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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014355
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】音響物品
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/168 20060101AFI20240125BHJP
   B32B 5/32 20060101ALI20240125BHJP
   G10K 11/16 20060101ALI20240125BHJP
【FI】
G10K11/168
B32B5/32
G10K11/16 120
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117118
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】澤本 佳介
(72)【発明者】
【氏名】安田 大悟
(72)【発明者】
【氏名】岡田 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼階 任弘
【テーマコード(参考)】
4F100
5D061
【Fターム(参考)】
4F100AT00A
4F100AT00D
4F100CA23C
4F100DE00C
4F100DG15E
4F100DJ00B
4F100DJ00C
4F100EC03B
4F100EC03C
4F100JH00
5D061AA22
5D061AA23
5D061AA25
5D061BB24
5D061DD03
5D061DD11
(57)【要約】
【課題】高嵩密度と積層構造による音響性能の周波数依存性を考慮した音響物品を提供する。
【解決手段】音響物品は、多孔質材のシート状の第1の部材2と、第1の部材の厚さ方向における一方側の第1の主面に設けられた第1の表皮部材4と、多孔質材のシート状の第2の部材3と、第2の部材3の厚さ方向における他方側の第2の主面に設けられた第2の表皮部材6と、を備え、第1の部材と第2の部材とは、平面方向における少なくとも一部において互いに固定された状態で、積層されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔質材のシート状の第1の部材と、
前記第1の部材の厚さ方向における一方側の第1の主面に設けられた第1の表皮部材と、
多孔質材のシート状の第2の部材と、
前記第2の部材の厚さ方向における他方側の第2の主面に設けられた第2の表皮部材と、 を備え、
前記第1の部材と第2の部材とは、平面方向における少なくとも一部において互いに固定された状態で、積層されている、音響物品。
【請求項2】
前記第2の部材は、多孔質粒子を含む充填剤を有する、請求項1に記載の音響物品。
【請求項3】
前記第1の部材と前記第2の部材とは、前記平面方向に平行な第1の方向における両端部において、互いに融着によって固定される、請求項1又は2に記載の音響物品。
【請求項4】
前記平面方向に平行で前記第1の方向と直交する方向から見て、前記第1の主面が、前記第2の主面より長い、請求項3に記載の音響物品。
【請求項5】
前記第1の部材と前記第2の部材とは、前記平面方向に平行な第1の方向の一端部において、互いに融着され、他端部において、互いに離間可能である、請求項1又は2に記載の音響物品。
【請求項6】
前記第1の部材と前記第2の部材とは、前記平面方向に平行な第1の方向の一端部において、互いにテープ部材で固定され、他端部において、互いに離間可能である、請求項1又は2に記載の音響物品。
【請求項7】
前記第1の部材と前記第2の部材との間には、不織布製の表皮部材が設けられている、請求項5に記載の音響物品。
【請求項8】
前記第1の部材と前記第2の部材との間には、不織布製の表皮部材が設けられている、請求項6に記載の音響物品。
【請求項9】
前記第1の部材と前記第2の部材とを互いに固定するピン部材を更に備え、
前記ピン部材は、
前記第1の部材及び前記第2の部材を厚さ方向に貫通する本体部と、
前記本体部の両端部にそれぞれ形成された頭部と、を有する、請求項1又は2に記載の音響物品。
【請求項10】
第1の主面に第1の表皮部材が設けられた、多孔質材のシート状の第1の部材を準備する工程と、
第2の主面に第2の表皮部材が設けられた、多孔質材のシート状の第2の部材を準備する工程と、
