(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014353
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】炭素同位体微粒子複合導電膜集電層を備えたキャパシタ二次電池
(51)【国際特許分類】
H01G 4/005 20060101AFI20240125BHJP
H01G 4/008 20060101ALI20240125BHJP
H01G 4/30 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
H01G4/005
H01G4/008
H01G4/30 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117115
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】510150178
【氏名又は名称】清水 幹治
(71)【出願人】
【識別番号】510213978
【氏名又は名称】株式会社協明テクノシステム
(74)【代理人】
【識別番号】100087664
【弁理士】
【氏名又は名称】中井 宏行
(72)【発明者】
【氏名】清水 幹治
【テーマコード(参考)】
5E001
5E082
【Fターム(参考)】
5E001AB01
5E001AC04
5E001AC09
5E082AB01
5E082EE18
5E082EE19
(57)【要約】
【課題】炭素同素体微粒子で形成された複合導電膜からなる集電層を有した大容量のキャパシタを用いたキャパシタ二次電池を提供する。
【解決手段】負荷に供給すべき電力を蓄積するキャパシタと、このキャパシタの蓄放電を制御するBMS制御回路とを組み合わせて構成され、前記キャパシタは陽極と陰極とが誘電体層で分離され、かつ前記陽極、陰極の対向する面上に集電層が設けられ、前記集電層は、炭素同素体微粒子が空隙を形成するようにして互いに接触した状態で固定された導電膜であり、前記BMS制御回路は昇降圧制御機能を有したDC-DCコンバータを備えることを特徴とする炭素同位体微粒子複合導電膜集電層を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
負荷に供給すべき電力を蓄積するキャパシタと、このキャパシタの蓄放電を制御するBMS制御回路とを組み合わせて構成され、前記キャパシタは陽極と陰極とが誘電体層で分離され、かつ前記陽極、陰極の対向する面上に集電層が設けられたキャパシタ二次電池であって、
前記集電層は、炭素同素体微粒子が空隙を形成するように互いに接触した状態で固定された導電膜であり、
前記BMS制御回路は昇降圧制御機能を有したDC-DCコンバータを備えることを特徴とする炭素同位体微粒子複合導電膜集電層を備えたキャパシタ二次電池。
【請求項2】
請求項1において、
前記BMS制御回路は、充電モードでは通常充電、急速充電の切換えが可能であり、放電モードでは、急速放電、定電圧放電が切換え可能であることを特徴とする炭素同位体微粒子複合導電膜集電層を備えたキャパシタ二次電池。
【請求項3】
請求項1又は2において、
前記炭素同位体微粒子は、グラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ又は無定形炭素であることを特徴とする炭素同位体微粒子複合導電膜集電層を備えたキャパシタ二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャパシタに蓄電させた電荷を負荷に放電して、電力を供給する大容量キャパシタ二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
次の特許文献には、キャパシタの陽極、陰極のそれぞれに電極の表面積を飛躍的に拡大するための集電層を有したキャパシタが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記特許文献のようなキャパシタは様々な機器、装置の電子部品等として活用が大いに期待されるところであるが、本発明は、炭素同位体微粒子複合導電膜集電層を備えたキャパシタを用いて、二次電池を構成する場合において、キャパシタの充放電時の機能を改善して、実使用に値する二次電池を提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、負荷に供給すべき電力を蓄積するキャパシタと、このキャパシタの蓄放電を制御するBMS制御回路とを組み合わせて構成され、前記キャパシタは陽極と陰極とが誘電体層で分離され、かつ前記陽極、陰極の対向する面上に集電層が設けられたキャパシタ二次電池であって、前記集電層は、炭素同素体微粒子が空隙を形成するように互いに接触した状態で固定した導電膜であり、前記BMS制御回路は昇降圧制御機能を有したDC-DCコンバータを備えることを特徴とする炭素同位体微粒子複合導電膜集電層を備える。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、炭素同素体微粒子が互いに接触した状態で固定された導電膜で形成された集電層を備えることで、従前のキャパシタと比べて、電極の表面積が大きくなるので、キャパシタの静電容量を著しく増大させ、蓄電容量を飛躍的に増大できる。
