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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143584
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】排気処理装置
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/24 20060101AFI20241003BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20241003BHJP
   F01N 3/20 20060101ALI20241003BHJP
   F01N 3/28 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
F01N3/24 E
F01N3/08 A
F01N3/20 F
F01N3/24 L
F01N3/24 N
F01N3/28 301C
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056341
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110847
【弁理士】
【氏名又は名称】松阪 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100136526
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100136755
【弁理士】
【氏名又は名称】井田 正道
(72)【発明者】
【氏名】田中 博仲
【テーマコード(参考)】
3G091
【Fターム(参考)】
3G091AA04
3G091AA19
3G091AB02
3G091AB04
3G091AB11
3G091BA07
3G091BA14
3G091CA03
3G091CA12
3G091CA27
3G091FC01
3G091HA20
3G091HB03
(57)【要約】
【課題】硫黄吸着部の再生時における触媒の硫黄被毒を抑制する。
【解決手段】排気処理装置3は、排気流路2に設けられる硫黄吸着部41と、排気流路2において硫黄吸着部41の下流側に設けられる触媒部42と、硫黄吸着部41に通常温度の排気が流れる通常ガス流入状態と、硫黄吸着部41に通常温度よりも高温の排気が流れる高温ガス流入状態とが切替可能なガス温度切替部5と、排気流路2に設けられ、触媒部42に含まれる対象触媒422を迂回する触媒バイパス流路76と、排気が触媒バイパス流路76を流れるバイパス状態と、排気が対象触媒422を流れる非バイパス状態とが切替可能な流路切替部6と、ガス温度切替部5を通常ガス流入状態から高温ガス流入状態に切り替えて硫黄吸着部41の再生を実行する際に、流路切替部6を非バイパス状態からバイパス状態に切り替える制御部30とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気処理装置であって、
エンジンから排出される排気が流れる排気流路に設けられ、前記排気中の硫黄を含む物質を吸着する硫黄吸着部と、
前記排気流路において前記硫黄吸着部の下流側に設けられ、前記排気中の所定物質を酸化または還元する触媒部と、
前記硫黄吸着部に通常温度の前記排気が流れる通常ガス流入状態と、前記硫黄吸着部に前記通常温度よりも高温の前記排気が流れる高温ガス流入状態とが切替可能なガス温度切替部と、
前記排気流路に設けられ、前記触媒部に含まれる対象触媒を迂回する触媒バイパス流路と、
前記排気が前記触媒バイパス流路を流れるバイパス状態と、前記排気が前記対象触媒を流れる非バイパス状態とが切替可能な流路切替部と、
前記ガス温度切替部を前記通常ガス流入状態から前記高温ガス流入状態に切り替えて前記硫黄吸着部の再生を実行する際に、前記流路切替部を前記非バイパス状態から前記バイパス状態に切り替える制御部と、
を備えることを特徴とする排気処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の排気処理装置であって、
前記エンジンが、メタンを含むガスを燃料として用い、
前記触媒部が、前記排気に含まれるメタンを酸化するメタン酸化触媒を含むことを特徴とする排気処理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の排気処理装置であって、
前記触媒部の前記対象触媒が、SCR触媒を含むことを特徴とする排気処理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の排気処理装置であって、
前記排気流路に設けられ、前記メタン酸化触媒を迂回する他の触媒バイパス流路と、
前記排気が前記他の触媒バイパス流路を流れるバイパス状態と、前記排気が前記メタン酸化触媒を流れる非バイパス状態とが切替可能な他の流路切替部と、
をさらに備え、
前記制御部が、前記硫黄吸着部の再生を実行する際に、前記他の流路切替部を前記非バイパス状態から前記バイパス状態に切り替えることを特徴とする排気処理装置。
【請求項5】
請求項4に記載の排気処理装置であって、
前記制御部が、前記硫黄吸着部の再生終了後に、前記ガス温度切替部を前記高温ガス流入状態で維持しつつ、前記他の流路切替部を前記バイパス状態から前記非バイパス状態に切り替えることを特徴とする排気処理装置。
【請求項6】
請求項2ないし5のいずれか1つに記載の排気処理装置であって、
前記排気流路においてターボチャージャのタービンが設けられ、前記エンジンと前記タービンとの間に前記メタン酸化触媒が設けられることを特徴とする排気処理装置。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の排気処理装置であって、
前記排気流路においてターボチャージャのタービンが設けられ、
前記ガス温度切替部が前記通常ガス流入状態である際に、前記タービンを通過した前記排気が前記硫黄吸着部および前記触媒部に流入し、
前記ガス温度切替部が前記高温ガス流入状態である際に、前記排気流路において前記エンジンと前記タービンとの間から取り出される前記排気が前記硫黄吸着部に流入することを特徴とする排気処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の排気処理装置であって、
前記排気流路においてターボチャージャのタービンが設けられ、前記エンジンと前記タービンとの間に前記硫黄吸着部が設けられることを特徴とする排気処理装置。
【請求項9】
請求項1ないし5のいずれか1つに記載の排気処理装置であって、
前記ガス温度切替部が、前記高温ガス流入状態において、前記排気の一部をヒータにより加熱して前記硫黄吸着部に流入させ、
前記排気の残りが前記ヒータを不通過であり、前記硫黄吸着部を通過した前記排気の前記一部と、前記ヒータを不通過の前記排気の前記残りとが混合され、前記触媒バイパス流路を通過することを特徴とする排気処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、船の燃料を重油から液化天然ガス(LNG:liquefied natural gas)へ転換する動きが加速している。LNGを燃料とするLNG燃料船では、エンジン出口からLNG燃料中のメタンの一部が未燃のまま排気されるメタンスリップが問題となる。そこで、エンジンの排気が流れる排気流路にメタン酸化触媒を配置し、触媒上でメタンを酸化させ、メタンスリップを削減することが検討されている。
【0003】
一方、エンジンの排気には、エンジン内部の潤滑油等に含まれる硫黄成分が混じるため、硫黄を含む物質がメタン酸化触媒に吸着することがある。これにより、メタン酸化触媒の触媒活性が低下する、すなわち、メタン酸化触媒が硫黄に被毒される。そこで、特許文献1では、メタン酸化触媒の上流側に硫黄酸化物吸着剤(硫黄吸着部)を配置することにより、メタン酸化触媒の硫黄被毒を抑制する手法が開示されている。なお、特許文献2の排気ガス浄化装置では、窒素酸化物吸着剤の上流側に硫黄酸化物吸着剤(硫黄吸着部)を配置することにより、窒素酸化物吸着剤への硫黄酸化物の流入が防止される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-349254号公報
【特許文献2】特開2009-185763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、硫黄吸着部における硫黄(を含む物質)の吸着量が多くなると、硫黄吸着部の吸着能力が低下するため、硫黄吸着部に高温のガスを供給して、硫黄吸着部から硫黄を脱着させる再生処理が行われる。このとき、高濃度の硫黄を含むガスが下流側の触媒に流入し、当該触媒の硫黄被毒が発生する。
【0006】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであり、硫黄吸着部の再生時における触媒の硫黄被毒を抑制することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の態様1は、排気処理装置であって、エンジンから排出される排気が流れる排気流路に設けられ、前記排気中の硫黄を含む物質を吸着する硫黄吸着部と、前記排気流路において前記硫黄吸着部の下流側に設けられ、前記排気中の所定物質を酸化または還元する触媒部と、前記硫黄吸着部に通常温度の前記排気が流れる通常ガス流入状態と、前記硫黄吸着部に前記通常温度よりも高温の前記排気が流れる高温ガス流入状態とが切替可能なガス温度切替部と、前記排気流路に設けられ、前記触媒部に含まれる対象触媒を迂回する触媒バイパス流路と、前記排気が前記触媒バイパス流路を流れるバイパス状態と、前記排気が前記対象触媒を流れる非バイパス状態とが切替可能な流路切替部と、前記ガス温度切替部を前記通常ガス流入状態から前記高温ガス流入状態に切り替えて前記硫黄吸着部の再生を実行する際に、前記流路切替部を前記非バイパス状態から前記バイパス状態に切り替える制御部とを備える。
【0008】
本発明の態様2は、態様1の排気処理装置であって、前記エンジンが、メタンを含むガスを燃料として用い、前記触媒部が、前記排気に含まれるメタンを酸化するメタン酸化触媒を含む。
【0009】
本発明の態様3は、態様2の排気処理装置であって、前記触媒部の前記対象触媒が、SCR触媒を含む。
【0010】
本発明の態様4は、態様3の排気処理装置であって、前記排気流路に設けられ、前記メタン酸化触媒を迂回する他の触媒バイパス流路と、前記排気が前記他の触媒バイパス流路を流れるバイパス状態と、前記排気が前記メタン酸化触媒を流れる非バイパス状態とが切替可能な他の流路切替部とをさらに備え、前記制御部が、前記硫黄吸着部の再生を実行する際に、前記他の流路切替部を前記非バイパス状態から前記バイパス状態に切り替える。