積層時の厚み方向における外側に前記第1の表皮部材及び前記第2の表皮部材が配置され、且つ、平面方向における少なくとも一部において互いに固定された状態で、前記第1の部材と第2の部材とを積層する工程と、を備える、音響物品の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音響物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の音響物品として、特許文献1に記載されたものが知られている。特許文献1は、例えば、多孔質炭素を含む多孔質層を有するシート状の部材を音響物品として示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2021-500610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、高嵩密度と積層構造による音響性能の周波数依存性を考慮した音響物品が求められていた。
【0005】
従って、本発明は、高嵩密度と積層構造による音響性能の周波数依存性を考慮した音響物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る音響物品は、多孔質材のシート状の第1の部材と、第1の部材の厚さ方向における一方側の第1の主面に設けられた第1の表皮部材と、多孔質材のシート状の第2の部材と、第2の部材の厚さ方向における他方側の第2の主面に設けられた第2の表皮部材と、を備え、第1の部材と第2の部材とは、平面方向における少なくとも一部において互いに固定された状態で、積層されている。
【0007】
本発明の一態様に係る音響物品の製造方法は、第1の主面に第1の表皮部材が設けられた、多孔質材のシート状の第1の部材を準備する工程と、第2の主面に第2の表皮部材が設けられた、多孔質材のシート状の第2の部材を準備する工程と、積層時の厚み方向における外側に第1の表皮部材及び第2の表皮部材が配置され、且つ、平面方向における少なくとも一部において互いに固定された状態で、第1の部材と第2の部材とを積層する工程と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高嵩密度と積層構造による音響性能の周波数依存性を考慮した音響物品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る音響物品の概略断面図である。
図2】変形例に係る音響物品の概略断面図である。
図3】変形例に係る音響物品の概略平面図である。
図4】変形例に係る音響物品の概略断面図である。
図5】変形例に係る音響物品の概略平面図である。
図6】変形例に係る音響物品の概略断面図である。
図7】試験条件を示す表である。
図8】試験条件を示す表である。
図9】試験結果を示すグラフである。
図10】試験結果を示すグラフである。
図11】試験結果を示すグラフである。
図12】試験結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0011】
図1(c)に示すように、実施形態に係る音響物品1は、第1の部材2と、第2の部材3と、を備える。第1の部材2と第2の部材3とは、平面方向における少なくとも一部において互いに固定された状態で、積層されている。なお、ここでの「積層されている」とは、積層された状態で完全に固定されたことまでは意味しておらず、後述の図3及び図5のように、積層した後に互いを離間させることができる状態も含むことを意味する。本実施形態では、第1の部材2と第2の部材3とは、平面方向に平行な第1の方向D1における両端部において、互いに融着によって固定される。
【0012】
音響物品1は、厚さ方向に対向する一対の主面1a,1bを有する。一対の主面1a,1bには、それぞれ不織布製の表皮部材4,6が設けられている。表皮部材4,6は、音響物品1の第1の方向D1における両端部において、第1の部材2及び第2の部材3を挟んで互いに融着によって固定される。融着は加圧融着、及び加熱融着の何れか、または両方の方法で行われる。加圧融着は各部材2,3,4,6に対して圧力を付与することによって融着を行う方法である。加熱融着は各部材2,3,4,6に対して熱を付与することによって融着を行う方法である。また、融着には、隙間を充填材で充填するシーリングも含まれる。
【0013】
図1(a)(b)に示すように、固定する前段階では、表皮部材4、第1の部材2、第2の部材3、及び表皮部材6の順で部材が積層されることで、積層体10が構成される。図1(a)に示すように寸法L0の第1の部材2及び寸法L0の第2の部材3が準備され、図1(b)に示すように重ね合わせられる。積層体10は、第1の方向D1における両端部において、適切な長さにカットされた後、融着によって固定される。これにより、図1(c)に示す音響物品1となる。なお、音響物品1の第1の方向D1の寸法L1は、カット後の積層体10の第1の方向D1の寸法L0よりも小さい。平面方向に平行で第1の方向D1と直交する第2の方向D2から見たときにおける、音響物品1の主面1aの長さは、寸法L0と略等しくなる。音響物品1では、表皮部材4,6の張力によって、第1の部材及び第2の部材が圧縮される。従って、音響物品1の厚さH1は、積層体10の厚さH0より薄い。厚さは、第1の方向D1及び第2の方向D2に直交する方向である。特に寸法は限定されるものではないが、寸法L1は、30~1300mm程度に設定される。特に厚さは限定されるものではないが、厚さH1は、10~60mm程度に設定される。当該厚さH1のうち、表皮部材4,6の厚さは0.1~1mm程度であり、残りの厚さが第1の部材2及び第2の部材3の厚さとなる。なお、第1の部材2の厚さと第2の部材3の厚さは等しくてもよいが、異なっていてもよい。異なっている場合、第1の部材2の厚さは、第2の部材3の厚さに対して10~1000%の範囲に収まってよい。
