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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143574
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】建物の建設方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 1/17 20060101AFI20241003BHJP
   E04G 1/24 20060101ALI20241003BHJP
   E04B 1/348 20060101ALI20241003BHJP
   E04B 1/35 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E04G1/17
E04G1/24 301A
E04B1/348 B
E04B1/35 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056324
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390037154
【氏名又は名称】大和ハウス工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100149401
【弁理士】
【氏名又は名称】上西 浩史
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 浩徳
(72)【発明者】
【氏名】尾山 誠
(72)【発明者】
【氏名】矢田 洋平
【テーマコード(参考)】
2E003
【Fターム(参考)】
2E003CC01
(57)【要約】
【課題】足場の設置及び撤去に費やす作業工数を軽減させ、効率的に建物を建設することが可能な建物の建設方法を提供する。
【解決手段】建物の建設方法は、側壁と天井壁とを有しており側壁と天井壁とによって囲まれた空間と該空間の外とを仕切る空間仕切設備を、建設中の建物の躯体内に配置する第1工程と、躯体内に配置された空間仕切設備を足場として利用する第2工程と、空間仕切設備内の空間を完成後の建物における1つの空間として利用するために、空間仕切設備を躯体内の配置位置に配置する第3工程と、を実施する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁と天井壁とを有しており前記側壁と前記天井壁とによって囲まれた空間と該空間の外とを仕切る空間仕切設備を、建設中の建物の躯体内に配置する第1工程と、
前記躯体内に配置された前記空間仕切設備を足場として利用する第2工程と、
前記空間仕切設備内の前記空間を完成後の前記建物における1つの空間として利用するために、前記空間仕切設備を前記躯体内の配置位置に配置する第3工程と、を実施する建物の建設方法。
【請求項2】
前記第2工程では、前記建物の屋根を設置するための足場として前記空間仕切設備を利用する、請求項1に記載の建物の建設方法。
【請求項3】
前記屋根は、勾配屋根である、請求項2に記載の建物の建設方法。
【請求項4】
前記第2工程では、前記空間仕切設備を足場として利用して、前記空間仕切設備の上端面に立てた仮設支柱により仮設梁を支持させ、前記屋根を構成する屋根版を前記仮設梁に載せる、請求項2に記載の建物の建設方法。
【請求項5】
前記第1工程では、前記屋根が設置される予定の位置の下方空間に前記空間仕切設備が配置される、請求項2又は3に記載の建物の建設方法。
【請求項6】
前記第1工程では、箱型の本体部と、前記本体部の下部に取り付けられた移動機構とを有する前記空間仕切設備を、前記移動機構を用いて足場として利用する位置に移動させる、請求項1に記載の建物の建設方法。
【請求項7】
前記第3工程では、箱型の本体部と、前記本体部の下部に取り付けられた移動機構とを有する前記空間仕切設備を、前記移動機構を用いて、完成後の前記建物における1つの空間として利用するための位置に移動させる、請求項1に記載の建物の建設方法。
【請求項8】
前記第1工程では、複数の前記空間仕切設備を前記躯体内に配置し、
前記第3工程では、前記複数の空間仕切設備を連結した状態で前記躯体内に配置する、請求項1に記載の建物の建設方法。
【請求項9】
前記空間仕切設備の内部に、前記建物の完成後における前記空間仕切設備の用途に応じた機器及び内装材の少なくとも一方を配置する第4工程を、前記第1工程の前に実施する、請求項1に記載の建物の建設方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建物の建設方法に係り、特に、躯体内で足場を利用した建物の建設方法に関する。
