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特開2024-143546目地ガスケットおよび目地のシール構造
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143546
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】目地ガスケットおよび目地のシール構造
(51)【国際特許分類】
   E04B 1/684 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E04B1/684 B
E04B1/684 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056281
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000196107
【氏名又は名称】西川ゴム工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 崇
(72)【発明者】
【氏名】石丸 謙吾
(72)【発明者】
【氏名】園田 千絵
【テーマコード(参考)】
2E001
【Fターム(参考)】
2E001DA01
2E001FA04
2E001HB02
2E001HD11
2E001HE01
2E001HE02
2E001LA03
2E001LA09
2E001MA02
2E001MA04
(57)【要約】
【課題】止水性および挿入性の両方に優れた目地ガスケットを実現する。
【解決手段】目地ガスケット(10)は、互いに隣り合う2つの外壁パネル(100)の間の目地(M)に配置され、屋外側柱部(21)が、第1リップ(30)と第2リップ(40)と第3リップ(50)とを有し、第2リップ(40)の先端部(47)に、第1面(411)と第2面(412)と第3面(413)とを覆う第1発泡体(42)が設けられている。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに隣り合う2つの外壁パネルの間の目地に配置される目地ガスケットであって、
互いに隣り合う2つの前記外壁パネルのうちの、屋外側に位置する2つの外壁面材の間の空間に配置される第1柱部を備え、
前記第1柱部は、
当該第1柱部における屋外側の端部から前記2つの外壁面材に向けて延伸する第1リップと、
前記第1リップよりも屋内側に位置し、かつ、前記2つの外壁面材に向けて延伸する第2リップと、
前記第2リップよりも屋内側に位置し、かつ、前記2つの外壁面材に向けて延伸する第3リップと、を有し、
前記第2リップの先端部に、屋外側の面と、前記外壁面材側の面と、屋内側の面と、を覆う第1発泡体が設けられた、目地ガスケット。
【請求項2】
前記第1リップの第1根元部は、屋内側に隆起しており、
前記第2リップの第2根元部は、屋外側に隆起しており、
前記第2リップにおける前記第2根元部と第1本体部との境界部分が、当該第1本体部よりも屈曲し易い第1屈曲部である、請求項1に記載の目地ガスケット。
【請求項3】
前記第1発泡体は、前記第2リップにおける、当該第2リップが前記外壁面材に向けて延伸する方向の中心軸から、屋外側の頂部までの高さが、前記中心軸から屋内側の頂部までの高さよりも高い、請求項2に記載の目地ガスケット。
【請求項4】
前記第1柱部は、
前記屋外側の端部を含む屋外側部分と、
前記屋外側部分と接続され、かつ、当該屋外側部分よりも屋内側に位置する屋内側部分と、を有し、
前記屋内側部分の厚さが、前記屋外側部分の厚さよりも厚い、請求項3に記載の目地ガスケット。
【請求項5】
前記外壁パネルは、屋外側から順に、外壁面材および下地材が積層されており、
前記第1柱部と接続され、かつ、互いに隣り合う2つの前記下地材の間の空間に配置される第2柱部をさらに有し、
前記第2柱部は、互いに隣り合う2つの前記下地材に向けて延伸する第4リップを有し、
前記第4リップは、第2本体部と、前記第2本体部よりも屋内側に位置する第3本体部と、を有する、請求項4に記載の目地ガスケット。
【請求項6】
互いに隣り合う2つの外壁パネルと、
前記2つの外壁パネルの間の目地に配置される目地ガスケットと、を備え、
前記外壁パネルは、屋外側に外壁面材を有し、
前記目地ガスケットは、互いに隣り合う2つの前記外壁面材の間の空間に配置される第1柱部を備え、
前記第1柱部は、
当該第1柱部における屋外側の端部から前記2つの外壁面材に向けて延伸する第1リップと、
前記第1リップよりも屋内側に位置し、かつ、前記2つの外壁面材に向けて延伸する第2リップと、
前記第2リップよりも屋内側に位置し、かつ、前記2つの外壁面材に向けて延伸する第3リップと、を有し、
前記第2リップの先端部には、屋外側の面と、前記外壁面材側の面と、屋内側の面と、を覆う第1発泡体が設けられた、目地のシール構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、目地ガスケットおよび目地のシール構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、互いに隣り合う2つの外壁パネルの間の目地から建物の内部に雨水等が浸入するのを防ぎ、かつ、建物の外観を良好に保つために、目地ガスケットが用いられている。目地ガスケットは、例えばゴムおよび樹脂等の水密性および弾性を有する材料で形成されており、目地幅よりもやや幅広な、かつ、目地に沿って延伸する長手形状である。目地ガスケットは、屋外側から目地に挿入されて当該目地に配置される。
【0003】
目地ガスケットは、複数のリップを有している。このリップは、目地を形成する外壁パネルの側面に接触して、雨水等が目地から建物の内部に浸入するのを防ぐ役割を果たす。しかしながら、従来のリップは、止水性が不十分であったことに加え、目地ガスケットを挿入するときの障害になって目地ガスケットの挿入性を低下させる一因となっていた。
【0004】
