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特開2024-143607透光板の飛散落下防止方法及び飛散落下防止対策済の透光板
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  • 特開-透光板の飛散落下防止方法及び飛散落下防止対策済の透光板 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143607
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】透光板の飛散落下防止方法及び飛散落下防止対策済の透光板
(51)【国際特許分類】
   E01F 8/00 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E01F8/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056371
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】593135125
【氏名又は名称】日本ペイント・オートモーティブコーティングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505389695
【氏名又は名称】首都高速道路株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】507230382
【氏名又は名称】首都高メンテナンス西東京株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510106968
【氏名又は名称】首都高メンテナンス東東京株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】510273798
【氏名又は名称】首都高メンテナンス神奈川株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591216473
【氏名又は名称】一般財団法人首都高速道路技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【弁理士】
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】蔵治 賢太郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 大介
(72)【発明者】
【氏名】井田 達郎
(72)【発明者】
【氏名】関根 英人
(72)【発明者】
【氏名】蒲 和也
(72)【発明者】
【氏名】青木 聡
(72)【発明者】
【氏名】河野 亮太
(72)【発明者】
【氏名】加藤 舜大
(72)【発明者】
【氏名】細川 武喜
(72)【発明者】
【氏名】小松 利豪
(72)【発明者】
【氏名】宮田 涼平
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 鉄也
【テーマコード(参考)】
2D001
【Fターム(参考)】
2D001AA01
2D001BA01
2D001BB02
2D001CA01
2D001CB01
2D001DA04
2D001PB01
2D001PB03
2D001PB04
(57)【要約】
【課題】短期間での施工が可能な透光板の飛散落下防止方法及び飛散落下防止対策済の透光板を提供する。
【解決手段】透光板の飛散落下防止方法は、枠内に配置され、透光性を有するポリカーボネート樹脂の基板を有する透光板の飛散落下防止方法であって、基板の表面に、透光性を有する補助シートを貼付する工程を有し、補助シートは、樹脂層と、基板に補助シートを貼付するために樹脂層下に配置された粘着層と、樹脂層上に形成された表面保護層と、を有することを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠内に配置され、透光性を有するポリカーボネート樹脂の基板を有する透光板の飛散落下防止方法であって、
前記基板の表面に、透光性を有する補助シートを貼付する工程を有し、
前記補助シートは、
樹脂層と、
前記基板に補助シートを貼付するために前記樹脂層下に配置された粘着層と、
前記樹脂層上に形成された表面保護層と、を有する、
ことを特徴とする透光板の飛散落下防止方法。
【請求項2】
前記基板の表面を研掃する工程をさらに含み、
前記研掃する工程の後に、前記補助シートを貼付する工程を行う、
請求項1に記載の透光板の飛散落下防止方法。
【請求項3】
