(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143567
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】チェーン及びリンク部材
(51)【国際特許分類】
F16G 13/12 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
F16G13/12 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056313
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000003355
【氏名又は名称】株式会社椿本チエイン
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】神尾 竜矢
(57)【要約】
【課題】ローラ部とスプロケットの噛合溝との噛み合い精度を向上させること。
【解決手段】チェーンは、互いに連結される複数のリンク部材20A,20Bを有している。リンク部材は、内部空間31を有し、外周面の一部が球面であるローラ部30と、球面部42を有する連結部40と、ローラ部30及び連結部40を接続する接続部50とを有している。ローラ部30は、接続部50よりも外径が大きい。連結部40は内部空間31に収容された状態で相対回転が可能である。連結部40が相対回転するときには、開口部33に接続部50が配置されている。ローラ部30の内周面は、連結部40が相対回転をするときに球面部42と摺接する面であり、内部空間31に収容された連結部40を囲むように配置された連続摺接面S10を有している。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間を有し、外周面の一部が球面であるローラ部と、外周面の一部が球面である連結部と、前記ローラ部及び前記連結部を接続する接続部とを有して互いに連結される複数のリンク部材を備え、前記ローラ部がスプロケットの噛合溝に噛み合うチェーンであって、
前記ローラ部は、前記接続部が接続されている部位と反対側に位置する部位に、当該ローラ部の内部空間に連通するとともに前記接続部よりも外径が大きい開口部を有し、
前記連結部は、隣り合う前記リンク部材の前記開口部に前記接続部が配置されるとともに当該リンク部材の前記内部空間に収容された状態で当該リンク部材に対する相対回転が可能であり、
前記ローラ部の内周面は、前記連結部が前記相対回転をするときに前記連結部の前記球面と摺接する面であって前記内部空間に収容された前記連結部の前記球面を囲むように配置された摺接面を含む、
チェーン。
【請求項2】
前記摺接面の曲率中心は、前記連結部が前記相対回転をするときの中心と一致する請求項1に記載のチェーン。
【請求項3】
前記摺接面は、第1収容球面及び第2収容球面を含み、
前記第1収容球面及び前記第2収容球面は、前記ローラ部の前記球面の曲率中心を挟むように配置されている請求項2に記載のチェーン。
【請求項4】
前記摺接面は、前記第1収容球面と前記第2収容球面とを接続する第3収容球面をさらに含む請求項3に記載のチェーン。
【請求項5】
前記開口部を画定する面は、前記ローラ部の前記内周面から前記外周面に向かうにつれて間隔が増大するように構成されたテーパ面である請求項1に記載のチェーン。
【請求項6】
前記開口部を第1開口部とするとき、
前記ローラ部は、前記第1開口部に連通されるとともに、隣り合う前記リンク部材の前記連結部を前記内部空間に向けて移動させるときに、隣り合う前記リンク部材の前記連結部及び前記接続部が通過する第2開口部をさらに備える請求項1~請求項5のいずれか一項に記載のチェーン。
【請求項7】
前記ローラ部は、隣り合う前記リンク部材の前記連結部の外周面と接触することにより前記内部空間からの前記連結部の脱落を防止する脱落防止部を備える請求項1に記載のチェーン。
【請求項8】
前記ローラ部には、隣り合う前記リンク部材の前記連結部を前記第2開口部に通過させつつ前記内部空間に向けて移動させるときの移動方向に当該連結部を案内する凸部が設けられており、
前記連結部の前記外周面には、前記凸部と嵌合可能な凹部が設けられており、
前記凹部及び前記凸部は、
前記連結部が前記ローラ部に対して前記移動方向に移動して前記第2開口部を通過するときには、前記凹部と前記凸部とが嵌合され、前記連結部が前記内部空間に収容された状態では、前記凹部と前記凸部との嵌合が解除されるように構成されている請求項6に記載のチェーン。
【請求項9】
内部空間を有し、外周面の一部が球面であるローラ部と、外周面の一部が球面である連結部と、前記ローラ部及び前記連結部を接続する接続部とを備え、互いに連結されることにより前記ローラ部がスプロケットの噛合溝に噛み合うチェーンを構成するリンク部材であって、
前記ローラ部は、前記接続部が接続されている部位と反対側に位置する部位に、当該ローラ部の内部空間に連通するとともに前記接続部よりも外径が大きい開口部を有する、
リンク部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーン、及びチェーンを構成するリンク部材に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、中空状のボールと、ボールと一体であり且つ先端に鍔を有する連結棒とを有するリンク部材が複数連結されたボールチェーンが開示されている。連結棒は、隣り合うボールの開口部を通じてボールの内部に回動自在に挿入されている。このボールチェーンでは、ボールの内部で鍔が開口部の周縁に接触するために、連結棒が開口部から抜け出ないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記ボールチェーンでは、鍔がボールの内部で変位することにより、開口部からの連結棒の突出量が変化する。このため、隣り合うボールのピッチが変化してボールとスプロケットの噛合溝との噛み合い精度が悪化しやすい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するためのチェーンの各態様を記載する。