【0011】
本発明の態様5は、態様4の排気処理装置であって、前記制御部が、前記硫黄吸着部の再生終了後に、前記ガス温度切替部を前記高温ガス流入状態で維持しつつ、前記他の流路切替部を前記バイパス状態から前記非バイパス状態に切り替える。
【0012】
本発明の態様6は、態様2ないし5のいずれか1つの排気処理装置であって、前記排気流路においてターボチャージャのタービンが設けられ、前記エンジンと前記タービンとの間に前記メタン酸化触媒が設けられる。
【0013】
本発明の態様7は、態様1ないし5のいずれか1つの排気処理装置であって、前記排気流路においてターボチャージャのタービンが設けられ、前記ガス温度切替部が前記通常ガス流入状態である際に、前記タービンを通過した前記排気が前記硫黄吸着部および前記触媒部に流入し、前記ガス温度切替部が前記高温ガス流入状態である際に、前記排気流路において前記エンジンと前記タービンとの間から取り出される前記排気が前記硫黄吸着部に流入する。
【0014】
本発明の態様8は、態様1ないし5のいずれか1つの排気処理装置であって、前記排気流路においてターボチャージャのタービンが設けられ、前記エンジンと前記タービンとの間に前記硫黄吸着部が設けられる。
【0015】
本発明の態様9は、態様1ないし5のいずれか1つ(態様1ないし8のいずれか1つであってもよい。)の排気処理装置であって、前記ガス温度切替部が、前記高温ガス流入状態において、前記排気の一部をヒータにより加熱して前記硫黄吸着部に流入させ、前記排気の残りが前記ヒータを不通過であり、前記硫黄吸着部を通過した前記排気の前記一部と、前記ヒータを不通過の前記排気の前記残りとが混合され、前記触媒バイパス流路を通過する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、硫黄吸着部の再生時における対象触媒の硫黄被毒を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態に係るエンジンシステムの構成を示す図である。
図2】反応容器を示す断面図である。
図3】排気処理装置における再生運転を説明するための図である。
図4】第2実施形態に係る排気処理装置の構成を示す図である。
図5】排気処理装置における再生運転を説明するための図である。
図6】排気処理装置における追加再生運転を説明するための図である。
図7】第3実施形態に係る排気処理装置の構成を示す図である。
図8】排気処理装置における再生運転を説明するための図である。
図9】第4実施形態に係る排気処理装置の構成を示す図である。
図10】排気処理装置における再生運転を説明するための図である。
図11】排気処理装置における追加再生運転を説明するための図である。
図12】第5実施形態に係る排気処理装置の構成を示す図である。
図13】排気処理装置における再生運転を説明するための図である。
図14】第6実施形態に係る排気処理装置の構成を示す図である。
図15】排気処理装置における再生運転を説明するための図である。
図16】排気処理装置における追加再生運転を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
図1は、本発明の第1実施形態に係るエンジンシステム1の構成を示す図である。エンジンシステム1は、例えば、船舶に搭載される。エンジンシステム1は、エンジン10と、ターボチャージャ16と、排気処理装置3とを備える。エンジン10は、メタン(CH)を含むガスを燃料とするガスエンジンであり、一例では、当該燃料はLNG(液化天然ガス)である。エンジン10は、LNG以外の燃料を用いてもよい。エンジン10は、例えば、4ストロークエンジンである。エンジン10は、2ストロークエンジン等であってもよい。
【0019】
エンジン10は、複数のシリンダ11と、排気マニホールド12とを備える。各シリンダ11にはピストンが設けられ、シリンダ11およびピストン等により囲まれる空間が、燃料を燃焼するための燃焼室となる。ターボチャージャ16は、過給機であり、タービン161と、コンプレッサ162とを備える。ターボチャージャ16では、後述の排気によりタービン161が回転する。コンプレッサ162は、タービン161にて発生する回転力を利用して、エンジン10の外部から取り込んだ吸気(空気)を加圧して圧縮する。加圧された空気は、各シリンダ11の燃焼室に供給され、燃料の燃焼に利用される。複数のシリンダ11は、1つの排気マニホールド12に接続される。複数の燃焼室から排出された排気は、排気マニホールド12に集められる。排気マニホールド12から排出された排気は、後述の排気流路2に沿って流れる。排気流路2には、上記タービン161が設けられ、排気によりタービン161が回転する。
【0020】
排気処理装置3は、排気流路2に設けられる。排気流路2は、後述の通常運転において、エンジン10から排出される排気が流れる流路である。図1では、他の流路と区別するため、排気流路2を太い実線にて示す(排気処理装置を示す他の図において同様)。排気処理装置3は、エンジン10から排出される排気を処理する。本実施形態では、エンジン10からの排気中に含まれる未燃焼のメタンおよび他の炭化水素が、排気処理装置3において酸化され、二酸化炭素(CO)および水(HO)に分解される。これにより、エンジンシステム1から大気中に排出される排気において、未燃焼のメタンの濃度が、所定の規定値以下とされる。換言すると、メタンスリップが削減される。
【0021】
排気処理装置3は、制御部30と、硫黄吸着部41と、触媒部42と、ガス温度切替部5と、流路切替部6と、ヒータバイパス流路71と、触媒バイパス流路76と、測定ユニット31とを備える。制御部30は、排気処理装置3の全体制御を担う。制御部30は、エンジン10の制御部を兼ねていてもよい。制御部30は、例えば、CPU、メモリ等を有するコンピュータが所定のプログラムを実行することにより実現される。制御部30の一部または全部が、プログラマブルロジックコントローラ(PLC:Programmable Logic Controller)等により実現されてもよい。
【0022】
ガス温度切替部5は、ヒータ51を有する。ヒータ51は、排気流路2に設けられ、排気を加熱する。ヒータ51は、例えば、電気ヒータや熱媒ヒータ等であり、典型的には、排気に燃料等の他の物質を混合することなく、排気を加熱する。後述するように、ヒータ51は、硫黄吸着部41の上流側に設けられ、ヒータ51を通過した排気が硫黄吸着部41に流入する。ガス温度切替部5は、ヒータ51のON/OFFを切り替えることにより、通常ガス流入状態と高温ガス流入状態とが切替可能である。通常ガス流入状態では、ヒータ51により加熱されていない通常温度(例えば、350~450℃)の排気が硫黄吸着部41に流れる。高温ガス流入状態では、ヒータ51により加熱された通常温度よりも高温の排気が硫黄吸着部41に流れる。
【0023】
硫黄吸着部41は、排気流路2に設けられる。硫黄吸着部41は、硫黄吸着剤を含み、硫黄吸着剤には、排気中の硫黄を含む物質(例えば、硫黄酸化物等であり、以下、「硫黄含有物」という。)が吸着する。硫黄吸着剤において、ある程度の量の硫黄含有物が吸着すると、硫黄吸着剤における硫黄含有物の吸着能力が低下する。後述の再生運転において、ガス温度切替部5が高温ガス流入状態を形成し、硫黄吸着部41の周囲が高温となると、硫黄吸着剤に吸着している硫黄含有物が脱着する。これにより、硫黄吸着剤における硫黄含有物の吸着能力が再生する。硫黄含有物が、硫黄吸着剤に吸着する温度域、および、硫黄吸着剤から脱着する温度域は、硫黄吸着剤として選択する材料により変更可能である。
【0024】
触媒部42は、排気流路2に設けられ、排気中の所定物質を酸化または還元する。図1の触媒部42は、メタン酸化触媒421と、尿素水供給部429と、SCR触媒422とを有する。メタン酸化触媒421は、炭化水素分解触媒の一例であり、排気に含まれるメタンを酸化する。メタン酸化触媒421としては、様々な材料が知られており、排気の温度等の条件に応じた材料が適宜選択されて使用される。尿素水供給部429は、排気中に尿素水を供給する。SCR触媒422は、尿素が熱分解されることにより生成されるアンモニアと、排気に含まれる窒素酸化物(NOx)とを反応させ、窒素(N)と水(HO)に転換する。SCR触媒422としては、様々な材料が知られており、排気の温度等の条件に応じた材料が適宜選択されて使用される。触媒部42では、尿素以外の還元剤が用いられてもよい。
【0025】
排気流路2では、上流側から下流側に向かって(すなわち、排気マニホールド12側から大気への排出口に向かって)、ヒータ51、硫黄吸着部41、メタン酸化触媒421、尿素水供給部429、SCR触媒422が順に配置される。排気処理装置3の通常運転では、エンジン10から排出された排気は、ヒータ51、硫黄吸着部41、メタン酸化触媒421、尿素水供給部429、SCR触媒422を順に通過する。図1の例では、ヒータ51、硫黄吸着部41およびメタン酸化触媒421は、1つの反応容器40に収容される。
【0026】
図2は、反応容器40を示す断面図である。反応容器40は、例えば、排気流路2との接続部を除き、内部が密閉された容器である。図2の例では、反応容器40は排気流路2に沿う方向に延びる筒状、正方形断面の直方体、または、長方形断面の直方体等であり、当該方向の一方の端部に流入口401が設けられ、他方の端部に流出口402が設けられる。流入口401および流出口402は、排気流路2との接続部である。図1のタービン161を通過した排気は、流入口401から反応容器40内に流入し、ヒータ51、硫黄吸着部41およびメタン酸化触媒421を順に通過して、流出口402から反応容器40外に排出される。
【0027】
反応容器40の内部における流路面積(すなわち、排気の流れ方向に垂直な反応容器40の内部の断面積)は、排気流路2の流路面積よりも十分に大きい。反応容器40の内部では、排気の流速が小さくなり、ヒータ51による排気の加熱、硫黄吸着部41における硫黄含有物の吸着、および、メタン酸化触媒421によるメタンの酸化を効率よく行うことができる。また、ヒータ51、硫黄吸着部41およびメタン酸化触媒421における圧力損失も低減される。ヒータ51に対向する位置において、反応容器40を外部から加熱する補助ヒータが設けられてもよい。ヒータ51、硫黄吸着部41およびメタン酸化触媒421は、図1の順序を維持しつつ個別の容器に収容されてもよい。
【0028】
図1に示すように、ヒータバイパス流路71は、ヒータ51、硫黄吸着部41およびメタン酸化触媒421を迂回するように、排気流路2に設けられる。ヒータバイパス流路71の一端は、排気流路2におけるタービン161とヒータ51との間の接続位置P11に接続される。ヒータバイパス流路71の他端は、排気流路2におけるメタン酸化触媒421と尿素水供給部429との間の接続位置P12に接続される。ヒータバイパス流路71には、バルブ211が設けられる。バルブ211は、例えば、流量調整バルブであり、制御部30がバルブ211の開度を調整することにより、ヒータバイパス流路71を流れる排気の流量が調整可能である。排気流路2において、接続位置P11とヒータ51との間にはバルブ212が設けられ、メタン酸化触媒421と接続位置P12との間にはバルブ213が設けられる。制御部30によりバルブ212,213の開閉が制御される。
