(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143623
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20241003BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/00 C
E02F9/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056396
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】平松 敏史
(72)【発明者】
【氏名】水倉 泰治
(72)【発明者】
【氏名】寺田 滋之
【テーマコード(参考)】
2D015
【Fターム(参考)】
2D015HA03
(57)【要約】
【課題】旋回体と走行体との間での電気的な接続不良に起因する通信不良を低減することができる作業機械を提供する。
【解決手段】作業機械としての電動ショベルは、走行体と、走行体に対して旋回可能に設けられる旋回体と、旋回体と走行体との間で無線通信を行う無線通信部と、を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行体と、
前記走行体に対して旋回可能に設けられる旋回体と、
前記旋回体と前記走行体との間で無線通信を行う無線通信部と、を備える、作業機械。
【請求項2】
前記無線通信部は、
前記旋回体において、前記走行体側に配置される第1通信部と、
前記走行体において、前記旋回体側に配置される第2通信部と、を含む、請求項1に記載の作業機械。
【請求項3】
前記走行体は、
前記旋回体を旋回可能に支持する旋回ベアリングをさらに備え、
前記旋回体は、複数の前記第1通信部を有し、
前記各第1通信部は、上方から見て、前記各第1通信部の少なくともいずれかと前記第2通信部とを結ぶ線分が前記旋回ベアリングの外側に設けられる位置に配置される、請求項2に記載の作業機械。
【請求項4】
前記各第1通信部は、前記旋回体の旋回中心軸に対して周方向に等間隔に配置される、請求項3に記載の作業機械。
【請求項5】
前記第2通信部は、上方から見て、前記各第1通信部が配置される円と重なる位置に配置される、請求項4に記載の作業機械。
【請求項6】
前記走行体は、
前記走行体に左右一対に設けられる走行モータと、
前記走行モータに設けられる回転数センサと、をさらに備え、
前記走行モータは、前記走行体が走行する前後方向の一方側に配置され、
前記回転数センサは、前記第2通信部に電気配線を介して接続され、
前記第2通信部は、前記前後方向の前記一方側に配置される、請求項2に記載の作業機械。
【請求項7】
前記走行体は、前記第2通信部に電力を供給するバッテリをさらに備える、請求項2に記載の作業機械。
【請求項8】
前記走行体は、
前記走行体が走行する前後方向の一方側に設けられる排土装置をさらに備え、
前記第2通信部は、前記前後方向の他方側に配置される、請求項2に記載の作業機械。
【請求項9】
前記走行体は、
前記第2通信部に電力を供給するバッテリをさらに備え、
前記バッテリは、前記前後方向の前記他方側に配置される、請求項8に記載の作業機械。
【請求項10】
前記第1通信部は、第1アンテナと、前記第1アンテナと別個に配置され、前記第1アンテナを介して無線通信する信号を処理する第1処理部とを有し、
前記第2通信部は、第2アンテナと、前記第2アンテナと別個に配置され、前記第2アンテナを介して無線通信する信号を処理する第2処理部とを有する、請求項2から9のいずれかに記載の作業機械。
【請求項11】
前記第1アンテナは、前記旋回体の底面に配置され、
前記第1処理部は、前記旋回体内に設けられ、
前記第2アンテナは、前記走行体において前記旋回体と対向する位置に配置され、
前記第2処理部は、前記走行体内に設けられる、請求項10に記載の作業機械。
【請求項12】
前記走行体は、
前記旋回体を旋回可能に支持する旋回ベアリングをさらに備え、
前記無線通信部は、上方から見て、前記旋回ベアリングの内側に配置される、請求項1に記載の作業機械。
【請求項13】
前記走行体は、
前記旋回体とともに旋回するスイベルジョイントをさらに備え、
前記無線通信部は、上方から見て、前記旋回ベアリングと前記スイベルジョイントとの間に配置される、請求項12に記載の作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
スリップリングを含む回転連結部材を備える建設機械が従来技術として知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の構成では、回転連結部材(スイベルジョイント)にスリップリングを備えることで、旋回体と走行体を電気的に接続し、スリップリングを介して通信を行う。しかし、スリップリングなどの機械部品が通信経路に介在すると、上記機械部品とその周辺部品との間で摩耗による接続不良が生じ、上記接続不良に起因する通信不良が生じるおそれがある。この点で、特許文献1の構成は改善の余地がある。
【0005】
本発明は、上記の問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、旋回体と走行体との間での電気的な接続不良に起因する通信不良を低減することができる作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る作業機械は、走行体と、前記走行体に対して旋回可能に設けられる旋回体と、前記旋回体と前記走行体との間で無線通信を行う無線通信部と、を備える。
【発明の効果】
【0007】
上記作業機械の構成によれば、旋回体と走行体との間での電気的な接続不良に起因する通信不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の一形態に係る作業機械の一例である電動ショベルの概略の構成を示す左側面図である。
【
図2】上記電動ショベルの下部走行体を示す平面図である。
【
図3】上記電動ショベルの電気系及び油圧系の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図4】上記電動ショベルの通信系の構成を模式的に示すブロック図である。
