(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143606
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】シリンダ保護装置及び作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/14 20060101AFI20241003BHJP
F15B 15/14 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/14 Z
F15B15/14 335C
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056370
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】秋田 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 香保里
(72)【発明者】
【氏名】川崎 健司
(72)【発明者】
【氏名】畑 典仁
【テーマコード(参考)】
3H081
【Fターム(参考)】
3H081AA03
3H081BB02
3H081CC07
3H081DD24
3H081HH01
(57)【要約】
【課題】シリンダチューブからの作動油の漏洩と、シリンダチューブに対する塵埃の侵入とを適切に防止できるシリンダ保護装置を提供する。
【解決手段】シリンダ保護装置は、シリンダチューブと、シリンダチューブに対して出没するシリンダロッドと、シリンダチューブの開放端に取り付けられて、シリンダロッドに摺接する接触シールとを備える油圧シリンダを保護するものであって、接触シールよりシリンダロッドの突出端側に外挿されて、シリンダロッドと接触シールとの間に塵埃が侵入するのを抑制する非接触シールを備える。非接触シールは、接触シールより表面硬度が高く、シリンダロッドの外周面と第1隙間を隔ててシリンダロッドを囲む円筒形状の内周面と、シリンダロッドの突出端側に向けて外径寸法が徐々に小さくなる円錐台形状の外周面とを有するリング形状である。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチューブと、前記シリンダチューブに対して出没するシリンダロッドと、前記シリンダチューブの開放端に取り付けられて、前記シリンダロッドに摺接する接触シールとを備える油圧シリンダを保護するシリンダ保護装置において、
前記接触シールより前記シリンダロッドの突出端側に外挿されて、前記シリンダロッドと前記接触シールとの間に塵埃が侵入するのを抑制する非接触シールを備え、
前記非接触シールは、前記接触シールより表面硬度が高く、
前記シリンダロッドの外周面と第1隙間を隔てて前記シリンダロッドを囲む円筒形状の内周面と、
前記シリンダロッドの突出端側に向けて外径寸法が徐々に小さくなる円錐台形状の外周面とを有するリング形状であることを特徴とするシリンダ保護装置。
【請求項2】
請求項1に記載のシリンダ保護装置において、
前記非接触シールの外周面と第2隙間を隔てて前記非接触シールを囲む保護部材をさらに備え、
前記第2隙間は、前記第1隙間より大きいことを特徴とするシリンダ保護装置。
【請求項3】
請求項2に記載のシリンダ保護装置において、
前記非接触シール及び前記保護部材の間には、グリースが貯留されるグリース溜まりが設けられていることを特徴とするシリンダ保護装置。
【請求項4】
請求項2に記載のシリンダ保護装置において、
前記保護部材は、前記シリンダチューブに固定され、前記非接触シールを着脱可能に支持することを特徴とするシリンダ保護装置。
【請求項5】
請求項1に記載のシリンダ保護装置において、
前記非接触シールの表面は、硬質金属皮膜で覆われていることを特徴とするシリンダ保護装置。
【請求項6】
油圧シリンダの伸縮によって動作する作業装置と、
前記油圧シリンダに取り付けられた請求項1に記載のシリンダ保護装置とを備えることを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、油圧シリンダを保護するシリンダ保護装置、及びこれを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、油圧シリンダの伸縮によって動作する作業装置を備える作業機械が知られている。作業機械に搭載される油圧シリンダは、シリンダチューブからの作動油の漏洩と、シリンダチューブに対する塵埃の侵入とを防止する必要がある。
【0003】
そこで、特許文献1、2には、シリンダチューブに対して出没するシリンダロッドに、弾性変形可能なリップシールを摺接させることによって、作動油の漏洩と塵埃の侵入とを防止する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許6064557号公報