[態様1]
内部空間を有し、外周面の一部が球面であるローラ部と、外周面の一部が球面である連結部と、前記ローラ部及び前記連結部を接続する接続部とを有して互いに連結される複数のリンク部材を備え、前記ローラ部がスプロケットの噛合溝に噛み合うチェーンであって、
前記ローラ部は、前記接続部が接続されている部位と反対側に位置する部位に、当該ローラ部の内部空間に連通するとともに前記接続部よりも外径が大きい開口部を有し、
前記連結部は、隣り合う前記リンク部材の前記開口部に前記接続部が配置されるとともに当該リンク部材の前記内部空間に収容された状態で当該リンク部材に対する相対回転が可能であり、
前記ローラ部の内周面は、前記連結部が前記相対回転をするときに前記連結部の前記球面と摺接する面であって前記内部空間に収容された前記連結部の前記球面を囲むように配置された摺接面を含む、
チェーン。
【0006】
この構成によれば、内部空間において連結部が相対回転し、その回転軸が傾動することにより、開口部における接続部の位置が変化する。その結果、チェーンは、複数のスプロケットの配置態様に応じて屈曲することが可能になる。一方で、連結部の球面が摺接面に押し付けられるため、連結部における相対回転以外の変位は生じにくい。したがって、隣り合うローラ部のピッチが変化しにくい。その結果、ローラ部とスプロケットの噛合溝との噛み合い精度が向上する。
【0007】
[態様2]
前記摺接面の曲率中心は、前記連結部が前記相対回転をするときの中心と一致する[態様1]に記載のチェーン。
【0008】
この構成によれば、連結部の球面が摺接面と面接触するため、両面が点接触する構成や線接触する構成と比較して、連結部が相対回転するときの、連結部の球面と摺接面との間の接触面圧が小さくなる。このため、連結部の球面や摺接面に摩耗が生じにくい。
【0009】
[態様3]
前記摺接面は、第1収容球面及び第2収容球面を含み、
前記第1収容球面及び前記第2収容球面は、前記ローラ部の前記球面の曲率中心を挟むように配置されている[態様2]に記載のチェーン。
【0010】
この構成によれば、連結部の球面が第1収容球面及び第2収容球面に対して面接触しつつ、連結部が内部空間で相対回転する。
[態様4]
前記摺接面は、前記第1収容球面と前記第2収容球面とを接続する第3収容球面をさらに含む[態様3]に記載のチェーン。
【0011】
この構成によれば、第3収容球面が、第1収容球面と第2収容球面とは異なる方向から連結部の球面に摺接して支持するため、連結部の相対回転が安定しやすい。
[態様5]
前記開口部を画定する面は、前記ローラ部の前記内周面から前記外周面に向かうにつれて間隔が増大するように構成されたテーパ面である[態様1]~[態様4]のいずれかに記載のチェーン。
【0012】
この構成によれば、開口部を画定する面に対して接続部が接触したときの接触面積が大きくなりやすく、接触面圧も小さくなりやすいため、接触時の開口部や接続部の損傷が生じにくい。
【0013】
[態様6]
前記開口部は第1開口部であり、
前記ローラ部は、前記第1開口部に連通されるとともに、隣り合う前記リンク部材の前記連結部を前記内部空間に向けて移動させるときに、隣り合う前記リンク部材の前記連結部及び前記接続部が通過する第2開口部をさらに備える[態様1]~[態様5]のいずれかに記載のチェーン。
【0014】
この構成によれば、隣り合うリンク部材の連結部及び接続部を第2開口部に通過させることにより、連結部及び接続部をそれぞれ内部空間及び開口部にそれぞれ配置させることができる。その結果、リンク部材の連結作業が容易になる。
【0015】
[態様7]
前記ローラ部は、隣り合う前記リンク部材の前記連結部の外周面と接触することにより前記内部空間からの前記連結部の脱落を防止する脱落防止部を備える[態様1]~[態様6]のいずれかに記載のチェーン。
【0016】
この構成によれば、連結部を開口部から引き抜く方向の力が接続部を介して作用しても、連結部が脱落防止部に接触するため、連結部が開口部から抜け出ること、すなわち内部空間からの連結部の脱落が生じにくい。その結果、リンク部材の連結作業がさらに容易になる。
【0017】
[態様8]
前記ローラ部には、隣り合う前記リンク部材の前記連結部を前記第2開口部に通過させつつ前記内部空間に向けて移動させるときの移動方向に当該連結部を案内する凸部が設けられており、
前記連結部の前記外周面には、前記凸部と嵌合可能な凹部が設けられており、
前記凹部及び前記凸部は、
前記連結部が前記ローラ部に対して前記移動方向に移動して前記第2開口部を通過するときには、前記凹部と前記凸部とが嵌合され、前記連結部が前記内部空間に収容された状態では、前記凹部と前記凸部との嵌合が解除されるように構成されている[態様6]に記載のチェーン。
【0018】
この構成によれば、連結部が内部空間に向けて移動するときには、凸部が凹部と嵌合することにより、連結部の移動が凸部によって案内される。したがって、連結部を内部空間に向けて円滑に移動させることができる。その結果、リンク部材の連結作業がさらに容易になる。そして、連結部が内部空間に収容された状態では、凹部と凸部との嵌合が解除されるため、連結部がローラ部の内部空間で相対回転することができる。換言すれば、凹部と凸部との嵌合されているために、連結部が内部空間で相対回転できないといった不都合が生じない。