【0029】
触媒バイパス流路76は、尿素水供給部429およびSCR触媒422を迂回するように、排気流路2に設けられる。触媒バイパス流路76の一端は、排気流路2における接続位置P12と尿素水供給部429との間の接続位置P13に接続される。触媒バイパス流路76の他端は、排気流路2においてSCR触媒422の下流側の接続位置P14に接続される。接続位置P14は、SCR触媒422と後述の測定ユニット31の測定位置との間の位置である。
【0030】
流路切替部6は、複数のバルブ61,62,63を有する。バルブ61は、触媒バイパス流路76に設けられる。バルブ62,63は、排気流路2に設けられる。詳細には、バルブ62は、接続位置P13と尿素水供給部429との間に配置され、バルブ63は、SCR触媒422と接続位置P14との間に配置される。流路切替部6が、バルブ61を開き、バルブ62,63を閉じることにより、排気が尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れず、触媒バイパス流路76を流れるバイパス状態となる。また、バルブ61を閉じ、バルブ62,63を開くことにより、排気が尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れ、触媒バイパス流路76を流れない非バイパス状態となる。このように、流路切替部6では、バイパス状態と非バイパス状態とが切替可能である。
【0031】
測定ユニット31は、排気流路2における接続位置P14の下流側において、排気の状態を測定する。排気処理装置3の稼働時では、測定ユニット31の測定位置を、排気が常時通過する。図1の排気処理装置3では、測定ユニット31は、温度測定部311と、メタン濃度測定部312と、硫黄濃度測定部313とを有する。温度測定部311は、排気の温度を測定する。メタン濃度測定部312は、排気中のメタン濃度を測定する。硫黄濃度測定部313は、排気中の硫黄濃度を測定する。温度測定部311、メタン濃度測定部312および硫黄濃度測定部313のそれぞれは、市販のものが利用可能である。温度測定部311、メタン濃度測定部312および硫黄濃度測定部313のそれぞれの測定値は、制御部30に出力される。測定ユニット31では、温度測定部311、メタン濃度測定部312および硫黄濃度測定部313のいずれか1つ、または、いずれか2つのみが設けられてもよい。
【0032】
排気処理装置3における通常運転では、バルブ211,61を閉じ、他のバルブ212,213,62,63を開くことにより、排気が排気流路2に沿って流れる。このとき、ヒータ51はOFF状態であり、排気の加熱は行われない。すなわち、ガス温度切替部5が、硫黄吸着部41に通常温度の排気が流れる通常ガス流入状態である。排気に含まれる硫黄含有物は、硫黄吸着部41に吸着する。これにより、硫黄吸着部41の下流側に配置されたメタン酸化触媒421およびSCR触媒422の硫黄被毒(硫黄による劣化)が抑制される。また、排気に含まれるメタンは、メタン酸化触媒421にて酸化される。流路切替部6は、排気が尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れ、触媒バイパス流路76を流れない非バイパス状態である。SCR触媒422では、排気に含まれる窒素酸化物が還元される。
【0033】
硫黄濃度測定部313では、排気中の硫黄濃度が常時測定される。硫黄濃度測定部313による硫黄濃度の測定値が所定の再生実行閾値以上となると、制御部30により、硫黄吸着部41の硫黄吸着剤における硫黄含有物の吸着能力が低下したと判定される。これにより、硫黄吸着部41を再生する再生運転が実行される。このように、制御部30では、硫黄吸着部41の再生の実行が、硫黄濃度測定部313の測定値に基づいて決定される。
【0034】
図3は、排気処理装置3における再生運転を説明するための図であり、排気が流れる流路を太い破線および一点鎖線にて示す(再生運転、および、後述の追加再生運転を説明するための他の図において同様)。また、図3では、制御部30の図示を省略している(後述の図4ないし図18において同様)。再生運転を開始する際には、制御部30により、ヒータバイパス流路71のバルブ211が徐々に開かれる。また、ガス温度切替部5が、ヒータ51をON状態とすることにより、通常ガス流入状態から高温ガス流入状態に切り替えられる。図3では、ヒータ51を示すブロックの外縁を太線で描くことにより、ヒータ51がON状態であることを示している(排気処理装置を示す他の図において同様)。
【0035】
接続位置P11では、排気の一部がヒータ51に向かって流れ、ヒータ51により加熱されて硫黄吸着部41に流入する(図3中の太い破線参照)。これにより、硫黄吸着部41の周囲が高温となり、硫黄吸着部41に吸着している硫黄含有物が脱着する。再生運転において、硫黄吸着部41に流入する排気の温度は、例えば500℃以上であり、好ましくは550℃以上であり、より好ましくは580℃以上である。ヒータ51から接続位置P12までの流路には高温の排気が流れるため、当該流路はステンレス鋼等の耐熱温度が高い材料により形成される。硫黄吸着部41に流入する排気の温度の上限は、当該流路に用いられる材料の耐熱温度の上限となる。硫黄吸着部41から脱着した硫黄含有物を含む排気は、メタン酸化触媒421を通過して接続位置P12へと流れる。このとき、排気が高温であるため、メタン酸化触媒421に吸着している硫黄含有物も脱着する。
【0036】
接続位置P11では、排気の残りがヒータバイパス流路71に流入し、接続位置P12へと流れる(図3中の太い一点鎖線参照)。接続位置P12では、ヒータ51、硫黄吸着部41およびメタン酸化触媒421を通過した排気と、ヒータバイパス流路71を通過した排気とが混合される。このように、接続位置P12は、ヒータ51を通過した高温の排気と、ヒータ51を不通過の通常温度の排気とが混合される混合位置である。本実施の形態では、以下、接続位置P12を「混合位置P12」ともいう。
【0037】
排気流路2における混合位置P12は、メタン酸化触媒421の直後である。ここで、「混合位置P12がメタン酸化触媒の直後」とは、メタン酸化触媒421と混合位置P12との間に、組成や温度等の排気の状態を変化させる構成(触媒やヒータ等)が設けられないことを意味する。メタン酸化触媒421と混合位置P12との間の流路の距離は、好ましくは、ヒータバイパス流路71よりも短い。当該距離は、ヒータバイパス流路71の長さ以上であってもよい。混合位置P12における混合後の排気の温度は、所定の制限温度以下である。制限温度は、ヒータ51を通過した排気の温度よりも低く、例えば450℃であり、好ましくは430℃である。これにより、混合位置P12から下流側の流路に対して、耐熱温度が比較的低い安価な材料(例えば、炭素鋼等)を用いることが可能となる。
【0038】
排気処理装置3では、温度測定部311により排気の温度が常時測定される。温度測定部311による温度の測定値は、混合位置P12における混合後の排気の温度である。制御部30では、温度測定部311の測定値が制限温度以下となるように、当該測定値に基づいてヒータバイパス流路71のバルブ211の開度が制御される。例えば、制限温度よりも低い設定温度が予め設定されており、温度測定部311の測定値が設定温度よりも高い場合には、ヒータバイパス流路71のバルブ211の開度が大きくされる。当該測定値が設定温度よりも低い場合には、バルブ211の開度が小さくされる。このように、制御部30では、温度測定部311の測定値に基づいて、接続位置P11からヒータ51に流入する排気の流量と、接続位置P11からヒータバイパス流路71に流入する排気の流量との比(すなわち、混合位置P12における混合比)が調整される。これにより、混合位置P12における混合後の排気の温度が、設定温度にて略一定とされる。
【0039】
エンジン10から排出される排気の流量や温度等が略一定である場合には、再生運転においてバルブ211の開度が一定であってもよい。排気流路2の設計によっては、再生運転においてバルブ211を全開とし、バルブ212またはバルブ213の開度を制御することにより、混合位置P12における混合比が調整されてもよい。
【0040】
また、再生運転では、制御部30の制御により、流路切替部6がバルブ61を開き、バルブ62,63を閉じる。これにより、排気が尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れず、触媒バイパス流路76を流れるバイパス状態が形成される。ここで、混合位置P12における混合後の排気は、高濃度の硫黄含有物を含む。仮に当該排気がSCR触媒422を流れると、SCR触媒422上にて酸性硫安(NHHSO)や硫安((NHSO)の析出が発生する。その結果、SCR触媒422の触媒活性が低下する、すなわち、SCR触媒422が硫黄に被毒される。
【0041】
実際には、図3の排気処理装置3では、流路切替部6においてバイパス状態が形成されており、当該排気は、尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れず、触媒バイパス流路76を流れる。これにより、高濃度の硫黄含有物を含む排気がSCR触媒422を流れた場合に発生するSCR触媒422の硫黄被毒が防止される。排気処理装置3では、SCR触媒422が、再生運転における硫黄被毒の防止対象の触媒(すなわち、対象触媒)である。排気処理装置3では、SCR触媒422において熱による焼結(シンタリング)が発生し細孔が塞がれて性能低下が引き起こされることも抑制される。
【0042】
硫黄含有物を含む排気は、大気に排出される。大気に排出される排気の硫黄濃度についての規制がある場合には、硫黄濃度測定部313の測定値に基づいてヒータバイパス流路71のバルブ211の開度が制御されることが好ましい。この場合、温度測定部311の測定値が制限温度以下を維持しつつ、硫黄濃度測定部313の測定値(すなわち、大気に排出される排気の硫黄濃度)が規制値以下となるように、混合位置P12における混合比が調整される。
【0043】