【特許文献2】特開2002-054608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1、2の構成では、シリンダロッドとリップシールとの間に異物が挟まることがある。この状態でシリンダチューブに対してシリンダロッドが出没すると、挟まった異物がシリンダロッドを引っ掻いて、表面が傷つく可能性がある。そして、この傷を通じて、シリンダチューブから作動油が漏洩したり、シリンダチューブに塵埃が侵入するという課題がある。
【0006】
本発明は、上記した実状に鑑みてなされたものであり、その目的は、シリンダチューブからの作動油の漏洩と、シリンダチューブに対する塵埃の侵入とを適切に防止できるシリンダ保護装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は、シリンダチューブと、前記シリンダチューブに対して出没するシリンダロッドと、前記シリンダチューブの開放端に取り付けられて、前記シリンダロッドに摺接する接触シールとを備える油圧シリンダを保護するシリンダ保護装置において、前記接触シールより前記シリンダロッドの突出端側に外挿されて、前記シリンダロッドと前記接触シールとの間に塵埃が侵入するのを抑制する非接触シールを備え、前記非接触シールは、前記接触シールより表面硬度が高く、前記シリンダロッドの外周面と第1隙間を隔てて前記シリンダロッドを囲む円筒形状の内周面と、前記シリンダロッドの突出端側に向けて外径寸法が徐々に小さくなる円錐台形状の外周面とを有するリング形状であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シリンダチューブからの作動油の漏洩と、シリンダチューブに対する塵埃の侵入とを適切に防止できるシリンダ保護装置を得ることができる。なお、上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】油圧シリンダの一例であるブームシリンダの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る油圧ショベル1(作業機械)の実施形態について、図面を用いて説明する。但し、作業機械の具体例は、油圧ショベル1に限定されず、ホイールローダ、ダンプトラック、クレーン車など、油圧シリンダを搭載するものであればよい。また、本明細書中の前後左右は、特に断らない限り、油圧ショベル1に搭乗して操作するオペレータの視点を基準としている。
【0011】
図1は、油圧ショベル1の側面図である。
図1に示すように、油圧ショベル1は、下部走行体2と、下部走行体2により支持された上部旋回体3とを備える。下部走行体2及び上部旋回体3は、車体の一例である。
【0012】
下部走行体2は、無限軌道帯である左右一対のクローラ4を備える。そして、走行モータ5の駆動により、左右一対のクローラ4が独立して回転する。その結果、油圧ショベル1が走行する。但し、下部走行体2は、クローラ4に代えて、装輪式であってもよい。
【0013】
上部旋回体3は、旋回モータ6によって旋回可能に下部走行体2に支持されている。すなわち、旋回モータ6が回転することによって、下部走行体2に対して上部旋回体3が旋回する。上部旋回体3は、ベースとなる旋回フレーム7と、旋回フレーム7の前方左側に配置されたキャブ(運転席)8と、旋回フレーム7の後部に配置されたカウンタウェイト9と、旋回フレーム7の前方中央に上下方向に回動可能に取り付けられたフロント作業機10(作業装置)とを主に備える。
【0014】
キャブ8は、左右方向(車体の幅方向)において、フロント作業機10に隣接して配置されている。より詳細には、キャブ8は、フロント作業機10の左方(左右方向の一方側)に配置されている。但し、キャブ8の配置は前述の例に限定されず、キャブ8は、左右方向におけるフロント作業機10の一方側に配置されていればよい。
【0015】
キャブ8には、油圧ショベル1を操作するオペレータが搭乗する空間が形成されている。そして、キャブ8の内部には、オペレータが着席するシートと、シートに着席したオペレータにより操作される操作装置が配置されている。操作装置は、油圧ショベル1を動作させるためのオペレータの操作を受け付ける。オペレータによって操作装置が操作されることによって、下部走行体2が走行し、上部旋回体3が旋回し、フロント作業機10が動作する。なお、操作装置の具体例としては、レバー、ステアリングホイール、ペダル、スイッチ等が挙げられる。
【0016】
