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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143577
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】害獣検出装置及び害獣捕獲システム
(51)【国際特許分類】
   A01M 23/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A01M23/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056328
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】515020533
【氏名又は名称】カミエンス・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099634
【弁理士】
【氏名又は名称】平井 安雄
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 英路
(72)【発明者】
【氏名】林 大三
【テーマコード(参考)】
2B121
【Fターム(参考)】
2B121AA01
2B121DA27
2B121FA14
(57)【要約】
【課題】害獣の種別を正確に特定することで、捕獲したい害獣のみを確実に罠に掛けることができる害獣検出装置及び害獣捕獲システムを提供する。
【解決手段】撮像対象となる害獣に向けて近赤外線を照射する近赤外線LED11と、近赤外線LED11が照射した近赤外線の反射光線、及び可視光の反射光線を受光して撮像するカメラ12と、カメラ12が撮像した画像情報に基づいて、少なくとも害獣の種別を特定する害獣特定部144と、害獣特定部144が特定した害獣の種別に応じて、害獣を捕獲するための箱罠20a及び/又はくくり罠20bの発動を制御する罠発動部144とを備える。害獣特定部144は、側面方向からの害獣の姿勢解析及び行動解析に基づいてその種別を特定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像対象となる害獣に向けて近赤外線を照射する近赤外線照射手段と、
前記近赤外線照射手段が照射した近赤外線の反射光線、及び可視光の反射光線を受光して撮像する撮像手段と、
前記撮像手段が撮像した画像情報に基づいて、少なくとも前記害獣の種別を特定する種別特定手段と、
前記種別特定手段が特定した前記害獣の種別に応じて、前記害獣を捕獲するための罠の発動を制御する制御手段とを備えることを特徴とする害獣検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の害獣検出装置において、
前記撮像手段が、前記害獣が罠に向かう方向と垂直である側面方向から前記害獣及び前記罠を撮像し、前記種別特定手段が、側面方向からの前記害獣の姿勢解析及び行動解析に基づいて前記害獣の種別を特定することを特徴とする害獣検出装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の害獣検出装置と当該害獣検出装置が発動を制御する箱罠とを備える害獣捕獲システムであって、
前記制御手段は、前記種別特定手段が特定した前記害獣の種別が捕獲対象の害獣であり、且つ、前記害獣の前記箱罠への進入率が所定の値以上である場合に、前記箱罠の入口を封鎖することを特徴とする害獣捕獲システム。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の害獣検出装置と当該害獣検出装置が発動を制御するくくり罠とを備える害獣捕獲システムであって、
前記くくり罠は、害獣の荷重が掛かることで落下する踏板と、当該踏板の落下に伴い前記害獣の足を括る捕獲部と、前記踏板が落下するのを阻害するストッパーとを備え、
前記制御手段は、前記種別特定手段が特定した前記害獣の種別が捕獲対象ではない害獣である場合に、前記ストッパーが動作して前記踏板が落下しないように制御することを特徴とする害獣捕獲システム。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の害獣検出装置と、当該害獣検出装置が発動を制御する罠と、当該罠に向かう害獣を忌避する忌避手段とを備える害獣捕獲システムであって、
前記害獣検出装置が、前記罠に向かう害獣の種別が捕獲対象ではない害獣の場合に前記忌避手段を動作し、前記罠に向かう害獣の種別が捕獲対象である害獣の場合に前記忌避手段を動作しないように制御することを特徴とする害獣捕獲システム。
【請求項6】
請求項5に記載の害獣捕獲システムにおいて、
前記害獣検出装置及び前記忌避手段は、前記罠に対応して一の害獣検出装置及び一の忌避手段が対応して設置され、前記罠の周囲には複数の他の害獣検出装置及び他の忌避手段がそれぞれ対応して設置されており、
前記他の害獣検出装置は、前記罠に向かう害獣の種別が捕獲対象ではない害獣の場合に対応する前記他の忌避手段を動作し、前記罠に向かう害獣の種別が捕獲対象である害獣の場合に前記他の忌避手段を動作しないように制御し、
前記一の害獣検出装置は、前記罠に近づく害獣の種別が捕獲対象ではない害獣の場合に前記罠を発動しないように制御し、前記罠に近づく害獣の種別が捕獲対象である害獣の場合に前記罠を発動するように制御することを特徴とする害獣捕獲システム。
【請求項7】
請求項6に記載の害獣捕獲システムにおいて、
前記他の害獣検出装置のうちの第1の害獣検出装置が、捕獲対象である害獣を撮影した場合に、撮影された前記害獣の種別及び移動態様に基づいて、前記他の害獣検出装置のうちの第nの害獣検出装置が対応する第nの前記忌避手段を動作して前記害獣を前記罠に誘導することを特徴とする害獣捕獲システム。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の複数の害獣検出装置と、当該害獣検出装置が発動を制御する罠とを備える害獣捕獲システムであって、
