IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立製作所の特許一覧

特開2024-143608時系列データの要因分析支援システム及び時系列データの要因分析支援方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143608
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】時系列データの要因分析支援システム及び時系列データの要因分析支援方法
(51)【国際特許分類】
   G06Q 50/04 20120101AFI20241003BHJP
   G06Q 10/00 20230101ALI20241003BHJP
【FI】
G06Q50/04
G06Q10/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056372
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000925
【氏名又は名称】弁理士法人信友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横井 直明
(72)【発明者】
【氏名】恵木 正史
【テーマコード(参考)】
5L010
5L049
5L050
【Fターム(参考)】
5L010AA20
5L049AA20
5L049CC03
5L050CC03
(57)【要約】
【課題】時系列データの要因分析を行う際に、解析した原因に対する対処を明確化して提示できるようにする。
【解決手段】時系列変数ごとに時系列因果モデルを保持する時系列因果モデル記憶部31と、時系列因果モデル記憶部31が記憶した時系列因果モデルと分析対象の時系列データを用いて、各時刻の各時系列変数の寄与度について、他の時刻の他の時系列変数の寄与度にどれだけ還元すべきかを評価した寄与度還元率を算出する寄与度算出部15と、寄与度算出部が算出した寄与度還元率に基づいて、各時刻の各時系列変数の寄与度を他の時刻の他の時系列変数の寄与度に還元し、目的変数に対する根本要因による寄与度の推移を算出する寄与度還元部17と、寄与度還元部17が算出した目的変数に対する根本要因による寄与度を出力する出力部18と、を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
時系列変数による目的変数への寄与度の推移を分析する時系列データの要因分析支援システムであって、
前記時系列変数ごとに時系列因果モデルを保持する時系列因果モデル記憶部と、
前記時系列因果モデル記憶部が記憶した時系列因果モデルと分析対象の時系列データを用いて、各時刻の各時系列変数の寄与度について、他の時刻の他の時系列変数の寄与度にどれだけ還元すべきかを評価した寄与度還元率を算出する寄与度算出部と、
前記寄与度算出部が算出した寄与度還元率に基づいて、各時刻の各時系列変数の寄与度を他の時刻の他の時系列変数の寄与度に還元し、前記目的変数に対する根本要因による寄与度の推移を算出する寄与度還元部と、
前記寄与度還元部が算出した、前記目的変数に対する根本要因による寄与度を出力する出力部と、を有する
時系列データの要因分析支援システム。
【請求項2】
前記時系列因果モデル記憶部が保持する時系列因果モデルは、実績時系列データから実績ラグ変数データと時系列目的変数群データとを生成し、特定の時刻から所定時刻前について、生成した前記実績ラグ変数データと前記時系列目的変数群データとの変数の値から予測したモデルである
請求項1に記載の時系列データの要因分析支援システム。
【請求項3】
さらに、過去の実績時系列データ及び/又は実績非系列データと、分析目的とする状態との関係性を学習する予測器を備え、
前記寄与度算出部は、前記予測器が学習した結果を使って、前記寄与度還元率を算出する
請求項2に記載の時系列データの要因分析支援システム。
【請求項4】
前記寄与度還元部で還元した寄与度に基づいて根本要因を特定したとき、その根本要因を変化させた場合の内容変更データについての変更後寄与度を算出する
請求項3に記載の時系列データの要因分析支援システム。
【請求項5】
前記出力部は、対策検討画面を表示するものであり、
前記対策検討画面でのユーザによる根本要因の変更操作で、内容変更データを得るようにした
請求項4に記載の時系列データの要因分析支援システム。
【請求項6】
前記出力部は、要因分析画面を表示するものであり、
前記要因分析画面は、時系列変数を可視化した分析対象データの時系列パターンのグラフと、還元済の寄与度を可視化した根本原因の寄与度の推移のグラフとを表示する
請求項1に記載の時系列データの要因分析支援システム。
【請求項7】
さらに前記要因分析画面は、還元済でない時系列変数別の寄与度データを可視化した寄与度推移のグラフを表示する
請求項6に記載の時系列データの要因分析支援システム。
【請求項8】
時系列変数による目的変数への寄与度の推移を、コンピュータが分析する時系列データの要因分析支援方法であって、
前記コンピュータが、前記時系列変数ごとに時系列因果モデルを保持する時系列因果モデル記憶処理と、
前記コンピュータが、前記時系列因果モデル記憶処理により記憶された時系列因果モデルと分析対象の時系列データを用いて、各時刻の各時系列変数の寄与度について、他の時刻の他の時系列変数の寄与度にどれだけ還元すべきかを評価した寄与度還元率を算出する寄与度算出処理と、
前記コンピュータが、前記寄与度算出処理で算出した寄与度還元率に基づいて、各時刻の各時系列変数の寄与度を他の時刻の他の時系列変数の寄与度に還元し、前記目的変数に対する根本要因による寄与度の推移を算出する寄与度還元処理と、
前記コンピュータが、前記寄与度還元処理により算出した前記目的変数に対する根本要因による寄与度を出力する出力処理と、を含む
時系列データの要因分析支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、時系列データの要因分析支援システム及び時系列データの要因分析支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