【背景技術】
【0002】
足場を利用した建物の建設方法は、既に開発されており、特許文献1に記載された技術が、その一例として挙げられる。
特許文献1には、鉄骨造の軸組みによって構成される鉄骨造建物内部の床開口部に用いられる仮設足場であって、床開口部の周縁の梁に接続された複数の支柱と、該支柱間に対向するように架け渡された一対の水平材と、該一対の水平材間に架け渡された作業床と、を備えることを特徴とする仮設足場が開示されている。これにより、仮設足場を設置した状態であっても、作業者の昇降あるいは資材等の搬入搬出などに支障をきたすことなく、床開口部を使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-77544号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のように、建設中の建物の躯体内で足場を利用する場合、先ず、足場の構成要素である支柱等を建物の躯体内に搬入し、躯体内で支柱等を組み立てることにより足場を構成する。その後、躯体内の配置位置に足場を配置して利用する。足場の利用が終わると、足場を解体し、足場の構成要素である支柱等を躯体内から搬出する。このように、特許文献1に記載された技術では、足場の設置及び撤去に多くの作業工数を費やすこととなる。
【0005】
そこで、本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、足場の設置及び撤去に費やす作業工数を軽減させ、効率的に建物を建設することが可能な建物の建設方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的は、本発明の建物の建設方法によれば、側壁と天井壁とを有しており側壁と天井壁とによって囲まれた空間と該空間の外とを仕切る空間仕切設備を、建設中の建物の躯体内に配置する第1工程と、躯体内に配置された空間仕切設備を足場として利用する第2工程と、空間仕切設備内の空間を完成後の建物における1つの空間として利用するために、空間仕切設備を躯体内の配置位置に配置する第3工程と、を実施することにより解決される。
【0007】
本発明の建物の建設方法では、第1工程において、足場として利用する空間仕切設備を躯体内に配置する。このため、特許文献1に記載された仮設の足場のように、足場の構成要素である支柱等を躯体内に搬入し、躯体内で支柱等を組み立てることにより足場を構成する場合に比べて、足場の設置に費やす作業工数を軽減することができる。
また、本発明の建物の建設方法では、第3工程において、空間仕切設備内の空間を完成後の建物における1つの空間として利用するために、空間仕切設備を躯体内の配置位置に配置する。このため、特許文献1に記載された仮設の足場のように、足場の利用が終わった後、足場を解体し、足場の構成要素である支柱等を躯体内から搬出する場合に比べて、足場の撤去に費やす作業工数を軽減することができる。
このように、本発明の建物の建設方法によれば、足場の設置及び撤去に費やす作業工数を軽減させ、効率的に建物を建設することができる。
【0008】
また、第2工程では、建物の屋根を設置するための足場として空間仕切設備を利用してもよい。
上記の構成であれば、屋根を設置する作業において、足場の設置及び撤去に費やす作業工数が軽減され、効率的に建物を建設することができる。
【0009】
また、屋根は、勾配屋根であってもよい。
上記の構成であれば、勾配屋根を設置する作業において、足場の設置及び撤去に費やす作業工数が軽減され、効率的に建物を建設することができる。
【0010】
また、第2工程では、空間仕切設備を足場として利用して、空間仕切設備の上端面に立てた仮設支柱により仮設梁を支持させ、屋根を構成する屋根版を仮設梁に載せてもよい。
上記の構成であれば、空間仕切設備、仮設支柱、及び、仮設梁を利用して、屋根版を設置する作業を効率的に行うことができる。
【0011】
また、第1工程では、屋根が設置される予定の位置の下方空間に空間仕切設備が配置されてもよい。
上記の構成であれば、屋根を設置する作業をより効率的に行うことができる。
【0012】
また、第1工程では、箱型の本体部と、本体部の下部に取り付けられた移動機構とを有する空間仕切設備を、移動機構を用いて足場として利用する位置に移動させてもよい。
上記の構成であれば、躯体内における空間仕切設備の移動が容易となり、効率的に建物を建設することができる。
【0013】
また、第3工程では、箱型の本体部と、本体部の下部に取り付けられた移動機構とを有する空間仕切設備を、移動機構を用いて、完成後の建物における1つの空間として利用するための位置に移動させてもよい。