前記罠に害獣が捕獲された場合の当該罠が仕掛けられた位置情報、捕獲時刻の情報、捕獲した害獣の種別、及び害獣が現れた方向のベクトル情報、並びに、前記罠に害獣が捕獲されなかった場合の当該罠の位置情報、撮像された時刻の情報、撮像された害獣の種別、及び害獣が現れた方向と逃げ去った方向とを示すベクトル情報とに基づいてマップを作成するマップ作成手段を有する管理装置を備えることを特徴とする害獣捕獲システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、害獣を捕獲するための罠を発動する害獣検出装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の環境破壊や異常気象などの影響で害獣による被害が拡大している。このような害獣対策に関する技術として、例えば非特許文献1や特許文献1又は2に示す技術が開示されている。
【0003】
非特許文献1には、画像認識AIシステムが獣種を判断して自動で罠扉を閉鎖することが記載されている。
【0004】
特許文献1には、害獣回収判定装置は、作物育成領域で育成される作物の状態に基づいて、作物の育成度を判定する育成度判定部と、作物育成領域の周辺に設置された捕獲装置に捕獲された動物の映像データに基づいて、動物の種類を特定する動物特定部と、育成度判定部が判定した作物の育成度と、動物特定部が特定した動物の種類とに基づいて、動物が害獣であるか否かを判定する害獣判定部と、害獣判定部の判定結果と、捕獲装置が設置されている位置とに基づいて、捕獲装置に対する行動の必要度を判定する必要度判定部と、を備えることが記載されている。
【0005】
特許文献2には、くくりわなの作動部分を、作成機器として製作する事により現場合わせ部分を無くし、一体とした獣くくりわな装置が開示され、また獣くくりわな装置にWWWネットワークに接続したネットワークカメラ等をシステムに組み込んだ獣くくりわな装置が開示され、此等の事により設置場所は水中等の場所にても可能になり、容易に設置出来て事故も少なくなり、遠方から監視出来て獣体をいためず獣捕獲確立の高い、獣捕獲対応の獣くくりわな装置が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】株式会社日本遮蔽技研、“自動捕獲「あいわな」”、農林水産省HP、農村振興、令和4年3月14日時点で掲載済み、<URL:https://www.maff.go.jp/j/seisan/tyozyu/higai/kikijouhou/attach/pdf/kikijouhou-69.pdf>
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2022-182272号公報
【特許文献2】特開2004-57174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
非特許文献1には、画像認識AIシステムが獣種を判断して自動で罠扉を閉鎖することが記載されているが、具体的な構成が記載されておらず、害獣の撮像状態や獣種の判定方法などが不明であるため、捕獲率や捕獲精度などを推し量ることが難しい。
【0009】
特許文献1に示す技術は、動物の種類と作物の状態とに応じて、当該動物が害獣であるかどうかを判定し、捕獲装置に対する行動の必要度を判定するものであるが、動物の種類を特定する技術として具体的ではなく、辞書データを用いて動物の種類を特定する程度の記載しかされていない。しかしながら、現実的には害獣が現れる時間帯としては夜中や暗闇であることが多く、単に(可視光による通常の)撮像を行うだけでは動物の姿を捉えるのは難しい。また、例えばシカとイノシシのように、明らかにその姿形が異なるものであれば、その画像データと辞書データとを比較した場合に明確に種別を区別することができると思われるが、アライグマとタヌキなどは、姿形が非常に似ているためその種別を特定することは極めて困難である。
【0010】
特許文献2に示す技術は、獣の種別に関係なくくくり罠が発動してしまうため、所望の獣のみを捕獲することができず、また対象外の獣が一度罠に掛かってしまうと、本来捕獲したい獣も警戒して罠に掛からなくなってしまうため、所望する獣の捕獲が難しくなってしまう。
【0011】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、害獣の種別を正確に特定することで、捕獲したい害獣のみを確実に罠に掛けることができる害獣検出装置及び害獣捕獲システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る害獣検出装置は、撮像対象となる害獣に向けて近赤外線を照射する近赤外線照射手段と、前記近赤外線照射手段が照射した近赤外線の反射光線、及び可視光の反射光線を受光して撮像する撮像手段と、前記撮像手段が撮像した画像情報に基づいて、少なくとも前記害獣の種別を特定する種別特定手段と、前記種別特定手段が特定した前記害獣の種別に応じて、前記害獣を捕獲するための罠の発動を制御する制御手段とを備えるものである。
【0013】
このように、本発明に係る害獣検出装置においては、撮像対象となる害獣に向けて近赤外線を照射する近赤外線照射手段と、前記近赤外線照射手段が照射した近赤外線の反射光線、及び可視光の反射光線を受光して撮像する撮像手段と、前記撮像手段が撮像した画像情報に基づいて、少なくとも前記害獣の種別を特定する種別特定手段と、前記種別特定手段が特定した前記害獣の種別に応じて、前記害獣を捕獲するための罠の発動を制御する制御手段とを備えるため、昼夜を問わず害獣の姿形や模様などを撮像することで害獣の種別を正確に特定できると共に、特定された種別に応じた罠の発動を制御することで、捕獲したい害獣のみを罠に掛けることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】第1の実施形態に係る害獣捕獲システムのシステム構成図である。
図2】第1の実施形態に係る害獣検出装置のハードウェア構成図である。
図3】第1の実施形態に係る害獣検出装置における制御部の構成を示す機能ブロック図である。
図4】第1の実施形態に係る害獣検出装置においてサーマルセンサを利用して画像処理を行う場合の具体例を示す図である。
