(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143616
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20241003BHJP
F01N 3/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/00 D
F01N3/08 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056382
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】武樋 公志
(72)【発明者】
【氏名】中尾 文栄
(72)【発明者】
【氏名】矢嶋 紀男
(72)【発明者】
【氏名】茂呂 裕昭
【テーマコード(参考)】
2D015
3G091
【Fターム(参考)】
2D015CA02
3G091AA05
3G091AB05
3G091BA14
3G091CA17
3G091EA22
(57)【要約】
【課題】還元剤タンクの必要容量を確保しつつ、還元剤タンクの供給口の高さを抑えることが可能な作業車両を提供する。
【解決手段】本発明のホイールローダ100は、エンジン321から排出される排出ガスに噴射する尿尿素水が貯蔵される尿素水タンク(還元剤タンク)4を備え、この尿素水タンク4が後輪30よりも後方かつ車体の下部に配置されていると共に、尿素水タンク4の底面が、車体前後方向の後方から前方に向けて下り勾配で傾斜する傾斜面(第1傾斜部)421を有し、尿素水タンクの前部にセンサユニット(液位センサ)46が設けられ、尿素水タンクの後部に尿素水の供給口43が設けられている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
前輪および後輪を有する車体と、前記車体の前部に設けられた作業機と、前記車体の駆動源であるエンジンと、前記エンジンから排出される排出ガスに噴射する還元剤が貯蔵される還元剤タンクと、を備えた作業車両において、
前記還元剤タンクは、前記後輪よりも後方、かつ、前記車体の下部に配置されており、
前記還元剤タンクの底面は、車体前後方向の後方から前方に向けて下り勾配で傾斜する第1傾斜部を有し、
前記還元剤タンクの前部には、液位センサが設けられ、
前記還元剤タンクの後部には、供給口が設けられている、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
還元剤を噴射する噴射装置と、
前記還元剤を前記還元剤タンクから前記噴射装置に供給する還元剤ポンプと、
前記還元剤ポンプと前記還元剤タンクとを接続する給排用配管と、を備え、
前記還元剤タンクの上面の前部には、前記給排用配管を接続するための接続部が設置されている、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項2に記載の作業車両において、
前記還元剤タンクの前記車体外方の側面は、車幅方向の車体中央側から外方に向けて下り勾配で傾斜する第2傾斜部を有しており、
前記第2傾斜部に前記還元剤の供給口が設けられており、
前記還元剤タンク内に前記還元剤を濾過するフィルタが配置されており、
前記供給口は、前記還元剤タンクの上面よりも低い位置に設けられ、前記フィルタが接続されている、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項3に記載の作業車両において、
前記エンジンの燃料が貯蔵される燃料タンクを備え、
前記燃料タンクの燃料供給口が、前記還元剤タンクの上方に設けられている、
ことを特徴とする作業車両。
【請求項5】
請求項1に記載の作業車両において、
前記車体の後部の下面は、車体前後方向の後方から前方に向けて下り勾配で傾斜し、
前記第1傾斜部は、前記還元剤タンクが配置される前記車体の後部の下面に沿った形状を有する
ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンから排出される排出ガスを処理する排ガス処理装置が搭載された作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ホイールローダや油圧ショベルといった作業車両においても、エンジンから排出される排出ガスに含まれるNOx量を低減するために、還元剤として尿素水を用いた選択触媒還元(SCR;Selective Catalytic Reduction)技術が採用された排ガス処理が行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、排ガスを処理するための排ガス処理装置と、排ガスに還元剤としての尿素水を噴射する噴射装置と、尿素水を貯留する尿素水タンクと、尿素水タンクから噴射装置へ尿素水を導く配管と、配管の途中に設けられたポンプと、を備えたホイールローダが開示されている。