(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143629
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】細隙灯顕微鏡
(51)【国際特許分類】
A61B 3/135 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
A61B3/135
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056403
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000220343
【氏名又は名称】株式会社トプコン
(74)【代理人】
【識別番号】240000327
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人クレオ国際法律特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕司
(72)【発明者】
【氏名】山本 諭史
【テーマコード(参考)】
4C316
【Fターム(参考)】
4C316AA02
4C316AA09
4C316AB16
4C316AB19
4C316FA18
4C316FB01
4C316FY02
4C316FY03
4C316FY05
4C316FY08
4C316FY09
4C316FZ01
(57)【要約】
【課題】一対のスリット刃を閉じた際にそれらの隙間からの光が漏れることを防止できる細隙灯顕微鏡を提供する。
【解決手段】細隙灯顕微鏡10は、被検眼Eに向けてスリット光を照射する照明系12と、照明系12において光源121からの光を一対のスリット刃125a、125bの間を通すことで任意の幅のスリット光とするスリット部125と、光源121を制御する制御部(31)と、を備える。制御部(31)は、一対のスリット刃125a、125bが閉じられると光源121を消灯する。
【選択図】
図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検眼に向けてスリット光を照射する照明系と、
前記照明系において光源からの光を一対のスリット刃の間を通すことで任意の幅の前記スリット光とするスリット部と、
前記光源を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、一対の前記スリット刃が閉じられると前記光源を消灯することを特徴とする細隙灯顕微鏡。
【請求項2】
さらに、一対の前記スリット刃の間隔を検出するスリット間隔検出部を備え、
前記制御部は、前記スリット間隔検出部からの検出結果に基づいて一対の前記スリット刃の間隔が所定の設定間隔よりも小さいと判断すると、一対の前記スリット刃が閉じられているものとして前記光源を消灯することを特徴とする請求項1に記載の細隙灯顕微鏡。
【請求項3】
さらに、回転操作により一対の前記スリット刃の間隔を調整するスリット開閉ノブを備え、
前記スリット開閉ノブでは、一対の前記スリット刃の間隔を閉じる回転位置となると、回転操作に対する回転抵抗が部分的に変化することを特徴とする請求項2に記載の細隙灯顕微鏡。
【請求項4】
前記スリット光の状態を検出するスリット光検出部を備え、
前記制御部は、前記スリット光検出部からの検出結果に基づいて前記スリット光が適切に形成されていないと判断すると、前記光源を消灯することを特徴とする請求項1に記載の細隙灯顕微鏡。
【請求項5】
さらに、前記被検眼による反射光を観察または撮影する観察系と、
前記被検眼を赤外光で照射する背景照明ユニットと、を備え、
前記制御部は、一対の前記スリット刃が閉じられて前記光源を消灯すると、前記背景照明ユニットによる前記赤外光の照射を開始させることを特徴とする請求項1に記載の細隙灯顕微鏡。
【請求項6】
前記制御部は、一対の前記スリット刃が開かれると前記光源を点灯するとともに、前記背景照明ユニットによる前記赤外光の照射を停止させることを特徴とする請求項5に記載の細隙灯顕微鏡。
【請求項7】
さらに、前記被検眼による反射光を観察または撮影する観察系を備え、
前記観察系では、前記光源の点灯状態を示す状態表示部を有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載の細隙灯顕微鏡。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、細隙灯顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被検眼にスリット光を照射する照明系と、被検眼を観察するための観察系とを備える細隙灯顕微鏡がある。この細隙灯顕微鏡では、照明系において、光源からの光を一対のスリット刃の間を通すことにより、任意の幅のスリット光とするスリット部が設けられているものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この従来の細隙灯顕微鏡では、一対のスリット刃を閉じる、すなわち一対のスリット刃の間隔をなくすことにより、その両スリット刃で光源からの光を遮蔽して、被検眼にスリット光を照射しない状態にできる。しかしながら、細隙灯顕微鏡では、一対のスリット刃同士を接触させても、両スリット刃の加工精度を極めて高くしないと一対のスリット刃の間に隙間が形成され、その隙間から光が漏れることで被検眼に届いてしまう。すると、細隙灯顕微鏡では、一対のスリット刃の間に形成された隙間が被験者や検者に認識されることとなり、品質が低いかのような印象を与えてしまう。
【0005】
本開示は、上記の事情に鑑みて為されたもので、一対のスリット刃を閉じた際にそれらの隙間からの光が漏れることを防止できる細隙灯顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した課題を解決するために、本開示の細隙灯顕微鏡は、被検眼に向けてスリット光を照射する照明系と、前記照明系において光源からの光を一対のスリット刃の間を通すことで任意の幅の前記スリット光とするスリット部と、前記光源を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、一対の前記スリット刃が閉じられると前記光源を消灯することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本開示の細隙灯顕微鏡によれば、一対のスリット刃を閉じた際にそれらの隙間からの光が漏れることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施例1の細隙灯顕微鏡の全体構成を示す側面図である。
【
図4】背景照明ユニットを取り付けた様子を示す説明図である。
【
図5】背景照明ユニットの構成を示す説明図である。
【
図6】コントローラの構成を示すブロック図である。
【
図7】メイン制御部における光量制御の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本開示に係る細隙灯顕微鏡の一実施形態について
図1から