上記の構成であれば、躯体内における空間仕切設備の移動が容易となり、効率的に建物を建設することができる。
【0014】
また、第1工程では、複数の空間仕切設備を躯体内に配置し、第3工程では、複数の空間仕切設備を連結した状態で躯体内に配置してもよい。
上記の構成であれば、連結された複数の空間仕切設備内の空間を、完成後の建物における1つの空間として利用することができる。
【0015】
また、空間仕切設備の内部に、建物の完成後における空間仕切設備の用途に応じた機器及び内装材の少なくとも一方を配置する第4工程を、第1工程の前に実施してもよい。
上記の構成であれば、空間仕切設備の内部に、あらかじめ機器及び内装材等を配置することにより、後の仕上げ工程における作業工数が軽減されるので、効率的に建物を建設することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、足場の設置及び撤去に費やす作業工数を軽減させ、効率的に建物を建設することが可能な建物の建設方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一つの実施形態に係る建物の建設方法によって建設された建物の一例を示す概略図である。
図2】本発明の一つの実施形態に係る建物の建設方法によって建設された建物の一例を示す概略図である。
図3】本発明の一つの実施形態に係る建物の建設方法を説明するための概略図である。
図4】本発明の一つの実施形態に係る建物の建設方法を説明するための概略図である。
図5】本発明の一つの実施形態に係る建物の建設方法を説明するための概略図である。
図6】本発明の一つの実施形態に係る建物の建設方法を説明するための概略図である。
図7】本発明の一つの実施形態に係る建物の建設方法を説明するための概略図である。
図8】本発明の一つの実施形態に係る建物の建設方法を説明するための概略図である。
図9】本発明の一つの実施形態に係る建物の建設方法を説明するための概略図である。
図10】本発明の一つの実施形態に係る建物の建設方法を説明するための概略図である。
図11】本発明の一つの実施形態に係る建物の建設方法の変形例を説明するための概略図である。
図12】本発明の一つの実施形態に係る建物の建設方法の変形例を説明するための概略図である。
図13】本発明の一つの実施形態に係る建物の建設方法の変形例を説明するための概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一つの実施形態(以下、本実施形態)について、添付の図面に示す好適な実施形態を参照しながら、以下に詳細に説明する。
また、図面では、説明を分かり易くするために幾分簡略化及び模式化して各部材を図示している。また、図中に示す各部材のサイズ(寸法)及び部材間の間隔等についても、実際のものとは異なっている。
また、本発明を実施するために用いられる各部材の材質及び形状等は、特に断る場合を除き、本発明の用途及び本発明の実施時点での技術水準等に応じて任意に設定できる。また、本発明には、その等価物が含まれる。
【0019】
<<本実施形態に係る建物の建設方法によって建設された建物について>>
図1を参照しながら本実施形態に係る建物の建設方法によって建設された建物(以下、建物1)について説明する。
建物1は、例えば、住宅、事務所、店舗、病院又は学校等の施設、及び、工場内の建屋等、様々な用途の建物を含む。以下では、図1に示す平屋の木造住宅を建物1の一例として挙げて説明することとする。
【0020】
建物1は、建物1の構造体をなす躯体10を備えている。躯体10は、例えば、公知の建設技術を用いて構成されている。具体的には、躯体10は、基礎、床、壁、柱、及び、小屋組20等により構成されている。
【0021】
小屋組20は、一対の軒桁21、小屋梁22、小屋束23、及び、棟母屋24により構成されている。
なお、以下の説明では、図1に示すように、互いに直交する2つの水平方向のうち、一方を桁方向とし、他方を梁方向とする。桁方向及び梁方向の双方と直交する方向を高さ方向とする。また、「直交」は、本発明が属する技術分野において許容される誤差の範囲を含むものとし、厳密な直交に対して±10°未満の範囲内であること等を意味する。
【0022】
一対の軒桁21は、梁方向に間隔を空けて配置されている。各々の軒桁21は、桁方向に沿って延びている。
小屋梁22は、梁方向において、一方の軒桁21から他方の軒桁21まで延びている。なお、小屋梁22は、図1には1つしか図示されていないが、桁方向に間隔を空けて複数配置されているものとする。