また、誘電体層を耐電圧の大きいセラミックで構成した場合には、キャパシタの耐圧をあげることで蓄電容量をより一層増大させ、エネルギー密度を増大させることができる。
また、昇降制御機能を有したDC-DCコンバータを備えたBMS制御回路を設けているので、急速充電が可能で、かつ定電圧出力の可能な大容量の二次電池が提供できる。
更に、リチウム電池に比べると、液体電解質を用いないので、電解液漏れや揮発して発火事故を生じることはなく安全である。
さらに、レアメタルを使用しないので、環境にも優しく、低コスト化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明のキャパシタ二次電池の基本的なブロック図である。
【
図2】キャパシタの要部構造を示す模式縦断面図である。
【
図3】DC-DCコンバータの基本的な回路図である。
【
図4】キャパシタの電圧変化と、DC-DCコンバータの電圧変化を示すグラフである。
【
図5】(a)、(b)はいずれもDC-DCコンバータの降圧モードを説明する状態図である。
【
図6】(a)、(b)はいずれもDC-DCコンバータの昇圧モードを説明する状態図である。
【
図7】(a)、(b)はいずれもキャパシタの模式的な透視図である。
【
図8】フィルム状に巻装されたキャパシタの構造図である。
【
図9】(a)は二次電池の斜視図、(b)はそのカバーを外した状態の斜視図である。
【
図10】(a)は他の二次電池の斜視図、(b)はそのカバーを外した状態の斜視図である。
【
図11】(a)はインテリジェントタイプのキャパシタ二次電池の斜視図、(b)はそのカバーを外した状態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は本発明によるキャパシタ二次電池の基本的なブロック図である。この図に示すように二次電池Aは負荷に供給すべき電力を蓄積するキャパシタ10と、このキャパシタ10の放電を制御するBMS制御回路20とで構成され、BMS制御回路20は、放電制御回路21と充電制御回路22とを備えている。
【0009】
図2はキャパシタの基本構造を示す縦断面図である。
キャパシタ10はフィルム状のものを想定しており、陽極11と陰極12とが誘電体層13で分離され、かつ陽極11、陰極12の対向する面に集電層14が設けられている。
【0010】
陽極11、陰極12はいずれも白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、イリジウム(Ir)、金(Au)、銀(Ag)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)などの導電性の金属からなる薄膜である。
ポリエステルフィルムに銅や銀などの導電体金属を蒸着することでシート状に形成してもよく、このようなものでは、誘電体層13の上下を集電層14で挟み、集電体層14の上下に接合させることで、全体をフィルム状に形成できる(
図8参照)。
【0011】
集電層14は、
図2に示すように炭素同素体微粒子15を含んだ複合導電膜である。ここに炭素同位体は良好な導電性を示すグラファイト、グラフェン、カーボンナノチューブ又は無定形炭素のいずれか、又はその混合物で構成される。
複合導電膜は、炭素同素体微粒子15が互いに接触した状態で固定された導電膜である。このような導電膜は炭素同素体微粒子15を樹脂マトリックス16に混ぜてペーストにし、陽極11、陰極12に塗布し固化させれば得られる。炭素同素体微粒子15を樹脂マトリックス16に混ぜてペーストにした状態では内部に空隙はないが、更に熱処理すれば一部の樹脂が蒸発するので多孔質になる。このような集電層14を設けることにより陽極11、陰極12の表面積が飛躍的に拡大され、その結果として、二次電池Aが従来比で100~1000倍程に大容量化できたものである。
このような集電層14を設けることにより陽極11、陰極12の表面積が飛躍的に拡大され、静電容量を従来比で100~1000倍程に大容量化でき、その結果、二次電池としての蓄電容量も大幅に増大できた。