そこで、目地ガスケットの止水性および挿入性を向上させるために種々の研究開発が行われている。例えば、特許文献1には、第4フィン、第5フィンおよび第6フィンを備えたガスケットが開示されている。第4フィン、第5フィンおよび第6フィンは、外壁面材における小口面の間の目地内に位置する芯部から目地幅方向に突出しており、小口面を押圧する。また例えば、特許文献2には、柱部の屋外側端部から外壁パネルに向けて延伸する表層リップと、表層リップよりも屋内側に位置するとともに外壁パネルに向けて突出する屋内側リップと、を備えた目地ガスケットが開示されている。屋内側リップのリップ壁には、発泡体が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2016-132953号公報
【特許文献2】特開2022-063435号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されたガスケットは、特に第5フィンの止水性について、未だ改善の余地があった。また、特許文献2に開示された目地ガスケットは、挿入性について、未だ改善の余地があった。
【0007】
本発明の一態様は、前記の問題点に鑑みてなされたものであり、止水性および挿入性の両方に優れた目地ガスケットを実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の課題を解決するために、本発明の態様1に係る目地ガスケットは、互いに隣り合う2つの外壁パネルの間の目地に配置される目地ガスケットであって、互いに隣り合う2つの前記外壁パネルのうちの、屋外側に位置する2つの外壁面材の間の空間に配置される第1柱部を備え、前記第1柱部は、当該第1柱部における屋外側の端部から前記2つの外壁面材に向けて延伸する第1リップと、前記第1リップよりも屋内側に位置し、かつ、前記2つの外壁面材に向けて延伸する第2リップと、前記第2リップよりも屋内側に位置し、かつ、前記2つの外壁面材に向けて延伸する第3リップと、を有し、前記第2リップの先端部に、屋外側の面と、前記外壁面材側の面と、屋内側の面と、を覆う第1発泡体が設けられている。
【0009】
前記構成によれば、目地ガスケットが目地に配置された状態において、第1発泡体における、先端部の屋内側の面を覆う部分が、外壁面材の側面に弾接する。第1発泡体は非発泡体に比べて相対的に柔軟性が高いことから、弾接部分が外壁面材の側面に密着して水の浸入の低減効果が高まる。また、外壁面材の側面に凹凸または段差があったとしても、第1発泡体の優れた追従性によって弾接部分の止水性を担保できる。
【0010】
また、前記構成によれば、第1発泡体が第2リップの先端部に設けられている。そのため、第1発泡体が第2リップにおける先端部以外の他の部分にまで設けられている場合に比べて挿入時の摩擦抵抗が少なくなり、挿入性が向上する。以上より、止水性および挿入性の両方に優れた目地ガスケットを実現できる。
【0011】
本発明の態様2に係る目地ガスケットは、前記第1リップの第1根元部は、屋内側に隆起しており、前記第2リップの第2根元部は、屋外側に隆起しており、前記第2リップにおける前記第2根元部と第1本体部との境界部分が、当該第1本体部よりも屈曲し易い第1屈曲部であってもよい。
【0012】
前記構成によれば、第1根元部が屋内側に隆起している。そのため、第1根元部が屋内側に隆起していない場合に比べて、目地ガスケットが目地に配置された状態における第1発泡体と第1根元部との密着性が高まる。これにより、第1柱部と第2リップと第1発泡体とで取り囲まれた空間の体積を減少させることができ、かつ、第1発泡体と第1根元部との弾接箇所から前述の空間内に水が浸入するのを低減できる。
【0013】
また、前記構成によれば、第2リップが屈曲部を有している。そのため、挿入時に、第2リップが屈曲部を基点に第1柱部に向けて屈曲し易くなる。さらには、目地ガスケットが目地に配置された状態において、第1発泡体における、先端部の屋内側の面を覆う部分の圧縮量が増加し、この部分と外壁パネルの側面との密着性が高まる。以上より、止水性および挿入性の両方について、より優れた目地ガスケットを実現できる。
【0014】
本発明の態様3に係る目地ガスケットは、前記第1発泡体は、前記第2リップにおける、当該第2リップが前記外壁面材に向けて延伸する方向の中心軸から、屋外側の頂部までの高さが、前記中心軸から屋内側の頂部までの高さよりも高くてよい。
【0015】
前記構成によれば、第1発泡体は、第2リップの中心軸から屋外側の頂部までの高さ(以下、「屋外側の頂部の高さ」と略記)が第2リップの中心軸から屋内側の頂部までの高さ(以下、「屋内側の頂部の高さ」と略記)よりも高い。そのため、屋内側の頂部の高さを不変として、屋外側の頂部の高さが屋内側の頂部の高さ以下の場合に比べて、目地ガスケットが目地に配置された状態における第1発泡体と第1根元部との密着性がより高まる。これにより、第1柱部と第2リップと第1発泡体とで取り囲まれた空間の体積をさらに減少させることができ、かつ、第1発泡体と第1根元部との弾接箇所から前述の空間内に水が浸入するのをさらに低減できる。以上より、止水性および挿入性の両方について、より優れた目地ガスケットを実現できる。
【0016】
本発明の態様4に係る目地ガスケットは、前記第1柱部は、前記屋外側の端部を含む屋外側部分と、前記屋外側部分と接続され、かつ、当該屋外側部分よりも屋内側に位置する屋内側部分と、を有し、前記屋内側部分の厚さが、前記屋外側部分の厚さよりも厚くてよい。
【0017】
前記構成によれば、第1柱部は、屋内側部分の厚さが屋外側部分の厚さよりも厚い。そのため、屋外側部分の厚さを不変として、屋内側部分の厚さが屋外側部分の厚さ以下の場合に比べて、挿入時における第1柱部全体の剛性が向上し、挿入時に第1柱部が湾曲、屈曲、変形等し難くなる。これにより、挿入時に目地ガスケットを押圧する力の略全てを、目地ガスケットの挿入方向に作用させることができる。以上より、止水性および挿入性の両方について、より優れた目地ガスケットを実現できる。
【0018】
本発明の態様5に係る目地ガスケットは、前記外壁パネルは、屋外側から順に、外壁面材および下地材が積層されており、前記第1柱部と接続され、かつ、互いに隣り合う2つの前記下地材の間の空間に配置される第2柱部をさらに有し、前記第2柱部は、互いに隣り合う2つの前記下地材に向けて延伸する第4リップを有し、前記第4リップは、第2本体部と、前記第2本体部よりも屋内側に位置する第3本体部と、を有していてもよい。
【0019】
