(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143636
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】廃プラスチックに含まれるプラスチック成分と充填剤とを分離する方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/02 20060101AFI20241003BHJP
C08J 11/10 20060101ALN20241003BHJP
C08J 11/08 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
B29B17/02 ZAB
C08J11/10
C08J11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056411
(22)【出願日】2023-03-30
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和2年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術開発機構からの委託事業「革新的プラスチック資源循環プロセス技術開発/石油化学原料化プロセス/石油化学原料化プロセス」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】590000455
【氏名又は名称】一般財団法人カーボンニュートラル燃料技術センター
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100126099
【弁理士】
【氏名又は名称】反町 洋
(72)【発明者】
【氏名】高澤 隆一
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA09
4F401AA10
4F401AA11
4F401AB05
4F401BA13
4F401CA25
4F401CA51
4F401CA74
4F401CB32
4F401EA54
(57)【要約】
【課題】廃プラスチックからプラスチック成分と充填剤とを効果的に分離することが可能な方法を提供する。
【解決手段】廃プラスチックに含まれるプラスチック成分と充填剤とを分離する方法であって、前記廃プラスチックに熱媒を添加して混合液を調製すること、前記混合液中の前記プラスチック成分を溶融、溶解、または分解すること、前記混合液をろ過して、溶融、溶解、または分解した前記プラスチック成分と前記充填剤とを分離することを含む、方法とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃プラスチックに含まれるプラスチック成分と充填剤とを分離する方法であって、
前記廃プラスチックに熱媒を添加して混合液を調製すること、
前記混合液中の前記プラスチック成分を溶融、溶解、または分解すること、
前記混合液をろ過して、溶融、溶解、または分解した前記プラスチック成分と前記充填剤とを分離すること、
を含む、方法。
【請求項2】
前記熱媒は、炭化水素系溶媒を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記混合液の調製を、加温乃至加圧下で行う、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記加温乃至加圧が、300~500℃乃至0.5~10MPaである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
1以上の濾材を用いて前記混合液を濾別する、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
2以上の濾材を、直列または並列で用いる、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
2種以上の前記廃プラスチックを含む混合物から、前記充填剤を分離する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記炭化水素系溶媒として、粗油から得られた留分を用いる、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記炭化水素系溶媒として、前記プラスチック成分の少なくとも一部が溶解可能な溶媒を選定する、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記熱媒は、前記プラスチック成分の融点以上の温度とする、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記プラスチック成分が、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンからなる群のうち、いずれか1種以上を含む、請求項1乃至10のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、廃プラスチックに含まれるプラスチック成分と充填剤とを分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックは、丈夫で軽くて安く、ペットボトルをはじめ身の回りの製品に多く使用されている。しかし、不法に廃棄されたプラスチック製品(以下、「廃プラスチック」ともいう)が川や海に流出すると、紫外線や波の力などで細かく砕かれたマイクロプラスチックとして半永久的に分解されないため、生態系に大きな影響が与えることが懸念されている。
