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特開2024-143537コウジ酸誘導体を含有する化粧料及び皮膚外用剤
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143537
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】コウジ酸誘導体を含有する化粧料及び皮膚外用剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/49 20060101AFI20241003BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20241003BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 31/351 20060101ALI20241003BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241003BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
A61K8/49
A61K8/60
A61Q19/00
A61K31/351
A61P29/00
A61K47/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056266
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】521099176
【氏名又は名称】株式会社ヘッドスプリング
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】泉 成人
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA06
4C076BB31
4C076CC04
4C076DD34
4C076DD37
4C076DD38
4C076DD39
4C076DD41
4C076DD45
4C076DD46
4C076DD60
4C076DD69
4C076EE23
4C076EE27
4C076FF36
4C076FF63
4C083AC022
4C083AC072
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC182
4C083AC242
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC422
4C083AC442
4C083AC841
4C083AC842
4C083AC851
4C083AC852
4C083AD152
4C083AD531
4C083AD532
4C083AD632
4C083BB51
4C083CC01
4C083CC05
4C083DD31
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE11
4C083EE12
4C083EE13
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA07
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA63
4C086NA05
4C086ZA89
4C086ZB11
(57)【要約】
【課題】べたつきやしっとりとした使用触感を備えながら、コウジ酸誘導体を安定的に高濃度に配合し、経時の乳化安定性を良好に維持できる化粧料及び皮膚外用剤を提供する。
【解決手段】
次の成分(A)~(B):(A)コウジ酸誘導体(B)グリチルリチン酸またはその誘導体からなる群から選ばれる1種または2種以上の成分
を含有することを特徴とする化粧料及び皮膚外用によって、上記課題が解決される。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.次の成分(A)~(C):
(A)コウジ酸誘導体
(B)グリチルリチン酸またはその誘導体からなる群から選ばれる1種または2種以上の成分
を含有することを特徴とする化粧料及び皮膚外用剤。
【請求項2】
さらに次の成分(C):
(C)ナイアシンアミド
を含有することを特徴とする請求項1に記載の化粧料及び皮膚外用剤。
【請求項3】
成分(A)が、コウジ酸モノブチレート、コウジ酸モノカプレート、コウジ酸モノパルミテート、コウジ酸モノステアレート、コウジ酸モノシンナメート、コウジ酸モノベンゾエート、コウジ酸エステル類、コウジ酸エーテル類又は、コウジ酸糖誘導体であることを特徴とする請求項1に記載の化粧料及び皮膚外用剤。
【請求項4】
成分(C)を、全量に対し、約2.0質量%含有することを特徴とする請求項2に記載の化粧料及び皮膚外用剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コウジ酸誘導体を含有する化粧料及び皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、下記特許文献1に記載されているように、従来、コウジ酸誘導体を含有する化粧料及び皮膚外用剤が知られている。コウジ酸誘導体をこれら化粧料や皮膚外用剤に配合することにより、アスコルビン酸やグルタチオン等の有効成分よりもより優れた美白効果が期待され、また、皮膚への消炎作用が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-097934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、一般に、コウジ酸誘導体は、光、熱、pH等に対する安定性が悪く、油成分への溶解性も悪いため、べたつきを抑え、しっとりとした使用触感を備えながら、コウジ酸誘導体を安定的に高濃度に配合し、経時の乳化安定性を良好に維持することは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明者は鋭意検討を行ったところ、コウジ酸誘導体と、グリチルリチン酸またはその誘導体からなる群から選ばれる1種または2種以上の成分を配合することにより、べたつきやしっとりとした使用触感を備えながら、コウジ酸誘導体を安定的に高濃度に配合し、経時の乳化安定性を良好に維持できることを見出し、かかる知見に基づいて本発明を完成するに至った。さらに、上記処方に加え、、ナイアシンアミド、特定の抗炎症成分を配合することが好ましいことを見出した。
【0006】
本発明はかかる知見に基づくものであり、本願は以下の発明を包含するものである。
1.次の成分(A)~(B):
(A)コウジ酸誘導体
(B)グリチルリチン酸またはその誘導体からなる群から選ばれる1種または2種以上の成分