【
図5】上記電動ショベルに設けられる第1通信部の配置を示す下面図である。
【
図6】上記電動ショベルの旋回フレームを示す左後方からの斜視図である。
【
図7】上記下部走行体に設けられる第2通信部付近を拡大して示す左後方からの斜視図である。
【
図8】上記下部走行体に設けられる回転数センサ付近を拡大して示す左後方からの斜視図である。
【
図9】上記各通信部の配置を模式的に示す平面図である。
【
図10】
図9において上記電動ショベルの上部旋回体が旋回した場合を示す平面図である。
【
図11】上記各通信部の他の配置を模式的に示す平面図である。
【
図12】アンテナ別置型で構成される上記各通信部の配置を模式的に示す左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施の形態について、図面に基づいて説明すれば、以下の通りである。
【0010】
〔1.作業機械〕
図1は、本発明の実施の一形態に係る作業機械の一例である電動ショベル1の概略の構成を示す左側面図である。電動ショベル1は、下部走行体2と、作業機3と、上部旋回体4と、を備える。なお、下部走行体2は、走行体とも呼び、上部旋回体4は、旋回体とも呼ぶ。
【0011】
ここで、方向を以下のように定義する。下部走行体2が一方向に沿って直進するときの上記一方向の一方側を「前」とし、他方側を「後ろ」とする。例えば、下部走行体2が一方向に沿って直進する方向のうち走行モータ23が配置される側とは反対側(排土装置24が配置される側)を「前」とし、走行モータ23が配置される側を「後ろ」とする。下部走行体2に対して上部旋回体4が非旋回の状態(旋回角度0度)では、上部旋回体4の前後方向は、下部走行体2の前後方向と一致する。また、電動ショベル1を後方から見て、左側を「左」、右側を「右」とする。さらに、前後方向及び左右方向に垂直な重力方向を上下方向とし、重力方向の上流側を「上」とし、下流側を「下」とする。図面では、下部走行体2に対して上部旋回体4が非旋回の状態で電動ショベル1を示す。また、図面では、必要に応じて、前方を「F」、後方を「B」、右方を「R」、左方を「L」、上方を「U」、下方を「D」の記号で示す。
【0012】
また、本実施形態では、回転中心となる軸(中心軸)と直交する方向を「径方向」と呼ぶ。そして、径方向において、中心軸から離れる方向を「径方向外側」と呼び、中心軸に近づく方向を「径方向内側」と呼ぶ。さらに、中心軸を中心として描かれる円弧に沿う方向を「周方向」と呼ぶ。
【0013】
下部走行体2は、トラックフレーム21と、左右一対のクローラ22と、左右一対の走行モータ23と、排土装置24と、旋回ベアリング25と、を備える。
図2は、下部走行体2の平面図である。トラックフレーム21は、中央部に位置するセンターフレーム21aと、センターフレーム21aに左右一対に設けられるサイドフレーム21bと、を備える。左右のサイドフレーム21bには、クローラ22及び走行モータ23がそれぞれ設けられる。各走行モータ23は、下部走行体2の後方側に配置される。各走行モータ23は、油圧モータで構成される。左右の走行モータ23が、左右のクローラ22をそれぞれ駆動することにより、電動ショベル1を前後進させることができる。
【0014】
図1に示すように、トラックフレーム21の前方には、排土作業及び整地作業を行うための排土装置24が設けられる。排土装置24は、ブレード24aと、ブレードシリンダ24bと、を備える。ブレードシリンダ24bは、ブレード24aを回動させる油圧シリンダである。旋回ベアリング25は、センターフレーム21aの中央付近に配置される。旋回ベアリング25は、上部旋回体4を旋回可能に支持する支持部材である。
【0015】
図2に示すように、下部走行体2は、スイベルジョイント26をさらに備える。スイベルジョイント26は、下部走行体2に配置されるとともに、上部旋回体4(
図1参照)とともに旋回する。スイベルジョイント26は、上部旋回体4及び下部走行体2に設けられる各油圧回路を互いに連通させる。このため、上部旋回体4が下部走行体2に対して旋回する場合においても、油圧ホース等が絡み合うことなく、旋回することができる。
【0016】
図1に示すように、作業機3は、ブーム31と、アーム32と、バケット33と、を備える。ブーム31、アーム32、及びバケット33を独立して駆動することにより、土砂等の掘削作業を行うことができる。
【0017】
ブーム31は、ブームモータ31aによって回動される。ブームモータ31aは、ブーム31の基端部に設けられ、回転駆動する。アーム32は、アームモータ32aによって回動される。アームモータ32aは、アーム32の基端部に設けられ、回転駆動する。バケット33は、バケットモータ33aによって回動される。バケットモータ33aは、バケット33の基端部に設けられ、回転駆動する。ブームモータ31a、アームモータ32a、及びバケットモータ33aは、電力の供給を受けて回転駆動する電動モータで構成される。なお、電力の供給を受けて駆動する機器を、電動アクチュエータ34(
図3参照)とも呼ぶ。電動モータは、電動アクチュエータ34に含まれる。
【0018】
上部旋回体4は、下部走行体2の上方に位置し、下部走行体2に対して旋回ベアリング25を介して旋回可能に設けられる。上部旋回体4には、旋回フレーム41、旋回モータ42、機関室43等が設けられる。上部旋回体4は、油圧モータである旋回モータ42の駆動により、旋回ベアリング25を介して、下部走行体2に対して旋回する。したがって、旋回モータ42は、下部走行体2に対して上部旋回体4を旋回させる旋回装置40を構成する。旋回装置40は、旋回モータ42の他に、上述の旋回ベアリング25及びスイベルジョイント26も含む。
【0019】
上部旋回体4には、油圧ポンプ71(
図3参照)が配置される。油圧ポンプ71は、ポンプモータ61(
図3参照)によって駆動され、油圧モータ(例えば、左右の走行モータ23、旋回モータ42)及び油圧シリンダ(例えば、ブレードシリンダ24b)に作動油(圧油)を供給する。油圧ポンプ71から作動油が供給されて駆動する油圧モータ及び油圧シリンダを、まとめて油圧アクチュエータ73と呼ぶ。
