が前記所定の電圧から前記電源電圧までの範囲において、前記所定の電圧に応じた第2電流を生成する第2電流生成部と、前記第1電流と前記第2電流とを合成することで前記制御電圧に応じた合成電流を生成可能とする電流合成部と、を含む。
【0009】
本発明の電圧電流変換装置では、入力される制御電圧がトランジスタのしきい値電圧から電源電圧の範囲で第1電流生成部が動作されて、制御電圧に応じた第1電流を生成する。第2電流生成部は、制御電圧がゼロから電源電圧までの範囲で動作され、制御電圧がしきい値電圧を越える所定の電圧までの範囲において、制御電圧に応じて変化する第2電流を生成する。
【0010】
ここで、第2電流生成部は、制御電圧の所定の電圧から電源電圧までの範囲において、所定の電圧に応じた第2電流を生成する。電流合成部は、第1電流と第2電流とを合成することで制御電圧に応じた合成電流を生成可能とする。
【0011】
これにより、制御電圧の0v~電源電圧までの全域において、制御電圧に応じた合成電流の出力が可能になると共に、第1電流に制御電圧の所定の電圧に対する第2電流を合成できるので、合成電流における制御電圧に対する直進性を向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、電圧変換装置は、簡単な構成で出力電圧に対する制御電圧の範囲を広げることができる。この電圧変換装置を用いた電圧制御発振装置では、制御電圧の変化に対する出力信号の周波数の変化を緩やかにできるので、出力信号にゆらぎが生じるのを抑制できる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態に係る電圧制御発振回路の概略構成を示す回路図である。
【
図2】制御電圧に対する第2電流生成部における電圧Vnの変化の概略を示す線図である。
【
図3】制御電圧に対する第1電流生成部における電流I1の変化の概略を示す線図である。
【
図4】制御電圧に対する第2電流生成部における電流I2の変化の概略を示す線図である。
【
図5】制御電圧に対する電流合成部の合成電流Icの変化の概略を示す線図である。
【
図6】比較例に係る電圧制御発振回路の概略構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1には、本実施形態に係る電圧制御発振装置としての電圧制御発振回路10が概略構成図にて示されている。電圧制御発振回路10は、例えば、半導体集積回路に形成され、入力端子10Aに入力される制御電圧Vcntに応じた周波数の出力信号OUTを出力端子10Bから出力する。なお、図面におけるVDDは、直流の電圧VDDの電源ラインを示し、▽印は、接地ラインとしての回路のGNDへの接続(接地)を示している。
【0015】
図1に示すように、電圧制御発振回路10は、発振部12、及び電圧電流変換装置としての電流制御部14を備えている。発振部12は発振回路16を備えている。発振回路16には、複数(奇数)段のインバータ18が用いられており、発振回路16には、一例として3段のインバータ18(18a、18b、18c)が形成されている。
【0016】
発振回路16には、インバータ18の出力側が次段のインバータ18の入力側に接続されており、発振回路16は、インバータ18a、18b、18cがこの順で直列接続されている。また、発振回路16は、最終段のインバータ18(18c)の出力側が出力端子10B及び初段のインバータ18(18a)の入力側に接続されている。これにより、発振回路16では、複数のインバータ18がループ状に接続されたリング発振器が構成されている。
【0017】
