(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143530
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】金管楽器
(51)【国際特許分類】
G10D 9/10 20200101AFI20241003BHJP
G10D 9/01 20200101ALI20241003BHJP
G10D 7/10 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
G10D9/10
G10D9/01
G10D7/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056258
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】松隈 義彦
(57)【要約】
【課題】音のバランスを維持しながら、ピッチの調整量が増大された金管楽器を提供する。
【解決手段】一実施形態に係る金管楽器は、マウスピースの差込口からベルまでを含む主管、を備え、前記主管は、前記マウスピースの差込口から前記ベルまでの経路上で順に分割された第1分割部分、第2分割部分、及び第3分割部分と、前記第1分割部分と前記第2分割部分とを接続する第1調整管と、前記第2分割部分と前記第3部分とを接続する第2調整管と、を含み、前記第1調整管及び前記第2調整管は、前記主管の全長を調整する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マウスピースの差込口からベルまでを含む主管、を備え、
前記主管は、前記マウスピースの差込口から前記ベルまでの経路上で順に分割された第1分割部分、第2分割部分、及び第3分割部分と、前記第1分割部分と前記第2分割部分とを接続する第1調整管と、前記第2分割部分と前記第3部分とを接続する第2調整管と、を含み、
前記第1調整管及び前記第2調整管は、前記主管の全長を調整する、金管楽器。
【請求項2】
前記第1分割部分に連結可能な複数の迂回管をさらに備える、請求項1に記載の金管楽器。
【請求項3】
前記第1調整管は、前記第1分割部分と連結する第1摺動部と、前記第2分割部分と連結する第2摺動部とを含み、
前記第2調整管は、前記第2分割部分と連結する第3摺動部と、前記第3分割部分と連結する第4摺動部とを含み、
前記主管の全長は、前記第1摺動部と前記第1分割部分との接続長及び前記第2摺動部と前記第2分割部分との接続長、並びに前記第3摺動部と前記第2分割部分との接続長及び前記第4摺動部と前記第3分割部分との接続長に応じて変化する、請求項1に記載の金管楽器。
【請求項4】
前記第2調整管の外径は、前記第1調整管の外径よりも大きい、請求項3に記載の金管楽器。
【請求項5】
前記第4摺動部の外径は、30mm以上50mm以下である、請求項4に記載の金管楽器。
【請求項6】
前記第2調整管による、前記主管の全長の変化量は、最大約140mmである、請求項1に記載の金管楽器。
【請求項7】
前記第2調整管は、前記第1調整管よりも前記差込口に構造上の距離が近い、請求項1に記載の金管楽器。
【請求項8】
前記主管は複数の屈曲部を有し、
前記第2調整管の摺動方向の延長上に前記複数の屈曲部のうちの所定の屈曲部が存在する、請求項1に記載の金管楽器。
【請求項9】
前記第1調整管は、ウォーターキーが設けられる、請求項1に記載の金管楽器。
【請求項10】
前記金管楽器はチューバである、請求項1に記載の金管楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金管楽器に関する。
【背景技術】
【0002】
金管楽器は、楽器の音のピッチを調整するための調整管、所謂、抜差管を備える。このような調整管の長さを調整することにより、楽器の全長を調整して、楽器の音のピッチを調整することができる。特許文献1及び特許文献2には、抜差管を備えるトランペットが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-114029号公報
【特許文献2】特開2017-173567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
金管楽器の演奏者は、調整管(抜差管)の長さを調整することにより、楽器から出る音のピッチを微調整することができる。また、オーケストラで採用される地域ごとのピッチを設定する場合、及び演奏する環境(例えば、厳寒地又は高温地)に応じてピッチを設定する場合は、調整管の長さを調整することにより、ピッチを微調整することができる。
【0005】
しかしながら、金管楽器に設けられる調整管の数が一つである場合、調整できるピッチに限界がある。一つの調整管によるピッチの調整量を大きくするには、調整管の長さを長くして、一つの調整管による楽器の全長の可変量を大きくすることが考えられる。しかしながら、テーパ状に構成される楽器において、直管部分を有する一つの調整管の長さを長くすると、音程、音階などの楽器から出る音のバランスが崩れるという問題がある。