【0014】
次に、各部材について詳細に説明する。
【0015】
(第2の部材)
第2の部材3は、多孔質材のシート状の部材である。第2の部材3は、多孔質層と、多孔質層に分散された少なくとも1つの充填剤と、を含んでもよい。第2の部材3は、多孔質層に隣接する空気間隙を含む。例えば、第2の部材3は、多孔質層と、多孔質粒子を含み、且つ0.1m/g以上且つ10000m/g以下の平均表面積を有する不均一な充填剤と、を含み、第2の部材3は、100MKSRayls以上且つ5000MKSRayls以下の通気抵抗値を有してもよい。多孔質粒子としては、多孔質炭素を用いることもできる。また、例えば、第2の部材3は、多孔質層と、多孔質層に受容され、平均粒子サイズが1μm以上且つ1000μm以下であり、且つ0.1m/g以上且つ800m/g以下の平均表面積を有する不均一な充填剤と、を含み、第2の部材3は、100MKSRayls以上且つ8000MKSRayls以下の通気抵抗値を有してもよい。第2の部材3として、3M(登録商標)Flexile AcousticMaterial FABシリーズ(3M社製)等を使用してもよい。
【0016】
第2の部材3は、1つ以上の多孔質層を含む。有用な多孔質層としては、不織布繊維層、有孔フィルム、微粒子床、連続気泡発泡体、繊維ガラス、ネット、織布、及びこれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
微細繊維を含有する設計された不織布繊維層は、航空宇宙用途、自動車用途、輸送用途、及び建築用途において有効な吸音材であり得る。複数の微細繊維を有する不織布材料は、構造の高表面積が、音エネルギーの粘性消散を促進するレジームである高い音周波数で特に効果的であり得る。不織布層は、繊維ガラスからできていてもよい。ポリマー不織布層は、例えば、メルトブロー又は溶融紡糸によって作ることができる。
【0018】
メルトブローでは、1つ以上の熱可塑性ポリマー流は、緊密に配置されたオリフィスを含むダイを通って押し出され、高速で熱風の収束流によって減衰され、微細繊維を形成する。これらの微細繊維を表面に集めて、メルトブロー不織布繊維層を提供することができる。選択された操作パラメータ、例えば溶融状態からの固化の度合いに応じて、回収された繊維は半連続的又は本質的に不連続であり得る。特定の例示的実施形態では、本開示のメルトブロー繊維は、分子レベルで配向されていてもよい。繊維は、溶融物中の欠陥、形成されたフィラメントの交差、繊維の細径化に使用される乱流による過剰な剪断、又は形成プロセスで生じる他の事象によって中断され得る。これらは、概ね、半連続的であるか、又は繊維の絡み合い間の距離よりもはるかに長い長さを有することが分かっており、そのため個々の繊維を端から端までそのままの状態で繊維塊から除去できない。
【0019】
溶融紡糸では、不織布繊維は、フィラメントとして一連のオリフィスから押し出され、冷却及び固化して繊維を形成する。フィラメントを、移動する空気流が含まれ得る空気空間に通し、フィラメントを冷却し、細径化(つまり、延伸)ユニットを通過し、フィラメントを少なくとも部分的に延伸するのを支援する。溶融紡糸法で作られた繊維は「スパンボンド」することができ、それにより、一組の溶融紡糸繊維を含むウェブが繊維ウェブとして回収され、任意に、繊維を互いに融着させるための1つ以上の結合操作に供される。溶融紡糸繊維は概ね、メルトブロー繊維よりも直径が大きい。
【0020】
繊維は、ポリオレフィン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリウレタン、ポリブテン、ポリ乳酸、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、液晶ポリマー、ポリエチレン-co-ビニルアセテート、ポリアクリロニトリル、環状ポリオレフィン、又はこれらのコポリマー若しくはブレンドから選択されたポリマーから、複数の繊維の総重量、少なくとも35重量%の量で作ることができる。好適な繊維材料としては、エラストマーポリマーも挙げられる。
【0021】
(第1の部材)