発振回路16には、各段のインバータ18(18a、18b、18c)の各々に対応されて第5トランジスタとしてのトランジスタM(Ma、Mb、Mc)が配置されており、トランジスタM(Ma、Mb、Mc)には、P型MOSトランジスタ(PMOSトランジスタ)が用いられている。トランジスタMa、Mb、Mcの各々は、ソースSが電源(電圧VDD)に接続されていると共に、ゲートGが互いに接続されている。また、トランジスタMa、Mb、Mcは、ドレインDが各々インバータ18a、18b、18cに接続されており、インバータ18は、トランジスタMのドレインDと接地ラインとに接続されている。
【0018】
これにより、発振回路16では、トランジスタMa、Mb、McのゲートGの電圧(電圧Vgs)に応じたドレイン電流Idsとしての電流Imがインバータ18a~18cの各々に供給されることで、電流Imに応じた周波数の出力信号OUTを出力する。また、発振回路16では、電流Imが増加することで出力信号OUTの周波数が高くなる。なお、発振回路16は一例を示すものであり、発振回路16に用いるリング発振器は公知の構成を適用でき、以下では発振回路16の詳細な説明を省略する。
【0019】
電圧制御発振回路10の電流制御部14は、第1電流生成部(第1電流生成回路)20、第2電流生成部(第2電流生成回路)22、及び電流合成部(電流合成回路)24を備えている。電流合成部24は、トランジスタP1を備えており、トランジスタP1には、P型MOSトランジスタが用いられている。電流合成部24のトランジスタP1は、ソースSが電源ラインに接続され、ドレインDが第1電流生成部20及び第2電流生成部22の各々に接続されている。
【0020】
また、トランジスタP1は、ゲートGが発振回路16のトランジスタMa、Mb、Mcの各々のゲートGに接続されており、トランジスタP1は、トランジスタMa、Mb、Mcの各々との間でカレントミラー回路を形成している。これにより、トランジスタP1の電流Icと、発振回路16のトランジスタMa、Mb、Mcの各々の電流Imとが同様となり、発振回路16は、トランジスタP1の電流Icに応じた周波数の出力信号OUTを出力できる。
【0021】
第1電流生成部20は、第1トランジスタとしてのトランジスタN1を備えており、トランジスタN1にはN型MOSトランジスタが用いられている。トランジスタN1は、ゲートGが入力端子10Aに接続されており、トランジスタN1は、ゲートGに制御電圧Vcntが入力される。また、トランジスタN1は、ソースSが接地され、ドレインDが電流合成部24のトランジスタP1のドレインDに接続されている。これにより、第1電流生成部20においてトランジスタN1では、制御電圧Vcntがしきい値電圧Vtを越えることで、制御電圧Vcntに応じた第1電流としての電流I1(ドレイン電流Ids)が生成される。
【0022】
第2電流生成部22は、第2トランジスタとしてのトランジスタN2、第3トランジスタとしてのトランジスタP2、第1抵抗素子として抵抗素子26、及び第2抵抗素子としての抵抗素子28を備えている。第2電流生成部22では、トランジスタN2にN型MOSトランジスタが用いられ、トランジスタP2にP型MOSトランジスタが用いられている。また、抵抗素子26は、第1抵抗値としての抵抗値R1を有し、抵抗素子28は、第2抵抗値としての抵抗値R2を有している。
【0023】
トランジスタN2は、ソースSが接地され、ドレインDが電流合成部24のトランジスタP1のドレインDに接続されており、トランジスタN2では、ゲートGに印加される電圧(電圧Vgs)がしきい値電圧Vtを越えることで、ゲートGに印加された電圧に応じた第2電流としての電流I2(ドレイン電流Ids)が生成される。
【0024】
これにより、電流制御部14では、トランジスタN1とトランジスタN2とが並列接続されて電流合成部24に接続されており、電流合成部24のトランジスタP1には、トランジスタN1の電流I1と、トランジスタN2の電流I2とが合成された合成電流としての電流Icが生成される(Ic=I1+I2)。
【0025】