前記基板の表面を研磨する工程をさらに含み、
前記研磨する工程の前後に、前記研掃する工程を行う、
請求項2に記載の透光板の飛散落下防止方法。
【請求項4】
前記樹脂層は、熱可塑性エラストマ、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート又はアクリルを含み、
前記熱可塑性エラストマは、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリオレフィン、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリアミド及びポリ塩化ビニルを含み、
前記樹脂層の厚さは、38[μm]~1000[μm]の範囲内である、
請求項1に記載の透光板の飛散落下防止方法。
【請求項5】
前記粘着層は、粘着付与材及び軟化剤を含む熱可塑性エラストマ、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はエポキシ樹脂を含み、
前記粘着層の厚さは、25[μm]~3000[μm]の範囲内である、
請求項1に記載の透光板の飛散落下防止方法。
【請求項6】
前記表面保護層は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン系樹脂又はフッ素樹脂を含み、
前記表面保護層の厚さは、1[μm]~100[μm]の範囲内である、
請求項1に記載の透光板の飛散落下防止方法。
【請求項7】
前記補助シートの接着強度は、5[N/25mm]~200[N/25mm]の範囲内である、請求項1に記載の透光板の飛散落下防止方法。
【請求項8】
前記透光板は、道路構造物の一部として設置されたものである、請求項1~7の何れか一項に記載の透光板の飛散落下防止方法。
【請求項9】
飛散落下防止対策済の透光板であって、
透光性を有するポリカーボネート樹脂の基板と、
前記基板の表面に貼付された、透光性を有する補助シートと、を有し、
前記補助シートは、
樹脂層と、
前記基板に前記補助シートを貼付するために前記樹脂層下に配置された粘着層と、
前記樹脂層上に形成された表面保護層と、
を有することを特徴とする透光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透光板の飛散落下防止方法及び飛散落下防止対策済の透光板に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1に示す遮音壁等の一部として設けられる透光板では、紫外線、粉塵及び排気ガス等の影響によって図8(a)に示すように黄変や白濁が進行し、一部では、図8(b)に示すように飛散落下事例が報告されている。また、車両や積荷等の接触に起因する透光板の飛散落下事例も報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5881408号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
黄変や白濁が進行している透光板に対して更新工事が進められている。しかしながら、透光板は広範囲に設置されており、すべての透光板を短期間で更新することは困難である。このため、更新工事までの応急措置として、黄変や白濁が進行している透光板に対して飛散落下防止対策を講じる必要がある。
【0005】
また、車両や積荷等の接触に起因する透光板の飛散落下事例も報告されているため、設置されてから時間が経過していない透光板に対しても飛散落下防止対策を講じる必要がある。なお、これらの透光板に対して飛散落下防止対策を講じる場合、道路上の規制帯内で施工することになるため、短期間での施工も求められている。
【0006】
本発明は、短期間での施工が可能な透光板の飛散落下防止方法及び飛散落下防止対策済の透光板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面に係る透光板の飛散落下防止方法は、枠内に配置され、透光性を有するポリカーボネート樹脂の基板を有する透光板の飛散落下防止方法であって、基板の表面に、透光性を有する補助シートを貼付する工程を有し、補助シートは、樹脂層と、基板に補助シートを貼付するために樹脂層下に配置された粘着層と、樹脂層上に形成された表面保護層と、を有することを特徴とする。
【0008】
本発明の一側面に係る透光板の飛散落下防止方法において、基板の表面を研掃する工程をさらに含み、研掃する工程の後に、補助シートを貼付する工程を行うことが好ましい。
【0009】
本発明の一側面に係る透光板の飛散落下防止方法において、基板の表面を研磨する工程をさらに含み、研磨する工程の前後に、研掃する工程を行うことが好ましい。