を含有することを特徴とする化粧料及び皮膚外用剤。
2.さらに次の成分(C):
(C)ナイアシンアミド
を含有することを特徴とする化粧料及び皮膚外用剤。
3.上記1.に記載の化粧料及び皮膚外用剤であって、成分(A)が、コウジ酸モノブチレート、コウジ酸モノカプレート、コウジ酸モノパルミテート、コウジ酸モノステアレート、コウジ酸モノシンナメート、コウジ酸モノベンゾエート、コウジ酸エステル類、コウジ酸エーテル類又は、コウジ酸糖誘導体であることを特徴とする化粧料及び皮膚外用剤。
4.上記2.に記載の化粧料及び皮膚外用剤であって、成分(C)を、全量に対し、約2.0質量%含有することを特徴とする化粧料及び皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、べたつきを抑え、しっとりとした使用触感を備えながら、コウジ酸誘導体を安定的に高濃度に配合し、経時の乳化安定性を良好に維持できる。加えて、日焼けによる皮膚の炎症及び日焼け後の色素沈着を良好に抑えることができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」はその前後の数値を含む範囲を意味するものとする。また、%で表記する数値は、特に記載した場合を除き、質量を基準にした値である。
【0009】
成分(A):コウジ酸誘導体
本発明に用いられる成分(A)コウジ酸誘導体は、例えば、コウジ酸モノブチレート、コウジ酸モノカプレート、コウジ酸モノパルミテート、コウジ酸モノステアレート、コウジ酸モノシンナメート、コウジ酸モノベンゾエート、コウジ酸モノブチレート、コウジ酸ジブチレート等のコウジ酸エステル類、コウジ酸エーテル類、コウジ酸グルコシド等のコウジ酸糖誘導体が挙げられる。
【0010】
成分(B):グリチルリチン酸またはその誘導体
本発明に用いられる成分(B)グリチルリチン酸は、マメ科の多年性植物である甘草などから抽出される成分であり、従来より薬効成分などとして利用されているものである。このグリチルリチン酸は、トリテルペン系配糖体であって、抗炎症、抗アレルギー、抗腫瘍、抗ウイルス、抗線溶などの作用があることが知られている。また、その誘導体は、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属塩やアンモニウム塩等の塩類、グリセリンエステル、アルキルエステル、ステアリルエステル等のエステル類が挙げられる。具体的には、グリチルリチン酸ジカリウム、グリチルリチン酸二ナトリウム、グリチルリチン酸三ナトリウム、グリチルリチン酸モノアンモニウム、グリチルリチン酸ステアレート等が挙げられる。
【0011】
成分(C):ナイアシンアミド
本発明に用いられる成分(C)ナイアシンアミドは、ニコチン酸のアミド化合物であり、別名ニコチン酸アミド(ビタミンB3/ナイアシン)ともいう水溶性ビタミンである。ナイアシンアミドは、天然物からの抽出物であっても良いし、公知の方法によって合成した物でも良い。ナイアシンアミドには、シワ改善効果に加えて血行促進作用や、肌荒れ改善作用、メラニン生成抑制作用や美白効果が知られている。日本薬局方に収載され、市販されている。
【実施例0012】
本発明について以下に実施例を挙げてさらに詳述するが、本発明は、これによりなんら限定されるものではない。含有量は特記しない限り、その成分が含有される系に対する質量%で示す。
【0013】
実施例1及び比較例1~2:ジパルミチン酸コジクを含有するクリーム
下記表1に示す処方のジパルミチン酸コジクを含有するクリームを調製し、使用触感、保湿効果、肌改善効果、くすみ、シミ・そばかす改善効果について下記の方法により評価した。
【0014】
【表1】
【0015】
(製造方法)
A:1~11を秤量し、85℃に加熱し、均一に混合する。
B:12~15と17の95%量を秤量し、85℃に加熱し、均一に混合する。
C:Aを攪拌しながら、Bを添加し乳化(ホモミキサー5000rpm×5分)し、攪拌しながら40℃迄冷却する。
D:16を残量の17で溶解し、Cを攪拌しながら添加する。
E:Dを攪拌しながら30℃迄冷却し、ジパルミチン酸コジクを含有するクリームを得た。
【0016】
(評価方法)
比較例1、2及び実施例1で製造したジパルミチン酸コジクを含有するクリームによって、モニターテストによる保湿効果及び肌改善効果、くすみ、シミ・そばかす改善効果試験を実施し、下記表2に示す結果を得た。
[試料]
比較試料(1):比較例1のクリーム
比較試料(2) :比較例2のクリーム
本発明試料(1):実施例1のクリーム
[試験方法]
無作為に抽出した20才から55才の女性20名を被験者とし、1グループ10名の2グループ(A,B)に分け、グループ毎に本発明試料(1)、(2)と比較試料(1)を顔面の左右に、別々に、1日2回(朝、晩)1ヶ月間塗布し、比較テストを行った。
各グループの使用試料と塗布部位は次のとおりである。
Aグループ:比較試料(1)左顔面/本発明試料(1)右顔面
Bグループ:比較試料(2)左顔面/本発明試料(1)右顔面
[評価法]
左右顔面の肌の「つや」「滑らかさ」「キメ」「張り」「しっとり感」「くすみ」及び「しみ、そばかす」の7項目を自己判断により、以下の5段階の評価言語から該当すると思われる数値を選択し、評価点とした。
5:非常によい。(著しく改善された。)
4:良い。(かなり改善された。)
3:やや良い。(多少改善された。)
2:良くも悪くもない。(変化がない。)
1:悪い。(状態が悪くなった。)
また、モニターテスト終了後、各グループの被験者に、左右に塗布していた試料について、総合的にどちらの試料の方が保湿、肌質改善効果が高かったか(総合評価での優位判
定)を自己評価により選択させた。
【0017】
【表2】
【0018】
(結果)
上記表2の結果から明らかなように、ナイアシンアミドだけ添加するよりも、ナイアシンアミドとジパルミチン酸コジクを添加することで優れた保湿効果及び肌につや、キメを与える肌改善効果を有することが認められ、更にくすみ、シミ・そばかすを改善する効果を発揮することが認められた。また、べたつきを抑え、しっとりとした使用触感を備えながら、コウジ酸誘導体を安定的に高濃度に配合し、経時の乳化安定性を良好に維持することが確認された。加えて、日焼けによる皮膚の炎症及び日焼け後の色素沈着を良好に抑えることが確認された。
【0019】
(特定の抗炎症成分の候補)
特定の抗炎症成分は、例えば、ナイアシンアミド、ハイドロキノン、α-アルブチン、β-アルブチン、コウジ酸、コウジ酸ジパルミテート、4-メトキシサリチル酸カリウム塩、アスタキサンチン、ヒスチジンジチオオクタナミド(Na/亜鉛)、エラグ酸、カミツレエキス、甘草エキス、プラセンタエキス、ローズマリーエキス、ルシノール、マグノリグナン、トラネキサム酸、トラネキサム酸セチル塩酸塩、グルタチオン、リノール酸、リノール酸S、アデノシン一リン酸二ナトリウムから選ばれる。