第2電流生成部22では、電源ラインと接地ラインとの間において、抵抗素子26が電源ライン側とされて抵抗素子26と抵抗素子28とが直列接続されている。第2電流生成部22では、抵抗素子26と抵抗素子28との接続点QにトランジスタN2のゲートGが接続されており、第2電流生成部22では、トランジスタP2がオフ状態になると接続点Qにおいて、電圧VDDが抵抗値R1と抵抗値R2とにより分圧された電圧Vnが生成可能とされている。
【0026】
また、第2電流生成部22のトランジスタP2は、ゲートGが入力端子10Aに接続され、ドレインDが接地されていると共に、ソースSが抵抗素子26と抵抗素子28との接続点Qに接続されている。
【0027】
第2電流生成部22では、トランジスタP2がオフ状態であると、接続点Qの電圧Vnが電圧VDD、抵抗素子26の抵抗値R1及び抵抗素子28の抵抗値R2によって定まり、電圧Vnは、電圧VDDを抵抗値R1、R2により分圧された電圧となる。すなわち、トランジスタP2のオフ状態において、接続点Qにおける電圧Vnは、Vn=VDD(R2/(R1+R2))となる。また、トランジスタN2のゲートGとソースSとの間の電圧(ゲート電圧)Vgsは、制御電圧Vcntにしきい値電圧Vtを足した(加えた)電圧であり、トランジスタN2のゲート電圧Vgs=Vcnt+Vtとなる。
【0028】
ここから、第2電流生成部22では、制御電圧Vcntが0vとなっているときに、トランジスタN2のゲートGとソースSとの間の電圧Vgsがしきい値電圧Vt以上となってトランジスタN2がオン状態となるように抵抗素子26の抵抗値R1及び抵抗素子28の抵抗値R2が設定されている。
【0029】
第2電流生成部22では、電圧VnによりトランジスタP2が動作状態とされることで、この電圧Vnが印加されるトランジスタN2も動作状態となる。また、第2電流生成部22では、トランジスタP2がオン状態であることで、制御電圧Vcntが上昇するにしたがって接続点Qの電圧Vnが上昇する。これにより、第2電流生成部22では、制御電圧Vcntが0v~電圧VDDの全域においてトランジスタN2において電流I2が生成される。
【0030】
また、トランジスタP2では、抵抗素子26、28の接続点QにトランジスタP2のソースSが接続されていることで、電圧VnがドレインD-ソースS間の電圧Vdsとなっている。第2電流生成部22では、制御電圧Vcntがしきい値電圧Vtを越えた際に、トランジスタP2が飽和するように制御電圧Vcntにおける電圧Vpが設定されている。
【0031】
トランジスタN1、N2、P1等のMOSトランジスタでは、ゲート電圧Vgsがしきい値電圧Vtより低い領域(Vgs<Vt、弱反転領域)において、ゲート電圧Vgsの変化に対してドレイン電流Idが指数関数的に変化する。また、MOSトランジスタでは、ゲート電圧Vgsがしきい値電圧Vtより高い領域(Vgs>Vt、強反転領域)において、ゲート電圧Vgsの変化に対するドレイン電流Idの変化が略直線的となる。
【0032】
また、MOSトランジスタでは、しきい値電圧Vtの近傍領域において、ゲートGの電圧に対するドレイン電流Idsの変化が緩やかであり、この後に、ゲートGの電圧に対するドレイン電流Idsの変化が直線的になる。第2電流生成部22では、第1電流生成部20のトランジスタN1において、制御電圧Vcntに対して電流I1が直線的な変化を開始する電圧を電圧Vpに設定している。
【0033】
第2電流生成部22では、電圧Vnが抵抗素子26の抵抗値R1及び抵抗素子28の抵抗値R2を用いて設定できることから、第2電流生成部22では、抵抗素子26の抵抗値R1及び抵抗素子28の抵抗値R2を用いて、トランジスタP2に飽和が生じる電圧Vpが設定されている。
【0034】
