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特開2024-143604ブリッジレス力率改善コンバータ及び制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143604
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】ブリッジレス力率改善コンバータ及び制御方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/12 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
H02M7/12 Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056368
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006611
【氏名又は名称】株式会社富士通ゼネラル
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 幹太朗
(72)【発明者】
【氏名】三浦 理恵
【テーマコード(参考)】
5H006
【Fターム(参考)】
5H006AA02
5H006CA01
5H006CA07
5H006CB01
5H006CB08
5H006DA02
5H006DA04
5H006DB01
5H006DC02
5H006DC05
(57)【要約】
【課題】入力電圧の極性による入力電流制御のアンバランスを防止するブリッジレス力率改善コンバータを提供する。
【解決手段】ブリッジレス力率改善コンバータは、電力変換部と、入力電圧検出部と、出力電圧検出部と、電流検出部と、制御部とを備える。電力変換部は、ブリッジ回路を有し、交流電源を直流電源に変換する。入力電圧検出部は、入力電圧を検出する。出力電圧検出部は、電力変換部の出力電圧を検出する。電流検出部は、入力電流を検出する。制御部は、制御電流生成器を有し、ブリッジ回路のスイッチング素子のオン/オフを制御する。制御電流生成器は、入力電圧が正極性の場合、第2の振幅頂点のタイミングで入力電流を検出するとともに、第3の振幅頂点のタイミングで検出した入力電流を出力し、入力電圧が負極性の場合、第1の振幅頂点のタイミングで入力電流を検出するとともに、第3の振幅頂点のタイミングで検出した入力電流を出力する。
【選択図】図13
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つのダイオードと2つのスイッチング素子がブリッジ接続されたブリッジ回路、または、4つのスイッチング素子がブリッジ接続されたブリッジ回路と、リアクタと、平滑コンデンサとを有し、交流電源を直流電源に変換する電力変換部と、
前記交流電源の電圧である入力電圧を検出する入力電圧検出部と、
前記電力変換部の出力電圧を検出する出力電圧検出部と、
前記リアクタに流れる入力電流を検出する電流検出部と、
前記入力電圧検出部による検出結果、前記出力電圧検出部による検出結果、前記電流検出部による検出結果に基づいて、三角波をスイッチングキャリアとするPWM制御により前記ブリッジ回路のスイッチング素子のオン/オフを制御する制御部と
を備え、
前記制御部は、
前記電流検出部により検出される入力電流と前記スイッチングキャリアに基づいて、前記PWM制御に用いられるPWMパルスを生成するための制御電流を生成する制御電流生成器を備え、
前記制御電流生成器は、
前記スイッチングキャリアの1周期における振幅頂点を位相の順に第1の振幅頂点、第2の振幅頂点、第3の振幅頂点としたとき、
前記入力電圧が正極性の場合、前記第2の振幅頂点のタイミングで前記入力電流を検出するとともに、前記第3の振幅頂点のタイミングで前記検出した入力電流を出力し、
前記入力電圧が負極性の場合、前記第1の振幅頂点のタイミングで入力電流を検出するとともに、前記第3の振幅頂点のタイミングで前記検出した入力電流を出力する、ブリッジレス力率改善コンバータ。
【請求項2】
前記制御部は、
電圧指令値と、前記出力電圧検出部から出力される前記出力電圧とに基づいて、電流振幅指令値を生成する電圧制御部と、
前記電圧制御部から出力される前記電流振幅指令値と、前記入力電圧検出部から出力される前記入力電圧と、前記制御電流生成器から出力される制御電流とに基づいて、前記電力変換部を、前記リアクタを放電状態にするリアクタ放電モードと、前記リアクタを充電状態にするリアクタ充電モードとを交互に切り替えて繰り返し動作させるためのPWMパルスを生成し、前記PWMパルスを前記ブリッジ回路のスイッチング素子に出力するパルス生成制御部と、
を有する、請求項1に記載のブリッジレス力率改善コンバータ。
【請求項3】
前記制御電流生成器は、
前記入力電圧検出部により検出される入力電圧の極性を判定し、前記入力電圧の極性が負の場合に、前記電流検出部により検出される前記入力電流の電流位相を、前記スイッチングキャリアの半周期分遅らせる、請求項2に記載のブリッジレス力率改善コンバータ。
【請求項4】
前記パルス生成制御部は、
前記電流振幅指令値と前記入力電圧の位相に基づいて電流指令値を生成する第1の演算部と、
前記電流指令値と前記制御電流生成器から出力される制御電流との差分に基づいて、前記ブリッジ回路のスイッチング素子を動作させるPWMパルスを生成するためのオンデューティを生成する第2の演算部と、
前記入力電圧検出部から出力される入力電圧と、前記第2の演算部から出力される前記オンデューティとに基づいて、前記PWMパルスを生成する第3の演算部と
を備える、請求項2に記載のブリッジレス力率改善コンバータ。
【請求項5】
前記ブリッジ回路は、第1のダイオードと第2のダイオードが直列に接続された第1の直列回路を含むとともに、前記第1の直列回路に対し並列に接続され、下アームを構成する第1のスイッチング素子と上アームを構成する第2のスイッチング素子が直列に接続された第2の直列回路を有する、請求項1に記載のブリッジレス力率改善コンバータ。
【請求項6】
前記制御部は、
電圧指令値と、前記出力電圧検出部から出力される前記出力電圧とに基づいて、電流振幅指令値を生成する電圧制御部と、