【0019】
なお、内部空間において連結部が相対回転する場合、相対回転の回転軸の傾動に伴って連結部は内部空間において様々な姿勢をとることができる。一方で、そうした様々な姿勢のうち、連結部が第2開口部から抜け出て内部空間からの脱落が可能となるときの姿勢は、凸部と凹部との嵌合が可能となるときの姿勢、すなわちローラ部に対する連結部の移動が可能であるときの姿勢に限定される。その結果、内部空間からの連結部の脱落が生じにくい。
【0020】
以下の[態様9]に記載したリンク部材は、[態様1]~[態様8]に記載のチェーンを構成するリンク部材の一例である。
[態様9]
内部空間を有し、外周面の一部が球面であるローラ部と、外周面の一部が球面である連結部と、前記ローラ部及び前記連結部を接続する接続部とを備え、互いに連結されることにより前記ローラ部がスプロケットの噛合溝に噛み合うチェーンを構成するリンク部材であって、
前記ローラ部は、前記接続部が接続されている部位と反対側に位置する部位に、当該ローラ部の内部空間に連通するとともに前記接続部よりも外径が大きい開口部を有する、
リンク部材。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、リンク部材のローラ部とスプロケットの噛合溝との噛み合い精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】
図1は、チェーンを備える動力伝達装置を模式的に示す図である。
【
図2】
図2は、チェーン及びスプロケットを示す斜視図である。
【
図8】
図8は、連結部及びローラ部の断面図である。
【
図9】
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)及び
図9(d)は、リンク部材の開口領域を示す斜視図である。
【
図15】
図15は、変更例におけるリンク部材の断面図である。
【
図16】
図16は、変更例におけるリンク部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、動力伝達装置の一部を構成するチェーンの一実施形態について図面を参照して説明する。なお、チェーンの構成部材における位置関係を説明するために、図面に記載したX軸、Y軸、及びZ軸により規定される直交座標を用いる。以下、X軸と平行な方向をX方向と、Y軸と平行な方向をY方向と、Z軸と平行な方向をZ方向とそれぞれ記載する。
【0024】
<動力伝達装置>
図1及び
図2に示すように、動力伝達装置10は、チェーン11と、複数のスプロケット12とを有している。チェーン11は、複数のリンク部材20が連結されることにより構成されている。スプロケット12及びリンク部材20の材質は、例えば金属や樹脂であり、両部材12,20の材質は同一でも異なっていてもよい。チェーン11は、複数のスプロケット12に架け渡された状態で各スプロケット12に巻き掛けられている。各スプロケット12には、図示しないモータの動力がチェーン11を介して伝達される。
【0025】
図2に示すように、スプロケット12は、図示しない軸が挿通される軸孔13と、複数の噛合溝14とを有する。なお、
図2に示される2つのスプロケット12が有する軸孔13の軸線L2,L3は、ねじれの位置にある。
【0026】
<リンク部材の全体構成>
図3及び
図4に示すように、リンク部材20は、内部空間31を有するローラ部30と、連結部40と、ローラ部30及び連結部40とを接続する接続部50とを備えている。連結部40は、連結時に隣り合うリンク部材20の内部空間31に収容され、この内部空間31において相対回転が可能である。
【0027】
ローラ部30及び連結部40は、いずれも外周面の一部が球面である。直交座標のX軸は、ローラ部30の外周面の一部を構成する球面の曲率中心と、連結部40の外周面の一部を構成する球面の曲率中心とを含んでいる。
【0028】
以下、ローラ部30の球面の曲率中心を第1曲率中心C1と、連結部40の球面の曲率中心を第2曲率中心C2と記載する。直交座標は、第1曲率中心C1を原点とする座標系である。
【0029】
リンク部材20は、直交座標のXY平面及びXZ平面をそれぞれ対称面とする面対称の形状を有している。すなわちローラ部30、連結部40、接続部50はいずれも、XY平面及びXZ平面をそれぞれ対称面とする面対称の形状を有している。
【0030】
以下、ローラ部30の構成を説明する際には、X方向におけるローラ部30の両端のうち、接続部50が接続されている端を基端、基端と反対側に位置する端を先端と記載する。連結部40の構成を説明する際には、X方向における連結部40の両端のうち、接続部50が接続されている端を基端、基端と反対側に位置する端を先端と記載する。
【0031】
<連結部>
図5~
図7に示すように、連結部40は、互いに平行に延びる2つの平面により構成される一対の平面部41と、平面部41の周縁を接続する球面によって構成される球面部42とを有している。連結部40は、中実の部材であっても、中空の部材であってもよい。接続部50は、球面部42の基端に接続されている。上述した第2曲率中心C2は、具体的には、球面部42の外周面を構成する球面の曲率中心である。以下、この球面の曲率半径を第2曲率半径R2と記載する。
【0032】
<第1半球部及び第2半球部>