これにより、電流制御部14では、制御電圧Vcntがしきい値電圧Vtを越える範囲(Vt≦Vcnt≦VDD)においてトランジスタN1がオン状態となり、制御電圧Vcntに応じた電流I1が生成される。また、電流制御部14では、制御電圧Vcntが0vからしきい値電圧Vtを越える電圧Vpまでの範囲(0≦Vcnt<Vp)においてトランジスタN1がオン状態となり、制御電圧Vcntに応じた電流I2が生成される。
【0035】
さらに、電流制御部14では、制御電圧Vcntが電圧Vpに達してから電圧VDDに達するまでの範囲(Vp≦Vcnt≦VDD)において、トランジスタN2が変化のない(略一定)の電流I2が生成されて、電流I1に合成される。
【0036】
このように構成されている電圧制御発振回路10では、入力端子10Aにしきい値電圧Vt以上の制御電圧Vcntが入力されることで、第1電流生成部20のトランジスタN1がオン状態となって制御電圧Vcntに応じた電流I1が生成される。また、電圧制御発振回路10では、入力端子10Aにしきい値電圧Vtに満たない制御電圧Vcntが入力されていると、第2電流生成部22のトランジスタP2及びトランジスタN2の各々がオン状態となると共に、トランジスタN2のゲートGには、制御電圧Vcntに応じて変化する電圧Vnが印加される。これにより、第2電流生成部22において、トランジスタN2が制御電圧Vcntに応じて変化する電流I2を生成する。
【0037】
また、電流制御部14では、制御電圧Vcntが電圧Vpに達することで、制御電圧Vcntが電圧Vpを越える範囲において第2電流生成部22のトランジスタP2が飽和し、トランジスタN1のゲートGに略一定の電圧Vnが印加される。これにより、電流制御部14では、制御電圧Vcntが電圧Vpから電圧VDDまでの範囲において、トランジスタP2が飽和する直前の電流I2を生成する。
【0038】
電圧制御発振回路10では、電流制御部14の電流合成部24がトランジスタP1において電流I1と電流I2とを合成した合成電流Icを生成する。この際、電流I1は、しきい値電圧Vtから電圧VDDまでの範囲における制御電圧Vcntに応じ変化する電流とされている。
【0039】
また、電流I2は、0vからしきい値電圧Vtを越える電圧Vpまでの範囲において制御電圧Vcntに応じて変化する電流とされている。さらに、また、電流I2は、制御電圧Vcntが電圧Vpを越えている範囲(Vp≦Vcnt≦VDD)において一定とされている。
【0040】
電流制御部14の電流合成部24では、トランジスタP1において、電流I1と電流I2とを合成した合成電流Icを生成する。また、電圧制御発振回路10では電流合成部24のトランジスタP1と、発振回路16のトランジスタMa~Mcの各々との間でカレントミラー回路が構成されている。これにより、電圧制御発振回路10では、トランジスタP1の電流Icと同様の電流ImがトランジスタMa~Mcの各々に流れ、発振回路16が電流Imに応じた周波数の出力信号OUTを出力端子10Bから出力される。
【0041】
図2から
図5には、本実施形態に係る電圧制御発振回路10の電流制御部14における主要部の制御電圧Vcntに対する電圧及び電流の変化のシミュレーション結果の概略が線図にて示されている。なお、各図では、横軸を制御電圧Vcnt(v)とし、本実施形態の電流制御部14のシミュレーション結果を実線にて示し、比較例のシミュレーション結果を破線にて示している。
【0042】
図6には、比較例に係る電圧制御発振回路40の概略構成が回路図にて示されている。比較例の電圧制御発振回路40は、発振部12及び電流制御部42を備えており、電流制御部42は、第1電流生成部20に対応する電流生成部44、及び電流合成部24に対応する出力部46を備えている。電流生成部44は、トランジスタN1を備え、トランジスタN1が制御電圧Vcntに応じた電流I1を生成する。また、出力部46は、発振回路16のトランジスタMa~Mcの各々との間でカレントミラー回路を構成するトランジスタP1を備えている。
