(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143633
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】pH応答性重合体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 220/18 20060101AFI20241003BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
C08F220/18
C08J5/18 CEY
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056408
(22)【出願日】2023-03-30
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】000214250
【氏名又は名称】ナガセケムテックス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513099603
【氏名又は名称】兵庫県公立大学法人
(74)【代理人】
【識別番号】100118382
【弁理士】
【氏名又は名称】多田 央子
(74)【代理人】
【識別番号】100094477
【弁理士】
【氏名又は名称】神野 直美
(74)【代理人】
【識別番号】100078813
【弁理士】
【氏名又は名称】上代 哲司
(72)【発明者】
【氏名】植林 佑太郎
(72)【発明者】
【氏名】遊佐 真一
【テーマコード(参考)】
4F071
4J100
【Fターム(参考)】
4F071AA33X
4F071AA81
4F071AB18A
4F071AC05A
4F071AE19A
4F071AG01
4F071AG12
4F071AG34
4F071AH19
4F071BA02
4F071BB02
4F071BC01
4J100AL08P
4J100AM21Q
4J100BA17Q
4J100BA32P
4J100BA64P
4J100CA04
4J100DA01
4J100DA38
4J100FA03
4J100FA19
4J100FA28
4J100FA30
4J100GA14
4J100GC07
4J100GC16
4J100GC25
4J100GC35
4J100JA53
(57)【要約】 (修正有)
【課題】簡単な操作で水溶性状態と非水溶性状態の切り替えを行うことができる生体適合性を有する重合体を提供する。
【解決手段】下記式(1)等で示されるベタイン構造を含む構造単位(a)
と、下記式(5)
-CH
2-CR
3(CONH-R
4-COOM)-(5)(式(5)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、R
4は炭素数5~16の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を表し、Mは水素原子又はカウンターカチオンを表す。)
で示される構造単位(b)を含有し、構造単位(a)と構造単位(b)の総量に対する構造単位(b)の量の比率が10~98モル%であり、数平均分子量が5,000以上である、重合体。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
で示される構造単位、下記式(2)
【化2】
で示される構造単位、下記式(3)
【化3】
で示される構造単位、及び下記式(4)
【化4】
で示される構造単位
(式(1)~(4)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は酸素原子又は-NH-を表し、2つのnは独立して1~4の整数を表す。)
からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位(a)と、
下記式(5)
-CH
2-CR
3(CONH-R
4-COOM)- (5)
(式(5)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、R
4は炭素数5~16の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を表し、Mは水素原子又はカウンターカチオンを表す。)
で示される構造単位(b)を含有し、
構造単位(a)と構造単位(b)の総量に対する構造単位(b)の量の比率が10~98モル%であり、
数平均分子量が5,000以上である重合体。
【請求項2】
式(5)のMのカウンターカチオンが、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機カチオンである、請求項1に記載の重合体。
【請求項3】
式(5)のR4が炭素数8~12の直鎖の飽和の2価の炭化水素基である、請求項1又は2に記載の重合体。
【請求項4】
構造単位(a)と構造単位(b)の総量が、重合体を構成する構造単位の全量に対して40モル%以上である、請求項1又は2に記載の重合体。
【請求項5】