硫黄濃度測定部313の測定値が所定の再生終了閾値以下となると、制御部30により、硫黄吸着部41の硫黄吸着剤における硫黄含有物の吸着能力が回復したと判定される。このように、制御部30では、硫黄吸着部41の再生の終了が、硫黄濃度測定部313の測定値に基づいて決定される。その後、ヒータバイパス流路71のバルブ211が徐々に閉じられる。また、ガス温度切替部5が、ヒータ51をOFF状態とすることにより、高温ガス流入状態から通常ガス流入状態に切り替えられる。さらに、流路切替部6がバルブ61を閉じ、バルブ62,63を開くことにより、排気が触媒バイパス流路76を流れず、尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れる非バイパス状態が形成される。これにより、排気処理装置3において再生運転が終了し、通常運転が再開される。
【0044】
硫黄吸着部41の再生の実行は、メタン濃度測定部312のメタン濃度の測定値に基づいて決定することも可能である。この場合、例えば、メタン酸化触媒421におけるメタン除去率が算出される。具体的には、予め試験等を行うことにより、エンジン10の負荷と、当該負荷においてエンジン10から排出される排気のメタン濃度との関係(例えば、負荷に対してメタン濃度をマッピングしたテーブル)が取得される。なお、同じ型式のエンジンにおいて上記関係を示すマスターデータが準備されている場合には、当該マスターデータが利用されてもよい。
【0045】
制御部30では、現在のエンジン10の負荷から、排気流路2に流入する排気のメタン濃度、すなわち、排気処理装置3の入口のメタン濃度が特定される。メタン濃度測定部312では、メタン酸化触媒421を通過した排気中のメタン濃度、すなわち、排気処理装置3の出口のメタン濃度が常時測定される。制御部30では、例えば、排気処理装置3の入口のメタン濃度と入口から出口を減じたメタン濃度との割合が、メタン除去率として算出される。メタン除去率が所定の閾値以下となると、制御部30により、メタン酸化触媒421の触媒活性が低下したと判定され、再生運転が実行される。メタン酸化触媒421の触媒活性の低下は、硫黄吸着部41における硫黄含有物の吸着能力の低下による、メタン酸化触媒421における硫黄被毒の発生に起因する。硫黄吸着部41の再生の終了は、硫黄濃度測定部313の測定値に基づいて決定されてもよく、再生運転の実行時間(継続期間)等により決定されてもよい。
【0046】
また、硫黄吸着部41の再生の実行は、排気処理装置3が通常運転を継続する時間、すなわち、再生運転を行うことなく、排気が硫黄吸着部41を通過する積算時間により決定されてもよい。硫黄吸着部41の再生を実行すべき積算時間は、過去の運転データや試験等により予め決定される。
【0047】
以上に説明したように、一の観点における図1の排気処理装置3は、排気流路2に設けられ、排気中の硫黄を含む物質を吸着する硫黄吸着部41と、硫黄吸着部41に流入する排気を加熱可能なヒータ51と、ヒータ51および硫黄吸着部41を迂回するヒータバイパス流路71と、硫黄吸着部41の再生時に、排気の一部をヒータ51により加熱して硫黄吸着部41に流入させ、排気の残りをヒータバイパス流路71に流入させる制御部30とを備える。硫黄吸着部41の再生時に、排気の当該一部が流れる流路において硫黄吸着部41の下流側の混合位置P12にて、硫黄吸着部41を通過した排気の当該一部と、ヒータバイパス流路71を通過した排気の当該残りとが混合される。これにより、硫黄吸着部41の再生時に混合位置P12から下流側を流れるガスの温度を低くすることができ、混合位置P12から下流側において安価な材料を使用することができる。その結果、排気処理装置3の製造コストを削減することができる。
【0048】
好ましくは、硫黄吸着部41の再生時に硫黄吸着部41に流入する排気の温度が、500℃以上である。これにより、高温の排気を利用して硫黄吸着部41を適切に再生することができる。500℃以上の高温ガスが流れる流路では、高価な材料が必要となるが、排気処理装置3では、高温ガスが流れる流路をヒータ51と混合位置P12との間に限定して、他の流路において比較的安価な材料を使用することができる。
【0049】
好ましくは、混合位置P12における混合後の排気の温度が、450℃以下である。このような排気処理装置3では、混合位置P12から下流側において、より安価な材料を使用することができる。
【0050】
好ましくは、エンジン10が、メタンを含むガスを燃料として用いる。排気処理装置3は、排気流路2において硫黄吸着部41の下流側に設けられ、排気に含まれるメタンを酸化するメタン酸化触媒421を備える。これにより、メタンスリップを削減することができる。また、混合位置P12が、メタン酸化触媒421の直後であることにより、硫黄吸着部41の再生時に、メタン酸化触媒421も再生することができる。また、高温ガスが流れる流路の長さを短くして、高価な材料の使用量を削減することができる。
【0051】
好ましくは、排気処理装置3は、排気流路2においてメタン酸化触媒421の下流側に設けられ、排気のメタン濃度を測定するメタン濃度測定部312を備える。制御部30は、硫黄吸着部41の再生の実行を、メタン濃度測定部312の測定値に基づいて決定する。これにより、硫黄吸着部41を再生する再生運転を適切なタイミングで実行することができる。
【0052】
好ましくは、排気処理装置3は、排気流路2において硫黄吸着部41の下流側に設けられ、排気の硫黄濃度を測定する硫黄濃度測定部313を備える。制御部30は、硫黄吸着部41の再生の実行、および、硫黄吸着部41の再生の終了を、硫黄濃度測定部313の測定値に基づいて決定する。これにより、再生運転を適切なタイミングで実行するとともに、適切なタイミングで終了することができる。排気処理装置3では、硫黄吸着部41の再生の実行、または、硫黄吸着部41の再生の終了の一方のみが、硫黄濃度測定部313の測定値に基づいて決定されてもよい。
【0053】
好ましくは、排気処理装置3は、混合位置P12の下流側に設けられ、排気の温度を測定する温度測定部311を備える。制御部30は、温度測定部311の測定値に基づいて、硫黄吸着部41を通過する排気の上記一部と、ヒータバイパス流路71を通過する排気の上記残りとの流量比を調整する。これにより、混合位置P12における混合後の排気の温度を適切に調整することができる。
【0054】
他の観点における図1の排気処理装置3は、排気流路2に設けられ、排気中の硫黄を含む物質を吸着する硫黄吸着部41と、排気流路2において硫黄吸着部41の下流側に設けられ、排気中の所定物質を酸化または還元する触媒部42と、排気流路2に設けられ、触媒部42に含まれる対象触媒(図1では、SCR触媒422)を迂回する触媒バイパス流路76とを備える。排気処理装置3は、ガス温度切替部5と、流路切替部6と、制御部30とをさらに備える。ガス温度切替部5は、硫黄吸着部41に通常温度の排気が流れる通常ガス流入状態と、硫黄吸着部41に通常温度よりも高温の排気が流れる高温ガス流入状態とが切替可能である。流路切替部6は、排気が触媒バイパス流路76を流れるバイパス状態と、排気が対象触媒を流れる非バイパス状態とが切替可能である。制御部30は、ガス温度切替部5を通常ガス流入状態から高温ガス流入状態に切り替えて硫黄吸着部41の再生を実行する際に、流路切替部6を非バイパス状態からバイパス状態に切り替える。これにより、硫黄吸着部41の再生時における対象触媒の硫黄被毒を抑制することができる。
【0055】
好ましくは、エンジン10が、メタンを含むガスを燃料として用い、触媒部42が、排気に含まれるメタンを酸化するメタン酸化触媒421を含む。これにより、メタンスリップを削減することができる。この場合に、触媒部42の対象触媒が、SCR触媒422を含むことにより、硫黄吸着部41の再生時におけるSCR触媒422の硫黄被毒を抑制することができる。
【0056】
好ましくは、ガス温度切替部5が、高温ガス流入状態において、排気の一部をヒータ51により加熱して硫黄吸着部41に流入させる。排気の残りがヒータ51を不通過であり、硫黄吸着部41を通過した排気の当該一部と、ヒータ51を不通過の排気の当該残りとが混合され、触媒バイパス流路76を通過する。これにより、硫黄吸着部41の再生時に混合位置P12から下流側を流れるガスの温度を低くすることができ、混合位置P12から下流側において安価な材料を使用することができる。その結果、排気処理装置3の製造コストを削減することができる。
【0057】
(第2実施形態)
図4は、本発明の第2実施形態に係る排気処理装置3aの構成を示す図である。図4の排気処理装置3aでは、図1の排気処理装置3と比較して、ヒータ51および硫黄吸着部41のみが反応容器40に収容され、メタン酸化触媒421が個別の容器に収容される点で相違する。また、補助流路22、バルブ221,222が追加される。他の構成は、図1の排気処理装置3と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。なお、ヒータ51および硫黄吸着部41は、図4の順序を維持しつつ個別の容器に収容されてもよい。
【0058】
補助流路22の一端は、排気流路2(図4中の太い実線参照)における硫黄吸着部41とメタン酸化触媒421との間の接続位置P21に接続される。補助流路22の他端は、ヒータバイパス流路71におけるバルブ211と接続位置P12との間の接続位置P22に接続される。バルブ221は、補助流路22に設けられる。バルブ222は、排気流路2において接続位置P21とメタン酸化触媒421との間に設けられる。排気処理装置3aでは、補助流路22と、ヒータバイパス流路71の接続位置P22と接続位置P12との間の部分とにより、メタン酸化触媒421を迂回する他の触媒バイパス流路76aが構成される。また、バルブ221,222,213により、他の流路切替部6aが構成される。流路切替部6aにおいて、バルブ221を開き、バルブ222,213を閉じることにより、接続位置P21に流入する排気がメタン酸化触媒421を流れず、触媒バイパス流路76aを流れるバイパス状態となる。また、バルブ221を閉じ、バルブ222,213を開くことにより、接続位置P21に流入する排気がメタン酸化触媒421を流れ、触媒バイパス流路76aを流れない非バイパス状態となる。
【0059】
排気処理装置3aにおける通常運転では、バルブ211,221,61を閉じ、他のバルブ212,222,213,62,63を開くことにより、排気が排気流路2に沿って流れる。このとき、ヒータ51はOFF状態であり、排気の加熱は行われない。すなわち、ガス温度切替部5が、硫黄吸着部41に通常温度の排気が流れる通常ガス流入状態である。排気に含まれる硫黄含有物は、硫黄吸着部41に吸着する。流路切替部6aは、排気がメタン酸化触媒421を流れ、触媒バイパス流路76aを流れない非バイパス状態である。メタン酸化触媒421では、排気に含まれるメタンが酸化される。流路切替部6は、排気が尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れ、触媒バイパス流路76を流れない非バイパス状態である。SCR触媒422では、排気に含まれる窒素酸化物が還元される。制御部30では、測定ユニット31の硫黄濃度測定部313の測定値、または、メタン濃度測定部312の測定値等に基づいて、硫黄吸着部41の再生の実行が決定される。