【0043】
ここで、シミュレーションでは、電圧VDD=1.5v、トランジスタM(Ma~Mc)、N1、N2、P1、P2の各々のしきい値電圧Vt=0.7v、トランジスタP2が飽和する電圧Vp=0.8vとしている。また、電流制御部14では、電圧Vp=0.8vとなると共に、制御電圧Vcnt=0vにおいて、電圧Vn=0.7v(=Vt)となるように抵抗素子26の抵抗値R1、及び抵抗素子28の抵抗値R2が設定されている。
【0044】
図2には、トランジスタN2のゲートGの電圧Vgsに対応する電圧Vnの制御電圧Vcntに対する変化が示され、
図3には、トランジスタN1において生成される電流I1の制御電圧Vcntに対する変化が示されている。また、
図4には、トランジスタN2において生成される電流I2の制御電圧Vcntに対する変化が示され、
図5には、トランジスタP1において生成される電流Icの制御電圧Vcntに対する変化が示されている。
【0045】
図3に示すように、本実施形態及び比較例では、制御電圧Vcntがしきい値電圧Vtに達するまでは、トランジスタN1がオフ状態であることで、電流I1が略ゼロとなっている。また、制御電圧Vcntがしきい値電圧Vtを越えてトランジスタN1がオン状態となることで、電流Iが流れ始め、この後、制御電圧Vcntが増加することで、電流I1も増加する。また、本実施形態に係るトランジスタN1では、制御電圧Vcntが電圧Vpを過ぎることで、制御電圧Vcntに対して電流I1が直線的に変化する。
【0046】
一方、
図2に示すように、本実施形態では、制御電圧Vcnt=0vにおいて、電圧Vnがしきい値電圧Vtとなる。また、電圧Vnは、制御電圧Vcntが高くなるにしたがって高くなるが、制御電圧Vcntが電圧Vpに達してトランジスタP1が飽和することで、制御電圧Vcntが高くなっても、トランジスタP2の飽和直前の電圧が保持される。
【0047】
これにより、
図4に示すように、本実施形態では、制御電圧Vcnt=0vにおいてトランジスタP2、N2が動作状態となることで電流I2が流れ始める。また、電流I2は、制御電圧Vcntが高くなることで、制御電圧Vcntの変化に応じて直線的に変化する。
【0048】
また、制御電圧Vcntがしきい値電圧Vtの近傍に達することで、電流I2は、制御電圧Vcntに対して緩やかに変化し、制御電圧Vcntが電圧Vpを通過すると、電流I2は略一定となる。
【0049】
このため、
図5に示すように、比較例では、制御電圧Vcntがしきい値電圧Vtに達することで、電流Icが流れ始め、制御電圧Vcntがしきい値電圧Vtから電圧VDDの範囲において制御電圧Vcntに応じた電流Icを出力できる。この際、周波数の変化範囲を大きくするために、電流Icの変化範囲を大きくすると、電流Icの変化が急峻となる。
【0050】
これに対して、本実施形態の電流制御部14では、制御電圧Vcntがしきい値電圧Vt~電圧VDDの範囲で制御電圧Vcntに応じた電流I1が生成され、制御電圧Vcntが0vから電圧Vpの範囲で制御電圧Vcntに応じた電流I2が生成される。これにより、電流制御部14では、制御電圧Vcntが0v~電圧VDDの範囲の全域で制御電圧Vcntに応じた直進性の高い電流Icを生成できる。
【0051】
また、電流制御部14では、制御電圧Vcntに対して電流I1、I2の各々変化が緩やかとなっているしきい値電圧Vt~電圧Vpの範囲で電流I1、I2の各々が生成される。これにより、電流Icの変化を電流I1、I2が互いに補うことができるので、電流Icの直進性が損なわれるのを抑制できる。
【0052】