図7に示すように、ローラ部30は、接続部50が接続されている部分である基端部30Cと、基端部30Cから先端側に向けてそれぞれ延びる断面半円弧状の第1半球部30A及び第2半球部30Bとを有している。第1半球部30Aの外周面及び第2半球部30Bの外周面は、曲率半径が互いに等しく、曲率中心が一致する球面である。上述した第1曲率中心C1は、具体的には、第1半球部30A及び第2半球部30Bのそれぞれの外周面の曲率中心である。
【0033】
第1半球部30A及び第2半球部30Bのそれぞれの外周面の曲率半径が互いに等しいとは、第1半球部30A及び第2半球部30Bを加工する際に不可避的に発生する差、いわゆる公差が両曲率半径の間に存在する場合を含む。また、第1半球部30A及び第2半球部30Bのそれぞれの外周面の曲率中心が一致するとは、第1半球部30A及び第2半球部30Bのそれぞれの外周面の曲率半径の間に公差が存在する結果、その公差に起因して両外周面の曲率中心が異なっている場合を含む。この点は、例えば後述する第1収容球面36a及び第2収容球面36b等の、2つの部材又は部位を構成する曲面の曲率半径が等しいこと、当該曲面の曲率中心が一致することの技術的意義についても同様である。
【0034】
<第1爪及び第2爪>
図3、
図4、及び
図7に示すように、ローラ部30は、4つの爪を有している。具体的には、第1半球部30A及び第2半球部30Bは、一組の第1爪N1及び第2爪N2を有している。第1爪N1は、第1半球部30Aから第2半球部30Bに向けて円弧状に延びている。第2爪N2は、第2半球部30Bから第1半球部30Aに向けて円弧状に延びている。第1爪N1及び第2爪N2は、XY平面を対称面とした面対称の位置関係にある。第1爪N1及び第2爪N2の先端は、いずれもXY平面と平行な平面により構成されている。第1爪N1及び第2爪N2の先端は、XY平面を挟んで対向している。
【0035】
第1半球部30A及び第2半球部30Bは、上述した一組の第1爪N1及び第2爪N2とXY平面を対称面とした面対称の位置に、さらにもう一組の第1爪N1及び第2爪N2を有している。この第1爪N1及び第2爪N2は、上述した一組の第1爪N1及び第2爪N2と形状や直交座標系における位置関係が同じであるため、それらの説明を割愛する。
【0036】
<接続部>
図7に示すように、接続部50は円錐台状であり、その軸線L1は、X軸と一致しており、第1曲率中心C1及び第2曲率中心C2を含んでいる。YZ平面における接続部50の断面積は、連結部40からローラ部30に向かうにつれて増大する。接続部50の側面50aは、後述するテーパ面33aの形状との関係によって規定される曲面である。
【0037】
<開口領域>
図9(a)、
図9(b)、
図9(c)及び
図9(d)に示すように、ローラ部30は、第1半球部30Aと第2半球部30Bとの間に、内部空間31に通じる開口領域H1を有している。開口領域H1は、開口部33、2つの窓35、及び2つの連通部34を有している。開口部33は、隣り合うリンク部材20の接続部50が配置される第1開口部の一例であり、窓35及び連通部34は、隣り合うリンク部材20の接続部50及び連結部40がそれぞれ通過可能な第2開口部の一例である。
【0038】
<開口部>
図9(b)に示すように、開口部33は、第1爪N1及び第2爪N2により囲まれる領域であり、隣り合うリンク部材20の接続部50が配置される領域である。また、開口部33は、ローラ部30の外周面と内周面とを接続する2つのテーパ面33aにより画定される。換言すると、開口部33は、2つのテーパ面33aにより外周面の一部が画定され、軸線が接続部50の軸線L1と一致する円錐台状の空間である。隣り合うリンク部材20の連結部40が内部空間31に収容された状態において、2つのテーパ面33aは、接続部50の軸線L1を挟んで対向している。
【0039】
図7に示すように、開口部33を画定する面は、ローラ部30の内周面から外周面に向かうにつれて間隔が増大するように構成されたテーパ面である。このため、開口部33の開口面積は、ローラ部30の内周面から外周面に向かうにつれて増大する。換言すると、XZ平面において、2つのテーパ面33aのZ方向における間隔は、X方向において原点から離れるほど長くなる。なお、開口部33の開口面積とは、軸線L1と直交し、2つのテーパ面33aのZ方向における間隔と等しい直径を有する円形平面C10の面積である。
【0040】
テーパ面33aにおいて、ローラ部30の内周面が接続される第2部位33cを含む円形平面C10の直径は、接続部50の最大外径よりも大きい。なお、接続部50の最大外径は、接続部50のローラ部30に接続されている部位の外径である。
【0041】
<接続部とテーパ面との接触>
図8に示すように、隣り合うリンク部材20の連結部40が内部空間31に収容され、ローラ部30に対して相対回転する結果、接続部50の側面50aがテーパ面33aに接触する場合がある。この場合、接続部50の側面50aは、テーパ面33aの2つの部位に接触する。こうした接触態様が実現されるように、テーパ面33a及び側面50aの形状が規定されている。なお、この2つの部位は、具体的には、テーパ面33aにおいて、ローラ部30の外周面との接続部位である第1部位33bと、ローラ部30の内周面との接続部位である第2部位33cである。
【0042】
<窓>
図7及び
図9(c)に示すように、窓35は、対向する第1爪N1及び第2爪N2と、ローラ部30の基端部30Cとの間に位置する領域である。なお、
図9(c)では、一対の窓35のうちの一方のみを図示している。
【0043】
図7に示すように、各窓35は、一対の平面35aと、凸部38を含む湾曲面35bと、対向する第1爪N1及び第2爪N2の各側面35cとによって画定されている。Y方向から視たとき、各窓35の外形は、連結部40をZ方向から視たときの外形を内包し且つこの外形と相似形である。