【0012】
なお集電層14は単層構造としても数μm程の多層構造にしてもよい。また炭素同素体微粒子15とともに量子ドット微粒子16を堆積させてもよい。量子ドット微粒子16は炭素同素体微粒子15よりも遥かに小さい微粒子であるが、これは炭素同素体微粒子15同様のものでよい。要は量子ドット微粒子16が炭素同素体微粒子15に付着、結合することでその表面を凹凸化して拡大できればよい。
【0013】
誘電体層13は例えばチタン酸バリウムやチタン酸ジルコン酸鉛等の強誘電体からなる。
強誘電体のナノ微粒子を固めて圧延すればフィルム状に形成でき、キャパシタの耐電圧を大きくするには、耐電圧の高い強誘電体のセラミックが望ましい。
【0014】
BMS制御回路20は、従来の二次電池と同様に放電中に一定電圧を保つようにキャパシタ10の特性を制御するものであって、放電制御回路21と充電制御回路22とを備える。ここで放電制御回路21はキャパシタ10と同一のユニットにするとよいが、充電制御回路22はキャパシタ10と同一のユニットにしても別体としてもよい。
またBMS制御回路20に定電圧放電の機能は必要であるが、更に充電モードでは通常充電、急速充電の切換えが可能であり、放電モードでは、急速放電、定電圧放電が切換え可能になっており、機器、装置の様々な運用シーンに柔軟に適応できるので利便である。
【0015】
放電制御回路21は特に制限なく、例えばスイッチングレギュレータ、DC-DCコンバータ等を用いることができる。放電制御回路21は通常放電として定電圧放電を行うのが基本であるが、その設定電圧は外部からコントロール可能にしてもよい。なお、通常放電、急速放電の切換えは単に放電制御回路21の非バイパス、バイパスの経路切換えとしてもよい。
【0016】
充電制御回路22は特に制限はなく、例えば定電流電源回路、スイッチング電源回路等を用いることができる。特にキャパシタ10が大容量である場合、充電開始時には充電制御回路22の出力が短絡したとときと同様になるので注意が必要である。なお、通常充電、急速充電の切換えは単に充電制御回路22の非バイパス、バイパスの経路切換えとしてもよい。
【0017】
図3は放電制御回路に用いるDC-DCコンバータの基本的な回路図である。
このDC-DCコンバータ23は、例えばチョッパ回路等で構成できる。具体的には第一乃至第五の接続端子T1~T5を有し、第一、第二の能動素子Q1、Q2と、コイルLと、第一、第二のダイオードD1、D2と、コンデンサCとで構成されている。ここに能動素子Q1、Q2は電界効果トランジスタ或いはバイポーラトランジスタである。コンデンサCは平滑化コンデンサである。なおVは電圧検知回路の意味である。
【0018】
端子T1は充電端子、端子T3は放電端子であり、これらの端子T1、T3を結ぶ配線A1上に能動素子Q1、コイルL、ダイオードD1が配置されている。端子T3は端子T1に対応するコモン端子、端子T4は端子T3に対応するコモン端子であり、これらの端子T3、T4は同一のコモン配線A2に直結されている。
【0019】
能動素子Q2はコイルLとダイオードD1との接続点とコモン配線A2との間に配置され、ダイオードD2は、能動素子Q1とコイルLとの接続点とコモン配線A1との間に配置され、コンデンサCはダイオードD1と端子T2との接続点とコモン配線A2との間に配置されている。
【0020】
またDC-DCコンバータ23は能動素子Q1、Q2を制御する制御部ICを有している。制御部ICは端子T5に印加される電圧に基づいて作動又は停止し、作動中は端子T1、T3の電圧を監視して能動素子Q1、Q2をオンオフ制御すればよい。
【0021】
次いで二次電池の基本動作を
図4乃至
図6について説明する。
図4は二次電池におけるキャパシタの電圧変化及びDC-DCコンバータの電圧変化を示すグラフである。なおここではキャパシタ10の最大充電電圧は60V、二次電池Aの出力電圧すなわちDC-DCコンバータ23の設定電圧は24Vを想定し、更にDC-DCコンバータ23はキャパシ10タの電圧が12Vよりも低くなると自動停止する設計にしている。
【0022】
時刻T1からT2ではキャパシタ10が0Vから60Vまで充電されている。キャパシタ10の電圧変化が曲線になっているのは充電装置の特性によるものである。時刻T3ではDC-DCコンバータ23の作動が開始されて二次電池Aから24Vの出力が開始されている。時刻T4からT6では二次電池Aから外部の負荷に24Vの給電が行われ、そのためキャパシタ10の電圧が低下している。時刻T6ではキャパシタ10の電圧が12Vを下回ったためにDC-DCコンバータ23は作動停止している。
【0023】