【0006】
また、金管楽器に設けられる調整管の数が一つである場合、金管楽器における調整管の位置によっては、演奏中に楽器の演奏者が調整管の位置を調整できず、演奏中にピッチの微調整ができないという問題がある。
【0007】
本発明の目的の一つは、金管楽器において、音のバランスを維持しながら、ピッチの調整量を大きくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態によると、マウスピースの差込口からベルまでを含む主管、を備え、前記主管は、前記マウスピースの差込口から前記ベルまでの経路上で順に分割された第1分割部分、第2分割部分、及び第3分割部分と、前記第1分割部分と前記第2分割部分とを接続する第1調整管と、前記第2分割部分と前記第3部分とを接続する第2調整管と、を含み、前記第1調整管及び前記第2調整管は、前記主管の全長を調整する、金管楽器、が提供される。
【発明の効果】
【0009】
金管楽器において、音のバランスを維持しながら、ピッチの調整量を大きくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】一実施形態に係るチューバの外観を示す図である。
【
図2】一実施形態に係るチューバの主管の構成を説明するための概略図である。
【
図3】一実施形態に係る第1調整管の構成を示す図である。
【
図4】
図1に示したチューバにおける第2調整管を示している。
【
図5】一実施形態に係る第2調整管の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態は一例であって、本発明はこれらの実施形態に限定して解釈されるものではない。本実施形態で参照する図面において、同一部分または同様な機能を有する部分には同一の符号または類似の符号(数字の後にA、Bなど付しただけの符号)を付し、その繰り返しの説明は省略する場合がある。図面は、説明を明確にするために、寸法比率が実際の比率とは異なったり、構成の一部が図面から省略されたりして、模式的に説明される場合がある。
【0012】
一実施形態に係る金管楽器は、主管の全長を各々調整することができる複数の調整管を有する。複数の調整管によって主管の全長を調整することにより、音のバランスを維持しながら、ピッチの調整量を大きくすることができる。また、少なくとも一つの調整管を、楽器の演奏中に演奏者が操作することができる位置に設置することにより、楽器の演奏中であっても調整管によってピッチの微調整が可能となる。
【0013】
以下、一実施形態に係る金管楽器について、図面を参照して説明する。以下に説明する実施形態では、一例として、金管楽器がチューバである場合を説明する。尚、本発明に係る金管楽器は、チューバに限定されるわけではない。
【0014】
[楽器の構成]
図1は、所定の方向から見た本実施形態に係るチューバ1の外観を示す図である。
図2は、チューバ1の主管100の構成を説明するための概略図である。本実施形態において、チューバ1は、フロントアクションタイプのピストン式である。しかしながら、本実施形態に係るチューバ1は、ピストン式に限定されず、ロータリー式であってもよい。また、本実施形態に係るチューバ1は、トップアクションタイプのピストン式であってもよい。
【0015】
図1及び
図2を参照して、チューバ1の構成について説明する。チューバ1は、主管100と、主管100に連結可能な複数の迂回管141(141a~141d)を備える。主管100は、マウスピースの差込口10から、音が出るベル20までを含み、チューバ1の気柱を構成する。
図1に示すように、主管100は、複数の屈曲部を有し、屈曲部において折り曲げられる。
図2は、複数の屈曲部を延ばした状態の主管100を示している。
図2に示すように、主管100は、差込口10から音が出るベル20まで全体的にテーパ形状を有する。尚、主管100は部分的に、外径が一定の直管を含んでもよい。チューバ1を演奏する際、マウスピースの差込口10には、マウスピース2が差し込まれる。
【0016】
複数の迂回管141(第1迂回管141a~第4迂回管141d)は、複数のピストンバルブ131のうち対応するピストンバルブ131(第1ピストンバルブ131a~第4ピストンバルブ131d)を介して、主管100に連結可能である。複数の迂回管141(141a~141d)の各々は、対応するピストンバルブ131(131a~131d)を介して主管100に連結されると、主管100とともにチューバ1の気柱を構成する。以下において、第1迂回管141a~第4迂回管141dの区別をつけない場合は、単に複数の迂回管141又は迂回管141と称する。同様に、第1ピストンバルブ131a~第4ピストンバルブ131dの区別をつけない場合は、単に複数のピストンバルブ131又はピストンバルブ131と称する。チューバ1の演奏者が、ピストンバルブ131が押下するようにピストンバルブ131を操作することにより、押下されたピストンバルブ131に対応する迂回管141が主管100に連結される。
【0017】