【0003】
こうした海洋プラスチックごみ問題をはじめ、プラスチックが関係する地球環境問題に対応するため、プラスチック資源循環戦略などの取り組みがなされており、その一環としてプラスチック資源循環促進法が制定・施行されている。このプラスチック資源循環促進法では、徹底したリサイクルを実施し、プラスチックのライフサイクル全体を通じて資源循環を促進することが期待されている。
【0004】
ここで、廃プラスチックのリサイクル方法として、特許文献1が知られている。この特許文献1には、プラスチック材料を溶融させてプラスチック溶融物を形成し、脱ガスした後に、プラスチック溶融物を加熱しながら解重合反応させる方法が開示されている。そして、特許文献1には、解重合反応によって得られる生成混合物を蒸留によって分離することで、プラスチック製品の原料として再利用できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、プラスチック製品には、用途に応じた機能・特性を付加するために様々な充填剤が配合されるのが一般的である。なお、充填剤は、鉱物資源から作られているものが多く、一般的に数μm~数10μmの微粉末である。
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1に開示された方法では、廃プラスチックをリサイクルする際、プラスチック成分から充填剤を分離する方法については何ら開示されていない。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、廃プラスチックからプラスチック成分と充填剤とを効果的に分離することが可能な方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、以下の態様を有する。
[1] 廃プラスチックに含まれるプラスチック成分と充填剤とを分離する方法であって、
前記廃プラスチックに熱媒を添加して混合液を調製すること、
前記混合液中の前記プラスチック成分を溶融、溶解、または分解すること、
前記混合液をろ過して、溶融、溶解、または分解した前記プラスチック成分と前記充填剤とを分離すること、
を含む、方法。
[2] 前記熱媒は、炭化水素系溶媒を含む、[1]に記載の方法。
[3] 前記混合液の調製を、加温乃至加圧下で行う、[1]に記載の方法。
[4] 前記加温乃至加圧が、300~500℃乃至0.5~10MPaである、[3]に記載の方法。
[5] 1以上の濾材を用いて前記混合液を濾別する、[1]に記載の方法。
[6] 2以上の濾材を、直列または並列で用いる、[5]に記載の方法。
[7] 2種以上の前記廃プラスチックを含む混合物から、前記充填剤を分離する、[1]に記載の方法。
[8] 前記炭化水素系溶媒として、粗油から得られた留分を用いる、[2]に記載の方法。
[9] 前記炭化水素系溶媒として、前記プラスチック成分の少なくとも一部が溶解可能な溶媒を選定する、[2]に記載の方法。
[10] 前記熱媒は、前記プラスチック成分の融点以上の温度とする、[1]に記載の方法。
[11] 前記プラスチック成分が、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びポリスチレンからなる群のうち、いずれか1種以上を含む、[1]乃至[10]のいずれかに記載の方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明の方法によれば、廃プラスチックからプラスチック成分と充填剤とを効果的に分離することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】第1実施形態の分離方法に適用可能な充填剤の分離装置の構成を示す系統図である。
【
図2】第2実施形態の分離方法に適用可能な充填剤の分離装置の構成を示す系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明において、「~」を用いて表される数値範囲には、その両端の数値が含まれるものとする。
【0013】
本発明は、廃プラスチックに含まれるプラスチック成分と充填剤とを分離する方法(以下、単に「分離方法」ともいう)である。
【0014】
プラスチック成分としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンエチレンコポリマー、ポリスチレン、ポリブテン、エチレンオリゴマー、ブテンオリゴマー、スチレンオリゴマー、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン、エポキシ樹脂、及びフェノール樹脂等;ポリ塩化ビニル、及びポリ塩化ビニリデン等が挙げられる。
これらの中でも、ポリエチレンとしては、例えば、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、及び直鎖低密度ポリエチレン等が挙げられる。
【0015】
プラスチック成分は、ビニル系重合体(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレンエチレンコポリマー、ポリスチレン、ポリブテン、エチレンオリゴマー、ブテンオリゴマー、及びスチレンオリゴマー等)に由来する廃プラスチックの少なくともいずれかを含むことが好ましい。