フロント作業機10は、上部旋回体3に起伏可能に支持されたブーム11と、ブーム11の先端に回動(クラウド、ダンプ)可能に支持されたアーム12と、アーム12の先端に回動(クラウド、ダンプ)可能に支持されたバケット13(アタッチメント)と、ブーム11を駆動させるブームシリンダ14と、アーム12を駆動させるアームシリンダ15と、バケット13を駆動させるバケットシリンダ16とを含む。なお、アタッチメントの具体例はバケット13に限定されず、グラップル、カッタ、破砕機、ブレーカ等でもよい。カウンタウェイト9は、フロント作業機10との重量バランスを取るためのもので、上面視円弧形状を成す重量物である。
【0017】
図2は、油圧シリンダの一例であるブームシリンダ14の概略断面図である。但し、本発明は、ブームシリンダ14のみならず、アームシリンダ15及びバケットシリンダ16にも適用可能である。
図2に示すように、ブームシリンダ14は、シリンダチューブ21と、ピストン22と、シリンダロッド23と、キャップ24とを主に備える。
【0018】
シリンダチューブ21は、軸方向の一端が開放された円筒形状の外形を呈する。ピストン22は、シリンダチューブ21の内部を軸方向に移動可能に構成されている。また、ピストン22は、シリンダチューブ21の内部空間を、閉塞端側のボトム室25と、開放端側のロッド室26とに隔てる。シリンダロッド23は、基端がピストン22に接続され、開放端を通じてシリンダチューブ21の外部にまで突出している。キャップ24は、シリンダロッド23を突出させた状態で、シリンダチューブ21の開放端を閉塞する。
【0019】
ボトム室25及びロッド室26の間は、ピストン22によって液密に隔てられている。また、ロッド室26は、キャップ24によって気密に保たれている。さらに、ブームシリンダ14には、ボトム室25及びロッド室26に連通する給排口25a、26aが設けられている。本実施形態では、給排口25aはシリンダチューブ21に形成され、給排口26aはキャップ24に設けられている。給排口25a、26aには、油圧回路(図示省略)に接続される配管(図示省略)が接続される。油圧回路は、例えば、作動油を貯留する作動油タンクと、作動油タンクに貯留された作動油を圧送する油圧ポンプとを備える。
【0020】
給排口25a、26aを通じてシリンダチューブ21内に作動油が給排されることによって、シリンダチューブ21に対してシリンダロッド23が出没する。より詳細には、給排口25aを通じてボトム室25に作動油が供給され、給排口26aを通じてロッド室26から作動油が排出されると、シリンダチューブ21からシリンダロッド23が突出(ブームシリンダ14が伸長)する。一方、給排口25aを通じてボトム室25から作動油が排出され、給排口26aを通じてロッド室26に作動油が供給されると、シリンダチューブ21にシリンダロッド23が没入(ブームシリンダ14が縮小)する。
【0021】
図1及び
図2に示すように、ブームシリンダ14の一端(シリンダチューブ21の閉塞端側)に設けられた取付部27は、上部旋回体3に回動可能に支持される。また、ブームシリンダ14の他端(シリンダロッド23の突出端側)に設けられた取付部28は、ブーム11に回動可能に支持される。そして、前述したようにブームシリンダ14が伸縮することによって、上部旋回体3に対してブーム11が起伏する。
【0022】
図3は、
図2のキャップ24の周辺の拡大図である。
図3に示すように、キャップ24の内周面には、軸方向に離間した複数の位置において、周方向に連続する円周溝24a、24b、24cが形成されている。そして、円周溝24a、24b、24cには、リング状の接触シール30、31、32が取り付けられている。接触シール30、31、32は、シリンダチューブ21に対して出没するシリンダロッド23の外周面に摺接(接触)する。
【0023】
接触シール30は、円周溝24a~24cのうち、ピストン22に最も近い(後述するシリンダ保護装置40から最も遠い)円周溝24aに取り付けられている。接触シール31は、円周溝24a~24cのうちの中央の円周溝24bに取り付けられている。接触シール30、31は、シリンダチューブ21(ロッド室26)内の作動油の漏洩を防止する役割を担う。接触シール32は、円周溝24a~24cのうち、ピストン22から最も遠い(シリンダ保護装置40に最も近い)円周溝24cに取り付けられている。接触シール32は、ブームシリンダ14の外部の(例えば、シリンダロッド23の外周面に付着した)塵埃がシリンダチューブ21の内部に侵入するのを阻止する役割を担う。
【0024】
すなわち、接触シール30、31、32は協働して、シリンダチューブ21(ロッド室26)内の作動油の漏洩を防止すると共に、ブームシリンダ14の外部からシリンダチューブ21の内部に塵埃が侵入するのを阻止する。但し、接触シール30、31、32の一部は、省略可能である。また、接触シール30、31、32は、例えば、ウレタン樹脂、フッ素ゴム等の弾性材料を用いて環状に形成されている。