各々の迂回管141は、迂回抜差管143(第1迂回抜差管143a~第4迂回抜差管143d)を含む。迂回抜差管143を抜き差しする、即ち、所定の方向に摺動させることにより、迂回抜差管143は、対応する迂回管141の全長を調整する。
【0018】
主管100は、複数の分割部分を有する。本実施形態において、主管100は、マウスピースの差込口10からベル20までの経路上で順に分割された第1分割部分111、第2分割部分113、及び第3分割部分115を含む。さらに、主管100は、第1分割部分111と第2分割部分113とを接続する第1調整管121、及び第2分割部分と第3部分とを接続する第2調整管123を含む。第1分割部分111、第2分割部分113、第3分割部分115、第1調整管121、及び第2調整管123は、互いに接続されて一連の主管100を構成する。尚、本実施形態においては、主管100は、第1分割部分111、第2分割部分113、及び第3分割部分115の3つの分割部分を含むが、主管100に含まれる分割部分の個数は3つ以上であってもよい。
【0019】
第1分割部分111は、マウスピースの差込口10を有する。本実施形態において、マウスピースの差込口10が設けられた側を主管100の上流側、ベル20が設けられた側を主管100の下流側とも称する。即ち、第1分割部分111は、主管100の上流側に位置する。第1分割部分111には、複数の迂回管141と、主管100と複数の迂回管141とを連結可能な複数のピストンバルブ131が設けられてもよい。
【0020】
第2分割部分113は、第1調整管121を介して第1分割部分111に接続される。第2分割部分113は、第1分割部分111よりも下流側に位置する。
【0021】
第1調整管121は、所謂、抜差管である。第1調整管121は両端に第1摺動部121a及び第2摺動部121bを有する。第1摺動部121aの少なくとも一部は、第1分割部分111の下流側の端部に差し込まれて、第1調整管121と第1分割部分111とを連結する。第2摺動部121bの少なくとも一部は、第2分割部分113の上流側の端部に差し込まれて、第1調整管121と第2分割部分113とを連結する。第1調整管121は、第1分割部分111及び第2分割部分113から分離可能である。
【0022】
第1摺動部121aと第1分割部分111との接続長、及び第2摺動部121bと第2分割部分113との接続長は、第1摺動部121a及び第2摺動部121bを第1分割部分111及び第2分割部分113に対して同時に摺動させることにより変化する。第1摺動部121aと第1分割部分111との接続長とは、第1摺動部121aが第1分割部分111の下流側の端部に差し込まれている状態の、第1摺動部121aと第1分割部分111の下流側の端部との重複部分における、主管100の延長方向に沿った長さである。同様に、第2摺動部121bと第2分割部分113との接続長とは、第2摺動部121bが第2分割部分113の上流側の端部に差し込まれている状態の、第2摺動部121bと第2分割部分113の上流側の端部との重複部分における、主管100の延長方向に沿った長さである。
【0023】
第1摺動部121aと第1分割部分111との接続長、及び第2摺動部121bと第2分割部分113との接続長を調整することにより、チューバ1の主管100の全長が調整される。換言すると、主管100の全長は、第1摺動部121aと第1分割部分111との接続長、及び第2摺動部121bと第2分割部分113との接続長に応じて変化する。具体的には、第1摺動部121aと第1分割部分111との接続長、及び第2摺動部121bと第2分割部分113との接続長が長いほど、主管100の全長は短くなる。
【0024】
第3分割部分115は、第2調整管123を介して第2分割部分113に接続される。第3分割部分115は、第2分割部分113よりも下流側に位置する。第3分割部分115の下流側の端部にはベル20が設けられる。
【0025】
第2調整管123は、所謂、抜差管である。第2調整管123は両端に第3摺動部123a及び第4摺動部123bを有する。第3摺動部123aの少なくとも一部は、第2分割部分113の下流側の端部に差し込まれて、第2調整管123と第2分割部分113とを連結する。第4摺動部123bの少なくとも一部は、第3分割部分115の上流側の端部に差し込まれて、第2調整管123と第3分割部分115とを連結する。第2調整管123は、第2分割部分113及び第3分割部分115から分離可能である。
【0026】
第3摺動部123aと第2分割部分113との接続長、及び第4摺動部123bと第3分割部分115との接続長は、第3摺動部123a及び第4摺動部123bを第2分割部分113及び第3分割部分115に対して同時に摺動させることにより変化する。第3摺動部123aと第2分割部分113との接続長とは、第3摺動部123aが第2分割部分113の下流側の端部に差し込まれている状態の、第3摺動部123aと第2分割部分113の下流側の端部との重複部分における、主管100の延長方向に沿った長さである。同様に、第4摺動部123bと第3分割部分115との接続長とは、第4摺動部123bが第3分割部分115の上流側の端部に差し込まれている状態の、第4摺動部123bと第3分割部分115の上流側の端部との重複部分における、主管100の延長方向に沿った長さである。