図8を参照しつつ説明する。
(実施例1)
【0010】
実施例1の細隙灯顕微鏡10の構成を、「全体構成」、「照明系の詳細構成」、「観察系の詳細構成」、「背景照明ユニットの詳細構成」に分けて説明する。この細隙灯顕微鏡10は、スリット光を用いて被検眼Eの角膜の光切片を切り取ることにより、角膜の断面の画像を取得する眼科装置として使用される。
【0011】
[全体構成]
細隙灯顕微鏡10は、
図1に示すように、顕微鏡本体11と、照明系12と、観察系13と、背景照明ユニット20と、制御用のコントローラ30と、を備える。顕微鏡本体11は、テーブル1に設置され、照明系12、観察系13、背景照明ユニット20をそれぞれ支持する。顕微鏡本体11は、テーブル1の上面に固定された台座11aと、台座11aの上面に設けられた基台14と、基台14の上面に設けられた支持部15と、台座11aに支持された顎受け台16と、を有する。基台14は、台座11aに対し、移動機構部14aを介して被検眼Eから見て前後方向および左右方向に移動可能に設置されている。基台14は、操作ハンドル14bを傾倒操作することで移動する。また、操作ハンドル14bを軸周りに回転操作することで、基台14の上面に設けられた支持部15が上下方向に移動する。
【0012】
支持部15は、台座15aと第1支持アーム15bと第2支持アーム15cとを有する。台座15aは、基台14の上面に設けられ、この台座15aから第1支持アーム15bと第2支持アーム15cとが上方に伸びている。ここで、第1支持アーム15bと第2支持アーム15cとは、同軸の垂直軸を中心にそれぞれ独立して回転移動することが可能とされている。
【0013】
第1支持アーム15bは、上部に照明系12を収容する照明系ハウジング12aが取り付けられて、その照明系12を支持する。この第1支持アーム15bは、手動により回転移動可能とされており、自らが回転移動することで照明系ハウジング12aを被検眼Eの周囲で旋回させる。これにより、被検眼Eに対するスリット光の照射方向を変更できる。なお、第1支持アーム15bは、上下方向にも回転移動とする構成としてもよい。このような構成とすると、第1支持アーム15bは、は被検眼Eに対するスリット光の仰角や俯角を変更することができる。第2支持アーム15cは、上部に観察系13を収容した観察系ハウジング13aが取り付けられ、その観察系13を支持する。この第2支持アーム15cは、回転移動が可能とされており、自らが回転移動することで観察系ハウジング13aを第1支持アーム15bの周囲を旋回させる。これにより、被検眼Eに対する観察系13の観察方向を変更できる。
【0014】
なお、第1支持アーム15bおよび第2支持アーム15cは、電動により自動で回転移動する構成であってもよい。この場合、第1支持アーム15bと第2支持アーム15cとを回転移動させる駆動力を発生するアクチュエータと、この駆動力を伝達する伝達機構と、を有するアーム駆動機構が必要となる。アクチュエータとしては、例えばステッピングモータ(パルスモータ)を用いることができ、伝達機構としては、例えば歯車の組み合わせやラック・アンド・ピニオン等を用いることができる。
【0015】
顎受け台16は、観察系ハウジング13aの前方に対峙する位置に配置されている。この顎受け台16には、被検者の顔を安定させるための顎受け部16aおよび額当部16bが設けられている。この細隙灯顕微鏡10では、テーブル1に正対した被検者が顎受け部16aおよび額当部16bに顔を接触した状態で、検者が被検眼Eの観察を行う。
【0016】
照明系12は、被検眼Eに向けてスリット光を照射する。照明系12は、照明系ハウジング12aに収容されている。スリット光の強度は、基台14に設けられた明るさ調整ノブ14cを操作することで変更することができる。なお、「スリット光」とは、照射領域の一部を遮ることで照射領域が帯状に形成された光であり、被検眼Eの角膜や眼底を観察するための照明光である。照明系ハウジング12aの下方には、照明系12から照射されたスリット光を被検眼Eに向けて反射するミラー12bが配置されている。ミラー12bは、第1支持アーム15bに取り付けられている。なお、このミラー12bにより、背景照明ユニット20から照射された背景光を被検眼Eに向けて反射することも可能とされている。
【0017】
観察系13は、被検眼Eによる反射光を観察および撮影する。ここで、「反射光」には、被検眼Eで反射されたスリット光や背景光だけでなく、例えば被検眼Eやその周辺からの散乱光などの各種の光が含まれる。実施例1では、これら各種の光を含めて「反射光」と呼ぶ。この観察系13は、観察系ハウジング13aに収容されている。観察系ハウジング13aの終端には、接眼部13bが設けられている。検者は、接眼部13bを覗き込むことで被検眼Eを肉眼で観察する。また、観察系ハウジング13aの側面には、観察倍率を変更するための観察倍率操作ノブ13cが配置されている。
【0018】
さらに、観察系ハウジング13aには、被検眼Eを撮影するための撮像装置13dが取り外し可能に接続されている。撮像装置13dは、撮像素子13eを有する。その撮像素子13eは、光を検出して電気信号(画像信号)を出力する光電変換素子である。撮像素子13eは、画像信号をコントローラ30に出力する。この撮像素子13eは、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサや、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサが用いられる。
【0019】
背景照明ユニット20は、被検眼Eに対して、照明系12から照射されたスリット光の照射領域の周囲の領域を背景光で照明する。背景照明ユニット20による照射領域は、少なくともこの周囲領域を含んでいればよく、照明系12による照射領域と一部が重複していてもよい。
【0020】
コントローラ30は、細隙灯顕微鏡10(顕微鏡本体11)に接続されており、細隙灯顕微鏡10の各部を制御するもので、各種の制御処理や演算処理を行う。このコントローラ30は、実施例1では基台14に内蔵されているが、顕微鏡本体11等に収容するものとしてもよく、顕微鏡本体11とは別体とされていてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0021】
[照明系の詳細構成]
照明系12は、
図2に示すように、照明光軸O1上に設けられた、光源121と、リレーレンズ122と、照明絞り123と、集光レンズ124と、スリット部125と、視野絞り部126と、結像レンズ127と、を有する。光源121は、被検眼Eの角膜や眼底を観察するためのスリット光の光源である。この光源121は、少なくとも可視光を出力することができ、実施例1では、定常光を出力する光源(ハロゲンランプ、LED(Light Emitting Diode)等)と、フラッシュ光を出力する光源(キセノンランプ、LED等)と、の双方を用いるものとされている。なお、照明系12は、単独の光源で構成されていてもよく、複数の光源で構成されていてもよい。照明系12は、例えば、角膜観察用の光源と眼底観察用の光源とを別々に設ける等のように複数の単色光源を別々に設けてもよい。光源121は、後述するメイン制御部31の制御下で印加電力の大きさにより光度(光量)を変更することが可能とされている。