【0020】
上部旋回体4には、バッテリユニット53が配置される。バッテリユニット53は、例えばリチウムイオンバッテリで構成され、
図3に示すポンプモータ61及び電動アクチュエータ34(例えば、ブームモータ31a)を駆動するための電力を蓄える。バッテリユニット53は、複数のバッテリセルをユニット化して構成されてもよいし、単一のバッテリセルで構成されてもよい。また、上部旋回体4には、給電口(図示せず)が設けられる。上記の給電口と、外部電源(図示せず)を接続することで、バッテリユニット53を充電することができる。
【0021】
上部旋回体4には、第1鉛バッテリ54(
図3参照)が配置される。第1鉛バッテリ54は、低電圧(例えば12V)の直流電圧を出力する。第1鉛バッテリ54からの出力電圧は、制御電圧として、例えばシステムコントローラ67(
図3参照)に供給される。
【0022】
電動ショベル1は、アクチュエータとして、油圧アクチュエータ73のみを備える構成であってもよい。例えば、ブーム31、アーム32、及びバケット33は、油圧シリンダによって駆動されてもよい。また、電動ショベル1は、アクチュエータとして、電動アクチュエータ34のみを備える構成であってもよい。例えば、左右の走行モータ23及び旋回モータ42は、電動モータであってもよいし、ブレード24aは、電動モータによって駆動されてもよい。
【0023】
〔2.電気系及び油圧系の構成〕
次に、電動ショベル1の電気系及び油圧系の構成について説明する。
図3は、電動ショベル1の電気系及び油圧系の構成を模式的に示すブロック図である。電動ショベル1は、電動アクチュエータ34と、ポンプモータ61と、充電器62と、インバータ63と、PDU(Power Drive Unit)64と、ジャンクションボックス65と、DC-DCコンバータ66と、システムコントローラ67と、油圧ポンプ71と、コントロールバルブ72と、油圧アクチュエータ73と、作動油タンク74と、を備える。電動アクチュエータ34は、上記したブームモータ31aと、アームモータ32aと、バケットモータ33aと、を含む。油圧アクチュエータ73は、上記した走行モータ23と、ブレードシリンダ24bと、旋回モータ42と、を含む。
【0024】
ブームモータ31a、アームモータ32a、及びバケットモータ33aは、バッテリユニット53から、ジャンクションボックス65及びインバータ63を介して供給される電力により駆動される。ブームモータ31a、アームモータ32a、及びバケットモータ33aは、同期モータ又は誘導モータ等の電動モータで構成される。
【0025】
ポンプモータ61は、バッテリユニット53から、ジャンクションボックス65及びインバータ63を介して供給される電力により駆動される。ポンプモータ61は、同期モータ又は誘導モータ等の電動モータで構成される。ポンプモータ61は、旋回フレーム41上に配置される。
【0026】
充電器62(給電器とも呼ばれる)は、外部電源(図示せず)から供給される交流電圧を直流電圧に変換する。インバータ63は、バッテリユニット53から供給される直流電圧を交流電圧に変換して、ポンプモータ61及び電動アクチュエータ34に供給する。これにより、ポンプモータ61及び電動アクチュエータ34が、それぞれ駆動される。インバータ63からポンプモータ61及び電動アクチュエータ34への交流電圧の供給は、システムコントローラ67から出力される回転指令に基づいて、それぞれ行われる。なお、インバータ63は、交流電圧の供給先に応じて、複数設けられてもよい。
【0027】
PDU64は、内部のバッテリリレーを制御してバッテリユニット53の入出力を制御するバッテリ制御ユニットである。ジャンクションボックス65は、充電器リレー、インバータリレー、ヒューズ等を含んで構成される。上記の充電器62から出力される電圧は、ジャンクションボックス65及びPDU64を介してバッテリユニット53に供給される。また、バッテリユニット53から出力される電圧は、PDU64及びジャンクションボックス65を介してインバータ63に供給される。
【0028】
DC-DCコンバータ66は、バッテリユニット53からジャンクションボックス65を介して供給される高電圧(例えば300V)の直流電圧を、低電圧(例えば12V)に降圧する。DC-DCコンバータ66から出力される直流電圧は、第1鉛バッテリ54からの出力と同様に、システムコントローラ67等に供給される。また、第1鉛バッテリ54は、DC-DCコンバータ66から出力される直流電圧で充電される。なお、システムコントローラ67の構成については、後述する。
【0029】
ポンプモータ61の回転軸(出力軸)には、複数の油圧ポンプ71が接続される。複数の油圧ポンプ71は、可変容量型ポンプ及び固定容量型ポンプを含む。
図3では、例として油圧ポンプ71を1つのみ図示している。各油圧ポンプ71は、作動油を収容(貯留)する作動油タンク74と接続される。ポンプモータ61によって油圧ポンプ71が駆動されると、作動油タンク74内の作動油が、コントロールバルブ72を介して油圧アクチュエータ73に供給される。これにより、油圧アクチュエータ73が駆動される。コントロールバルブ72は、油圧アクチュエータ73に供給される作動油の流れ方向及び流量を制御する方向切替弁である。
【0030】
〔3.通信系の構成〕
次に、電動ショベル1の通信系の構成について説明する。
図4は、電動ショベル1の通信系の構成を模式的に示すブロック図である。電動ショベル1は、システムコントローラ67と、回転数センサ81と、無線通信部82と、を備える。
【0031】
システムコントローラ67は、ECU(Electronic Control Unit)とも呼ばれる電子制御ユニットで構成される。システムコントローラ67は、電動ショベル1が有する各種センサの検知信号に基づいて、電動ショベル1の各部の状態を認識する。そして、システムコントローラ67は、上記した各部の状態と、遠隔操縦機器(図示せず)からの操縦指令とに基づいて、電動ショベル1の各部の制御を行う(
図3参照)。システムコントローラ67は、上部旋回体4に配置される。
【0032】
回転数センサ81は、左右の走行モータ23の回転数を検出する。回転数センサ81は、例えばエンコーダ、レゾルバ等で構成される。