前記電圧制御部から出力される前記電流振幅指令値と、前記入力電圧検出部から出力される前記入力電圧と、前記制御電流生成器から出力される制御電流とに基づいて、前記第1のスイッチング素子と前記第2のスイッチング素子のいずれか一方をオン、いずれか他方をオフして、前記リアクタを放電状態にするリアクタ放電モードと、前記リアクタを充電状態にするリアクタ充電モードとを交互に切り替えて繰り返し動作させるためのPWMパルスを生成し、前記PWMパルスを前記第1のスイッチング素子及び前記第2のスイッチング素子に出力するパルス生成制御部と、
を有する、請求項5に記載のブリッジレス力率改善コンバータ。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載のブリッジレス力率改善コンバータの制御方法であって、
制御電流生成器が、与えられるスイッチングキャリアを検出することと、
前記制御電流生成器が、入力電圧検出部により検出される入力電圧の極性を判定することと、
前記入力電圧の極性が正極性と判定した場合に、前記制御電流生成器が、前記スイッチングキャリアの1周期における振幅頂点を位相の順に第1の振幅頂点、第2の振幅頂点、第3の振幅頂点としたとき、前記第2の振幅頂点のタイミングで前記入力電流を検出することと、
前記入力電圧の極性が負極性と判定した場合に、前記制御電流生成器が、前記第1の振幅頂点のタイミングで入力電流を検出することと、
前記制御電流生成器が、前記第3の振幅頂点のタイミングで前記検出した入力電流を前記制御電流として出力することと、
を備える、ブリッジレス力率改善コンバータの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブリッジレス力率改善コンバータ、及びブリッジレス力率改善コンバータの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、交流電力を直流電力に変換する電力変換装置(コンバータ)では、力率を改善するとともに、高調波電流を抑制するために、力率改善コンバータ(PFCコンバータ)が用いられる。ここで、一般的な力率改善コンバータでは、ダイオードブリッジで交流電圧を整流した後、ブーストコンバータ(昇圧型コンバータ)を用いて昇圧と力率改善を行うことが多い。
【0003】
しかし、このように整流用のダイオードブリッジを設けた場合、ダイオードブリッジ自体の損失が力率改善コンバータの高効率化の妨げとなっている。そこで、ブリッジを持たないブリッジレス力率改善コンバータが提案されている(例えば、特許文献1)。この種のブリッジレス力率改善コンバータは、2つのダイオードの直列回路と、2つのFET(電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子の直列回路とを有する。なお、スイッチング素子には、例えば、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)等のスイッチング素子が用いられ、スイッチング素子はPWM(パルス幅変調)制御によりオン、オフ制御が行われる。
【0004】
ところで、力率を改善するとともに、高調波電流を抑制するためには、入力電流の制御(以下、入力電流制御ともいう)が必要となる。入力電流制御では、入力電流をフィードバックする方法が一般的であり、入力電流の基本波(電源周波数成分)を検出する必要がある。スイッチング素子がオン、オフすると、入力電流にスイッチングキャリアに起因したノイズ成分が重畳する。このため、検出タイミングを適切に設定しなければ、基本波を正確に検出することが難しくなる。基本波を検出する方法としては、スイッチングキャリアに起因するノイズ成分が重畳した電流波形と基本波の電流波形とが重なる点、つまりスイッチングキャリアの山や谷のタイミングに検出点を設定することが行われる。
【0005】
一般に、ブリッジレス力率改善コンバータでは、通常の昇圧チョッパ等とは異なり、入力電圧の極性によって入力電流の増減が異なる。例えば、特許文献1に記載のトーテムポール型のハーフブリッジを用いたブリッジレス力率改善コンバータでは、入力電圧の極性が正の時は、下アームのスイッチング素子がオンの時(リアクタ充電モード)に入力電流が増加し、上アームのスイッチング素子がオンの時(リアクタ放電モード)に入力電流が減少する。入力電圧の極性が負の時は、正の時と逆となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012-70490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
基本的に入力電流の検出には、検出回路やノイズフィルタ等に起因した検出遅れ時間がある。このため、スイッチングキャリアの山または谷における電流検出値と実際の電流値(実電流値と称する)との誤差、つまり基本波からの乖離が生じてしまうことになる。
【0008】
特に、特許文献1に記載のブリッジレス力率改善コンバータでは、入力電圧の極性の違いにより、スイッチングキャリアの山または谷でリアクタが充電モードであるか放電モードであるかの充放電状態が異なる。また、リアクタが充電モードであるときの電流変化の傾きが、放電モードにあるときの電流変化の傾きより大きい。このため、入力電圧が正の場合と負の場合とで同じ検出タイミングに設定して電流検出を行うと、検出遅れの影響が入力電圧の極性によって異なり、検出される入力電流の振幅が異なってしまう。入力電流制御は、入力電流の1周期の間では入力電圧の極性が異なっても同じ検出タイミングで検出される入力電流の振幅が等しいことを前提に行われるため、このような検出電流を用いると入力電圧が正の場合と負の場合とでフィードバックされる入力電流の振幅が異なってしまい、入力電流制御にアンバランスが生じる原因となる。
【0009】
本発明は、従来の未解決の問題に着目してなされたものであり、入力電圧の極性による入力電流制御のアンバランスを防止することが可能なブリッジレス力率改善コンバータ及びその制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の一態様によれば、2つのダイオードと2つのスイッチング素子がブリッジ接続されたブリッジ回路、または、4つのスイッチング素子がブリッジ接続されたブリッジ回路と、リアクタと、平滑コンデンサとを有し、交流電源を直流電源に変換する電力変換部と、交流電源の電圧である入力電圧を検出する入力電圧検出部と、電力変換部の出力電圧を検出する出力電圧検出部と、リアクタに流れる入力電流を検出する電流検出部と、入力電圧検出部による検出結果、出力電圧検出部による検出結果、電流検出部による検出結果に基づいて、三角波をスイッチングキャリアとするPWM制御によりブリッジ回路のスイッチング素子のオン/オフを制御する制御部とを備え、制御部は、電流検出部により検出される入力電流とスイッチングキャリアに基づいて、PWM制御に用いられるPWMパルスを生成するための制御電流を生成する制御電流生成器を備え、制御電流生成器は、スイッチングキャリアの1周期における振幅頂点を位相の順に第1の振幅頂点、第2の振幅頂点、第3の振幅頂点としたとき、入力電圧が正極性の場合、第2の振幅頂点のタイミングで入力電流を検出するとともに、第3の振幅頂点のタイミングで検出した入力電流を出力し、入力電圧が負極性の場合、第1の振幅頂点のタイミングで入力電流を検出するとともに、第3の振幅頂点のタイミングで検出した入力電流を出力する、ブリッジレス力率改善コンバータ、が提供される。