【0010】
本発明の一側面に係る透光板の飛散落下防止方法において、樹脂層は、熱可塑性エラストマ、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタラート又はアクリルを含み、熱可塑性エラストマは、熱可塑性ポリウレタン、熱可塑性ポリオレフィン、熱可塑性ポリエステル、熱可塑性ポリアミド及びポリ塩化ビニルを含み、樹脂層の厚さは、38[μm]~1000[μm]の範囲内であることが好ましい。
【0011】
本発明の一側面に係る透光板の飛散落下防止方法において、粘着層は、粘着付与材及び軟化剤を含む熱可塑性エラストマ、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はエポキシ樹脂を含み、粘着層の厚さは、25[μm]~3000[μm]の範囲内であることが好ましい。
【0012】
本発明の一側面に係る透光板の飛散落下防止方法において、表面保護層は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン系樹脂又はフッ素樹脂を含み、表面保護層の厚さは、1[μm]~100[μm]の範囲内であることが好ましい。
【0013】
補助シートの接着強度は、5[N/25mm]~200[N/25mm]の範囲内であることが好ましい。
【0014】
本発明の一側面に係る透光板の飛散落下防止方法において、透光板は、道路構造物の一部として設置されたものであることが好ましい。
【0015】
本発明の一側面に係る透光板は、飛散落下防止対策済の透光板であって、透光性を有するポリカーボネート樹脂の基板と、基板の表面に貼付された、透光性を有する補助シートと、を有し、補助シートは、樹脂層と、基板に補助シートを貼付するために樹脂層下に配置された粘着層と、樹脂層上に形成された表面保護層と、を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る透光板の飛散落下防止方法及び飛散落下防止対策済の透光板は、短期間での施工が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】(a)は透光板を使用した構造物の正面図であり、(b)は透光板を使用した構造物の上面図であり、(c)は透光板を使用した構造物の側面図である。
図2】線A-Aに対応する透光パネルの断面図である。
図3】線B-Bに対応する透光パネルの断面図である。
図4】透光板の飛散落下防止のための一連の施工工程の流れを示すフローチャートである。
図5】(a)及び(b)は、一連の施工工程の各ステップにおける基板を示す斜視図である。
図6】(a)及び(b)は、試験器具の外観図である。
図7図6に示す検証試験の結果を示す図である。
図8】(a)は黄変及び白濁した透光板を示す図であり、(b)は飛散落下した透光板を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の様々な実施形態について説明する。本発明の技術的範囲はこれらの実施形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された発明及びその均等物に及ぶ点に留意されたい。
【0019】
図1(a)は透光板6を使用した構造物1の正面図であり、図1(b)は透光板6を使用した構造物1の上面図であり、図1(c)は透光板6を使用した構造物1の側面図である。
【0020】
構造物1は、後述する透光板6を一部構成として含む。この構造物1は、道路や線路等の通路2の近傍に設置される、遮音壁及び電光表示板等である。図1は、構造物1の一例として、遮音壁を示している。この遮音壁は、道路構造物として設置される。以降の実施形態では、構造物1を遮音壁1として記載する。また、通路2を道路2として記載する。ここで、正面とは、騒音の発生源である道路2側(以降、内側と呼称する)から見て、遮音壁1の透光板6面に対して垂直且つ水平に見た状態を指す。
【0021】
図1(a)~図1(c)に示す遮音壁1は、道路2に沿って設けられ、騒音から周辺の土地を守る。遮音壁1は、基台3、支柱4及び透光パネル5等により構成される。
【0022】
基台3は、道路2に沿って設置された基礎材である。基台3は、砂、砂利及び鉄筋等の骨材並びにセメント等の結合剤を含む。基台3は、遮音壁1の施工場所で打設してもよいし、他所で製造及び運搬し、道路2に埋設してもよい。
【0023】
支柱4は、透光パネル5を所定の位置に固定可能である。支柱4は、H形鋼等により構成され、道路2に沿って設置された基台3に立設される。例えば、支柱4には図示しない貫通孔が設けられており、この支柱4の貫通孔と、図示しない透光パネル5の貫通孔とにボルトを通して、ナット及び各貫通孔に通したボルトを締め上げることによって、透光パネル5が支柱4に固定される。