図2に示すように、回転数センサ81は、左右の走行モータ23の側方にそれぞれ配置されるともに、電気配線W1を介して、後述する第2通信部84と接続される。なお、回転数センサ81の配置の詳細については、後述する。上述のように、左右の走行モータ23が、左右のクローラ22をそれぞれ駆動することにより、電動ショベル1を前後進させることができる。したがって、走行モータ23の回転数は、電動ショベル1の前後進速度(車速)と対応している。このため、回転数センサ81で検出した回転数に基づいて、電動ショベル1の車速を算出することができる。
【0033】
図4に示すように、無線通信部82は、第1通信部83と、第2通信部84と、を備える。第1通信部83は、第1アンテナ83aと、第1処理部83bと、を備え、上部旋回体4に配置される。第2通信部84は、第2アンテナ84aと、第2処理部84bと、を備え、下部走行体2に配置される。アンテナと、処理部とは、単一の筐体(例えばアンテナ一体型)で構成されてもよいし、別々の筐体(例えばアンテナ別置型)で構成されてもよい。
【0034】
第2通信部84は、回転数センサ81と接続される。回転数センサ81で検出した走行モータ23の回転数の信号S1は、第2通信部84の第2処理部84bに出力される。第2処理部84bは、信号S1を第2アンテナ84aで送信可能な形式に変換する。例えば、第2処理部84bは、信号S1に対して、変調処理等を行う。第2アンテナ84aは、第2処理部84bで変換された信号S2の電波を第1アンテナ83aに送信する。第1アンテナ83aは、第2アンテナ84aから送信された電波を受信する。第1処理部83bは、第1アンテナ83aから出力された信号S3を、システムコントローラ67に入力可能な形式に変換する。例えば、第1処理部83bは、信号S3に対して、復調処理等を行う。システムコントローラ67は、第1処理部83bで変換された信号S4に基づいて、電動ショベル1の車速を算出する。このように、下部走行体2に設けられる回転数センサ81で検出した信号S1が、第2通信部84と、第1通信部83との間での電波通信(無線通信)を介して、上部旋回体4に設けられるシステムコントローラ67に信号S4として伝送される。つまり、無線通信部82は、上部旋回体4と、下部走行体2との間で無線通信を行う、と言える。
【0035】
次に、第1通信部83及び第2通信部84の配置について説明する。まず、第1通信部83の配置について説明する。
図5は、第1通信部83の配置を示す下面図である。
図6は、
図5の状態を左後方から見た斜視図である。なお、以下では、第1通信部83及び第2通信部84がアンテナ一体型で構成される場合について説明する。
【0036】
図5に示すように、第1通信部83は、第1支持板85の下面に配置される。第1通信部83は、第1支持板85に対して、ボルトB1で締結される。これにより、第1通信部83は、第1支持板85に固定される。第1支持板85は、金属製の板状部材の縁を下方に折り曲げて構成される。なお、第1支持板85は、単なる平板であってもよい。第1支持板85は、
図6に示すように、旋回フレーム41の左下板41aに対して、ボルトB2で締結される。これにより、第1支持板85は、旋回フレーム41に固定される。
【0037】
ここで、旋回フレーム41の左下板41aには、開口部41a1が形成されている。第1支持板85は、開口部41a1を介して第1通信部83が下方に露出するように、左下板41aに上方から固定される。これにより、第1通信部83は、上部旋回体4において、下部走行体2と向かい合う側、すなわち、下部走行体2側に配置される。
【0038】
なお、左下板41aには、第1通信部83を下方から覆う樹脂製の保護カバーが固定されてもよい。この場合、保護カバーによって第1通信部83が保護される。また、保護カバーが樹脂製であれば、第1通信部83に対する電波の送受信が、保護カバーによって遮断されるおそれも低減される。なお、第1通信部83は、旋回フレーム41の下面に直接固定されてもよい。
【0039】
次に、第2通信部84の配置について、
図2及び
図7に基づいて説明する。
図7は、下部走行体2における第2通信部84付近を拡大して示す左後方からの斜視図である。なお、
図7では、便宜的に、第2通信部84等を後方から覆うカバーの図示を省略している。
【0040】
第2通信部84は、第2支持板92上に支持ブラケット86を介して支持される。より詳しくは、支持ブラケット86は、上壁部86aと、左側壁部86bと、右側壁部86cと、を有する。上壁部86aは、平板で構成されており、第2支持板92の下板92aの上方において、左右方向に延びて位置する。第2通信部84は、上壁部86a上に配置され、ボルトB3によって固定される。左側壁部86b及び右側壁部86cは、上壁部86aの左右の各端部に連結され、各端部から下方に延びる。左側壁部86bおよび右側壁部86cの下端部は、左側及び右側にそれぞれ折り曲げられ、ボルトB4によって下板92aに固定される。
【0041】
第2支持板92は、支持ブラケット86及び第2鉛バッテリ91を支持する。第2鉛バッテリ91の構成については、後述する。第2支持板92は、上記した下板92aと、バッテリ支持部92bと、を備える。バッテリ支持部92bは、金属製の板状部材の前端および後端を下方に折り曲げて構成され、下板92aに対して、溶接等により固定される。
下板92aは、金属製の板状部材の左右の各端部を上方に折り曲げて構成される。下板92aは、センターフレーム21aの下方に位置するとともに、センターフレーム21aの後端から後方に張り出して設けられる。下板92aは、センターフレーム21aに対して、ボルト締結される。これにより、第2支持板92は、トラックフレーム21に固定される。以上により、第2通信部84は、支持ブラケット86及び第2支持板92を介して、下部走行体2に固定される。特に、第2通信部84は、下部走行体2において、上部旋回体4と向かい合う側、すなわち、上部旋回体4側に配置される。なお、第2通信部84は、トラックフレーム21の上面に直接固定されてもよい。
【0042】
