(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143562
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】測定装置及び測定方法
(51)【国際特許分類】
G01B 5/20 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
G01B5/20 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056308
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001553
【氏名又は名称】アセンド弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】川▲崎▼ 一成
【テーマコード(参考)】
2F062
【Fターム(参考)】
2F062AA55
2F062BC62
2F062BC64
2F062CC22
2F062CC26
2F062CC27
2F062EE01
2F062EE62
2F062EE66
2F062GG18
2F062HH32
2F062JJ04
2F062LL01
2F062LL07
2F062MM06
(57)【要約】
【課題】費用及び時間を抑えつつ、簡易に対象物の直線性を測定することのできる測定装置及び測定方法を提供する。
【解決手段】測定装置(10)は、変位計(11)と、表示器(112)と、2つの接触端子(14A,14B)と、2つの固定機構(15A,15B)と、を備える。変位計(11)は、軸方向に移動可能なスピンドル(111)及びスピンドル(111)の先端に設けられる測定端子(111a)を含む。表示器(112)は、変位計(11)に固定され、スピンドル(111)の軸方向における変位を表示する。2つの接触端子(14A,14B)は、スピンドル(111)の軸方向に垂直な方向に並んで配置される。2つの固定機構(15A,15B)は、2つの接触端子(14A,14B)がそれぞれ配列方向に移動可能な解放状態と、2つの接触端子(14A,14B)がそれぞれ配列方向において固定された固定状態とを切り替え可能である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の表面の直線性を測定する測定装置であって、
軸方向に移動可能なスピンドル及び前記スピンドルの先端に設けられる測定端子を含む変位計と、
前記変位計に固定され、前記スピンドルの前記軸方向における変位を表示する表示器と、
前記軸方向に垂直な方向に並んで配置され、前記軸方向に延びる2つの接触端子と、
前記2つの接触端子の各々に対応する2つの固定機構であって、前記2つの接触端子がそれぞれ前記2つの接触端子の配列方向に移動可能な解放状態と、前記2つの接触端子がそれぞれ前記配列方向において固定された固定状態とを切り替え可能な前記2つの固定機構と、を備える、測定装置。
【請求項2】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記測定対象物は、管用テーパねじであり、
前記表面は、前記管用テーパねじのねじ谷底面である、測定装置。
【請求項3】
請求項1に記載の測定装置であって、
前記配列方向に延在し、前記2つの接触端子を収容する本体をさらに備え、
前記2つの固定機構の各々は、前記軸方向に沿って延びる軸部と、前記軸部の一方端に設けられる雄ねじ部と、前記軸部の他方端に設けられるつまみ部とを含み、
前記2つの接触端子の各々は、雌ねじ部を含み、
前記つまみ部の操作に伴う前記軸部の回転により、前記雄ねじ部が前記雌ねじ部にねじ込まれて前記接触端子が前記本体に対して固定された状態と、固定解除の状態とを切り替え可能である、測定装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の測定装置であって、
前記測定端子は、前記配列方向において、前記2つの接触端子の外側に位置する、測定装置。
【請求項5】
軸方向に移動可能なスピンドル及び前記スピンドルの先端に設けられる測定端子を含む変位計と、前記変位計に固定され、前記スピンドルの前記軸方向における変位を表示する表示器と、前記軸方向に垂直な方向に並んで配置され、前記軸方向に延びる2つの接触端子と、前記2つの接触端子の各々に対応し、前記2つの接触端子の各々を解放状態と固定状態とに切り替え可能な2つの固定機構と、を備える測定装置を用いて、測定対象物の表面の直線性を測定する、測定方法であって、