【0011】
また、本発明の他の態様によれば、請求項1乃至6のいずれか1つに記載のブリッジレス力率改善コンバータの制御方法であって、制御電流生成器が、与えられるスイッチングキャリアを検出することと、制御電流生成器が、入力電圧検出部により検出される入力電圧の極性を判定することと、入力電圧の極性が正極性と判定した場合に、制御電流生成器が、スイッチングキャリアの1周期における振幅頂点を位相の順に第1の振幅頂点、第2の振幅頂点、第3の振幅頂点としたとき、第2の振幅頂点のタイミングで入力電流を検出することと、入力電圧の極性が負極性と判定した場合に、制御電流生成器が、第1の振幅頂点のタイミングで入力電流を検出することと、制御電流生成器が、第3の振幅頂点のタイミングで前記検出した入力電流を前記制御電流として出力することと、を備える、ブリッジレス力率改善コンバータの制御方法、が提供される。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一態様によれば、入力電圧の極性による入力電流制御のアンバランスを防止することが可能なブリッジレス力率改善コンバータ及びその制御方法を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】第1の実施形態に係るブリッジレス力率改善コンバータ(TPBLコンバータ)の回路構成を示す図である。
図2図1に示したTPBLコンバータの入力部の等価回路を示す図である。
図3】力率1におけるベクトル図である。
図4】自己誘導を説明するために示す図である。
図5】TPBLコンバータの簡易回路図である。
図6】TPBLコンバータがスイッチング動作しない時の電圧波形を示す図である。
図7】TPBLコンバータにおけるリアクタ充電時の経路を示す図である。
図8】TPBLコンバータにおけるリアクタ放電時の経路を示す図である。
図9図1に示した制御部の制御ブロック図である。
図10】制御部から出力されるPWMパルスと入力電流とスイッチングキャリアとの相対関係を示す特性図である。
図11】入力電圧極性の違いによりリアクタの充放電状態が異なる様子を説明するために示す特性図である。
図12図9に示した制御電流生成器の具体的な構成を示す図である。
図13図12に示した平均入力電流算出器の具体的な構成を示す図である。
図14】制御電流生成器の動作を説明するためのPWMパルスと入力電流とスイッチングキャリアとの相対関係を示す特性図である。
図15】制御電流生成器の動作を説明するためのPWMパルスと入力電流とスイッチングキャリアと電流位相との相対関係を示す特性図である。
図16】第2の実施形態に係る制御電流生成器による制御電流の生成制御手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものである。
また、以下に示す実施の形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の構造、配置等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。なお、以下に示す実施形態では、スイッチング素子を含んだ回路を例示するが、かかる例示で本発明が限定されるものではない。
【0015】
<第1の実施形態>
図1は、第1の実施形態に係るブリッジレス力率改善コンバータの回路構成を示す図である。同図に示す回路は、トーテムポール方式ブリッジレス力率改善コンバータ(TPBLコンバータ)10である。なお、「トーテムポール方式」とは、複数のスイッチング素子が回路図において縦方向に積まれたように見えることに基づく通称である。ここで、TPBLコンバータ10は、各スイッチング素子が、リアクタを介して交流電源に接続されているので、スイッチングノイズの影響がリアクタによって吸収され、交流電源側へ伝達されにくいというメリットを有している。
【0016】
TPBLコンバータ10は、電力変換部11と、入力電圧検出部に相当する入力電圧検出回路12と、出力電圧検出部に相当する出力電圧検出回路13と、電流検出部に相当する入力電流検出回路14と、制御部15とを含む。電力変換部11は、交流電源1の電圧である入力電圧VACを整流して昇圧するとともに、入力電流IACの力率を改善し、直流の出力電圧VDCを負荷2に出力する。
【0017】
電力変換部11は、ブリッジ回路111と、リアクタL1と、平滑コンデンサC1とを含む。ブリッジ回路111は、第1のダイオードD1と第2のダイオードD2が直列に接続された第1の直列回路と、第1のスイッチング素子S1と第2のスイッチング素子S2が直列に接続された第2の直列回路とがブリッジ接続されている。ブリッジ回路11は、第1のダイオードD1と第2のダイオードD2の接続点が交流電源1の負側(-)に接続され、第1のスイッチング素子S1と第2のスイッチング素子S2の接続点が交流電源1の正側(+)に接続されている。
【0018】
図1では、第1のスイッチング素子S1及び第2のスイッチング素子S2がMOSFETである場合を例示しており、第1のスイッチング素子S1は第1のボディダイオードDS1を含み、第2のスイッチング素子S2は第2のボディダイオードDS2を含む。リアクタL1の一端は交流電源1の正側が接続されており、リアクタL1の他端は、第1のスイッチング素子S1と第2のスイッチング素子S2の接続点、つまり、第1のスイッチング素子S1のドレインと、第2のスイッチング素子S2のソースとが接続されている。また、第1のスイッチング素子S1は下アームを構成し、第2のスイッチング素子S2は上アームを構成する。また、第1のダイオードD1と第2のダイオードD2は、第1のダイオードD1のカソードと第2のダイオードD2のアノードが接続され、この接続点が交流電源1の負側に接続されている。そして、第1のスイッチング素子S1のソースと第1のダイオードD1のカソードが接続され、第2のスイッチング素子S2のドレインと第2のダイオードD2のカソードが接続されている。