タンパク質吸着抑制のために用いられる、請求項1又は2に記載の重合体。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の重合体を含む膜、被膜、繊維、又は塊状成形品。
【請求項7】
下記式(6)
【化5】
で示される化合物、下記式(7)
【化6】
で示される化合物、下記式(8)
【化7】
【化8】
(式(6)~(9)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は酸素原子又は-NH-を表し、2つのnは独立して1~4の整数を表す。)
で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のベタイン構造を有する化合物と、下記式(10)
CH
2=CR
3(CONH-R
4-COOM) (10)
(式(10)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、R
4は炭素数5~16の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を表し、Mは水素原子又はカウンターカチオンを表す。)
で示される化合物を含むモノマーを、ベタイン構造を有する化合物と式(10)の化合物の総量に対する式(10)の化合物の量の比率が10~98モル%となるように用いて、重合させる工程を含む、請求項1に記載の重合体の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の重合体を、アルカリ性条件下で、極性溶媒に溶解させた状態で成形加工する工程を含む、物品の製造方法。
【請求項9】
請求項8に記載の方法で製造された物品を酸性条件下におくことにより、この物品の耐水性を向上させる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に医療分野で用いられる重合体であって、pHに応答して特性が変化する重合体、及びこの重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人工臓器、人工組織、医療用デバイスなどを、体内に埋設したり、生体と接触させた状態で使用すると、これらの人工異物に対する防御反応が起きる。人工材料が生体と最初に接触したときに起きるのは、血漿タンパク質の吸着であり、吸着したタンパク質を介して人工材料表面に細胞が接着する。その結果、血液中では血栓が形成されて人工材料表面に付着したり、結合組織中ではコラーゲン繊維性カプセルにより人工材料が被覆されたりする。このため、人工材料本来の生体代替機能が発揮できなくなる。また、人工材料が生体と接触すると、血漿中の補体が活性化され、それが引き金となって一連の免疫反応が起き、自己の細胞を殺傷する。
【0003】
このような問題を解決すべく、タンパク質や血球などの生体成分との相互作用がない、又は小さい生体適合性材料の開発が進んでいる。生物医学分野においては、ポリエチレングリコール(PEG)や、PEGを付加した材料が、その高い生体適合性、親水性などの特性から汎用されている。しかし、PEGは35℃以上ではタンパク質に対する反発特性を失い、タンパク質が吸着し易くなるという問題があった。
【0004】
また、生体膜脂質がリン脂質極性基であるホスホリルコリン(PC)基を有することから、PC基を担持させた、2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)のポリマーが開発されている(非特許文献1)。MPCの単独重合体はベタイン構造を有して水溶性であるため、耐水性が悪く、生体内で重合体が溶出したり、一部が欠落する恐れがある。また、医療現場で多用されるアルコール類によっても、重合体の溶出や部分的な崩壊などが生じる恐れがある。このため、MPCの単独重合体は、生体適合性材料ではあるものの、生体内で用いる医療材料として適さない。MPCは重合性に優れたメタクリロイル基を有するため、様々なビニルモノマーと共重合させることができ、共重合させるビニルモノマーを選択すれば非水溶性にすることができる。
ところが、非水溶性ポリマーは、物品上に塗工するときや、延伸又は成形するときに、水やエタノールのような安全な極性溶媒に溶解させることができないため、医療用品に使用し難い。医療用品に使用するためには、水溶性ポリマーが望ましい。
従って、塗工、延伸、成形時には水溶性で水やエタノールのような安全な極性溶媒に溶解させることができ、使用時には非水溶性にして耐水性を向上させることができるポリマーが望まれている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】Polymer Journal誌、22巻、355頁、1990年
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、簡単な操作で水溶性状態と非水溶性状態の切り替えを行うことができる生体適合性を有する重合体、及びこの重合体の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本発明者は鋭意検討を重ね、下記式(1)
【化1】
で示される構造単位、下記式(2)