この例ではDC-DCコンバータ23は、キャパシタ10の電圧が24Vよりも高い時刻T3からT5の間は降圧モードで動作し、キャパシタ10の電圧が24Vよりも低い時刻T5からT6の間は昇圧モードに切り換って動作する。このようにDC-DCコンバータ23に昇降圧制御機能を持たせれば、キャパシタ10をより低い電圧まで放電させることが可能になるので、キャパシタ10の容量を十分に活用できる。
【0024】
図5(a)、(b)はいずれもDC-DCコンバータの降圧モードを説明する状態図である。これらの図において灰色矢印は電流を示している。
降圧モードでは能動素子Q1をスイッチングし、能動素子Q2は常にオフ状態とする制御を行う。すなわち降圧モードでは
図7(a)に示す能動素子Q1がオン、能動素子Q2がオフの状態と、
図7(b)に示す能動素子Q1がオフ、能動素子Q2もオフの状態との切換えによってキャパシタ10の電力がDC-DCコンバータ23によって降圧され平滑コンデンサCによって平滑化されて外部の負荷に供給される。
【0025】
図6(a)、(b)はいずれもDC-DCコンバータの昇圧モードを説明する状態図である。これらの図において灰色矢印は電流を示している。
昇圧モードでは能動素子Q1を常にオン状態とし、能動素子Q2をスイッチングする制御を行う。すなわち降圧モードでは
図8(a)に示す能動素子Q1、Q2がどちらもオンの状態と、
図7(b)に示す能動素子Q1がオン、能動素子Q2がオフの状態との切換えによってキャパシタ10の電力がDC-DCコンバータ23によって昇圧され平滑コンデンサCによって平滑化されて外部の負荷に供給される。
【0026】
次いでキャパシタ及び二次電池の具体例について説明する。
図7(a)、(b)はいずれもキャパシタの透視図である。これらのキャパシタ10は長尺なフィルム状に形成され(a)円筒状又は(b)角柱状に巻き固めてユニット化されている。24は接続端子である。キャパシタ10をこのような円筒状又は角柱状のユニットとして提供すれば二次電池Aの組み立て等が容易になる。
図8は、フィルム状に形成したキャパシタの構造を示している、18は巻き取り軸、19は、巻き取りの際に導電接触させないための絶縁シートを示している。
【0027】
図9(a)は二次電池の斜視図、(b)はそのカバーを外した状態の斜視図である。
この二次電池Aは複数個のキャパシタ10が板金型リード線30によってBMS制御回路20に接続され、単一のユニットを構成している。カバー25はキャパシタ10や板金型リード線30を保護する。26は外部の負荷に接続する出力端子、27は充電装置に接続するためのコネクタである。このような構成、形状とされた二次電池Aは、例えばEV等の電源などに使用できる。
【0028】
図10(a)は他の二次電池の斜視図、(b)はそのカバーを外した状態の斜視図である。
この二次電池Aは複数個のキャパシタ10が放電制御回路21及び充電制御回路22に接続され、単一のユニットを構成している。カバー25はキャパシタ10を保護するようになっている。28は電子機器等に着脱自在な出力プラグ、29は充電のために商用電源に着脱自在とした電源プラグである。このような構成、形状とされた二次電池Aは例えばパソコンやタブレット等の電子機器のポータブル電源に好適である。
【0029】
図11(a)はインテリジェント対応の二次電池の斜視図、(b)はそのカバーを外した状態の斜視図である。
この二次電池Aは、BMS制御回路とマイコン、各種センサ、インターフェースを内蔵して通信機能を備えたBMS制御ユニット20Aの上に複数個のキャパシタ10を搭載して、単一のユニットを構成しており、蓄電池として使用される。カバー25はキャパシタ10を保護するようになっている。
BMS制御ユニット20Aは、パソコンや通信装置に接続するためにRS232Cの端子20a、USB端子20bをそなえており、20cは出力端子、20dは充電端子を示している。このような構成の二次電池によれば、BMS制御ユニット20Aを通信端末を通じて通信ネットワークに接続することで、二次電池A内のデータが遠隔で管理され、制御することが可能となる。
【0030】
以上から理解されるように、本発明によるキャパシタ二次電池は、BMS制御回路を備え、定電圧放電を可能にしているので、急速充電、定電圧出力の可能な大容量の二次電池が提供できる。またリチウム電池に比べると、液体電解質を用いないので、電解液漏れや揮発して発火事故を生じることはなく安全である。さらに、レアメタルを使用しないので、環境にも優しく、低コスト化が図れる。
【符号の説明】
【0031】
A 二次電池
10 キャパシタ
11 陽極
12 陰極
13 誘電体層
14 集電層
15 炭素同素体微粒子
16 量子ドット微粒子
20 BMS制御回路
23 DC-DCコンバータ