前記2つの接触端子の各々を解放状態とし、前記2つの接触端子の配列方向における位置を調整する、調整工程と、
前記2つの接触端子の各々を固定状態とし、前記2つの接触端子の前記配列方向における位置を固定する、固定工程と、
直線性を有する基準平面に前記測定端子及び前記2つの接触端子の先端を接触させ、前記表示器に表示された前記スピンドルの前記軸方向における変位を基準値として設定する、設定工程と、
前記測定対象物の前記表面に前記測定端子及び前記2つの接触端子の先端を接触させ、前記表示器に表示された前記スピンドルの前記軸方向における変位を読み取る、測定工程と、
前記測定工程で測定した値を前記基準値と比較し、前記測定対象物の前記表面が直線性を有するか否かを判定する、判定工程と、を備える、測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、測定装置及び測定方法に関し、より詳細には測定対象物の表面の直線性を測定する測定装置及び測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
油田や天然ガス田の採掘のため、油井管が使用される。油井管は、複数の鋼管を連結して形成される。鋼管の長さは例えば十数メートルであり、鋼管の端部にはねじ切加工が施されている。鋼管の連結は、端部にねじ切加工が施された管用ねじ継手同士をねじ締めすることによって行われる。ねじ切加工とは、例えばNC旋盤を用いた切削加工である。以下、管用ねじ継手のうち、ねじ切加工の開始位置の近傍をRun-in部とも言い、ねじ切加工の終了位置の近傍をRun-out部とも言う。
【0003】
ねじ切加工において、例えば加工プログラムが適切でなかったりすると、Run-in部及び/又はRun-out部においてねじ谷底面の直線性が損なわれることがある。ねじ谷底面の直線性とは、ねじ継手の縦断面視でのねじ谷底面の直線性を意味する。当該直線性が損なわれると、管用ねじ継手の締結の際に異常干渉や不当接触などが生じ、焼き付きなどの締結不良を引き起こす恐れがある。
【0004】
ねじ継手の健全性を確認するため、測定装置を用いてねじ谷底面の直線性を測定する技術が知られている。例えば、特許文献1には、ねじ谷底面に対応して配列された複数のプローブを備えたねじ部測定装置が開示されている。複数のプローブのうち少なくとも一つは、各プローブの配列方向(X軸方向)に移動可能である。特許文献1の測定装置を用いたねじ谷底面の直線性の測定は、以下の手順で行われる。各プローブがねじ谷底面に押し当てられる。そして、各プローブの先端の位置に関する信号が信号処理装置に送られる。これらの信号から計算したねじ谷底面の直線性に関する計算結果が表示部に表示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ねじ継手のねじ谷底面の直線性を測定する装置の一つとして、Run-outゲージが知られている。Run-outゲージは、典型的には、軸方向に移動可能なスピンドルを含む変位計と、スピンドルの軸方向に垂直な方向に並んで配置される2つの接触端子と、を備える。2つの接触端子の配列方向において、スピンドルの先端に設けられた測定端子及び2つの接触端子の位置は固定されている。Run-outゲージを用いた直線性の測定の際には、測定端子及び2つの接触端子の先端をねじ谷底面に接触させる。
【0007】
ここで、米国石油協会(API)のSpecification 5B又は5CT規格に準拠したねじ継手は全てインチベースのピッチを有している。要するに、当該規格のねじ継手は、1インチ(25.4mm)の中に整数個のねじ山が含まれるように規定されている。そのため、Run-outゲージの各端子間の幅(1つの測定端子及び2つの接触端子の配列方向における寸法)は、1インチの倍数に設定されている。このようなRun-outゲージにおいて、1つの端子の位置を1つのねじ谷底面に合わせると、他の端子の位置も自然に他のねじ谷底面と一致する。そのため、各端子間の幅が1インチの倍数のRun-outゲージを用いれば、当該規格の全てのねじ継手の直線性を測定することができる。
【0008】
しかしながら、近年、ウェッジねじ等の新しいねじ継手の開発が盛んに行われている。新しく開発されているねじ継手の中には、インチベースのピッチを有していないもの、例えばSI単位をベースとするものもある。インチベースのピッチを有していないねじ継手の直線性をRun-outゲージで測定しようとすると、各端子間の幅とねじ継手のピッチとが合ってないため、全ての端子をねじ谷底面に接触させることができない場合がある。この場合、ねじ継手のピッチに合わせて個別にRun-outゲージを設計及び製作する必要があり、時間と費用がかかる。