【化2】
で示される構造単位、下記式(3)
【化3】
で示される構造単位、及び下記式(4)
【化4】
で示される構造単位
(式(1)~(4)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は酸素原子又は-NH-を表し、2つのnは独立して1~4の整数を表す。)
からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位(a)と、
下記式(5)
-CH
2-CR
3(CONH-R
4-COOM)- (5)
(式(5)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、R
4は炭素数5~16の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を表し、Mは水素原子又はカウンターカチオンを表す。)
で示される構造単位(b)を含有し、
構造単位(a)と構造単位(b)の総量に対する構造単位(b)の量の比率が10~98モル%であり、
数平均分子量が5,000以上である重合体は、生体適合性を有し、かつpHに応答して水溶性又は非水溶性の状態を採り得ることを見出した。
この重合体は、アルカリ性条件下では、Mがカウンターカチオンであるため水溶性となり、酸性条件下では、Mが水素原子であるため非水溶性となり、水溶性状態のときより耐水性が高くなる。
【0008】
本発明は、上記知見に基づき完成されたものであり、以下の〔1〕~〔9〕を提供する。
〔1〕 下記式(1)
【化5】
で示される構造単位、下記式(2)
【化6】
で示される構造単位、下記式(3)
【化7】
で示される構造単位、及び下記式(4)
【化8】
で示される構造単位
(式(1)~(4)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は酸素原子又は-NH-を表し、2つのnは独立して1~4の整数を表す。)
からなる群より選ばれる少なくとも1種の構造単位(a)と、
下記式(5)
-CH
2-CR
3(CONH-R
4-COOM)- (5)
(式(5)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、R
4は炭素数5~16の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を表し、Mは水素原子又はカウンターカチオンを表す。)
で示される構造単位(b)を含有し、
構造単位(a)と構造単位(b)の総量に対する構造単位(b)の量の比率が10~98モル%であり、
数平均分子量が5,000以上である重合体。
〔2〕 式(5)のMのカウンターカチオンが、アルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、又は有機カチオンである、〔1〕に記載の重合体。
〔3〕 式(5)のR
4が炭素数8~12の直鎖の飽和の2価の炭化水素基である、〔1〕又は〔2〕に記載の重合体。
〔4〕 構造単位(a)と構造単位(b)の総量が、重合体を構成する構造単位の全量に対して40モル%以上である、〔1〕又は〔2〕に記載の重合体。
〔5〕 タンパク質吸着抑制のために用いられる、〔1〕又は〔2〕に記載の重合体。
〔6〕 〔1〕又は〔2〕に記載の重合体を含む膜、被膜、繊維、又は塊状成形品。
〔7〕 下記式(6)
【化9】
で示される化合物、下記式(7)
【化10】
で示される化合物、下記式(8)
【化11】
で示される化合物、及び下記式(9)
【化8】
(式(6)~(9)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は酸素原子又は-NH-を表し、2つのnは独立して1~4の整数を表す。)
で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のベタイン構造を有する化合物と、下記式(10)
CH
2=CR
3(CONH-R
4-COOM) (10)
(式(10)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、R
4は炭素数5~16の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を表し、Mは水素原子又はカウンターカチオンを表す。)
で示される化合物を含むモノマーを、ベタイン構造を有する化合物と式(10)の化合物の総量に対する式(10)の化合物の量の比率が10~98モル%となるように用いて、重合させる工程を含む、〔1〕に記載の重合体の製造方法。
〔8〕 〔1〕又は〔2〕に記載の重合体を、アルカリ性条件下で、極性溶媒に溶解させた状態で成形加工する工程を含む、物品の製造方法。
〔9〕 〔8〕に記載の方法で製造された物品を酸性条件下におくことにより、この物品の耐水性を向上させる方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明の重合体は、生体適合性が高いため、生体内に埋設したり生体と接触させて用いる医療用品の材料や医療用品の被覆材として使用することができる。特に、本発明の重合体は、タンパク質の吸着が少ない点で、医療用品の材料や医療用品の被覆材として好適である。