【0060】
図5は、排気処理装置3aにおける再生運転を説明するための図である。排気処理装置3aにおける再生運転では、制御部30の制御により、流路切替部6aが、補助流路22のバルブ221を開き、バルブ222,213を閉じる。これにより、排気がメタン酸化触媒421を流れず、触媒バイパス流路76aを流れるバイパス状態が形成される。また、ヒータバイパス流路71のバルブ211が徐々に開かれる。さらに、ガス温度切替部5が、ヒータ51をON状態とすることにより、通常ガス流入状態から高温ガス流入状態に切り替えられる。
【0061】
接続位置P11では、排気の一部がヒータ51に向かって流れ(図5中の太い破線参照)、排気の残りがヒータバイパス流路71に流入する(図5中の太い一点鎖線参照)。ヒータ51を通過した排気は硫黄吸着部41に流入する。これにより、硫黄吸着部41に吸着している硫黄含有物が脱着する。硫黄吸着部41を通過した排気は、接続位置P21を経由して接続位置P22へと向かい、ヒータバイパス流路71を通過途中の排気と混合される。このように、接続位置P22は、ヒータ51を通過した高温の排気と、ヒータ51を不通過の排気とが混合される混合位置である。混合位置P22における混合後の排気の温度は、制限温度以下となる。混合後の排気は、ヒータバイパス流路71における接続位置P22と接続位置P12との間の部分を通過する。
【0062】
既述のように、排気処理装置3aでは、流路切替部6aがバイパス状態であり、ヒータ51を通過した高温の排気は、メタン酸化触媒421を流れない。これにより、高濃度の硫黄含有物を含む排気による、メタン酸化触媒421の硫黄被毒が防止される。また、再生運転では、流路切替部6がバルブ61を開き、バルブ62,63を閉じる。これにより、接続位置P12を通過した排気が尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れず、触媒バイパス流路76を流れるバイパス状態が形成される。その結果、高濃度の硫黄含有物を含む排気による、SCR触媒422の硫黄被毒が防止される。
【0063】
制御部30では、硫黄濃度測定部313の測定値、または、再生運転の実行時間等に基づいて、硫黄吸着部41の再生の終了が決定されると、バルブ222,213が開かれ、補助流路22のバルブ221が閉じられる。これにより、メタン酸化触媒421を再生する再生運転が実行される。以下の説明では、硫黄吸着部41を再生する再生運転と区別するため、メタン酸化触媒421を再生する再生運転を、「追加再生運転」という。
【0064】
図6は、排気処理装置3aにおける追加再生運転を説明するための図である。追加再生運転では、ヒータ51および硫黄吸着部41を通過した高温の排気がメタン酸化触媒421を通過し(図6中の太い破線参照)、メタン酸化触媒421に吸着している硫黄含有物が脱着する。追加再生運転では、ヒータ51による排気の加熱温度が、硫黄吸着部41を再生する再生運転時の加熱温度と相違してもよく、一例では、追加再生運転時の排気の加熱温度が、再生運転時の加熱温度よりも低い。排気処理装置3aでは、硫黄吸着部41の再生、および、メタン酸化触媒421の再生を、それぞれに適した個別の温度条件にて行うことが可能である。メタン酸化触媒421を通過した排気は、接続位置P12へと向かい、ヒータバイパス流路71を通過した排気(図6中の太い一点鎖線参照)と混合される。このように、接続位置P12は、ヒータ51を通過した高温の排気と、ヒータ51を不通過の排気とが混合される混合位置である。混合位置P12における混合後の排気の温度は、制限温度以下となる。
【0065】
また、追加再生運転では、流路切替部6がバルブ61を閉じ、バルブ62,63を開く。これにより、接続位置P12を通過した排気が触媒バイパス流路76を流れず、尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れる非バイパス状態が形成される。メタン酸化触媒421では、硫黄含有物の吸着量が少ないため、排気に含まれる硫黄含有物の濃度は十分に低い。したがって、SCR触媒422では、酸性硫安や硫安の析出による触媒活性の低下が発生することなく、窒素酸化物が還元される。なお、メタン酸化触媒421における硫黄含有物の吸着量等によっては、追加再生運転において、流路切替部6がバイパス状態を維持してもよい。これにより、SCR触媒422の硫黄被毒がより確実に防止される。
【0066】
制御部30では、硫黄濃度測定部313の測定値に基づいて(例えば、当該測定値が所定の閾値以下となる場合に)、または、追加再生運転の実行時間等に基づいて、追加再生運転の終了が決定されると、ヒータバイパス流路71のバルブ211が徐々に閉じられる。さらに、ガス温度切替部5が、ヒータ51をOFF状態とすることにより、高温ガス流入状態から通常ガス流入状態に切り替えられる。これにより、排気処理装置3aにおいて追加再生運転が終了し、通常運転が再開される。
【0067】
メタン酸化触媒421の硫黄被毒が硫黄吸着部41により十分に抑えられる場合には、追加再生運転が省略されてもよい。ヒータ51により加熱された排気の温度によっては、メタン酸化触媒421において熱による焼結(シンタリング)が発生し細孔が塞がれて性能低下が引き起こされる可能性があるため、追加再生運転を省略する場合(すなわち、硫黄吸着部41を再生する再生運転のみを行う場合)、メタン酸化触媒421の焼結による劣化が防止される。
【0068】
以上に説明したように、排気処理装置3aでは、硫黄吸着部41の再生時に、硫黄吸着部41を通過した排気と、ヒータバイパス流路(図5では、ヒータバイパス流路71の接続位置P11と混合位置P22との間の部分)を通過した排気とが、硫黄吸着部41の下流側の混合位置P22にて混合される。これにより、メタン酸化触媒421の再生(追加再生運転)を省略する場合には、混合位置P22から下流側において安価な材料を使用することができる。また、混合位置P22が、硫黄吸着部41の直後であることにより、高温ガスが流れる流路の長さを短くして、高価な材料の使用量を削減することができる。追加再生運転を行う場合には、メタン酸化触媒421の再生時の混合位置P12から下流側において安価な材料を使用することができる。
【0069】
また、制御部30が、ガス温度切替部5を通常ガス流入状態から高温ガス流入状態に切り替えて硫黄吸着部41の再生を実行する際に、流路切替部6を非バイパス状態からバイパス状態に切り替える。これにより、硫黄吸着部41の再生時における対象触媒(図5では、SCR触媒422)の硫黄被毒を抑制することができる。
【0070】
排気処理装置3aは、他の触媒バイパス流路76aと、他の流路切替部6aとをさらに備える。触媒バイパス流路76aは、排気流路2に設けられ、メタン酸化触媒421を迂回する。流路切替部6aは、排気が触媒バイパス流路76aを流れるバイパス状態と、排気がメタン酸化触媒421を流れる非バイパス状態とが切替可能である。制御部30が、硫黄吸着部41の再生を実行する際に、流路切替部6aを非バイパス状態からバイパス状態に切り替える。これにより、硫黄吸着部41の再生時におけるメタン酸化触媒421の硫黄被毒を抑制することができる。
【0071】
排気処理装置3aでは、制御部30が、硫黄吸着部41の再生終了後に、ガス温度切替部5を高温ガス流入状態で維持しつつ、流路切替部6aをバイパス状態から非バイパス状態に切り替える。これにより、硫黄吸着部41の再生から連続して、メタン酸化触媒421を効率よく再生することができる。
【0072】
(第3実施形態)
図7は、本発明の第3実施形態に係る排気処理装置3bの構成を示す図である。図7の排気処理装置3bでは、図1の排気処理装置3と比較して、硫黄吸着部41およびメタン酸化触媒421のみが反応容器40に収容される点で相違する。また、補助流路23が追加され、補助流路23にヒータ51およびバルブ231が設けられる。他の構成は、図1の排気処理装置3と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。なお、硫黄吸着部41およびメタン酸化触媒421は、図7の順序を維持しつつ個別の容器に収容されてもよい。
【0073】
補助流路23の一端は、排気流路2(図7中の太い実線参照)における排気マニホールド12とタービン161との間の接続位置P31に接続される。補助流路23の他端は、排気流路2におけるバルブ212と硫黄吸着部41との間の接続位置P32に接続される。バルブ231は、補助流路23においてヒータ51の上流側に設けられる。排気処理装置3bでは、バルブ231およびヒータ51により、ガス温度切替部5aが構成される。後述するように、ガス温度切替部5aが、バルブ231を閉じ、ヒータ51をOFF状態にすることにより、排気が排気流路2に沿って流れ、通常温度の排気が硫黄吸着部41に流れる通常ガス流入状態が形成される。バルブ231を開き、ヒータ51をON状態にすることにより、排気の一部が補助流路23を流れ、通常温度よりも高温の排気が硫黄吸着部41に流れる高温ガス流入状態が形成される。
【0074】
排気処理装置3bにおける通常運転では、バルブ231,211,61を閉じ、他のバルブ212,213,62,63を開くことにより、排気が排気流路2に沿って流れる。このとき、排気はヒータ51に流入せず、ヒータ51はOFF状態である。すなわち、ガス温度切替部5aが、硫黄吸着部41に通常温度の排気が流れる通常ガス流入状態である。排気に含まれる硫黄含有物は、硫黄吸着部41に吸着する。メタン酸化触媒421では、排気に含まれるメタンが酸化される。また、流路切替部6は、排気が尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れ、触媒バイパス流路76を流れない非バイパス状態である。SCR触媒422では、排気に含まれる窒素酸化物が還元される。制御部30では、測定ユニット31の硫黄濃度測定部313の測定値、または、メタン濃度測定部312の測定値等に基づいて、硫黄吸着部41の再生の実行が決定される。
【0075】
図8は、排気処理装置3bにおける再生運転を説明するための図である。排気処理装置3bにおける再生運転では、ヒータバイパス流路71のバルブ211が徐々に開かれるとともに、バルブ212が閉じられる。また、ガス温度切替部5aが、バルブ231を開き、ヒータ51をON状態とすることにより、通常ガス流入状態から高温ガス流入状態に切り替えられる。
【0076】