このように、本実施形態の電動ショベル1は、上述した無線通信部82を有する。これにより、上部旋回体4と、下部走行体2との間では、無線で通信することができる。このため、上部旋回体4と、下部走行体2との間を電気的に接続する部材(例えばスリップリング)を省くことができる。したがって、スリップリングの劣化による接続不良(通信不良)が無くなる。つまり、上部旋回体4と、下部走行体2との間での電気的な接続不良に起因する通信不良を低減することができる。また、スイベルジョイント26からスリップリングを省くことができるため、スイベルジョイント26をコンパクトにすることができるとともに、スイベルジョイント26周辺の、スリップリングに接続されていた部材を省くことができる。したがって、スイベルジョイント26を含む旋回装置40周辺をコンパクトに配置することができる。
【0043】
上述のように、本実施形態では、上部旋回体4において、下部走行体2側に第1通信部83を配置し、下部走行体2において、上部旋回体4側に第2通信部84を配置する。これにより、第1通信部83と、第2通信部84とは、短い距離で配置されるため、第1通信部83と、第2通信部84との無線通信が、短い通信距離で行われる。したがって、第1通信部83と、第2通信部84との無線通信では、他の無線との干渉を避け、確実に通信することができる。つまり、第1通信部83と、第2通信部84との間で良好な通信状態を確保する観点では、本実施形態のように、上部旋回体4において、下部走行体2側に第1通信部83を配置し、下部走行体2において、上部旋回体4側に第2通信部84を配置することが望ましい。
【0044】
図2に示すように、第2通信部84は、下部走行体2の後方側に配置され、排土装置24は、下部走行体2の前方側に配置される。すなわち、前後方向において、第2通信部84は、排土装置24とは反対側に配置される。このため、第2通信部84が排土装置24と同じ側に配置される場合に比べて、排土作業時に排土装置24付近から飛来した土砂等が第2通信部84に接触し、第2通信部84が破損することが少なくなる。このように、第2通信部84が排土作業時に破損することが少なくなるという観点では、本実施形態のように、第2通信部84は、排土装置24とは反対側に配置されることが望ましい。
【0045】
ここで、上述した第2鉛バッテリ91の構成について、
図7に基づいて説明する。第2鉛バッテリ91は、上記の第2支持板92に設けられるバッテリ支持部92bの上方に配置される。また、第2鉛バッテリ91は、上記の支持ブラケット86の上壁部86aに対して下方に位置するとともに、左側壁部86bと、右側壁部86cとの間に位置する。第2鉛バッテリ91の上方には締付部材93が配置され、前方側及び後方側にはロッド94が配置される(前方側のロッド94は図示せず)。締付部材93は、上下方向及び前後方向に延びる金属製の板状部材の下端を右方に折り曲げて構成される。ロッド94は、下端が斜め上方に折り曲げられるとともに、上端にねじ部を有する棒状部材で構成される。ロッド94の下端は、バッテリ支持部92bに設けられる前後方向に貫通する貫通孔92b1に掛けられる。そして、ロッド94の上端は、締付部材93に設けられる貫通孔(図示せず)に挿入され、ナットN1と螺合される。ナットN1を回転させると、締付部材93が第2鉛バッテリ91をバッテリ支持部92bに締め付ける(押さえ付ける)。これにより、第2鉛バッテリ91は、バッテリ支持部92bに固定される。
【0046】
第2鉛バッテリ91は、低電圧(例えば12V)の直流電圧を出力する。第2鉛バッテリ91からの出力電圧は、電源電圧として、第2通信部84に供給される。すなわち、第2鉛バッテリ91は、第2通信部84に電力を供給する。
【0047】
このように、本実施形態では、第2通信部84に電力を供給する第2鉛バッテリ91が、下部走行体2に配置される。これにより、上部旋回体4から下部走行体2に電力を供給する部材(例えば、上記と同様のスリップリング)を省いても、第2通信部84へ電力が供給される。つまり、スリップリングを省いても、第2通信部84は作動する。したがって、スリップリングの劣化によって、電力供給が滞ることがなくなり、第2通信部84は、作動し続けることができ、上部旋回体4と、下部走行体2との間で確実に通信することができる。このように、第2通信部84へ滞りなく電力を供給するという観点では、本実施形態のように、下部走行体2は、第2通信部84に電力を供給する第2鉛バッテリ91を備えることが望ましい。
【0048】
また、第2通信部84と同様に、第2鉛バッテリ91は、下部走行体2の後方側に配置される。すなわち、前後方向において、第2鉛バッテリ91は、排土装置24とは反対側に配置される。この配置では、第2鉛バッテリ91が排土装置24と同じ側に配置される場合に比べて、排土作業時に排土装置24付近から飛来した土砂等が第2鉛バッテリ91に接触し、第2鉛バッテリ91が破損することが少なくなる。また、第2通信部84のメンテナンス等の場合において、排土装置24が邪魔にならず、第2鉛バッテリ91へのアクセスが容易になる。さらに、第2鉛バッテリ91と、第2通信部84とをまとめてコンパクトに配置することができる。以上の観点より、第2鉛バッテリ91は、排土装置24とは反対側に配置されることが望ましい。
【0049】
次に、上述した回転数センサ81の配置について説明する。
図8は、左側の走行モータ23に設けられる回転数センサ81付近を拡大して示す左後方からの斜視図である。なお、右側の走行モータ23に設けられる回転数センサ81については、左側の走行モータ23に設けられる回転数センサ81と左右対称となる配置であるため、ここではその説明を省略する。
【0050】
回転数センサ81は、センサブラケット101に支持される。センサブラケット101は、第1縦板101aと、第2縦板101bと、補強板101cと、を備える。第1縦板101aは、前後方向に延びる金属製の板状部材の後部が、前部に対して左側に位置するように折り曲げて構成される。第2縦板101bは、前後方向に延びる金属製の板状部材の前端と、後端とをそれぞれ右方に折り曲げて構成される。補強板101c(リブとも呼ばれる)は、前後方向及び左右方向に延びる、金属製で板状の補強部材である。第2縦板101b及び補強板101cは、第1縦板101aに対して、溶接等により固定される。第1縦板101aは、サイドフレーム21bに対して、ボルトB5で締結される。これにより、センサブラケット101は、トラックフレーム21に固定される。