小屋束23は、梁方向における小屋梁22の中央部に取り付けられており、上方に延びている。より具体的には、小屋束23は、小屋梁22の上端面に取り付けられており、上方に延びている。なお、小屋束23は、図1には1つしか図示されていないが、各々の小屋梁22にそれぞれ配置されているものとする。すなわち、複数の小屋梁22が、桁方向に間隔を空けて位置している。
棟母屋24は、小屋束23の上端部に配置されている。より詳しくは、棟母屋24は、桁方向に延びており、桁方向に間隔を空けて位置する複数の小屋束23によって支持されている。
【0023】
建物1は、屋根31をさらに備えており、屋根31は、複数の屋根版31aを有している。屋根版31aは、例えば、構造耐力を有するCLT(Cross Laminated Timber)によって構成されている。なお、屋根版31aとしては、CLT以外の公知の屋根版が用いられてもよく、例えば、合板の一面側に複数の垂木を取り付けられた屋根版であってもよいし、断熱材の両面に合板が取り付けられた屋根版であってもよい。
屋根版31aは、例えば矩形平板である。屋根版31aは、軒桁21と棟母屋24とを結ぶ方向に矩形の長手方向を沿わせて、軒桁21及び棟母屋24の上に、またがって設置されている。屋根31は、水平方向に対して勾配をもって配置されており、いわゆる勾配屋根となっている。
屋根版31aがCLTであった場合、屋根版31aを支持するために必要な軒桁21と棟母屋24との間隔は、例えば、梁方向において3.5m~4.9m程度とする。
【0024】
建物1は、空間仕切設備40をさらに備えている。空間仕切設備40は、建物1の内部に配置されている。より具体的には、空間仕切設備40は、小屋裏空間S3を利用した小屋裏部屋Rの真下に配置されている。空間仕切設備40は、不図示の固定具により躯体10に対して固定されており、建物1における1つの空間S1として利用されている。なお、空間仕切設備40は、図1に示す例では、建物1内に1つ配置されているが、これに限られず、建物1内に複数配置されていてもよい。
【0025】
空間仕切設備40は、箱型の本体部41と、本体部41の下部に取り付けられた移動機構42と、を有している。
本体部41は、底壁43と、底壁43の端から立ち上がった側壁44と、側壁44の上端に位置する天井壁45と、を有している。本体部41(空間仕切設備40)は、底壁43と側壁44と天井壁45とによって囲まれた空間S1と空間S1の外の空間S2とを仕切っている。空間S2は、側壁44によって空間S1と区切られており、空間S1と同じ階の空間として利用されている。また、本体部41(空間仕切設備40)は、底壁43と側壁44と天井壁45とによって囲まれた空間S1と空間S1の外の小屋裏空間S3とを仕切っている。小屋裏空間S3は、天井壁45によって空間S1と区切られており、例えば小屋裏部屋として利用されている。天井壁45は、空間仕切設備40の上端面をなしており、後述するように、建設中の建物1においては足場として利用される。天井壁45は、軒桁21及び小屋梁22よりも下方に位置している。
なお、本体部41は、底壁43を有していなくてもよい。すなわち、本体部41は、側壁44と、側壁44の上端に位置する天井壁45と、を有し、側壁44と天井壁45とによって囲まれた空間S1と、空間S1の外の空間S2及び小屋裏空間S3と、を仕切っていてもよい。
【0026】
本体部41には不図示の開口が設けられており、開口のサイズは、空間仕切設備40が足場を構成するために必要な強度に応じて設定される。すなわち、開口は、空間仕切設備40が足場を構成する強度を有していれば、大型の窓又はドアに相当するものであってもよい。
【0027】
移動機構42は、例えば、複数のキャスターを含んでいる。複数のキャスターの各々は、底壁43の下端(又は側壁44の下端)に取り付けられている。複数のキャスターを含む移動機構42は、建物1内の空間S1及び空間S2の双方から見えないように床板によって覆われている。なお、移動機構42は、不図示の固定具によって通常はロックされた状態にあるが、固定具を取り外してロックを解除することにより、空間仕切設備40を移動させることができる。
【0028】
空間仕切設備40のサイズは、足場として利用するために必要なサイズに応じて設定され、例えば、天井壁45が、矩形状をなしていた場合、短手方向が1.8m以上、長手方向が3.6m以上であることが好ましい。また、空間仕切設備40のサイズは、完成後の建物1における小屋裏空間S3の広さに応じて決められてもよい。すなわち、小屋裏空間S3の高さに応じて側壁44の高さを決めてもよいし、小屋裏空間S3の床面積に応じて天井壁45の面積を決めてもよい。また、空間仕切設備40のサイズの上限は、例えば、建設現場まで輸送する際のトラックのコンテナのサイズ等に応じて設定されてもよい。
【0029】