【0022】
照明絞り123は、照明光の周縁部を遮蔽し、中央部分のみを透過させる。この照明絞り123は、透光部のサイズ(径寸法、開口面積)が変更可能となっており、被照明部の照度を調整する。照明絞り123は、被検眼Eの角膜Ecや水晶体による照明光の反射を低減させたり、照明光の明るさを調整したりすることができる。実施例1の照明絞り123は、照明系ハウジング12aに設けられた絞りノブ123aを有する。この絞りノブ123aは、リンク機構を介して透光部を形成する絞り枠部に連結されており、自らに為された回転操作に応じて透光部のサイズを変化させる。なお、絞りノブ123aは、透光部のサイズを、他の構成での手動操作により任意に調整可能としてもよいし、電動により後述するメイン制御部31の制御下で調整する構成としてもよい。
【0023】
スリット部125は、スリット光(細隙光)を生成するために用いられる。このスリット部125は、互いに所定間隔をおいて対向して配置された一対のスリット刃125a、125b(
図2、
図3参照)を有する。スリット部125は、一対のスリット刃125a、125bを移動させることができ、その両スリット刃125a、125bの間隔(スリット幅)を任意の大きさとすることができる。実施例1のスリット部125は、第1支持アーム15bの下部に設けられたスリット開閉ノブ125c(
図1参照)を有する。
【0024】
このスリット開閉ノブ125cは、リンク機構を介して一対のスリット刃125a、125bに連結されており、自らに為された回転操作が一対のスリット刃125a、125bの近づく方向や離れる方向への移動として伝達される。このため、スリット部125では、スリット開閉ノブ125cが回転操作されると、その回転方向に応じて一対のスリット刃125a、125bを接近または離れさせて任意の間隔dとさせる。このため、スリット部125は、スリット開閉ノブ125cの回転操作に応じてスリット光の幅を変更することができる。なお、スリット部125は、一対のスリット刃125a、125bの間隔dを、他の構成での手動操作により任意に調整可能としてもよいし、電動により後述するメイン制御部31の制御下で調整する構成としてもよい。
【0025】
実施例1のスリット開閉ノブ125cでは、間隔dを最も大きくする全開回転位置から、間隔dを最も小さくする全閉回転位置までの回転操作が可能とされている。そして、スリット開閉ノブ125cでは、回転操作に対する回転抵抗(回転に抗する力)が、全閉回転位置とされるとその他の回転位置とは異なるものとされている。このため、スリット開閉ノブ125cでは、回転抵抗が高くなる(増す)ほど回転操作に要する力が大きくなり、回転抵抗が低くなる(減る)ほど回転操作に要する力が小さくなる。これにより、スリット開閉ノブ125cでは、回転操作の手ごたえから、全閉回転位置となったこと、すなわち一対のスリット刃125a、125bが閉じる位置となったことの把握が可能とされている。この回転操作に対する回転抵抗の変化は、例えば、スリット開閉ノブ125cと、それを回転可能に支持する第1支持アーム15b(その支持箇所)と、の一方に板バネ状の突起部を設けるとともに他方に突起部を受け入れる凹部を設け、全閉回転位置で突起部と凹部とが嵌る構成とすることができる。このような構成とすると、全閉回転位置となると所謂クリック感を得ることができ、違和感なく検者が回転操作できるとともに全閉回転位置になったことを手ごたえだけで把握できる。なお、この回転操作に対する回転抵抗の変化は、全閉回転位置であることを手ごたえから把握させるものであれば、他の構成としてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0026】
また、照明系12は、光源121からの照明光束が通過する開口部128aの面積を変更可能な光束制御部128を有する。この光束制御部128は、光源121からの照明光束の一部を遮ることにより、被検眼E上の照明範囲を制限する。
【0027】
さらに、照明系12は、フィルタ部129を有する。このフィルタ部129は、任意のフィルタFを選択して光路上に挿入(配置)させたり、光路上から外したりする。そのフィルタFは、照明光の特定の成分を除去または弱める作用を持つ光学素子で構成される。フィルタFは、たとえば、被検眼Eの蛍光観察においてコントラストの向上のために用いられる蛍光フィルタ(青色に対応する波長成分を特に透過させるフィルタ(ブルーフィルタ))がある。このフィルタFは、他には、血管の観察を容易とする無赤色フィルタ(緑フィルタ)や、色を変えることなく光量を下げる減光フィルタ(NDフィルタ)等を用いることができる。
【0028】
実施例1のフィルタ部129は、選択されたフィルタF(蛍光フィルタ、無赤色フィルタ、減光フィルタ等)を、照明系12の光路上に挿入させたり光路上から外したりするために、照明系ハウジング12aに設けられたフィルタ切換レバー129aを有する。このフィルタ切換レバー129aは、リンク機構を介して各フィルタF(その支持枠)に連結されており、自らに為されたスライド操作の位置に応じて任意のフィルタFを光路上に挿入させる。なお、フィルタ部129は、任意のフィルタFを光路上に挿入させたり光路上から外したりするものであれば、他の構成での手動操作により行うものとしてもよいし、電動により後述するメイン制御部31の制御下で行うものとしてもよい。
【0029】
[観察系の詳細構成]
観察系13は、左右一対の光学系を備える。検者は、観察系13の左右の光学系により被検眼Eを双眼で観察できる。なお、符号Ecは被検眼Eの角膜を、符号Epは虹彩を、符号Erは眼底をそれぞれ示している。符号Eoは検者眼を示している。観察系13では、左右の光学系が略同様の構成とされているので、以下の説明と
図2とでは、一方のみを示すこととする。この観察系13の各光学系は、
図2に示すように、観察光軸O2上に設けられた、対物レンズ131と、変倍光学系132と、絞り133と、ビームスプリッタ134と、結像レンズ135と、プリズムユニット136と、接眼レンズ137と、を有する。なお、ビームスプリッタ134は、観察系13の左右の光学系の一方のみに設けられていてもよく、左右の光学系の双方に設けられていてもよい。
【0030】
接眼レンズ137は、接眼部13b内に設けられている。観察系13では、結像レンズ135により観察部位の像が結像位置Pに結像される。検者(検者眼Eo)は、接眼レンズ137を介して結像位置Pの像を観察する。
【0031】
変倍光学系132は、被検眼Eの接眼レンズ137による観察像や撮影画像の倍率(画角)を変更する。この変倍光学系132は、観察光軸O2に対して選択的に挿入可能な複数の変倍レンズ群で構成される。その各変倍レンズ群は、複数(
図2では2枚)の変倍レンズ132a、132bを有し、それぞれ異なる倍率を付与する。変倍光学系132では、各変倍レンズ群のうち、観察光軸O2上に配置された変倍レンズ群により倍率が設定される。この変倍光学系132では、倍率の変更、すなわち観察光軸O2上に配置される変倍レンズ群の切り替えを、観察倍率操作ノブ13cを操作することにより行うことができる。なお、変倍光学系132では、図示しないスイッチ等を用いて、電動により後述するメイン制御部31の制御下で倍率の変更(変倍レンズ群の切り替え)を行う構成としてもよい。