製造業における品質改善では、製造工程における各種センサ値などの時系列データから、製品不良に対する要因分析や、その結果に基づく具体的な対策の検討と実施が不可欠である。製造工程における各種センサ値などの時系列データから要因分析を行う際に、AI(Artificial Intelligence:人工知能)を使うことが知られている。すなわち、製造データと製品の不良度との関係をAIに学習させ、XAI(Explainable AI:説明可能なAI)技術で不良度の増大に寄与した要因を機械的に抽出することが知られている。ここで、AIへの入力を時間変数(因子×時刻)にすれば、各時刻と各因子による品質への影響の時系列的な推移を定量化し可視化することができる。
【0003】
特許文献1には、システムから得られた時系列の多変量データを用いて、次元間の非線形な因果関係を推定することを可能とする技術が記載されている。すなわち、特許文献1には、入力された時系列多次元数値ベクトルのデータを用いて、ある時刻のデータを過去の時刻のデータから予測する非線形回帰モデルを学習し、非線形回帰モデルを用いて、時系列多次元数値ベクトルのデータにおける各次元の因果の強さを計算する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-144779号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されるように、ある状態が発生したときに、その状態の因果の強さを推定することは従来から行われている。これにより、例えば製造時に不良が発生した場合に、製造工程における各種センサ値などの時系列データのいずれが、不良に結びついているかを判断することができる。しかしながら、従来の解析手法では、各部の温度、圧力などの時系列データの内で、どんなデータが不良に結びつているかを判断できるだけであり、どのように制御すれば不良を防げるかを判定できない場合があった。
【0006】
例えば、温度センサによりA地点の温度、B地点の温度、圧力センサによりC地点の圧力などが時系列データとして計測されたとき、従来の解析手法で、B地点の温度情報が製造品質低下を引き起こしていると判断されたとする。このとき、B地点の温度は、製造ライン上で直接制御ができない温度であった場合、B地点の温度を抑えるために、どのような対策が必要であるか解析結果からは判断できない。したがって、結局、製造品質の低下に対する具体的な対策が立てられないという問題があった。
【0007】
また、上述したB地点の温度が直接制御できる場合であっても、品質悪化の影響が高まるタイミングで、どう制御すれば品質がどれくらい改善するかが事前に見積もれないと、実際に対策を実施することができないという問題もあった。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑み、解析した原因に対する対処を明確化して提示することが可能な、時系列データの要因分析支援システム及び時系列データの要因分析支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、例えば特許請求の範囲に記載の構成を採用する。
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいるが、その一例を挙げるならば、本発明の時系列データの要因分析支援システムは、時系列変数による目的変数への寄与度の推移を分析する時系列データの要因分析支援システムであって、時系列変数ごとに時系列因果モデルを保持する時系列因果モデル記憶部と、時系列因果モデル記憶部が記憶した時系列因果モデルと分析対象の時系列データを用いて、各時刻の各時系列変数の寄与度について、他の時刻の他の時系列変数の寄与度にどれだけ還元すべきかを評価した寄与度還元率を算出する寄与度算出部と、寄与度算出部が算出した寄与度還元率に基づいて、各時刻の各時系列変数の寄与度を他の時刻の他の時系列変数の寄与度に還元し、目的変数に対する根本要因による寄与度の推移を算出する寄与度還元部と、寄与度還元部が算出した目的変数に対する根本要因による寄与度を出力する出力部と、を有する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、根本的な要因への寄与度の還元率を算出して出力することで、ユーザが対策を検討し易い要因に絞って、品質などを悪化させるプロセスをユーザに提示することができる。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施の形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムの例を示す構成図である。
図2】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムのハードウェア例を示す構成図である。
図3】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる実績時系列データテーブルの例を示す図である。
図4】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる実績非時系列データテーブルの例を示す図である。
図5】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる対象時系列データテーブルの例を示す図である。
図6】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる対象非時系列データテーブルの例を示す図である。
図7】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる予測器生成部の例を示す構成図である。