【0024】
透光パネル5は、道路2を走行する車両から発生する騒音の伝播を防止する。また、透光パネル5は、透光性を有しており、内側から見て遮音壁1の向こう側(外側)を視認可能である。透光パネル5は、支柱4に取り付けられる。図1には、道路2に沿って複数の透光パネル5が設置されている遮音壁1を一例として示しているが、例えば、支柱4を延長し、さらに透光パネル5を垂直方向に沿って複数設置した遮音壁であってもよい。図1(a)~図1(c)に示す透光パネル5の幅W、高さH及び奥行きDは、構造物1の施工計画に応じて適宜変更可能である。透光パネル5は、透光板6及び枠材7等により構成される。
【0025】
透光板6は、ポリカーボネート樹脂の基板61等により構成され、この基板61の表面に、透光板6の飛散落下防止対策を施した板材である。透光板6の形状は、平面であっても、曲面であってもよい。例えば、図1(a)~図1(c)に示す透光板6のうち、透光板6の飛散落下防止対策を施すエリアの幅Win及び高さHinは、枠材7の内寸幅及び内寸高さと同一である。すなわち、透光板6の飛散落下防止対策は、枠材7の枠内で行われる。透光板6の飛散落下防止のための一連の施工工程については後述する。
【0026】
透光板6に使用される透光板は、基板61として、アクリル樹脂及び/又はイソソルバイド(イソソルビド)を使用した板材であってもよい。また、透光板6に使用される透光板は、基板61として、化学強化ガラス間に樹脂フィルムを介装した化学強化合わせガラスや一般的なフロートガラス等の無機ガラスの外側に樹脂フィルム等が貼着されている板材であってもよい。
【0027】
枠材7は、アルミニウム及びアルミニウム合金を材料とし、押し出し成形によって製造される。枠材7は、後述するように、左右一対の縦枠710,720、並びに、これらの縦枠710,720の上端及び下端に架け渡された上枠730及び下枠740等により構成される。
【0028】
図2は、図1に示す線A-Aに対応する透光パネル5の断面図である。
【0029】
図2に示すように、縦枠710,720は、鉛直断面が概略矩形状を有する縦枠本体711,721を有し、この縦枠本体711,721に透光板6を嵌め込む透光板嵌込溝712,722が形成されている。透光板6は、透光板嵌込溝712,722に嵌め込まれる。縦枠710,720には、透光板6を支持するために、押縁713,723が嵌着されている。透光板6の縁は、押縁713,723によって内側から押さえ止められて固定される。押縁713,723には、透光板6と当接する部分にガスケット714,724が装着されている。ガスケット714,724は、シリコン樹脂等のゴム弾性体から形成される。
【0030】
図3は、図1に示す線B-Bに対応する透光パネル5の断面図である。
【0031】
図3に示すように、上枠730は、鉛直断面が概略矩形状である上枠本体731を有し、この上枠本体731に透光板6を嵌め込む透光板嵌込溝732が形成されている。透光板6は、透光板嵌込溝732に嵌め込まれる。上枠730には、透光板6を支持するために、押縁733が嵌着されている。透光板6の縁は、押縁733によって内側から押さえ止められて固定される。押縁733には、透光板6と当接する部分にガスケット734が装着されている。ガスケット734は、シリコン樹脂等のゴム弾性体から形成される。さらに、上枠本体731には図示しない貫通孔が設けられており、この上枠本体731の貫通孔に透光板6のボルト735を挿入し、透光板6の上縁部(透光板嵌込溝732に嵌め込まれた透光板6の縁)に設けられた図示しないねじ穴にボルト735を螺合することによって、透光板6の上縁部が上枠本体731に固定される。
【0032】
また、下枠740は、鉛直断面が概略矩形状である下枠本体741を有し、この下枠本体741に透光板6を嵌め込む透光板嵌込溝742が形成されている。透光板6は、透光板嵌込溝742に嵌め込まれる。下枠740には、透光板6を支持するために、押縁743が嵌着されている。透光板6の縁は、押縁743によって内側から押さえ止められて固定される。押縁743には、透光板6と当接する部分にガスケット744が装着されている。ガスケット744は、シリコン樹脂等のゴム弾性体から形成される。
【0033】
また、図2及び図3に示すように、透光パネル5の透光板6は、基板61及び補助シート62等により構成される。基板61及び補助シート62は、いずれも可撓性及び透光性を有している。
【0034】
基板61は、ポリカーボネート樹脂を含む。基板61は、耐衝撃性及び耐候性を有し、設置されてから時間が経過しても黄変や白濁が進行しにくく且つ飛散落下しにくい。基板61の厚さは、遮音壁1に要求される遮音性能を満たすように、5[mm]を標準としている。