【0051】
第1縦板101aには、左右方向に貫通する挿通孔(図示せず)が設けられる。上記の挿通孔の中心軸は、走行モータ23の回転軸Aと同一線上に位置する。上記の挿通孔に対して、回転数センサ81を右方から挿入し、回転数センサ81を第1縦板101aに対してボルト締結する。これにより、回転数センサ81は、センサブラケット101に支持されるとともに、走行モータ23の回転軸A上で、走行モータ23に対向する位置に配置される。
【0052】
また、回転数センサ81は、リンク102を介して、スプロケット23Sに締結される。スプロケット23Sは、走行モータ23によって回転駆動される。また、スプロケット23Sは、クローラ22(
図1参照)と噛み合うように設けられている。このため、スプロケット23Sの回転によって、クローラ22が駆動される。リンク102は、走行モータ23の径方向外側で左右方向に延びる金属製の板状部材の左右の端を、それぞれ走行モータ23の径方向内側に向かって折り曲げて構成される。リンク102の左方側は、回転数センサ81の回転部(図示せず)に固定され、リンク102の右方側は、ボルトB6によって、スプロケット23Sに固定される。走行モータ23が回転すると、スプロケット23Sが回転駆動されるとともに、リンク102を介して、上記の回転部が回転する。回転部の回転を検出することで、回転数センサ81は、走行モータ23の回転数を検出することができる。
【0053】
本実施形態では、回転数センサ81は、下部走行体2の後方側に位置する走行モータ23の側方に配置される。すなわち、回転数センサ81は、下部走行体2の後方側に配置される。したがって、前後方向において、第2通信部84、走行モータ23、及び回転数センサ81は、同じ側(後方側)に配置される。このため、第2通信部84と、回転数センサ81とを接続する電気配線W1を短くすることができる。したがって、第2通信部84と、回転数センサ81とを接続する配線の配策を容易にする観点では、本実施形態のように、第2通信部84は、前後方向において、回転数センサ81が設けられる走行モータ23と同じ側に配置されることが望ましい。
【0054】
〔4.旋回ベアリングに対する無線通信部の配置〕
旋回ベアリング25に対する第1通信部83及び第2通信部84の配置について説明する。
図9は、上部旋回体4が非旋回の状態での、旋回ベアリング25に対する第1通信部83及び第2通信部84の配置を模式的に示す平面図である。第1通信部83は、複数設けられてもよく、
図9では、例として、第1通信部83が2つ(右第1通信部83R、左第1通信部83L)設けられる場合を図示している。なお、右第1通信部83R及び左第1通信部83Lは、上記と同様に、上部旋回体4において、下部走行体2側に配置され、第2通信部84は、下部走行体2において、上部旋回体4側に配置される。
【0055】
図9に示すように、上方から見て、右第1通信部83R及び左第1通信部83Lは、旋回中心CRを中心とする円C上に配置される。なお、旋回中心CRは、上下方向に延びる上部旋回体4の旋回中心軸AX上の任意の位置を指す。右第1通信部83Rは、円C上で右方側に配置され、左第1通信部83Lは、円C上で左方側に配置される。右第1通信部83Rは、旋回中心CRに対して、左第1通信部83Lとは180度反対側に位置する。すなわち、右第1通信部83Rと、左第1通信部83Lとは、円C上で周方向に等間隔に配置される。第2通信部84は、上方から見て、円Cと重なって位置するが、円Cと径方向に多少ずれて位置してもよい。第1線分LS1は、右第1通信部83Rと、第2通信部84とを結ぶ線分である。第2線分LS2は、左第1通信部83Lと、第2通信部84とを結ぶ線分である。
【0056】
第1線分LS1及び第2線分LS2は、旋回ベアリング25に対して、旋回中心CRとは反対側に位置する。つまり、上方から見て、第1線分LS1及び第2線分LS2は、旋回ベアリング25の外側に位置する。このため、右第1通信部83R及び左第1通信部83Lは、旋回ベアリング25によって遮断されることなく、第2通信部84から送信される電波を受信することができる。
【0057】
次に、上部旋回体4が下部走行体2に対して旋回して位置する場合について説明する。
図10は、
図9において、上部旋回体4が下部走行体2に対して反時計回りに旋回して位置する場合を示す平面図である。上部旋回体4の旋回に伴い、右第1通信部83R及び左第1通信部83Lは、旋回中心CRを中心として反時計回りに回転移動される。第2通信部84は、下部走行体2に設けられるため、
図9と同一の位置に保たれる。
【0058】
第1線分LS1は、旋回ベアリング25を横切る。つまり、右第1通信部83Rは、第2通信部84に対して、旋回ベアリング25に遮られる位置に配置される。このため、右第1通信部83Rは、第2通信部84から送信される電波を受信できないおそれがある。他方、第2線分LS2は、旋回ベアリング25の外側に位置する。このため、左第1通信部83Lは、旋回ベアリング25によって遮断されることなく、第2通信部84から送信される電波を受信することができる。
【0059】
上記の配置では、上部旋回体4が下部走行体2に対して、いずれの旋回角度に位置するときにおいても、右第1通信部83R及び左第1通信部83Lの少なくとも一方と、第2通信部84との間で、無線で通信することができる。つまり、旋回中においても、上部旋回体4と、下部走行体2との間で無線通信が行われる。
【0060】
下部走行体2が旋回ベアリング25を備える構成で、上部旋回体4が旋回しても、第1通信部83と、第2通信部84との間で良好な通信状態を確保することが望ましい。この観点では、本実施形態のように、上部旋回体4が下部走行体2に対して、いずれの旋回角度に位置するときにおいても、上方から見て、第1通信部83の少なくともいずれかと、第2通信部84とを結ぶ線分が、旋回ベアリング25の外側に位置するように、第1通信部83が複数配置されることが望ましい。
【0061】