空間仕切設備40の内部には、空間仕切設備40内の空間S1の用途に応じた機器51及び内装材52が配置されている。例えば、空間S1の用途が洗面化粧室である場合、機器51は、洗面化粧台であり、内装材52は、洗面化粧室に応じた床材、壁材、及び天井材等である。なお、図1に示す例では、一部の内装材52のみを図示しているものとする。空間仕切設備40の外装(外表面)については、仕上げ材等を用いて仕上げが実施されているものとする。
【0030】
以上までに、平屋の建物1を例に説明してきたが、図2に示すように、複数階を備えた建物1Aが建設されてもよい。
この場合、空間仕切設備40は、建物1Aにおける1階に配置されてもよいし、建物1Aにおける複数階に設けられてもよい。また、空間仕切設備40は、各階に複数配置されてもよい。
なお、建物1Aの建設中においては、後述するように、屋根が設置される予定の位置の下方空間に空間仕切設備40が配置されることとなる。すなわち、建物1Aの建設中において、空間仕切設備40の少なくとも1つは最上階(図2に示す例では2階)に配置される。このため、完成後の建物1Aにおいて、少なくとも1つの空間仕切設備40が最上階に設置されることが好ましい。
【0031】
<<本実施形態に係る建物の建設方法について>>
以下、図1に示す建物1を前提として、本実施形態に係る建物の建設方法について説明する。図3~10は、本実施形態に係る建物の建設方法を説明するための概略図である。
なお、本実施形態に係る建物の建設方法は、新築及びリフォームを問わず、適用することが可能である。また、本実施形態に係る建物の建設方法は、木造及び鉄骨の建設物を問わず、適用することが可能である。
【0032】
先ず、図3に示すように、空間仕切設備40、機器51、及び、内装材52を準備する準備工程を実施する。具体的には、例えば製造工場にて、空間仕切設備40、機器51、及び、内装材52をそれぞれ製造する。空間仕切設備40、機器51、及び、内装材52は、別の製造工場にてそれぞれ製造されてもよい。
次に、図4に示すように、空間仕切設備40の内部に、建物1の完成後における空間仕切設備40の用途に応じた機器51及び内装材52の少なくとも一方を配置する工程(第4工程に相当)を実施する。より具体的には、空間仕切設備40、機器51、及び、内装材52を、組立工場に集結させて、空間仕切設備40内に機器51及び内装材52の少なくとも一方を配置する。
【0033】
次に、図5に示すように、空間仕切設備40を、建設中の建物1の躯体10内に配置する工程(第1工程に相当)を実施する。空間仕切設備40は、躯体10内に複数配置されてもよい。
躯体10は、この時点で、基礎、床、柱、壁、軒桁21、及び、小屋梁22が組み立てられた状態となっている。すなわち、第1工程以降、小屋束23、棟母屋24、及び、屋根31が組み立てられることとなる。
より具体的に説明すると、まず、前述の第4工程を経た空間仕切設備40を、建設中の建物1の建設現場に輸送する。その後、クレーン等を利用して、空間仕切設備40を建設中の建物1の躯体10内に搬入する。詳しくは、クレーンによって躯体10の上方に空間仕切設備40を運搬する。その後、空間仕切設備40を下降させ、躯体10の上方の開口部、すなわち、軒桁21及び小屋梁22で囲まれた開口部を通じて躯体10内に空間仕切設備40を搬入する。
次に、躯体10内に搬入された空間仕切設備40を、移動機構42を用いて移動させて、足場として利用する位置に配置する。より具体的には、屋根31が設置される予定の位置の下方空間S4に、空間仕切設備40を配置する。図1に示す例では、下方空間S4は、小屋束23を設置する予定の位置の下方空間とする。
【0034】
次に、図6に示すように、躯体10内に配置された空間仕切設備40を足場として利用する工程(第2工程)を実施する。第2工程では、建物1の屋根31、より具体的には勾配屋根を設置するための足場として空間仕切設備40を利用する。
より詳しくは、躯体10に対して空間仕切設備40を仮固定した後、作業者が空間仕切設備40の天井壁45に登って作業を行う。仮固定は、例えば移動機構42のキャスターに備えられたストッパによりキャスターの回転を止める等であってもよい。
作業者は、空間仕切設備40に立て掛けられた不図示の梯子等を使って空間仕切設備40の天井壁45に登った後、小屋梁22の上端に小屋束23を取り付け、小屋束23の上端に棟母屋24を取り付ける。
【0035】
その後、図7に示すように、作業者は、クレーン等を用いながら屋根版31aを設置する。具体的には、軒桁21と棟母屋24とを結ぶ方向を屋根版31aの長手方向として、軒桁21及び棟母屋24の上に屋根版31aを設置する。屋根版31aは、軒桁21及び棟母屋24に対して不図示の金物を用いて固定される。
その後、図8に示すように、屋根版31aの設置が全て終了すると、作業者は、空間仕切設備40から降りて、足場としての空間仕切設備40の利用を終える。