図5】第1の実施形態に係る害獣検出装置における姿勢解析を行った状態を示す図である。
図6】第1の実施形態に係る害獣捕獲システムにおいて箱罠を発動する場合の説明図である。
図7】第1の実施形態に係る害獣捕獲システムにおいてくくり罠を発動する場合の説明図である。
図8】第1の実施形態に係る害獣捕獲システムにおいて作成されたマップの一例を示す図である。
図9】第1の実施形態に係る害獣検出装置の動作を示すフローチャートである。
図10】第2の実施形態に係る害獣捕獲システムのシステム構成図である。
図11】第2の実施形態に係る害獣検出装置の構成を示す機能ブロック図である。
図12】第2の実施形態に係る害獣検出装置の動作を示すフローチャートである。
図13】第3の実施形態に係る害獣捕獲システムの模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本発明の第1の実施形態)
本実施形態に係る害獣検出装置及び当該害獣検出装置を用いた害獣捕獲システムについて、図1ないし図9を用いて説明する。本実施形態に係る害獣検出装置及び生物検出システムは、撮像される害獣の種別を特定し、捕獲対象である害獣の場合にのみ罠を発動するように制御することで、所望の害獣を捕獲できるものである。
【0016】
図1は、本実施形態に係る害獣捕獲システムのシステム構成図である。害獣捕獲システム1は、撮像対象領域に入った害獣を撮像し、その種別を特定する処理等を行う害獣検出装置10と、当該害獣検出装置10からの制御信号により発動する/しないを制御される罠20と、少なくとも害獣検出装置10に電力を供給する電源50と、害獣検出装置10との間でインターネット等の通信を介して情報の送受信を行うと共に、害獣検出装置10で得られた害獣に関する情報等を管理する管理装置60と、システムの利用者が所有し、害獣検出装置10と直接又は管理装置60との間で情報の送受信を行う端末装置70とを備える。
【0017】
害獣検出装置10は撮像対象領域を常時撮像し、何かしらの害獣を検知した場合に検知された害獣の種別をリアルタイムに特定する。その結果、検知された害獣が捕獲対象の害獣である場合は、罠20を発動して当該害獣を捕獲する。害獣検出装置10は、撮像対象領域を常時撮像することから電力の供給を受ける必要があり、太陽光などの自然エネルギーを電力に変換する電源50からの電力供給を受ける。また、害獣検出装置10は、上記のような罠の発動を行うと共に、害獣を捕獲できたかどうかに関わらず罠の発動状態を示す罠情報や、撮像された害獣の画像情報、時刻、位置、移動方向等を示す害獣情報を管理装置60に送信する。
【0018】
管理装置60は、害獣検出装置10から送信される情報を管理し、それらの情報を罠の設定、準備、メンテナンス等に利用すると共に、撮像された害獣の情報などから今後の害獣対策や害獣の生態調査などの分析に利用する。管理装置60は、これらの情報を利用者の端末装置70に送信することで、利用者と情報共有が可能となる。特に罠を発動した場合に、害獣が捕獲されたときはその処分等を行う必要があり、捕獲されないときには改めて仕掛けの準備をしたり餌の補充などを行う必要があるため、利用者に情報が共有されることは重要である。また、害獣検出装置10が特定した害獣が、人に危害を及ぼす可能性があるような危険生物である場合は、管理装置60に予め登録されている連絡先に対して当該危険生物が出現した旨の情報をメールやSNSなどで配信する処理を行う。また、もし管理装置60と端末装置70との間の通信(例えば、Wi-Fi、LTE等のモバイル通信)が不能になったような場合であっても、害獣検出装置10と端末装置70との間で直接通信(例えば、電話回線を利用したSMSや衛星回線を用いた通信)を行うようにすることで、危険生物等の存在を報知するようにしてもよい。
【0019】
害獣検出装置10の構成について詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る害獣検出装置のハードウェア構成図である。図2において、害獣検出装置10は、撮像対象領域に侵入する害獣に対して近赤外線を照射する近赤外LED11と、昼間の時間帯においては撮像対象領域に侵入した害獣を可視光線で撮像する(通常撮像モード)と共に、夜間の時間帯においては近赤外LED11で照射した近赤外線が撮像対象領域に侵入した害獣で反射する近赤外光線で撮像を行う(夜間撮像モード)カメラ12と、撮像対象領域に侵入した害獣が放出する遠赤外線を検知して撮像するサーマルセンサ13と、検知された害獣の種別特定処理、各センサの動作制御、罠発動の制御などを行う制御部14と、外部機器との入出力を行うための入出力インターフェース15と、外部機器と有線又は無線で通信を行うための通信インターフェース16とを備える。この害獣検出装置10は、カメラ12が害獣が罠20に向かう方向と垂直になる側面方向から当該害獣及び罠20を撮像するように設置される。
【0020】
カメラ12は、害獣を撮像する画像センサであり、太陽光などの可視光を光源とする通常撮像モードでの撮像や、近赤外LED11を光源とする近赤外光線による夜間撮像モードでの撮像を行う。通常撮像モードで撮像を行う場合は近赤外光線をカットするフィルタを通しており、夜間撮像モードで撮像を行う場合は近赤外光線をカットするフィルタを外すことで撮像を行う。
【0021】
サーマルセンサ13は、遠赤外線を検知してその強さに応じて温度を検知するものである。一般的には遠赤外線が強いほど温度が高くて赤く表示され、遠赤外線が弱いほど温度が低くて青く表示される。すなわち、撮像対象領域に害獣が侵入した場合には、その害獣の体温の温度分布を検知することができる。
【0022】
制御部14は、CPU、MPU、MCUなどの演算処理装置で構成されており、害獣検出装置10全体を制御する。この制御部14の処理については詳細を後述する。入出力インターフェース15は、電源50などの外部機器との接続を行うインターフェースである。通信インターフェース16は、罠20を発動するための発動センサや管理装置60との間で通信を行うためのインターフェースであり、例えばWi-Fi、Blue tooth(登録商標)、LTEなどの無線通信を行うことが可能となっている。