図8】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる実績時間変数データの例を示す図である。
図9】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる時間変数生成部の処理例を示すフローチャートである。
図10】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる予測器生成部の処理例を示すフローチャートである。
図11】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる時系列因果モデルの生成例を示す図である。
図12】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによるラグ変数データの例を示す図である。
図13】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる時系列目的変数群データの例を示す図である。
図14】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによるラグ変数生成部の処理例を示すフローチャートである。
図15】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる寄与度算出部の例を示す構成図である。
図16】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる対象時間変数データの例を示す図である。
図17】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる時間変数別寄与度の例を示す図である。
図18】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる非時系列変数別寄与度の例を示す図である。
図19】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる寄与度算出部の処理例を示すフローチャートである。
図20】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる時間変数別寄与度の還元処理例を示す構成図である。
図21】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる対象ラグ変数データの例を示す図である。
図22】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる寄与度還元率データの例を示す図である。
図23】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる時間変数別寄与度の還元処理例を示すフローチャートである。
図24】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる還元率算出部の処理例を示すフローチャートである。
図25】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる寄与度還元部の処理例を示すフローチャートである。
図26】本発明の第1の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる結果出力部における要因分析画面の例を示す図である。
図27】本発明の第2の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる対策検討画面の例を示す図である。
図28】本発明の第2の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる対策検討を含む事前効果検証処理の例を示す構成図である。
図29】本発明の第2の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる変更内容データの例を示す図である。
図30】本発明の第2の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる変更内容抽出部の処理例を示すフローチャートである。
図31】本発明の第2の実施の形態例に係る要因分析支援システムによる変更データ生成部の処理例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<第1の実施の形態例>
以下、本発明の第1の実施の形態例による時系列データの要因分析支援システム及び時系列データの要因分析支援方法を、図1図26を参照して説明する。
【0013】
[要因分析支援システムの全体構成]
図1は、本実施の形態例の要因分析支援システムの全体構成を示す。
図1に示すように、要因分析支援システムは、複数の計算機10、20、30と、各計算機10~30とネットワークNWで接続された端末40とで構成される。但し、複数の計算機10~30と端末40で構成するのは一例であり、例えば計算機10~30は1つの計算機として構成してもよいし、端末40は、計算機とは別体で構成しなくてもよい。
【0014】
計算機10は、予測器生成部11、時系列因果モデル生成部12、時間変数生成部13、ラグ変数生成部14、寄与度算出部15、還元率算出部16、寄与度還元部17、及び結果出力部18を備える。
【0015】
計算機20は、実績時系列データ記憶部21、実績非時系列データ記憶部22、対象時系列データ記憶部23、及び対象非時系列データ記憶部24を備える。
計算機30は、時系列因果モデル記憶部31を備える。
【0016】
図2は、各計算機10、20、30のハードウェア構成例を示す。ここでは、計算機10を例として説明するが、他の計算機20、30も同様の構成になる。さらに、端末40も、基本的には計算機10と同じ構成になる。
計算機10は、プロセッサ1、主記憶装置2、副記憶装置3、入力装置4、出力装置5、及びネットワークインターフェース6を備える。