このホイールローダでは、エンジン室に排ガス処理装置及び噴射装置が、エンジン室から離れた車両後部にポンプ及び尿素水タンクが、それぞれ配置されている。これにより、これらポンプと尿素水タンクがエンジン室の熱影響を受けにくくしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、この種の作業車両においては、登坂する際に車両後部の下面が地面に接触して破損しないように、後輪から離れるほど車両後部の下面位置を高くする必要がある。所定容量の直方体形状の尿素水タンクを車両後部にフェンダやステップ等を避けるように後輪から離れて配置する場合、尿素水タンクが車両後部の下面からはみ出さないように、尿素水タンクの位置を高くすると、尿素水タンクの上部に付設される供給口が高い位置になってしまい、尿素水の供給作業が大変になるという課題がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、還元剤タンクの必要容量を確保しつつ、還元剤タンクの供給口の高さを抑えることが可能な作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、上記の目的を達成するために、代表的な本発明は、前輪および後輪を有する車体と、前記車体の前部に設けられた作業機と、前記車体の駆動源であるエンジンと、前記エンジンから排出される排出ガスに噴射する還元剤が貯蔵される還元剤タンクと、を備えた作業車両において、前記還元剤タンクは、前記後輪よりも後方、かつ、前記車体の下部に配置されており、前記還元剤タンクの底面は、車体前後方向の後方から前方に向けて下り勾配で傾斜する第1傾斜部を有し、前記還元剤タンクの前部には、液位センサが設けられ、前記還元剤タンクの後部には、供給口が設けられている、ことを特徴とする作業車両である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る作業車両によれば、還元剤タンクの必要容量を確保しつつ、還元剤タンクの供給口の高さを抑えることができる。なお、前述した以外の課題、構成、及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るホイールローダの外観を示す側面図である。
【
図2】ホイールローダの車体後部の構成を説明する模式図である。
【
図3】尿素水タンクと配管の全体レイアウトを示す斜視図である。
【
図4】収納ボックスの取付状態を示す車体後部の側面図である。
【
図7】収納ボックスの内部を前方から見た断面図である。
【
図8】収納ボックスの内部を左側方から見た断面図である。
【
図9】尿素水タンクの構成を示し、(a)は右側方から見た断面図、(b)は前方から見た断面図、(c)は後方から見た断面図である。
【
図10】収納ボックスに収納された状態の変形例に係る尿素水タンクを示す斜視図である。
【
図11】
図10に示す収納ボックスの内部を左側方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る作業車両の一態様として、土砂や鉱物等を掘削してダンプトラック等へ積み込む荷役作業を行うホイールローダを例に挙げて説明する。
【0011】
本発明の実施形態に係るホイールローダの構成について、
図1~
図9を参照して説明すると、
図1は、実施形態に係るホイールローダ100の外観を示す側面図である。
図2は、ホイールローダ100の車体後部の構成を説明する模式図である。
図3は、尿素水タンクと配管の全体レイアウトを示す斜視図である。
【0012】
ホイールローダ100は、車体が中心付近で中折れすることにより操舵するアーティキュレート式の作業車両である。具体的には、
図1に示すように、フロントフレーム102によって構成される車体前部と、リアフレーム103によって構成される車体後部とが、センタジョイント101によって左右方向(車幅方向)に回動自在に連結されおり、フロントフレーム102がリアフレーム103に対して左右方向に屈曲する。
【0013】
車体前部には、左右一対の前輪20と、作業機21と、が設けられている。車体後部には、左右一対の後輪30と、オペレータが搭乗する運転室31と、エンジン室32と、ラジエータ室33と、リアグリル34と、車体が傾倒しないようにバランスを保つためのカウンタウェイト35と、が設けられている。
【0014】
なお、以下において、ホイールローダ100の左右方向のうち、運転室31の運転席に座ったオペレータから見て左の方向を「左方向」とし、右の方向を「右方向」とする。