プラスチック成分は、ポリエチレンに由来する廃プラスチック及びポリプロピレンに由来する廃プラスチックの少なくともいずれかを含むことがより好ましい。
【0016】
通常、一般廃棄物の場合、廃プラスチックは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリ塩化ビニル(PVC)からなる群から選ばれる少なくとも1種を含む、多種多様なプラスチック成分の混合物として提供される。
【0017】
廃プラスチックは、上記に列挙したプラスチックに加えて、廃プラスチックの総量の20質量%を超えない割合、好ましくは15質量%以下、より好ましくは10質量%以下の、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリウレタン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体、ポリメタクリル酸メチル等を含んでいてもよい。上記の割合でこれらのプラスチック成分が混在していたとしても、本発明の分離方法を好適に実施することができる。
【0018】
充填剤(「フィラー」ともいう)は、特に限定されるものではなく、用途や機能に応じて適宜選択される。充填剤としては、例えば、増量用として、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー;補強用として、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノトライト、石膏繊維、アルミボレート、MOS、アラミド繊維、各種ファイバー系、カーボンファイバー(炭素繊維)、グラスファイバー(ガラス繊維)、タルク、マイカ、ガラスフレーク、ポリオキシベンゾイルウイスカー;抗菌剤として、カテキン、銀イオン担持ゼオライト、銅フタロシアニン;ガスバリア材として、合成マイカ系、クレー・合成マイカのナノフィラー;導電性として、カーボンブラック、黒鉛、炭素繊維、金属粉、金属繊維、金属箔;磁性付与として、各種磁性材料、各種フェライト系、磁性酸化鉄、サマコバ(Sm-Co)、Nd-Fe-B;熱伝導性として、Al2O3(アルミナ)、AlN、BN、BeO;圧電性として、チタン酸バリウム、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT);制振性として、マイカ、黒鉛、チタン酸カリウム、ゾノトライト、炭素繊維、フェライト;遮音性として、鉄粉、鉛粉、硫酸バリウム;摺動性として、黒鉛、六方晶BN、硫化モリブデン、テフロン(登録商標)粉、タルク;電磁波吸収として、フェライト、黒鉛、木炭粉、CMC、CNT、PZT;光反射・光散乱として、酸化チタン、ガラスビーズ、炭酸カルシウム、アルミ粉、マイカ;熱線輻射として、酸化マグネシウム、ハイドロタルサイト、MOS、アルミナ、木炭粉末;難燃剤・難燃化として、酸化アンチモン、水酸化アルミ、水酸化マグネシウム、硼酸亜鉛、赤燐、炭酸亜鉛、ハイドロタルサイト、ドーソナイト;紫外線防護として、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄;アンチブロッキングとして、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、球状微粒子;吸収剤として、高分子ゲル、酸化カルシウム、酸化マグネシウムが挙げられる。
【0019】
充填剤の大きさ、粒子径は、用途や得たい機能に応じて適宜選択される。充填剤は、通常、サイズ(粒子の直径)が100μm~10μm前後のマクロフィラー、10μm~100nm前後のミクロフィラー、および100nm~10nm前後のナノフィラーに区分される。本発明の分離方法では、これらの中でも、マクロフィラーおよびミクロフィラーに適用することが好ましく、ミクロフィラーに適用することがより好ましい。
【0020】
充填剤の形状は、特に限定されるものではなく、球状、真球状、粒状、針状、繊維状、板状のいずれかであってもよい。
【0021】
本発明の分離方法は、以下の3つのステップを含む。
(1)廃プラスチックに熱媒を添加して混合液を調製すること
(2)混合液中のプラスチック成分を溶融、溶解、または分解すること
(3)混合液をろ過して、溶融、溶解、または分解したプラスチック成分と充填剤とを分離すること
【0022】
(第1ステップ)
第1ステップでは、廃プラスチックに熱媒を添加して混合液を調製する。従来においても、充填材等を含有する廃プラスチックから充填材を除去するため、プラスチック成分を溶解し得る溶剤を添加して混合して溶液状体として、フィルター等によって溶媒に不溶な成分(充填材)を分離して除去することが行われていたが、大量の溶媒を使用する必要があった。本発明においては、充填材を含有する廃プラスチックに熱媒を添加して混合液とすることで、廃プラスチックに含まれるプラスチック成分(即ち、重合体)を溶解しながらも、重合体の分子量を下げることができ、その結果、プラスチック成分の粘度を下げることが可能となった。また、熱媒を混合することで、温度にもよるがプラスチック成分が軟化ないし溶融することも相まって効果的にプラスチック成分の粘度を下げることができる。なお、ここでの重合体の分子量の低下は、高分子鎖の切断(すなわち、熱分解)が生じているものと推測できる。