【0032】
ビームスプリッタ134は、観察光軸O2に沿って進む光を二分割する。ビームスプリッタ134を透過した光は、結像レンズ135、プリズムユニット136および接眼レンズ137を介して検者の検者眼Eoに導かれる。そのプリズムユニット136は、2つの光学素子136a、136bを有し、像を反転するとともに検者の眼幅に合わせて左右の観察光軸O2の幅を変更する。また、ビームスプリッタ134により反射された光は、結像レンズ138およびミラー139を介して、撮像装置13dの撮像素子13eに導かれる。撮像素子13eは、この反射光を検出して画像信号を生成する。
【0033】
[背景照明ユニットの詳細構成]
背景照明ユニット20は、観察系13における観察像の背景を照射する。実施例1の背景照明ユニット20は、
図4に示すように、顕微鏡本体11とは別体に形成され、顕微鏡本体11の任意の位置(図示の例では照明系ハウジング12a)に取り付けることが可能とされている。その取付手段としては、磁石や吸盤、粘着シート、面ファスナー等を単独でまたは適宜組み合わせて用いることができる。また、顕微鏡本体11(照明系ハウジング12a)にホルダを設け、このホルダに背景照明ユニット20(後述するユニットケース21)を支持させることで、背景照明ユニット20を顕微鏡本体11に取り付ける構成としてもよい。
【0034】
この背景照明ユニット20は、
図5に示すように、ユニットケース21と、背景用光源22と、バッテリ23と、背景光制御部24と、背景光操作部25と、を備える。背景照明ユニット20は、照明系ハウジング12aに取り付けられることで、背景用光源22からの背景照明光軸O3が照明光軸O1(観察光軸O2)に合流される(
図2、
図4参照)。ユニットケース21は、背景用光源22、バッテリ23、背景光制御部24、背景光操作部25を収容する。このユニットケース21には、背景用光源22からの照射される背景光を透過可能な開口部21aと、バッテリ23を充電するための充電端子21bと、が設けられている。その充電端子21bは、ユニットケース21の外部に露出されている。なお、ユニットケース21の外形は、直方体や円柱形、三角錐形状等任意の形状にできる。
【0035】
背景用光源22は、スリット光の照射領域の周囲を照らす背景光の光源である。この背景用光源22は、肉眼観察や撮影に用いられる可視光の出力が可能とされ、例えば、ハロゲンランプやLED等を用いることができる。背景用光源22は、印加電力の大きさにより光度(光量)を変更することが可能である。実施例1の背景用光源22は、マイボーム腺の観察や撮影に用いられる赤外光を出力可能とされており、可視光源と赤外光源とを適宜選択して出力可能な構成とされている。なお、背景用光源22は、可視光源と赤外光源との一方のみから出力可能な構成とされていてもよい。
【0036】
バッテリ23は、背景用光源22や背景光制御部24等への電力供給源であり、実施例1では充電端子21bを介して充電を行うことで繰り返し使用できる二次電池とされている。このようなバッテリ23としては、ニッケル水素電池や、リチウムイオン電池を用いることができる。
【0037】
背景光制御部24は、CPUやメモリを有し、背景光操作部25や後述するメイン制御部31から入力された指令に基づき、背景用光源22の制御を行う。この背景光制御部24は、バッテリ23から背景用光源22へと印加される電力の大きさを制御し、背景用光源22のON/OFF状態や、光度(背景光の強度)等を適宜変更する。背景光操作部25は、検者等によって操作される操作デバイスであり、スイッチ、ボタン、ダイアル等で構成される。この背景光操作部25は、ユニットケース21の表面に露出して設けられ、検者による操作が可能とされている。背景光操作部25は、背景光制御部24に対する操作に応じた任意の指令を入力でき、例えば、背景用光源22のON/OFF状態や光度等を変更する指令を入力できる。
【0038】
なお、背景照明ユニット20では、ユニットケース21の内部に、背景用光源22から照射された背景光を集束させるレンズを設ける構成としてもよい。また、背景照明ユニット20は、ミラー12bを通ることなく被検眼Eを照射するものであってもよい。
【0039】
[制御系の構成]
細隙灯顕微鏡10の制御系となるコントローラ30について、
図2、
図6等を参照しながら説明する。コントローラ30は、CPU(Central Processing Unit)が用いられたメイン制御部31を有する。このメイン制御部31は、必要な情報を取得し、細隙灯顕微鏡10の照明系12、観察系13、背景照明ユニット20(その背景光制御部24)に対して適宜制御指令を出力する。後述する記憶部32に、制御プログラムが予め記憶されている。メイン制御部31からの制御指令は、この制御プログラムとハードウェアとが協働することで実現される。このメイン制御部31には、記憶部32と、表示部33と、メイン操作部34と、明るさ調整ノブ14cと、が接続されている。
【0040】
メイン制御部31は、マイクロプロセッサ、RAM、ROM、ハードディスクドライブ等を含んで構成される。このハードディスクドライブには、制御プログラムが予め記憶されている。メイン制御部31の動作は、この制御プログラムと上記ハードウェアとが協働することによって実現される。メイン制御部31は、メイン操作部34や明るさ調整ノブ14cへの入力操作に基づいて、細隙灯顕微鏡10(照明系12、観察系13、背景照明ユニット20等)を統括的に制御する。また、メイン制御部31は、記憶部32に記憶されたデータの読み出し処理や、記憶部32に対するデータの書き込み処理を行う。
【0041】
このメイン制御部31(その後述する光量調整部51)は、明るさ調整ノブ14cに為された回転操作等に応じて、照明系12の光源121への印加電力の大きさを調整することにより、光源121の光度(光量)を変更する。このため、メイン制御部31は、光源121を制御する制御部として機能する。また、メイン制御部31は、観察系13の撮像素子13eにおける電荷蓄積時間の制御、受光感度の制御、フレームレートの制御等を行い、撮像素子13eが生成した画像信号を取得する。さらに、メイン制御部31は、背景光制御部24を制御すること、すなわち背景光制御部24を介して背景照明ユニット20の背景用光源22の動作を制御することができる。そして、メイン制御部31は、背景照明ユニット20の背景光操作部25に為された操作(その信号)の取得が可能とされている。このメイン制御部31は、メイン操作部34や背景光操作部25に為された操作等に応じて、背景用光源22への印加電力の大きさを調整することにより、背景用光源22の光度(光量)を変更する。
【0042】
記憶部32は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、ハードディスクドライブ等を含む構成とされ、各種のデータやコンピュータプログラムが書き込まれるとともに、それらを読み出すことが可能とされている。
【0043】