第1の部材2は、多孔質材のシート状の部材である。第1の部材2は、極細の繊維群で構成されることで、複雑に絡み合った繊維間に空気を封じ込めることで、高い吸音性及び断熱性能を有する不織布部材であってもよい。第1の部材2として、例えば3M(登録商標)Thinsulate(登録商標)AcousticInsulation TFシリーズ、SFシリーズ(3M社製)等が用いられる。例えば、第1の部材2は、PPメルトブローン繊維、及びPET短繊維を混合して得られる部材である。その他、第1の部材2の繊維の材質として、例えば、段落0020に記載された繊維、及びフェルト、グラスウールなどが採用される。また、第1の部材2は、単体で吸音性、及び断熱性などの特徴を有する。
【0022】
(表皮部材)
表皮部材4,6は、不織布製のシート部材である。メルトブロー不織布、スパンボンド不織布などの材料が採用される。その他、表皮部材4,6の繊維の材質として、例えば、段落0020に記載された繊維を採用可能であり、特にPP、PET、セルロースなどが採用される。表皮部材4,6は、第1の部材2、及び第2の部材3に比して防水性、形状保持性が高く、第1の部材2及び第2の部材3を保護する機能を有する。表皮部材4,6は、第1の部材2及び第2の部材3とは異なり、引裂強度が高いという特徴を有している。
【0023】
次に、本実施形態に係る音響物品1の作用・効果について説明する。
【0024】
音響物品1は、多孔質材のシート状の第1の部材2と、第1の部材の厚さ方向における一方側の第1の主面に設けられた第1の表皮部材4と、多孔質材のシート状の第2の部材3と、第2の部材3の厚さ方向における他方側の第2の主面に設けられた第2の表皮部材6と、を備える。このような構成によれば、適用される場所や状況に適した構造となるように、第1の部材2と第2の部材3の組み合わせを調整することができる。従って、高嵩密度と積層構造による音響性能の周波数依存性を考慮した音響物品1を提供することができる。
【0025】
別の実施形態では、互いに異なるメリット有する第1の部材2と、第2の部材3とを組み合わせてもよく、この場合単一の部材の厚さ及びコストを増加させた場合に比して、厚さ及びコストを抑えた状態にて音響性能を向上させることができる。例えば、第2の部材3は、薄くても低中周波数の良好な音響性能を有するというメリットをもたせてもよい。第1の部材2は、嵩高く中高周波の音を効率的に吸音するというメリットをもたせてもよい。単一の部材の厚さを増すだけで本実施形態と同程度の音響性能を得ようとした場合、厚さ及びコストが要求以上に増加してしまう。また、第1の部材と第2の部材とは、平面方向における少なくとも一部において互いに固定された状態で、積層されている。そのため、所望の音響性能を得るための各部材の組み合わせや位置関係などを維持した状態にて、音響物品を流通させることができる。
【0026】
音響物品1は四層構造を有している。音響物品1は全体が多孔質材で構成されている場合のみならず、表皮部材4,6は多孔質材でなくともよい。音響物品1は、四層構造のうち、少なくとも第1の部材2、及び第2の部材3が多孔質材であればよい。
【0027】
本実施形態に係る音響物品1によれば幅広い周波数帯に対応した音響性能を得ることができる。また、本実施形態に係る音響物品1によれば、自動車向けに特化した音響性能を得ることができる。
【0028】
また、第1の部材2と第2の部材3の音響インピーダンス(部材が持つ特性)の違いによって幅広い周波数帯の性能を向上できる。単一の部材の厚みを増しただけでは、音を吸収しやすくなるが音響インピーダンスがそれほど変わらない場合がある。
【0029】
第2の部材3は、多孔質粒子を含む充填剤を有してよい。
【0030】
第1の部材2と第2の部材3とは、平面方向に平行な第1の方向D1における両端部において、互いに融着によって固定されてよい。この場合、テープなどで固定する場合に比して、強固に固定することができる。
【0031】
音響物品1は、厚さ方向に対向する一対の主面1a,1bを有し、一対の主面1a,1bには、それぞれ不織布製の表皮部材4,6が設けられていてよい。この場合、音響物品1を表皮部材4,6によって両側から保護することができる。
【0032】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0033】