【0023】
図3は、本実施形態に係る害獣検出装置10における制御部14の構成を示す機能ブロック図である。制御部14は、カメラ12により通常撮像モード又は夜間撮像モードで撮像された画像情報81、及びサーマルセンサ13で撮像された温度情報82を取得する情報取得部141と、取得した温度情報82に基づいて、害獣の温度分布が検出された領域を画像処理を行う対象となる処理対象領域として抽出する処理対象領域抽出部142と、画像情報81のうち、抽出された処理対象領域に対応する領域に対して画像処理を行うことで害獣の輪郭を特定し、害獣の領域だけを抽出する害獣抽出部143と、抽出された害獣の領域の画像情報81から当該害獣の種別を特定する害獣特定部144と、種別が特定された害獣について、予め害獣の種別ごとに捕獲対象であるかどうかを登録している捕獲対象情報記憶部146の情報に基づいて罠20の発動を制御するための制御信号を生成する罠発動部145と、生成された上記制御信号を罠20に送信したり、害獣特定部144が特定した害獣の種別、撮像された画像、撮像時刻、撮像位置、撮像対象領域移動に入ってきた方向、撮像対象領域から出て行った方向等を含む害獣情報83や罠20の発動状態などを含む罠情報84等を管理装置60に出力する出力制御部148とを備える。
【0024】
ここでまず、処理対象領域抽出部142、害獣抽出部143及び害獣特定部144の処理について、具体的に説明する。図4は、本実施形態に係る害獣検出装置においてサーマルセンサ13を利用して画像処理を行う場合の具体例を示す図である。図4(A)に示すように、サーマルセンサ13で害獣を撮像することで、ある程度決まった範囲の害獣の体温を検知することが可能となる。つまり、害獣が存在している領域を検知することが可能となる。
【0025】
一方で、図4(B)に示すように、カメラ12により通常撮像モード又は夜間撮像モードで害獣が撮像される。サーマルセンサ13で撮像された図4(A)の体温領域とカメラ12で撮像された図4(B)の画像情報とを重ね合わせることで、図4(C)に示すように、害獣の領域を含む処理対象領域を特定することができる。そして、図4(D)に示すように、図4(C)で特定された処理対象領域に相当する図4(B)の画像情報が抽出される。図4(D)の処理対象領域となる画像情報に対して画像処理を行うことで、図4(E)に示すような害獣の輪郭、すなわち害獣の領域のみを特定し、害獣画像を抽出することが可能となる。害獣の領域のみの害獣画像が抽出されると、AIやパターン認識などの技術を用いることで害獣の種別が特定される。このとき、カメラ12は害獣を側面方向から撮像しているため、横方向から見た害獣の姿勢解析及び行動解析を行う。AIやパターン認識などを行う場合には、これらの害獣の姿勢、行動及び/又は体の模様等の情報を考慮することで、害獣の種別をより正確に特定することが可能となる。
【0026】
ここで、姿勢解析及び行動解析について説明する。図5は、本実施形態に係る害獣検出装置における姿勢解析を行った状態を示す図である。図5においてはイノシシの姿勢解析を行った場合を示している。姿勢解析については公知の技術を用いることが可能であるが、対象が人間ではなく害獣であることから、動物の姿勢に対応した解析が行われる。つまり、足の姿勢や長さ、胴の姿勢や長さ、耳の位置や角度、口や鼻の位置や角度など害獣ごとの姿勢解析が行われる。一例として、二本足で立つ(サル、クマなど)か四本足で立つ(イノシシ、シカ、タヌキなど)かにより種別を分けたり、足が短い(イノシシ、タヌキなど)か足が長い(シカなど)かにより種別を分けることができる。
【0027】
また、本実施形態においては、このような姿勢解析に加えて行動解析を行うようにしてもよい。例えば、イノシシであれば地面に背中を擦るような行動をしたり、アライグマであれば洗う行動をすることから種別を分けることができる。また、例えば、非常に警戒心が強い害獣であれば速足で餌に近づき、警戒心が弱い害獣であればゆっくりと餌に近づくといった行動により種別を分けることができる。
【0028】
なお、上記姿勢解析や行動解析以外にも、害獣の模様をパラメータとすることで、例えば尻尾に模様がない(タヌキ)か尻尾に黒い縞模様がある(アライグマ)かにより種別を分けることが可能となる。これらのパラメータを総合的に用いてAIやパターン認識を行うことで、極めて高精度に害獣の種別を特定することが可能となる。
【0029】
以上のように、害獣の種別特定においてサーマルセンサ13で撮像された温度情報82を活用することで、画像処理による演算装置への負荷が低減される。なお、このような方法を用いることなく、カメラ12で撮像された画像情報81の全体に対して、例えばAIなどで害獣を認識し、その上で画像処理の対象となる領域を抽出することも可能であるが、上記方法を用いた方が処理を軽くすることができるため望ましい方法となる。
【0030】
罠発動部145は、害獣特定部144で検知された害獣の種別が特定された結果に基づいて、捕獲対象情報記憶部146から、特定された種別の害獣が捕獲対象であるかどうかを判定し、捕獲対象である場合には罠20を発動するための制御信号を生成する。捕獲対象情報記憶部146には、例えば害獣の種別ごとに今回仕掛けた罠20の捕獲対象であるかどうかを示す対応表が予め登録されており、害獣特定部144で特定された種別と当該対応表とを比較して、捕獲対象として登録されている場合に罠20を発動するための制御信号が生成される。
【0031】
なお、対処情報記憶部146には害獣の捕獲対象に関する情報だけではなく、生物全般の捕獲対象が含まれてもよい。例えば逃げたペットの捕獲なども本発明の対象とすることができる。
【0032】
出力制御部148は、罠発動部145で生成された罠20の制御信号を罠20に送信する。罠20は、出力制御部148から送信された制御信号に基づいて発動し、害獣を捕獲する。出力制御部148は、罠20の制御信号以外にも、後述するような管理装置60に対して害獣情報83や罠情報84を送信する処理を行う。
【0033】