図1では、左右一対の前輪20及び後輪30のうち、左側の前輪20及び後輪30のみを示している。
【0015】
作業機21は、上下方向に回動可能なリフトアーム211と、伸縮することによってリフトアーム211を駆動させる一対のリフトアームシリンダ(不図示)と、リフトアーム211の先端部に取り付けられたバケット212と、伸縮することによりバケット212をリフトアーム211に対して上下方向に回動させるバケットシリンダ212Aと、リフトアーム211に回動可能に連結されてバケット212とバケットシリンダ212Aとのリンク機構を構成するベルクランク213と、を有している。
【0016】
エンジン室32及びラジエータ室33はそれぞれ、リアフレーム103を上方からカバー104で覆うことにより内部に形成された空間である。ラジエータ室33は、エンジン室32の後方にエンジン室32と離隔して設けられており、
図2に示すように、エンジン室32とラジエータ室33との間には、両室を離隔するための隔壁36が設けられている。
【0017】
図2に示すように、エンジン室32には、エンジン321と、エンジン321から排出される排出ガスを処理する排ガス処理装置322と、排ガス処理装置322内の排出ガスに還元剤であるアンモニアを水に溶解させた尿素水を噴射する噴射装置323と、が収納されている。なお、
図2では、排ガス処理装置322と噴射装置323とが別個に設けられているが、これに限らず、排ガス処理装置322内に噴射装置323が設けられていても良い。
【0018】
ラジエータ室33には、噴射装置323に接続された尿素水ポンプ(還元剤ポンプ)5と、外気を吸い込んで冷却風を生成する冷却ファンとしてのラジエータファン331と、ラジエータファン331で生成された冷却風との間で熱交換を行う熱交換器としてのラジエータ332と、が収納されている。
【0019】
ラジエータファン331が作動すると、ラジエータ室33の内部圧力がホイールローダ100周辺の大気圧よりも低くなる。これにより、リアフレーム103及びカバー104に形成された穴やスリット、並びにエンジン室32の開口等から外気がラジエータ室33内に吸い込まれて、冷却風が生成される。ラジエータ332は、この冷却風を用いてエンジン321により加熱されたエンジン冷却水を冷却する。
【0020】
また、ホイールローダ100は、ラジエータ室33の左側方にラジエータ室33と離隔して設けられた収納ボックス37を有している。収納ボックス37には、尿素水が貯蔵された尿素水タンク(還元剤タンク)4と、尿素水タンク4と尿素水ポンプ5とを接続する一対の給排用配管61と、が収納されている。一対の給排用配管61は、尿素水タンク4から尿素水ポンプ5へ尿素水を供給する供給用配管と、尿素水ポンプ5から尿素水タンク4へ尿素水を排出する(戻す)ための排出用配管である。これら給排用配管61は、ラジエータ室33の左側壁に設けられた壁穴333を通って尿素水ポンプ5に接続されている。
【0021】
また、尿素水ポンプ5と噴射装置323とは、尿素水供給配管60によって接続されている。したがって、尿素水タンク4に貯蔵されている尿素水は、一方の給排用配管(供給用配管)61、尿素水ポンプ5、尿素水供給配管60、を順に通って噴射装置323に供給される。
【0022】
図4は、収納ボックス37の取付状態を示す車体後部の側面図である。
図5は、収納ボックス37の外観を示す斜視図である。
【0023】
収納ボックス37は、上下方向、前後方向、及び左右方向のそれぞれが側壁で囲まれた箱体であり、リアフレーム103に固定されている。なお、収納ボックス37の複数の側壁のうち、リアフレーム103に対向する側壁を「右壁371」、その反対側の側壁を「左壁372」、車体の前方向に位置する側壁を「前壁373」、車体の後方向に位置する側壁を「後壁374」、車体の上方向に位置する側壁を「上壁375」、車体の下方向に位置する側壁を「下壁376」とする。
【0024】
図4に示すように、収納ボックス37は、車体後部に必要なディパーチャアングル(後輪30の設置面と車体後端を結ぶ接線Pが地面となす角度θ)を確保するように、ラジエータ室33の左下側におけるリアフレーム103に固定されている。ここで、収納ボックス37の下壁376は、水平方向に延びる平坦面376aと、ディパーチャアングルの角度θ(例えば30°)に沿った傾斜面376bとを有しており、この傾斜面376bをディパーチャアングルの接線Pに近接させた状態で、収納ボックス37はリアフレーム103に固定されている。
【0025】
図5に示すように、収納ボックス37の左壁372には、内部に配置された尿素水タンク4の供給口43を露出させるための開口377と、この開口377を開閉可能な蓋体378と、が設けられている。蓋体378は、開口377の下端部にヒンジ379を介して取り付けられており、この蓋体378を下方に向けて開けることにより、尿素水タンク4の供給口が露出するようになっている。
