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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143610
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】環状オレフィン重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/08 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
C08G61/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056374
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110928
【弁理士】
【氏名又は名称】速水 進治
(72)【発明者】
【氏名】小田 隆志
(72)【発明者】
【氏名】大川 祐一
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032CA32
4J032CA38
4J032CA43
4J032CB01
4J032CB03
4J032CC03
4J032CD03
4J032CD04
4J032CE03
4J032CE22
4J032CF03
(57)【要約】
【課題】本発明は水添反応効率を向上できる環状オレフィン重合体の製造方法を提供するものである。
【解決手段】金属化合物触媒A、環状オレフィン重合体及び溶媒を含む溶液と、化合物Xとを混合する工程Xを含み、前記化合物Xが、水、アルコール及びチオールからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、環状オレフィン重合体の製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属化合物触媒A、環状オレフィン重合体及び溶媒を含む溶液と、化合物Xとを混合する工程Xを含み、
前記化合物Xが、水、アルコール及びチオールからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項2】
前記金属化合物触媒A中の金属元素の合計モル数(α)に対する前記化合物Xのモル数(β)の比である(β)/(α)が0.01以上100以下である、請求項1に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項3】
前記工程Xにおける溶液温度が0℃以上200℃以下である、請求項1又は2に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項4】
前記工程Xにおける混合時間が0.01時間以上50時間以下である、請求項1~3のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項5】
前記金属化合物触媒Aが、2価以上の酸化数状態を取り得る金属元素を含む、請求項1~4のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項6】
前記金属化合物触媒Aが環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1を含む、請求項1~5のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項7】
前記環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1が下記式(1)で表される有機金属錯体を含む、請求項6に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【化1】
前記式(1)中、Rはアルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルキルシリル基、又はアルケニル基であり、Rは、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、Nは窒素原子であり、Qは酸素又は硫黄原子であり、Eはエーテル、アルキルホスフィン、アリールホスフィン、アルコキシホスフィン、ピリジン、アルキルアミン又はアルキリデンアミンであり、Mはタンタル、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム又はオスニウムであり、mは1又は2であり、mが2の場合、Rは互いに結合してもよく、nは0又は1である。
【請求項8】
水添反応用金属化合物触媒Bの存在下、水素雰囲気下で、前記環状オレフィン重合体を水添する工程をさらに含む、請求項1~7のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項9】
前記水添反応用金属化合物触媒Bがルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、パラジウム、白金及びニッケルからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、請求項8に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項10】
前記水添反応用金属化合物触媒Bが下記式(2)で表される有機金属錯体を含む、請求項9に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【化2】
前記式(2)中、Mはルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、パラジウム、白金又はニッケルであり、Hは水素原子であり、Qは水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数6~14のアリール基を有するエステル基であり、前記アリール基はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基又はヒドロキシル基で置換されていてもよく、TはCO、NO、CN、トルエン、アセトニトリル又はテトラヒドロフランであり、ZはPRであり、Pはリン原子であり、R、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリロキシ基又はフェニル基であり、kは0又は1であり、mは1~3の整数であり、mが2以上の場合、Qは互いに結合してもよく、pは0又は1であり、qは2~4の整数であり、qが2以上の場合、Zは互いに結合してもよい。
【請求項11】
前記環状オレフィン重合体が下記式(3)で表される環状オレフィン化合物由来の構造単位を含む、請求項1~10のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【化3】
前記式(3)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基,アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン化アルキル基、シアノ基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよく、Xは-CH-又は-O-を示し、nは0~3の整数を表す。
【請求項12】
前記環状オレフィン重合体が炭素原子数2~20のα-オレフィン化合物由来の構造単位をさらに含む、請求項1~11のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項13】
前記溶媒がテトラヒドロフラン、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、MEK、MIBK,PGMEA、PGME、酢酸エチル及び酢酸メチルからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、請求項1~12のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項14】
工程1:環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1により環状オレフィン化合物を前記溶媒中で重合することで、前記環状オレフィン重合体を得る工程と、
工程2:前記環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1、前記環状オレフィン重合体及び前記溶媒を含む溶液と、前記化合物Xとを混合する前記工程と、
工程3:水添反応用金属化合物触媒Bの存在下、水素雰囲気下で、前記環状オレフィン重合体を水添する工程と、
工程4:水添後の前記環状オレフィン重合体を含む溶液から、金属元素を除去する工程と、
工程5:前記工程4で金属元素を除去した溶液から環状オレフィン重合体を回収する工程と、
を含む、請求項1~13のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【請求項15】
前記工程3後の環状オレフィン重合体を含む溶液中の前記水添反応用金属化合物触媒Bの金属元素含有量が200ppm以下である、請求項14に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン化合物の開環メタセシス重合体及び開環メタセシス重合体の水素添加物は優れた光学特性、電気特性、高剛性、耐熱性及び耐候性を有する樹脂として注目を浴び、各種の製造方法が提案されている。
【0003】
特許文献1には、低温で高水素添加率を達成でき、水素添加反応後の触媒除去が容易な水添脂環式オレフィン重合体の製造方法を提供することを目的として、ニッケル、パラジウム及び白金からなる群より選ばれる少なくとも一種の金属成分Aと、ジルコニウム、チタン及びハフニウムからなる群より選ばれる少なくとも一種の金属成分Bとを含有する水素添加触媒の存在下で、環式オレフィン重合体の芳香環及び/又は炭素-炭素不飽和結合に水素添加する水添脂環式オレフィン重合体の製造方法が開示されている。
【0004】
特許文献2には、従来法より高収率で、所望の分子量に制御することが容易な環状オレフィン系ポリマーの製造方法を提供することを課題とし、環状オレフィンモノマーを、触媒存在下、溶媒中で、マイクロ波を照射して重合する環状オレフィン系ポリマーの製造方法であって、前記溶媒は3以上の誘電率を有するものであることを特徴とする環状オレフィン系ポリマーの製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001-98017号公報
【特許文献2】特開2008-007697号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は水添反応効率を向上できる環状オレフィン重合体の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下に示す環状オレフィン重合体の製造方法が提供される。
【0008】
1. 金属化合物触媒A、環状オレフィン重合体及び溶媒を含む溶液と、化合物Xとを混合する工程Xを含み、
前記化合物Xが、水、アルコール及びチオールからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、環状オレフィン重合体の製造方法。