【0025】
特に、シリンダ保護装置40に最も近い接触シール32は、本体とリップとで構成される、所謂「リップシール」である。本体とは、円周溝24cに圧入されるリング状の部分である。リップとは、本体からシリンダロッド23に向けて突出すると共に、周方向に連続する部分である。そして、リップは、弾性拡径した状態で、その先端部がシリンダロッド23の外周面に接触している。なお、このような接触シール32の構成は、特許文献2に記載されているように既に周知なので、詳細な説明は省略する。
【0026】
さらに、
図3に示すように、ブームシリンダ14には、シリンダ保護装置40が取り付けられている。すなわち、油圧ショベル1は、シリンダ保護装置40を備える。そして、シリンダ保護装置40は、接触シール32に塵埃が到達する(より詳細には、シリンダロッド23と接触シール32との間に塵埃が侵入する)のを抑制する装置である。ブームシリンダ14は、スクレーパ(非接触シール)41と、保護部材42とを備える。
【0027】
スクレーパ41は、接触シール32よりシリンダロッド23の突出端(取付部28)側に設けられている。また、スクレーパ41は、シリンダロッド23に外挿されている。換言すれば、スクレーパ41は、シリンダロッド23を囲むように配置される。さらに、スクレーパ41は、保護部材42に着脱可能に支持されている。すなわち、スクレーパ41は、交換可能に構成されている。
【0028】
図4は、スクレーパ41の概略斜視図である。
図3及び
図4に示すように、スクレーパ41は、概ねリング形状の外形を呈する。また、スクレーパ41の軸方向の両端は、開放されている。
【0029】
スクレーパ41の内周面43は、円筒形状である。また、スクレーパ41の内径寸法(内周面43の直径)は、シリンダロッド23の直径より僅かに大きい。そのため、スクレーパ41の内周面43は、シリンダロッド23の外周面との間に第1隙間G1を隔てて、シリンダロッド23を囲む。第1隙間G1は、シリンダロッド23の外周面と、スクレーパ41の内周面43との間に形成されるリング形状の隙間を指す。
【0030】
スクレーパ41の外周面44は、円錐台形状である。そして、スクレーパ41の外径寸法(外周面44の直径)は、接触シール32側からシリンダロッド23の突出端(取付部28)側に向かって、徐々に小さくなっている。換言すれば、スクレーパ41の肉厚は、接触シール32側からシリンダロッド23の突出端側に向かって、徐々に薄くなっている。さらに換言すれば、
図3に示すようにスクレーパ41を二次元的に見ると、外周面44はテーパ面である。そして、スクレーパ41の外周面44には、被取付部45と、グリース溝46とが形成されている。
【0031】
被取付部45は、保護部材42に着脱可能に取り付けられる部分である。保護部材42に対するスクレーパ41の取付方法は特に限定されないが、例えば、ボルトやリベットで締結されてもよいし、保護部材42に設けられたスリットに挿入されてもよい。グリース溝46は、後述するグリース溜まり48に貯留されたグリースを通過させる空間である。グリース溝46は、スクレーパ41の外周面の周方向に離間した複数の位置において、各々が軸方向に延設されている。
【0032】
そして、スクレーパ41の表面硬度は、接触シール32(より好ましくは、シリンダロッド23)より高く設定されている。一例として、スクレーパ41は、金属材料(例えば、鋼、Ti、Cu、またはこれらの合金)で構成される。金属材料の具体例としては、例えば、SUS(Steel Use Stainless)、またはSUJ2(高炭素クロム軸受鋼鋼材)などが挙げられる。他の例として、スクレーパ41は、樹脂材料の表面を硬質金属皮膜で覆って形成されていてもよい。硬質金属皮膜の具体例としては、例えば、DLC(Diamond-Like Carbon)、TiN(Titanium Nitride)などが挙げられる。
【0033】
図3に示すように、保護部材42は、中空の円錐台形状である。また、保護部材42の軸方向の両端は、開放されている。そして、保護部材42は、シリンダチューブ21(より詳細には、キャップ24)に固定されている。キャップ24に対して保護部材42を固定する具体的な方法は特に限定されないが、例えば、ボルト47による締結でもよいし、溶接などでもよい。
【0034】
保護部材42は、スクレーパ41を囲むように配置されている。また、保護部材42の内周面には、スクレーパ41の被取付部45が着脱可能に取り付けられる。すなわち、保護部材42は、スクレーパ41を着脱可能に支持する。また、保護部材42は、被取付部45よりシリンダロッド23の突出端側において、第2隙間G2を隔ててスクレーパ41を囲んでいる。第2隙間G2は、スクレーパ41の外周面44と、保護部材42の内周面との間に形成されるリング形状の隙間を指す。