接続位置P31では、エンジン10から排出された排気の一部が、補助流路23に流入し、ヒータ51に向かって流れる(図8中の太い破線参照)。ヒータ51を流れる排気は、タービン161を通過しておらず、圧力および温度が低下していないガス(いわゆる、抽気)である。また、排気の残りは、タービン161および接続位置P11を通過してヒータバイパス流路71に流入する(図8中の太い一点鎖線参照)。ヒータ51を通過した排気は、接続位置P32、硫黄吸着部41およびメタン酸化触媒421を通過する。これにより、硫黄吸着部41およびメタン酸化触媒421に吸着している硫黄含有物が脱着する。メタン酸化触媒421を通過した排気は、接続位置P12へと向かい、ヒータバイパス流路71を通過した排気と混合される。このように、接続位置P12は、ヒータ51を通過した高温の排気と、ヒータ51を不通過の排気とが混合される混合位置である。混合位置P12における混合後の排気の温度は、制限温度以下となる。
【0077】
また、再生運転では、流路切替部6がバルブ61を開き、バルブ62,63を閉じる。これにより、接続位置P12を通過した排気が尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れず、触媒バイパス流路76を流れるバイパス状態が形成される。その結果、高濃度の硫黄含有物を含む排気による、SCR触媒422の硫黄被毒が防止される。
【0078】
制御部30では、硫黄濃度測定部313の測定値、または、再生運転の実行時間等に基づいて、再生運転の終了が決定されると、ヒータバイパス流路71のバルブ211が徐々に閉じられるとともに、バルブ212が開かれる。また、ガス温度切替部5aが、バルブ231を閉じ、ヒータ51をOFF状態とすることにより、高温ガス流入状態から通常ガス流入状態に切り替えられる。さらに、流路切替部6がバルブ61を閉じ、バルブ62,63を開くことにより、バイパス状態から非バイパス状態に切り替えられる。このようにして、排気処理装置3bにおいて再生運転が終了し、通常運転が再開される。
【0079】
以上に説明したように、排気処理装置3bでは、硫黄吸着部41の再生時に、硫黄吸着部41を通過した排気と、ヒータバイパス流路(図8では、排気流路2の接続位置P31と接続位置P11との間の部分、および、ヒータバイパス流路71)を通過した排気とが、硫黄吸着部41の下流側の混合位置P12にて混合される。これにより、混合位置P12から下流側において安価な材料を使用することができ、排気処理装置3bの製造コストを削減することができる。
【0080】
また、制御部30が、ガス温度切替部5aを通常ガス流入状態から高温ガス流入状態に切り替えて硫黄吸着部41の再生を実行する際に、流路切替部6を非バイパス状態からバイパス状態に切り替える。これにより、硫黄吸着部41の再生時における対象触媒(図8では、SCR触媒422)の硫黄被毒を抑制することができる。
【0081】
排気処理装置3bでは、排気流路2においてターボチャージャ16のタービン161が設けられる。ガス温度切替部5aが通常ガス流入状態である際に、タービン161を通過した排気が硫黄吸着部41および触媒部42に流入する。ガス温度切替部5aが高温ガス流入状態である際に(すなわち、硫黄吸着部41の再生時に)、排気流路2においてエンジン10とタービン161との間から取り出される排気が、ヒータ51により加熱されて硫黄吸着部41に流入する。このように、エンジン10から排出され、タービン161を通過していない高温の排気を、硫黄吸着部41の再生に利用することにより、ヒータ51における消費エネルギーを低減することができる。
【0082】
なお、再生運転において、補助流路23から取り出される排気(抽気)の温度が十分に高い場合には、ヒータ51が省略されてもよい。これにより、船内において排気処理装置3bの省スペース化、および、エネルギーの有効活用が可能となる。また、ヒータ51による排気の加熱は、補助的に(必要に応じて)行われるのみであってよい。また、補助流路23から取り出される排気の温度が高過ぎる場合には、図8のバルブ212を開くとともに開度を調整することにより、当該排気とタービン161を通過した排気とを混合し、温度がある程度低下した排気を硫黄吸着部41に流入させることも可能である。後述の図9の排気処理装置3cにおいて同様である。
【0083】
(第4実施形態)
図9は、本発明の第4実施形態に係る排気処理装置3cの構成を示す図である。図4の排気処理装置3cでは、図7の排気処理装置3bと比較して、硫黄吸着部41とメタン酸化触媒421とが個別の容器に収容される点で相違する。また、図4の排気処理装置3aと同様に、補助流路22、バルブ221,222が追加される。他の構成は、図7の排気処理装置3bと同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。
【0084】
補助流路22の一端は、排気流路2(図9中の太い実線参照)における硫黄吸着部41とメタン酸化触媒421との間の接続位置P21に接続される。補助流路22の他端は、ヒータバイパス流路71におけるバルブ211と接続位置P12との間の接続位置P22に接続される。バルブ221は、補助流路22に設けられる。バルブ222は、排気流路2において接続位置P21とメタン酸化触媒421との間に設けられる。排気処理装置3cでは、補助流路22と、ヒータバイパス流路71の接続位置P22と接続位置P12との間の部分とにより、メタン酸化触媒421を迂回する他の触媒バイパス流路76aが構成される。また、バルブ221,222,213により、他の流路切替部6aが構成される。流路切替部6aが、バルブ221を開き、バルブ222,213を閉じることにより、接続位置P21に流入する排気がメタン酸化触媒421を流れず、触媒バイパス流路76aを流れるバイパス状態となる。また、バルブ221を閉じ、バルブ222,213を開くことにより、接続位置P21に流入する排気がメタン酸化触媒421を流れ、触媒バイパス流路76aを流れない非バイパス状態となる。
【0085】
排気処理装置3cにおける通常運転では、バルブ231,211,221,61を閉じ、他のバルブ212,222,213,62,63を開くことにより、排気が排気流路2に沿って流れる。このとき、排気はヒータ51に流入せず、ヒータ51はOFF状態である。すなわち、ガス温度切替部5aが、硫黄吸着部41に通常温度の排気が流れる通常ガス流入状態である。また、流路切替部6aは、排気がメタン酸化触媒421を流れ、触媒バイパス流路76aを流れない非バイパス状態である。流路切替部6は、排気が尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れ、触媒バイパス流路76を流れない非バイパス状態である。制御部30では、測定ユニット31の硫黄濃度測定部313の測定値、または、メタン濃度測定部312の測定値等に基づいて、硫黄吸着部41の再生の実行が決定される。
【0086】
図10は、排気処理装置3cにおける再生運転を説明するための図である。排気処理装置3cにおける再生運転では、ヒータバイパス流路71のバルブ211が徐々に開かれるとともに、バルブ212が閉じられる。また、ガス温度切替部5aが、バルブ231を開き、ヒータ51をON状態とすることにより、通常ガス流入状態から高温ガス流入状態に切り替えられる。さらに、流路切替部6aが、補助流路22のバルブ221を開き、バルブ222,213を閉じることにより、排気がメタン酸化触媒421を流れず、触媒バイパス流路76aを流れるバイパス状態が形成される。
【0087】
接続位置P31では、エンジン10から排出された排気の一部が、ヒータ51に向かって流れる(図10中の太い破線参照)。排気の残りは、タービン161および接続位置P11を通過してヒータバイパス流路71に流入する(図10中の太い一点鎖線参照)。ヒータ51を通過した排気は、接続位置P32を介して硫黄吸着部41に流入する。これにより、硫黄吸着部41に吸着している硫黄含有物が脱着する。硫黄吸着部41を通過した排気は、接続位置P21を経由して接続位置P22へと向かい、ヒータバイパス流路71を通過途中の排気と混合される。このように、接続位置P22は、ヒータ51を通過した高温の排気と、ヒータ51を不通過の排気とが混合される混合位置である。混合位置P22における混合後の排気の温度は、制限温度以下となる。混合後の排気は、ヒータバイパス流路71における接続位置P22と接続位置P12との間の部分を通過する。
【0088】
既述のように、排気処理装置3cでは、流路切替部6aがバイパス状態であり、ヒータ51を通過した高温の排気は、メタン酸化触媒421を流れない。これにより、高濃度の硫黄含有物を含む排気による、メタン酸化触媒421の硫黄被毒が防止される。また、再生運転では、流路切替部6がバルブ61を開き、バルブ62,63を閉じる。これにより、接続位置P12を通過した排気が尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れず、触媒バイパス流路76を流れるバイパス状態が形成される。その結果、高濃度の硫黄含有物を含む排気による、SCR触媒422の硫黄被毒が防止される。
【0089】
制御部30では、硫黄濃度測定部313の測定値、または、再生運転の実行時間等に基づいて、硫黄吸着部41の再生の終了が決定されると、バルブ222,213が開かれ、補助流路22のバルブ221が閉じられる。これにより、メタン酸化触媒421を再生する追加再生運転が実行される。
【0090】
図11は、排気処理装置3cにおける追加再生運転を説明するための図である。追加再生運転では、ヒータ51および硫黄吸着部41を通過した高温の排気がメタン酸化触媒421を通過し(図11中の太い破線参照)、メタン酸化触媒421に吸着している硫黄含有物が脱着する。追加再生運転では、ヒータ51による排気の加熱温度が、硫黄吸着部41を再生する再生運転時の加熱温度と相違してもよい。排気処理装置3cでは、硫黄吸着部41の再生、および、メタン酸化触媒421の再生を、それぞれに適した個別の温度条件にて行うことが可能である。メタン酸化触媒421を通過した排気は、接続位置P12へと向かい、ヒータバイパス流路71を通過した排気(図11中の太い一点鎖線参照)と混合される。このように、接続位置P12は、ヒータ51を通過した高温の排気と、ヒータ51を不通過の排気とが混合される混合位置である。混合位置P12における混合後の排気の温度は、制限温度以下となる。
【0091】
また、追加再生運転では、流路切替部6がバルブ61を閉じ、バルブ62,63を開く。これにより、接続位置P12を通過した排気が触媒バイパス流路76を流れず、尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れる非バイパス状態が形成される。メタン酸化触媒421では、硫黄含有物の吸着量が少ないため、排気に含まれる硫黄含有物の濃度は十分に低い。したがって、SCR触媒422では、酸性硫安や硫安の析出による触媒活性の低下が発生することなく、窒素酸化物が還元される。なお、メタン酸化触媒421における硫黄含有物の吸着量等によっては、追加再生運転において、流路切替部6がバイパス状態を維持してもよい。これにより、SCR触媒422の硫黄被毒がより確実に防止される。
【0092】