【0019】
なお、ブリッジ回路111の後段には、平滑コンデンサC1が負荷2と並列に設けられている。平滑コンデンサC1は、ブリッジ回路111により整流された電圧を平滑して直流の出力電圧を出力する。
【0020】
入力電圧検出回路12は、交流電源1の電圧である入力電圧VACを検出する。出力電圧検出回路13は、電力変換部11の出力電圧VDCを検出する。入力電流検出回路14は、リアクタL1と、第1のスイッチング素子S1と第2のスイッチング素子S2との接続点との間に配置され、リアクタL1に流れる入力電流IACを検出する。
【0021】
制御部15は、入力電圧検出回路12による検出結果、出力電圧検出回路13による検出結果、入力電流検出回路14による検出結果に基づいて、詳細は後述するPWM制御により第1のスイッチング素子S1及び第2のスイッチング素子S2のオン/オフを制御する。
【0022】
<TPBLコンバータの動作>
(入力電流の制御)
入力電流IACの制御には、3レベル制御法が用いられる。図2は、TPBLコンバータ10の入力部の等価回路を示している。図3は、力率1におけるベクトル図を示している。入力部は、交流電源1とリアクタL1とブリッジ回路111を相当する。
【0023】
リアクタLの電圧降下(リアクタL1両端の電圧)ΔVは、交流電源1の電源電流IACに対しπ/2進みとなり、jωLIsと示している。電力変換部11の出力電圧VDCを直流電圧の指令値に追従させ、且つ力率を「1」とするためにはブリッジ回路111の入力電圧VINVを下式となるように与えることで実現できる。この入力電圧VINVは、下記の式1で示されるように第1のスイッチング素子S1と第2のスイッチング素子S2との接続点と、第1のダイオードD1と第2のダイオードD2との接続点との間の電圧である。
【数1】
【0024】
制御部15は、直流電圧の指令値と検出値の偏差から入力電流指令値を算出し、入力電流指令値と検出値の偏差からリアクタL1の電圧降下ΔVを求める。リアクタL1の電圧降下ΔVは、定常的にはjωLIsと等しいため、下式が成り立つ。
INV=VAC-ΔV
よって、ΔVを調整することで、力率「1」を実現した電流制御を実行する。
【0025】
(リアクタの充放電)
リアクタL1には電気エネルギーを磁気エネルギーに変換することでエネルギーを蓄えることができる。リアクタL1には、図4に示すように、電磁誘導によって、電流の変化を妨げるような起電力(逆起電力)Vが発生する。これを自己誘導と呼ぶ。リアクタL1に流れる電流をi、リアクタL1のインダクタンスをLとすると、逆起電力Vは下記の式2で与えられる。
【数2】
【0026】
TPBLコンバータ10は、簡易的には、図5に示すように描くことができる。入力電圧をVAC、ブリッジ回路111の入力電圧をVINV、負荷に供給される出力電圧をVDCと示す。図6は、TPBLコンバータ10がスイッチング動作しない時の電圧波形を示している。図6において、縦軸は電圧(V)を示し、横軸は時間(s)を示している。入力電圧VAC(交流電圧)は実線で示され、負荷に供給される出力電圧VDC(直流電圧)は点線で示される。
【0027】
TPBLコンバータ10のスイッチング動作を実施しない場合(パッシブ時)、リアクタL1の逆起電力は電流変化が小さいことで、ほとんど発生しない。つまり、VACとVINVは同等となる。そのため、二次側に電流が流れるのは、VACがVDCを超える時のみとなる。
【0028】
(リアクタ充電時)
図7は、リアクタ充電時の経路を示している。例えば、第1のスイッチング素子S1がオンの時、交流電源1はリアクタL1を介して短絡状態となり入力電流IACが増加する。このため、リアクタL1の自己誘導により入力電流IACを増加させないような起電力(逆起電力)Vが発生する。そして、入力電流IACと逆起電力Vの積で示される電力がエネルギーとしてリアクタL1に蓄積される(リアクタ充電)。
【0029】
具体的には、入力電圧の極性が正であり、第1のスイッチング素子S1がオン、第2のスイッチング素子S2がオフとなった場合には、入力電流IACは、リアクタL1、第1のスイッチング素子S1、第1のダイオードD1経由で交流電源1に戻る経路で流れる。一方、入力電圧の極性が負であり、第2のスイッチング素子S2がオン、第1のスイッチング素子S1がオフとなった場合には、入力電流IACは、第2のダイオードD2、第2のスイッチング素子S2、リアクタL1経由で交流電源1に戻る経路で流れる。
【0030】
(リアクタ放電時)
図8は、リアクタ放電時の経路を示している。例えば、第1のスイッチング素子S1がオフの時、交流電源1はリアクタL1を介して負荷2に接続されるため、短絡時と比べて入力電流IACは減少する。このため、リアクタL1の自己誘導により入力電流IACを減少させないような起電力(逆起電力)Vが発生する。そして、リアクタL1に蓄積されたエネルギーが放出されリアクタL1が放電する(リアクタ放電)。この時、電力変換部11の出力電圧VDCよりリアクタL1の入力側の電圧は逆起電力V分高くなるため、負荷2側へ電流を流すことができる。
【0031】
具体的には、入力電圧の極性が正であり、第2のスイッチング素子S2がオン、第1のスイッチング素子S1がオフとなった場合には、入力電流IACは、リアクタL1、第2のスイッチング素子S2、負荷2、第1のダイオードD1経由で交流電源1に戻る経路で流れる。一方、入力電圧の極性が負であり、第1のスイッチング素子S1がオン、第2のスイッチング素子S2がオフとなった場合には、入力電流IACは、第2のダイオードD2、負荷2、第1のスイッチング素子S1、リアクタL1経由で交流電源1に戻る経路で流れる。
【0032】
(入力電流の傾き)
入力電流IACの傾きは充電時、放電時のそれぞれで異なる。diを充電時の微小時間当たりの電流変化量、diを放電時の微小時間当たりの電流変化量とすると電流と電圧の関係は下記の式3で表せる。
【数3】
inはVACを全波整流した電圧を示しており、常に極性は正となる。上記の式より、VDCは常に正の値となるため、放電時に比べ充電時のほうが、傾きが大きくなることが分かる。
【0033】
(入力電流検出)
例えば、空調機の制御システムにおいて、一般的に電流検出は離散的な検出となる。このため、マイクロコンピュータ等で電流検出を行う際には、所望のタイミングに電流検出点を設定する必要がある。