前記構成によれば、第2柱部の第4リップが、第2本体部と第3本体部とを有する。そのため、第1リップ、第2リップおよび第3リップと、外壁面材の側面と、の間を通過した水、あるいは横目地端部を通過した水を、第4リップが、第2本体部を介して1次的に受水できる。また、第4リップが、第2本体部を介して受水し切れなかった水を、第3本体部を介して2次的に受水できる。さらには、第4リップが受水した水を、互いに隣り合う2つの下地材の間の空間を通じて鉛直方向に落水させることができる。以上より、止水性および挿入性の両方について、より優れた目地ガスケットを実現できる。
【0020】
前記の課題を解決するために、本発明の態様6に係る目地のシール構造は、互いに隣り合う2つの外壁パネルと、前記2つの外壁パネルの間の目地に配置される目地ガスケットと、を備え、前記外壁パネルは、屋外側に外壁面材を有し、前記目地ガスケットは、互いに隣り合う2つの前記外壁面材の間の空間に配置される第1柱部を備え、前記第1柱部は、当該第1柱部における屋外側の端部から前記2つの外壁面材に向けて延伸する第1リップと、前記第1リップよりも屋内側に位置し、かつ、前記2つの外壁面材に向けて延伸する第2リップと、前記第2リップよりも屋内側に位置し、かつ、前記2つの外壁面材に向けて延伸する第3リップと、を有し、前記第2リップの先端部には、屋外側の面と、前記外壁面材側の面と、屋内側の面と、を覆う第1発泡体が設けられている。
【0021】
前記構成によれば、止水性および目地ガスケットの挿入性の両方に優れた、目地のシール構造を実現できる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の一態様によれば、止水性および挿入性の両方に優れた目地ガスケットを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の第1実施形態に係る目地ガスケットが目地に配置された状態における、目地のシール構造を示す断面図である。
図2図1の目地ガスケットの全体形状を示す断面図である。
図3】符号3001は、図2中の破線領域R1を拡大した拡大図である。符号3002は、符号3001の図中の破線領域R2を拡大した拡大図である。符号3003は、符号3001の図中の破線領域R3を拡大した拡大図である。
図4】符号4001は、従来の目地ガスケットが目地に配置された状態における、外壁面材付近の目地のシール構造を示す断面図である。符号4002は、符号4001に示す目地のシール構造の正面図である。符号4003は、符号4002の図中の破線領域R4付近を拡大した拡大図である。
図5】符号5001は、図1の目地ガスケットが目地に配置された状態における、外壁面材付近の目地のシール構造を示す断面図である。符号5002は、符号5001に示す目地のシール構造の正面図である。符号5003は、符号5002の図中の破線領域R5付近を拡大した拡大図である。
図6】本発明の第2実施形態に係る目地ガスケットの全体形状を示す断面図である。
図7図6の目地ガスケットが目地に配置された状態における、目地のシール構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の一実施形態について、図1から図7を用いて詳細に説明する。なお、説明の便宜上、本実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、後掲の変形例では同じ符号を付記してその説明を繰り返さない。
【0025】
本明細書において、「鉛直」および「平行」との文言は、基準方向や基準面に対して厳密に90°や180°の角度を成すことが必要な概念ではない。製品寸法のバラツキ、組み立て時に生じる誤差等に起因する多少の角度誤差を含んでいたとしても、実質的に「鉛直」および「平行」と見做し得る範囲であればよい。また、本明細書において、「平面」との文言は厳密に平面であることが必要な概念ではない。成形時に生じる誤差等に起因する多少の凹凸等を含んでいたとしても、実質的に「平面」と見做し得る範囲であればよい。
【0026】
〔第1実施形態〕
図1から図5を参照して、本発明の第1実施形態について説明する。本発明の第1実施形態に係る目地ガスケット10は、目地Mから建物(不図示)の内部に雨水等(以下、「水」と略記)が浸入するのを防ぎ、かつ、建物の外観を良好に保つために、目地Mに配置される目地材である。目地Mは、図1に示すような、互いに隣り合う2つの外壁パネル100の間に形成された隙間である。本実施形態では、外壁パネル100は、外壁面材110と、下地材120と、板材130と、を備えており、屋外側から順に、外壁面材110、下地材120および板材130が積層されている。また、本実施形態では、目地Mの開口部が、互いに隣り合う2つの外壁面材110の傾斜面111で構成されている。
【0027】
図1に示すように、目地ガスケット10が目地Mに配置された状態では、目地ガスケット10および2つの外壁パネル100を構成要素とする目地Mのシール構造500が成立する。このシール構造500は、止水性および目地ガスケット10の挿入性の両方に優れる。
【0028】
<目地ガスケット10の構成>
図1に示すように、目地ガスケット10は柱部20を備えている。また、図2に示すように、柱部20は、第1リップ30と、第2リップ40と、第3リップ50と、第4リップ60と、第5リップ70と、第6リップ80と、(以下、「各リップ」と総称する場合がある)を有している。
【0029】
柱部20および各リップの形成材料としては、合成ゴムまたはTPE(熱可塑性エラストマー)等のゴム様弾性体が挙げられる。合成ゴムではEPDM等が挙げられ、TPEではTPO(オレフィン系熱可塑性エラストマー)またはTPS(スチレン系熱可塑性エラストマー)等が挙げられるが、これらの形成材料に限定されない。また、ゴム様弾性体は、発泡材でもよいし、非発泡材でもよい。
【0030】
(柱部20)
柱部20は、目地Mの延伸方向に沿って延伸する部分である。図1および図2に示すように、本実施形態では、柱部20は、屋外側柱部21(第1柱部)と、中側柱部23(第2柱部)と、屋内側柱部24と、を有している。また、柱部20は、屋外側柱部21と中側柱部23と屋内側柱部24とが一体成形された構成となっている。
【0031】