制御部30では、硫黄濃度測定部313の測定値、または、追加再生運転の実行時間等に基づいて、追加再生運転の終了が決定されると、ヒータバイパス流路71のバルブ211が徐々に閉じられるとともに、バルブ212が開かれる。また、ガス温度切替部5aが、バルブ231を閉じ、ヒータ51をOFF状態とすることにより、高温ガス流入状態から通常ガス流入状態に切り替えられる。これにより、排気処理装置3cにおいて再生運転が終了し、通常運転が再開される。
【0093】
図4の排気処理装置3aと同様に、メタン酸化触媒421の硫黄被毒が硫黄吸着部41により十分に抑えられる場合には、追加再生運転が省略されてもよい。高温ガス流入状態における排気の温度によっては、メタン酸化触媒421において熱による焼結(シンタリング)による劣化が引き起こされる可能性があるため、追加再生運転を省略する場合(すなわち、硫黄吸着部41を再生する再生運転のみを行う場合)、メタン酸化触媒421の焼結による劣化が防止される。
【0094】
以上に説明したように、排気処理装置3cでは、硫黄吸着部41の再生時に、硫黄吸着部41を通過した排気と、ヒータバイパス流路(図10では、排気流路2の接続位置P31と接続位置P11との間の部分、および、ヒータバイパス流路71の接続位置P11と混合位置P22との間の部分)を通過した排気とが、硫黄吸着部41の下流側の混合位置P22にて混合される。これにより、追加再生運転を省略する場合には、混合位置P22から下流側において安価な材料を使用することができる。追加再生運転を行う場合には、メタン酸化触媒421の再生時の混合位置P12から下流側において安価な材料を使用することができる。
【0095】
また、制御部30が、ガス温度切替部5aを通常ガス流入状態から高温ガス流入状態に切り替えて硫黄吸着部41の再生を実行する際に、流路切替部6を非バイパス状態からバイパス状態に切り替える。これにより、硫黄吸着部41の再生時における対象触媒(図10では、SCR触媒422)の硫黄被毒を抑制することができる。
【0096】
排気処理装置3cでは、硫黄吸着部41の再生時に、排気流路2においてエンジン10とタービン161との間から取り出される排気が、ヒータ51により加熱されて硫黄吸着部41に流入する。このように、エンジン10から排出され、タービン161を通過していない高温の排気を、硫黄吸着部41の再生に利用することにより、ヒータ51における消費エネルギーを低減することができる。
【0097】
排気処理装置3cは、他の触媒バイパス流路76aと、他の流路切替部6aとをさらに備える。触媒バイパス流路76aは、排気流路2に設けられ、メタン酸化触媒421を迂回する。流路切替部6aは、排気が触媒バイパス流路76aを流れるバイパス状態と、排気がメタン酸化触媒421を流れる非バイパス状態とが切替可能である。制御部30が、硫黄吸着部41の再生を実行する際に、流路切替部6aを非バイパス状態からバイパス状態に切り替える。これにより、硫黄吸着部41の再生時におけるメタン酸化触媒421の硫黄被毒を抑制することができる。
【0098】
(第5実施形態)
図12は、本発明の第5実施形態に係る排気処理装置3dの構成を示す図である。図12の排気処理装置3dでは、図1の排気処理装置3と比較して、ヒータ51、硫黄吸着部41、メタン酸化触媒421およびヒータバイパス流路71aが、排気流路2(図12中の太い実線参照)におけるエンジン10とタービン161との間に設けられる点で相違する。他の構成は、図1の排気処理装置3と同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。なお、図12では、ヒータ51、硫黄吸着部41およびメタン酸化触媒421が1つの反応容器40に収容されるが、ヒータ51、硫黄吸着部41およびメタン酸化触媒421は、図12の順序を維持しつつ個別の容器に収容されてもよい。
【0099】
排気処理装置3dでは、排気流路2において排気マニホールド12からタービン161に向かって、ヒータ51、硫黄吸着部41、メタン酸化触媒421が順に配置される。ヒータバイパス流路71aの一端は、排気流路2における排気マニホールド12とヒータ51との間の接続位置P51に接続される。ヒータバイパス流路71aの他端は、排気流路2におけるメタン酸化触媒421とタービン161との間の接続位置P52に接続される。ヒータバイパス流路71aには、バルブ214が設けられる。バルブ214は、例えば、流量調整バルブであり、制御部30がバルブ214の開度を調整することにより、ヒータバイパス流路71aを流れる排気の流量が調整可能である。排気流路2において、接続位置P51とヒータ51との間にはバルブ215が設けられ、メタン酸化触媒421と接続位置P52との間にはバルブ216が設けられる。制御部30によりバルブ215,216の開閉が制御される。
【0100】
排気処理装置3dにおける通常運転では、バルブ214,61を閉じ、他のバルブ215,216,62,63を開くことにより、排気が排気流路2に沿って流れる。このとき、ヒータ51はOFF状態である。すなわち、ガス温度切替部5が、硫黄吸着部41に通常温度の排気が流れる通常ガス流入状態である。排気に含まれる硫黄含有物は、硫黄吸着部41に吸着する。メタン酸化触媒421では、排気に含まれるメタンが酸化される。メタン酸化触媒421を通過した排気は、接続位置P52およびタービン161を経由して接続位置P13に向かう。流路切替部6は、非バイパス状態であり、排気が尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れる。SCR触媒422では、排気に含まれる窒素酸化物が還元される。制御部30では、測定ユニット31の硫黄濃度測定部313の測定値、または、メタン濃度測定部312の測定値等に基づいて、硫黄吸着部41の再生の実行が決定される。
【0101】
図13は、排気処理装置3dにおける再生運転を説明するための図である。排気処理装置3dにおける再生運転では、ヒータバイパス流路71aのバルブ214が徐々に開かれる。また、ガス温度切替部5が、ヒータ51をON状態とすることにより、通常ガス流入状態から高温ガス流入状態に切り替えられる。
【0102】
接続位置P51では、排気の一部がヒータ51に向かって流れ(図13中の太い破線参照)、排気の残りがヒータバイパス流路71aに流入する(図13中の太い一点鎖線参照)。ヒータ51を通過した排気は、硫黄吸着部41およびメタン酸化触媒421に流入する。これにより、硫黄吸着部41およびメタン酸化触媒421に吸着している硫黄含有物が脱着する。メタン酸化触媒421を通過した排気は、接続位置P52へと向かい、ヒータバイパス流路71aを通過した排気と混合される。このように、接続位置P52は、ヒータ51を通過した高温の排気と、ヒータ51を不通過の排気とが混合される混合位置である。混合位置P52における混合後の排気の温度は、制限温度以下となる。混合後の排気は、タービン161を経由して接続位置P13に向かう。
【0103】
再生運転では、流路切替部6がバルブ61を開き、バルブ62,63を閉じる。これにより、接続位置P13に到達した排気が尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れず、触媒バイパス流路76を流れるバイパス状態が形成される。その結果、高濃度の硫黄含有物を含む排気による、SCR触媒422の硫黄被毒が防止される。
【0104】
制御部30では、硫黄濃度測定部313の測定値、または、再生運転の実行時間等に基づいて、再生運転の終了が決定されると、ヒータバイパス流路71aのバルブ214が徐々に閉じられる。また、ガス温度切替部5が、ヒータ51をOFF状態とすることにより、高温ガス流入状態から通常ガス流入状態に切り替えられる。さらに、流路切替部6がバルブ61を閉じ、バルブ62,63を開くことにより、バイパス状態から非バイパス状態に切り替えられる。このようにして、排気処理装置3dにおいて再生運転が終了し、通常運転が再開される。
【0105】
以上に説明したように、排気処理装置3dでは、硫黄吸着部41の再生時に、硫黄吸着部41を通過した排気と、ヒータバイパス流路71aを通過した排気とが、硫黄吸着部41の下流側の混合位置P52にて混合される。これにより、混合位置P52から下流側において安価な材料を使用することができ、排気処理装置3dの製造コストを削減することができる。
【0106】
また、制御部30が、ガス温度切替部5を通常ガス流入状態から高温ガス流入状態に切り替えて硫黄吸着部41の再生を実行する際に、流路切替部6を非バイパス状態からバイパス状態に切り替える。これにより、硫黄吸着部41の再生時における対象触媒(図13では、SCR触媒422)の硫黄被毒を抑制することができる。
【0107】
排気処理装置3dでは、排気流路2においてターボチャージャ16のタービン161が設けられ、エンジン10とタービン161との間にメタン酸化触媒421が設けられる。このように、高圧の排気中にメタン酸化触媒421を配置することにより、メタン酸化触媒421の活性を上昇させて排気中のメタンを効率よく酸化させることができる。また、排気流路2においてエンジン10とタービン161との間に硫黄吸着部41が設けられることにより、メタン酸化触媒421およびSCR触媒422の活性低下の抑制に加えて、タービン161においてブレードの硫酸腐食や、ブレードおよびケーシング内の硫黄由来の堆積物の析出を抑制することができる。
【0108】
(第6実施形態)
図14は、本発明の第6実施形態に係る排気処理装置3eの構成を示す図である。図14の排気処理装置3eでは、図12の排気処理装置3dと比較して、ヒータ51および硫黄吸着部41のみが反応容器40に収容され、メタン酸化触媒421が個別の容器に収容される点で相違する。また、補助流路22a、バルブ223,224が追加される。他の構成は、図12の排気処理装置3dと同様であり、同じ構成に同じ符号を付す。なお、ヒータ51および硫黄吸着部41は、図14の順序を維持しつつ個別の容器に収容されてもよい。
【0109】
補助流路22aの一端は、排気流路2(図14中の太い実線参照)における硫黄吸着部41とメタン酸化触媒421との間の接続位置P61に接続される。補助流路22aの他端は、ヒータバイパス流路71aにおけるバルブ214と接続位置P52との間の接続位置P62に接続される。バルブ223は、補助流路22aに設けられる。バルブ224は、排気流路2において接続位置P61とメタン酸化触媒421との間に設けられる。排気処理装置3eでは、補助流路22aと、ヒータバイパス流路71aの接続位置P62と接続位置P52との間の部分とにより、メタン酸化触媒421を迂回する他の触媒バイパス流路76bが構成される。また、バルブ223,224,216により、他の流路切替部6bが構成される。流路切替部6bが、バルブ223を開き、バルブ224,216を閉じることにより、接続位置P61に流入する排気がメタン酸化触媒421を流れず、触媒バイパス流路76bを流れるバイパス状態となる。また、バルブ223を閉じ、バルブ224,216を開くことにより、接続位置P61に流入する排気がメタン酸化触媒421を流れ、触媒バイパス流路76bを流れない非バイパス状態となる。