【0044】
一対の平面35aは、XY平面と平行であり、XY平面を対称面とする面対称の位置関係にある。一対の平面35aの間の間隔は、連結部40の2つの平面部41の間の間隔よりも僅かに大きい。
【0045】
湾曲面35bは、2つの平面35aの基端をそれぞれ接続する面である。湾曲面35bは、軸線がY方向に延びる凸円筒面の一部により構成される曲面である。この凸円筒面は、曲率半径が第2曲率半径R2よりも僅かに大きく、曲率中心が第1曲率中心C1と一致している。
【0046】
対向する第1爪N1及び第2爪N2の各側面35cは、2つの平面35aの先端から互いに近づくように湾曲して延びている。各側面35cは、軸線がY方向に延びる凸円筒面の一部により構成される曲面である。この凸円筒面は、曲率半径が第2曲率半径R2よりも僅かに大きく、曲率中心が第1曲率中心C1と一致している。すなわち湾曲面35bと各側面35cとは、共通の凸円筒面の一部として構成されている。
【0047】
<連通部>
図7及び
図9(d)に示すように、各連通部34は、対向する第1爪N1及び第2爪N2により挟まれる領域であり、開口部33と各窓35とをそれぞれ連通する領域である。連通部34のZ方向における長さ、すなわち対向する第1爪N1及び第2爪N2の間の間隔は、接続部50の最大外径よりも長い。
【0048】
<第1収容球面及び第2収容球面>
図7及び
図10に示すように、第1半球部30A及び第2半球部30Bの内周面には、第1収容球面36a及び第2収容球面36bがそれぞれ設けられている。第1収容球面36a及び第2収容球面36bは、曲率半径が互いに等しく、曲率中心が第1曲率中心C1と一致する球面である。
【0049】
すなわち第1収容球面36a及び第2収容球面36bは、共通の仮想球体B1における外周面の一部を構成している。以下、第1収容球面36a及び第2収容球面36bの曲率半径を第1曲率半径R1と記載する。第1収容球面36a及び第2収容球面36bは、連結部40の球面部42を構成する球面を囲むように配置された摺接面の一例であり、第1曲率中心C1を挟むように配置された摺接面の一例である。
【0050】
第1収容球面36a及び第2収容球面36bは、両面36a,36b及び第1曲率中心C1をそれぞれ通過する仮想直線が存在する。この仮想直線の一例は、Z軸である。なお、
図7では、二点鎖線で示す仮想球体B1の外形線が第1収容球面36a及び第2収容球面36bの内周面を示す実線と重ならないようにしているが、これは仮想球体B1の形状や内部空間31における位置を理解しやすくするための配慮であり、例えば、仮想球体B1の曲率半径と第1曲率半径R1の曲率半径との大きさを規定することは意図していない。
【0051】
<凸部及び凹部>
図7及び
図10に示すように、湾曲面35bのZ方向における中央部分には、凸部38が設けられている。凸部38は、Y方向、すなわち接続部50の軸線L1と直交する方向に延びている。凸部38は、その外周面が凸円筒面の一部により構成されており、XZ平面における断面形状が半円である半円柱状を有している。
【0052】
図5~
図7に示すように、球面部42の先端には、Z方向に沿って直線状に延びる凹部42aが設けられている。凹部42aは、その内周面が凹円筒面の一部により構成されており、XY平面における断面形状が半円である。凹部42aの内周面を構成する凹円筒面は、凸部38の外周面を構成する凸円筒面よりも曲率半径が僅かに大きい。凸部38と凹部42aとは嵌合可能である。
【0053】
<逃げ凹面>
図7及び
図10に示すように、湾曲面35bのY方向における中央部分には、球面により構成される逃げ凹面39が設けられている。逃げ凹面39は、凸部38の一部を構成する中央面39aと、第1収容球面36a及び第2収容球面36bと中央面39aとをそれぞれ接続する一対の接続面39bとを有している。
【0054】
逃げ凹面39は、曲率半径が第1曲率半径R1と等しく、曲率中心が第1曲率中心C1と一致する。したがって、逃げ凹面39は、仮想球体B1における外周面の一部によって構成されている。逃げ凹面39は、球面部42を構成する球面を囲むように配置された摺接面の一例であり、第1収容球面36aと第2収容球面36bとを接続する第3収容球面の一例である。なお、凸部38は、中央面39aを有しているため、凸部38と凹部42aとの嵌合とは、凸部38のうち中央面39aを挟む両側に位置する部分と凹部42aとの嵌合と同義である。
【0055】
<凸部及び凹部の嵌合と嵌合の解除>
図11に示すように、ローラ部30の凸部38及び連結部40の凹部42aのそれぞれの軸線が一致する状態で、矢印Aに示す方向に連結部40を平行移動させて内部空間31に挿入する場合、二点鎖線で示すように、まず、凸部38に凹部42aの一部が嵌合する。その結果、連結部40の平行移動は許容される一方で、接続部50の軸線L1を回転軸とする連結部40の回転は規制されるようになる。
【0056】
そして、
図11の実線で示すように、連結部40をさらに平行移動させると、連結部40の第2曲率中心C2とローラ部30の第1曲率中心C1とが一致し、球面部42の先端が逃げ凹面39により囲まれた状態となる。その結果、凸部38と凹部42aとの嵌合が解除され、接続部50の軸線L1を回転軸とする連結部40の回転が許容されるようになる。以下、このときの連結部40の状態を第1状態と記載する。
【0057】
<連続摺接面>
図7及び