2. 前記金属化合物触媒A中の金属元素の合計モル数(α)に対する前記化合物Xのモル数(β)の比である(β)/(α)が0.01以上100以下である、1.に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
3. 前記工程Xにおける溶液温度が0℃以上200℃以下である、1.又は2.に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
4. 前記工程Xにおける混合時間が0.01時間以上50時間以下である、1.~3.のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
5. 前記金属化合物触媒Aが、2価以上の酸化数状態を取り得る金属元素を含む、1.~4.のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
6. 前記金属化合物触媒Aが環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1を含む、1.~5.のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
7. 前記環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1が下記式(1)で表される有機金属錯体を含む、6.に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【化1】
前記式(1)中、Rはアルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルキルシリル基、又はアルケニル基であり、Rは、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、Nは窒素原子であり、Qは酸素又は硫黄原子であり、Eはエーテル、アルキルホスフィン、アリールホスフィン、アルコキシホスフィン、ピリジン、アルキルアミン又はアルキリデンアミンであり、Mはタンタル、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム又はオスニウムであり、mは1又は2であり、mが2の場合、Rは互いに結合してもよく、nは0又は1である。
8. 水添反応用金属化合物触媒Bの存在下、水素雰囲気下で、前記環状オレフィン重合体を水添する工程をさらに含む、1.~7.のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
9. 前記水添反応用金属化合物触媒Bがルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、パラジウム、白金及びニッケルからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、8.に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
10. 前記水添反応用金属化合物触媒Bが下記式(2)で表される有機金属錯体を含む、9.に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【化2】
前記式(2)中、Mはルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、パラジウム、白金又はニッケルであり、Hは水素原子であり、Qは水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数6~14のアリール基を有するエステル基であり、前記アリール基はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基又はヒドロキシル基で置換されていてもよく、TはCO、NO、CN、トルエン、アセトニトリル又はテトラヒドロフランであり、ZはPRであり、Pはリン原子であり、R、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリロキシ基又はフェニル基であり、kは0又は1であり、mは1~3の整数であり、mが2以上の場合、Qは互いに結合してもよく、pは0又は1であり、qは2~4の整数であり、qが2以上の場合、Zは互いに結合してもよい。
11. 前記環状オレフィン重合体が下記式(3)で表される環状オレフィン化合物由来の構造単位を含む、1.~10.のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【化3】
前記式(3)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基,アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン化アルキル基、シアノ基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよく、Xは-CH-又は-O-を示し、nは0~3の整数を表す。
12. 前記環状オレフィン重合体が炭素原子数2~20のα-オレフィン化合物由来の構造単位をさらに含む、1.~11.のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
13. 前記溶媒がテトラヒドロフラン、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、MEK、MIBK,PGMEA、PGME、酢酸エチル及び酢酸メチルからなる群から選択される一種又は二種以上を含む、1.~12.のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
14. 工程1:環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1により環状オレフィン化合物を前記溶媒中で重合することで、前記環状オレフィン重合体を得る工程と、
工程2:前記環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1、前記環状オレフィン重合体及び前記溶媒を含む溶液と、前記化合物Xとを混合する前記工程と、
工程3:水添反応用金属化合物触媒Bの存在下、水素雰囲気下で、前記環状オレフィン重合体を水添する工程と、
工程4:水添後の前記環状オレフィン重合体を含む溶液から、金属元素を除去する工程と、
工程5:前記工程4で金属元素を除去した溶液から環状オレフィン重合体を回収する工程と、
を含む、1.~13.のいずれかに記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
15. 前記工程3後の環状オレフィン重合体を含む溶液中の前記水添反応用金属化合物触媒Bの金属元素含有量が200ppm以下である、14.に記載の環状オレフィン重合体の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、水添反応効率を向上できる環状オレフィン重合体の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法は、金属化合物触媒A、環状オレフィン重合体及び溶媒を含む溶液と、化合物Xとを混合する工程Xを含み、前記化合物Xが、水、アルコール及びチオールからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0011】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法によると、得られる環状オレフィン重合体の水添反応効率を向上できる。そして、本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法によると、水添反応効率を向上できるため、触媒使用量を低減できる。さらに、本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法によると、水添反応効率を向上できるため、より低温・低圧での反応が可能である。
【0012】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法により触媒使用量を低減できるメカニズムは明らかでないが、以下のメカニズムが推測される。
【0013】
まず、環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1を用いて環状オレフィン化合物を重合し、その後、水添反応用金属化合物触媒Bを用い環状オレフィン重合体を水添する場合、環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1と水添反応用金属化合物触媒Bが錯体を形成すると推測される。そうすると、錯体を形成した水添反応用金属化合物触媒Bは触媒として作用できなくなる。そのため、従来は、錯体形成分を見越して、水添反応用金属化合物触媒Bを過剰量使用していた。
【0014】
本発明者は水添反応用金属化合物触媒Bの使用量を減らすべく検討をおこなった結果、水、アルコール及びチオールからなる群から選択される一種又は二種以上を含む化合物Xにより、水添反応用金属化合物触媒Bの使用量を減らせることを見出した。
化合物Xにより水添反応用金属化合物触媒Bの使用量を減らすことができるメカニズムは明らかではないが、化合物Xに含まれる水分子、ヒドロキシ基又はチオール基が環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1に作用し、水添反応用金属化合物触媒Bとの錯体形成が阻害されるというメカニズムが推測される。
【0015】
以下、本実施形態に係る環状オレフィン化合物の製造方法が含む製造工程にいて説明する。
<工程X>
以下、本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法は、金属化合物触媒A、環状オレフィン重合体及び溶媒を含む溶液と、化合物Xとを混合する工程Xについて説明する。
【0016】
化合物Xは、水、アルコール及びチオールからなる群から選択される一種又は二種以上を含み、金属化合物触媒Aとの反応性の観点から、好ましくは水及びアルコールからなる群から選択される一種又は二種を含み、より好ましくは水を含む。
【0017】
前記溶媒が水との混和性に優れる場合、化合物Xは水を含むことが好ましい。水との混和性に優れる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、1,4-ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアルデヒド、ピリジン、酢酸2-メトキシー1-メチルエチル、エチルエーテル及びエチルアセテートなどを挙げることができる。
一方、前記溶媒が炭化水素系溶媒など水との混和性に乏しい場合、化合物Xはアルコール及びチオールからなる群から選択される一種又は二種を含むことが好ましい。
【0018】
化合物Xが含有するアルコール及びチオールの種類は特に限定されないが、環状オレフィン重合体の精製工程において除去が容易であるという観点から、好ましくは炭素数1以上15以下、より好ましくは炭素数1以上10以下、更に好ましくは炭素数1以上6以下である。