例えば、図2(c)に示すように、音響物品1は、厚さ方向に対向する一対の主面1a,1bを有し、平面方向に平行で第1の方向D1と直交する第2の方向D2から見て、一方の主面が、他方の主面より長い。図2(c)に示す例では、主面1aが主面1bよりも長い。第2の方向から見たときの表皮部材4及び第1の部材2の寸法L1が、表皮部材6及び第2の部材3の寸法L0よりも長い。なお、図2(a)に示すように寸法L1の第1の部材2と寸法L0の第2の部材3を準備し、図2(b)に示すように、第1の部材2の両端部を第2の部材3の両端部に合わせる。すると、図2(b)に示すように、積層体10の状態においては、表皮部材4及び第1の部材2がたるんだ状態となっている。この積層体10の両端部を融着で固定すると、図2(c)に示す音響物品1が作製される。音響物品1は、表皮部材4及び第1の部材2が長い分、厚さ方向D3の外側に大きく膨らむような形状となる。このときの第2の方向D2から見た主面1aの長さは、寸法L1と略等しくなる。音響物品1の厚さH2は、図1(c)に示す厚さH1より厚くなる。以上より、厚い音響物品1を得ることができる。
【0034】
なお、主面1aと主面1bのどちらを厚くするかは特に限定されず、主面1bを主面1aよりも長くしてよい。この場合、積層体10の状態では、表皮部材6及び第2の部材3を表皮部材4及び第1の部材2よりも長くする。
【0035】
例えば、図3に示すように、第1の部材2と第2の部材3とは、平面方向に平行な第1の方向D1の一端部2a,3aにおいて、互いに固定され、他端部2b,3bにおいて、互いに離間可能である。図3(a)に示すように、一端部2a,3a側において、第1の部材2と第2の部材3とは互いにテープ部材9で固定されている。一方、第1の部材2の他端部2bと、第2の部材3の他端部3bとは、製品流通時においては固定されておらず離間可能である。そのため、図4(a)に示すような第1の部材2と第2の部材3が開かれた状態と、図4(b)に示すような第1の部材2と第2の部材3が積層された状態とを切替可能である。ここで、第1の部材2は、他端部2b側に固定用テープ部材8を有している。流通時にはこの固定用テープ部材8はライナーで粘着面が覆われている。一方、音響物品を取り付け対象箇所(自動車部品など)に取り付ける際には、図3(b)に示すように、ライナーを取り外し、第1の部材2の他端部2b側と第2の部材3の他端部3b側とが、固定用テープ部材8を介して固定される。
【0036】
以上のように、第1の部材2と第2の部材3とは、第1の方向D1の一端部2a,3aにおいて、互いに融着され、他端部2b,3bにおいて、互いに離間可能である。例えば、図1(c)に示す形態では、両端部を融着で固定することにより、音響物品1の厚さが薄くなっていた。これに対し、図4(b)に示す音響物品1は、取付対象箇所に取り付ける際に、厚さが薄くなることを抑制した状態にて取り付けることができる。
【0037】
また、第1の部材2と第2の部材3とは、第1の方向D1の一端部2a,3aにおいて、互いにテープ部材9で固定され、他端部2b,3bにおいて、互いに離間可能である。この場合、テープ部材9を用いることで容易に両部材2,3を固定することができる。また、テープ部材9を用いることで、一端部2a,3a側においても、音響物品1の厚さが薄くなることを抑制できる。
【0038】
また、図4(b)に示すように、一対の主面1a,1bには、それぞれ不織布製の表皮部材4,6が設けられている。この場合、固定後の音響物品1の厚さ方向D3の外側の主面1a,1bを保護することができる。
【0039】
また、第1の部材2と第2の部材3との間には、不織布製の表皮部材7が設けられている。この場合、第1の部材2と第2の部材3とを開いた状態にて、何れかの部材2,3(ここでは第2の部材3)を保護することができる。
【0040】
第1の部材2と第2の部材3とを一端部2a,3b側においてどのように固定するかは特に限定されない。例えば図4に示す構成を採用してもよい。図5(b)に示すように、一端部2a,3a側において、第1の部材2は、第2の部材3に対して融着部11にて固定されてよい。この場合、融着部11にて部材2,3同士を強固に固定することができる。なお、図5に示す音響物品1の他の構成については図3と同様である。
【0041】
第1の部材2と第2の部材3との固定方法は、融着やテープ部材に限定されない。例えば、図6に示すように、音響物品1は、第1の部材2と第2の部材3とを互いに固定するピン部材20を更に備えてよい。ピン部材20は、第1の部材2及び第2の部材3を厚さ方向D3に貫通する本体部21と、本体部21の両端部にそれぞれ形成された頭部22,23と、を有する。この場合、図6(a)の音響物品1は、ピン部材20で部分的に部材を固定するため、図1(c)の音響物品1のように全体的な厚さが薄くなることを抑制することができる。
【0042】
一対の主面1a,1bには、それぞれ不織布製の表皮部材4,6が設けられる。これに対し、頭部22,23は、表皮部材4,6よりも厚さ方向D3における外側に配置される。これにより、頭部22,23は、部材2,3よりも強度が高い表皮部材4,6を押圧することになる。従って、頭部22,23が繊維中にめり込んでしまうことを抑制し、図6(b)に示すように、表皮部材4,6との接触部分の周辺全体に対して、保持力を伝えることができる。
【0043】
本体部21は、厚さ方向D3へ延びる柱状の形状を有する。頭部22,23は、本体部21の両端部、または途中に本体部21から一定の角度範囲内(例えば45°~135°)で水平方向に延びる係止片として機能する。本体部21長さLGは、接合対象となる材料の総厚(ここでは各部材4,2,3,6の合計の厚さH0)以下である。また、頭部22,23の幅W、数、及び材料は表皮部材4,6の不織布を突き破らない条件に設定される。図6す示す例では、頭部22,23は、厚さ方向D3と直交する一の方向へ広がる一本の部材によって構成されるが、頭部22,23は複数方向へ広がる複数本の部材で構成されてもよい。頭部22,23の幅Wは、表皮部材4,6の不織布の繊維間隙間を貫通することなく係合できる程度の大きさに設定される。頭部22,23の形状は特に限定される、頭部22のように台形状であってもよく、頭部23のように棒状であってもよい。ピン部材20は、樹脂製であってよい。樹脂として、例えばナイロン、PETなどを採用してよい。
【0044】
[音響性能試験]
次に、図7図12を参照して、音響性能試験について説明する。まず、図7(a)(b)に示すような単一の材料としてのサンプル1~5を準備する。サンプル1,2,3が上述の第2の部材に該当し、サンプル4,5が上述の第1の部材に該当する。サンプル1,2,3には、多孔質シート状部材に充填剤として多孔質炭素を分散している。次に、図8(a)に示すようなサンプル1~5を用いた比較例1~5を準備した。比較例1~5に対して、残響室法吸音率の測定を行った。この測定は、JIS A1409「残響室法吸音率の測定方法」に従って試験した。日本音響エンジニアリング株式会社から入手可能な、残響室法吸音率測定システム(400 Hz-5 kHz)「AbLoss」を用いた。また、比較例1~5に対して、音響透過損失の測定を行った。この測定は、JIS A1441-1「音響インテンシティ法による建築物及び建築部材の空気音遮断性能の測定方法」に準拠して試験した。日本音響エンジニアリング株式会社から入手可能な、透過損失測定システム(400 Hz-5 kHz)「AbLoss」を用いた。測定結果を図9に示す。なお、音響性能試験における各比較例及び各実施例の音の入射面については、単層品については第1層の表皮部材側が入射面となる。また、積層品については図8の表におけるサンプル表記のうち、左側に記載されたサンプルが入射面となる。例えば、実施例10は「サンプル1+2」と記載されているが、左側に記載されたサンプル1が入射面となる。
【0045】
図8(b)に示すような第2の部材を二層重ねた実施例10,11について残響室法吸音率、及音響透過損失の測定を行った。測定結果を図10に示す。図8(c)に示すような第1の部材と第2の部材を重ねた実施例1~4、10について残響室法吸音率、及音響透過損失の測定を行った。測定結果を図11に示す。図8(d)に示すような一層の第1の部材と二層の第2の部材を重ねた実施例5、及び二層の第1の部材と一層の第2の部材を重ねた実施例6~9について残響室法吸音率、及び音響透過損失の測定を行った。測定結果を図12に示す。
【0046】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0047】
例えば、各シート部材の形状等は特に限定されるものではなく、適宜変形可能である。また、各層の数や順序等も適宜変更可能である。
【0048】
第1の部材と第2の部材の組み合わせは特に限定されない。例えば、組み合わせの一例として、「第1の部材:3M(登録商標)Thinsulate(登録商標) Acoustic Insulation(3M社製)、第2の部材:3M(登録商標)Flexile AcousticMaterial FABシリーズ(3M社製)」という組み合わせが例示されたが、「第1の部材:3M(登録商標)Flexile AcousticMaterial FABシリーズ(3M社製)、第2の部材:3M(登録商標)Flexile AcousticMaterial FABシリーズ(3M社製)」という組み合わせでもよく、「第1の部材:3M(登録商標)Flexile AcousticMaterial FABシリーズ(3M社製)、第2の部材:3M(登録商標)Thinsulate(登録商標)AcousticInsulation(3M社製)」という組み合わせでもよく、「第1の部材:3M(登録商標)Thinsulate(登録商標)AcousticInsulation(3M社製)、第2の部材:3M(登録商標)Thinsulate(登録商標)AcousticInsulation(3M社製)」という組み合わせでもよい。
【符号の説明】
【0049】
1…音響物品、2…第1の部材、3…第2の部材、4,6,7…表皮部材、9…テープ部材、20…ピン部材、21…本体部、22,23…頭部。

図1
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図12