【0027】
第3摺動部123aと第2分割部分113との接続長、及び第4摺動部123bと第3分割部分115との接続長を調整することにより、チューバ1の主管100の全長が調整される。換言すると、主管100の全長は、第3摺動部123aと第2分割部分113との接続長、及び第4摺動部123bと第3分割部分115との接続長に応じて変化する。具体的には、第3摺動部123aと第2分割部分113との接続長、及び第4摺動部123bと第3分割部分115との接続長が長いほど、主管100の全長は短くなる。
【0028】
[第1調整管の構成]
図1に示すように、第1調整管121は、
図1におけるチューバ1の下側、即ち、マウスピースの差込口10及びベル20が位置する側とは反対側に位置する。
図3は、第1調整管121の構成を示す図である。
【0029】
第1調整管121は、屈曲部301と屈曲部301から延長された第1摺動部121a及び第2摺動部121bとを有する。第1摺動部121aは屈曲部301の一端から延長される。第2摺動部121bは、屈曲部301の他端から第1摺動部121aと同一の方向に延長される。第1調整管121は、U字形状を有する。
【0030】
上述したように、主管100は、マウスピースの差込口10からベル20まで全体的に管の径が徐々に大きくなるテーパ形状を有する。そのため、第1摺動部121aの外径d1は、第2摺動部121bの外径d2よりも小さい(d1<d2)。例えば、第1摺動部121aの外径d1は約21mmであり、第2摺動部121bの外径d2は約24mmである。尚、第1摺動部121a及び第2摺動部121bの形状は、円筒状であり、その外径は一定である。換言すると、第1摺動部121a及び第2摺動部121bは、直管である。
【0031】
演奏者は、第1調整管121と第1分割部分111及び第2分割部分113との連結方向(
図1における上下方向)に沿って、第1調整管121を摺動させることにより、第1摺動部121aと第1分割部分111との接続長、及び第2摺動部121bと第2分割部分113との接続長を同時に調整することができる。例えば、第1摺動部121a及び第2摺動部121bの連結方向に沿った長さは、それぞれ約50mmである。この場合、第1調整管121による主管100の全長の可変量は、最大約100mmである。
【0032】
第1調整管121は、取っ手122を備えてもよい。演奏者は、取っ手122を握って、第1調整管121を第1分割部分111及び第2分割部分113に対して摺動させることができる。尚、取っ手122は省略されてもよい。また、第1調整管121は、屈曲部301にウォーターキー125を有してもよい。
【0033】
[第2調整管の構成]
図1に示すように、第2調整管123は、チューバ1の上側、即ち、マウスピースの差込口10及びベル20が位置する側と同一の側に位置する。
図4は、
図1におけるチューバ1を所定の方向の逆側から見た場合の第2調整管123を示している。
図4では、第2調整管123の第3摺動部123a及び第4摺動部123bが完全に第2分割部分113の下流側の端部及び第3分割部分115の上流側の端部に差し込まれている状態を示している。
図5は、第2調整管123の外観を示す図である。
【0034】
第2調整管123は、屈曲部501と屈曲部501から延長された第3摺動部123a及び第4摺動部123bとを有する。第3摺動部123aは屈曲部501の一端から延長される。第4摺動部123bは、屈曲部501の他端から第3摺動部123aと同一の方向に延長される。第2調整管123は、U字形状を有する。
【0035】
上述したように、主管100は、マウスピースの差込口10からベル20まで全体的に管の径が徐々に大きくなるテーパ形状を有する。そのため、第3摺動部123aの外径d3は、第4摺動部123bの外径d4よりも小さい(d3<d4)。例えば、第3摺動部123aの外径d3は約26mmであり、第4摺動部123bの外径d4は約32mmである。また、第3摺動部123aの外径d3は、第1調整管121の第2摺動部121bの外径d2よりも大きい(d2<d3)。換言すると、第2調整管123の外径は、第1調整管121の外径よりも大きい。尚、第3摺動部123a及び第4摺動部123bの形状は、円筒状であり、その外径は一定である。換言すると、第3摺動部123a及び第4摺動部123bは、直管である。また、第4摺動部123bの外径d4は、30mm以上50mm以下である。
【0036】
演奏者は、第2調整管123と第2分割部分113及び第3分割部分115との連結方向(
図1、
図4および
図5における上下方向)に沿って、第2調整管123を摺動させることにより、第3摺動部123aと第2分割部分113との接続長、及び第4摺動部123bと第3分割部分115との接続長を同時に調整することができる。例えば、第3摺動部123a及び第4摺動部123bの連結方向に沿った長さは、それぞれ約70mmである。この場合、第2調整管123による主管100の全長の可変量は、最大約140mmである。
【0037】