図9は、上記図1に示す制御部15の制御ブロック図である。制御部15は、電圧制御部151と、パルス生成制御部152と、制御電流生成器153と、ゼロクロス検出器154と、位相推定器155と、スイッチングキャリア生成器156と、入力電圧極性判定器157とを備えている。電圧制御部151は、電圧指令値Vdcと、出力電圧検出回路13から出力される出力電圧VDCとに基づいて、電流振幅指令値Iac*_ampを生成する。
【0034】
パルス生成制御部152は、電圧制御部151から出力される電流振幅指令値Iac*_ampと、入力電圧検出回路12から出力される入力電圧VACと、制御電流生成器153から出力される制御電流Iac_contとに基づいて、第1のスイッチング素子S1と第2のスイッチング素子S2のいずれか一方をオン、いずれか他方をオフして、リアクタL1を放電状態にするリアクタ放電モードと、リアクタL1を充電状態にするリアクタ充電モードとを交互に切り替えて繰り返し動作させるためのPWMパルスを生成し、PWMパルスを第1のスイッチング素子S1及び第2のスイッチング素子S2に出力する。
【0035】
ゼロクロス検出器154は、入力電圧検出回路12から出力される入力電圧VACの状態をモニタし、電圧極性が、負から正、または、正から負へ切り替わるゼロクロスポイントを検出する処理を行い、ゼロクロス信号を出力する。位相推定器155は、ゼロクロス検出器154から出力されるゼロクロス信号をから入力電圧VACの位相を推定し、入力電圧VACの推定位相に対応する振幅が1の正弦波sinθ(以下、単位正弦波ともいう)をパルス生成制御部152に出力する。
【0036】
スイッチングキャリア生成器156は、第1の振幅頂点(山)及び第2の振幅頂点(谷)が交互に連続する三角波のスイッチングキャリアを生成し、スイッチングキャリアを制御電流生成器153及びパルス生成制御部152に出力する。制御電流生成器153は、入力電流検出回路14が検出する入力電流IACと、スイッチングキャリア生成器156から出力されるスイッチングキャリアに基づいて、PWM制御に用いられるPWMパルスを生成するための制御電流Iac_contを生成する。入力電圧極性判定器157は、入力電圧検出回路12から出力される入力電圧VACの極性を判定し、極性が正の時H(ハイ)、負のときL(ロー)を示す入力電圧極性信号を生成し、入力電圧極性信号を制御電流生成器153及びパルス生成制御部152にそれぞれ出力する。
【0037】
また、パルス生成制御部152は、電流指令値生成器1521と、デューティ生成器1522と、PWMパルス生成器1523とを備えている。電流指令値生成器1521は、電圧制御部151から出力される電流振幅指令値Iac*_ampと、位相推定器155から出力される単位正弦波sinθとに基づいて、電流指令値Iac*を生成する。つまり、電流振幅指令値Iac*_ampと単位正弦波sinθとを乗算し、乗算結果の絶対値をとることにより電流指令値Iac*を生成する。デューティ生成器1522は、電流指令値Iac*と制御電流Iac_contとの差分に基づいて、PWMパルスを生成するためのオンデューティを与える変調信号(図9ではDutyと記載)を生成する。PWMパルス生成器1523は、入力電圧検出回路12から出力される入力電圧VACと、オンデューティと、スイッチングキャリアとに基づいて、PWMパルスを生成する。
【0038】
図10は、制御部15から出力されるPWMパルスと入力電流IACとスイッチングキャリアとの相対関係を示す特性図である。図10において、縦軸は振幅を示し、横軸は時間を示す。図10(a)はPWMパルス生成器1523から出力されるPWMパルスを示し、図10(b)は入力電流検出回路14で検出される入力電流IACを示し、図10(c)はスイッチングキャリア生成器156から出力されるスイッチングキャリアを示す。また、図10(a)におけるドッドで図示される期間は、第1のスイッチング素子S1(下アーム)、第2のスイッチング素子S2(上アーム)がオンとなるオンデューティの期間を表す。
【0039】
すなわち、PWMパルス生成器1523は、図10(a)に示すように、第1のスイッチング素子S1をオンし、第2のスイッチング素子S2をオフするPWMパルス(下アームSWパルス)を出力し、第1のスイッチング素子S1をオフし、第2のスイッチング素子S2をオンするPWMパルス(上アームSWパルス)を出力する。また、PWMパルス生成器1523は、PWMパルス(上アームSWパルス)とPWMパルス(下アームSWパルス)との間に適切なデットタイムTdを付加し、第1のスイッチング素子S1及び第2のスイッチング素子S2が同時にオンしないように制御する。
【0040】
TPBLコンバータ10のように高周波のスイッチングを行う場合、入力電流IAC図10(b)に示すようなキャリア成分が重畳される。フィードバック制御による入力電流制御では電源電圧周波数の基本波に対する制御を実施するため、電流検出は基本波成分を検出する必要がある。図10(c)に示すようなスイッチングキャリアの中間を基準としたPWMパルスを出力すると、スイッチングキャリアの山及び谷にてキャリア重畳による実電流と基本波成分が重なり一致する。そのため、基本波を抽出する方法として、スイッチングキャリアの山や谷に検出点を設定する。
【0041】
制御応答が遅くても制御が可能な場合は、一定期間の検出値からフィルタを介してキャリア成分を減衰させ、基本波を抽出する方法もあるが、ブリッジレスコンバータ制御では電流変化が急峻となり速い制御応答が求められるため、フィルタによる基本波抽出を選択することは難しい。
【0042】
図11において、縦軸は振幅を示し、横軸は時間を示す。図11(a)は入力電圧極性が正極性である場合のPWMパルスと入力電流IACとスイッチングキャリアとの相対関係を示す特性図であり、図11(b)は入力電圧極性が負極性である場合のPWMパルスと入力電流IACとスイッチングキャリアとの相対関係を示す特性図である。さらに、図11(a)、(b)の(1)はPWMパルス生成器1523から出力されるPWMパルスを示し、(2)は入力電流検出回路14で検出される入力電流IACを示し、(3)はスイッチングキャリア生成器156から出力されるスイッチングキャリアを示す。
【0043】