また、電流制御部14では、制御電圧Vcntが電圧Vpを越えた範囲において、略一定の電流I2が生成されるので、電流Icにおいて電流I1を高くなるようにシフトできる。さらに、電流制御部14では、制御電圧Vcntが0v~電圧VDDの範囲で電流Icを生成できるので、制御電圧Vcntに対する電流Icの変化を直線的にできるのみでなく、変化の傾きを比較例に比して緩やかにできる。
【0053】
これにより、電流制御部14では、制御電圧Vcntが0v~電圧VDDまでの略全域において電流Icに直進性を持たせることができる。また、電流制御部14では、電流Icと同様の電流Imに応じて発振される周波数が制御電圧Vcntに対して直線的に変化させることができる。したがって、電流制御部14が設けられた電圧制御発振回路10では、発振回路16の出力信号に周波数の揺らぎ(ジッタ)が生じるのを効果的に抑制できる。
【0054】
また、出力信号OUTのゆらぎを抑制する方法としては、大きな容量のフィルタを設けてノイズ成分を除去した制御電圧Vcntを入力端子10Aに入力する方法があるが、電圧制御発振回路10では、制御電圧Vcntに対する周波数の傾きを緩やかにできるのでノイズ成分に起因するゆらぎを抑制できる。これにより、電圧制御発振回路10では、入力端子10Aに接続されるフィルタの容量を低減できる。
【0055】
<付記項>
<1> 入力される制御電圧がトランジスタのしきい値電圧から電源電圧の範囲で動作されて、前記制御電圧に応じた第1電流を生成する第1電流生成部と、
前記制御電圧がゼロから前記しきい値電圧を越える所定の電圧までの範囲において、前記制御電圧に応じて変化し、前記制御電圧が前記所定の電圧から前記電源電圧までの範囲において、前記所定の電圧に応じた第2電流を生成する第2電流生成部と、
前記第1電流と前記第2電流とを合成することで前記制御電圧に応じた合成電流を生成可能とする電流合成部と、
を含む電圧電流変換装置。
【0056】
<2> 前記第1電流生成部は、ゲートに印加される前記制御電圧に応じた電流を出力する第1トランジスタを含み、
前記第2電流生成部は、ゲートに印加される電圧に応じた電流を出力する第2トランジスタ、及び前記制御電圧がゼロから前記しきい値電圧を越える範囲において、前記制御電圧に応じた電圧であり、前記第2トランジスタのゲートに印加されることで該第2トランジスタが動作される電圧を生成する電圧生成部を含む、<1>の電圧電流変換装置。
【0057】
<3> 前記電圧生成部は、
一端が前記電源電圧の電源ラインに接続された第1抵抗値の第1抵抗素子と、
一端が前記第1抵抗素子の前記電源ラインとは反対側に接続され他端が接地ラインに接続されると共に、前記第1抵抗素子との接続点に前記第2トランジスタのゲートが接続された第2抵抗値の第2抵抗素子と、
前記第1抵抗素子と前記第2抵抗素子との前記接続点と前記接地ラインとの間に配置され、ゲートに前記制御電圧が入力される第3トランジスタと、
を含み、前記第1抵抗値と前記第2抵抗値により前記接続点に前記しきい値電圧以上の電圧が生成される、<2>の電圧電流変換装置。
【0058】
<4> 前記制御電圧が前記しきい値電圧を越える電圧において、前記第3トランジスタが飽和されるように前記第1抵抗値及び前記第2抵抗値が設定されている、<3>の電圧電流変換装置。
【0059】
<5> <1>から<4>の何れか1の電圧電流変換装置と、
一つのインバータの出力側が次段のインバータの入力側に接続されることで複数のインバータが直列接続されると共に、最終段のインバータの出力側が初段のインバータの入力側に接続され、各々の前記インバータが前記電流合成部において生成された前記合成電流に応じた電流で動作されて、前記制御電圧に応じた周波数の出力信号を出力可能な発振部と、
を含む電圧制御発振装置。
【符号の説明】
【0060】
10 電圧制御発振回路
10A 入力端子
10B 出力端子
12 発振部
14 電流制御部
16 発振回路
20 第1電流生成部
22 第2電流生成部
24 電流合成部
26、28 抵抗素子