演奏中の操作性を考慮し、第2調整管123の外径、即ち、第3摺動部123aの外径及び第4摺動部123bの外径と第2分割部分113及び第3分割部分115とのクリアランスは、第1調整管121の外径、即ち、第1摺動部121aの外径及び第2摺動部121bの外径と第1分割部分111と第2分割部分113とのクリアランスよりも大きい。換言すると、第2調整管123と第2分割部分113及び第3分割部分115との連結部分は、第1調整管121と第1分割部分111及び第2分割部分113との連結部分よりもゆるい。これにより、第2調整管123は、容易に第2分割部分113及び第3分割部分115に対して摺動させることができ、演奏中であっても演奏者による操作性が向上する。例えば、第3摺動部123aの外径及び第4摺動部123bの外径と第2分割部分113及び第3分割部分115とのクリアランスは、第1摺動部121aの外径及び第2摺動部121bの外径と第1分割部分111と第2分割部分113とのクリアランスよりも約30μm大きい。
【0038】
また、第3摺動部123a及び第4摺動部123bの連結方向に沿った長さは、第2調整管123の外径、即ち、第3摺動部123aの外径及び第4摺動部123bの外径の3倍以上であることが好ましい。これにより、第2調整管123を第2分割部分113及び第3分割部分115に対して滑らかに摺動させることができる。
【0039】
第2調整管123は、取っ手124を備えてもよい。演奏者は、取っ手124を握って、第2調整管123を第2分割部分113及び第3分割部分113に対して摺動させることができる。尚、取っ手124は省略されてもよい。
【0040】
図1に示すように、チューバ1において、第2調整管123の位置は、第1調整管121の位置よりもマウスピースの差込口10に構造上の距離が近い。このため、演奏者がチューバ1の演奏中に、第2調整管123を第2分割部分113及び第3分割部分115に対して摺動させることが容易であり、演奏者による操作性が向上する。
【0041】
図1に示すように、主管100は複数の屈曲部を有し、マウスの差込口10からベル20にかけて複数回折り曲げられる。第2調整管123の摺動方向(
図1における上下方向)の延長上には、主管100の複数の屈曲部のうちの所定の屈曲部103が存在する。換言すると、第2調整管123は、屈曲部103よりも内側に位置する。第2調整管123と屈曲部103との間には、第2調整管123が摺動可能な空間が設けられている。第2調整管123と屈曲部103との第2調整管123の摺動方向の最短距離は、第3摺動部123a及び第4摺動部123bの連結方向(
図1における上下方向)の長さよりも大きい。その結果、第2調整管123は、屈曲部103に接触することなく、第2分割部分113及び第3分割部分115から分離することができる。屈曲部103は、主管100における複数の屈曲部のうち、チューバ1の演奏中に演奏者に最も近接する屈曲部であってもよい。
【0042】
上述したように、本実施形態に係るチューバ1の主管100には、第1調整管121及び第2調整管123を含む。換言すると、主管100は2つの抜差管を備える。これにより、一つの抜差管を有する従来のチューバに比べて、本実施形態に係るチューバ1では、ピッチの調整量が増大する。また、第1調整管121及び第2調整管123によりピッチを調整するため、主管100のテーパ形状が維持され、その結果、音程、音階などの音のバランスを維持しながら、ピッチの調整量を大きくすることができる。
【0043】
さらに、第2調整管123の位置は、第1調整管121の位置よりもマウスピースの差込口10に構造上の距離が近い。そのため、チューバ1の演奏中の演奏者が第2調整管123を操作することが容易であり、演奏中のピッチを微調整することができる。
【0044】
[変形例]
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は以下のように、様々な態様で実施可能である。
【0045】
(1)上述の実施形態では、金管楽器としてチューバを説明したが、金管楽器はチューバに限定されず、ユーフォニアム、バリトン、ホルンなどのバルブ式で管長の長い金管楽器であってもよい。
【0046】
(2)複数の迂回管141及び複数のピストンバルブ131の設置位置は、第1分割部分111に限定されない。例えば、複数の迂回管141及び複数のピストンバルブ131は、第2分割部分115に設けられてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1・・・チューバ、100・・・主管、103・・・屈曲部、111・・・第1分割部分、113・・・第2分割部分、115・・・第3分割部分、121・・・第1調整管、121a・・・第1摺動部、121b・・・第2摺動部、123・・・第2調整管、123a・・・第3摺動部、123b・・・第4摺動部、122,124・・・取っ手、131(131a、131b、131c、131d)・・・ピストンバルブ、141(141a、141b、141c、141d)・・・迂回管、143(143a、143b、143c、143d)・・・迂回抜差管