プロセッサ1は、主記憶装置2又は副記憶装置3に記憶されたプログラムの主記憶装置2における実行を制御する。そして、プロセッサ1は、プログラムを実行することで、主記憶装置2又は副記憶装置3に図1に示す各処理部や記憶部を構成する。
【0017】
入力装置4は、キーボードやマウスなどの入力機器で構成され、操作者による入力操作を受け付ける。出力装置5は、表示装置や音声出力装置などで構成され、処理結果などを表示すると共に、音声により処理結果を伝える。
ネットワークインターフェース6は、ネットワークNWを経由して他の計算機20、30及び端末40とデータの送受信を行う。
【0018】
[各データの例]
次に、本例のシステムが扱うデータの例について説明する。
図3は、実績時系列データ記憶部21に記憶される、本実施の形態例で扱う製造ラインに設置されたセンサで計測される温度A、圧力B、・・・の実績時系列データを示す。
図3に示すように、実績時系列データは、製造IDごとに、時刻0の温度A、圧力B、・・・の実績値、時刻1の温度A、圧力B、・・・の実績値、時刻2の温度A、圧力B、・・・の実績値と時系列で順に実績時系列データ記憶部21に記憶される。
【0019】
図4は、実績非時系列データ記憶部22に記憶される、本実施の形態例で扱う製造ラインに設置されたセンサや製品の検査工程で計測された実績非時系列データを示す。ここでは、製造ラインで製造された製品の硬度、白濁度、製造に使用した物質の添加量、製造に要した反応時間、などが記憶される。
図4に示すように、実績非時系列データは、製造IDごとに、硬度、白濁度、添加量、反応時間、などが1つのレコードとして記憶される。
【0020】
図5は、対象時系列データ記憶部23に記憶される、不良となった製品の要因分析対象となる温度A、圧力B、・・・の時系列データを示す。
図5には、対象時系列データは、分析対象の製造IDの、時刻0の温度A、圧力B、・・・の実績値が示されている。
【0021】
図6は、対象非時系列データ記憶部24に記憶される、不良となった製品の要因分析対象となる硬度、白濁度、添加量、反応時間、などの非時系列データを示す。
図6には、対象非時系列データは、分析対象の製造IDの、硬度、白濁度、添加量、反応時間などが示されている。
ここでは、製品としてポリマー製品を対象とし、白濁しているほど不良であるとし、「白濁度」が不良度の指標として採用されている。
【0022】
[予測器生成部の処理]
次に、このような時系列データ及び非時系列データを使って、図1の構成にて時系列データの要因分析支援を行う処理を順に説明する。
図7は、予測器生成部11の構成を示す。
予測器生成部11は、実績時系列データ記憶部21に記憶された実績時系列データ(図3)と、実績非時系列データ記憶部22に記憶された実績非時系列データ(図4)とを使って、過去の実績データ(時系列データ及び非時系列データ)と不良度(白濁度)との関係を学習する予測処理を行う。ここでの学習としては、例えば機械学習モデルによる学習を適用するが、単純な回帰モデルによる学習でもよい。
【0023】
まず、時間変数生成部13は、予測器生成のために、実績時系列データ記憶部21に記憶された実績時系列データから実績時間変数データD1を生成する。
図8は、時間変数生成部13で生成される実績時間変数データD1の例を示す。
実績時間変数データD1は、製造IDごとに、時刻0(t=0)から時刻232(t=232:最後の時刻)までに取り出される温度Aの値と圧力Bの値を示している。
実績時間変数データD1のレコード数は、製造IDごとに1行のデータであり、[温度Aなどの時系列変数の数×時刻数の分]の変数が生成されるため、かなり横長のデータになることが多い。
この図8に示す実績時間変数データD1と、実績非時系列データ(図4)とが、予測器生成部11に供給される。
【0024】
図9は、時間変数生成部13が行う処理の手順を示すフローチャートである。
まず、時間変数生成部13は、実績時系列データ記憶部21に記憶された実績時系列データを取得する(ステップS11)。ここでの実績時系列データは、例えば図3に示すような製造IDごとの温度A、圧力Bなどのデータである。
そして、時間変数生成部13は、取得した時系列データを同一製造IDのデータごとに分割して、分割データを得る(ステップS12)。
【0025】
次に、時間変数生成部13は、分割データのループ処理を開始する(ステップS13a)。ループ処理を開始すると、時間変数生成部13は、各時系列変化の全時刻データを1レコードにフラット化して、時間変数データに追加する(ステップS14)。時間変数生成部13は、分割データのループ処理を終了する(ステップS13b)。
このステップS13aでのループ開始とステップS13bでのループ終了とを、データ数だけ繰り返すことで、時間変数生成部13は、図8に示す実績時間変数データを取得する。
そして、時間変数生成部13は、取得した実績時間変数データを出力する(ステップS15)。
【0026】
図10は、予測器生成部11が行う処理の手順を示すフローチャートである。
予測器生成部11は、図8に示す実績時間変数データと、図4に示す実績非系列データとを取得する(ステップS21)。
そして、予測器生成部11は、取得した実績時間変数データと実績非系列データとを結合して、学習データを生成する(ステップS22)。ここで、実績時間変数データは、図8に示すように製造IDごとに1行になっている。このため、実績時間変数データをキーとして、このデータに実績非時系列データと製造IDを結合して学習データを生成し、学習処理を行う。
そして、学習データから目的変数を指定して学習して、学習済の予測器19を出力する(ステップS23)。
【0027】
[時系列因果モデル生成部の処理]
図11は、時系列因果モデル生成部12が行う処理を示す図である。
ラグ変数生成部14は、実績時系列データ記憶部21に記憶された実績時系列データから、実績ラグ変数データD2を生成する。
図12は、実績ラグ変数データの例を示す。