屋外側柱部21は、目地Mにおける、互いに隣り合う2つの外壁面材110の間の空間に配置される、柱部20の一部分である。屋外側柱部21は、屋外側の端部211を含む屋外側部分21aと、屋内側部分21bと、を有している。屋外側の端部211は、柱部20を構成する各部分の中で最も屋外側に位置する部分である。屋内側部分21bは、屋外側部分21aと接続され、かつ、当該屋外側部分21aよりも屋内側に位置する。
【0032】
図2に示すように、本実施形態では、屋外側の端部211における屋外側の面上に、意匠部90が設けられている。意匠部90は、屋外側の端部211を屋外側から覆う被膜層である。
【0033】
意匠部90における屋外側の面は、塗装または着色材料による被覆によって調色されており、目地ガスケット10の意匠面をなす。すなわち、外壁面材110における屋外側面114に対して目地ガスケット10の違和感が少なくなるように、意匠部90における屋外側の面が形成されている。また、意匠部90は、屋外側の端部211よりも着色が容易な異材質にすることが可能である。このような意匠部90を設けることにより、目地ガスケット10における屋外側の面を外壁面材110の色に近い色にすることができ、建物の外観をより向上させることができる。なお、意匠部90に関するこれらの言及は、後述の屋外側意匠部32にも当てはまる。
【0034】
また、本実施形態では、屋外側部分21aの厚さおよび屋内側部分21bの厚さが、ともに一定となっている。本明細書において、「厚さ」は、柱部20を構成する各部分のそれぞれにおける、目地幅W方向の幅のことを指す。さらに、屋外側柱部21は、図1および図2に示すように、屋内側部分21bの厚さL2が屋外側部分21aの厚さL1よりも厚くなっている。
【0035】
このように、厚さL2を厚さL1よりも厚くすることで、厚さL1を不変として、厚さL2が厚さL1以下の場合に比べて、挿入時における屋外側柱部21全体の剛性が向上し、挿入時に屋外側柱部21が湾曲、屈曲、変形等し難くなる。これにより、押圧力の略全てを、目地ガスケット10の挿入方向に作用させることができる。押圧力は、目地ガスケット10の挿入時に、当該目地ガスケット10を目地Mの内部に向けて押圧する力である。
【0036】
屋外側柱部21では、屋外側部分21aの内部と屋内側部分21bの内部とに跨って、芯金22が埋設されている。本実施形態では、芯金22は、目地Mの延伸方向に沿って延伸する平板形状のばね鋼製部材となっている。このような形状および配置の芯金22は、目地ガスケット10の挿入方向の外力に対して優れた撓み強度を有するとともに、目地幅W方向の外力に対して優れた柔軟性を有する。また、芯金22はばね鋼製であることから、硬さおよび引張強度がステンレス鋼製の芯金の3倍以上となり、優れた復元力を有するとともに変形し難い。したがって、屋外側柱部21に芯金22を埋設することで、目地ガスケット10の運搬時、挿入時等において芯金22ひいては屋外側柱部21の意図せぬ変形が低減され、目地ガスケット10の挿入性が向上する。
【0037】
ただし、屋外側柱部21の形状および内部構成を本実施形態のように設計することは、必須ではない。例えば、厚さL1と厚さL2とが略同一であってもよい。また例えば、芯金22は金属製でなくてもよく、屋外側柱部21に芯金22が埋設されていなくてもよい。さらには、芯金22の形状および大きさも任意に設計変更してよい。
【0038】
図1および図2に示すように、中側柱部23は、柱部20において、屋外側柱部21よりも屋内側に位置する部分である。具体的には、中側柱部23は、当該中側柱部23における屋外側の端部が屋外側柱部21における屋内側の端部と接続され、かつ、互いに隣り合う2つの下地材120の間の空間に配置される。
【0039】
本実施形態では、中側柱部23は、第4リップ60との接続箇所付近を境にして、屋外側の部分の厚さがL3で一定となっており、かつ、屋内側の部分の厚さがL6で一定となっている。厚さL3は、厚さL1よりも厚く、かつ、厚さL2よりも薄い。厚さL6は、厚さL1よりも厚く、かつ、厚さL3よりも若干厚い。
【0040】
屋内側柱部24は、柱部20において、中側柱部23よりも屋内側に位置する部分である。具体的には、屋内側柱部24は、当該屋内側柱部24における屋外側の端部が中側柱部23における屋内側の端部と接続され、かつ、互いに隣り合う2つの板材130の間の空間に配置される。
【0041】
本実施形態では、屋内側柱部24は、第5リップ70との接続箇所付近を境にして、屋外側の部分の厚さがL6で一定となっており、かつ、屋内側の部分の厚さがL7で一定となっている。厚さL7は、厚さL6よりも薄く、かつ、厚さL1よりも若干薄い。
【0042】
また、本実施形態では、屋内側柱部24における屋内外方向の中央部分の内部に、合成繊維製かつ円柱形状の芯線25が、屋内側柱部24の延伸方向に埋設されている。
【0043】
ただし、中側柱部23および屋内側柱部24の各形状、ならびに屋内側柱部24の内部構成を本実施形態のように設計することは、必須ではない。例えば、厚さL3と厚さL6と厚さL7とが略同一であってもよい。また例えば、芯線25は合成繊維製でなくてもよく、樹脂製または金属製であってもよい。さらには、屋内側柱部24に芯線25が埋設されていなくてもよく、芯線25の形状および大きさも任意に設計変更してよい。
【0044】
(各リップ)
図2に示すように、屋外側柱部21は、第1リップ30と、第2リップ40と、第3リップ50と、を有している。第1リップ30は、屋外側の端部211から互いに隣り合う2つの外壁面材110に向けて延伸するリップである。本実施形態では、第1リップ30は、屋内側本体部31と、屋外側意匠部32と、第1根元部33と、を有している。
【0045】
屋内側本体部31は、第1リップ30における、屋外側意匠部32および第1根元部33を除いた残りのうちの屋内側の部分である。屋外側意匠部32は、屋内側本体部31および第1根元部33を屋外側から覆う被膜層であり、屋外側意匠部32の先端部は、第1リップ30の先端部を成している。また、屋外側意匠部32は、意匠部90と連なって形成されており、屋外側意匠部32における屋外側の面と意匠部90における屋外側の面とが面一になっている。つまり、屋外側意匠部32も、意匠部90と同様に目地ガスケット10の意匠面を成す。
【0046】