【0110】
排気処理装置3eにおける通常運転では、バルブ214,223,61を閉じ、他のバルブ215,224,216,62,63を開くことにより、排気が排気流路2に沿って流れる。このとき、ヒータ51はOFF状態であり、排気の加熱は行われない。すなわち、ガス温度切替部5が、硫黄吸着部41に通常温度の排気が流れる通常ガス流入状態である。排気に含まれる硫黄含有物は、硫黄吸着部41に吸着する。流路切替部6bは、排気がメタン酸化触媒421を流れ、触媒バイパス流路76bを流れない非バイパス状態である。メタン酸化触媒421では、排気に含まれるメタンが酸化される。メタン酸化触媒421を通過した排気は、接続位置P52およびタービン161を経由して接続位置P13に向かう。流路切替部6は、排気が尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れ、触媒バイパス流路76を流れない非バイパス状態である。SCR触媒422では、排気に含まれる窒素酸化物が還元される。制御部30では、測定ユニット31の硫黄濃度測定部313の測定値、または、メタン濃度測定部312の測定値等に基づいて、硫黄吸着部41の再生の実行が決定される。
【0111】
図15は、排気処理装置3eにおける再生運転を説明するための図である。排気処理装置3eにおける再生運転では、流路切替部6bが、補助流路22aのバルブ223を開き、バルブ224,216を閉じる。これにより、排気がメタン酸化触媒421を流れず、触媒バイパス流路76bを流れるバイパス状態が形成される。また、ヒータバイパス流路71aのバルブ214が徐々に開かれる。さらに、ガス温度切替部5が、ヒータ51をON状態とすることにより、通常ガス流入状態から高温ガス流入状態に切り替えられる。
【0112】
接続位置P51では、排気の一部がヒータ51に向かって流れ(図15中の太い破線参照)、排気の残りがヒータバイパス流路71aに流入する(図15中の太い一点鎖線参照)。ヒータ51を通過した排気は、硫黄吸着部41に流入する。これにより、硫黄吸着部41に吸着している硫黄含有物が脱着する。硫黄吸着部41を通過した排気は、接続位置P61を経由して接続位置P62へと向かい、ヒータバイパス流路71aを通過途中の排気と混合される。このように、接続位置P62は、ヒータ51を通過した高温の排気と、ヒータ51を不通過の排気とが混合される混合位置である。混合位置P62における混合後の排気の温度は、制限温度以下となる。混合後の排気は、ヒータバイパス流路71aにおける接続位置P62と接続位置P52との間の部分を通過する。
【0113】
既述のように、排気処理装置3eでは、流路切替部6bがバイパス状態であり、ヒータ51を通過した高温の排気は、メタン酸化触媒421を流れない。これにより、高濃度の硫黄含有物を含む排気による、メタン酸化触媒421の硫黄被毒が防止される。接続位置P52を通過した排気は、タービン161を経由して接続位置P13に向かう。再生運転では、流路切替部6がバルブ61を開き、バルブ62,63を閉じる。これにより、接続位置P52を通過した排気が尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れず、触媒バイパス流路76を流れるバイパス状態が形成される。その結果、高濃度の硫黄含有物を含む排気による、SCR触媒422の硫黄被毒が防止される。
【0114】
制御部30では、硫黄濃度測定部313の測定値、または、再生運転の実行時間等に基づいて、硫黄吸着部41の再生の終了が決定されると、バルブ224,216が開かれ、補助流路22aのバルブ223が閉じられる。これにより、メタン酸化触媒421を再生する追加再生運転が実行される。
【0115】
図16は、排気処理装置3eにおける追加再生運転を説明するための図である。追加再生運転では、ヒータ51および硫黄吸着部41を通過した高温の排気がメタン酸化触媒421を通過し(図16中の太い破線参照)、メタン酸化触媒421に吸着している硫黄含有物が脱着する。追加再生運転では、ヒータ51による排気の加熱温度が、硫黄吸着部41を再生する再生運転時の加熱温度と相違してもよい。排気処理装置3eでは、硫黄吸着部41の再生、および、メタン酸化触媒421の再生を、それぞれに適した個別の温度条件にて行うことが可能である。メタン酸化触媒421を通過した排気は、接続位置P52へと向かい、ヒータバイパス流路71aを通過した排気(図16中の太い一点鎖線参照)と混合される。このように、接続位置P52は、ヒータ51を通過した高温の排気と、ヒータ51を不通過の排気とが混合される混合位置である。混合位置P52における混合後の排気の温度は、制限温度以下となる。
【0116】
また、追加再生運転では、流路切替部6がバルブ61を閉じ、バルブ62,63を開く。これにより、接続位置P52およびタービン161を通過した排気が触媒バイパス流路76を流れず、尿素水供給部429およびSCR触媒422を流れる非バイパス状態が形成される。メタン酸化触媒421では、硫黄含有物の吸着量が少なく、排気に含まれる硫黄含有物の濃度は十分に低いため、SCR触媒422において酸性硫安や硫安の析出による触媒活性の低下が発生することはない。なお、メタン酸化触媒421における硫黄含有物の吸着量等によっては、追加再生運転において、流路切替部6がバイパス状態を維持してもよい。これにより、SCR触媒422の硫黄被毒がより確実に防止される。
【0117】
制御部30では、硫黄濃度測定部313の測定値、または、追加再生運転の実行時間等に基づいて、追加再生運転の終了が決定されると、ヒータバイパス流路71aのバルブ214が徐々に閉じられる。また、ガス温度切替部5が、ヒータ51をOFF状態とすることにより、高温ガス流入状態から通常ガス流入状態に切り替えられる。これにより、排気処理装置3eにおいて追加再生運転が終了し、通常運転が再開される。
【0118】
図4の排気処理装置3aと同様に、メタン酸化触媒421の硫黄被毒が硫黄吸着部41により十分に抑えられる場合には、追加再生運転が省略されてもよい。ヒータ51により加熱された排気の温度によっては、メタン酸化触媒421において熱による焼結(シンタリング)による劣化が引き起こされる可能性があるため、追加再生運転を省略する場合(すなわち、硫黄吸着部41を再生する再生運転のみを行う場合)、メタン酸化触媒421の焼結による劣化が防止される。
【0119】
以上に説明したように、排気処理装置3eでは、硫黄吸着部41の再生時に、硫黄吸着部41を通過した排気と、ヒータバイパス流路(図15では、ヒータバイパス流路71aの接続位置P51と混合位置P62との間の部分)を通過した排気とが、硫黄吸着部41の下流側の混合位置P62にて混合される。これにより、追加再生運転を省略する場合には、混合位置P62から下流側において安価な材料を使用することができる。追加再生運転を行う場合には、メタン酸化触媒421の再生時の混合位置P52から下流側において安価な材料を使用することができる。
【0120】
また、制御部30が、ガス温度切替部5を通常ガス流入状態から高温ガス流入状態に切り替えて硫黄吸着部41の再生を実行する際に、流路切替部6を非バイパス状態からバイパス状態に切り替える。これにより、硫黄吸着部41の再生時における対象触媒(図15では、SCR触媒422)の硫黄被毒を抑制することができる。
【0121】
排気処理装置3eでは、排気流路2において、エンジン10とタービン161との間にメタン酸化触媒421が設けられることにより、メタン酸化触媒421の活性を上昇させて排気中のメタンを効率よく酸化させることができる。また、エンジン10とタービン161との間に硫黄吸着部41が設けられることにより、タービン161においてブレードの硫酸腐食や、ブレードやケーシング内の硫黄由来の堆積物の析出を抑制することができる。
【0122】
排気処理装置3eは、他の触媒バイパス流路76bと、他の流路切替部6bとを備える。触媒バイパス流路76bは、排気流路2に設けられ、メタン酸化触媒421を迂回する。流路切替部6bは、排気が触媒バイパス流路76bを流れるバイパス状態と、排気がメタン酸化触媒421を流れる非バイパス状態とが切替可能である。制御部30が、硫黄吸着部41の再生を実行する際に、流路切替部6bを非バイパス状態からバイパス状態に切り替える。これにより、硫黄吸着部41の再生時におけるメタン酸化触媒421の硫黄被毒を抑制することができる。
【0123】
上記排気処理装置3,3a~3eでは様々な変形が可能である。
【0124】
上記排気処理装置3,3a~3eでは、触媒部42がメタン酸化触媒421およびSCR触媒422を含むが、触媒部42がメタン酸化触媒421またはSCR触媒422の一方の触媒のみを含んでもよい。この場合も、当該一方の触媒を迂回する触媒バイパス流路を設け、硫黄吸着部41を再生する際に、高温の排気が触媒バイパス流路を流れるバイパス状態とすることにより、当該一方の触媒の硫黄被毒を抑制することができる。触媒部42が、メタン酸化触媒421およびSCR触媒422以外の触媒を含む場合も同様である。
【0125】
排気処理装置3,3a~3eでは、硫黄吸着部41が省略されてもよい。硫黄吸着部41を省略した排気処理装置3,3a~3eでは、通常運転において、メタン酸化触媒421に硫黄含有物が吸着する。すなわち、メタン酸化触媒421は、排気に含まれるメタンを酸化するとともに、排気中の硫黄を含む物質を吸着することにより、硫黄吸着部としても機能する。この場合も、硫黄吸着部であるメタン酸化触媒421を再生する際に、高温の排気が触媒バイパス流路76を流れるバイパス状態とすることにより、SCR触媒422の硫黄被毒を抑制することができる。
【0126】
排気処理装置3,3a~3eの設計によっては、ヒータバイパス流路71,71aが省略されてもよい。
【0127】
上記実施形態では、排気処理装置3,3a~3eが、船舶に設けられる場合について説明したが、排気処理装置3,3a~3eは、発電所等、エンジンが用いられる様々な設備に設けられてもよい。また、エンジンにおいてメタンを含まない燃料が用いられてもよく、排気処理装置3,3a~3eが、メタン酸化触媒421を含まなくてもよい。
【0128】
上記実施の形態および各変形例における構成は、相互に矛盾しない限り適宜組み合わされてよい。
【符号の説明】
【0129】
2 排気流路
3,3a~3e 排気処理装置
5,5a ガス温度切替部
6,6a,6b 流路切替部
10 エンジン
16 ターボチャージャ
30 制御部
41 硫黄吸着部
42 触媒部
51 ヒータ
161 タービン
421 メタン酸化触媒
422 SCR触媒
76,76a,76b 触媒バイパス流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15
図16