TPBLコンバータ10では、図11に示すように入力電圧極性の違いにより、スイッチングキャリアの山または谷でリアクタL1の充放電状態が異なる。すなわち、入力電圧極性が正である図11(a)の場合、PWMパルスが下アームオン→上アームオン→下アームオンと変化するとき、リアクタL1の充放電状態は充電→放電→充電と変化する。一方、入力電圧極性が負である図11(b)の場合、PWMパルスが下アームオン→上アームオン→下アームオンと変化するとき、リアクタL1の充放電状態は放電→充電→放電と変化する。式3に示す入力電流IACの微分方程式より、リアクタ放電時の方がリアクタ充電時に比べて電流の傾きが緩やかとなる。
【0044】
入力電流検出には、電流センサやノイズカットフィルタ等に起因した検出遅れが発生する。この場合、TPBLコンバータ10では、図11に示すように、充放電状態の違いによって入力電流IACの傾きが異なると、入力電圧極性の正負によって実電流値(図11では実線で示す)と検出電流値(図11では点線で示す)との差である、基本波からの乖離分が異なる。この乖離分は、入力電圧極性が正極性であるとき、スイッチングキャリアが山のタイミング、つまりリアクタ充電時に、実電流値と検出電流値との差がZ1となる。一方、乖離分は、入力電圧極性が負極性であるとき、スイッチングキャリアが山のタイミング、つまりリアクタ放電時に、実電流値と検出電流値との差がZ1より大きいZ2となる。このように、リアクタ充電時とリアクタ放電時とで、乖離分の値に差異が生じるため、リアクタ充電時とリアクタ放電時とで同じタイミングで電流検出を実施すると検出遅れの影響が入力電圧極性によって異なってしまい、入力電流制御のアンバランス要因となる。
【0045】
<第1の実施形態による解決手段>
そこで、本発明の第1の実施形態では、制御電流生成器153において、スイッチングキャリアの1周期における振幅頂点を位相の順に第1の谷(第1の振幅頂点)、第1の山(第2の振幅頂点)、第2の谷(第3の振幅頂点)としたとき、入力電圧が正極性の場合に、第1の山のタイミングで入力電流IACを検出するとともに、第2の谷のタイミングで検出した入力電流IACを制御電流Iac_contとして出力する。一方、入力電圧が負極性の場合に、第1の谷のタイミングで入力電流IACを検出するとともに、第2の谷のタイミングで検出した入力電流IACを制御電流Iac_contとして出力する。
【0046】
図12は、制御電流生成器153の具体的な構成を示している。制御電流生成器153は、入力電流検出器161と、スイッチングキャリアタイミング検出器162と、制御電流出力器163とを備えている。スイッチングキャリアタイミング検出器162は、スイッチングキャリア生成器156から出力されるスイッチングキャリアを検出し、スイッチングキャリアの山及び谷のタイミングを示すスイッチングキャリアタイミング信号を生成し、スイッチングキャリアタイミング信号を入力電流検出器161及び制御電流出力器163にそれぞれ出力する。
【0047】
入力電流検出器161は、スイッチングキャリアタイミング検出器162から出力されるスイッチングキャリアタイミング信号に基づいて、入力電流IACをスイッチングキャリアの連続する山及び谷のそれぞれのタイミングで検出し、検出したそれぞれの電流値を検出電流として制御電流出力器163に出力する。
【0048】
図13は、制御電流出力器163の具体的な構成を示している。制御電流出力器163は、選択部171と、出力部172と、第1のカウンタ(カウンタ1)173と、第2のカウンタ(カウンタ2)174とを備えている。選択部171は、第1のカウンタ173からのトリガ信号に基づいて、入力された電流値を選択して出力部172に出力する。出力部172は、第2のカウンタ174からのトリガ信号に基づいて、入力した電流値を制御電流Iac_contとして出力する。
【0049】
第1のカウンタ173及び第2のカウンタ174は、クロックの入力をもとに、カウント値NをN=1、2、3、4、5・・・と連続してカウントする。第1のカウンタ173は、スイッチングキャリアタイミング検出器162から出力されるスイッチングキャリアタイミング信号及び入力電圧極性信号に基づいて(スイッチングキャリアタイミング信号をクロックとして)、最初のスイッチングキャリアの谷をN=1とカウントし、続くスイッチングキャリアの第1の山をN=2とカウントし、入力電圧VACの極性が正の時、カウント値が「2」になったタイミングで、トリガ信号を選択部171に出力し、続くスイッチングキャリアの第2の谷をN=3とカウントし、カウント値が「3」になったタイミングで「1」にリセットする。一方、入力電圧VACの極性が負の時、カウント値が「1」になったタイミングで、トリガ信号を選択部171に出力し、カウント値が「3」になったタイミングで「1」にリセットする。第2のカウンタ174は、スイッチングキャリアタイミング検出器162から出力されるスイッチングキャリアタイミング信号に基づいて、最初のスイッチングキャリアの第1の谷をN=1とカウントし、続くスイッチングキャリアの第1の山をN=2とカウントし、続くスイッチングキャリアの第2の谷をN=3とカウントし、カウント値が「3」になったタイミングで、トリガ信号を出力部172に出力し、カウント値を「1」にリセットする。
【0050】
図14は、制御電流生成器153の動作を説明するためのPWMパルスと入力電流IACとスイッチングキャリアとの相対関係を示す特性図である。図14において、縦軸は振幅を示し、横軸は時間を示す。図14(a)は入力電圧極性が正極性である場合のPWMパルスと入力電流IACとスイッチングキャリアとの相対関係を示す特性図であり、図14(b)は入力電圧極性が負極性である場合のPWMパルスと入力電流IACとスイッチングキャリアとの相対関係を示す特性図である。さらに、図14(a)、(b)の(1)はPWMパルス生成器1523から出力されるPWMパルスを示し、(2)は入力電流検出回路14で検出される入力電流IACを示し、(3)はスイッチングキャリア生成器156から出力されるスイッチングキャリアを示す。
【0051】
選択部171は、入力電圧極性が正極性であるとき、スイッチングキャリアの山のタイミングで検出されたリアクタ放電時の電流値P1(図14(a)中では四角で図示)を選択し、電流値P1を出力部172に出力する。また、選択部171は、入力電圧極性が負極性であるとき、スイッチングキャリアの第1の谷のタイミングで検出されたリアクタ放電時の電流値P2(図14(b)中では四角で図示)を選択し、電流値P2を出力部172に出力する。
【0052】