【0019】
前記金属化合物触媒A中の金属元素の合計モル数(α)に対する前記化合物Xのモル数(β)の比である(β)/(α)は、水添反応効率をより一層向上させる観点から、好ましくは0.01以上、より好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.4以上であり、そして、溶剤の液性変化による環状オレフィン化合物の析出を防止し、水添後の環状オレフィン重合体を含む溶液から金属元素を除去する工程、金属元素を除去した溶液から環状オレフィン重合体を回収する工程を効果的に実施する観点から、好ましくは100以下、より好ましくは50以下、さらに好ましくは30以下、さらに好ましくは20以下、さらに好ましくは15以下である。
【0020】
前記工程Xにおける溶液温度は特に限定されないが、化合物Xと金属化合物触媒Aとの反応性を向上させる観点から、好ましくは0℃以上、より好ましくは10℃以上、さらに好ましくは15℃以上、さらに好ましくは20℃以上であり、そして、引火や爆発を防止する等の安全性や環状オレフィン重合体の熱分解を抑制する観点から、好ましくは200℃以下、より好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下、さらに好ましくは75℃以下である。
【0021】
前記工程Xにおける混合時間は特に限定されないが、好ましくは0.01時間以上、より好ましくは0.1時間以上、さらに好ましくは0.8時間以上であり、そして、好ましくは50時間以下、より好ましくは30時間以下、さらに好ましくは12時間以下である。
【0022】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法において、金属化合物触媒Aは特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0023】
前記金属化合物触媒Aは、2価以上の酸化数状態を取り得る金属元素を含むことが好ましい。2価以上の酸化数状態を取り得る金属元素としては、タンタル、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム又はオスニウムを挙げることができる。
【0024】
<他の工程>
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法は、上述した工程X以外の工程を備えてもよい。
【0025】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法は、好ましくは、工程1:環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1により環状オレフィン化合物を前記溶媒中で重合することで、前記環状オレフィン重合体を得る工程と、工程2:前記環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1、前記環状オレフィン重合体及び溶媒を含む溶液と、前記化合物Xとを混合する工程と、工程3:水添反応用金属化合物触媒Bの存在下、水素雰囲気下で、前記環状オレフィン重合体を水添する工程と、工程4:水添後の前記環状オレフィン重合体を含む溶液から、金属元素を除去する工程と、工程5:前記工程4で金属元素を除去した溶液から環状オレフィン重合体を回収する工程と、を含む。
【0026】
なお、工程1~5の順序は特に限定されず、環状オレフィン重合体が製造可能であれば任意の順序でおこなってよい。また、工程1~5はそれぞれ複数回おこなってもよい。
【0027】
以下、工程1~5について説明する。
【0028】
工程1は、環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1の存在下、環状オレフィン化合物を前記溶媒中で重合することにより、前記環状オレフィン重合体を得る工程である。
【0029】
工程1の温度は特に限定されないが、環状オレフィン重合体の溶解性の観点及び重合反応促進の観点等から、例えば20℃以上、好ましくは30℃以上、より好ましくは40℃以上、さらに好ましくは50℃以上、さらに好ましくは60℃以上であり、そして、環状オレフィン重合体の熱分解抑制の観点及び安全性の観点等から、例えば200℃以下、好ましくは180℃以下、さらに好ましくは150℃以下、さらに好ましくは100℃以下、さらに好ましくは80℃以下である。
【0030】
工程1の時間は特に限定されないが、例えば0.1時間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは5時間以上であり、そして、例えば40時間以下、好ましくは30時間以下、より好ましくは20時間以下、さらに好ましくは15時間以下、さらに好ましくは10時間以下である。
【0031】
工程1においては、環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1の失活を抑制するため反応溶液中に水が含まれないことが好ましい。そのため、工程1においては、あらかじめ脱水処理をした溶媒を用いることが好ましい。また、環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1の種類によっては酸素で失活するため、反応溶液中に酸素が含まれないことが好ましい。そのため、工程1においては、あらかじめ脱酸素処理をした溶媒を用いることが好ましい。
溶媒の脱水や脱酸素処理の方法は特に限定されない。脱水処理について、例えば、蒸留や脱水剤を用いる方法、あるいはそれらを併用する方法が用いられる。脱酸素処理について、例えば、加圧窒素で酸素を置換する方法や脱酸素剤を用いる方法、あるいはそれらを併用する方法が用いられる。
【0032】
工程1においては、分子量や分子量分布を調整することを目的に1,5-ヘキサジエンなどオレフィンからなる連鎖移動剤と共存させてもよい。また、本実施形態を妨げない範囲で、溶剤の安定剤などの他の成分が共存していてもよい。
【0033】
工程1を終えた後、n-ブチルアルデヒド等のアルデヒド類、アセトン等のケトン類、メタノール等のアルコール類及び水等の重合停止剤を添加して重合を停止させてもよい。重合停止剤として水、アルコール類を用いる場合、環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1の種類によっては、後述する工程2の化合物Xを兼ねてもよい。
【0034】
工程2は、環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1、環状オレフィン重合体及び溶媒を含む溶液と、化合物Xとを混合する工程である。つまり、前述した工程Xのことである。
【0035】
工程3は、水添反応用金属化合物触媒Bの存在下、水素雰囲気下で、前記環状オレフィン重合体を水添する工程である。
【0036】
工程3での水素添加の圧力は特に限定されないが、水添反応促進の観点から、例えば0.1MPa以上、好ましくは1MPa以上、より好ましくは5MPa以上、さらに好ましくは7MPa以上であり、例えば50MPa以下、好ましくは20MPa以下、より好ましくは15MPa以下、さらに好ましくは10MPa以下である。
【0037】
工程3の温度は特に限定されないが、環状オレフィン重合体の溶解性の観点及び水添反応促進の観点等から、例えば20℃以上、好ましくは40℃以上、より好ましくは60℃以上、さらに好ましくは80℃以上、さらに好ましくは100℃以上であり、そして、環状オレフィン重合体の熱分解抑制の観点及び安全性の観点等から、例えば200℃以下、好ましくは180℃以下、さらに好ましくは160℃以下である。
【0038】
工程3の時間は特に限定されないが、例えば0.1時間以上、好ましくは1時間以上、より好ましくは5時間以上、さらに好ましくは10時間以上であり、そして、例えば60時間以下、好ましくは40時間以下、より好ましくは20時間以下、さらに好ましくは18時間以下である。
【0039】
工程3では、水添反応促進の観点から、トリエチルアミン等のアミンを添加してもよい。
【0040】
工程3後の環状オレフィン重合体を含む溶液中の水添反応用金属化合物触媒Bの金属元素含有量は、好ましくは200ppm以下、より好ましくは100ppm以下、さらに好ましくは50ppm以下である。水添反応用金属化合物触媒Bの使用量を効果的に削減できるメカニズムは明らかではないが、工程2において、水、アルコール及びチオールからなる群から選択される一種又は二種以上を含む化合物Xと環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1を作用させることにより、従来は錯体形成分を見越して過剰量使用していた水添反応用金属化合物触媒Bの使用量を効果的に削減できると考えられる。
【0041】
工程1~3の順序は特に限定されないが、工程1~3の順でおこなうことが好ましい。これにより、まず、工程1で用いた環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1に対して、工程2において化合物Xが作用する。そして、環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1と化合物Xが作用することにより工程3での水添反応効率がより一層向上する。
【0042】
工程4は、水添後の前記環状オレフィン重合体を含む溶液から、環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1と水添反応用金属化合物触媒Bの金属元素を除去する工程である。金属元素を除去する方法は特に限定されず、水洗、濾過処理、吸着処理など任意の方法で除去することができる。なお、工程4では二種類以上の方法を併用してもよい。
【0043】
水洗による金属元素の除去は、工程3後の溶液と酸性又は塩基性の水溶液を接触させることによりおこなうことができる。すなわち、工程3後の溶液と酸性又は塩基性の水溶液を接触させることにより、環状オレフィン重合体は有機溶媒層に溶解し、金属化合物触媒AおよびB由来の金属元素はイオン化して水層に溶解する。このようにして金属元素が除去される。本法は、有機溶媒層と酸性または塩基性の水溶液とを再度接触させて繰り返し実施してもよい。
【0044】
また、金属元素を除去しやすくするために、濾過処理や吸着処理をおこなう前に、反応溶液にピコリン酸やイソニコチン酸などの錯化剤を添加して、反応溶液に不溶な錯化物を形成させて濾過処理で金属元素を除去してもよい。なお、錯化物が不溶化しにくい場合、錯化物を酸性や塩基性の吸着剤と接触させて除去してもよい。なお、金属化合物触媒の種類や、環状オレフィン重合体の用途に応じた残留金属元素の管理基準などによっては、錯化剤を使用せず工程3後の溶液を直接吸着剤と接触させて金属元素を除去してもよい。
【0045】
濾過処理に用いる濾過材は特に限定されないが、不溶成分の種類、濾過材の性能等によって、セルロース繊維、高分子繊維等を選択することができる。セルロース繊維の濾過材としては濾紙が好ましく、炭化水素系高分子繊維の濾過材としてはポリプロピレン、テフロン(登録商標)が好ましい。また濾過材は洗浄して再度使用してもよい。
【0046】
濾過処理における濾過方法としては、加圧濾過、減圧濾過等があげられ、いずれの方法でも特に制限は無い。加圧濾過の際の圧力は特に限定されず、例えば1×10Pa以上、好ましくは1×10Pa以上であり、そして、例えば1×10Pa以下である。また、減圧濾過の際の圧力も特に限定されず、大気圧未満であれば特に制限は無い。