表示部33は、LCD(Liquid Crystal Display)等により形成され、メイン制御部31からの制御指令を受けて各種の情報を表示する。表示部33は、基台14またはその近傍に設置され、検者から目視が可能とされている。なお、表示部33は、検者からの目視を可能とすれば、顕微鏡本体11に設けられていてもよく、他の場所に設けられてもよい。
【0044】
メイン操作部34は、操作パネル、スイッチ、ボタン、ダイアル、トラックボール、マウス、キーボード等からなる操作デバイスや入力デバイスである。このメイン操作部34は、検者によって操作され、この操作に応じた任意の指令がメイン制御部31に入力される。なお、基台14に設けた操作ハンドル14bも、メイン操作部34に含んでもよい。この表示部33とメイン操作部34とは個々に設けてもよいが、タッチスクリーン等を用いてこれらの少なくとも一部を一体化してもよい。
【0045】
また、メイン制御部31には、倍率検出部41と、スリット間隔検出部42と、絞り検出部43と、フィルタ検出部44と、スリット光検出部45と、が接続されている。これら5つの検出部は、自らが検出した検出結果(その信号)をメイン制御部31に出力する。
【0046】
倍率検出部41は、観察系13の変倍光学系132において設定された倍率、すなわち変倍レンズ群の切り替えの状態を検出する。この倍率検出部41は、例えば、移動される各変倍レンズを支持する支持枠等にタグ等の読出部を設けるとともに、光路上の変倍レンズの読出部を検出する検出部を設ける構成とすることができる。なお、倍率検出部41は、変倍光学系132における倍率を検出してメイン制御部31に出力するものであれば、他の構成としてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0047】
スリット間隔検出部42は、スリット部125における一対のスリット刃125a、125bの間隔(スリット幅)を検出する。このスリット間隔検出部42は、例えば、一対のスリット刃125a、125bの位置を検出する位置センサを用いる構成にできる。また、スリット間隔検出部42は、スリット部125における両スリット刃125a、125bの駆動箇所の位置を検出する位置センサを用いる構成にできる。さらに、スリット間隔検出部42は、両スリット刃125a、125bの間から照射された光量を取得する光量センサを用いるとともに、その検出結果と光源121の光量との関係から算出する構成とすることもできる。加えて、スリット間隔検出部42は、撮像素子13eからの画像信号(取得された画像)に基づいて、照射されたスリット光の幅から判断する構成とすることもできる。なお、スリット間隔検出部42は、スリット部125における一対のスリット刃125a、125bの間隔(スリット幅)を検出してメイン制御部31に出力するものであれば、他の構成としてもよく、実施例1の構成に限定されない。このため、スリット間隔検出部42は、一対のスリット刃125a、125bが閉じられたか否かを検出するスリット刃開閉検出部として機能する。
【0048】
絞り検出部43は、照明系12の照明絞り123における透光部のサイズ(径寸法、開口面積)を検出する。この絞り検出部43は、例えば、照明絞り123における透光部のサイズを変更する機構部に位置センサを設ける構成とすることができる。また、絞り検出部43は、透光部を通した光の光量を取得する光量センサを用いるとともに、その検出結果と光源121の光量との関係から算出する構成とすることもできる。なお、絞り検出部43は、照明絞り123における透光部のサイズ(径寸法、開口面積)を検出してメイン制御部31に出力するものであれば、他の構成としてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0049】
フィルタ検出部44は、照明系12において、フィルタ部129が光路上にフィルタFを挿入させているか否かを検出するとともに、挿入させている場合にはそのフィルタFの種類を検出する。このフィルタ検出部44は、例えば、各フィルタFを支持する支持枠等にタグ等の読出部を設けるとともに、光路上のフィルタFの読出部を検出する検出部を設ける構成とすることができる。なお、フィルタ検出部44は、フィルタ部129における光路上のフィルタFの有無と種類とを検出してメイン制御部31に出力するものであれば、他の構成としてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0050】
スリット光検出部45は、被検眼Eに向けて照射するスリット光の態様を検出する。このスリット光の態様とは、設定された長さ寸法の帯状とされているか否かをいう。これは以下のことによる。一対のスリット刃125a、125bは、その間隔dを通した光源121をからの光によりスリット光を形成しているので、それらを全域に亘って接触させる、すなわち一対のスリット刃125a、125bの間隔dを全域に亘ってなくすことにより光源121をからの光を遮ることとなる。しかしながら、一対のスリット刃125a、125bでは、光源121をからの光の漏れを防止できるように全域に亘って接触させるには、極めて高い精度が求められる。このため、一対のスリット刃125a、125bでは、光源121からの光の漏れを基準とすると、間隔dを全域に亘って均一とすることが困難であり、接近されても部分的に接触することとなる。ここで、一対のスリット刃125a、125bでは、間隔dのばらつきは極めて小さなものであるので、接触されて光を遮る場面を除くと、問題となったり露見したりすることはない。このため、スリット光では、一対のスリット刃125a、125bが接触される、またはそれに極めて近い間隔とされた場合に、一本の直線の帯状ではなく、途中で途切れた帯状となったり、複数の帯状部が並ぶものとなったりする虞がある。
【0051】
このスリット光検出部45は、スリット光が意図した一本の直線の帯状となっているか、そうではなく途中で途切れた帯状となったり複数の帯状部が並ぶものとなったりのように意図しないものとなっているか、を検出する。スリット光検出部45は、例えば、撮像素子13eからの画像信号(取得された画像)に基づいて、照射されたスリット光の幅から判断する構成とすることができる。なお、スリット光検出部45は、スリット光の態様を検出してメイン制御部31に出力するものであれば、他の構成としてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0052】
なお、メイン制御部31は、メイン操作部34に為された操作等に応じて、観察系13の制御として絞り133(その絞り値)も変更するものとしてもよい。また、メイン制御部31は、アーム駆動機構を制御することにより、メイン操作部34に為された操作等に応じて、第1支持アーム15bおよび第2支持アーム15cをそれぞれ回転移動させる構成としてもよい。
【0053】
[光量調整の構成]
実施例1のメイン制御部31は、光量調整部51と、スリット間隔判断部52と、スリット光判断部53と、背景照明判断部54と、を有する。光量調整部51は、光源121への印加電力の大きさを調整するものであり、基本的には、上述したように明るさ調整ノブ14cに為された操作等に応じて印加電力の大きさを調整する。また、光量調整部51は、後述するように、スリット間隔判断部52からの検出結果や、スリット光判断部53からの検出結果に応じて、光源121への電力の印加を停止する。