なお、足場として空間仕切設備40を利用して、天井の仕上げ、又は天井側の配線工事を実施してもよい。
【0036】
次に、図9に示すように、空間仕切設備40内の空間を完成後の建物1における1つの空間S1として利用するために、空間仕切設備40を躯体10内の配置位置Pに配置する工程(第3工程に相当)を実施する。より具体的には、躯体10内に対する空間仕切設備40の仮固定を解除し、移動機構42を用いて、完成後の建物1における1つの空間S1として利用するための配置位置Pに移動する。配置位置Pは、図9に示す例では、梁方向における躯体10内の一端とする。
【0037】
その後、図10に示すように、躯体10内の仕上げ工程を実施する。より具体的には、空間仕切設備40を不図示の固定具により躯体10に固定し、躯体10内の各部に仕上げ材等を設置する。仕上げ工程が終了することにより、建物1が完成する。
【0038】
<<本実施形態の作用及び効果>>
以上までに説明したように、本実施形態に係る建物の建設方法では、第1工程において、足場として利用する空間仕切設備40を躯体内に配置する。このため、特許文献1に記載された仮設の足場のように、足場の構成要素である支柱等を躯体内に搬入し、躯体内で支柱等を組み立てることにより足場を構成する場合に比べて、足場の設置に費やす作業工数を軽減することができる。
また、本実施形態に係る建物の建設方法では、第3工程において、空間仕切設備40内の空間を完成後の建物1における1つの空間S1として利用するために、空間仕切設備40を躯体10内の配置位置Pに配置する。このため、特許文献1に記載された仮設の足場のように、足場の利用が終わった後、足場を解体し、足場の構成要素である支柱等を躯体内から搬出する場合に比べて、足場の撤去に費やす作業工数を軽減することができる。
このように、本実施形態に係る建物の建設方法によれば、足場の設置及び撤去に費やす作業工数を軽減させ、効率的に建物を建設することができる。
【0039】
また、本実施形態に係る建物の建設方法では、空間仕切設備40内の空間を完成後の建物1における1つの空間S1として利用するので、空間S1を仕切るための壁等を躯体10内に新たに設ける工数を軽減することができる。すなわち、第3工程の後工程における作業工数が軽減されるので、より効率的に建物を建設することができる。
【0040】
また、第2工程では、建物1の屋根31を設置するための足場として空間仕切設備40を利用する。
これにより、屋根31を設置する作業において、足場の設置及び撤去に費やす作業工数が軽減され、効率的に建物を建設することができる。
この点、従来より、屋根版31aにCLT等の構造体を適用する場合、屋根版31a自体を構造体として機能させ、小屋組みを構成する梁の数を減らして小屋裏空間を広く確保していた。一方で、小屋組みを構成する梁の数を減らすことにより、屋根版31aを設置する作業を行うための足場が減り、仮設の足場を設置する必要が生じていた。これにより、足場の設置及び撤去に作業工数を費やすことになっていた。
これに対して、本実施形態に係る建物の建設方法では、CLT等の構造体を屋根版31aとして設置する場合であっても、足場の設置及び撤去に費やす作業工数が軽減される。このように、本実施形態に係る建物の建設方法では、小屋裏空間S3を広く確保しつつ、建物1を効率的に建設することができる。
【0041】
また、空間仕切設備40のサイズは、完成後の建物1における小屋裏空間S3の広さに応じて設定することができる。すなわち、小屋裏空間S3の高さに応じて側壁44の高さを設定し、小屋裏空間S3の床面積に応じて天井壁45の面積を設定することができる。このように、本実施形態に係る建物の建設方法では、完成後の建物1における小屋裏空間S3の広さに応じて空間仕切設備40のサイズを設定することができるので、小屋裏空間S3を有効に利用することができる。
【0042】
また、屋根31は、勾配屋根である。
これにより、勾配屋根を設置する作業において、足場の設置及び撤去に費やす作業工数が軽減され、効率的に建物を建設することができる。
また、勾配屋根とすることにより、小屋裏空間S3をより広く確保することができるので、小屋裏空間S3をさらに有効に利用することができる。
【0043】
また、第1工程では、屋根31が設置される予定の位置の下方空間S4に空間仕切設備40が配置される。
これにより、屋根31を設置する作業をより効率的に行うことができる。
【0044】
また、第1工程では、箱型の本体部41と、本体部41の下部に取り付けられた移動機構42とを有する空間仕切設備40を、移動機構42を用いて足場として利用する位置に移動させる。
これにより、躯体10内における空間仕切設備40の移動が容易となり、効率的に建物を建設することができる。