また、本発明の重合体は、アルカリ性条件下ではカルボキシル基がイオン化して水溶性であるため、水やエタノールのような安全な極性溶媒に溶解させて、成形加工することができる。そして、生体と接触させる前に酸性条件下におくことでカルボキシル基を水素化して非水溶性とすることができる。非水溶性状態では耐水性に優れたものとなるため、医療用品や被膜中の重合体は、生体内で水分と接しても溶出し難い。このように、本発明の重合体は、安全な極性溶媒に溶解して成形加工できる特性と、耐水性に優れるという特性を兼ね備えたものである。しかも、水溶性と非水溶性の切り替えをpH調整という簡単な操作で行うことができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を詳細に説明する。
(1)pH応答性重合体
本発明の重合体は、上記式(1)で示される構造単位、式(2)で示される構造単位、式(3)で示される構造単位、及び/又は式(4)で示される構造単位(構造単位(a))と、上記式(5)で示される構造単位(b)を含有し、構造単位(a)と構造単位(b)の総量に対する構造単位(b)の量の比率が10~98モル%であり、数平均分子量が5,000以上である重合体である。
式(1)~式(4)で新される各構造単位は、ベタイン構造を有する点で共通している。
【0011】
式(1)、式(2)、式(3)、及び式(4)において、2つのnは独立して1、2、3、又は4であり得る。
式(5)において、R4は炭素数5~16の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基であるが、炭素数は6以上、7以上、8以上、9以上、又は10以上とすることができ、また、15以下、14以下、13以下、12以下、又は11以下とすることができる。
また、R4は、直鎖の飽和2価の炭化水素基、即ち、アルキレン基であることが好ましい。
【0012】
式(5)のMは、アルカリ性条件下では、カルボキシル基のカウンターカチオンであり、酸性条件では水素原子である。Mがカルボキシル基のカウンターカチオンとなるアルカリ性条件は、重合体の構造により異なるが、概ねpH7.1以上で、Mはカウンターカチオンとなる。同様に、Mが水素原子となる酸性条件は、重合体の構造により異なるが、概ねpH7.0以下で、Mは水素原子となる。
【0013】
カウンターカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン、リチウムイオンのようなアルカリ金属イオン;アンモニウムイオン;有機アンモニウムイオンのような有機カチオンなどが挙げられる。
有機アンモニウムイオンとしては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、ジメチルエチルアミン、ジメチルプロピルアミン、ジメチルブチルアミン、ジメチルペンチルアミン、ジメチルヘキシルアミン、ジメチルヘプチルアミン、ジメチルオクチルアミン、ジメチルノニルアミン、ジメチルデシルアミン、ジメチルラウリルアミン、ジメチルミリスチルアミン、ジメチルステアリルアミン、ジメチルオレイルアミンなどの脂肪族3級アミンのアルキル化により第4級化したカチオン;グリシジルトリメチルアンモニウムイオンのような第4級アンモニウムイオン;1-デシル-3-メチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-3-オクチルイミダゾリウムイオン、1-メチル-ベンゾイミダゾリウムイオンのような第4級イミダゾリウムイオン;ブチルピリジニウムイオン、ドデシルピリジニウムイオンのような第4級ピリジニウムイオンなどが挙げられる。
カルボキシル基のカウンターカチオンは、アルカリ性条件にするためのアルカリに由来するカチオンであってよい。
カウンターカチオンは、アルカリ金属イオンが好ましく、中でもナトリウムイオンが好ましい。
【0014】
本発明の重合体は、構造単位(a)として、式(1)~式(4)で示される単位を1種又は2種以上含むことができ、また、式(1)、式(2)、式(3)、及び/又は式(4)で示される単位を、それぞれ1種又は2種以上含むことができる。また、本発明の重合体は、構造単位(b)を1種又は2種以上含むことができる。
【0015】
構造単位(a)と構造単位(b)の総量に対する構造単位(b)の量の比率は、10モル%以上、20モル%以上、30モル%以上、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、又は90モル%以上とすることができる。この範囲であれば、pH応答の感度が良くなり、酸性条件下におくことで良好な耐水性が得られる。また、構造単位(a)と構造単位(b)の総量に対する構造単位(b)の量の比率は、98モル%以下、95モル%以下、90モル%以下、80モル%以下、70モル%以下、60モル%以下、50モル%以下、40モル%以下、30モル%以下、又は20モル%以下とすることができる。この範囲であれば、構造単位(a)が少なくなり過ぎず、十分なタンパク質吸着抑制能が得られる。