出力部172は、入力電圧VACの極性が正の時、第2のカウンタ174から出力されるトリガ信号が入力されるまで、電流値P1を保持し、トリガ信号が入力された時点で、電流値P1を制御電流Iac_contとして出力する。また、出力部172は、入力電圧VACの極性が負の時、第2のカウンタ174から出力されるトリガ信号が入力されるまで、電流値P2を保持し、トリガ信号が入力された時点で、電流値P2を制御電流Iac_contとして出力する。
【0053】
入力電圧極性が正極性である場合において、電流値P1と実電流値との差、つまり基本波からの乖離分の値は、Z3となる。一方、入力電圧極性が負極性である場合において、電流値P2と実電流値との差、つまり基本波からの乖離分の値は、Z3とほぼ同じZ4となる。ここで前述した図11に示す基本波からの乖離分Z1、Z2と第1の実施形態による基本波からの乖離分Z3、Z4の大小を比較すると、Z1≒Z3≒Z4<Z2となる。従って、実電流値と検出電流値である電流値P1及び電流値P2との乖離量は小さく、電流値P1と電流値P2はそれぞれ入力電流IACの基本波と同等の値となる。これにより入力電圧VACの極性によらず正確な入力電流制御が可能になる。
【0054】
図15は、制御電流生成器153の動作を説明するためのPWMパルスと入力電流IACとスイッチングキャリアと電流位相との相対関係を示す特性図(模式図)である。図15において、縦軸は振幅を示し、横軸は時間を示す。図15(a)は選択部171により出力される入力電流IACを示し、図15(b)はスイッチングキャリア生成器156から出力されるスイッチングキャリアを示し、図15(c)は出力部172から制御電流Iac_contとして出力される入力電流IACの電流位相を示している。
【0055】
ここで、入力電圧VACの周波数を50Hz、スイッチングキャリア(三角波)の周波数を4kHzとして具体的に説明する。このとき、入力電圧VACの半周期には40個のスイッチングキャリア(三角波)が存在する。例えば、入力電圧VACの極性が正の場合に、出力部172は、電流位相4.50degに対応するスイッチングキャリアの谷(第1の振幅頂点)のタイミングである時刻t1と電流位相9.00degに対応する次のスイッチングキャリアの谷(第3の振幅頂点)のタイミングである時刻t2との間の、電流位相6.75degに対応するスイッチングキャリアの山(第2の振幅頂点)のタイミングで選択部171から出力される電流値x1を保持し、電流位相9.00degに対応する時刻t2のスイッチングキャリアの谷(第3の振幅頂点)のタイミングで電流値x1を出力する。また、出力部172は、電流位相9.00degに対応するスイッチングキャリアの谷(第1の振幅頂点)のタイミングである時刻t2と電流位相13.50degに対応する次のスイッチングキャリアの谷(第3の振幅頂点)のタイミングである時刻t3との間の、電流位相11.25degに対応するスイッチングキャリアの山(第2の振幅頂点)のタイミングで選択部171から出力される電流値x2を保持し、電流位相13.50degに対応するスイッチングキャリアの谷(第3の振幅頂点)のタイミングである時刻t3で電流値x2を出力する。
【0056】
一方、入力電圧VACの極性が負の場合に、出力部172は、電流位相4.50degに対応するスイッチングキャリアの谷(第1の振幅頂点)のタイミングである時刻t1’で選択部171から出力される電流値x1’を保持する。この場合、出力部172は、電流位相4.50degに対応するスイッチングキャリアの谷(第1の振幅頂点)のタイミングである時刻t1’と電流位相9.00degに対応する次のスイッチングキャリアの谷(第3の振幅頂点)のタイミングである時刻t2’との間の電流位相6.75degに対応するスイッチングキャリアの山(第2の振幅頂点)のタイミングである時刻tm1(図15(c)の点線で示す)で電流値x1’を出力するのではなく、時刻tm1よりスイッチングキャリアの半周期遅れた電流位相9.00degに対応するスイッチングキャリアの谷(第3の振幅頂点)のタイミングである時刻t2’で電流値x1’を出力する。また、出力部172は、電流位相9.00degに対応するスイッチングキャリアの谷(第1の振幅頂点)のタイミングである時刻t2’で選択部171から出力される電流値x2’を保持する。この場合、出力部172は、電流位相9.00degに対応するスイッチングキャリアの谷(第1の振幅頂点)のタイミングである時刻t2’と電流位相13.50degに対応する次のスイッチングキャリアの谷(第3の振幅頂点)のタイミングである時刻t3’との間の電流位相11.25degに対応するスイッチングキャリアの山(第2の振幅頂点)のタイミングである時刻tm2で電流値x2’を出力するのではなく、時刻tm2よりスイッチングキャリアの半周期遅れた電流位相13.50degに対応するスイッチングキャリアの谷(第3の振幅頂点)のタイミングである時刻t3’で電流値x2’を出力する。
【0057】
すなわち、制御電流出力器163は、入力電圧VACの極性が負の場合に、入力電流検出器161で検出される入力電流IACの電流位相を、スイッチングキャリアの半周期分遅らせる。このため、制御電流出力器163は、入力電圧VACの極性が負の場合に、検出した入力電流IACを、入力電圧VACの極性が正の場合に検出した入力電流IACと同じタイミングで検出した電流とみなすことができる。
【0058】
<第1の実施形態による作用効果>
以上のように第1の実施形態によれば、制御電流生成器153において、フィルタ等を用いることなく、入力電流IACの基本波とスイッチングキャリアに起因したノイズ成分が重畳した電流波形とが同等となるポイントで入力電流IACの基本波を検出することができ、これによりノイズフィルタが不要となり、ノイズフィルタ等に起因した検出遅れ時間を短縮できる。また、入力電圧VACの極性によらず、リアクタL1の放電時に入力電流IACを検出するように検出点を設定し、入力電圧VACが正極性の場合に検出した入力電流IACを制御電流Iac_contとして出力するタイミングと、入力電圧VACが正極性の場合に検出した入力電流IACを制御電流Iac_contとして出力するタイミングとを同じにすることで、基本波との乖離量を入力電圧VACの極性違いによらず、同等にすることができる。これにより、入力電流制御のアンバランスを防止できる。
【0059】