【0045】
また、第3工程では、箱型の本体部41と、本体部41の下部に取り付けられた移動機構42とを有する空間仕切設備40を、移動機構42を用いて、完成後の建物における1つの空間として利用するための位置に移動させる。
これにより、躯体10内における空間仕切設備40の移動が容易となり、効率的に建物を建設することができる。
【0046】
また、空間仕切設備40の内部に、建物1の完成後における空間仕切設備40の用途に応じた機器51及び内装材52の少なくとも一方を配置する第4工程を、第1工程の前に実施する。
これにより、空間仕切設備40の内部に、あらかじめ機器51及び内装材52等を配置することにより、後の仕上げ工程における作業工数が軽減されるので、効率的に建物を建設することができる。
【0047】
<<その他の実施形態について>>
以上までに、本発明の建物の建設方法に関する一つの実施形態を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするために挙げた一例にすぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、本発明の構成は、その趣旨を逸脱しない限り、上記の実施形態から変更又は改良され得る。
【0048】
上記の建物の建設方法では、図7に示すように、軒桁21と棟母屋24とを結ぶ方向と屋根版31aの長手方向とが互いに沿うように、軒桁21及び棟母屋24の上に屋根版31aを設置するとした。ただし、これに限られず、図11に示すように、軒桁21と棟母屋24とを結ぶ方向と屋根版31aの短手方向とが互いに沿うようにして、軒桁21及び棟母屋24の上に複数の屋根版31aを並べて設置してもよい。この場合、軒桁21と棟母屋24との間に垂木25を配置してもよい。垂木25は、屋根版31aの支持部材として機能する。
【0049】
また、上記の建物の建設方法では、図7に示すように、小屋束23及び棟母屋24を利用して屋根版31aを設置していたが、これに限られず、図12に示すように、仮設支柱C及び仮設梁Bを利用して屋根版31aを設置してもよい。
具体的には、図12に示すように、空間仕切設備40を足場として利用して、空間仕切設備40の上端面に立てた仮設支柱Cにより仮設梁Bを支持させ、屋根31を構成する屋根版31aを仮設梁Bに載せてもよい。
これにより、空間仕切設備40、仮設支柱C、及び、仮設梁Bを利用して、屋根版31aを設置する作業を効率的に行うことができる。なお、屋根版31aを設置する作業において、一対の軒桁21の間に不図示のタイバー又はテンションロッドを配置して、一対の軒桁21の間隔を保持してもよい。
また、仮設梁B及び仮設支柱Cは、屋根31を設置した後に撤去される。このため、建物1に比べて、より広い小屋裏空間を確保することができる。すなわち、図12に示す例により建設された建物では、建物1に比べて、棟母屋24が設置されず、小屋束23の数が軽減されるので、より広い小屋裏空間を確保することができる。
【0050】
また、上記の建物の建設方法では、図5に示すように、第1工程では、1つの空間仕切設備40を躯体10内に配置し、図9に示すように、第3工程では、1つの空間仕切設備40を躯体10内の配置位置Pに配置した。ただし、これに限られず、図13に示すように、第1工程では、複数の空間仕切設備40A,40Bを躯体10内に配置し、第3工程では、複数の空間仕切設備40A,40Bを連結した状態で躯体10内に配置してもよい。これにより、連結された複数の空間仕切設備40A,40Bの空間を、完成後の建物における1つの空間として利用することができる。
なお、第3工程において、複数の空間仕切設備を連結せずに躯体10内に配置してもよい。例えば、第3工程において、2つの空間仕切設備を躯体10内に隣り合って配置し、完成後の建物における隣り合う別々の空間として利用してもよい。
また、第3工程において、2つの空間仕切設備を躯体10内に互いに離れた位置に配置し、2つの空間仕切設備の上端を天版で連結してもよい。これにより、2つ空間仕切設備及び天版の上方空間を小屋裏空間として利用することができる。
【符号の説明】
【0051】
1,1A 建物
10 躯体
20 小屋組
21 軒桁
22 小屋梁
23 小屋束
24 棟母屋
25 垂木
31 屋根
31a 屋根版
40,40A,40B 空間仕切設備
41 本体部
42 移動機構
43 底壁
44 側壁
45 天井壁
51 機器
52 内装材
B 仮設梁
C 仮設支柱
P 配置位置
R 小屋裏部屋
S1,S2 空間
S3 小屋裏空間
S4 下方空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13