【0023】
熱媒は、炭化水素系溶媒を含むことが好ましい。上記炭化水素系溶媒は、石油プラントなどで入手が容易なことから、粗油から得られた留分を用いることが好ましい。炭化水素系溶媒としては、25℃以上250℃以下の範囲内の温度で、液体として存在する炭化水素であれば、特に限定されるものではないが、例えば、炭素数8以上で融点が150℃以下の炭化水素を20容量%以上100容量%以下、好ましくは50容量%以上100容量%以下含むものが挙げられる。炭化水素系溶媒は、単一種の分子からなるものであっても、多数種の混合物であってもよく、ASTM D2892のTBP法(True Boiling Point法)にて蒸留した沸点を目安として150℃から250℃の灯油留分、250℃から380℃の軽油留分等を使用することができる。
【0024】
これらの炭化水素系溶媒に含まれる個別の分子種としては、具体的には、鎖式飽和炭化水素として、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、ペンタデカン、ヘキサデカン(n-セタン)、イソセタン、ヘプタデカン、オクタデカン、ノナデカン、イコサン、エイコサン、ヘンイコサン、ヘンエイコサン、ドコサン、トリコサン、テトラコサン、及びペンタコサン;鎖式不飽和炭化水素として、オクテン、オクチン、ノネン、ノニン、デセン、デシン、ウンデセン、ウンデシン、ドデセン、ドデシン、トリデセン、トリデシン、テトラデセン、テトラデシン、ペンタデセン、ペンタデシン、ヘキサデセン、ヘキサデシン、ヘプタデセン、ヘプタデシン、オクタデセン、オクタデシン、ノナデセン、ノナデシン、イコセン、イコシン、エイコセン、エイコシン、ヘンイコセン、ヘンイコシン、ヘンエイコセン、ヘンエイコシン、ドコセン、ドコシン、トリコセン、トリコシン、テトラコセン、テトラコシン、ペンタコセン、及びペンタコシン;環式飽和炭化水素として、シクロオクタン、及びデカヒドロナフタレン、環式不飽和炭化水素として、1,5-シクロオクタジエンが挙げられる。これらの炭化水素を含む炭化水素系溶媒は、本発明の分離方法を実施する際、液体の性状を維持することができ、かつ最終的に再生したプラスチック成分から分離する際にも、多量のエネルギーを必要としない傾向にあるため、好適に利用することができる。
【0025】
混合液の調製は、耐熱性及び耐圧性を有する容器内で、加温ないし加圧下で行うことが好ましい。これにより、下記第2ステップにおけるプラスチック成分の溶融、溶解、または分解を促進することができる。
【0026】
混合液を調製する際の温度及び圧力は、特に限定されるものではなく、廃プラスチックに含まれるプラスチック成分に応じて、適宜選択することができる。具体的には、混合液を調製する際の温度は、300~500℃とすることが好ましく、350~450℃とすることがより好ましい。また、混合液を調製する際の圧力は、0.5~10MPaとすることが好ましく、1~8MPaとすることがより好ましい。
【0027】
(第2ステップ)
第2ステップでは、混合液中のプラスチック成分を溶融、溶解、または分解する。上記(第1ステップ)の箇所で説明したように、熱媒と廃プラスチックと混合することで、溶融、溶解、または分解(プラスチック成分の分子量の低下)が総合的に起こる。なお、第2ステップは、第1ステップと別々に行われる場合に限定されるものではなく、第1ステップと同時に行われてもよい。
【0028】
プラスチック成分の溶融は、プラスチック成分を融点以上の温度に加熱することで行われる。なお、プラスチック成分の中で、一般的に融点が存在するのは、低密度ポリエチレン(130℃)、高密度ポリエチレン(141℃)、ポリプロピレン(160℃)、ポリエチレンテレフタレート(260℃)などの結晶性樹脂のみである。
【0029】
プラスチック成分の加熱は、プラスチック成分を融点以上の温度に加熱することができる方法であれば、特に限定されない。具体的には、上記第1ステップにおいて、プラスチック成分の融点以上の温度とされた熱媒を廃プラスチックに添加する方法や、別途用意したヒータ(加熱器)による加熱が挙げられる。
【0030】
ヒータとしては、スチームヒータ、電気式ヒータ、加熱された不活性ガス(例えば窒素ガス)を熱源とするヒータなどが挙げられる。尚、加熱方式は直接加熱、間接加熱のいずれでもよく、あるいはそれらの併用であってもよい。
【0031】
プラスチック成分の溶解は、上記第1ステップで添加する熱媒としてプラスチック成分を溶解可能な炭化水素系溶媒を選定することで行われる。これにより、廃プラスチックに含まれるプラスチック成分の少なくとも一部が炭化水素系溶媒に溶解することで、廃プラスチックが炭化水素系溶媒中で流動化した状態となる。
【0032】
炭化水素系溶媒は、廃プラスチックに含まれるプラスチック成分に応じて適宜選択することができる。炭化水素系溶媒としては、軽油留分のLCO(Light cycle oil)、HCO(Heavy cycle oil)、LGO(Light gas oil)、HGO(Heavy gas oil)等が挙げられる。これらの中でも、LGOが好ましい。
なお、これらの軽油留分中の脂肪族成分と芳香族成分との好ましい組成は、プラスチック成分に応じて適宜選択することが好ましい。具体的には、例えば、廃プラスチック中のプラスチック成分としてPE、PPが多い場合には、脂肪族成分リッチの組成とすることが好ましく、PSが含まれる場合は、芳香族成分が或る程度含まれている組成とすることが好ましい。