【0035】
補助シート62は、基板61の表面に貼付される。補助シート62は、樹脂層63、粘着層64及び表面保護層65等により構成される。樹脂層63、粘着層64及び表面保護層65は、いずれも可撓性及び透光性を有している。
【0036】
樹脂層63は、過度の濁り、沈殿物及び著しいブツが含まれないことが好ましい。ブツとは、ほこり、繊維くず及び虫等の微小物のことである。樹脂層63は、熱可塑性エラストマ(TPE:Thermoplastic Elastomer)、ポリカーボネート(PC:Polycarbonate)、ポリエチレンテレフタラート(PET:Polyethylene Terephthalate)又はアクリル(PMMA:Poly Methyl Methacrylate)等の樹脂により構成される。熱可塑性エラストマは、熱可塑性ポリウレタン(TPU:Thermoplastic Polyurethane)、熱可塑性ポリオレフィン(TPO:Thermoplastic Olefin)、熱可塑性ポリエステル(TPE:Thermoplastic Polyester)、熱可塑性ポリアミド(TPA:Thermoplastic Polyamide)及びポリ塩化ビニル(PVC:Polyvinyl Chloride)を含む。樹脂層63の厚さは、38[μm]~1000[μm]の範囲内であることが好ましい。
【0037】
粘着層64は、樹脂層63下に配置される。粘着層64は、基板61に樹脂層63を貼付するための接着剤として機能し、基板61と樹脂層63とを強固に接着可能である。粘着層64は、粘着付与材及び軟化剤を含む熱可塑性エラストマ、アクリル樹脂、ウレタン樹脂又はエポキシ樹脂等により構成される。粘着付与材は、テルペン樹脂、ロジン樹脂、石油樹脂、石炭樹脂、フェノール樹脂、キシレン樹脂等の樹脂を含む。軟化剤は、パラフィン系オイル、ナフテン系オイル等を含む。また、粘着層64の厚さは、25[μm]~3000[μm]の範囲内であることが好ましい。
【0038】
表面保護層65は、樹脂層63を保護するために、樹脂層63上に形成される。表面保護層65は、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、シリコン系樹脂又はフッ素系樹脂等により構成される。また、表面保護層65の厚さは、1[μm]~100[μm]の範囲内であることが好ましい。さらに、表面保護層65は、表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤等の添加剤を含んでいてもよい。
【0039】
図4は、透光板6の飛散落下防止のための一連の施工工程の流れを示すフローチャートである。図5(a)及び図5(b)は、一連の施工工程の各ステップにおける基板61を示す斜視図である。
【0040】
まず、透光板6の飛散落下防止対策を施す前に、透光板6の表面に対する前処理が実施される(ステップS101)。例えば、前処理として、ウェス等の道具を用いて基板61の表面が研掃される。また、基板61の表面が研掃され且つ透光パネル5の枠材7が養生テープ等を使用して養生された後、サンダ等の道具を用いて基板61の表面が研磨される。この基板61の表面を研磨する工程では、「#400→#600→#800」のように、目の粗さを順に細かくしながら基板61の表面が研磨される。また、基板61の表面が研磨された後、さらにウェス及びワイパ等の道具を用いて基板61の表面が研掃される。これにより、基板61の表面を研磨する工程で発生した基板61の粉塵が除去される。この前処理を実施した基板61は、図5(a)に示されている。なお、透光板6の汚れがひどくない場合等には、必ずしもステップ101の前処理を施さなくてもよい。
【0041】
最後に、前処理を実施した基板61の表面に、ヘラ等の道具を用いて補助シート62が貼付され、一連の施工工程が終了される(ステップS102)。これにより、飛散落下防止対策を施した透光板6が完成する。この透光板6の飛散落下防止対策を施した基板61は、図5(b)に示されている。前処理を実施して、補助シート62を基板61に貼付するだけで透光板6の飛散落下防止対策を完了できるため、施工時間を大幅に短縮することができる。
【0042】
図6(a)及び図6(b)は、試験器具8の外観図である。
【0043】
図6(a)及び図6(b)に示す試験器具8は、飛散落下防止対策を施した透光板6の耐衝撃性を検証するための検証試験に使用される器具である。試験器具8は、上述した支柱4及び透光パネル5、並びに、鋼球9等により構成される。透光パネル5を支柱4へ取り付ける手法は、実際に遮音壁1の一部構成として透光パネル5を支柱4に取り付ける手法と同一である。鋼球9は、ワイヤ91によって図示しない支柱に吊り下げられている。鋼球9には、略円柱状の突起92が設けられている。