図1に示すように、屋内側本体部31の先端部と屋外側意匠部32の先端部とは、目地ガスケット10が目地Mに配置された状態において、外壁面材110の側面112における屋外側の端面に面接触するように撓む。
【0047】
屋外側意匠部32の形成材料は、目地ガスケット10の挿入時における第1リップ30の撓みを阻害しない範囲で、目地ガスケット10の形成材料と異なっていてもよい。勿論、目地ガスケット10の形成材料と同一の形成材料であってもよい。また、外観向上の観点から、屋外側意匠部32の形成材料は、意匠部90の形成材料と同一であることが勿論好ましい。
【0048】
第1根元部33は、屋外側の端部211における外壁面材110側の側面から、外壁面材110に向けて突出した部分であり、屋内側本体部31と連なって形成されている。本実施形態では、第1根元部33は、屋内側に隆起している。具体的には、図3の符号3002に示すように、第1仮想平面SUF1と境界線S2との最短距離D1がD1>0となっており、このD1>0の状態が「第1根元部33が屋内側に隆起している」ことを意味する。第1仮想平面SUF1は、境界線S1を含む、目地幅W方向と平行の仮想的な平面である。境界線S1は、屋内側本体部31と第1根元部33との2つの境界線のうち、屋内側の境界線である。境界線S2は、屋外側部分21aと第1根元部33との2つの境界線のうち、屋内側の境界線である。
【0049】
また、本実施形態では、図3の符号3001に示すように、第1根元部33において第1仮想平面SUF1から屋内側に隆起している部分の表面331は、平面形状であり、かつ、屋外側に向かうにつれて外壁面材110に近づく傾斜面となっている。
【0050】
図2に示すように、第2リップ40は、第1リップ30よりも屋内側に位置し、かつ、互いに隣り合う2つの外壁面材110に向けて延伸するリップである。本実施形態では、第2リップ40は、第1本体部41と、第2根元部45と、先端部47と、を有している。
【0051】
第1本体部41は、第2リップ40における、第2根元部45および先端部47を除いた残りの部分である。第2根元部45は、屋外側部分21aにおける屋内側の端部の側面から、外壁面材110に向けて突出した部分であり、第1本体部41と連なって形成されている。
【0052】
本実施形態では、第2根元部45は、屋外側に隆起している。具体的には、図3の符号3003に示すように、第2仮想平面SUF2と境界線S4との最短距離D2がD2>0となっており、このD2>0の状態が「第2根元部45が屋外側に隆起している」ことを意味する。第2仮想平面SUF2は、境界線S3を含む、目地幅W方向と平行の仮想的な平面である。境界線S3は、第1本体部41と第2根元部45との2つの境界線のうち、屋外側の境界線である。境界線S4は、屋外側部分21aと第2根元部45との2つの境界線のうち、屋外側の境界線である。
【0053】
また、本実施形態では、図3の符号3001に示すように、第2根元部45において第2仮想平面SUF2から屋外側に隆起している部分の表面451は、平面形状であり、かつ、屋外側に向かうにつれて屋外側部分21aに近づく傾斜面となっている。
【0054】
図2に示すように、先端部47には第1発泡体42が設けられている。第1発泡体42は、第1面411と、第2面412と、第3面413と、を覆う発泡体であり、柔軟性が高い高発泡スポンジ等で構成される。第1面411は、先端部47における屋外側の面である。第2面412は、先端部47における外壁面材110側の面である。第3面413は、先端部47における屋内側の面である。
【0055】
第1発泡体42は、第1面411および第2面412を覆う屋外側発泡体43と、第3面413を覆う屋内側発泡体44と、を有している。図3の符号3001に示すように、本実施形態では、中心軸48から屋外側発泡体43における屋外側の頂部431までの高さbが、中心軸48から屋内側発泡体44における屋内側の頂部441までの高さaよりも高くなっている。中心軸48は、第2リップ40における、当該第2リップ40が外壁面材110に向けて延伸する方向の中心軸である。具体的には、中心軸48は、第2リップ40における後述の第1屈曲部46の中心点P1と、最大点P2と、を結んだ仮想線である。最大点P2は、中心点P1から第2リップ40における先端部47までの距離が最大となる、先端部47における第2面412上の点である。また、本実施形態では、屋外側発泡体43の突出量および屋内側発泡体44の突出量が、ともにcとなっている。この場合の突出量とは、具体的には中心軸48の延伸方向への突出量を指す。
【0056】
さらに、本実施形態では、第2リップ40における第2根元部45と第1本体部41との境界部分(境界線S3を含む)が、当該第1本体部41よりも屈曲し易い第1屈曲部46となっている。つまり、第1屈曲部46を境目にして第2リップ40の剛性が変化するため、目地ガスケット10の挿入時に、第2根元部45よりも剛性が低い第1本体部41の方が、第1屈曲部46を基点に屋外側柱部21側に向けて屈曲する。
【0057】
以上のような目地ガスケット10の構成によれば、目地ガスケット10が目地Mに配置された状態において、第1発泡体42の屋内側発泡体44が、外壁面材110の側面112に弾接する。第1発泡体42は非発泡体に比べて相対的に柔軟性が高いことから、屋内側発泡体44の弾接部分が側面112に密着して水の浸入の低減効果が高まる。また、側面112に凹凸または段差があったとしても、第1発泡体42の優れた追従性によって屋内側発泡体44の弾接部分の止水性を担保できる。
【0058】
また、以上のような目地ガスケット10の構成によれば、第1発泡体42が第2リップ40の先端部47に設けられている。そのため、第1発泡体42が、先端部47のみならず、第2リップ40における先端部47以外の他の部分にまで設けられている場合に比べて、目地ガスケット10の挿入時の摩擦抵抗が少なくなって挿入性が向上する。
【0059】
また、以上のような目地ガスケット10の構成によれば、第1根元部33が屋内側に隆起している。そのため、第1根元部33が屋内側に隆起していない場合に比べて、目地ガスケット10が目地Mに配置された状態における、第1発泡体42の屋外側発泡体43と第1根元部33との密着性が高まる。これにより、屋外側柱部21と第2リップ40と第1発泡体42とで取り囲まれた空間の体積を減少させることができ、かつ、屋外側発泡体43と第1根元部33との弾接箇所から前述の空間内に水が浸入するのを低減できる。