【0009】
特許文献1に記載のプローブは、各プローブの配列方向に微調整の範囲でしか動くことができないと考えられる。そのため、特許文献1の測定装置を用いても、上述した新しいねじ継手の直線性を測定できない場合がある。また、特許文献1の測定装置では、測定対象物に対して各プローブを正確に配置する必要がある上、電気信号の処理のためにコンピュータ等の信号処理装置が必要となる。そのため、装置が複雑かつ大がかりであるため、装置のハンドリング性が低く、簡便かつ迅速に測定を行うのは難しい。測定対象物の直線性を極力簡易に測定することが求められている。
【0010】
本開示の目的は、費用及び時間を抑えつつ、簡易に対象物の直線性を測定することのできる測定装置及び測定方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本開示に係る測定装置は、測定対象物の表面の直線性を測定する。測定装置は、変位計と、表示器と、2つの接触端子と、2つの固定機構と、を備える。変位計は、軸方向に移動可能なスピンドル及びスピンドルの先端に設けられる測定端子を含む。表示器は、変位計に固定され、スピンドルの軸方向における変位を表示する。2つの接触端子は、スピンドルの軸方向に垂直な方向に並んで配置され、軸方向に延びる。2つの固定機構は、2つの接触端子の各々に対応する。2つの固定機構は、2つの接触端子がそれぞれ2つの接触端子の配列方向に移動可能な解放状態と、2つの接触端子がそれぞれ配列方向において固定された固定状態とを切り替え可能である。
【0012】
本開示に係る測定方法は、測定装置を用いて、測定対象物の表面の直線性を測定する。測定装置は、変位計と、表示器と、2つの接触端子と、2つの固定機構と、を備える。変位計は、軸方向に移動可能なスピンドル及びスピンドルの先端に設けられる測定端子を含む。表示器は、変位計に固定され、スピンドルの軸方向における変位を表示する。2つの接触端子は、スピンドルの軸方向に垂直な方向に並んで配置され、軸方向に延びる。2つの固定機構は、2つの接触端子の各々に対応する。2つの固定機構は、2つの接触端子の各々を解放状態と固定状態とに切り替え可能である。測定方法は、調整工程と、固定工程と、設定工程と、測定工程と、判定工程と、を備える。調整工程では、2つの接触端子の各々を解放状態とし、2つの接触端子の配列方向における位置を調整する。固定工程では、2つの接触端子の各々を固定状態とし、2つの接触端子の配列方向における位置を固定する。設定工程では、直線性を有する基準平面に測定端子及び2つの接触端子の先端を接触させ、表示器に表示されたスピンドルの軸方向における変位を基準値として設定する。測定工程では、測定対象物の表面に測定端子及び2つの接触端子の先端を接触させ、表示器に表示されたスピンドルの軸方向における変位を読み取る。判定工程では、測定工程で測定した値を基準値と比較し、測定対象物の表面が直線性を有するか否かを判定する。
【発明の効果】
【0013】
本開示に係る測定装置及び測定方法によれば、費用及び時間を抑えつつ、簡易に対象物の直線性を測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、実施形態に係る測定装置の側面図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る測定装置の上面図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る測定装置の下面図である。
【
図4】
図4は、測定装置を配列方向に垂直に切断した断面図である。
【
図5】
図5は、測定装置を配列方向に垂直に切断した断面図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る測定方法を示すフロー図である。
【
図7】
図7は、調整工程前の測定装置の様子を示す模式図である。
【
図8】