ここで、罠20の発動について説明する。害獣捕獲システム1を構成する罠20には複数の種類があり、例えば箱罠、囲い罠、くくり罠等がある。箱罠、囲い罠は、餌などを使って害獣を箱や囲いの内部に誘導し、入口を閉じることで捕獲する罠である。くくり罠は、害獣の体の一部をワイヤなどで締め付けて拘束することで捕獲するものであり、圧縮したバネの力を利用する押しバネ方式、伸張したバネの力を利用する引きバネ方式、ねじりバネの力を利用するねじりバネ方式などが一般的に知られている。
【0034】
図6は、本実施形態に係る害獣捕獲システムにおいて箱罠を発動する場合の説明図である。罠20(ここでは箱罠20a)は、図6(A)に示すように扉21が開けられた状態で設置されており、奥の方に餌22が配置される。害獣検出装置10は箱罠20aの横に設置され、害獣が箱罠20aに向かう方向と垂直となる側面方向からカメラ12による撮像を行う。このとき、箱罠20aの入口23が撮像対象範囲に含まれることが望ましい。害獣が箱罠20aに近づいてカメラ12の撮像対象領域に入ると、上記で説明したような処理が実行されて害獣の種別が特定される。罠発動部145は、特定された害獣の種別が捕獲対象であると判断されたら、図6(A)に示す扉21を閉じるトリガーとなる制御信号を生成する。扉21は、例えばウインチ機構やスライド機構などにより開閉可能に設置されており、出力制御部148から送信された上記制御信号を受信すると箱罠20aが発動し、ウインチ機構やスライド機構により扉21が閉じられて図6(B)に示す状態となる。
【0035】
このとき、害獣が箱罠20aに進入してすぐに扉21が作動すると、ウインチ機構やスライド機構の動作音に反応して害獣が逃げてしまう可能性があるため、箱罠20aの発動のタイミングが重要となる。本実施形態においては、罠発動部145が箱罠20aと害獣との位置関係を認識し、害獣の身体部分が箱罠20aに対して進入した割合が所定の値を超えた場合に、上記の制御信号を送信する構成となっている。例えば図6の場合は、進入率60%の位置に閾値が設定されており、害獣の身体(一部又は全部)が進入率60%を超えた場合に扉21を閉じるように制御信号を送信する。こうすることで、一度罠20に入った害獣を逃がすことなく確実に捕獲することが可能となる。
【0036】
なお、進入率の閾値は変動するようにしてもよく、例えば害獣の種別に応じて変動したり、季節や天候に応じて変動したり、時間帯に応じて変動してもよい。
【0037】
また、箱罠20aに近づく害獣が捕獲対象ではない場合は、罠発動部145による上記制御信号の生成は行わないが、餌22が食べられてしまうことを防止するための防止手段を駆動させる制御信号を生成し、出力制御部148から送信するようにしてもよい。防止手段としては、例えば餌22の露出面にカバーが被覆される、餌が入っている容器を害獣が届かない場所まで移動する、周囲にいる捕獲対象となる害獣に影響がない程度の一瞬の音や振動や光などで害獣を忌避させるといった防止手段が考えられる。こうすることで、捕獲対象ではない害獣に餌22だけを食べられることがなくなるため、餌22の入れ替えを効率よく行うことが可能となる。特にアクセスが困難な山奥などに設置されたような箱罠20aの餌22の入れ替えに対しては非常に効果的となる。
【0038】
図7は、本実施形態に係る害獣捕獲システムにおいてくくり罠を発動する場合の説明図である。罠20(ここではくくり罠20b)は、図7(A)に示すように害獣の通り道となる獣道に埋設されて設置される。この埋設されたくくり罠20の上に害獣が脚を置いて体重を掛けることで内部の円筒25が沈み込み、当該円筒25により円環状に広がっていたワイヤ26がバネ27により締め付けられて害獣を捕獲する。害獣検出装置10はくくり罠20bの近傍に設置され、害獣がくくり罠20bに向かう予想進入路と垂直となる方向からカメラ12による撮像を行う。このとき、くくり罠20bに向かう手前側(1~数メートル手前側)が撮像対象範囲に含まれることが望ましい。害獣がくくり罠20bに近づいてカメラ12の撮像対象領域に入ると、上記で説明したような処理が実行されて害獣の種別が特定される。罠発動部145は、特定された害獣の種別が捕獲対象であると判断された場合は、図7(A)に示した状態で特に何も行わず、害獣がくくり罠20bに掛かるのを待つ。特定された害獣の種別が捕獲対象でないと判断された場合は、図7(B)に示すように、埋設されているくくり罠20bの内部の円筒25が害獣の加重により沈み込まないようにストッパー24を作動させるための制御信号を生成する。つまり、捕獲対象ではない害獣がくくり罠20bに加重を掛けても円筒25が沈み込まないため、ワイヤ26が締まることもなく害獣が捕獲されない。ストッパー24は、例えばピストン式で押し出す構造となっており、出力制御部148から送信された制御信号を受信するとストッパー24が円筒25の下端部分に差し込まれて図7(B)に示す状態となる。
【0039】
ストッパー24を押し出すタイミングは、捕獲対象ではない害獣が撮像対象領域に進入したタイミングでもよいし、捕獲対象ではない害獣がくくり罠20bの上を通る直前のタイミングでもよいが、害獣は音に敏感であることから、できるだけくくり罠20bと害獣との間に距離があるタイミングでストッパー24を押し出すのが望ましい。また、ストッパー24を外すタイミング(くくり罠20bが作動する状態に戻すタイミング)は、害獣が検出されなくなってから所定時間経過した後に実行する。ストッパー24を外すための制御信号についても罠発動部145により生成される。
【0040】
罠発動部145は、上記のように捕獲対象である害獣が検出された場合に罠20を発動するが、害獣の種別によっては捕獲対象であっても直ちに罠20を発動せずに、他の条件を満たした場合に罠20を発動するのが好ましい場合がある。例えば、ニホンシカは極めて警戒心が強いため、罠20に慣れたタイミング(例えば、3回以上箱罠20aに入ったタイミング)で扉21を閉じたり、複数頭(例えば、5頭以上)が同時に箱罠20aに入ったタイミングで扉21を閉じるといった発動の制御を行う。また、例えばイノシシは子イノシシ(ウリボウ)を捕獲してもあまり効果がないため、子イノシシの場合は罠20を発動せずに母イノシシの場合にのみ罠20を発動するといった制御を行う。このとき、子イノシシと母イノシシとの区別は大きさ(害獣を示す部分の画像の面積の大きさ)で行う。さらに、例えばサルの場合は箱罠20aに複数頭(例えば3頭)入った時点で、箱罠20aの外に他のサルがいないと判断される場合は箱罠20aを発動し、他のサルがいると判断される場合は所定時間(例えば10分程度)待機した後に箱罠20aを発動する。