また、プラスチックの溶解を促進する観点から、熱媒として、100~250℃に加熱された炭化水素系溶媒を廃プラスチックに添加することがより好ましい。
【0033】
プラスチック成分の分解は、混合液を所要の温度に加熱することで行われる。混合液を加熱することにより、プラスチック成分が熱分解を起こすことで、高分子鎖が切断され、廃プラスチックが所定の温度で流動化した状態となる。
【0034】
混合液の加熱は、廃プラスチック中に含まれるプラスチック成分の分解温度に応じて、加熱条件(温度および時間)を適宜選択することができる。具体的には、加熱温度としては、300℃以上500℃以下とすることができ、350℃以上450℃以下とすることが好ましい。また、加熱時間としては、1時間以上20時間以下とすることができ、3時間以上10時間以下とすることがより好ましい。
【0035】
混合液の加熱は、プラスチック成分の上記温度に加熱することができる方法であれば、特に限定されない。具体的には、第1ステップで上記温度とされた熱媒を添加することによる加熱や、追加のヒータ(加熱器)による加熱が挙げられる。
【0036】
混合液の加熱は、不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。不活性ガスとしては、窒素ガスや、アルゴンガス等の希ガス類を挙げることができる。混合液の加熱を上記の条件で実施することにより、廃プラスチックに含まれるプラスチック成分の、揮発性化合物等への過度な熱分解や、プラスチック成分の酸化反応を抑制しつつ、プラスチック成分を低分子量化して廃プラスチックを取り扱い容易な態様で流動化させることができる。
【0037】
混合液を加熱する際、プラスチック成分を低分子量化するため、触媒を用いてもよい。好適な触媒としては、例えば、βゼオライト、天然ゼオライト等が挙げられる。これらの触媒を利用することにより、混合液中のプラスチック成分を、より低温でも均一に低分子量化することができる。触媒の使用量は、廃プラスチック100質量部に対して、5質量部以上200質量部以下とすることが好ましく、2質量部以上50質量部以下とすることがより好ましい。
【0038】
混合液を調製し、混合液を加熱してプラスチック成分を分解する際、0.5~10MPaの加圧状態で行うことが好ましく、1~8MPaの加圧状態で行うことがより好ましい。これにより、プラスチック成分の分解を促進することができる。混合液の加圧方法は、特に限定されるものではない。例えば、密閉した反応容器内で混合液を加熱することで、溶媒の蒸気圧や、分解・生成したガス成分によって、反応容器内の圧力を上昇させることができ、ガス成分を抜き出すことで反応容器内の圧力を下降させることができる。
【0039】
ところで、産業廃棄物の場合、特定のプラスチック成分からなり、分子量分布も一定範囲内の、比較的均質な廃プラスチックが得られることがある。そのような場合には、廃プラスチックを構成するプラスチック成分の種類と分子量に応じた、加熱条件とすることが好ましい。
【0040】
また、混合液の加熱において、揮発性成分が発生する場合、そのような揮発性成分の有用性に応じ、当該揮発性成分を除去したり、回収したりすることが好ましい。例えば、上記廃プラスチックがポリ塩化ビニルを含む場合、ポリ塩化ビニルを加熱する際に発生する塩化水素を気化して除去することが好ましい。これにより、廃プラスチックを流動化した後に、流動化した廃プラスチックの塩素含量を低減できる。また、廃プラスチックがポリスチレンを含む場合、加熱によって生じるスチレンモノマーを気化して回収することが好ましい。回収したスチレンモノマーは、ポリスチレンの製造等に再利用できる。
【0041】
本発明の分離方法では、第2ステップにおいて、混合液中のプラスチック成分の溶融、溶解、または分解をいずれか1以上行うことで、廃プラスチックを取り扱い容易な態様で流動化させることができればよく、2以上を同時に行う態様であってもよいし、順次行う態様であってもよい。
【0042】
また、本発明の分離方法では、第2ステップによって、溶融、溶解、または分解したプラスチック成分と充填剤とを含む混合液が得られる。
【0043】
(第3ステップ)
第3ステップでは、上記第2ステップで得られた混合液をろ過して、溶融、溶解、または分解したプラスチック成分と充填剤とを分離する。分離方法は、固液分離が可能であれば、特に限定されるものではない。分離方法としては、例えば、当業者が通常採用しうるフィルター、スクリーン等の濾材を用いた濾別が挙げられる。
【0044】
濾材は、特に限定されるものではなく、処理対象となる混合液の温度や、分離対象となる充填剤の平均粒径に応じて、材質および孔径を適宜選択することが好ましい。濾材としては、樹脂膜や金属製メッシュフィルター等が挙げられる。樹脂膜として、セルロース、熱可塑性樹脂等の樹脂製のフィルターが挙げられる。また金属製メッシュフィルターとして、ステンレス製メッシュフィルター等が挙げられる。樹脂膜、金属製メッシュフィルターの何れも公知のものを使用することができる。これら樹脂膜や金属製メッシュフィルターには種々の孔径のものがあり、それらを適宜選択して使用することができる。
具体的には、例えば、充填剤として粒径分布範囲が0.3~2μmの酸化チタンを分離する場合、濾材として孔径0.2μmの樹脂膜や金属製メッシュフィルター等を用いることができ、充填剤として粒径分布範囲が2~100μmのタルクを分離する場合、濾材として孔径0.5μmの樹脂膜や金属製メッシュフィルター等を用いることができる。