図8は、調整工程後の測定装置の様子を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施形態に係る測定装置は、測定対象物の表面の直線性を測定する。測定装置は、変位計と、表示器と、2つの接触端子と、2つの固定機構と、を備える。変位計は、軸方向に移動可能なスピンドル及びスピンドルの先端に設けられる測定端子を含む。表示器は、変位計に固定され、スピンドルの軸方向における変位を表示する。2つの接触端子は、スピンドルの軸方向に垂直な方向に並んで配置され、軸方向に延びる。2つの固定機構は、2つの接触端子の各々に対応する。2つの固定機構は、2つの接触端子がそれぞれ2つの接触端子の配列方向に移動可能な解放状態と、2つの接触端子がそれぞれ配列方向において固定された固定状態とを切り替え可能である(第1の構成)。
【0016】
第1の構成の測定装置において、2つの固定機構は、2つの接触端子の解放状態及び固定状態を切り替え可能である。解放状態において、2つの接触端子は配列方向に移動可能である。そのため、測定対象物の表面に各端子が接触できるように、2つの接触端子の配列方向における位置を調整することができる。したがって、第1の構成の測定装置を用いれば、任意の表面を有する測定対象物に対して直線性の測定を行うことができる。要するに、測定対象物に合わせて個別に測定装置を設計及び製作する必要がない。さらに、第1の構成の測定装置において電気信号の処理のためにコンピュータ等の信号処理装置を用いる必要はない。以上より、第1の構成の測定装置によれば、費用及び時間を抑えつつ、簡易に対象物の直線性を測定することができる。
【0017】
第1の構成の測定装置において、好ましくは、測定対象物は、管用テーパねじである。表面は、管用テーパねじのねじ谷底面である(第2の構成)。第2の構成の測定装置の測定対象物は管用テーパねじである。この場合、ねじ谷底面に測定端子及び2つの接触端子を接触させることにより、管用テーパねじのねじ谷底面の直線性を測定することができる。
【0018】
第1又は第2の構成の測定装置は、下記の構成を備えてもよい。測定装置は、本体をさらに備える。本体は、配列方向に延在し、2つの接触端子を収容する。2つの固定機構の各々は、スピンドルの軸方向に沿って延びる軸部と、軸部の一方端に設けられる雄ねじ部と、軸部の他方端に設けられるつまみ部とを含む。2つの接触端子の各々は、雌ねじ部を含む。つまみ部の操作に伴う軸部の回転により、雄ねじ部が雌ねじ部にねじ込まれて接触端子が本体に対して固定された状態と、固定解除の状態とを切り替え可能である(第3の構成)。第3の構成の測定装置では、固定機構のつまみ部を操作することにより、固定機構の軸部が回転する。第3の構成の測定装置によれば、つまみ部の簡単な操作により、接触端子が本体に対して固定された状態と、固定解除の状態とを切り替えることができる。
【0019】
第1の構成から第3の構成のいずれか1つの測定装置において、好ましくは、測定端子は、配列方向において、2つの接触端子の外側に位置する(第4の構成)。この場合、測定端子が2つの接触端子の間に位置する場合と比較して、測定対象物の表面が直線性を有していなかったときの測定端子の変位、すなわちスピンドルの軸方向の変位が大きくなる。そのため、第4の構成の測定装置によれば、直線性の検出感度を向上させることができる。
【0020】
実施形態に係る測定方法は、測定装置を用いて、測定対象物の表面の直線性を測定する。測定装置は、変位計と、表示器と、2つの接触端子と、2つの固定機構と、を備える。変位計は、軸方向に移動可能なスピンドル及びスピンドルの先端に設けられる測定端子を含む。表示器は、変位計に固定され、スピンドルの軸方向における変位を表示する。2つの接触端子は、スピンドルの軸方向に垂直な方向に並んで配置され、軸方向に延びる。2つの固定機構は、2つの接触端子の各々に対応する。2つの固定機構は、2つの接触端子の各々を解放状態と固定状態とに切り替え可能である。測定方法は、調整工程と、固定工程と、設定工程と、測定工程と、判定工程と、を備える。調整工程では、2つの接触端子の各々を解放状態とし、2つの接触端子の配列方向における位置を調整する。固定工程では、2つの接触端子の各々を固定状態とし、2つの接触端子の配列方向における位置を固定する。設定工程では、直線性を有する基準平面に測定端子及び2つの接触端子の先端を接触させ、表示器に表示されたスピンドルの軸方向における変位を基準値として設定する。測定工程では、測定対象物の表面に測定端子及び2つの接触端子の先端を接触させ、表示器に表示されたスピンドルの軸方向における変位を読み取る。判定工程では、測定工程で測定した値を基準値と比較し、測定対象物の表面が直線性を有するか否かを判定する(第5の構成)。
【0021】