【0041】
なお、これ以外にも、例えば害獣特定部144が害獣の種別に加えて、オス/メスの区別を行えるようなAIを用いた場合は、害獣の種別によってはメスのみを捕獲するようにしてもよい。また、更に高性能なAIを用いて害獣の個体を識別できるようになれば、個体ごとの特徴に合わせた罠20の発動を行うようにしてもよい。例えば、同じイノシシでも警戒心が強いと判断されるイノシシの場合は、箱罠20aを発動するための進入率の閾値を高め(より奥側に進入した場合に罠20を発動)に設定し、警戒心が弱いと判断されるイノシシの場合は、上記閾値を低め(比較的入口23に近くても罠20を発動)に設定してもよい。警戒心が強い/弱いの判断は、例えば罠20に掛からなかった日の動きや姿勢、集団で動いている場合の順番、体の大きさなどから総合的に判断するようにしてもよい。同様に、警戒心が強い/弱い以外の個体ごとの特徴をカメラ12が撮像した情報に基づいて個体ごとに推定し、当該特徴に合わせた罠20の発動を行うようにしてもよい。
【0042】
管理装置60は、出力制御部148から送信された害獣情報83や罠情報84に基づいて、害獣の生態や罠20の発動状況などを管理し、必要に応じて利用者の端末装置70に送信したり、これらの情報を管理装置60に格納しておくことで、端末装置70からのアクセスによりいつでも参照できるように管理する。具体的には、管理装置60は、害獣情報83や罠情報84に含まれる、罠20に害獣が捕獲された場合の当該罠20が仕掛けられた位置情報、捕獲時刻の情報、捕獲した害獣の種別、及び害獣が現れた方向のベクトル情報、並びに、罠20に害獣が捕獲されなかった場合の当該罠20の位置情報、撮像された時刻の情報、撮像された害獣の種別、及び害獣が撮像対象領域に現れた方向と逃げ去った方向とを示すベクトル情報などを取得し、これらの情報に基づいてマップを生成するマップ生成部(図示しない)を備え、端末装置70からアクセスすることで当該マップを参照することが可能となっている。
【0043】
図8は、本実施形態に係る害獣捕獲システムにおいて作成されたマップの一例を示す図である。マップは罠20に害獣が捕獲されたかどうに関わらず作成されるものであり、捕獲された場合は、その罠20の位置と時系列が害獣の種別ごとにマッピングされ、どの方向から出現したかを示す矢印が示される。捕獲されなかった場合も、同様に当該罠20の近傍で撮像された位置と時系列が害獣の種別ごとにマッピングされ、それに加えてどの方向から出現してどの方向に逃げ去ったかを示す矢印が示される。このとき、捕獲されなかった害獣のうち、本来捕獲したかったにも関わらず逃げられた害獣と、元々捕獲対象ではない(又は保護対象)となっている害獣とは区別して示される。図8においては、捕獲された害獣は種別に星印を示し、捕獲したかったにも関わらず逃げられた場合はその種別だけを示し、捕獲対象ではない害獣が撮像された場合は種別に逆三角印を示している。一度も害獣が撮像されていない罠20については「なし」が示されており、矢印は出現した方向と去って行った方向とを示している。特に同日の近い時間帯に同種の害獣が異なる罠20で連続的に撮像された場合は、罠20同士を時系列に矢印で接続することでその移動経路を示すことが可能となっている。
【0044】
このようなマップを生成することで、害獣の捕獲状況、取り逃がした害獣の数、移動方向に基づいた害獣の生息領域の推定、罠20を仕掛ける最適な場所、害獣の進路予測等に利用することが可能となる。
【0045】
管理装置60は、マップの生成以外にも、害獣に関する情報が所定の条件を満たす場合(例えば、人に危害を加える可能性がある狂暴な生物が検知された場合、危険な生物が撮像対象領域から人里の方向に向かって退散した場合等)には、予め設定された連絡先(例えば、自治体、警察署、消防署、猟友会、近隣住民等)にその旨の情報をメールやSNSなどで発信するようにしてもよい。この所定の条件については、例えば特定された害獣の種別が危険生物や大型生物であり、罠20で捕獲することができなかった場合などが含まれる。
【0046】
以下、害獣検出装置10の動作について説明する。図9は、本実施形態に係る害獣検出装置の動作を示すフローチャートである。まず、情報取得部141が、害獣検出装置10で撮像された画像情報81を取得すると共に(S1)、温度情報82を取得する(S2)。処理対象領域抽出部142が、温度情報82で撮像された害獣の温度分布に基づいて、画像処理の対象となる処理対象領域を抽出する(S3)。害獣抽出部143が、処理対象領域に対して画像処理により害獣の輪郭を特定し、害獣の領域のみを抽出する(S4)。害獣特定部144は、抽出された害獣の領域から、姿勢解析、行動解析などの解析情報を利用しつつ、AIや画像認識などの技術を用いて害獣の種別を特定する(S5)。罠発動部145は、種別が特定された害獣が罠20による捕獲対象であるかどうかを捕獲対象情報記憶部146に登録された情報に基づいて判定し(S6)、捕獲対象であると判定された場合は、罠20の種別を判定し(S7)、箱罠20aであれば害獣の進入率に基づいて扉21を閉じるための制御信号を生成し(S8)、くくり罠20bであれば何もしない。一方、捕獲対象でないと判定された場合は、罠20の種別を判定し(S9)、箱罠20aであれば何もせず、くくり罠20bであれば円筒25が沈み込まないようにストッパー24を作動させるための制御信号を生成する(S10)。出力制御部148は、生成された罠20の制御信号を罠20に送信する(S11)。また、必要に応じて、害獣情報83や罠情報84を管理装置60に送信し(S12)、S1の処理に戻って同様の処理を繰り返して行う。
【0047】