【0060】
また、以上のような目地ガスケット10の構成によれば、第2リップ40が第1屈曲部46を有している。そのため、目地ガスケット10の挿入時に、第2リップ40が第1屈曲部46を基点に屋外側柱部21に向けて屈曲し易くなる。さらには、目地ガスケット10が目地Mに配置された状態において、第1発泡体42の屋内側発泡体44の圧縮量が増加し、屋内側発泡体44と外壁面材110の側面112との密着性が高まる。
【0061】
また、以上のような目地ガスケット10の構成によれば、第2リップ40の中心軸48から屋外側発泡体43における屋外側の頂部431までの高さbが、第2リップ40の中心軸48から屋内側発泡体44における屋内側の頂部441の高さaよりも高い。そのため、高さaを不変として、高さbが高さa以下の場合に比べて、目地ガスケット10が目地Mに配置された状態における、第1発泡体42の屋外側発泡体43と第1根元部33との密着性がより高まる。これにより、屋外側柱部21と第2リップ40と第1発泡体42とで取り囲まれた空間の体積をさらに減少させることができ、かつ、第1発泡体42と第1根元部33との弾接箇所から前述の空間内に水が浸入するのをさらに低減できる。
【0062】
ただし、前述した目地ガスケット10の構成において、第1根元部33および第2根元部45のそれぞれが所定方向に隆起していることは必須ではない。また、第1発泡体42において屋外側の頂部431の高さbが屋内側の頂部441の高さaよりも高いこと、および第2リップ40が第1屈曲部46を有していることも必須ではない。
【0063】
第3リップ50は、第2リップ40よりも屋内側に位置し、かつ、互いに隣り合う2つの外壁面材110に向けて延伸するリップである。本実施形態では、第3リップ50は、屋外側柱部21における屋内側の端部から、互いに隣り合う2つの外壁面材110に向けて延伸している。
【0064】
このような第3リップ50の存在により、第1リップ30および第2リップ40と、外壁面材110の側面112と、の間を通過した水を、第3リップ50が受水できる。また、第3リップ50が受水した水を、互いに隣り合う2つの外壁面材110の間の空間を通じて鉛直方向に落水させることができる。
【0065】
図2に示すように、中側柱部23は第4リップ60を有している。第4リップ60は、互いに隣り合う2つの下地材120(図1参照)に向けて延伸するリップであり、第2本体部61と、第2本体部61よりも屋内側に位置する第3本体部62と、を有している。本実施形態では、第2本体部61は、第4リップ60の根元部を含む部分であり、中側柱部23と連なって形成されている。また、第2本体部61は、屋外側に向けて斜めに延伸している。第3本体部62は、第2本体部61の屋内側の面における、前述の根元部に隣接する箇所から延伸しており、かつ屋内に向けて若干凸となるように屈曲している。
【0066】
このような第4リップ60の存在により、第1リップ30、第2リップ40および第3リップ50と、外壁面材110の側面112と、の間を通過した水、あるいは横目地端部を通過した水を、第4リップ60が、第2本体部61を介して1次的に受水できる。また、第4リップ60が、第2本体部61を介して受水し切れなかった水を、第3本体部62を介して2次的に受水できる。さらには、第4リップ60が受水した水を、互いに隣り合う2つの下地材120の間の空間を通じて鉛直方向に落水させることができる。
【0067】
また、本実施形態では、中側柱部23における屋外側の端部231と境界線S5との最短距離L4が、第2本体部61の長さL5よりも短くなっている。境界線S5は、中側柱部23と第2本体部61との2つの境界線のうち、屋外側の境界線である。このような設計にすることで、目地ガスケット10の挿入時に、第2本体部61の先端が第3リップ50の根元部における屋内側の部分に干渉し難くなり、より小さな押圧力で目地ガスケット10を挿入できる。これにより、目地ガスケット10の挿入性がさらに向上する。
【0068】
図2に示すように、屋内側柱部24は、第5リップ70と、第6リップ80と、を有している。図1および図2に示すように、第5リップ70は、互いに隣り合う2つの板材130の屋外側角部に向けて延伸するリップである。本実施形態では、第5リップ70は、屋内側柱部24における芯線25の配置箇所付近の側面から延伸している。
【0069】
図2に示すように、第5リップ70は、上向部71と、第2屈曲部73と、下向部74と、を有している。上向部71は、第5リップ70の根元部を含む部分であり、中側柱部23と連なって形成されている。また、上向部71は、屋外側に向けて斜めに延伸している。下向部74は、第5リップ70の先端部を含む部分であり、屋内側に向けて斜めに延伸している。第2屈曲部73は、上向部71と下向部74との接続部分かつ境界部分である。
【0070】
上向部71における屋内側の面には、第2発泡体72が設けられている。また、下向部74における屋内側の面には、第3発泡体75が設けられている。本実施形態では、第2発泡体72における屋内外方向の断面積が、第3発泡体75における屋内外方向の断面積よりも大きくなっている。また、上向部71の不図示の中心軸から第2発泡体72の頂部までの高さが、下向部74の不図示の中心軸から第3発泡体75の頂部までの高さよりも高くなっている。上向部71の中心軸は、上向部71における、当該上向部71が板材130に向けて延伸する方向の中心軸である。下向部74の中心軸は、下向部74における、当該下向部74が板材130に向けて延伸する方向の中心軸である。ただし、第2発泡体72および第3発泡体75の各大きさ、各形状および各配置は、本実施形態の例に限定されない。
【0071】
ここで、第1発泡体42、第2発泡体72および第3発泡体75は主に、EPDM等の合成ゴムにより形成されていることが好ましい。また、第1発泡体42、第2発泡体72および第3発泡体75は、目地ガスケット10と同様の材料により形成されていてもよいが、その場合はソリッド状ではなく、発泡したスポンジ状に形成されている必要がある。例えば、第1発泡体42、第2発泡体72および第3発泡体75は、EPDMからなる高発泡ゴムにより形成されていることが特に好ましい。この高発泡ゴムの比重としては、例えば0.05~0.30程度が好ましい。