第5の構成の測定方法では、調整工程において、2つの接触端子の各々を解放状態とし、2つの接触端子の配列方向における位置を調整する。そのため、測定対象物の表面に各端子が接触できるように、2つの接触端子の配列方向における位置を調整することができる。つまり、任意の表面を有する測定対象物に対して、測定工程で直線性の測定を行うことができる。要するに、測定対象物に合わせて個別に測定装置を設計及び製作する必要がない。さらに、第5の構成の測定方法において、電気信号の処理のためにコンピュータ等の信号処理装置を用いる必要はない。以上より、第5の構成の測定方法によれば、費用及び時間を抑えつつ、簡易に対象物の直線性を測定することができる。
【0022】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。各図において同一又は相当の構成については同一符号を付し、同じ説明を繰り返さない。
【0023】
〔測定装置〕
図1は、本実施形態に係る測定装置10の側面図である。測定装置10は、測定対象物の表面の直線性を測定するのに用いられる。特に限定されるものではないが、測定対象物は例えば管用テーパねじである。この場合、測定対象物の表面は、管用テーパねじのねじ谷底面である。
図1を参照して、測定装置10は、変位計11と、表示器112と、本体12と、を備える。
【0024】
変位計11は、スピンドル111及び測定端子111aを含む。スピンドル111は、棒状であり、軸方向に移動可能である。スピンドル111の先端には、測定端子111aが設けられる。測定端子111aは、スピンドル111のうち、測定装置10を用いた測定の際に測定対象物の表面と接触する部分である。表示器112は、変位計11のうちスピンドル111の測定端子111aと反対側に固定され、スピンドル111の軸方向における変位を表示する。
【0025】
本実施形態の例では、変位計11はダイヤルゲージである。表示器112は、円板状の目盛板112a及び指針112bを含む。スピンドル111の軸方向における移動は、例えば図示しない歯車によって回転運動に変換され、これに伴い指針112bが目盛板112aの周方向に移動する。目盛板112a上における指針112bの位置を読み取ることにより、スピンドル111の軸方向における変位を測定することができる。ただし、本実施形態の例では、表示器112はアナログ式であるが、表示器112はデジタル式であってもよい。表示器112がデジタル式の場合、スピンドル111の軸方向における変位は、例えばエンコーダーで読み取られる。表示器112には、エンコーダーで読み取った値が表示される。
【0026】
本体12は、スピンドル111の軸方向に垂直な方向に延在する。本体12は、スピンドル111の軸方向に垂直な方向において、スピンドル111から離れた位置に配置される。本体12は、アタッチメント13を介して変位計11に固定される。
【0027】
本体12には、2つの接触端子14A,14Bが収容されている。本実施形態の例では、接触端子14A,14Bは、スピンドル111の軸方向に垂直な方向において、スピンドル111に近い方からこの順番に並んで配置される。つまり、変位計11は、接触端子14A,14Bが並ぶ方向において、接触端子14A,14Bの外側に位置する。以下、接触端子14A,14Bを特に区別する必要がない場合は、接触端子14A,14Bを接触端子14と総称する。
【0028】
以下、本明細書において、スピンドル111の軸方向を単に「軸方向」と言い、接触端子14A,14Bが並ぶ方向を「配列方向」と言う。また、軸方向及び配列方向に垂直な方向を「幅方向」と言う。さらに、軸方向のうち、スピンドル111の測定端子111aが設けられる方向を下、その反対方向を上と言う場合がある。
【0029】
図2は、本実施形態に係る測定装置10の上面図である。
図3は、本実施形態に係る測定装置10の下面図である。ただし、
図2及び
図3において、変位計11の図示は省略されている。
図4は、測定装置10を配列方向に垂直に切断した断面図である。
図4には、配列方向において接触端子14を含む位置で測定装置10を切断した断面が示される。
【0030】
図1~
図4を参照して、本体12は、概ね直方体状を有する。本体12は、天板121と、底板122と、天板121と底板122とを接続する側板123と、を含む。天板121、底板122及び側板123により、内部空間Sが形成される。天板121の幅方向中心には、配列方向に延びる開口部121aが形成されている。同様に、底板122の幅方向中心には、配列方向に延びる開口部122aが形成されている。開口部121aの配列方向における寸法は、典型的には開口部122aの配列方向における寸法と同じである。
【0031】