本発明の重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、交互共重合体、又はグラフト共重合体の何れであってもよい。また、本発明の重合体は、直鎖状、分岐鎖状の何れであってもよいが、直鎖状であることが好ましい。
【0016】
本発明の重合体の数平均分子量は5,000以上であるが、10,000以上、50,000以上、又は100,000以上とすることができる。この範囲であれば、十分な機械的強度や耐溶媒性を有すると共に、水に溶出し難いものとなる。また、数平均分子量は100,000,000以下、50,000,000以下、10,000,000以下、又は5,000,000以下とすることができる。この範囲であれば、成形加工時にアルカリ性条件下で水などの極性溶媒に溶解させ易い重合体となる。
【0017】
本発明の重合体は、タンパク質吸着抑制効果、生体適合性、pH応答性を損なわない範囲で、構造単位(a)及び構造単位(b)の他にも、重合可能な構造単位を有していてよい。
このような構造単位として、ビニルモノマー、ジエンモノマーが挙げられる。
脂肪族ビニルモノマーとしては、不飽和結合を1個有するオレフィンモノマー(エチレン、プロピレンなど)、カルボキシ基含有モノマー(アクリル酸、メタクリル酸、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシペンチルアクリレート、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、クロトン酸、イソクロトン酸など)、酸無水物基含有モノマー(無水マレイン酸、無水イタコン酸など)、水酸基含有モノマー((メタ)アクリル酸2-ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸4-ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸6-ヒドロキシヘキシル、(メタ)アクリル酸8-ヒドロキシオクチル、(メタ)アクリル酸10-ヒドロキシデシル、(メタ)アクリル酸12-ヒドロキシラウリル、(4-ヒドロキシメチルシクロへキシル)メチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルなど)、スルホン酸基またはリン酸基含有モノマー(スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸ナトリウム、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、(メタ)アクリルアミドプロパンスルホン酸、スルホプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルオキシナフタレンスルホン酸、2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなど)、エポキシ基含有モノマー(グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテルなど)、シアノ基含有モノマー(アクリロニトリル、メタクリロニトリルなど)、イソシアネート基含有モノマー(2-イソシアナートエチル(メタ)アクリレートなど)、アミド基含有モノマー((メタ)アクリルアミド;N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジプロピル(メタ)アクリルアミドなど)、アミノ基含有モノマー(アミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなど)などが挙げられる。
芳香族ビニルモノマーとしては、スチレンなどが挙げられる。
ジエンモノマーとしては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどが挙げられる。
【0018】
構造単位(a)及び構造単位(b)以外の構造単位は、1種又は2種以上を使用できる。
本発明の重合体が構造単位(a)及び構造単位(b)以外の構造単位を含む場合も、構造単位(a)及び構造単位(b)の総量の比率は、重合体を構成する構造単位の全量に対して、40モル%以上、50モル%以上、60モル%以上、70モル%以上、80モル%以上、90モル%以上、又は95モル%以上であることが好ましい。本発明の重合体は、構造単位(a)及び構造単位(b)のみからなることが好ましい。
【0019】
(2)本発明の重合体の製造方法
上記説明した本発明の重合体は、下記式(6)
【化12】
で示される化合物、下記式(7)
【化13】
で示される化合物、下記式(8)
【化14】
で示される化合物、及び下記式(9)
【化15】
(式(6)~(9)中、R
1は水素原子又はメチル基を表し、R
2は酸素原子又は-NH-を表し、2つのnは独立して1~4の整数を表す。)
で示される化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種のベタイン構造を有する化合物と、下記式(10)