【0054】
ここで、光量調整部51は、基本的に明るさ調整ノブ14cの回転操作の範囲を消灯(光量ゼロ)から最大光量に合わせており、回転操作量と光量の上昇とを比例させるように印加電力を変化させる。そして、光量調整部51は、後述するようにスリット間隔判断部52により一対のスリット刃125a、125bが閉じられたと判断された場合や、スリット光判断部53によりスリット光が適切な状態ではないと判断された場合に、光源121への電力の印加を停止する。また、光量調整部51は、光源121への電力の印加を停止した状態において、後述するようにスリット間隔判断部52により一対のスリット刃125a、125bが開かれたと判断した場合、光源121への電力の印加を開始して明るさ調整ノブ14cに為された操作等に応じて印加電力の大きさを調整する。
【0055】
スリット間隔判断部52は、スリット間隔検出部42からの検出結果に基づいて、スリット部125における一対のスリット刃125a、125bの間隔dを判断する。実施例1のスリット間隔判断部52は、取得した間隔dが、設定間隔ds以下であるか否かを判断する。この設定間隔dsは、スリット部125において、設計上で一対のスリット刃125a、125bが閉じられる位置に基づいて設定される。このため、設定間隔dsは、実際に一対のスリット刃125a、125bが閉じられているか否かに拘わらず、閉じられる設定とされた位置関係に一対のスリット刃125a、125bがなったことを意味する。スリット間隔判断部52は、スリット間隔検出部42からの検出結果において、閉じる位置まで一対のスリット刃125a、125bが移動されたものと判断すると、間隔dが設定間隔dsとされたものと判断する。
【0056】
スリット光判断部53は、スリット光検出部45からの検出結果に基づいて、スリット光が適切な状態であるか否かを判断する。この適切な状態とは、スリット光が意図した一本の直線の帯状となっていることをいう。また、適切ではない状態とは、スリット光が、途中で途切れた帯状となったり複数の帯状部が並ぶものとなったりのように、意図しないものとなっていることをいう。
【0057】
背景照明判断部54は、背景照明ユニット20の背景光制御部24からの信号に基づいて、背景照明ユニット20(背景用光源22)が赤外光を出射させる設定とされているか否かを判断する。実施例1の背景照明判断部54は、背景照明ユニット20が可視光源と赤外光源とを選択可能な構成とされているので、背景照明ユニット20が取り付けられて動作状態とされているか否かと、取り付けられて動作状態とされている場合には赤外光源が選択されているか否かと、を判断する。なお、背景照明判断部54は、背景照明ユニット20が赤外光源のみを出力可能な構成とされている場合には、背景照明ユニット20が取り付けられているか否かを判断してもよく、背景照明ユニット20が動作状態とされているか否かを判断してもよい。
【0058】
[光量調整制御]
次に、メイン制御部31において実行される光量制御の処理構成を、
図7に示すフローチャートを用いて説明する。この光量制御処理は、細隙灯顕微鏡10の電源スイッチがオン状態とされることにより開始され、電源スイッチがオフ状態とされるまで繰り返し行われる。
【0059】
ステップS1では、光源121の光量を調整して、ステップS2へ進む。このステップS1では、光量調整部51が、明るさ調整ノブ14cに為された回転操作、すなわち明るさ調整ノブ14cの回転位置に応じて印加電力を変化させて、光源121の光量を調整する。なお、ステップS1では、後述するステップS3で一対のスリット刃125a、125bが閉じられる、またはステップS4でスリット光が適切な状態ではない、と判断されてステップS6、ステップS7で光源121が消灯されている場合には、明るさ調整ノブ14cが回転操作されても光源121を消灯したままとする。
【0060】
ステップS2では、スリット開閉ノブ125cが操作されたか否かを判断して、YESの場合はステップS3へ進み、NOの場合はステップS1へ戻る。このステップS2では、スリット間隔検出部42が検出した一対のスリット刃125a、125bの間隔(スリット幅)が変化したか否かを判断する。また、ステップS2では、YESと判断した際に、後述するステップS7により光源121を消灯している場面では、光源121を点灯させる。さらに、ステップS2では、YESと判断した際に、後述するステップS6により光源121を消灯しつつ背景照明ユニット20を点灯させている場面では、光源121を点灯させるとともに背景照明ユニット20を消灯する。ここで、ステップS6、ステップS7により光源121を消灯している場合には、ステップS3で一対のスリット刃125a、125bが閉じられる、またはステップS4でスリット光が適切な状態ではない、と判断された後の場面であるので、スリット開閉ノブ125cが操作されたということは、一対のスリット刃125a、125bが開かれたこととなる。このため、ステップS2では、一対のスリット刃125a、125bが開かれたことに合わせて、光源121を点灯させる。このとき、ステップS2では、明るさ調整ノブ14cの回転位置に応じた印加電力、すなわち明るさ調整ノブ14cで設定された明るさで光源121を点灯させる。
【0061】
ステップS3では、一対のスリット刃125a、125bが閉じられたか否かを判断して、YESの場合はステップS5へ進み、NOの場合はステップS4へ進む。このステップS3では、スリット間隔判断部52が、一対のスリット刃125a、125bの間隔dが、設定間隔ds以下であるか否かを判断する。
【0062】
ステップS4では、スリット光が適切な状態か否かを判断して、YESの場合はステップS1へ戻り、NOの場合はステップS5へ進む。このステップS4では、スリット光判断部53が、スリット光が適切な状態であるか否かを判断する。なお、このステップS3、ステップS4では、ステップS2においてステップS6、ステップS7により光源121を消灯された後に一対のスリット刃125a、125bが開かれて光源121を点灯させた場面では、双方でNOの判断となってステップS1に戻ることとなる。
【0063】
ステップS5では、赤外光を出射させる設定であるか否かを判断して、YESの場合はステップS6へ進み、NOの場合はステップS7へ進む。このステップS5では、背景照明判断部54が、背景照明ユニット20において赤外光を出射させる設定であるか否かを、実施例1では背景照明ユニット20において赤外光源が選択されているか否かを判断する。
【0064】
ステップS6では、光源121を消灯させるとともに背景照明ユニット20を点灯させて、この光量制御を終了する。このステップS6では、光量調整部51が、光源121への電力の印加を停止させるとともに、メイン制御部31が背景光制御部24に対して背景用光源22を点灯させる信号を出力する。
【0065】
ステップS7では、光源121を消灯させて、この光量制御を終了する。このステップS7では、光量調整部51が、光源121への電力の印加を停止させる。
【0066】