【0047】
濾過材の孔径は、例えば0.01μm以上、好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.1μm以上、さらに好ましくは0.5μm以上であり、例えば50μm以下、好ましくは20μm以下、さらに好ましくは10μm以下、さらに好ましくは5μm以下、さらに好ましくは1μm以下である。なお、孔径の異なる濾過材を用いて多段で濾過を行ってもよい。
【0048】
吸着処理に用いる吸着剤は特に限定されないが、ピコリン酸やイソニコチン酸など酸性官能基を有する錯化剤由来の錯化物を吸着する場合、塩基性の官能基を有する塩基性吸着剤を用いるのがよい。また、塩基性吸着剤から溶出する塩基性成分を除去する目的で、酸性の官能基を有する酸性吸着剤を併用してもよい。
【0049】
前記塩基性の吸着剤は、例えば、-N(CHOHを有するスチレン系イオン交換樹脂、-N(CH(COH)OHを有するスチレン系イオン交換樹脂、-NH(CHCHNH)H(n=1~10)を有するスチレン系イオン交換樹脂、-N(CHを有するスチレン系イオン交換樹脂、-N(CHCOONa)を有するスチレン系イオン交換樹脂、-N(CHCOOH)を有するスチレン系イオン交換樹脂、ピリジン環を有するスチレン系イオン交換樹脂、-N(CHを有するアクリル系イオン交換樹脂、チオ尿素残基を有するスチレン系イオン交換樹脂、-N(CH)CH[CH(OH)]CHOHを有するスチレン系イオン交換樹脂、-P(=O)(OCHNHを有するスチレン系イオン交換樹脂、ジ-2-エチルヘキシルホスフェートを含浸させたポリスチレン系イオン交換樹脂及び-NH(CHCHNH)H(n=1~20)を有するエポキシ系イオン交換樹脂からなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0050】
前記酸性の吸着剤は、例えば、-SOHを有するスチレン系イオン交換樹脂、-COOHを有するスチレン系イオン交換樹脂、-COOHを有するアクリル系イオン交換樹脂、-COOHを有するメタクリル系イオン交換樹脂及びフェノール系イオン交換樹脂等の酸性官能基を有するイオン交換樹脂からなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0051】
吸着剤と溶液の接触方法は特に限定されず、例えば、内部に吸着剤が固定された容器に溶液を通液することにより吸着させてもよいし、粒子状の吸着剤と溶液を攪拌することにより吸着させ、その後吸着剤を濾過などにより分離してもよい。
【0052】
工程5は、前記工程4で金属元素を除去した溶液から環状オレフィン重合体を回収する工程である。
【0053】
溶液から環状オレフィン重合体を回収する方法は本実施形態の環状オレフィン重合体の使用目的や生産性を考慮して適宜選択されるものであり、特に限定されず、例えば、溶液を純水などの貧溶剤に投入して環状オレフィン重合体を析出させ、析出した環状オレフィン重合体を濾別分離し、回収する方法;溶液中にスチームを吹き込むスチームストリッピング法によりポリマーを析出させ、析出した環状オレフィン重合体を濾別分離し、回収する方法;溶液を加熱等し、溶液から溶剤を蒸発除去することにより環状オレフィン重合体を回収する方法等が挙げられる。
【0054】
回収した環状オレフィン重合体を乾燥する方法は特に限定されないが、加熱乾燥機で乾燥する方法が好ましく用いられる。この際の加熱は例えば20℃~200℃の範囲で行われ、好ましくは20℃~150℃、より好ましくは20℃~100℃である。析出したポリマーの形状(粉体、糸状など)やガラス転移温度などを考慮して好適に選ばれる。また、乾燥効率やポリマーの熱分解を考慮して減圧環境下で乾燥してもよい。
【0055】
以下、本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法に登場する触媒、重合体及び溶媒等について説明する。
【0056】
本実施形態に係る金属化合物触媒Aは、好ましくは環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1を含む。
【0057】
<環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1>
以下、本実施形態に係る環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1について説明する。
【0058】
環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1は特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0059】
環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1が含む金属元素は特に限定されないが、重合性を向上させる観点から、例えば、タンタル、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム、オスニウム、イリジウム、チタン、パラジウム及びロジウムからなる群から選択される一種又は二種以上を含み、好ましくは、タンタル、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム及びオスニウムからなる群から選択される一種又は二種以上を含み、さらに好ましくはモリブデン、タングステン及びルテニウムからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1としては、Schrock触媒と呼ばれるモリブデン、もしくは、タングステンのアルキリデン触媒や、Ru-Grubbs触媒と呼ばれるルテニウムアルキリデン触媒などを例示できる。
【0060】
環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1は、重合性を向上させる観点から、好ましくは遷移金属窒化物を含む。
【0061】
前記環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1は、重合性を向上させる観点から、より好ましくは下記式(1)で表される有機金属錯体を含む。
【0062】
【化4】
【0063】
前記式(1)中、Rはアルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、好ましくは置換アリール基であり、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、置換アルキル基、アリール基、置換アリール基、アルキルシリル基又はアルケニル基であり、好ましくは水素又は置換アルキル基であり、Rは、アルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基又は置換アリール基であり、好ましくはアルキル基又はハロゲン化アルキル基であり、Nは窒素原子であり、Qは酸素又は硫黄原子であり、好ましくは酸素原子であり、Eはエーテル、アルキルホスフィン、アリールホスフィン、アルコキシホスフィン、ピリジン、アルキルアミン又はアルキリデンアミンであり、Mはタンタル、バナジウム、モリブデン、タングステン、レニウム、ルテニウム又はオスニウムであり、好ましくはモリブデン又はタングステンであり、mは1又は2であり、mが2の場合、Rは互いに結合してもよく、nは0又は1である。
【0064】
前記式(1)で表される有機金属錯体は、例えば、W(N-2,6-Pr )(CHBu)(OBu、W(N-2,6-Pr )(CHBu)(OCMeCF、W(N-2,6-Pr )(CHBu)(OCMe(CF、W(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OBu、W(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OCMeCF、W(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OCMe(CF、W(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OC(CF、W(N-2,6-Me)(CHCMePh)(OC(CF等のタングステン系アルキリデン触媒;W(N-2,6-Me)(CHCHCMePh)(OBu(PMe)、W(N-2,6-Me)(CHCHCMe)(OBu(PMe)、W(N-2,6-Me)(CHCHCPh)(OBu(PMe)、W(N-2,6-Me)(CHCHCMePh)(OCMe(CF))(PMe)、W(N-2,6-Me)(CHCHCMe)(OCMe(CF))(PMe)、W(N-2,6-Me)(CHCHCPh)(OCMe(CF))(PMe)、W(N-2,6-Me)(CHCHCMe)(OCMe(CF(PMe)、W(N-2,6-Me)(CHCHCMe)(OCMe(CF(PMe)、W(N-2,6-Me)(CHCHCPh)(OCMe(CF(PMe)、W(N-2,6-Pr )(CHCHCMePh)(OCMe(CF))(PMe)、W(N-2,6-Pr )(CHCHCMePh)(OCMe(CF(PMe)、W(N-2,6-Pr )(CHCHCMePh)(OPh)(PMe)等のタングステン系アルキリデン触媒;Mo(N-2,6-Pr )(CHBu)(OBu、Mo(N-2,6-Pr )(CHBu)(OCMeCF、Mo(N-2,6-Pr )(CHBu)(OCMe(CF、Mo(N-2,6-Pr )(CHBu)(OC(CF、Mo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OBu、Mo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OCMeCF、Mo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OCMe(CF、Mo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OC(CF、Mo(N-2,6-Me)(CHCMePh)(OBu、Mo(N-2,6-Me)(CHCMePh)(OCMeCF、Mo(N-2,6-Me)(CHCMePh)(OCMe(CF、Mo(N-2,6-Me)(CHCMePh)(OC(CF、Mo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OCMe等のモリブデン系アルキリデン触媒;Ru(P(C11(CHPh)Cl等のルテニウム系アルキリデン触媒等からなる群から選択される一種又は二種以上を含む。式中のPrはiso-プロピル基、Buはtert-ブチル基、Meはメチル基、Phはフェニル基を表す。
【0065】
前記式(1)で表される有機金属錯体は配位子としてイミノ配位子を含み、これが酸化するとニトロ化合物になる。ニトロ化合物になると金属元素に配位できなくなるため、有機金属錯体に空位が生じる。このようにして生じた空位に錯化剤が配位し、錯化物が形成されることにより濾過処理や吸着処理等が容易になると考えられる。
【0066】