図10に示すように、逃げ凹面39と第1収容球面36a及び第2収容球面36bとは、仮想球体B1の外周面の一部を構成している。以下、逃げ凹面39と第1収容球面36a及び第2収容球面36bとを総称して連続摺接面S10と記載することがある。この連続摺接面S10は、内部空間31に収容された連結部40の球面部42を囲むように配置された摺接面の一例である。また、仮想球体B1は、連続摺接面S10と球面部42との接点で球面部42と外接する仮想球面により画定される閉空間である。そして、球面部42の外周面により一部が構成される球体は、この閉空間に内包されている。内部空間31において連結部40が相対回転するときに、連続摺接面S10は、球面部42の外周面に常に接触する。
【0058】
なお、本開示において、互いに摺動する2つの部材や部位の曲率半径が等しい、とは、2つの部材や部位の相対的な位置変化が円滑になる程度に、2つの曲率半径の間に差が存在していることを含む。例えば、互いに摺動する2つの部材や部位のそれぞれの曲率半径の一例は、連続摺接面S10の曲率半径である第1曲率半径R1、及び連続摺接面S10に対して摺接する球面部42の外周面の曲率半径である第2曲率半径R2である。この例では、第1曲率半径R1と第2曲率半径R2との間には、連続摺接面S10に対して球面部42の外周面が円滑に摺動可能な程度の差が存在していることになる。
【0059】
また、本開示において、互いに摺動する2つの部材や部位の曲率中心が等しいとは、2つの部材や部位の曲率半径の間に上述した差が存在する結果、その差に起因して2つの部材や部位のそれぞれの曲率中心が異なる場合を含む。
【0060】
例えば、互いに摺動する2つの部材や部位のそれぞれの曲率中心の一例は、連続摺接面S10の曲率中心である第1曲率中心C1と、連続摺接面S10に対して摺接する球面部42の外周面の曲率中心である第2曲率中心C2である。この例では、第1曲率半径R1と第2曲率半径R2との間に上述した差が存在する結果、その差に起因して第1曲率中心C1と第2曲率中心C2とが異なる場合を含む。したがって、仮想球体B1の半径は、閉空間の内接球の半径よりも、第1曲率半径R1と第2曲率中心C2との間に存在する上述した差の分だけ小さい場合がある。
【0061】
<本実施形態の作用効果>
以下、
図11~
図15を参照し、2つのリンク部材20を連結する際の手順、及び本実施形態の作用効果を説明する。以下、連結される2つのリンク部材20を区別して説明する必要がある場合には、隣り合うリンク部材20の一方を「第1リンク部材20A」と記載し、他方を「第2リンク部材20B」と記載する。
【0062】
図12に示すように、第2リンク部材20Bを接続部50の軸線L1を回転軸として第1リンク部材20Aに対して90度回転させる。そして、凸部38及び凹部42aのそれぞれの軸線L4が一致する状態で、第2リンク部材20Bを第1リンク部材20Aに向けて平行移動させる。
【0063】
第2リンク部材20Bの平行移動により、第2リンク部材20Bの凹部42aと第1リンク部材20Aの凸部38とが嵌合すると、接続部50の軸線L1を回転軸とする連結部40の回転が規制されるようになる。このため、平面部41が2つの平面35aに対向し、球面部42が湾曲面35b及び第1爪N1及び第2爪N2の各側面35cにそれぞれ対向する姿勢を維持しつつ、第2リンク部材20Bを第1リンク部材20Aに向けて平行移動させ、連結部40及び接続部50をそれぞれ窓35及び連通部34に通過させることができる。
【0064】
図11及び
図13に示すように、球面部42の先端が逃げ凹面39により囲まれた状態となるまで第2リンク部材20Bをさらに平行移動させると、連結部40は第1状態となる。連結部40が第1状態であるとき、連続摺接面S10のうち逃げ凹面39だけが球面部42と面接触する。
【0065】
図14に示すように、第1状態から、軸線L1を回転軸として第2リンク部材20Bをさらに90度回転させると、第2リンク部材20Bの球面部42は、上述した連続摺接面S10と面接触して摺動可能になる。以下、この状態を連結部40の第2状態と記載する。連結部40が第2状態であるときには、第1状態にあるときとは異なり、連続摺接面S10のうち、逃げ凹面39に加えて、第1収容球面36a及び第2収容球面36bも球面部42に面接触する。
【0066】
第2リンク部材20Bの連結部40が第1状態から第2状態に移行すると、連結部40は、第1リンク部材20Aの内部空間31で相対回転することができるようになる。この相対回転の回転軸は、第2曲率中心C2を通り、XY平面と交差する角度が異なる複数の軸を含んでいる。すなわち、連結部40は、異なるXY平面と交差する角度が異なる複数の軸を回転軸として相対回転することができる。
【0067】
また、相対回転時の回転軸は、球面部42が連続摺接面S10と面接触して摺動可能であるために、第2曲率中心C2を中心とした傾動が可能である。そして、このように回転軸が傾動すると、接続部50は、第2曲率中心C2を中心として傾動する。接続部50が傾動することにより、開口部33において接続部50の位置変化が可能になる。その結果、チェーン11は、複数のスプロケット12の配置態様に応じて屈曲することができるようになる。
【0068】
一方で、連結部40における相対回転以外の変位は、球面部42が連続摺接面S10に押し付けられるために生じにくい。その結果、隣り合うローラ部30のピッチが変化しにくくなり、ローラ部30とスプロケット12の噛合溝14との噛み合い精度が向上する。例えば、
図2に示すように、2つのスプロケット12が有する軸孔13の軸線L2,L3がねじれの位置にある場合であっても、ローラ部30が各スプロケット12の噛合溝14と噛み合いつつ、各スプロケット12にチェーン11を介して動力を伝達することが可能になる。
【0069】