【0026】
次に、尿素水タンク4の構成について、
図6~
図9を参照して説明する。
【0027】
図6は、収納ボックス37の内部を示す斜視図である。
図7は、収納ボックス37の内部を前方から見た断面図である。
図8は、収納ボックス37の内部を左側方から見た断面図である。
図9は、尿素水タンク4の構成を示し、(a)は右側方から見た断面図、(b)は前方から見た断面図、(c)は後方から見た断面図である。
【0028】
尿素水タンク4は、尿素水を貯蔵するための中空構造の容器であり、車体の前方が深くて後方が浅い全体形状となっている。すなわち、尿素水タンク4の前面の上下方向の長さは、尿素水タンク4の後面の上下方向の長さよりも長く構成されている。具体的には、尿素水タンク4の前方は、水平方向に延びる底面(平坦面411)を有する前部41となっており、尿素水タンク4の後方は、後方に向かって上り勾配で傾斜する底面(傾斜面421)を有する後部42となっている。前部41の平坦面411が延在する水平面に対する傾斜面(第1傾斜部)421の傾斜角度θ1は、前述したディパーチャアングルの角度θとほぼ同じに設定されており、尿素水タンク4の前部41と後部42の底面は鈍角に連続している。
【0029】
図6~
図8に示すように、尿素水タンク4は、収納ボックス37の下壁376上に載置されており、前部41の平坦面411は収納ボックス37の平坦面376aに密着し、後部42の傾斜面421は収納ボックス37の傾斜面376bに密着している。前述したように、収納ボックス37は、下壁376の傾斜面376bをディパーチャアングルの接線Pに近接させた状態でリアフレーム103に固定されているため、尿素水タンク4は、ディパーチャアングルの角度θに沿った傾斜面421を有する構成となっている。すなわち、収納ボックス37内に収納された尿素水タンク4についても、後部42の傾斜面421をディパーチャアングルの接線Pに近接させた配置となっており、車両におけるディパーチャアングルの上方が尿素水タンク4の設置スペースの一部として利用されている。これにより、尿素水タンク4が車両側方の低い位置(本実施形態では、後輪30の上端よりも低い位置)に設置されていても、尿素水タンク4の必要容量を確保することができる。
【0030】
尿素水タンク4の後部42には、車幅方向の車体中央側から外方に向けて下り勾配で傾斜する傾斜部(第2傾斜部)422が設けられている。この傾斜部422には、尿素水タンク4内に尿素水を供給するための供給口43が設けられている。傾斜部422の鉛直面に対する傾斜角は30°~60°の範囲が好ましく、本実施形態では、傾斜部422傾斜角は約45°に設定されている。そして、前述したように尿素水タンク4は車両側方の低い位置に設置されており、その後部42における上端部に供給口43が設けられているため、尿素水タンク4に対する尿素水の供給作業を容易に行うことができる。なお、
図4に示すように、供給口43を覆う蓋体378と同じ側面で、かつ供給口43の上方に、燃料タンクの燃料供給口38を覆う開閉蓋381が設けられている。これにより、尿素水と燃料の供給作業を車体の同じ側面の近傍位置で行うことができる。
【0031】
図9に示すように、尿素水タンク4の後部42内には、尿素水を濾過する円筒形状のバグフィルタ(フィルタ)44が配設されている。バグフィルタ44は、供給口43の軸線方向に沿うように供給口43に接続されており、供給口43が傾斜部422の傾斜面に設けられているため、バグフィルタ44は、水平面に対して前下がりの姿勢で後部42内に配置されている。これにより、バグフィルタ44の下端と後部42の内底面との間に十分な隙間が確保され、バグフィルタ44と尿素水タンク4の内壁面との干渉が防止されている。
【0032】
尿素水タンク4の前部41内には、複数本のサクションパイプ45と、センサユニット46と、ストレーナ47と、が配設されている。また、前部41の上面には、給排用配管61をサクションパイプ45に接続するための接続部48が設けられている。サクションパイプ45は、接続部48から前部41の内底面に向かって鉛直方向に延びた後、内底面近くでL字状に屈曲して水平方向に延びている。
【0033】
センサユニット46は、サクションパイプ45の水平部分に固着されて前部41内の最下位置に配置されている。センサユニット46は、尿素水の濃度や温度等の品質を検出する品質センサと、尿素水の液位(レベル)を検出する液位センサと、の機能を有する複合型のセンサである。
【0034】