ここでは、図12に示すように、時間窓長T=3として、3時刻前から1時刻前の期間のデータがそれぞれの変数となり、時刻t(4,5,・・・・)に対するラグ変数が得られる。すなわち、時間窓長T=3の場合、時刻t=3以下ではデータが存在しないマイナス時刻のデータが必要になるので、t=4から始まっている。
【0028】
図11の説明に戻ると、ラグ変数生成部14は、実績時系列データから、時系列目的変数群データD3を生成する。
図13は、ラグ変数生成部14で生成される時系列目的変数群データD3の例を示す。
図13に示すように、時系列目的変数群データD3は、時刻t(t=4以降の各時刻)における、各時系列変数の値になる。例えば、時系列目的変数群データD3には、時刻t=4の製造ID=id01の温度A、圧力Bなどの値が含まれる。
【0029】
時系列因果モデル生成部12は、実績ラグ変数データD2と時系列目的変数群データD3とから、時系列因果モデルを生成し、生成した時系列因果モデルが、時系列因果モデル記憶部31に記憶される。この生成した時系列因果モデルを時系列因果モデル記憶部31に記憶する処理を時系列因果モデル記憶処理とする。
時系列モデルは、時系列変数の数だけ生成され、ある時刻tの各変数の値が、その直前Tの期間の全変数の値から予測されるモデルとなる。何時刻前の期間から予測するかは、画面上の時間窓長Tをユーザが指定可能とすることで決定する例を示したが、時間窓長Tを様々変更して学習した時系列因果モデルの予測精度などを元にして、時系列変数ごとに自動的に決定してもよい。
【0030】
図14は、ラグ変数生成部14が行う処理の手順を示すフローチャートである。
ラグ変数生成部14は、時系列データを取得する(ステップS31)。そして、ラグ変数生成部14は、取得した時系列データを、同一製造IDのデータごとに分割する(ステップS32)。
そして、ラグ変数生成部14は、ループ処理を開始する(ステップS33a)。
ループ処理を開始すると、ラグ変数生成部14はiを0に設定し(ステップS34)、(T+1+i)をtにする(ステップS35)。
【0031】
そして、ラグ変数生成部14は、分割データのt行目のレコードを、時系列目的変数群データに追加する(ステップS36)。さらに、ラグ変数生成部14は、分割データのt-1からt-T行目の各時系列変数の値を、ラグ変数データに追加する(ステップS37)。
【0032】
その後、ラグ変数生成部14は、現在のiの値が、分割データのレコード数であるか否かを判断する(ステップS38)。ステップS38で、iの値が分割データのレコード数でない場合(ステップS38のNo)、ラグ変数生成部14はiの値を1つ加算し(ステップS39)、ステップS35の処理に戻る。
【0033】
また、ステップS38で、iの値が分割データのレコード数と判断した場合(ステップS38のYes)、ステップS33aからのループ処理を終了する(ステップS33b)。
そして、ラグ変数生成部14は、ラグ変数データと時系列目的変数群データを出力する(ステップS40)。
【0034】
[寄与度算出部の処理]
図15は、寄与度算出部15が行う処理を示す図である。
時間変数生成部13は、対象時系列データ記憶部23に記憶された対象時系列データから、対象時間変数データD4を得る。寄与度算出部15は、予測器19の出力に対する各入力変数の寄与度を算出する寄与度算出処理を行う。寄与度は、時間変数別寄与度D5と、非時系列変数別寄与度D6との2種類に分けて得られる。
例えば、入力変数がX1,X2の2つある場合、X1の寄与度が+150、X2の寄与度が-50であれば、その合計が予測器19の出力値の100になる。
【0035】
図16は、対象時間変数データの例を示す。
対象時間変数データは、対象時系列データを予測器への入力形式である時間変数に変換したものである。
例えば、図16に示すように、ある製造ID(id97)の温度Aや圧力Bなどについて、時刻0(t=0)から時刻232(t=232)までのデータ(時間変数)に変換したものが対象時間変数データとして得られる。
【0036】
図17は、寄与度算出部15の出力の1つである時間変数別寄与度の例を示す。
時間変数別寄与度は、対象時間変数データの各変数について、予測器19の出力に対する寄与度を算出した結果である。例えば、図17に示すように、ある製造ID(id97)の温度Aの時刻t=0の寄与度として+0.01、時刻t=1寄与度として-0.03、のように、各時刻の温度A、圧力Bなどの時間変数ごとに寄与度が算出される。
【0037】
図18は、寄与度算出部15の出力の1つである非時系列変数別寄与度の例を示す。
非時系列変数別寄与度は、非時系列変数データの目的変数を除く各変数について、予測器の出力に対する寄与度を算出した結果である。例えば、ある製造ID(id97)の目的変数とした白濁度を除いた硬度、添加量、反応時間などのそれぞれについて、予測器19の出力に対する寄与度が算出される。
【0038】
図19は、寄与度算出部15が行う処理の手順を示すフローチャートである。
まず、寄与度算出部15は、予測器19の出力と、対象時間変数データと、対象非時系列データを取得する(ステップS51)。そして、寄与度算出部15は、取得した対象非時系列データから目的変数を削除し、対象時間変数データと結合する(ステップS52)。
次に、寄与度算出部15は、結合したデータの各変数が予測器19の出力値に与える寄与度を算出する(ステップS53)。
【0039】
そして、寄与度算出部15は、対象時間変数データ内の各変数の寄与度を、図17に示すように、時間変数別寄与度として出力する(ステップS54)。さらに、図18に示すように、寄与度算出部15は、対象非時系列データ内の各変数の寄与度を、対象非時系列変数別寄与度として出力する(ステップS55)。
【0040】
[時間変数別寄与度の還元処理]
図20は、時間変数別寄与度の還元処理を示す図である。この図20に示す処理にて、各時間変数(時系列変数×時刻)について算出された寄与度を、根本原因に還元する処理が行われる。
すなわち、図20に示すように、還元率算出部16は、ラグ変数生成部14で生成した対象ラグ変数データD7と、時系列因果モデル記憶部31に記憶された時系列因果モデルを取得する。そして、還元率算出部16は、どの時間変数、言い換えるとどの時刻のどの時系列変数の各寄与度をどれくらい還元するかを算出し、寄与度還元率データD8を得る。