接触端子14は、軸部141と、軸部141の先端(下端)に設けられるコンタクトポイント142と、を含む。軸部141は、スピンドル111の軸と実質的に平行に延びる。軸部141の軸方向に垂直な断面の外形は、例えば略矩形状である。軸部141と側板123との間には、隙間が形成されている。後述するように、接触端子14は、解放状態において配列方向に移動可能である。軸部141と側板123との間の隙間は、内部空間S内での接触端子14の配列方向における移動を妨げないように適宜設定される。
【0032】
コンタクトポイント142は、接触端子14のうち、測定装置10を用いた測定の際に測定対象物の表面と接触させる部分である。コンタクトポイント142の先端(下端)の形状は、特に限定されない。本実施形態の例では、コンタクトポイント142は、配列方向に垂直な断面視で、下に凸な略三角形状を有する。要するに、コンタクトポイント142の幅は、下端に近づくにつれて小さくなる。この場合、測定対象物が管用テーパねじであるとき、雄ねじ(ピン)のねじ谷底面及び雌ねじ(ボックス)のねじ谷底面の両方の直線性を測定することができる。ただし、コンタクトポイント142は、配列方向に垂直な断面視で略矩形状であってもよい。
【0033】
測定対象物が管用テーパねじの場合、管用テーパねじの縦断面視で、ねじ谷底面は離間している。ねじ谷底面にコンタクトポイント142を接触させやすくするため、コンタクトポイント142の配列方向における寸法は、接触端子14が十分な剛性を有する範囲で極力小さいことが好ましい。また、コンタクトポイント142の配列方向における寸法が小さいと、測定対象の管用テーパねじのねじ谷底面が狭い場合であっても、直線性を容易に測定することができる。
【0034】
接触端子14は、底板122の開口部122aを挿通する。接触端子14のうち軸部141の一部は内部空間S内に位置し、軸部141の残りの部分及びコンタクトポイント142は内部空間S外(底板122の上面よりも下方)に位置する。
【0035】
軸部141には軸方向に延びる穴141aが形成されている。穴141aは、軸部141の上面に開口する。穴141aの軸方向に垂直な断面形状は、例えば円形である。穴141aの内周面には、雌ねじ部141bが設けられる。
【0036】
測定装置10は、2つの固定機構15A,15Bをさらに含む。固定機構15A,15Bは、それぞれ接触端子14A,14Bに対応する。固定機構15Aは、接触端子14Aが配列方向に移動可能な解放状態と、接触端子14Aがそれぞれ配列方向において固定された固定状態とを切り替え可能である。同様に、固定機構15Bは、接触端子14Bの解放状態と固定状態とを切り替え可能である。以下、固定機構15A,15Bを特に区別する必要がない場合は、固定機構15A,15Bを固定機構15と総称する。
【0037】
固定機構15は、軸方向に沿って延びる軸部151と、軸部151の一方の端(上端)に設けられるつまみ部152とを含む。固定機構15の軸部151は、軸方向に垂直な断面視で、接触端子14の穴141aと実質的に同じ形状を有する。軸部151の先端(下端)の外周面には、雄ねじ部151aが設けられる。雄ねじ部151aは、軸部141の雌ねじ部141bに対応する。要するに、雄ねじ部151aは、雌ねじ部141bと噛み合うように構成される。
【0038】
つまみ部152は、略円柱形状を有する。つまみ部152は、軸部151と一体で回転可能である。つまり、測定者がつまみ部152を回転操作することにより、つまみ部152と共に軸部151(雄ねじ部151a)が回転する。この回転により、接触端子14及び固定機構15は軸方向に相対的に移動する。これにより、固定機構15は、接触端子14を解放状態と固定状態とに切り替えることができる。以下、接触端子14の解放状態及び固定状態について詳しく説明する。
【0039】
図1~
図4には、接触端子14が固定状態のときの測定装置10が示される。接触端子14の固定状態とは、雄ねじ部151aが雌ねじ部141bに螺合締結され、接触端子14が本体12の天板121に対して固定された状態を意味する。接触端子14が固定状態のとき、つまみ部152の下面は天板121の上面と接触するとともに、接触端子14の上面は天板121の下面と接触する。要するに、天板121がつまみ部152及び接触端子14に挟み込まれる。
【0040】
図5は、測定装置10を配列方向に垂直に切断した断面図である。
図5には、配列方向において接触端子14を含む位置で測定装置10を切断した断面が示される。