本実施形態に係る環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1の量は、環状オレフィン重合体の原料モノマーのモル数(a)を環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1のモル数(b)で除した値である(a)/(b)により示すことができる。すなわち、(a)/(b)が大きいほど原料モノマーに対する環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1の量が小さい。(a)/(b)は、水添反応効率をより一層向上させる観点から、例えば10以上、好ましくは100以上、より好ましくは500以上、さらに好ましくは1,000以上、さらに好ましくは2,000以上、さらに好ましくは4,000以上であり、そして、重合を促進させる観点から、例えば100,000以下、好ましくは50,000以下、より好ましくは20,000以下、さらに好ましくは15,000以下、さらに好ましくは12,000以下である。
【0067】
<水添反応用金属化合物触媒B>
以下、水添反応用金属化合物触媒Bについて説明する。
【0068】
本実施形態の環状オレフィン重合体の製造方法は、水添反応用金属化合物触媒Bの存在下、水素雰囲気下で、前記環状オレフィン重合体を水添する工程をさらに含むことが好ましい。
【0069】
前記水添反応用金属化合物触媒Bは特に限定されず、公知のものを用いることができる。
【0070】
前記水添反応用金属化合物触媒Bは、水添反応性をより一層向上させる観点から、好ましくはルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、パラジウム、白金及びニッケルからなる群から選択される一種又は二種以上を含み、より好ましくはルテニウム、ロジウム及びパラジウムからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0071】
前記水添反応用金属化合物触媒Bは、水添反応性をより向上させる観点から、より好ましくは下記式(2)で表される有機金属錯体を含む。
【0072】
【化5】
【0073】
前記式(2)中、Mはルテニウム、ロジウム、オスミウム、イリジウム、パラジウム、白金又はニッケルであり、好ましくはルテニウム、ロジウム又はパラジウムであり、より好ましくはロジウムであり、Hは水素原子であり、Qは水素原子、ハロゲン原子、又は炭素数6~14のアリール基を有するエステル基であり、好ましくはハロゲン原子であり、より好ましくは塩素原子であり、前記アリール基はアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アミノ基、ニトロ基、シアノ基、カルボキシル基もしくはヒドロキシル基で置換されていてもよく、TはCO、NO、CN、トルエン、アセトニトリル又はテトラヒドロフランであり、好ましくはCOであり、ZはPRであり、Pはリン原子であり、R、R及びRは、それぞれ独立に、直鎖、分岐又は環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基、アルコキシ基、アリロキシ基又はフェニル基であり、好ましくはアリール基又はフェニル基であり、より好ましくはフェニル基であり、kは0又は1であり、mは1~3の整数であり、mが2以上の場合、Qは互いに結合してもよく、pは0又は1であり、qは2~4の整数であり、qが2以上の場合、Zは互いに結合してもよい。
【0074】
前記式(2)で表される有機金属錯体は、例えば、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)白金、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)オスミウム、ジクロロヒドリドビス(トリフェニルホスフィン)イリジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロテトラキス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、トリクロロニトロシルビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロビス(アセトニトリル)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロビス(テトラヒドロフラン)ビス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリド(トルエン)トリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(ジエチルフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドニトロシルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリメチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリエチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリメチルジフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリジメチルフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリo-トリルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(ジクロロエチルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(ジクロロフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロトリス(トリメチルホスフィト)ルテニウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィト)ルテニウム及び[1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム(II)ジクロリドからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0075】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法における前記水添反応用金属化合物触媒Bの量は、水添反応用金属化合物触媒Bの質量(d)を環状オレフィン重合体の原料モノマーの質量(c)で除した値である(d)/(c)により示すことができる。すなわち、(d)/(c)が大きいほど原料モノマーに対する水添反応用金属化合物触媒Bの量が大きい。(d)/(c)は、水添反応をより一層促進させる観点から、例えば1ppm以上、好ましくは10ppm以上、より好ましくは50ppm以上、さらに好ましくは80ppm以上であり、環状オレフィン重合体中の残留金属量を低減させる観点から、例えば1000ppm以下、好ましくは800ppm以下、より好ましくは600ppm以下、さらに好ましくは400ppm以下、さらに好ましくは320ppm以下である。
【0076】
前記式(2)において、Mは、水添反応性をより向上させる観点から、好ましくはルテニウム、ロジウム及びパラジウムからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0077】
前記式(2)において、ZのR、R及びR、M並びにqの組合せは、水添反応性をより向上させる観点から、Mがルテニウムであり、R、R及びRがフェニル基であり、qが2又は3であることがより好ましい。
【0078】
<環状オレフィン重合体>
【0079】
以下、環状オレフィン重合体について説明する。
【0080】
本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法において、前記環状オレフィン重合体が含む構造単位は特に限定されず、例えば、シクロペンテン等公知のオレフィン化合物由来の構造単位を含む。
【0081】
前記環状オレフィン重合体が含む構造単位は、例えば、5,5,6-トリフルオロ-6-トリフルオロメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン等のフルオロアルキル基を有する環状オレフィン化合物由来の構造単位を含んでもよいし、4,10-ジオキサ-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン-3-オン等の環状エステル構造を有する環状オレフィン化合物由来の構造単位を含んでもよい。
【0082】
前記環状オレフィン重合体は、好ましくは下記式(3)で表される環状オレフィン化合物由来の構造単位を含む。
【0083】
【化6】
【0084】
前記式(3)中、R~Rは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~12のアルキル基,アリール基、アラルキル基、アルコキシ基、炭素数1~12のハロゲン化アルキル基、シアノ基、カルボキシル基又はアルコキシカルボニル基から選ばれ、R~Rは互いに結合して環構造を形成していてもよく、Xは-CH-又は-O-を示し、nは0~3の整数を表す。
【0085】
前記式(3)においてn=0、Xが-CH-である環状オレフィンモノマーは、例えば、5-メトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-プロポキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソプロポキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-ブトキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソブトキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(tert-ブトキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロペンチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロオクチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ノルボルニルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルシクロペンチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルノルボルニルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルノルボルニルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシプロピルオキシオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-アダマンチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-アダマンチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-プロポキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソプロポキシメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-ブトキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-メチル-プロポキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(tert-ブトキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシルオキシメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロオクチルオキシメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルシクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルシクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシプロピルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロフラン2-イルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-アダマンチルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-アダマンチルオキシメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-プロポキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソプロポキシカルボニルメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-ブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(tert-ブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロオクチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ノルボニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルシクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシプロピルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-アダマンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-アダマンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シアノ-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シアノメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シアノエチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン及び5-シアノプロピル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エンからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0086】
前記式(3)においてn=0、Xが-O-である環状オレフィンモノマーは、例えば、5-メトキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-プロポキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソプロポキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-ブトキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソブトキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(tert-ブトキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロペンチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロオクチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ノルボルニルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルシクロペンチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルノルボルニルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルノルボルニルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシプロピルオキシオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-アダマンチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-アダマンチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-プロポキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソプロポキシメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-ブトキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-メチル-プロポキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(tert-ブトキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシルオキシメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロオクチルオキシメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルシクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルシクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシプロピルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-アダマンチルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-アダマンチルオキシメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-メトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-エトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-プロポキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソプロポキシカルボニルメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(n-ブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-イソブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(tert-ブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シクロオクチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-ノルボニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルシクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-メチルノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エチルノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシプロピルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(テトラヒドロピランー2-イルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(1-アダマンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-(2-アダマンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シアノ-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シアノメチル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン、5-シアノエチル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン及び5-シアノプロピル-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エンからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0087】