そして、寄与度還元部17は、還元率算出部16が算出した寄与度還元率データD8と、時間変数別寄与度D9を取得する。還元率算出部16は、還元率をもとに寄与度を実際に還元する処理を行い、還元済み寄与度データD10を得る。
このようにして得られた還元済み寄与度データD10は、結果出力部18から出力される。
【0041】
図21は、対象ラグ変数データの例を示し、図22は、寄与度還元率データの例を示す。
図21に示す対象ラグ変数データは、対象時系列データをラグ変数化したものである。例えば、時間窓長T=3の場合、時刻t=4の製造ID=id97について、温度A、圧力Bなどについて、t-3のデータ、t-2のデータ、t-1のデータを得る。同様に、時刻t=5、t=6、・・・と最後の時刻t=232までデータを得る。
【0042】
図22に示す寄与度還元率データは、どの時刻のどの変数の寄与度(還元元)を、別のどの時刻のどの変数(還元先)にどれくらい還元するかを、還元率で示すデータである。
例えば、時刻t=232のA温度(還元元)の寄与度を、時刻t=230のB圧力(還元先)の寄与度に、還元率+75%で還元することが寄与度還元率データとして示される。
【0043】
図23は、図20に示す時間変数別寄与度の還元処理の手順を示すフローチャートである。
まず、ラグ変数生成部14が対象時系列データを取得する(ステップS61)。
そして、ラグ変数生成部14がラグ変数の生成処理を行い、対象ラグ変数データを出力する(ステップS62)。対象ラグ変数データは、図21に示すようなデータである。
【0044】
次に、還元率算出部16は、ラグ変数生成部14で生成した対象ラグ変数データと時系列因果モデル記憶部31が記憶した時系列因果モデルから還元率算出処理を行い、寄与度還元率データを出力する(ステップS63)。還元率算出部16における還元率算出処理の詳細は、図24で説明する。
【0045】
そして、寄与度還元部17は、還元率算出部16が算出した寄与度還元率データと時間変数別寄与度とに基づいて寄与度還元処理を行い、還元済寄与度データを出力する(ステップS64)。還元率算出部16における寄与度還元処理の詳細は、図25で説明する。
そして、寄与度還元部17で得られた還元済寄与度データは、結果出力部18から出力される(ステップS65)。
【0046】
図24は、還元率算出部16が行う処理の手順を示すフローチャートである。
まず、還元率算出部16は、対象ラグ変数データを取得する(ステップS71)。対象ラグ変数データは、図21で説明したデータである。
対象ラグ変数データを取得した還元率算出部16は、最初に対象ラグ変数データのレコード数をjに設定する(ステップS72)。その後、還元率算出部16は、時系列変数を条件としたループ処理を開始する(ステップS73a)。
【0047】
ループ処理が開始されると、還元率算出部16は、各時系列変数の時系列因果モデルを取得する(ステップS74)。そして、還元率算出部16は、対象ラグ変数データのj行目の各変数が時系列因果モデルの出力値に与える寄与度を算出する(ステップS75)。還元率算出部16は、算出した寄与度をラグ変数別寄与度データに追加する(ステップS76)。この寄与度をラグ変数別寄与度データに追加したデータは、図24の右側の中段に示すようなデータであり、予測器による各時刻の各変数の予測値に、各ラグ変数がどれくらい寄与しているかを分析した結果である。
【0048】
ステップS74~S76の処理が行われると、時系列変数を条件としたループ処理を終了し(ステップS73b)、還元率算出部16は、jの値が「1」か否かを判断する(ステップS77)。
【0049】
ステップS77でjの値が「1」でない場合(ステップS77のNO)、還元率算出部16は、jの値を1つ減算し(ステップS78)、ステップS73aのループ処理に戻る。
また、ステップS77でjの値が「1」の場合(ステップS77のYES)、還元率算出部16は、ラグ変数寄与度データから寄与度還元率データを生成し、寄与度還元部17に出力する(ステップS79)。寄与度還元率データは、図22に示すようなデータである。
【0050】
図25は、寄与度還元部17が行う処理の手順を示すフローチャートである。
まず、寄与度還元部17は、対象時系列データに対する時間変数別寄与度データと、寄与度還元率データを取得する(ステップS81)。対象時系列データに対する時間変数別寄与度データは図25の右上に示すようなデータであり、寄与度還元率データは図25の右下に示すようなデータである。
【0051】
そして、寄与度還元部17は、寄与度還元率データを条件としたループ処理を開始する(ステップS82a)。
【0052】
ループ処理が開始されると、寄与度還元部17は、寄与度還元率データに従って、時間変数別寄与度データの各寄与度を還元元から還元先に還元する(ステップS83)。そして、寄与度還元部17は、寄与度還元率データを条件としたループ処理を終了する(ステップS82b)。
ループ処理が終了すると、寄与度還元部17は、還元済寄与度データを結果出力部18に出力する(ステップS84)。
【0053】
[要因分析画面の例]
図26は、結果出力部18としての表示部に表示される要因分析画面の例を示す。
この図26の要因分析画面では、時系列の実績データ、非時系列の実績データ、時系列の分析対象データ、及び非時系列の分析対象データを、それぞれ選択する項目が用意されている。図26の例では、ユーザは、それぞれのデータの保管場所(フォルダ)を指定して、要因分析対象のデータを指示するようにしている。
【0054】
また、要因分析画面には、データ読み込みボタン、目的変数の選択箇所、時間窓長の選択箇所、及び分析開始ボタンが表示されている。
データ読み込みボタンは、指示された要因分析対象のデータのユーザによる読み込み開始操作を受け付けるボタンである。
目的変数の選択箇所は、寄与度を得る目的変数のユーザによる選択を受け付ける箇所である。図26では、目的変数として「白濁度」を選んだ例が示されている。