【0035】
なお、第2隙間G2は、第1隙間G1より大きく設定されている。第2隙間G2の径方向の大きさ(すなわち、スクレーパ41の外周面44と保護部材42の内周面との径方向の間隔)は、第1隙間G1の径方向の大きさ(すなわち、シリンダロッド23の外周面とスクレーパ41の内周面43との径方向の間隔)より大きい。
【0036】
保護部材42の先端(シリンダロッド23の突出端側の端部)は、スクレーパ41よりシリンダロッド23の突出端側にまで延設されている。また、保護部材42の先端は、径方向の所定の隙間を隔ててシリンダロッド23を囲んでいる。すなわち、保護部材42は、シリンダロッド23と非接触である。保護部材42は、例えば、スクレーパ41と同等またはさらに表面硬度の高い材料で構成されている。
【0037】
スクレーパ41と保護部材42との間(より詳細には、接触シール32と被取付部45との間)には、グリースが貯留されるグリース溜まり48が設けられている。グリース溜まり48は、周方向に連続している。また、グリース溜まり48は、シリンダロッド23とスクレーパ41との間の第1隙間G1と、スクレーパ41と保護部材42との間の第2隙間G2とに連通している。
【0038】
保護部材42には、グリース注入孔49が設けられている。グリース注入孔49は、保護部材42を厚み方向に貫通する。また、グリース注入孔49は、グリース溜まり48に連通する。さらに、グリース注入孔49は、着脱可能なキャップ50によって閉塞される。なお、グリース注入孔49から注入される(換言すれば、グリース溜まり48に貯留される)グリースは、必ずしも潤滑する機能を有している必要はなく、侵入した塵埃を捕捉する粘性を有していればよい。
【0039】
まず、ブームシリンダ14の外部の(例えば、シリンダロッド23の外周面に付着した)塵埃のうち、直径の大きい塵埃は、保護部材42の先端に衝突して弾かれる。また、もう少し直径の小さい塵埃は、シリンダロッド23と保護部材42の先端との間の隙間を通過し、円錐台形状の外周面44に沿って第2隙間G2に進入して、グリース溝46またはグリース溜まり48のグリースに捕捉される。また、さらに直径の小さい塵埃は、第1隙間G1に進入してグリースに捕捉される。そして、グリース注入孔49から定期的にグリースが注入されることによって、塵埃を捕捉した古いグリースが保護部材42の先端側から排出される。
【0040】
上記の実施形態によれば、例えば以下の作用効果を奏する。
【0041】
上記の実施形態によれば、スクレーパ41の外周面44を円錐台形状にすることによって、シリンダロッド23の外周面に付着した塵埃を掻き取って、接触シール32に到達するのを抑制できる。また、スクレーパ41の表面硬度を高くすることによって、第1隙間G1に侵入した塵埃がスクレーパ41を凹ませて、シリンダロッド23とスクレーパ41との間に留まるのを防止できる。その結果、シリンダロッド23とスクレーパ41との間に挟まった塵埃によって、シリンダロッド23の外周面が傷つくのを防止できる。その結果、シリンダチューブ21からの作動油の漏洩と、シリンダチューブ21に対する塵埃の侵入とを適切に防止できる。
【0042】
また、上記の実施形態によれば、スクレーパ41を保護部材42で囲むことによって、直径の大きな塵埃がスクレーパ41に衝突するのを防止できる。その結果、先細り形状のスクレーパ41の先端の損傷が抑制されるので、シリンダ保護装置40(または、スクレーパ41)の交換頻度を低下させることができる。
【0043】
さらに、上記の実施形態によれば、第1隙間G1及び第2隙間G2と接触シール32との間にグリース溜まり48を設けることによって、第1隙間G1及び第2隙間G2を通過した塵埃をグリースで捕捉することができる。これにより、接触シール32に到達する塵埃の量をさらに少なくできる。
【0044】
上述した実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0045】
1 油圧ショベル
2 下部走行体
3 上部旋回体
4 クローラ
5 走行モータ
6 旋回モータ
7 旋回フレーム
8 キャブ
9 カウンタウェイト
10 フロント作業機
11 ブーム
12 アーム
13 バケット
14 ブームシリンダ(油圧シリンダ)
15 アームシリンダ(油圧シリンダ)
16 バケットシリンダ(油圧シリンダ)
21 シリンダチューブ
22 ピストン
23 シリンダロッド
24 キャップ
24a,24b,24c 円周溝
25 ボトム室
25a,26a 給排口
26 ロッド室
27,28 取付部
30,31,32 接触シール
40 シリンダ保護装置
41 スクレーパ
42 保護部材
43 内周面
44 外周面
45 被取付部
46 グリース溝
47 ボルト
48 グリース溜まり
49 グリース注入孔
50 キャップ