【0072】
このような第5リップ70の構成により、図1に示すように、目地ガスケット10が目地Mに配置された状態において、第2発泡体72が、板材130の側面132における屋外側の端面に弾接し、密着する。また、第3発泡体75が、板材130の屋外側面131における目地中央側の端面に弾接し、密着する。これにより、第1リップ30、第2リップ40および第3リップ50と、外壁面材110の側面112と、の間を通過し、さらに第4リップ60と下地材120との間の空間を通過した水が、互いに隣り合う2つの板材130の間の空間を通過するのを低減できる。
【0073】
また、このような第5リップ70の構成により、目地ガスケット10の挿入時に、第5リップ70の先端(具体的には下向部74の先端)が第4リップ60の根元部における屋内側の部分に干渉しない。そのため、より小さな押圧力で目地ガスケット10を挿入でき、目地ガスケット10の挿入性がさらに向上する。
【0074】
なお、従来の目地ガスケット300(図4の符号4001参照)は、当該従来の目地ガスケット300の挿入時に、不図示の第2フィンの先端が、不図示の第3フィンの根元部における屋内側の部分に干渉する。そのため、従来の目地ガスケット300の挿入時には、目地ガスケット10の挿入時よりも大きな押圧力が必要となる。ここで、第2フィンは第5リップ70に対応しており、第3フィンは第4リップ60に対応している。第2フィンおよび第3フィンの全体形状等については、特許文献1の図2および図3等を参照されたい。
【0075】
図1および図2に示すように、第6リップ80は、互いに隣り合う2つの板材130の側面132に向けて延伸するリップである。本実施形態では、第6リップ80は、屋内側柱部24における屋内側の端部の側面から延伸している。また、第6リップ80は、屋外側に向けて若干斜めに延伸している。このような第6リップ80の構成により、図1に示すように、目地ガスケット10が目地Mに配置された状態において、目地Mに浸入した水が第2発泡体72と板材130の側面132との間を通過して該板材130の裏面133にまで伝わるのを低減できる。
【0076】
<各種の性能試験の実施>
(止水性試験)
従来の目地ガスケット300(図4の符号4001参照)および目地ガスケット10のそれぞれについて、止水性の良否を確認する止水性試験を行った。止水性試験の試験方法は以下の通りである。
【0077】
まず、外壁面材の屋外側端部に傾斜面が無く、代わりに外壁面材の側面と面一の端面になっている外壁パネルを用いて、試験対象となる2種類の目地を構成した。2種類の目地の一方である第1目地については、上部の目地幅および下部の目地幅をともに10mmとした(不図示)。2種類の目地の他方である第2目地については、上部の目地幅を10mmとし、下部の目地幅を12mmとした(後述する、図4の符号4002および図5の符号5002に示す目地)。
【0078】
次に、第1目地に従来の目地ガスケット300を挿入した場合、および第1目地に目地ガスケット10を挿入した場合のそれぞれについて、外壁パネルの表面側から当該外壁パネルに向けて水圧980Paの水を放水し、第1目地内への水の浸入の程度を目測した。同様に、第2目地に従来の目地ガスケット300を挿入した場合、および第2目地に目地ガスケット10を挿入した場合のそれぞれについて、外壁パネルの表面側から当該外壁パネルに向けて水圧980Paの水を放水し、第2目地内への水の浸入の程度を目測した。
【0079】
前述の方法で止水性試験を行った結果、第1目地を試験対象とした場合、従来の目地ガスケット300、目地ガスケット10ともに、第1目地内への漏水が無く優れた止水性を示すことを確認できた。一方、第2目地を試験対象とした場合、従来の目地ガスケット300では、第2目地内への滴下がみられ第1目地の場合よりも止水性が低下していたが、目地ガスケット10では、第2目地内への漏水が無く優れた止水性を示すことを確認できた。これらの試験結果から、目地ガスケット10が、目地幅が一定か否か(段差部が存在するか否か)に拘わらず優れた止水性を発揮することが判明した。
【0080】
(追従性試験)
従来の目地ガスケット300および目地ガスケット10のそれぞれについて、外壁面材の側面に対する追従性の良否を確認する追従性試験を行った。追従性試験の試験方法としては、まず、図4の符号4002等に示すような外壁面材の側面に正面視で段差STがある(言い換えれば、段差STを境にして急激に目地幅が異なる)外壁パネル101を用いて、図4の符号4001等に示すような目地(以下、「対象目地」)を構成した。
【0081】
次に、図4の符号4001に示すように従来の目地ガスケット300を対象目地に挿入した場合、および図5の符号5001に示すように目地ガスケット10を対象目地に挿入した場合のそれぞれについて、段差付近における発泡体の追従状態を目測した。試験実施者が発泡体の追従状態を目測できるよう、従来の目地ガスケット300については第6フィン303の両端部をカットし、目地ガスケット10については屋内側本体部31および屋外側意匠部32をカットした。
【0082】
なお、説明の便宜上、および図面の簡略化の観点から、図4の符号4001および図5の符号5001においては、外壁パネル101のうち外壁面材付近しか図示していない。また、従来の目地ガスケット300、目地ガスケット10ともに、互いに隣り合う2つの外壁面材の間の空間に配置される部分しか図示していない。従来の目地ガスケット300の全体形状等については、特許文献1の図2および図3等を参照されたい。
【0083】
従来の目地ガスケット300を対象目地に挿入した結果、従来の目地ガスケット300における第5フィン301の屋内側の面に設けられたスポンジ302(発泡体に相当)は、図4の符号4002および4003に示すような追従状態となった。また、目地ガスケット10を対象目地に挿入した結果、第1発泡体42の屋内側発泡体44は、図5の符号5002および5003に示すような追従状態となった。そして、これらの追従状態を目測した結果、図4の符号4003および図5の符号5003に示すように、スポンジ302と直下面との間に生じる隙間G1に比べて、屋内側発泡体44と直下面との間に生じる隙間G2の方が大幅に小さいことを確認できた。直下面は、外壁パネル101(具体的には外壁面材)の側面142における、段差STの直下に位置する側面である。