時間窓長は、図12などで説明した時間窓長Tのユーザによる選択を受け付ける箇所である。
分析開始ボタンは、分析開始の操作を受け付けるボタンである。
【0055】
そして、分析開始の操作があると、図26に示すように、要因分析結果が表示される。
すなわち、図26の下側に示すように、要因分析画面には、分析対象データの時系列パターンのグラフと、目的変数である「白濁度」への寄与度推移のグラフと、根本要因に絞った寄与度推移のグラフとが表示される。
分析対象データの時系列パターンのグラフは、対象時間変数データを可視化したものであり、A温度、P圧力、・・・などの対象時間変数データの時間変化を示す。
目的変数である「白濁度」への寄与度推移のグラフは、還元済でない時系列変数別寄与度データを可視化したものであり、A温度、P圧力、・・・などの対象時間変数データの寄与度の時間変化を示す。
根本要因に絞った寄与度推移のグラフは、還元済の時系列変数別寄与度データを可視化したものであり、「白濁度」の根本原因である、A温度、P圧力、・・・などの寄与度の時間変化を示す。
【0056】
図26に示すような要因分析結果の表示が行われることで、還元済の寄与度である、「白濁度」の変化の根本原因に絞った寄与度の推移を表示することができる。したがって、元を辿ると、どの時点で、どの因子を、どうように制御したことが原因なのか、その根本因子に中間因子の影響を還元してユーザに提示することができる。
これにより、直接制御できない中間因子の影響を単純に非表示にするものとは異なり、要因分析時の根本原因の寄与度を提示できるようになる。
また、実施可能な対策検討を効率よく行うことが可能になる。さらに、特定した根本因子が人で制御できない因子である場合でも、設計変更などの対策検討にも活用できるようになる。
なお、白濁度への寄与度推移の表示として、図26に示すように根本原因の寄与度の推移のグラフを表示するだけでなく、還元済でない時系列変数別の寄与度データを可視化した寄与度推移のグラフを同時に表示してもよい。これにより、該当する根本原因が本当に原因であることが、表示から簡単にわかるようになる。この場合、根本原因であることがわかった後は、根本原因に絞った寄与度推移に切り替えることで、以後の検討が適切に行えるようになる。
【0057】
<第2の実施の形態例>
次に、本発明の第2の実施の形態例による時系列データの要因分析支援システム及び時系列データの要因分析支援方法を、図27図31を参照して説明する。
第2の実施の形態例は、第1の実施の形態例で説明した要因分析支援システムを適用して、その要因分析支援システムの結果出力部18で得られた結果に基づいて対策を検討し、その効果をシミュレーションするものである。要因分析支援システムが行う要因分析処理そのものは、図1図26で説明した構成及び処理と同じである。
【0058】
[対策検討画面の例]
図27は、表示部としての結果出力部18が、対策検討画面を表示した例を示す。
図27に示す対策検討画面では、「T温度」の推移詳細のグラフと、変更効果検証結果のグラフと、「白濁度」への寄与度推移のグラグとが表示されている。
「T温度」の推移詳細のグラフは、T温度の時間変化を示す特性Txと、その寄与度の変化αとを表示している。この図27の例では、寄与度αが、100時間を過ぎたあたりから高くなっている。
また、「T温度」の推移詳細のグラフは、T温度の基準値(破線)を表示している。
さらに、「T温度」の推移詳細のグラフの近傍には、データ変更ボタン、変更リセットボタン、及び効果検証実行ボタンが表示されている。
【0059】
ここで、ユーザの操作でデータ変更ボタンによりデータの変更が指示され、寄与度が高い区間で、T温度の変更後の変化Ty(太線)が指示されたとする。
これにより、変更効果検証結果のグラフに、変更後の効果が表示される。
すなわち、変更効果検証結果のグラフは、変更前のT温度の時間変化を示す特性Txと、その寄与度の変化αとを表示すると共に、変更後のT温度の時間変化を示す特性Tyと、その寄与度の変化βとを表示する。
また、変更効果検証結果のグラフの表示箇所には、寄与度の合計値と、表示変数の選択欄が表示される。図27は、表示変数の選択欄で「T温度」を選択した例を示す。
【0060】
本実施の形態例の要因分析支援システムは、推移詳細のグラフでデータが変更されたTyの内容(ここではT温度)を反映した時系列データを生成して、寄与度を算出し、予測器による白濁度の予測値などを実行した結果を可視化して表示する。
【0061】
また、「白濁度」への寄与度推移のグラフとして、A温度、B圧力、・・・などの「白濁度」への寄与度推移を表示する。この寄与度推移のグラフの表示箇所には、根本原因に絞った寄与度への切替えボタンが表示される。
この根本原因に絞った寄与度への切替えボタンのユーザ操作があるとき、寄与度推移のグラフは、白濁度の根本原因に寄与度を還元した結果のグラフに切り替わる。
【0062】
[対策検討内容を反映した事前効果検証の処理]
図28は、時系列データの要因分析支援システムが、図27で説明した対策検討内容を反映した事前効果検証の処理を行うための構成を示す。
まず、変更内容抽出部41は、結果出力部18における表示に伴った操作(図27の表示に伴った操作)を抽出し、変更内容データD11を得る。
この変更内容データD11は、変更データ生成部42に供給される。
【0063】
変更データ生成部42は、時系列因果モデル記憶部31から時系列因果モデルを取得すると共に、対象時系列データ記憶部23から対象時系列データについても取得する。
そして、変更データ生成部42は、変更内容データD11に基づいて変更後時系列データD12を生成し、生成した変更後時系列データD12を時間変数生成部13に供給する。
時間変数生成部13は、変更後時間変数データD13を生成し、寄与度算出部15に供給する。
寄与度算出部15は、変更後時間変数データD13についての寄与度を算出し、変更後時間変数別寄与度データD14を得る。この変更後時間変数別寄与度データD14は、結果出力部18により出力される。