CH
2=CR
3(CONH-R
4-COOM) (10)
(式(10)中、R
3は水素原子又はメチル基を表し、R
4は炭素数5~16の直鎖又は分岐鎖の飽和又は不飽和の2価の炭化水素基を表し、Mは水素原子又はカウンターカチオンを表す。)
で示される化合物を含むモノマーを、ベタイン構造を有する化合物と式(10)の化合物の総量に対する式(10)の化合物の量の比率が10~98モル%となるように用いて、重合させる工程を含む方法で製造することができる。
【0020】
重合は、重付加、ラジカル重合、イオン重合などとすればよい。重合開始剤、溶媒、温度、時間などの重合条件は、当業者であれば適宜調整できる。
その他の条件は、本発明の重合体について説明した通りである。
【0021】
(3)本発明の重合体を用いた物品の製造方法
上記説明した本発明の重合体は、溶媒に溶解して、膜(フィルム、シート)、被膜、繊維、塊状物品などの形状に成形することができる。即ち、本発明の重合体は、溶媒に溶解して成形することで物品を製造することができる。
本発明の重合体は、生体適合性に優れると共にタンパク質の吸着が少ないため、人工血管、人工心臓弁、人工関節、人工皮膚、人工組織又は人工骨の細胞増殖用の足場、歯科材料、組織接着材、心臓ペースメーカー、ステント、手術用縫合糸のような生体に埋設して用いられる医療用品;カテーテル、コンタクトレンズ、薬物徐放送達用基材、内視鏡のような生体に接触して用いられる医療用品;血液透析膜、血液保存パックのような生体から分離した材料と接触して用いられる医療用品;これらの医療用品の被覆材などの材料として好適に使用できる。
生体内に埋設して長時間体液と接触する医療用品は、生体内で重合体が溶出する可能性もあるが、本発明の重合体は、使用前に耐水性に優れた状態に切り替えることができるため、生体に埋設して用いられる医療用品の材料として特に好適に使用できる。
【0022】
本発明の重合体は、アルカリ性条件下で、極性溶媒に溶解させた状態で、成形すればよい。極性溶媒としては、水、緩衝液、又は水若しくは緩衝液とそれら以外の極性溶媒との混液が挙げられる。
アルカリ性領域に緩衝域を有する緩衝液としては、トリス-塩酸緩衝液、リン酸緩衝液、ホウ酸-ホウ酸ナトリウム緩衝液、炭酸-重炭酸緩衝液、HEPES-NaOH緩衝液などが挙げられる。
水及び緩衝液以外の極性溶媒としては、エタノール、イソプロパノール、多価アルコール(ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、イソプレングリコールなど)などが挙げられる。
【0023】
極性溶媒に溶解させる際のpHは、重合体の種類によって異なるが、概ねpH7.1以上で、式(5)で示される構造単位のMをカウンターカチオンにすることができる。pHは7.5以上、8以上、9以上、10以上、11以上、12以上、又は13以上とすることができる。また、pHは、14以下、13以下、12以下、又は11以下とすることができる。
【0024】
アルカリ性条件とするには、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムのような水酸化物;アンモニア;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン、トリイソプロパノールアミン、テトラヒドロキシプロピルエチレンジアミンのような有機アミン(これらはエタノールに溶解する有機アミンである)などのpH調整剤を溶媒に添加すればよい。或いは、アルカリ性領域に緩衝能を有する緩衝液のpHを調整してもよい。
【0025】
本発明の重合体は、それ単独で成形することができ、或いは他の重合体と混合して成形することもできる。
【0026】
なお、成形後の重合体は、酸性条件下におくことで、式(5)で示される構造単位のMが水素原子となり、耐水性が向上する。式(5)のMを水素原子にするためのpHは、重合体の種類によって異なるが、概ねpH7.0以下であり得る。pHは6.5以下、6以下、5以下、4以下、3以下、又は2以下とすることができる。また、pHは、1以上、2以上、3以上、又は4以上とすることができる。
【0027】
酸性条件とするには、塩酸、リン酸のような無機酸;酢酸、リンゴ酸、乳酸、クエン酸、フマル酸、酒石酸、コハク酸、グルコン酸、アジピン酸などの有機酸を溶媒に添加すればよい。或いは、酸性領域に緩衝域を有する緩衝液を用いて酸性条件とすることもできる。酸性領域に緩衝能を有する緩衝液としては、リン酸緩衝液、酢酸-酢酸ナトリウム緩衝液、クエン酸-クエン酸ナトリウム緩衝液などが挙げられる。
【実施例0028】
以下、実施例を挙げて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(1)重合体の製造
式(10)の化合物(AaUモノマー)の合成
式(10)において、R3が水素原子であり、R4が炭素数10のアルキレン基(-C10H20-)である化合物(以下、「AaUモノマー」と略称することがある)を、以下の手順で合成した。