前記式(3)においてn=1、Xが-CH-である環状オレフィンモノマーは、例えば、テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン、8-メトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-エトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-プロポキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソプロポキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-ブトキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソブトキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(tert-ブトキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロペンチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロヘキシルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロオクチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-ノルボルニルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルシクロペンチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルノルボルニルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルノルボルニルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシプロピルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-アダマンチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(2-アダマンチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-メトキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-エトキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-プロポキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソプロポキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-ブトキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソブトキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(tert-ブトキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロヘキシルオキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロオクチルオキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-ノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルシクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルシクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシプロピルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロピランー2-イルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-アダマンチルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(2-アダマンチルオキシメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-メトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-エトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-プロポキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソプロポキシカルボニルメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-ブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(tert-ブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロオクチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-ノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルシクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシプロピルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-アダマンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(2-アダマンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シアノ-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シアノメチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シアノエチル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン及び8-シアノプロピル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0088】
前記式(3)においてn=1、Xが-O-である環状オレフィンモノマーは、例えば、8-メトキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-エトキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-プロポキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソプロポキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-ブトキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソブトキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(tert-ブトキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロペンチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロヘキシルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロオクチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-ノルボルニルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルシクロペンチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルノルボルニルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルノルボルニルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシプロピルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-アダマンチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(2-アダマンチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-メトキシメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-エトキシメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-プロポキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソプロポキシメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-ブトキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソブトキシメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(tert-ブトキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロヘキシルオキシメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロオクチルオキシメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-ノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルシクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルシクロペンチルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルノルボルニルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシプロピルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-アダマンチルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(2-アダマンチルオキシメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-メトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-エトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-プロポキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソプロポキシカルボニルメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(n-ブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-イソブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(tert-ブトキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロヘキシルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シクロオクチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-ノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルシクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-メチルノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エチルノルボルニルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシプロピルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-エトキシ-1-メチルエチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロフラン-2-イルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(テトラヒドロピラン-2-イルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(1-アダマンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-(2-アダマンチルオキシカルボニルメチルオキシカルボニル)-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シアノ-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シアノメチル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン、8-シアノエチル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン及び8-シアノプロピル-11-オキサテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセンからなる群から選択される一種又は二種以上を含む。
【0089】
前記環状オレフィン重合体は、好ましくは炭素原子数2~20のα-オレフィン化合物由来の構造単位をさらに含む。
【0090】
前記炭素原子数2~20のα-オレフィン化合物は直鎖状でも分岐状でもよく、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセン等の炭素原子数が2~20の直鎖状α-オレフィン;4-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン等の炭素原子数が4~20の分岐状α-オレフィン等からなる群から選択される一種又は二種以上を含み、好ましくは炭素原子数が2~4の直鎖状α-オレフィンを含み、より好ましくはエチレンを含む。
【0091】
<溶媒>
以下、溶媒について説明する。
【0092】
前記溶媒は、環状オレフィン重合体を溶解しやすいという観点から、好ましくはテトラヒドロフラン、トルエン、シクロヘキサン、シクロヘキサノン、MEK(メチルエチルケトン)、MIBK(メチルイソブチルケトン),PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート)、PGME(プロピレングリコールモノメチルエーテル)、酢酸エチル及び酢酸メチルからなる群から選択される一種又は二種以上を含み、さらに弱配位性であり金属元素の除去が阻害されにくいという観点、及び化合物Xとして機能する水との親和性が高いという観点から、より好ましくはテトラヒドロフランを含む。
【0093】
本実施形態に係る溶媒の量は、溶媒の種類や環状オレフィン重合体の溶解性、及び生産性を考慮して適宜選択されるものであり特に限定されないが、前記環状オレフィン重合体の原料モノマー1モルに対して、例えば5モル以上、好ましくは10モル以上、より好ましくは15モル以上であり、そして、例えば50モル以下、好ましくは40モル以下、より好ましくは30モル以下である。
【0094】
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【実施例0095】
以下、実施例及び比較例を挙げて本開示を更に詳細に説明するが、本開示は何らこれに制約されるものではない。なお、実施例及び比較例の部数は特に断りが無い場合、質量基準である。
【0096】
まず、下記の手順により環状オレフィン重合体を合成し、環状オレフィン重合体溶液を得た。
【0097】
(合成例1~5)
まず、窒素雰囲気下で磁気攪拌装置を備えたオートクレーブに表1に記載された量の環状オレフィンモノマーを加え、さらに、1モルの環状オレフィンモノマーに対して、溶媒として16モルのテトラヒドロフラン(以下THFと記す)と連鎖移動剤として0.13モルの1,5-ヘキサジエンを加え、環状オレフィン化合物をTHFに溶解させ、攪拌を行った。ここに表1に記載された量の環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1を加え、60℃で6時間反応させた。次いで、1モルの環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1に対し重合停止剤として3モルのn-ブチルアルデヒドを加えた。
【0098】
(合成例6)
溶媒として1モルの環状オレフィンモノマーに対して18モルのシクロヘキサンを使用したこと以外は合成例1~5と同様にして環状オレフィン重合体溶液を得た。
【0099】
ここで、表1に記載された環状オレフィンの略称は下記の通りである。
8-(1-エチルシクロペンチルオキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(略称:M1)
8-メトキシメチルオキシカルボニル-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(略称:M2)
8-シアノ-テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(略称:M3)
5,5,6-トリフルオロ-6-トリフルオロメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(略称:M4)
テトラシクロ[6.2.1.13,6.02,7]ドデカ-4-エン(略称:M5)
4,10-ジオキサ-トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ-8-エン-3-オン(略称:M6)
【0100】
ここで、表1に記載された環状オレフィン重合用金属化合物触媒A1の略称は下記の通りである。
Mo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OCMe(CF2(略称:MF6)
Mo(N-2,6-Me)(CHCMePh)(OC(CF(略称:MF12)
W(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OCMe(CF(略称:W-F6)
Mo(N-2,6-Pr )(CHCMePh)(OCMe(略称:MF0)
ベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウム(略称:Ru-Grubbs)
【0101】
【表1】
【0102】
(実施例1~8)
上記の方法により得られた環状オレフィン重合体溶液をオートクレーブに入れ、窒素置換した後に、表2に記載された種類及び量で化合物Xを添加し、反応容器内を攪拌しながら、表2に記載された温度及び時間で工程Xをおこなった。
【0103】
【表2】
【0104】
次いで、オートクレーブ内を水素ガスで置換し、表3に記載された量の水添反応用金属化合物触媒Bを添加し(実施例4では水添反応用金属化合物触媒Bを添加後さらにトリエチルアミン(TEA)を添加し)、表3に記載された水素圧力、反応温度及び反応時間で水添反応をおこなった。
【0105】
ここで、表3に記載された水添反応用金属化合物触媒Bの略称は下記の通りである。
ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(略称:RuCl(PPh
クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(略称:RhCl(PPh
クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(略称:RuHCl(CO)(PPh
クロロヒドリドトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム(略称:RuHCl(PPh
[1,4-ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン]パラジウム(II)ジクロリド(略称:均一系Pd)
【0106】
次いで、以下の手順により環状オレフィン重合体を得た。
まず水添反応後の環状オレフィン重合体溶液に金属化合物触媒A及びBの使用量の合計1質量部に対して10質量部の錯化剤を添加した。次いで環状オレフィン重合体溶液に対して3質量%の水を添加して110℃で6時間加熱攪拌し、金属化合物触媒A及びBの金属元素と錯化させた。次いで、溶液を室温に冷却後、孔径0.5μmのメンブレンフィルターで加圧濾過し、イオン交換樹脂処理した後、孔径0.5μmのメンブレンフィルターで加圧濾過し金属元素を除去した環状オレフィン重合体溶液を得た。
得られた環状オレフィン重合体溶液1質量部に対して20質量部のメタノールを攪拌しながら環状オレフィン重合体溶液を添加し、環状オレフィン重合体を析出させ濾別分離後、真空乾燥機で乾燥し白色粉末状の環状オレフィン重合体を得た。
【0107】
得られた環状オレフィン重合体を重水素化クロロホルムに溶解し、核磁気共鳴装置(日本電子製「EX270」)を用いてH-NMRスペクトルを測定した。オレフィン重合体主鎖の二重結合炭素に結合する水素に由来するピークa(化学シフト値:4.0~6.5ppm)の積分値を用いて、下記式(1)により水添反応効率を算出した。なお、式(1)により99.9%以上となった場合、表には100%と記載した。結果を表3に示す。
【0108】
【数1】
【0109】
【表3】
【0110】
(比較例1~5)
上記の方法により得られた環状オレフィン重合体溶液をオートクレーブに入れ、工程Xをおこなわずに水添処理をおこなった。具体的には、上記の方法により得られた環状オレフィン重合体溶液をオートクレーブに入れ、オートクレーブ内を水素ガスで置換し、表4に記載された量の水添反応用金属化合物触媒Bを加え、表4に記載された水素圧、加熱温度及び反応時間で水添反応をおこなった。
次いで、実施例と同じ手順で環状オレフィン重合体の精製処理をおこない、環状オレフィン重合体を得た。また、実施例と同じ手順で環状オレフィン重合体の水添反応効率を算出した。結果を表4に示す。
【0111】
【表4】
【0112】
実施例の製造方法では、同量の水添反応用金属化合物触媒Bを用いた比較例の製造方法と比べ、水添反応効率が向上していた。
このことから、本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法によると、水添反応効率を向上できることがわかる。
また、本実施形態に係る環状オレフィン重合体の製造方法によると水添反応効率を向上できるため、触媒使用量の低減、低温・低圧での反応が達成可能であると考えられる。