図5には、接触端子14が開放状態のときの測定装置10が示される。接触端子14の解放状態とは、雄ねじ部151aと雌ねじ部141bとの螺合締結が緩まり、接触端子14の本体12に対する固定が解除された状態を意味する。接触端子14が解放状態のとき、つまみ部152の下面が天板121の上面と離間するか、又は接触端子14の上面が天板121の下面と離間する。ただし、天板121の上面に対するつまみ部152の下面の離間と天板121の下面に対する接触端子14の上面の離間とは、同時に生じてもよい。つまみ部152の下面が天板121の上面と離間するとき、固定機構15は接触端子14が固定状態のときよりも上方に移動される。接触端子14の上面が天板121の下面と離間するとき、接触端子14が固定状態のときよりも下方に移動される。換言すれば、接触端子14が解放状態のとき、つまみ部152の下面と接触端子14の上面との間の距離が天板121の厚みよりも大きくなる。上述した通り、接触端子14が解放状態のとき、接触端子14は内部空間S内を配列方向に移動することができる。
【0041】
〔測定方法〕
本実施形態に係る測定方法は、測定装置10を用いて、測定対象物の表面の直線性を測定する測定方法である。
図6は、本実施形態に係る測定方法を示すフロー図である。
図6を参照して、本実施形態の測定方法は、調整工程(#5)と、固定工程(#10)と、設定工程(#15)と、測定工程(#20)と、判定工程(#25)と、を備える。
【0042】
以下では、一例として測定対象物が管用テーパねじの場合の直線性の測定方法を説明する。測定対象物が管用テーパねじの場合、ピンとボックスそれぞれのRun-in部及びRun-out部(計4箇所)について直線性の測定を行う。
【0043】
調整工程(#5)では、まず、接触端子14を解放状態とする。具体的には、固定機構15のつまみ部152を操作して、つまみ部152及び軸部151を接触端子14に対して回転させる。これにより、雄ねじ部151aと雌ねじ部141bとの螺合締結が緩まる。
【0044】
接触端子14A,14Bの各々を解放状態とした後、接触端子14A,14Bそれぞれの配列方向における位置を調整する。接触端子14A,14Bの位置は、測定端子111a及び接触端子14A,14Bがいずれも測定対象物の表面(管用テーパねじのねじ谷底面)と接触するように調整される。
【0045】
接触端子14A,14Bそれぞれの配列方向における位置の調整方法は、特に限定されない。実際に測定対象の管用テーパねじのねじ谷底面と接触端子14A,14Bの位置を比較しながら調整を行ってもよい。また、測定前に管用テーパねじのピッチが分かっている場合は、測定端子111aと接触端子14Aとの間の距離及び接触端子14Aと接触端子14Bとの間の距離がそのピッチに合うように調整してもよい。
【0046】
図7は、調整工程(#5)前の測定装置10の様子を示す模式図である。
図8は、調整工程(#5)後の測定装置10の様子を示す模式図である。
図7及び
図8には、実際に測定対象の管用テーパねじ20のねじ谷底面21と接触端子14A,14Bの位置を比較しながら調整を行った例が示される。
【0047】
図7に示す例では、接触端子14A,14Bの位置調整前、測定端子111aと接触端子14Aとの間の距離及び接触端子14Aと接触端子14Bとの間の距離は、管用テーパねじ20のピッチと合っていない。そのため、測定端子111aの位置をねじ谷底面21に合わせたとき、接触端子14A,14Bの位置はねじ谷底面21からずれてしまう。そこで、
図8に示すように、接触端子14A,14Bの配列方向における位置を調整し、接触端子14A,14Bの位置をねじ谷底面21に合わせる。
【0048】
固定工程(#10)では、接触端子14を固定状態とする。具体的には、固定機構15のつまみ部152を操作して、つまみ部152及び軸部151を接触端子14に対して回転させる。つまみ部152及び軸部151を回転させる向きは、調整工程(#5)で回転させた向きとは逆向きである。これにより、雄ねじ部151aと雌ねじ部141bとが螺合締結される。このように、接触端子14A,14Bの各々を固定状態とし、接触端子14A,14Bの配列方向における位置を固定する。
【0049】
設定工程(#15)では、基準平面にスピンドル111の先端に設けられた測定端子111a及び接触端子14A,14Bのコンタクトポイント142を接触させる。基準平面とは、直線性を有することが予め分かっている平面である。そして、基準平面に各端子を接触させた状態で表示器112に表示されたスピンドル111の軸方向における変位を基準値として設定する。本実施形態の例のように、表示器112がアナログ式の場合には、この状態での目盛を0に合わせることにより、基準値を0に設定してもよい。