【0045】
第3ステップでは、廃プラスチックに2以上の充填剤が含まれる場合、2以上の濾材を用いて混合液を濾別してもよい。例えば、廃プラスチックに大きさが異なる充填剤が含まれる場合、処理効率の観点から、孔径が大きい(あるいは目開きのサイズが大きい)濾材と孔径が小さい濾材とを孔径が大きいものから小さいものとなる順序で直列に配置し、平均粒径が大きい充填剤から順番に濾別する態様としてもよい。また、メンテナンス性の観点より、2以上の濾材を並列に用いて濾別する態様としてもよい。
【0046】
以上説明したように、本発明の分離方法によれば、廃プラスチックからプラスチック成分と充填剤とを効果的に分離することができる。
【0047】
なお、本発明の分離方法は、1種の廃プラスチックに対して適用する場合に限定されるものではなく、2種以上の廃プラスチックを含む混合物から、それらに含まれる1以上の充填剤を分離する場合に適用してもよい。
【0048】
また、本発明の分離方法は、廃プラスチックに対して適用する場合に限定されるものではなく、未使用あるいは使用済のプラスチック材料やプラスチック製品に対しても適用することが可能である。
【0049】
以下、本発明を適用した一実施形態である廃プラスチックからプラスチック成分と充填剤とを分離する方法、及びそれに用いる分離装置の構成について、詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0050】
<第1実施形態>
(分離装置)
先ず、本発明を適用した第1実施形態の分離方法に用いる充填剤の分離装置の構成について、説明する。
図1は、第1実施形態の分離方法に適用可能な充填剤の分離装置の構成を説明する系統図である。
【0051】
図1に示すように、第1実施形態の分離方法に適用可能な充填剤の分離装置(以下、単に「分離装置」という)10は、撹拌槽1と、廃プラスチック供給源2と、熱媒供給源3と、第1固液分離機4と、経路L1~L3とを備える。
【0052】
撹拌槽1は、耐熱性及び耐圧性を有する容器であり、供給ラインL1から供給される廃プラスチックと供給ラインL2から供給される熱媒とを撹拌手段によって混合することにより、これらの混合液を調製する。この際、廃プラスチックは熱媒によって加熱されて、プラスチック成分が溶融状態となる。また、熱媒として供給される炭化水素系溶媒の種類によっては、廃プラスチック中に含まれるプラスチック成分の一部が溶解状態となる。撹拌手段としては、例えば、インペラ及び回転翼等の攪拌羽根や、特殊翼が挙げられる。攪拌羽根としては、例えば、スクリュー型、プロペラ型、パドル型、及びタービン型が挙げられるが、攪拌羽根の形状は特に限定されない。特殊翼としては、例えば、ヘリカルリボン翼、ダブルヘリカルリボン翼、フルゾーン(登録商標)(株式会社神鋼環境ソリューション製)、及びマックスブレンド(登録商標)(住友重機械プロセス機器株式会社製)が挙げられる。
【0053】
経路L1は、廃プラスチック供給源2と撹拌槽1とを連結し、廃プラスチック供給源2から撹拌槽1へ廃プラスチックを供給する。また、経路L1には、フィーダー5が位置しており、図示略の制御装置によってフィーダー5の動作を制御することで、廃プラスチック供給源2から攪拌槽1への廃プラスチックの供給量を制御する。
【0054】
経路L2は、熱媒供給源3と攪拌槽1とを連結し、熱媒供給源3から攪拌槽1へ熱媒として炭化水素系溶媒を供給する。また、経路L2には、送液ポンプ6が位置しており、図示略の制御装置によって送液ポンプ6の動作を制御することで、熱媒供給源3から攪拌槽1への熱媒の供給量を制御する。
【0055】
経路L3は、攪拌槽1と次工程の装置(図示略)とを連結し、溶融状態または溶解状態のプラスチック成分と充填剤とを含む混合液を攪拌槽1から次工程へ供給する。なお、経路L3は、撹拌槽1の下方寄りの位置に接続されており、攪拌槽1の底部側の混合液を抜き取ることができる。また、経路L3には、送液ポンプ7と第1固液分離機4とが位置する。図示略の制御装置によって送液ポンプ7の動作を制御することで、攪拌槽1から次工程の装置への混合液の供給量を制御する。
【0056】
第1固液分離機4は、経路L3に位置しており、攪拌槽1から次工程の装置へと供給される混合液中からプラスチック成分と充填剤とを分離する。第1固液分離機4は、濾材を使用して固液分離が可能なろ過装置であれば、特に限定されない。このようなろ過装置としては、加圧ろ過器、真空ろ過器、ろ過膜装置等が挙げられる。また、ろ過装置は、縦型であってもよいし、横型であってもよい。さらに、ろ過装置は、1つであってもよいし、2以上を直列または並列で配置されていてもよい。
【0057】
(分離方法)
次に、第1実施形態の分離方法について、分離装置10を用いる場合を一例として説明する。
先ず、第1ステップでは、攪拌槽1内に廃プラスチックと熱媒である炭化水素系溶媒とを供給して撹拌する。これにより、攪拌槽1内にプラスチック成分と熱媒との混合液を調製する。
【0058】
上記第1ステップに次いで、第2ステップでは、調製した混合液中のプラスチック成分を溶融、または溶解する。具体的には、上記第1ステップにおいて、熱媒として、廃プラスチックを構成するプラスチック成分を溶解する炭化水素系溶媒を選択するとともに、炭化水素系溶媒の温度を当該プラスチック成分の融点以上の温度とするか、攪拌槽1の内部を上記融点以上の温度に保ちながら撹拌する。これにより、攪拌槽1内に、溶融状態または溶解状態のプラスチック成分と炭化水素系溶媒との混合液が得られる。