以下、実施形態のその他の作用効果について説明する。
(1)連続摺接面S10は、その曲率半径が第2曲率半径R2と等しいため、球面部42に面接触する。このため、連続摺接面S10と球面部42とが点接触または線接触する構成と比較し、連結部40が相対回転するときの、球面部42と連続摺接面S10との間の接触面圧が小さくなる。このため、連続摺接面S10や球面部42に摩耗が生じにくい。
【0070】
(2)開口部33を画定する面がテーパ面33aであるため、接続部50の側面50aがテーパ面33aにしたときの接触面積が大きくなりやすく、接触面圧が小さくなりやすい。その結果、テーパ面33aや側面50aに損傷が生じにくい。特に、接続部50の側面50aが、テーパ面33aの第1部位33b及び第2部位33cにそれぞれ接触するため、一つの部位にのみ接触する構成と比較して、各部位33b,33cの接触面圧が小さくなりやすい。その結果、テーパ面33a及び側面50aの損傷がさらに生じにくくなる。
【0071】
(3)連結部40を窓35に、接続部50を連通部34にそれぞれ通過させることにより、連結部40を内部空間31に配置することができるため、リンク部材20の連結作業が容易になる。また、接続部50の軸線L1を回転軸として回転させ、連結部40を第1状態に戻せば、連結部40の挿入時と逆方向に平行移動させることにより、連結部40を内部空間31から取り出すことができる。その結果、リンク部材20の連結を解除する作業も容易になる。しかも、リンク部材20には、接続部50の軸線L1を挟んだ両側にそれぞれ窓35及び連通部34が設けられているため、双方向から連結部40を内部空間31に挿入したり、内部空間31から取り出したりすることができる。このため、リンク部材20の連結作業や連結の解除作業がさらに容易になる。
【0072】
(4)第2リンク部材20Bの連結部40が、第1リンク部材20Aのローラ部30の内部空間31に位置している状態において、開口部33から引き抜く方向の力(引張荷重)が接続部50を介して連結部40に作用しても、連結部40の球面部42が、第1爪N1や第2爪N2に接触する。このため、連結部40が開口部33から抜け出ること、すなわち内部空間31からの連結部40の脱落が生じにくい。さらに、連結部40を窓35から引き抜く際の方向は、球面部42と第1爪N1及び第2爪N2の側面35cとが接触することにより、凸部38の延びる方向に限定される。すなわち、それ以外の方向、例えば凸部38の延びる方向と交差する方向に連結部40を移動させることはできない。このように、連結部40を窓35から引き抜く際の方向が限定される結果、連結部40が窓35から抜け出ること、すなわち内部空間31からの連結部40の脱落が生じにくい。
【0073】
そして、内部空間31からの連結部40の脱落が生じにくい結果、隣り合うリンク部材20の連結が解除されることに起因する、動力伝達装置10からのチェーン11の脱落も生じにくい。なお、上述したように、ローラ部30の第1爪N1や第2爪N2は、内部空間31からの連結部40の脱落を防止する脱落防止部として機能する。
【0074】
(5)連結部40を隣り合うリンク部材20の内部空間31に向けて平行移動させる際、球面部42が、第1爪N1及び第2爪N2の各側面35cと湾曲面35bにそれぞれ対向する状態となった以後は、各側面35cと球面部42とが接触し、連結部40の移動方向が一方向に定まるため、内部空間31からの連結部40の脱落が生じにくい。その結果、リンク部材の連結作業や連結の解除作業がさらに容易になる。
【0075】
(6)内部空間31において連結部40が相対回転する場合、相対回転の回転軸の傾動に伴って連結部40は内部空間31において様々な姿勢をとることができる。一方で、そうした様々な姿勢のうち、連結部40が窓35から抜け出て内部空間31からの脱落が可能となるときの姿勢は、凸部38と凹部42aとの嵌合が可能となるときの姿勢、すなわちローラ部30に対する連結部40の移動が可能であるときの姿勢に限定されているため、連結部40が内部空間31に収容された状態において、内部空間31からの連結部40の脱落が生じにくい。
【0076】
(7)連結部40が窓35を通過して内部空間31に向けて移動するときには、凸部38が凹部42aと嵌合することにより、連結部40の移動が凸部38によって案内される。したがって、連結部40を内部空間31に向けて円滑に移動させることができる。
【0077】
(8)凸部38と凹部42aとが嵌合することにより、内部空間31に向けての連結部40の平行移動を許容しつつ、接続部50の軸線L1を回転軸とする連結部40の回転を規制することができる。その結果、窓35及び連通部34に対して連結部40及び接続部50が位置決めされた状態で、連結部40及び接続部50を、窓35及び連通部34にそれぞれ通過させることができる。したがって、連通部34と接続部50との干渉や、窓35と連結部40との干渉が生じにくい。その結果、リンク部材20の連結作業を円滑に行うことができる。
【0078】
さらに、凸部38は、中央面39aを有しているため、連結部40が内部空間31に収容された状態では、凹部42aと凸部38との嵌合が解除される。その結果、連結部40を中央面39aにより支持しつつ、内部空間31における連結部40の相対回転が可能になる。
【0079】
(9)ローラ部30の連続摺接面S10は、第1収容球面36a及び第2収容球面36bに加え、両面36a,36bを接続する逃げ凹面39を有している。逃げ凹面39は、第1収容球面36aや第2収容球面36bとは異なる方向から球面部42の外周面に摺接して支持するため、連結部40の相対回転が安定しやすい。
【0080】