このように、本実施形態に係る害獣検出装置においては、撮像対象となる害獣に向けて近赤外線を照射する近赤外LED11と、照射した近赤外線の反射光線、及び可視光の反射光線を受光して撮像するカメラ12と、カメラ12が撮像した画像情報に基づいて、少なくとも害獣の種別を特定する害獣特定部144と、特定した害獣の種別に応じて、害獣を捕獲するための罠20の発動を制御する罠発動部145とを備えるため、昼夜を問わず害獣の姿形や模様などを撮像することで害獣の種別を正確に特定できると共に、特定された種別に応じた罠20の発動を制御することで、捕獲したい害獣のみを罠に掛けることができる。
【0048】
また、害獣が罠に向かう方向と垂直である側面方向から害獣及び罠20を撮像し、側面方向からの害獣の姿勢解析及び行動解析に基づいて害獣の種別を特定するため、害獣ごとの特徴的な姿勢や行動に応じて種別を正確に特定することができる。
【0049】
さらに、本実施形態に係る害獣捕獲システムにおいては、特定された害獣の種別が捕獲対象の害獣であり、且つ、当該害獣の箱罠への進入率が所定の値以上である場合に、箱罠の入口を封鎖するため、対象ではない害獣を捕獲することなく、対象となる害獣のみを箱罠で確実に捕獲することができる。
【0050】
さらにまた、本実施形態に係る害獣捕獲システムにおいては、害獣の荷重が掛かることで落下する踏板と、当該踏板の落下に伴い害獣の足を括る捕獲部と、踏板が落下するのを阻害するストッパーとを備えるくくり罠を有し、特定された害獣の種別が捕獲対象ではない害獣である場合に、ストッパーが動作して踏板が落下しないように制御するため、対象ではない害獣を捕獲することなく、対象となる害獣のみをくくり罠で確実に捕獲することができる。
【0051】
(本発明の第2の実施形態)
本実施形態に係る害獣検出装置及び害獣捕獲システムについて、図10ないし図12を用いて説明する。本実施形態に係る害獣検出装置及び害獣捕獲システムは、捕獲対象ではない害獣が特定された場合に当該害獣を罠から忌避する忌避手段を備えるものである。なお、本実施形態において前記第1の実施形態と重複する説明は省略する。
【0052】
図10は、本実施形態に係る害獣捕獲システムのシステム構成図、図11は、本実施形態に係る害獣検出装置の構成を示す機能ブロック図である。図10に示すように、本実施形態に係る害獣捕獲システム1は、第1の実施形態において説明した図1の構成に新たに忌避手段80を備える構成となっている。忌避手段80は、例えば害獣が嫌いな音を出力するスピーカーや、害獣の目に照射することで忌避するレーザーや、近づく害獣に風圧を当てるコンプレッサーなどが含まれる。これらの忌避手段80は、害獣検出装置10の制御で駆動される。なお、図10において、忌避手段80を個別の構成として記載しているが、例えば害獣検出装置10と一体的な構成であったり、罠20と一体的な構成であってもよい。
【0053】
図11において、害獣検出装置10は、第1の実施形態において説明した図3の構成に新たに忌避手段80を制御する忌避制御部149を備える構成となっている。忌避制御部149は、害獣特定部144で特定された害獣の種別が捕獲対象情報記憶部146に捕獲対象として登録されているかどうかを判定し、特定された害獣の種別が捕獲対象ではない場合に、忌避手段80を動作させるための制御信号を生成する。生成された制御信号(図11に示す忌避情報85)は、出力制御部148により忌避手段80に送信され、その制御信号に応じて忌避手段80が動作する。捕獲対象ではない害獣は、忌避手段80が動作することで罠20から離れていくため、罠20に仕掛けた餌22が食べられてしまうことを防止することができる。また、捕獲対象ではない害獣に対して、より確実に罠20が発動しないように制御しやすくなる。
【0054】
なお、くくり罠20bの場合は、第1の実施形態における図7で説明したくくり罠20bの構成に対して上記忌避手段80を備える構成としてもよいが、忌避手段80による忌避の効果が高い場合には、くくり罠20bのストッパー24は必ずしも備えなくてもよい。すなわち、忌避手段80により捕獲対象ではない害獣が効果的に忌避する場合は、くくり罠20bを発動させないためのストッパー24を必須の構成としなくてもよい。
【0055】
図12は、本実施形態に係る害獣検出装置の動作を示すフローチャートである。S1からS8の処理は前記第1の実施形態における図9と同じである。S6において、忌避制御部149が、害獣が捕獲対象でないと判定した場合は、忌避手段80を動作させるための制御信号を生成し、出力制御部148が当該制御信号を忌避手段80に送信する(S9)。忌避手段80が動作した結果、害獣が忌避したかどうかを罠発動部145が判定し(S10)、忌避した場合はS13の処理に進む。忌避しない場合は、罠20の種別を判定し(S11)、箱罠20aであれば何もせず、くくり罠20bであれば円筒25が沈み込まないようにストッパー24を作動させるための制御信号を生成する(S12)。以降、S13及びS14の処理は図9におけるS11及びS12の処理と同じである。
【0056】
このように、本実施形態に係る害獣捕獲システムにおいては、罠20に向かう害獣を忌避する忌避手段80を備え、害獣検出装置10が、罠20に向かう害獣の種別が捕獲対象ではない害獣の場合に忌避手段80を動作し、罠20に向かう害獣の種別が捕獲対象である害獣の場合に忌避手段80を動作しないように制御することで、捕獲対象ではない害獣に対して、より確実に罠20が発動しないように制御しやすくなる。また、捕獲対象ではない害獣が罠20に近づけなくなるため、餌22のみを食べられるということがなく、餌22の取り換え頻度を少なくしてメンテナンスの効率を上げることができる。
【0057】
(本発明の第3の実施形態)
本実施形態に係る害獣検出装置及び害獣捕獲システムについて、図13を用いて説明する。本実施形態に係る害獣捕獲システムは、前記第2の実施形態に係る害獣捕獲システムの機能を拡張したものであり、害獣検出装置10と忌避手段80とのセットを複数設置することで、捕獲対象となる害獣を罠20に誘導したり、捕獲対象ではない害獣を罠20から遠ざけるものである。なお、本実施形態において前記各実施形態と重複する説明は省略する。
【0058】
図13は、本実施形態に係る害獣捕獲システムの模式図である。図13において、獣道に沿って複数の害獣検出装置10(101~106)とそれぞれの害獣検出装置10に対応付けられる忌避手段80(801~806)とがセットになって設置されている。この中で害獣検出装置101及び忌避手段801のセットは、前記各実施形態において説明したように箱罠20aの側面方向から撮像できるように設置されており、その他のセットは罠20周辺の獣道の所定ポイントに設置される。