特に、複数の第1通信部83が円C上で周方向に等間隔で配置されると、上部旋回体4が旋回して、いずれかの第1通信部83が、上方から見て、円C上で旋回中心CRよりも前方側に位置する場合でも、残りのいずれかの第1通信部83が必ず、円C上で旋回中心CRよりも後方側に位置する。この場合、旋回中心CRよりも後方側に位置する上記第1通信部83と、第2通信部84とを結ぶ線分が、旋回ベアリング25の外側に確実に位置する。したがって、上部旋回体4の旋回角度によらず、少なくともいずれかの第1通信部83と第2通信部84との良好な通信状態を確実に確保する観点では、各第1通信部83は、上部旋回体4の旋回中心軸AXに対して周方向に等間隔に配置されることが望ましい。
【0062】
なお、第1通信部83の数を増やす等により、上部旋回体4の旋回角度によらず、いずれかの第1通信部83を円C上で旋回中心CRよりも後方側に位置させることができるのであれば、複数の第1通信部83は、円C上で周方向にランダムに配置されてもよい。
【0063】
上述のように、第2通信部84が円Cと重なって位置すると、上部旋回体4の旋回角度によっては、第1通信部83が第2通信部84の真上を通るときがある。このとき、第1通信部83と、第2通信部84との通信距離が最も短くなり、良好な通信状態が確保される。このように、通信距離を極力短くして良好な通信状態を確保する観点では、本実施形態のように、第2通信部84は、上方から見て、各第1通信部83が配置される円Cと重なって配置されることが望ましい。
【0064】
〔5.無線通信部の他の構成〕
第1通信部83及び第2通信部84の他の配置について説明する。
図11は、第1通信部83及び第2通信部84の他の配置を模式的に示す平面図である。
【0065】
無線通信部82に含まれる第1通信部83及び第2通信部84は、上部旋回体4及び下部走行体2にそれぞれ設けられる。第1通信部83及び第2通信部84は、上方から見て、旋回ベアリング25に対して、旋回中心CRが位置する側に配置される。また、第1通信部83及び第2通信部84は、上方から見て、スイベルジョイント26近傍に配置される。スイベルジョイント26は、旋回中心CRに対応する位置に設けられる。つまり、第1通信部83及び第2通信部84は、上方から見て、旋回ベアリング25の内側に配置されつつ、スイベルジョイント26の外側に配置される。例えば、第1通信部83は、旋回フレーム41の内部で、スイベルジョイント26の左方側に固定され、第2通信部84は、センターフレーム21aの内部で、スイベルジョイント26の後方側に固定される。第2通信部84から送信される電波は、上部旋回体4及び下部走行体2が有する隙間を通って、第1通信部83で受信されるが、上記の電波が通るための開口部(図示せず)が、第1通信部83の下方側と、第2通信部84の上方側とに、それぞれ設けられてもよい。
【0066】
上部旋回体4と、下部走行体2との間で無線通信しつつ、旋回ベアリング25の内側の空スペースを有効活用することが望ましい。この観点では、本実施形態のように、無線通信部82は、上方から見て、旋回ベアリング25の内側に配置されることが望ましい。
【0067】
さらに、旋回ベアリング25と、スイベルジョイント26とを備える構成においても、上部旋回体4と、下部走行体2との間で無線通信しつつ、旋回ベアリング25の内側の空スペースを有効活用することが望ましい。この観点では、本実施形態のように、無線通信部82は、上方から見て、旋回ベアリング25と、スイベルジョイント26との間に配置されることが望ましい。
【0068】
次に、第1通信部83及び第2通信部84がアンテナ別置型で構成される場合について説明する。
図12は、アンテナ別置型で構成される第1通信部83及び第2通信部84の配置を模式的に示す左側面図である。なお、
図12では、便宜的に、クローラ22、走行モータ23、及び排土装置24等の図示を省略している。
【0069】
上述のように、第1通信部83及び第2通信部84は、アンテナ別置型で構成されてもよい。すなわち、第1通信部83に含まれる第1アンテナ83aと、第1処理部83bとは、別々の筐体で構成されてもよい。そして、第2通信部84に含まれる第2アンテナ84aと、第2処理部84bとは、別々の筐体で構成されてもよい。このとき、第1アンテナ83aと、第1処理部83bとは、第1接続ケーブル83cを介して、接続される。第2アンテナ84aと、第2処理部84bとは、第2接続ケーブル84cを介して、接続される。第1接続ケーブル83c及び第2接続ケーブル84cは、第1アンテナ83aから出力される信号S3と、第2処理部から出力される信号S2とがそれぞれ流れる伝送媒体で構成される(
図4参照)。
【0070】
第1通信部83及び第2通信部84がアンテナ別置型で構成されることで、アンテナと、処理部とが分離されるため、それぞれを小型化することができる。これにより、それぞれの配置が容易になり、電動ショベル1内の空スペースを有効活用することができる。したがって、空スペースを有効活用するという観点では、本実施形態のように、第1通信部83及び第2通信部84は、アンテナ別置型でそれぞれ構成されるのが望ましい。
【0071】
第1アンテナ83aは、上部旋回体4の底面に配置され、第1処理部83bは、上部旋回体4の内部に設けられる。例えば、第1アンテナ83aは、旋回フレーム41の下面に固定され、第1処理部83bは、旋回フレーム41の内部に固定される。第2アンテナ84aは、下部走行体2において、上部旋回体4と対向する位置に配置され、第2処理部84bは、下部走行体2の内部に設けられる。例えば、第2アンテナ84aは、センターフレーム21aの上面に固定され、第2処理部84bは、センターフレーム21aの内部に固定される。
【0072】
この配置では、第1アンテナ83aと、第2アンテナ84aとの間で無線通信しつつ、第1処理部83bと、第2処理部84bとは、電動ショベル1の外部に対して隔離して配置されるため、外部から飛来した土砂等によって、破損するおそれがなくなる。この観点では、本実施形態のように、第1アンテナ83aは、上部旋回体4の底面に配置され、第1処理部83bは、上部旋回体4内に設けられ、第2アンテナ84aは、下部走行体2において、上部旋回体4と対向する位置に配置され、第2処理部84bは、下部走行体2内に設けられることが望ましい。
【0073】
〔6.補足〕
本実施形態では、