また、第1の実施形態によれば、制御電流生成器153において、入力電圧VACの極性が正の時、リアクタ放電時の検出点がスイッチングキャリアの山となり、入力電圧VACの極性が負の時、リアクタ放電時の検出点がスイッチングキャリアの谷となるため、入力電圧VACの極性が負の場合に、検出される入力電流IACの電流位相を、スイッチングキャリアの半周期分遅らせて、入力電圧VACの極性が正の時と制御タイミングを合わせることができる。これにより、入力電流制御のアンバランスを防止できる。なお、制御電流生成器153において、スイッチングキャリアの1周期における振幅頂点を位相の順に第1の山(第1の振幅頂点)、第1の谷(第2の振幅頂点)、第2の山(第3の振幅頂点)としても、上記と同様に入力電流IACを検出して入力電圧VACの極性によらず正確な入力電流制御を行うことができる。
【0060】
<第2の実施形態>
第2の実施形態では、制御電流生成器153をソフトウェアで実現できるようにしたものである。この場合、制御電流生成器153は、第1のカウンタ173及び第2のカウンタ174を備える。
【0061】
図16は、制御電流生成器153による制御電流Iac_contの生成制御手順を示すフローチャートである。
制御電流生成器153は、TPBLコンバータ10の電源がオンし、スイッチングキャリア生成器156から三角波のスイッチングキャリアが発生すると、スイッチングキャリア生成器156から出力される三角波のスイッチングキャリア及び入力電圧VACを検出し(ステップST16a)、第1のカウンタ173及び第2のカウンタ174がカウント動作を開始し(ステップST16b)、入力電圧VACの極性の判定を行う(ステップST16c)。なお、第1のカウンタ173及び第2のカウンタ174は、最初のスイッチングキャリアの第1の谷をN=1とカウントし、続くスイッチングキャリアの第1の山をN=2とカウントし、続くスイッチングキャリアの第2の谷をN=3とカウントする。なお、最初のスイッチングキャリアの山を第1の山(第1の振幅頂点)としてN=1とカウントし、続くスイッチングキャリアの第1の谷(第2の振幅頂点)としてN=2とカウントし、続くスイッチングキャリアの山を第2の山(第3の振幅頂点)としてN=3とカウントしてもよい。
【0062】
ここで、入力電圧VACの極性が正と判定された場合に(ステップST16c:Yes)、制御電流生成器153は第1のカウンタ173のカウント値を判定し(ステップST16d)、カウント値が「2」、つまりスイッチングキャリアの第1の山と判定した場合に(ステップST16d:Yes)、入力電流IACを検出する(ステップST16e)。そして、第1のカウンタ173のカウント値が「3」になったタイミングでカウント値を「1」にリセットし(ステップST16f)、第2のカウンタ174のカウント値の判定を行う(ステップST16g)。
【0063】
ここで、カウント値が「3」と判定された場合に(ステップST16g:Yes)、制御電流生成器153は検出した入力電流IACを制御電流Iac_contとして出力し(ステップST16h)、第2のカウンタ174のカウント値を「1」にリセットし(ステップST16i)、上記ステップST16cの処理に戻る。
【0064】
一方、上記ステップST16cにおいて、入力電圧VACの極性が負と判定された場合に(ステップST16c:No)、制御電流生成器153は第1のカウンタ173のカウント値を判定し(ステップST16j)、カウント値が「1」、つまりスイッチングキャリアの第1の谷と判定した場合に(ステップST16j:Yes)、入力電流IACを検出する(ステップST16k)。そして、第1のカウンタ173のカウント値が「3」になったタイミングで第1のカウンタ173のカウント値を「1」にリセットし(ステップST16l)、第2のカウンタ174のカウント値の判定を行う(ステップST16g)。
【0065】
ここで、カウント値が「3」と判定された場合に(ステップST16g:Yes)、制御電流生成器153は検出した入力電流IACを制御電流Iac_contとして出力し(ステップST16h)、第2のカウンタ174のカウント値を「1」にリセットし(ステップST16i)、上記ステップST16cの処理に戻る。なお、上記ステップST16gにおいて、第2のカウンタ174がカウント値「3」をカウントするまで(ステップST16g:No)、制御電流生成器153は検出した入力電流IACを出力保持する。
【0066】
<第2の実施形態による作用効果>
以上のように第2の実施形態であっても、上記第1の実施形態と同様の作用効果が得られる。
【0067】
<その他の実施形態>
上記のように、本発明は第1及び第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。上記の第1及び第2の実施形態が開示する技術内容の趣旨を理解すれば、当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が本発明に含まれ得ることが明らかとなろう。また、第1及び第2の実施形態がそれぞれ開示する構成を、矛盾の生じない範囲で適宜組み合わせることができる。例えば、複数の異なる実施形態がそれぞれ開示する構成を組み合わせてもよく、同一の実施形態の複数の異なる変形例がそれぞれ開示する構成を組み合わせてもよい。
【0068】
上記第1の実施形態では、TPBLコンバータ10を一例として説明したが、TPBLコンバータ10以外にブリッジレス力率改善コンバータのブリッジ回路として、例えば、2つのダイオードと2つのスイッチング素子がブリッジ接続されたブリッジ回路、もしくは、4つのスイッチング素子がブリッジ接続されたブリッジ回路であってもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 交流電源
2 負荷
10 TPBLコンバータ
11 電力変換部
12 入力電圧検出回路
13 出力電圧検出回路
14 入力電流検出回路
15 制御部
111 ブリッジ回路
151 電圧制御部
152 パルス生成制御部
153 制御電流生成器
154 ゼロクロス検出器
155 位相推定器
156 スイッチングキャリア生成器
157 入力電圧極性判定器
161 入力電流検出器
162 スイッチングキャリアタイミング検出器
163 制御電流出力器
171 選択部
172 出力部
173 第1のカウンタ(カウンタ1)
174 第2のカウンタ(カウンタ2)
1521 電流指令値生成器
1522 デューティ生成器
1523 PWMパルス生成器
L1 リアクタ
C1 平滑コンデンサ
S1 第1のスイッチング素子
S2 第2のスイッチング素子
D1 第1のダイオード
D2 第2のダイオード
DS1 第1のボディダイオード
DS2 第2のボディダイオード
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16