【0050】
測定工程(#20)では、測定対象物の表面(管用テーパねじ20のねじ谷底面21)にスピンドル111の測定端子111a及び接触端子14A,14Bのコンタクトポイント142を接触させる。そして、ねじ谷底面21に各端子を接触させた状態で表示器112に表示されたスピンドル111の軸方向における変位を読み取る。
【0051】
測定工程(#20)では、スピンドル111の測定端子111aを管用テーパねじ20のRun-in部又はRun-out部に接触させる。ピンのRun-in部について測定する場合、ピンの雄ねじ部のうち最もピン先端側のねじ谷底面21に測定端子111aを接触させる。ピンのRun-out部について測定する場合、ピン先端から所定の軸方向距離にあるピンの雄ねじ部のねじ谷底面21に測定端子111aを接触させる。ピン先端から所定の軸方向距離にあるねじ谷底面21とは、ボックスの雌ねじと噛み合うピンの雄ねじ部のねじ谷底面21のうち、ピン先端から最も離れたねじ谷底面21を意味する。
【0052】
ボックスのRun-in部について測定する場合、ボックスの雌ねじ部のうち最もボックス端部側のねじ谷底面21に測定端子111aを接触させる。ボックスのRun-out部について測定する場合、ボックス端部から所定の軸方向距離にあるボックスの雌ねじ部のねじ谷底面21に測定端子111aを接触させる。ボックス端部から所定の軸方向距離にあるねじ谷底面21とは、ピンの雄ねじと噛み合うボックスの雌ねじ部のねじ谷底面21のうち、ボックス端部から最も離れたねじ谷底面21を意味する。
【0053】
判定工程(#25)では、測定工程(#20)で測定した値を基準値と比較し、測定対象物の表面が直線性を有するか否かを判定する。直線性を有するか否かの条件は、特に限定されない。測定対象物が管用テーパねじ20の場合、例えば、スピンドル111の軸方向における変位が、ピンとボックスのねじ部同士の干渉が増加する方向に所定の閾値以上であった場合には不合格と判定し、そうでない場合には合格と判定してもよい。
【0054】
〔効果〕
本実施形態に係る測定装置10を用いた測定方法では、調整工程(#5)において、接触端子14A,14Bの各々を解放状態とし、接触端子14A,14Bの配列方向における位置を調整する。そのため、測定対象物の表面に各端子が接触できるように、接触端子14A,14Bの配列方向における位置を調整することができる。つまり、任意の表面を有する測定対象物に対して、測定工程(#20)で直線性の測定を行うことができる。要するに、測定対象物に合わせて個別に測定装置を設計及び製作する必要がない。さらに、本実施形態に係る測定方法において、電気信号の処理のためにコンピュータ等の信号処理装置を用いる必要はない。以上より、本実施形態に係る測定装置10及び測定方法によれば、費用及び時間を抑えつつ、簡易に対象物の直線性を測定することができる。
【0055】
本実施形態に係る測定装置10では、固定機構15のつまみ部152を操作することにより、固定機構15の軸部151が回転する。本実施形態に係る測定装置10によれば、つまみ部152の簡単な操作により、接触端子14が本体12に対して固定された状態と、固定解除の状態とを切り替えることができる。
【0056】
本実施形態に係る測定装置10の測定端子111aは、配列方向において、接触端子14A,14Bの外側に位置する。この場合、測定端子111aが接触端子14A,14Bの間に位置する場合と比較して、測定対象物の表面が直線性を有していなかったときの測定端子111aの変位、すなわちスピンドル111の軸方向の変位が大きくなる。そのため、本実施形態に係る測定装置10によれば、直線性の検出感度を向上させることができる。
【0057】
以上、本開示の実施の形態を説明した。しかしながら、上述した実施の形態は本開示を実施するための例示に過ぎない。したがって、本開示は上述した実施の形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で上述した実施の形態を適宜変更して実施することができる。
【符号の説明】
【0058】
10:測定装置
11:変位計
111:スピンドル
111a:測定端子
112:表示器
12:本体
14,14A,14B:接触端子
141b:雌ねじ部
15,15A,15B:固定機構
151:軸部
151a:雄ねじ部
152:つまみ部
20:管用テーパねじ
21:ねじ谷底面