【0059】
次に、第3ステップでは、上記混合液を濾材によって濾別して、溶融状態または溶解状態のプラスチック成分と充填剤とを分離する。具体的には、溶融状態または溶解状態のプラスチック成分と炭化水素系溶媒との混合液を攪拌槽1の下方から抜き出した後、第1固液分離機4に供給する。第1固液分離機4では、プラスチック成分の分解の程度によって異なるが、混合液中に含まれる充填剤がウェット状態のケーキ層、もしくはペースト状で濾材に捕捉され、充填剤が除去された混合液が得られる。
【0060】
本実施形態の分離方法で得られた混合液は、図示略の次工程へと供給することができる。
例えば、混合液から炭化水素系溶媒を除去することで、プラスチック成分の原料としてもよい(マテリアルリサイクル)。また、次工程で混合液中に含まれるプラスチック成分を分解することで、原料成分として回収してもよい(ケミカルリサイクル)。
【0061】
<第2実施形態>
(分離装置)
次に、本発明を適用した第2実施形態の分離方法に用いる充填剤の分離装置の構成について、説明する。
図2は、第2実施形態の分離方法に適用可能な充填剤の分離装置の構成を説明する系統図である。
【0062】
図2に示すように、第2実施形態の分離方法に適用可能な分離装置20は、撹拌槽21と、廃プラスチック供給源2と、熱媒供給源3と、第1固液分離機4と、ガス成分分流器22と、生成物分離回収塔23と、第2固液分離機24と、経路L1~L7とを備える。
ここで、第1実施形態の分離装置10と同じ構成については、同一の符号を付すとともに、説明を省略する。
【0063】
撹拌槽21は、耐熱性及び耐圧性を有する容器であり、供給ラインL1から供給される廃プラスチックと供給ラインL2から供給される熱媒とを撹拌手段によって混合することにより、これらの混合液を調製する。また、調製された混合液では、廃プラスチックが熱媒によって加熱されて、プラスチック成分が分解される。すなわち、撹拌槽21では、分解されたプラスチック成分と、熱媒として供給される炭化水素系溶媒との混合液を調製する。
【0064】
経路L4は、攪拌槽21の上方とガス成分分流器22とを連結し、撹拌槽21内で分解されたプラスチック成分のうちガス成分を攪拌槽21の上方からガス成分分流器22へ供給する。
【0065】
ガス成分分流器22は、攪拌槽21から抜き出したガス成分をさらに気体成分と液体成分とに分流する。ガス成分分流器22には、経路L5及び経路L6が接続されており、ガス成分分流器22によって分流された気体成分は経路L5を介して系外に抜き出され、液体成分は経路L6を介して攪拌槽21に還流される。
【0066】
経路L3は、攪拌槽21と生成物分離回収塔23とを連結し、攪拌槽21の下方から抜き出された分解されたプラスチック成分と炭化水素系溶媒との混合液を生成物分離回収塔23へ供給する。
【0067】
生成物分離回収塔23は、分解されたプラスチック成分と炭化水素系溶媒との混合液を、各モノマー単位の成分と炭化水素系溶媒成分とにそれぞれ分離する。
【0068】
経路L7は、生成物分離回収塔23と第2固液分離機24とを連結し、生成物分離回収塔23の下方から抜き出された高沸点成分を第2固液分離機24へ供給する。また、経路L7には送液ポンプ25が位置しており、図示略の制御装置によって送液ポンプ25の動作を制御することで、生成物分離回収塔23から第2固液分離機24への送液量を制御する。
【0069】
第2固液分離機24は、経路L7に位置しており、生成物分離回収塔23から次工程の装置へと供給される溶媒成分中から、第1固液分離機4によって分離されなかった充填剤や、撹拌槽21に添加された任意の触媒等を分離する。第2固液分離機24としては、上記第1固液分離機4と同様のものを用いることができる。なお、第2固液分離機24で用いる濾材は、第1固液分離機4で用いる濾材よりも孔径が小さいものを用いることが好ましい。これにより、前段に配置された第1固液分離機4において粗く分離した後、後段に配置された第2固液分離機24において残りの微小な固体の全てを分離することができる。具体的には、例えば、第1固液分離機4で用いる濾材ないしろ過膜の孔径を5~10μmとし、第2固液分離機24で用いる濾材ないしろ過膜の孔径を0.2μmとすることができる。
【0070】
(分離方法)
次に、第2実施形態の分離方法について、分離装置20を用いる場合を一例として説明する。
先ず、第1ステップでは、攪拌槽21内に廃プラスチックと熱媒である炭化水素系溶媒とを供給して撹拌する。これにより、攪拌槽21内にプラスチック成分と熱媒との混合液を調製する。
【0071】
上記第1ステップに次いで、第2ステップでは、調製した混合液中のプラスチック成分を分解する。具体的には、上記第1ステップにおいて、熱媒として用いる炭化水素系溶媒の温度を当該プラスチック成分の熱分解する温度以上の温度とするか、攪拌槽21の内部を熱分解する温度以上に保ちながら撹拌する。これにより、攪拌槽21内に、分解されたプラスチック成分と炭化水素系溶媒との混合液が得られる。
【0072】