[状態表示部の構成]
細隙灯顕微鏡10の観察系13では、
図8に示すように、状態表示部60が設けられている。この状態表示部60は、光源121の点灯、消灯の状態を示すものであり、観察している検者が視認することが可能とされている。実施例1の状態表示部60は、透過型のディスプレイを用いるものとしており、観察系13の観察光軸O2上に配置される。状態表示部60は、観察系13による被検眼Eの観察の邪魔とはならない位置に光源121の点灯、消灯の状態を表示するものとされており、
図8では上端近傍の点消灯呈示箇所61を有する。状態表示部60は、点消灯呈示箇所61の下方では何らの表示をしないことにより、被検眼Eの観察の邪魔となることを避けている。
【0067】
点消灯呈示箇所61は、設定された光源121の点灯、消灯の状態を文字で示すものであり、どちらの状態であるかの把握を容易とする。実施例1の点消灯呈示箇所61は、光源121が消灯状態である際には光源OFFを表示し、光源121の点灯状態である際にはなんらの表示をしないものとされている。これにより、検者は、観察系13により被検眼Eを観察した状態を維持したままで、点消灯呈示箇所61により光源121が点灯されているのか消灯されているのかを容易に認識できる。なお、状態表示部60は、光源121が点灯されているのか消灯されているのかを、観察している検者が視認できるものであれば、表示の態様が異なるものでもよく、点灯状態の際にも表示するものでもよく、その他の構成としてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【0068】
[光量調整の動作]
次に、細隙灯顕微鏡10を用いて、被検眼Eを観察する動作について説明する。細隙灯顕微鏡10では、観察倍率操作ノブ13cや明るさ調整ノブ14cやスリット開閉ノブ125cが適宜操作されて、任意の明るさのスリット光が照射された被検眼Eを観察できる。
【0069】
このとき、細隙灯顕微鏡10では、スリット開閉ノブ125cに回転操作が為されていない、またはスリット開閉ノブ125cに対して全閉回転位置とはならない範囲で回転操作が為されると、ステップS1→S2へと進んで、明るさ調整ノブ14cへの操作量(回転位置)に応じて光源121の光量が調整される。そして、細隙灯顕微鏡10では、スリット開閉ノブ125cが全閉回転位置とされておらず、光源121から一対のスリット刃125a、125bを経て形成されるスリット光が適切な状態であると、ステップS3→S4→S1へと進んで、上記の動作を繰り返し、任意の明るさのスリット光が照射された被検眼Eの観察を可能とする。
【0070】
ここで、細隙灯顕微鏡10では、スリット開閉ノブ125cが全閉回転位置まで回転操作が為されると、ステップS1→S2→S3→S5へと進んで、背景照明ユニット20において赤外光を出射させる設定であるか否かを判断する。背景照明ユニット20において赤外光を出射させる設定の場合には、ステップS6へと進んで、光源121を消灯させるとともに背景照明ユニット20を点灯させる。このため、細隙灯顕微鏡10では、赤外光を照射した際に可視光が混ざることを防止することができ、赤外光を照射してのマイボーム腺の観察や撮影を適切に行うことができる。また、細隙灯顕微鏡10では、スリット開閉ノブ125cを操作するだけで、背景照明ユニット20により赤外光の照射した状態へと移行できるので、マイボーム腺の観察や撮影へと円滑に移行できる。背景照明ユニット20において赤外光を出射させる設定ではない場合には、ステップS7へと進んで、光源121を消灯させる。このため、細隙灯顕微鏡10では、一対のスリット刃125a、125bが閉じられた状態において、その隙間から漏れた光が視認されることはなく、高い品質であるとの印象を与えることができる。
【0071】
また、細隙灯顕微鏡10では、スリット開閉ノブ125cに対して全閉回転位置とはならない範囲で回転操作が為されてはいるが、形成されるスリット光が適切な状態ではない状態の場合には、ステップS1→S2→S3→S4→S5へと進んで、背景照明ユニット20において赤外光を出射させる設定であるか否かを判断する。そして、細隙灯顕微鏡10では、背景照明ユニット20において赤外光を出射させる設定の場合には、ステップS6へと進んで光源121を消灯させるとともに背景照明ユニット20を点灯させ、背景照明ユニット20において赤外光を出射させる設定ではない場合には、ステップS7へと進んで光源121を消灯させる。
【0072】
このように、細隙灯顕微鏡10では、スリット開閉ノブ125cが全閉回転位置とはなっていなくても、適切な状態ではないスリット光が形成されている場合には、実質的に一対のスリット刃125a、125bが閉じられたものとして、光源121を消灯させるとともに背景照明ユニット20を適宜点灯させる。ここで、細隙灯顕微鏡10では、適切な状態ではないスリット光が形成されている場合、一対のスリット刃125a、125bが部分的に接触または極めて近づいていることから、スリット開閉ノブ125cが全閉回転位置に極めて近い回転位置とされている。このため、検者は、実質的に一対のスリット刃125a、125bが閉じようとしたと考えられる。また、細隙灯顕微鏡10では、適切な状態ではないスリット光を照射している場合には、被検眼Eの適切な観察が困難である。これらのことから、細隙灯顕微鏡10では、スリット開閉ノブ125cが全閉回転位置とはなっていなくても、実質的に一対のスリット刃125a、125bが閉じられたものとしても問題はない。これにより、細隙灯顕微鏡10では、適切な状態ではないスリット光が形成されている場合には、光源121を消灯させるとともに背景照明ユニット20を適宜点灯させることで、赤外光を用いた適切な観察を可能としたり、高い品質であるとの印象を与えたりすることができる。
【0073】
そして、細隙灯顕微鏡10では、光源121を消灯させるとともに適宜背景照明ユニット20を点灯させた状態において、スリット開閉ノブ125cが全閉回転位置から開く方向へと回転操作されると、ステップS1→S2へと進んで、光源121を点灯させるとともに適宜背景照明ユニット20を消灯させる。また、細隙灯顕微鏡10では、光源121を消灯させた状態において、スリット開閉ノブ125cが全閉回転位置から開く方向へと回転操作されると、ステップS1→S2へと進んで、光源121を点灯させる。これらのことから、細隙灯顕微鏡10では、背景照明ユニット20の点灯の有無に拘わらず光源121を消灯した状態から、一対のスリット刃125a、125bを開くようにスリット開閉ノブ125cを操作するだけで、スリット光を用いた被検眼Eの観察へと円滑に移行できる。
【0074】
次に、細隙灯顕微鏡の技術の課題について説明する。上記した従来の細隙灯顕微鏡では、一対のスリット刃を閉じる、すなわち一対のスリット刃の間隔をなくすことにより、その両スリット刃で光源からの光を遮蔽して、被検眼にスリット光を照射しない状態にできる。しかしながら、その細隙灯顕微鏡では、両スリット刃の加工精度やその組立精度を極めて高くしないと、一対のスリット刃を接近させてもその長尺方向の全域に亘って光の漏れを防止できる精度で接触させることは困難である。このため、この細隙灯顕微鏡では、一対のスリット刃同士が接触する位置まで移動させても、一対のスリット刃の間に隙間が形成され、その隙間から光が漏れることで被検眼に届いてしまう。このことから、その細隙灯顕微鏡では、一対のスリット刃の間に形成された隙間が被験者や検者に認識されることとなり、品質が低いかのような印象を与えてしまう。