ビーカーに水酸化ナトリウム36gと水1.5Lを加え、完全に溶解させた。その溶液に11-アミノウンデカン酸(11-Aminoundecanoic acid)40.3gを入れて溶解させた(溶液1)。一方、アクリロイルクロリド(Acryloyl chloride)50.5mLと2,6-ジ-t-ブチルクレゾール(2,6-di-ter-butylcresol)100mgをそれぞれ秤り取り、ビーカー中で混合して固形物を溶解させた(溶液2)。溶液1を攪拌しながらそこに溶液2を滴下させた。室温で3時間攪拌した後、6N塩酸を加えてpH3に調整した。析出した固形物を濾過により回収し、水で洗浄した。濾過した固形物をアセトンに溶解させ、n-ヘキサンを貧溶媒として再結晶を行った。結晶を回収し、この手順を2回繰り返した。
【0029】
実施例1の重合体(MPC:AaU=5:5)の合成
式(1)において、R1がメチル基であり、R2が酸素原子であり、2つのnが2である構造単位(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)から水素原子を2個除いた構造単位)と、式(5)において、R3が水素原子であり、R4が炭素数10のアルキレン基(-C10H20-)であり、Mがナトリウムイオンである構造単位を、5:5のモル比で有する重合体を、以下の手順で合成した。
三つ口フラスコに70%エタノール、AaUモノマー5.45mmol、水酸化ナトリウム5.99mmolを加えた。この溶解液に、MPCモノマー5.45mmolを加え、ラジカル開始剤である4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)を0.4mol%加えた。モノマー濃度が1Mになるように、70%エタノールで調整した。Ar雰囲気下、70℃で14時間攪拌し、重合させた。アイスバスでクエンチし、pH9の水を50ml加えた。ダイセンメンブレンペンシルモジュール HIT-HUS-0382を用いて、200~350rpmのポンプ速度で限外濾過精製を行った。凍結乾燥を行い、ポリマー(重合体)を回収した。
後述する方法で測定した重合体の数平均分子量は520,000であった。
【0030】
実施例2の重合体(MPC:AaU=3:7)の合成
式(1)において、R1がメチル基であり、R2が酸素原子であり、2つのnが2である構造単位(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)から水素原子を2個除いた構造単位)と、式(5)において、R3が水素原子であり、R4が炭素数10のアルキレン基(-C10H20-)であり、Mがナトリウムイオンである構造単位を、3:7のモル比で有する重合体を、以下の手順で合成した。
三つ口フラスコに40%エタノール、AaUモノマー8.24mmol、水酸化ナトリウム8.36mmolを加えた。この溶解液に、MPCモノマー3.53mmolを加え、ラジカル開始剤である4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)を0.4mol%加えた。モノマー濃度が1Mになるように、40%エタノールで調整した。Ar雰囲気下、70℃で14時間攪拌し、重合した。アイスバスでクエンチし、pH9の水を50ml加えた。ダイセンメンブレンペンシルモジュール HIT-HUS-0382を用いて、200~350rpmのポンプ速度で限外濾過精製を行った。凍結乾燥を行い、ポリマー(重合体)を回収した。
後述する方法で測定した重合体の数平均分子量は94,400であった。
【0031】
実施例3の重合体(MPC:AaU=1:9)の合成
式(1)において、R1がメチル基であり、R2が酸素原子であり、2つのnが2である構造単位(2-メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)から水素原子を2個除いた構造単位)と、式(5)において、R3が水素原子であり、R4が炭素数10のアルキレン基(-C10H20-)であり、Mがナトリウムイオンである構造単位を、1:9のモル比で有する重合体を、以下の手順で合成した。
三つ口フラスコに60%エタノール、AaUモノマー6.92mmol、水酸化ナトリウム6.81mmolを加えた。この溶解液に、MPCモノマー0.78mmolを加え、ラジカル開始剤である4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)を0.4mol%加えた。モノマー濃度が1Mになるように、40%エタノールで調整した。Ar雰囲気下、70℃で14時間攪拌し、重合した。アイスバスでクエンチし、pH9の水を50ml加えた。ダイセンメンブレンペンシルモジュール HIT-HUS-0382を用いて、200~350rpmのポンプ速度で限外濾過精製を行った。凍結乾燥を行い、ポリマー(重合体)を回収した。
後述する方法で測定した重合体の数平均分子量は40,000,000であった。
【0032】
AAモノマーの準備
式(10)の化合物に類する化合物として、アクリル酸(以下、「AAモノマー」と略称することがある)を準備した。アクリル酸は、式(10)の化合物と異なり、アミド基も、式(10)のR4に相当する炭化水素基も有さない。
【0033】