【0084】
この試験結果から、目地ガスケット10が、従来の目地ガスケット300に比べて隙間が発生し難く優れた追従性を有しており、その結果優れた止水性を発揮することが判明した。
【0085】
(非変形性試験)
従来の目地ガスケット300および目地ガスケット10のそれぞれについて、非変形性の良否を確認する非変形性試験を行った。非変形性とは、目地ガスケットの柱部における芯金が埋設されている部分の変形し難さの程度である。具体的には、非変形性試験として、以下に説明する2種類の試験を行った。
【0086】
なお、非変形性試験に用いた従来の目地ガスケット300では、芯金304(図4の符号4001参照)は、SUS製であり、0.4t×12.6wとした。芯金304は、従来の目地ガスケット300の柱部における屋外側柱部に、4箇所折り曲げされた状態で埋設されていた。また、非変形性試験に用いた目地ガスケット10では、芯金22は、ばね鋼製の平板形状であり、0.4t×9.0wとした。また、折り曲げされていない状態の芯金22を、目地ガスケット10の柱部20に埋設した。
【0087】
まず、1種類目の試験として、従来の目地ガスケット300および目地ガスケット10のそれぞれについて全長2550mmのサンプルを作製し、試験実施者がこれらのサンプルを肩に掛けて50m程度の階段を昇降した。昇降後、試験実施者が各サンプルにおける長さ方向の端部を持ち上げ、各サンプルの曲がり具合を目測した(不図示)。
【0088】
目測した結果、従来の目地ガスケット300は、柱部が屋外側柱部を含めて大きく屈曲していた。一方、目地ガスケット10は、柱部20が屋外側柱部21を含めてわずかな変形に留まっていた。この試験結果から、目地ガスケット10の方が、従来の目地ガスケット300に比べて、作業者の手扱いに応じた塑性変形の程度が大幅に小さいことが判明した。
【0089】
次に、2種類目の試験として、従来の目地ガスケット300および目地ガスケット10のそれぞれについて全長1800mmのサンプルを作製し、これらのサンプルを目地幅W=10mmの目地Mに挿入した。挿入後、目地Mを構成する2つの外壁面材110を離間させ、目地Mから解放された各サンプルの反りを測定した。具体的には、湾曲した各サンプルの頂部と、湾曲前の各サンプルにおける頂部に相当する箇所と、の最短距離を測定し、その測定値を各サンプルの反りとした(不図示)。
【0090】
反りを測定した結果、従来の目地ガスケット300の測定値が62mmであったのに対し、目地ガスケット10の測定値は24mmに留まった。この試験結果から、目地ガスケット10の方が、従来の目地ガスケット300に比べて、押圧力による塑性変形の程度が小さいことが判明した。
【0091】
〔第2実施形態〕
図6および図7を参照して、本発明の第2実施形態について説明する。本発明の一態様に係る目地ガスケットは、第1実施形態に係る目地ガスケット10の構成以外にも種々の構成が想定される。その一例として、図6および図7に示すような、柱部20が屋外側柱部21のみで構成された第2実施形態に係る目地ガスケット11が挙げられる。
【0092】
目地ガスケット11は、中側柱部23および屋内側柱部24を有していないことの帰結として、第4リップ60と、第5リップ70と、第6リップ80と、を有していない点において、目地ガスケット10と相違する。
【0093】
目地ガスケット11は、例えば図7に示すような、互いに隣り合う2つの外壁パネル101の間の目地M´に配置することができる。外壁パネル102は、屋外側から順に外壁面材110および下地材120aが積層された構成になっている。また、下地材120aは、互いに隣り合う2つの外壁面材110において共通(図1に示すような2つに分離した下地材120ではなく、一体物を指す)しており、目地M´の屋内側を塞いでいる。目地ガスケット11が目地M´に配置された状態では、目地ガスケット11および2つの外壁パネル102を構成要素とする目地M´のシール構造501が成立する。
【0094】
つまり、本発明の適用対象となる外壁パネルは、少なくとも屋外側に外壁面材110を有していればよい。また、本発明の一態様に係る目地ガスケットは、第1リップ30と、第2リップ40と、第3リップ50と、を有し、かつ、少なくとも外壁面材110の側面112をシールするものであればよい。
【0095】
〔付記事項〕
本発明は前述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0096】
10、11 目地ガスケット
20 柱部
21 屋外側柱部(第1柱部)
21a 屋外側部分
21b 屋内側部分
22、304 芯金
23 中側柱部(第2柱部)
24 屋内側柱部
25 芯線
30 第1リップ
31 屋内側本体部
32 屋外側意匠部
33 第1根元部
40 第2リップ
41 第1本体部
42 第1発泡体
43 屋外側発泡体
44 屋内側発泡体
45 第2根元部
46 第1屈曲部
47 先端部
48 中心軸
50 第3リップ
60 第4リップ
61 第2本体部
62 第3本体部
70 第5リップ
71 上向部
72 第2発泡体
73 第2屈曲部
74 下向部
75 第3発泡体
80 第6リップ
90 意匠部
100、101、102 外壁パネル
110 外壁面材
111 傾斜面
112、132、142 側面
133 裏面
120、120a 下地材
114、121、131 屋外側面
130 板材
211、231 屋外側の端部
300 従来の目地ガスケット
301 第5フィン
302 スポンジ
303 第6フィン
331、451 表面
411 第1面(屋外側の面)
412 第2面(外壁面材側の面)
413 第3面(屋内側の面)
431 屋外側の頂部
441 屋内側の頂部
500、501 シール構造
a、b 高さ
c 突出量
D1、D2、L4 最短距離
G1、G2 隙間
L1、L2、L3、L6、L7 厚さ
L5 長さ
R1、R2、R3、R4、R5 破線領域
M、M´ 目地
P1 中心点
P2 最大点
S1、S2、S3、S4、S5 境界線
W 目地幅
ST 段差
SUF1 第1仮想平面
SUF2 第2仮想平面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7