【0075】
これに対し、本開示の細隙灯顕微鏡10は、光源121を制御するメイン制御部31が、一対のスリット刃125a、125bが閉じられたと判断すると光源121を消灯する。このため、細隙灯顕微鏡10は、一対のスリット刃125a、125bを閉じさせる位置関係(互いに接触する位置)へと移動させると、光源121からの光がなくなるので、一対のスリット刃125a、125bの加工精度やその組立精度に拘わらず、それらの隙間から光が漏れることを確実に防止できる。これにより、細隙灯顕微鏡10は、一対のスリット刃125a、125bが閉じられた状態では、その隙間からの光が漏れて被検眼Eに届くことはなく、品質が低いかのような印象を与えることを防止できる。また、細隙灯顕微鏡10は、全域に亘って光の漏れを防止できる極めて高い精度で一対のスリット刃125a、125bを加工したり組み付けたりする必要がないので、加工精度の上昇や組立精度の上昇に伴う価格や製造工程の増加を防止できる。
【0076】
本開示に係る細隙灯顕微鏡の実施例1の細隙灯顕微鏡10は、以下の各作用効果を得ることができる。
細隙灯顕微鏡10は、被検眼Eに向けてスリット光を照射する照明系12と、そこにおいて光源121からの光を一対のスリット刃125a、125bの間を通すことで任意の幅のスリット光とするスリット部125と、光源121を制御するメイン制御部31と、を備える。メイン制御部31は、一対のスリット刃125a、125bが閉じられると光源121を消灯する。このため、細隙灯顕微鏡10は、一対のスリット刃125a、125bが閉じられると、光源121からの光がなくなるので、一対のスリット刃125a、125bの加工精度や組立精度に拘わらず隙間から光が漏れることを確実に防止できる。
【0077】
また、細隙灯顕微鏡10では、一対のスリット刃125a、125bの間隔dを検出するスリット間隔検出部42を備える。また、細隙灯顕微鏡10では、メイン制御部31が、スリット間隔検出部42からの検出結果に基づいて一対のスリット刃125a、125bの間隔dが所定の設定間隔dsよりも小さいと判断すると、一対のスリット刃125a、125bが閉じられているものとして光源121を消灯する。このため、細隙灯顕微鏡10は、一対のスリット刃125a、125bにおいて設定された位置関係において設定間隔dsよりも小さい場合に、両スリット刃125a、125bが閉じられたものとするので、一対のスリット刃125a、125bの加工精度や組立精度に拘わらず設定された位置で光源121を消灯でき、製品毎のばらつきを防止できる。
【0078】
さらに、細隙灯顕微鏡10では、回転操作により一対のスリット刃125a、125bの間隔dを調整するスリット開閉ノブ125cを備え、そのスリット開閉ノブ125cでは、一対のスリット刃125a、125bの間隔dを閉じる回転位置(全閉回転位置)となると、回転操作に対する回転抵抗が部分的に変化する。このため、細隙灯顕微鏡10では、スリット開閉ノブ125cを操作した検者が、手ごたえから全閉回転位置となったことを把握でき、光源121が消灯されたことに対する違和感をなくすことができる。これは、検者は、全閉回転位置とした場合には、一対のスリット刃125a、125bを閉じたと考えているので、その間を通るスリット光が消えると思うことによる。
【0079】
細隙灯顕微鏡10では、スリット光の状態を検出するスリット光検出部45を備え、メイン制御部31は、スリット光検出部45からの検出結果に基づいてスリット光が適切に形成されていないと判断すると、光源121を消灯する。この細隙灯顕微鏡10は、一対のスリット刃125a、125bが閉じられたときに加えて、スリット光が適切な状態ではないと判断された場合に光源121を消灯することとなる。このため、細隙灯顕微鏡10は、一対のスリット刃125a、125bが部分的に接触または極めて近づけられると、それらが実質的に閉じられたものとして光源121を消灯するので、検者の意図に合致した動作にできるとともに被検眼Eを適切に観察できなくなることを防止できる。
【0080】
細隙灯顕微鏡10は、さらに、被検眼Eによる反射光を観察または撮影する観察系13と、被検眼Eを赤外光で照射する背景照明ユニット20と、を備える。また、細隙灯顕微鏡10では、メイン制御部31が、一対のスリット刃125a、125bが閉じられて光源121を消灯すると、背景照明ユニット20による赤外光の照射を開始させる。このため、細隙灯顕微鏡10は、一対のスリット刃125a、125bを閉じるだけで背景照明ユニット20により赤外光の照射した状態へと移行できるとともに、可視光が混ざることを防止して赤外光の照射による観察等を行うことができる
【0081】
細隙灯顕微鏡10では、メイン制御部31が、一対のスリット刃125a、125bが開かれると光源121を点灯するとともに、背景照明ユニット20による赤外光の照射を停止させる。このため、細隙灯顕微鏡10は、一対のスリット刃125a、125bを開く操作するだけで、スリット光を用いた被検眼Eの観察へと円滑に移行できる。
【0082】
細隙灯顕微鏡10では、被検眼Eによる反射光を観察または撮影する観察系13を備え、観察系13では、光源121の点灯状態を示す状態表示部60を有する。このため、細隙灯顕微鏡10は、検者が、観察系13により被検眼Eを観察した状態を維持したままで、現在の光源121の点灯状態を認識でき、光源121を消灯したことによる違和感を和らげることができる。
【0083】
以上、本開示の細隙灯顕微鏡を実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0084】
なお、実施例1では、赤外光を照射可能な背景照明ユニット20が取り付けられている。しかしながら、背景照明ユニット20が取り付けられていなくてもよく、または赤外光を照射しないもの背景照明ユニット20が取り付けられていてもよく、実施例1の構成に限定されない。このような場合には、
図7に示すフローチャートにおいて、ステップS5、S6をないものとし、ステップS3でYESの場合およびステップS4でNOの場合にはステップS7へと進むものとすればよい。
【0085】
また、実施例1では、一対のスリット刃125a、125bの間隔d(スリット幅)を検出するスリット間隔検出部42を用いて、取得した間隔dが設定間隔ds以下であるか否かを判断している。しかしながら、他の方法で一対のスリット刃125a、125bが閉じられたか否かを検出するスリット刃開閉検出部を用いてもよく、実施例1の構成に限定されない。
【符号の説明】
【0086】
10 細隙灯顕微鏡 12 照明系 13 観察系 20 背景照明ユニット 31 (制御部の一例としての)メイン制御部 42 スリット間隔検出部 45 スリット光検出部 60 状態表示部 121 光源 125 スリット部 125a、125b スリット刃 125c スリット開閉ノブ d 間隔 ds 設定間隔 E 被検眼