本実施形態では、サクションパイプ45とセンサユニット46及びストレーナ47が一体化されたユニット体となし、このユニット体を高さ寸法の大きな前部41内に配置すると共に、バグフィルタ44を後部42内に配置することにより、ユニット体とバグフィルタ44の干渉を防止している。ただし、ユニット体を構成する部品は必ずしも全てが一体化されていなくても良く、一部が別の位置に配置されていても良い。例えば、センサユニット46を液位センサと品質センサの別部品とし、品質センサだけをユニット体から分離して前部41内の後方位置に配置するようにしても良い。
【0035】
図6に示すように、尿素水タンク4の上面には、前部41が後部42に対して低くなるように段差が設けられており、低い方の部位が段落部Sとなっている。この段落部Sは、前部41の上面全体と後部42の右側方に亘って形成されており、前部41の上面に形成された段落部Sに接続部48が設けられている。この接続部48には、尿素水ポンプ5に接続される一対の給排用配管61と、エンジンの冷却用液体の配管である一対のLLC配管80と、が接続されている。これにより、後部42の上面に対して低い段落部S内の空間を利用して、接続部48に接続される給排用配管61とLLC配管80を引き回すことができる。なお、LLC配管80については省略することも可能であり、その場合は、接続部48に一対の給排用配管61のみが接続される。
【0036】
尿素水タンク4は、一対のクランプ部材70,71を用いて収納ボックス37に固定されている。一方のクランプ部材70は、前部41と後部42の段落部Sが連続する尿素水タンク4の平坦な上面と、尿素水タンク4の前壁とに密着するようにL字形状に形成されている。もう一方のクランプ部材71は、前部41の段落部Sと後部42の上面が連続する尿素水タンク4の段付き形状の上面と、尿素水タンク4の前壁とに密着するように略L字形状に形成されている。このクランプ部材71には、段付き形状の上面のたわみを防止するために、補強用のリブ711が設けられている。
【0037】
以上説明したように、本実施形態に係るホイールローダ100では、尿素水タンク(還元剤タンク)4が後輪30よりも後方かつ車体の下部に配置されており、この尿素水タンク4の底面が、車体前後方向の後方から前方に向けて下り勾配で傾斜する傾斜面(第1傾斜部)421を有し、尿素水タンクの前部にセンサユニット(液位センサ)46が設けられ、尿素水タンクの後部に尿素水の供給口43が設けられているため、尿素水タンク4を傾斜させた分だけ容量を増やすことができる。これにより、容量を増やした分だけ供給口43の高さを低い位置に設定することができ、尿素水タンク4の必要容量を確保しつつ、尿素水タンク4の供給口43の高さを抑えることができる。
【0038】
また、本実施形態に係るホイールローダ100では、尿素水タンク4の前側に液位センサを含むセンサユニット46を、尿素水タンク4の後側に供給口43(バグフィルタ44)を配置して、車体の前後方向に延びるタンク構造とすることでタンク容量を増加させているため、車幅方向に延ばしてタンク容量を増加させるタンク構造に比べると、尿素水を含む尿素水タンク4全体の重心をフレームと尿素水タンク4との取り付け部に近付けることができる。その結果、車体振動でフレームと尿素水タンク4との取り付け部に掛かる負荷が提言され、破損のリスクを低減することができる。
【0039】
しかも、本実施形態に係るホイールローダ100では、尿素水タンク4が配置される車体の後部の下面が、車体前後方向の後方から前方に向けて下り勾配で傾斜するディパーチャアングルを有しており、尿素水タンク4の底面の傾斜面421をディパーチャアングルに沿った形状としているため、ディパーチャアングルの上方を尿素水タンク4の設置スペースの一部として利用することができる。したがって、数多くの部品が設置される車体後部の限られたスペースを有効利用して、尿素水タンク4の必要容量を確保しつつ、尿素水タンク4の供給口43の高さを抑えることができる。
【0040】
また、本実施形態に係るホイールローダ100では、尿素水を噴射する噴射装置323と、尿素水を尿素水タンク4から噴射装置323供給する尿素水ポンプ(還元剤ポンプ)5と、尿素水ポンプ5と尿素水タンク4とを接続する給排用配管61とを備え、尿素水ポンプ5の上面の前部が尿素水ポンプ5の上面の後部よりも低く形成され、尿素水タンク4の上面の前部に、給排用配管61を接続するための接続部48が設けられているため、尿素水ポンプ5の上面の前部に存する空間を利用して給排用配管61をコンパクトに引き回すことができる。
【0041】
また、本実施形態に係るホイールローダ100では、尿素水タンク4の車体外方の側面が、車幅方向の車体中央側から外方に向けて下り勾配で傾斜する傾斜部(第2傾斜部)422を有しており、この傾斜部422に尿素水の供給口43が設けられているため、この点からも尿素水の供給作業を容易に行うことができる。しかも、尿素水タンク4のタンク容量を増大させつつ、給排用配管61を含めた尿素水タンク4全体を覆う収納ボックス37自体の高さを低く抑えることができるため、周囲に配置された他のカバーの開閉動作や、燃料の供給作業を邪魔しなくなる。