【0059】
図13において、例えば(1)の経路に沿って移動する捕獲対象となる害獣が害獣検出装置102で検出された場合、害獣検出装置102は害獣が罠20に向かって移動していることを判断し、当該害獣検出装置102とセットになっている忌避手段802は動作しないように制御される。そして、そのまま罠20内に誘き寄せて罠20を発動して捕獲する。一方で、(1)の経路に沿って移動する捕獲対象ではない害獣が害獣検出装置102で検出された場合、害獣検出装置102は害獣が罠20に向かわないように忌避手段802を動作させて罠20から遠ざける。
【0060】
また、例えば(2)の経路に沿って移動する捕獲対象となる害獣が害獣検出装置102で検出された場合、害獣検出装置102は害獣が害獣検出装置103の方に向かって移動していると判断し、害獣検出装置103に通知を行う。害獣検出装置103は、当該通知を受信することで害獣検出装置102の方向から害獣検出装置103に向かうルートで捕獲対象となる害獣が移動していることを認識することが可能となるため、セットになっている忌避手段803を動作するように制御する。忌避手段803が動作することで、害獣は罠20方向に向かって逃げる可能性が高く、そのまま罠20で捕獲できる可能性が高くなる。また、罠20の方向ではなく、害獣検出装置102の方向に逃げた場合は、害獣検出装置102は、捕獲対象となる害獣が罠20から遠ざかる方向に移動していると判断し、セットになっている忌避手段802を動作するように制御する。忌避手段802が動作することで害獣を高い確率で罠20の方向に更に追い込むことが可能となる。
【0061】
図13における害獣検出装置104、105、106も同様の態様で連携しており、例えば(3)の経路に沿って移動する捕獲対象となる害獣が害獣検出装置105や106で検出された場合、罠20向かっているためいずれも忌避手段80を動作させないように制御する。一方、(4)の経路に沿って移動する捕獲対象となる害獣が害獣検出装置105や104で検出された場合、罠20から遠ざかる方向に移動していると判断し、害獣検出装置104が忌避手段804を動作させるように制御する。忌避手段804が動作することで害獣は害獣検出装置105又は害獣検出装置106のいずれかの方向に忌避する可能性が非常に高くなる。害獣検出装置105は、害獣検出装置105の方向に忌避していると判断される場合は、罠20から遠ざかる方向に移動していると判断し、セットになっている忌避手段805を動作するように制御する。忌避手段805が動作することで害獣を高い確率で害獣検出手段106の方向、すなわち罠20aの方向に追い込むことが可能となる。
【0062】
また、例えば(3)の経路に沿って移動する捕獲対象ではない害獣が害獣検出装置105や106で検出された場合、罠20向かっているため忌避手段805や806を動作させるように制御することで、捕獲対象ではない害獣を罠20から遠ざけることができる。複数の害獣検出装置10や忌避手段80が連携して動作することで、複数の猟師や複数の猟犬などで行う追い込み猟をシステムで実現することができる。
【0063】
なお、害獣検出装置10間の情報通知に関して、害獣検出装置10同士で個々に通信可能な機能を有してもよいし、インターネット回線を通じて情報通信を行うようにしてもよい。また、具体的には、忌避制御部149が害獣の移動方向を判定することで、上記のように忌避手段80を動作させる/させないの判断を行うと共に、いずれの害獣検出装置10に対して通知を行うかを求め、送信対象となる害獣検出装置10に害獣の移動情報を含めて送信するようにしてもよい。
【0064】
このように、本実施形態に係る害獣捕獲システムにおいては、害獣検出装置10及び忌避手段80が、罠20に対応して一の害獣検出装置10及び一の忌避手段80が対応して設置され、罠20の周囲には複数の他の害獣検出装置10及び他の忌避手段80がそれぞれ対応して設置されており、他の害獣検出装置10は、罠20に向かう害獣の種別が捕獲対象ではない害獣の場合に対応する他の忌避手段80を動作し、罠20に向かう害獣の種別が捕獲対象である害獣の場合に他の忌避手段80を動作しないように制御し、一の害獣検出装置10は、罠20に近づく害獣の種別が捕獲対象ではない害獣の場合に罠20を発動しないように制御し、罠20に近づく害獣の種別が捕獲対象である害獣の場合に罠20を発動するように制御するため、1つの罠20に対して複数の害獣検出装置10や忌避手段80を連携し、捕獲対象である害獣のみを確実に捕獲することができる。
【0065】
また、他の害獣検出装置10のうちの第1の害獣検出装置10が、捕獲対象である害獣を撮影した場合に、撮影された害獣の種別及び移動態様に基づいて、他の害獣検出装置10のうちの第nの害獣検出装置10が対応する第nの忌避手段80を動作して害獣を罠20に誘導するため、複数の害獣検出装置10及び忌避手段80が連携することで、捕獲対象となる害獣を罠20の方向に誘引すると共に、捕獲対象ではない害獣を罠20から遠ざける方向に忌避することができる。
【符号の説明】
【0066】
1 害獣捕獲システム
10 害獣検出装置
11 近赤外線LED
12 カメラ
13 サーマルセンサ
14 制御部
15 入出力インターフェース
16 通信インターフェース
20 罠
20a 箱罠
20b くくり罠
21 扉
22 餌
23 入口
24 ストッパー
25 円筒
26 ワイヤ
27 バネ
50 電源
60 管理装置
70 端末装置
80 忌避手段
81 画像情報
82 温度情報
83 害獣情報
84 罠情報
85 忌避情報
101~106 害獣検出装置
141 情報取得部
142 処理対象領域抽出部
143 害獣抽出部
144 害獣特定部
145 罠発動部
146 捕獲対象情報記憶部
148 出力制御部
149 忌避制御部
801~806 忌避手段

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13