図4に示すように、走行モータ23の回転数を検出する回転数センサ81から出力される信号S1のみが、無線通信部82に入力される例について説明したが、複数の信号が入力されてもよい。例えば、ブレード24aの姿勢を検出する姿勢検出センサをさらに備え、回転数センサ81から出力される信号S1と、上記の姿勢検出センサから出力される信号とを合わせて、無線通信部82に入力する。これにより、複数の信号が、無線通信を介して、システムコントローラ67に伝送される。
【0074】
本実施形態では、下部走行体2から上部旋回体4へ送信される電波による無線通信の例について説明したが、無線通信は、この方向に限定されない。例えば、システムコントローラ67を複数備える構成において、システムコントローラ67の1つが下部走行体2に配置される場合には、上部旋回体4から下部走行体2へ送信される電波による無線通信が行われてもよいし、双方向の無線通信が行われてもよい。また、システムコントローラ67とは別の制御装置が、下部走行体2に後付けされる構成においても、上部旋回体4から下部走行体2へ送信される電波による無線通信が行われてもよいし、双方向の無線通信が行われてもよい。
【0075】
電動ショベル1は、ポンプモータ61の代わりに、エンジンを用いて油圧ポンプ71を駆動する構成であってもよい。
【0076】
電動ショベル1は、オペレータが搭乗して電動ショベル1を操縦可能にする操縦部を備える構成であってもよい。
【0077】
以上では、作業機械として、電動ショベル1を例に挙げて説明したが、作業機械は電動ショベル1に限定されず、油圧ショベル、移動式クレーン等の建設機械であってもよい。
【0078】
〔7.付記〕
本実施形態で説明した電動ショベル1は、以下の付記に示す作業機械と表現することもできる。
【0079】
付記(1)の作業機械は、
走行体と、
前記走行体に対して旋回可能に設けられる旋回体と、
前記旋回体と前記走行体との間で無線通信を行う無線通信部と、を備える。
【0080】
付記(2)の作業機械は、付記(1)に記載の作業機械において、
前記無線通信部は、
前記旋回体において、前記走行体側に配置される第1通信部と、
前記走行体において、前記旋回体側に配置される第2通信部と、を含む。
【0081】
付記(3)の作業機械は、付記(2)に記載の作業機械において、
前記走行体は、
前記旋回体を旋回可能に支持する旋回ベアリングをさらに備え、
前記旋回体は、複数の前記第1通信部を有し、
前記各第1通信部は、(前記旋回体が前記走行体に対していずれの旋回角度に位置するときにおいても、)上方から見て、前記各第1通信部の少なくともいずれかと前記第2通信部とを結ぶ線分が前記旋回ベアリングの外側に設けられる位置に配置される。
【0082】
付記(4)の作業機械は、付記(3)に記載の作業機械において、
前記各第1通信部は、前記旋回体の旋回中心軸に対して周方向に等間隔に配置される。
【0083】
付記(5)の作業機械は、付記(4)に記載の作業機械において、
前記第2通信部は、上方から見て、前記各第1通信部が配置される円と重なる位置に配置される。
【0084】
付記(6)の作業機械は、付記(2)から(5)のいずれかに記載の作業機械において、
前記走行体は、
前記走行体に左右一対に設けられる走行モータと、
前記走行モータに設けられる回転数センサと、をさらに備え、
前記走行モータは、前記走行体が走行する前後方向の一方側に配置され、
前記回転数センサは、前記第2通信部に電気配線を介して接続され、
前記第2通信部は、前記前後方向の前記一方側に配置される。
【0085】
付記(7)の作業機械は、付記(2)から(6)のいずれかに記載の作業機械において、
前記走行体は、前記第2通信部に電力を供給するバッテリをさらに備える。
【0086】
付記(8)の作業機械は、付記(2)から(5)のいずれかに記載の作業機械において、
前記走行体は、
前記走行体が走行する前後方向の一方側に設けられる排土装置をさらに備え、
前記第2通信部は、前記前後方向の他方側に配置される。
【0087】
付記(9)の作業機械は、付記(8)に記載の作業機械において、
前記走行体は、
前記第2通信部に電力を供給するバッテリをさらに備え、
前記バッテリは、前記前後方向の前記他方側に配置される。
【0088】
付記(10)の作業機械は、付記(2)から(9)のいずれかに記載の作業機械において、
前記第1通信部は、第1アンテナと、前記第1アンテナと別個に配置され、前記第1アンテナを介して無線通信する信号を処理する第1処理部とを有し、
前記第2通信部は、第2アンテナと、前記第2アンテナと別個に配置され、前記第2アンテナを介して無線通信する信号を処理する第2処理部とを有する。
【0089】
付記(11)の作業機械は、付記(10)に記載の作業機械において、
前記第1アンテナは、前記旋回体の底面に配置され、
前記第1処理部は、前記旋回体内に設けられ、
前記第2アンテナは、前記走行体において前記旋回体と対向する位置に配置され、
前記第2処理部は、前記走行体内に設けられる。
【0090】
付記(12)の作業機械は、付記(1)に記載の作業機械において、
前記走行体は、
前記旋回体を旋回可能に支持する旋回ベアリングをさらに備え、
前記無線通信部は、上方から見て、前記旋回ベアリングの内側に配置される。
【0091】
付記(13)の作業機械は、付記(12)に記載の作業機械において、
前記走行体は、
前記旋回体とともに旋回するスイベルジョイントをさらに備え、
前記無線通信部は、上方から見て、前記旋回ベアリングと前記スイベルジョイントとの間に配置される。
【0092】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で拡張または変更して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、例えば建設機械等の作業機械に利用可能である。
【符号の説明】
【0094】
1 電動ショベル(作業機械)
2 下部走行体(走行体)
4 上部旋回体(旋回体)
23 走行モータ
24 排土装置
25 旋回ベアリング
26 スイベルジョイント
81 回転数センサ
82 無線通信部
83 第1通信部
83a 第1アンテナ
83b 第1処理部
84 第2通信部
84a 第2アンテナ
84b 第2処理部
91 第2鉛バッテリ
W1 電気配線