【0042】
また、本実施形態に係るホイールローダ100では、尿素水タンク4の供給口43を覆う蓋体378と同じ側面で、かつ供給口43の上方に、燃料タンクの燃料供給口38を覆う開閉蓋381が設けられているため、尿素水と燃料の供給作業を車体の同じ側面の近傍位置で行うことができる。
【0043】
次に、尿素水タンク4の変形例について、
図10と
図11を参照して説明する。なお、
図10と
図11において、
図1~
図9と共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0044】
図10は、収納ボックス37に収納された状態の変形例に係る尿素水タンク4を示す斜視図である。
図11は、
図10に示す収納ボックス37の内部を左側方から見た断面図である。
【0045】
図10と
図11に示すように、変形例に係る尿素水タンク4においては、後部42の底面が、前部41の底面から後方に向かって上り勾配で傾斜する傾斜面(第1傾斜部)421と、傾斜面421の後端から水平方向に延びる平坦面423とで構成されている。すなわち、尿素水タンク4の底面は、前部41の平坦面411と後部42の平坦面423とが傾斜面421を介して連続する構成となっている。ここで、前部41の平坦面411が延在する水平面に対する傾斜面421の傾斜角度は、ディパーチャアングルの角度θとほぼ同じに設定されている。また、収納ボックス37の下壁376は、変形例に係る尿素水タンク4の底面と同様に、前方の平坦面376aと後方の平坦面376cとが傾斜面376bを介して連続する形状となっている。
【0046】
変形例に係る尿素水タンク4は、傾斜面421を収納ボックス37の傾斜面376bに対向させると共に、前部41と後部42に設けられた前後2箇所の平坦面411,平坦面423を、収納ボックス37の下壁376に設けられた平坦面376a,平坦面376c上に載置させた状態で、収納ボックス37の内部に収納される。これにより、尿素水タンク4は、収納ボックス37の内部に安定した姿勢で収納される。
【0047】
このように構成された変形例に係る尿素水タンク4においても、底面の一部が車体後部のディパーチャアングルの角度θに沿った傾斜面421で構成されているため、ディパーチャアングルの上方を尿素水タンク4の設置スペースの一部として利用することができる。したがって、尿素水タンク4の必要容量を確保しつつ、尿素水タンク4の供給口43の高さを抑えることができる。しかも、底面の前後2箇所に設けられた平坦面411,423が収納ボックス37の平坦面376a,376c上に載置されるため、尿素水タンク4を収納ボックス37の内部に安定した姿勢で収納することができる。
【0048】
以上、本発明の実施形態及び変形例について説明した。なお、本発明は上記した実施形態や変形例に限定されるものではなく、様々な他の変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態及び変形例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0049】
例えば、上記実施形態では、尿素水タンク4と収納ボックス37は、ラジエータ室33の左側方に設けられていたが、これに限らず、例えばラジエータ室33の右側方に設けられていても良い。
【0050】
また、上記実施形態では、本発明の作業車両の一態様としてホイールローダを例に挙げて説明したが、これに限らず、例えば油圧ショベル等であっても良い。
【符号の説明】
【0051】
4 尿素水タンク(還元剤タンク)
5 尿素水ポンプ(還元剤ポンプ)
20 前輪
21 作業機
30 後輪
31 運転室
32 エンジン室
33 ラジエータ室
37 収納ボックス
38 燃料供給口
41 尿素水タンクの前部
42 尿素水タンクの後部
43 供給口
60 尿素水供給配管
61 給排用配管
44 バグフィルタ(フィルタ)
45 サクションパイプ
46 センサユニット(液位センサ)
47 ストレーナ
48 接続部
70,71 クランプ部材
100 ホイールローダ(作業車両)
102 フロントフレーム(車体前部)
103 リアフレーム(車体後部)
321 エンジン
322 排ガス処理装置
323 噴射装置
331 ラジエータファン
332 ラジエータ
376a,376c 収納ボックスの平坦面
376b 収納ボックスの傾斜面
378 蓋体
411,423 尿素水タンクの平坦面
421 尿素水タンクの傾斜面(第1傾斜部)
422 傾斜部(第2傾斜部)
S 段落部
θ ディパーチャアングルの角度
P ディパーチャアングルの接線