次に、第3ステップでは、上記混合液を濾材によって濾別して、分解されたプラスチック成分を含む液体と、充填剤を含む固体とを分離する。具体的には、分解されたプラスチック成分と炭化水素系溶媒との混合液を攪拌槽21の下方から抜き出した後、第1固液分離機4に供給する。これにより、第1固液分離機4では、混合液中に含まれる固体成分(充填剤や触媒の一部を含む)のうち、比較的粒径の大きな成分が濾材に捕捉され、上記固体が除去された混合液が得られる。
【0073】
次に、上記固体を除去した後の混合液を生成物分離回収塔23に供給し、各モノマー単位の成分と炭化水素系溶媒成分とに分離して、それぞれを回収する。
【0074】
ここで、生成物分離回収塔23の底部から回収する成分には、第1固相分離機4によって分離回収されなかった比較的粒径の小さな固体成分(例えば、粒径の小さな充填剤や触媒)が含まれている。そこで、経路L7に設けた第2固液分離機24において、混合液をろ過することで混合液中に含まれる粒径が小さい固体成分(充填剤や触媒の一部を含む)を濾別した後、それぞれを回収する。
【0075】
本実施形態の分離方法によれば、プラスチック成分を分解し、各原料成分として回収することができる(ケミカルリサイクル)。
【0076】
なお、本発明の技術範囲は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【実施例0077】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明する。なお、本発明は以下に説明する実施例に何ら限定されるものではない。
【0078】
<実施例1>
図1に示す分離装置10を用いて、廃プラスチック試料からプラスチック成分と充填剤との分離を行った。固液分離機の構成、試料、及び手順は、以下の通り。
【0079】
(第1固液分離機)
・孔径0.2μmの金属製フィルター
(プラスチック成分)
・GPPS:HF77(PSジャパン株式会社製、ガラス転移温度:98℃)
(充填剤)
・酸化チタン:タイペーク(登録商標)CR-60-2(石原産業株式会社社製、平均粒子径0.21μm)
(溶媒)
・1-MN:(東京化成工業株式会社製)
【0080】
(手順)
先ず、上記したプラスチック成分と充填剤とを、それぞれ5.6kg/h、1.4kg/hの供給量で二軸混練押出機に供給し、温度180℃で混練して、プラスチック成分80質量%、充填剤20質量%を含む、評価用試料を作成した。
次に、分離装置10を用い、評価用試料と溶媒とを攪拌槽1に仕込み、撹拌混合条件下で室温から200℃まで昇温させた。200℃到達後、30分間保持して評価用試料を溶解させた。
その後、攪拌槽1の下方から混合液を抜き出した後、第1固液分離機4にて200℃で充填剤を分離した。
【0081】
(評価結果)
第1固液分離機4から金属フィルターを取り出して確認したところ、粒子が捕捉されていることを確認した。また、ろ液中から酸化チタンは検出されなかった。
【0082】
<実施例2>
図2に示す分離装置20を用いて、廃プラスチック試料からプラスチック成分と充填剤との分離を行った。固液分離機の構成、試料、及び手順は、以下の通り。
【0083】
(第1固液分離機)
・孔径0.5μmの樹脂膜
(第2固液分離機)
・孔径0.2μmの金属フィルター
(プラスチック成分)
・HDPE:ハイゼックス(登録商標)6200BPU(株式会社プライムポリマー社製、融点132℃)
・LLDPE:ウルトゼックス(登録商標)20200J(株式会社プライムポリマー社製、融点115,125℃(2本ピーク))
・PP:プライムポリプロ、J105P(株式会社プライムポリマー社製、融点165℃)
・GPPS:HF77(PSジャパン株式会社製、ガラス転移温度:98℃)
(充填剤)
・酸化チタン:タイペーク(登録商標)CR-60-2(石原産業株式会社社製、平均粒子径0.21μm)
・タルク:MS-P(一般工業用)(日本タルク株式会社製、平均粒径13μm)
(触媒)
・合成ゼオライト:HSZ-931HOA(東ソー株式会社製、細孔径6.5Å)
(溶媒)
・n-C16(n-ヘキサデカン/n-セタン):(東京化成工業株式会社社製)
【0084】
(手順)
先ず、上記プラスチック成分1種と充填剤2種とを、それぞれ5.6kg/h、0.7kg/h、1.4kg/hの供給量で二軸混練押出機に供給し、所定温度(例えばプラスチック成分がHDPEである場合は180℃、LLDPEである場合は140℃)で混練して、プラスチック成分80質量%、充填剤(酸化チタン)10質量%、及び充填剤(タルク)10質量%を含む、評価用試料を作成した。
次に、攪拌槽21に評価用試料(100質量部)、触媒(評価用試料100質量部に対して25質量部)および溶媒(評価用試料100質量部に対して500質量部)を供給・撹拌し、撹拌混合条件下で400℃に昇温させ、1時間保持して混合液中のプラスチック成分を分解させた。
次いで、攪拌槽21の下方から混合液を抜き出した後、第1固液分離機4に供給して混合液中から充填剤の一部を分離した。
次いで、生成物分離回収塔23にてプラスチック成分の分離・回収をした後、生成物分離回収塔23の下方から抜き出した液成分を第2固液分離機24に供給して液成分から充填剤を分離して回収した。
【0085】
(評価結果)
第1固液分離機4から樹脂膜を取り出して確認したところ、樹脂膜の表面にペースト状物質(タルク)が捕捉されていることを確認した。
また、第2固液分離機24から金属フィルターを取り出して確認したところ、粒子が捕捉されていることを確認した。なお、ろ液中からタルクおよび酸化チタンは検出されなかった。