比較例1の重合体(MPC:AA=5:5)の合成
三つ口フラスコに70%エタノール、AAモノマー5.45mmol、水酸化ナトリウム5.99mmolを加えた。この溶解液に、MPCモノマー5.45mmol加え、ラジカル開始剤である4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)を0.4mol%加えた。モノマー濃度が1Mになるように、70%エタノールで調整した。Ar雰囲気下、70℃で14時間攪拌し、重合した。アイスバスでクエンチし、pH9の水を50ml加えた。ダイセンメンブレンペンシルモジュールHIT-HUS-0382を用いて、200~350rpmのポンプ速度で限外濾過精製を行った。凍結乾燥を行い、ポリマー(重合体)を回収した。
後述する方法で測定した重合体の数平均分子量は306,000であった。
【0034】
(2)物性評価
数平均分子量
下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより標準ポリスチレン換算で求めた。
(GPC条件)
装置: 島津製作所製 prominence
カラム:東ソー TSKgel α―M
サンプル濃度:1mg/ml
移動相溶媒:pH8.0のリン酸バッファ(Na2HPO4とNaH2PO4の混合 50mM)/アセトニトリル=9/1(体積比)
流量:0.6mL/min
カラム温度:40℃
【0035】
耐水性
各重合体を、濃度2重量%になるように、pH10の水酸化ナトリウム水溶液/エタノール=1:1(体積比)の溶液に溶解させた。#12のバーコーターで各重合体溶液をPETフィルムに塗工し、100℃で10分乾燥させることで、各重合体を塗工したPETフィルムを作成した。各重合体を塗工したPETフィルムを塩酸ガスに暴露することによりカルボキシル基を水素化した。次いで、塩酸ガスに暴露する前後の各重合体を塗工したPETフィルムを、水中に24時間浸漬した。24時間後、各重合体を塗工したPETフィルムを取り出し、水分を乾燥させた。
濃度1重量%のローダミン6Gで染色し、分光光度計(日本分光株式会社製 V-670)を用いて、540nmにおける吸光度を測定した。ローダミン6Gはカルボキシル基と結合する染料であるため、ローダミン6G染色により、AaU(またはAA)の量、ひいては膜の量を定量することができる。吸光度が高いほど残存する膜量が多いことを示す。
【0036】
タンパク質吸着抑制作用
各重合体を、pH10の水酸化ナトリウム水溶液/エタノール=1:1(体積比)の溶液に溶解させた。タンパク質高吸着のマイクロプレート(住友ベークライト社、ELISAプレートH (MS-8596F)の各ウェルに重合体溶液50μlを加え、100℃で20分間乾燥させた。このマイクロプレートを塩酸ガスに暴露し、暴露後のウェルを、それぞれリン酸緩衝液-生理食塩水(PBS)(pH7.2)200μlで各ウェルを2回洗浄した。ホースラディッシュパーオキシダーゼ(HRP)で標識した抗IgG抗体をPBS(pH7.2)で5000倍に希釈し、希釈液100μlを、重合体でコーティングしていないウェル及び重合体でコーティングしたウェルにそれぞれ加えて、室温で1時間静置した。各ウェルの抗IgG抗体溶液をピペットマン(商品名)で排出し、0.05重量%Tween20を含むPBS(pH7.2)200μLの添加及び排出を4回繰り返した。各ウェルに、HRPの基質であるTMB1-Component Microwell Peroxidase Substrate, Sure Blue(KPL社)100μlを添加し、室温で30分間静置した。各ウェルにTMB Stop Solution(KPL社)100μlを添加し、プレートリーダーを用いて450nmにおける吸光度を測定した。
吸光度が高いほどIgG抗体の結合量が多いことを示す。
重合体によるIgG抗体吸着抑制率を、下記式で算出した。下記式において、コントロールは、重合体でコートしておらず、かつIgG抗体を作用させていないウェルである
IgG抗体吸着抑制率=1-〔(重合体コートウェルにIgG抗体を作用させた場合の吸光度-コントロールの吸光度)/(重合体コートしていないウェルにIgG抗体を作用させた場合の吸光度-コントロールの吸光度)〕×100
【0037】
結果を表1に示す。
【表1】
MPCと共重合させるモノマーが本発明のAaUとは異なる比較例1の重合体は、塩酸ガスに暴露する前後を通して、水に浸漬することで膜量が少なくなり、耐水性が悪かった。これに対して、AaUの構造単位を有する本発明の実施例1~3の重合体は、塩酸ガス暴露前のアルカリ性条件下では、水に浸漬することで膜量が少なくなり、即ち耐水性が悪かったが、塩酸ガスに暴露することにより残存する膜量が多くなり、即ち耐水性が向上した。
本発明の実施例1~3の重合体は、塩酸ガスに暴露した後、耐水性が向上し、かつIgG吸着抑制率が99%以上と極めて高かった。
本発明の重合体は、優れた生体適合性とタンパク質吸着抑制作用を有し、かつ水やエタノールのような安全な極性溶媒に溶解させて成形加工に使用できると共に、成形後は耐水性に優れたものとすることができる。従って、医療用品の材料や被覆材として好適に使用できる。