【0064】
図29は、変更内容データD11の例を示す。
この変更内容データD11は、図27に示す画面上で、ユーザが特定の変数(ここでは温度T)について、指定した範囲(時刻102~232)の値を変更したデータの詳細である。
図30は、変更内容抽出部41における処理の手順を示すフローチャートである。
変更内容抽出部41は、対策検討画面(図27の画面)の推移詳細部で、ユーザが変更したデータの内容を変更内容データとして抽出する(ステップS91)。
次に、変更内容抽出部41は、ステップS91で抽出した変更内容データを変更データ生成部42に供給する(ステップS92)。
【0065】
図31は、変更データ生成部42の処理例を示すフローチャートである。
この変更データ生成部42は、変更内容データを基に、それに伴って変化する他の時系列変数の値を時系列因果モデルで推定し、変更後の対象時系列データ(変更後時系列データ)を生成する処理を行う。
すなわち、変更データ生成部42は、最初に変更内容データと対象時系列データを取得する(ステップS101)。
そして、変更データ生成部42は、変更内容データに基づき、対象時系列データの変更箇所を更新する(ステップS102)。
【0066】
次に、変更データ生成部42は、tを変更開始時刻+1の時刻とする(ステップS103)。その後、変更データ生成部42は、対象時系列データから時刻tに対するラグ変数を生成する(ステップS104)。そして、変更データ生成部42は、変更対象変数を除く時系列変数を条件としたループ処理を開始する(ステップS105a)。
ループ処理を開始すると、変更データ生成部42は、時系列因果モデル記憶部31から各時系列変数の因果モデルを取得する(ステップS106)。
【0067】
そして、変更データ生成部42は、時刻tに対するラグ変数を入力に、各時系列因果モデルで時刻tの各時系列変数の値を推定する(ステップS107)。推定値を取得すると、変更データ生成部42は、その推定値で対象時系列データにおける時刻tの各時系列変数の値を更新し(ステップS108)、ループ処理を終了する(ステップS105b)。
【0068】
その後、変更データ生成部42は、現在の時刻tの値が、対象時系列データの最終時刻か否かを判断する(ステップS109)。ステップS109で、現在の時刻tの値が対象時系列データの最終時刻でない場合(ステップS109のNO)、変更データ生成部42は、時刻tの値を1つ加算して、ステップS104の処理に戻る。
【0069】
また、ステップS109で、現在の時刻tの値が対象時系列データの最終時刻の場合(ステップS109のYES)、変更データ生成部42は、更新済の対象時系列データを変更後時系列データとして時間変数生成部13に出力する(ステップS111)。
【0070】
このように処理が行われることで、図27に示すような対策検討内容を反映した事前効果検証を行うことができる。また、対策検討内容を反映した事前効果検証ができることで、ユーザが簡単に対策案の効果を事前検証できるようになり、根本原因への適切な対処を見つけることが可能になる。
すなわち、対策検討時には、ノイズになる因子による影響を排除した上で、人が直接制御可能な因子のみに集約して品質悪化プロセスを提示することができ、対策検討時に解釈しなければならない要因を大幅に削減でき、実際に制御できる因子で対策が検討できるようになる。
【0071】
<変形例>
なお、ここまで説明した各実施の形態例は、本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、上述した各実施の形態例で説明した構成や処理は、各種変形や変更が可能である。
例えば、上述した各実施の形態例では、製造ラインにおいて、白濁度を改善するための根本原因として、温度などを制御する例を示したが、このような製造ライン以外に本発明を適用してもよい。
【0072】
また、図1に示す時系列データの要因分析支援システムは、3つの計算機10,20,30で構成した例を示すが、3つの計算機で構成するのは1つの例であり、この図1の構成に限定されない。
また、各計算機としては、例えば汎用のコンピュータに、各実施の形態例で説明した処理を実行するプログラムを実装して、時系列データの要因分析支援システムを構成してもよい。
この場合にコンピュータに実装するプログラムについては、外部のメモリ、ICカード、SDカード、光ディスク等の記録媒体に置いて、コンピュータに転送してもよい。
【0073】
また、図1などの構成図では、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものだけを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には殆ど全ての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0074】
1…プロセッサ、2…主記憶装置、3…副記憶装置、4…入力装置、5…出力装置、6…ネットワークインターフェース、10,20,30…計算機、11…予測器生成部、12…時系列因果モデル生成部、13…時間変数生成部、14…ラグ変数生成部、15…寄与度算出部、16…還元率算出部、17…寄与度還元部、18…結果出力部、19…予測器、21…実績時系列データ記憶部、22…実績非時系列データ記憶部、23…対象時系列データ記憶部、24…対象非時系列データ記憶部、31…時系列因果モデル記憶部、40…端末、41…変更内容抽出部、42…変更データ生成部、D1…実績時間変数データ、D2…実績ラグ変数データ、D3…時系列目的変数群データ、D4…対象時間変数データ、D5…時間変数別寄与度、D6…非時系列変数別寄与度、D7…対象ラグ変数データ、D8…寄与度還元率データ、D9…時間変数別寄与度、D10…還元済み寄与度データ、D11…変更内容データ、D12…変更後時系列データ、D13…変更後時間変数データ、D14…変更後時間変数別寄与度データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31