(10)第1状態から第2状態に移行する途中の段階では、Z方向における球面部42の各端部は、第1収容球面36a及び第2収容球面36bに接触していないか、両球面36a,36bとの接触面積が小さいため、連結部40の回転が不安定になりやすい。しかし、この途中の段階では、球面部42が逃げ凹面39の中央面39aに面接触しているため、こうした回転の不安定化が生じにくい。
【0081】
(11)同じ形状のリンク部材20を複数連結するだけで無端状のチェーン11を構成することができる。例えば、複数のリンクプレートが連結ピンにより連結されている従来のチェーンとは異なり、隣り合うリンクプレート同士を接続する継手リンクは不要になる。
【0082】
[変更例]
なお、上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態の構成、及び以下の各変更例の構成は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせることができる。
【0083】
・内部空間31に収容された球面部42を囲む摺接面は、本実施形態に例示した連続摺接面S10に限定されない。例えば、摺接面は、連続摺接面S10から、逃げ凹面39が割愛され、第1収容球面36a及び第2収容球面36bの2つの曲面から構成される面であってよい。また、第1収容球面36a及び第2収容球面36bは、XY平面を対称面とした面対称の位置関係を有していなくてもよいし、それぞれの面積が異なっていてもよい。また、摺接面は、仮想球体B1の外周面の一部を構成する、3つ以上の球面であってもよいし、第1曲率中心C1を中心とする環状の球面であってもよい。さらに、摺接面は、多面体の外周面の一部を構成する平面であってもよい。
【0084】
要するに、摺接面と球面部42の球面との接点で球面部42の球面と外接する仮想平面又は仮想球面により画定される閉空間が存在しており、この閉空間に球面部42の外周面を一部として構成される球体が内包されていればよい。
【0085】
そして、この変形例においても、連結部40が内部空間31で相対回転するときには、摺接面が、連結部40の外周面として構成される球面に常に接触する。さらに、連結部40が内部空間31で相対回転するときの回転軸は、連結部40の球面の曲率中心を通り、当該球面の曲率中心を中心として傾動する。
【0086】
・テーパ面33aは、接続部50に接触している状態において接続部50の側面50aが接触する3つ以上の部位を有していてもよいし、接続部50の側面50aと全体が面接触する湾曲面であってもよい。また、開口部33を画定する面は、互いに平行な面、換言すれば開口部33の開口面積がローラ部30の内周面から外周面まで一定となる状態で開口部33を画定する面であってもよい。
【0087】
・2つの窓35の一つ、または全てを割愛してもよい。窓35の全てが割愛された構成を採用する場合、例えば、連結部40の外径よりも大きい開口部から連結部40をローラ部30の内部空間31に挿入した後に、連結部40が開口部から抜け出さないように、開口部が縮径するための加工をローラ部30に対して行うようにする。こうした加工を行うことにより、隣り合うリンク部材20を連結させることができる。なお、この構成を採用する場合、連結部40は、平面部41を有していなくてもよいし、接続部50の接続箇所を除いた部分の形状が球体であってもよい。
【0088】
・接続部50の形状は、例えば円柱状や多角柱状であってもよい。また、
図15に示すように、リンク部材20は、ローラ部30と連結部40とが円形の断面S1を挟んで接続された構成であってもよい。このリンク部材20において、接続部50は、断面S1を含んでローラ部30と連結部40とにより挟まれる部分である。接続部50は、最大外径が断面S1の直径であり、軸線L1が第1曲率中心C1と第2曲率中心C2とを含む線分である。
【0089】
・第1爪N1及び第2爪N2のうちの1つ、若しくは全てを割愛してもよい。
図16に示すように、第1爪N1及び第2爪N2が全て割愛された構成の一例では、開口領域H1は、互いに平行な2つの平面であって、連結部40の平面部41の間の間隔よりも僅かに大きい間隔を隔てて平行に延びる2つの平面37により画定される。また、第1爪N1及び第2爪N2が、XY平面及びXZ平面を対象面とする面対象の位置にある構成を例示したが、複数の爪は、こうした対称性を有していなくてもよい。さらに、複数の爪を有する場合、連結部40は、連結部40が開口部33から抜け出ようとする際に、全ての爪に接触する必要はなく、少なくとも一つの爪に連結部40が接触すればよい。
【0090】
・凸部38及び凹部42aの断面形状は、半円以外であってもよいし、互いに相似形でなくてもよい。要するに、凸部38及び凹部42aは、連結部40をローラ部30の内部空間31に向けて移動させる際に、連結部40が第1状態に達する前までは、互いに嵌合して連結部40の回転を規制する一方、連結部40が第1状態に達したときには、互いの嵌合が解除される機能を有していればよい。
【符号の説明】
【0091】
11…チェーン
12…スプロケット
14…噛合溝
20…リンク部材
30…ローラ部
30A…第1半球部
30B…第2半球部
30C…基端部
33…開口部
33a…テーパ面
33b…第1部位
33c…第2部位
34…連通部
35…窓
36a…第1収容球面
36b…第2収容球面
38…凸部
39…逃げ凹面
40…連結部
41…平面部
42…球面部
42a…凹部
50…接続部
50a…側面
B1…仮想球体
C1…第1曲率中心
C2…第2曲率中心
C10…円形平面
H1…開口領域
L1…軸線
N1…第1爪
N2…第2爪
R1…第1曲率半径
R2…第2曲率半径
S10…連続摺接面