【0044】
検証試験では、実際に遮音壁1として使用した後に透光板6の飛散落下防止対策を施した透光パネル5を複数枚用意し、複数の透光パネル5のそれぞれに対して、鋼球9の突起92を高さ1.0[m]から振り子状に衝突させる試験を行う。透光パネル5は、地面から高さ1.0[m]の位置に取り付けられる。透光板6の四周の縁は、枠材7の押縁713,723,733,743のそれぞれによって内側から押さえ止められて固定されている。さらに、透光板6の上縁部のみ、ボルト735によって上枠本体731に固定されている。
【0045】
ここで、検証試験に使用する鋼球9の質量は、300[kg]である。突起92の長さは50[mm]であり、直径は24[mm]である。300[kg]鋼球試験の衝突エネルギーは、路面より3[m]の高さに位置する重量3.0[kN]の積荷が60[km/h]、15度の角度で水平に衝突した場合に相当するエネルギーとして設定される。
【0046】
検証試験に使用するのは、図4に示す一連の施工工程により飛散落下防止対策が施された図1図3に示す透光パネル5である。透光パネル5の幅Wは1500[mm]であり、高さHは750[mm]、奥行きDは72[mm]である。透光板6の飛散落下防止対策を施すエリアの幅Winは1386[mm]であり、高さHinは660[mm]である。透光板6に含まれる基板61の厚さは5[mm]であり、樹脂層63の厚さは150[μm]であり、粘着層64の厚さは1500[μm]であり、表面保護層65の厚さは30[μm]である。
【0047】
図7は、図6に示す検証試験の結果を示す図である。
【0048】
検証試験では、同じ透光パネル5を5枚用意し、図6に示す装置を利用して鋼球9を所定の方法で透光パネル5に衝突させて、それぞれの状態を観測した。図7は、5回の検証実験後の透光パネル5の状態の概略を示している。
【0049】
図7に示すように、5回の検証実施のいずれでも、透光パネル5の透光板6の一部にひび割れが生じたり、支柱4から一部が外れたりすることはあっても、透光板6が飛散落下しないという検証結果が得られた。透光板6が落下しない理由としては、透光板6の上縁部がボルト735によって上枠本体731に固定されていることが挙げられる。すなわち、上述した透光板6の飛散落下防止対策を施すことによって、実際に積荷が透光パネル5に衝突しても、透光板6の飛散落下を防止できることがわかった。
【0050】
図6に示す検証実験に使用した、飛散落下防止対策を施した透光パネル5に対して、200[mm/min]の一定速度で基板61から補助シート62を引きはがす180度剥離(ピーリング)試験を行った。180度剥離試験の結果、補助シート62の接着強度は20.0[N/25mm]であった。経験上、上述した180度剥離試験と同様の結果を得るためには、補助シート62の接着強度を5[N/25mm]~200[N/25mm]の範囲内とすることが好ましい。
【0051】
図4に示す一連の施工工程のステップS101において、基板61の表面の研磨及び研掃等の前処理を実施することで、紫外線や粉塵、排気ガス等の影響によって劣化した基板61の表面部分及び付着した汚れを除去する。これにより、補助シート62の基板61への定着を向上することができる。また、補助シート62の基板61への定着が向上することによって、補助シート62の基板61への接着強度を向上することができる。また、劣化した基板61の表面部分及び付着した汚れを除去することによって、基板61の透光性を向上することができる。
【0052】
図4に示す一連の施工工程のステップS101において、基板61の表面を研磨しているが、研磨を行わず、研掃するだけでも、基板61と補助シート62との十分な接着強度を得ることができる。
【0053】
当業者は、本発明の精神及び範囲から外れることなく、様々な変更、置換及び修正をこれに加えることが可能であることを理解されたい。例えば、上述した各部の処理は、本発明の範囲において、適宜に異なる順序で実行されてもよい。また、上述した実施形態及び変形例は、本発明の範囲において、適宜に組み合わせて実施されてもよい。また、上記した飛散落下防止方法及び飛散落下防止対策済の透光板は、鉄道、空港施設等に設置される透光板又は道路構造物として設置される透光板にも適用できる。
【符号の説明】
【0054】
1 構造物
6 透光板
61 基板
62 補助シート
63 樹脂層
64 粘着層
65 表面保護層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8