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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143644
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】内燃機関用潤滑油組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 169/04 20060101AFI20241003BHJP
   C10M 159/22 20060101ALN20241003BHJP
   C10M 129/10 20060101ALN20241003BHJP
   C10M 129/54 20060101ALN20241003BHJP
   C10M 159/24 20060101ALN20241003BHJP
   C10M 135/10 20060101ALN20241003BHJP
   C10M 133/16 20060101ALN20241003BHJP
   C10M 133/56 20060101ALN20241003BHJP
   C10M 133/12 20060101ALN20241003BHJP
   C10M 139/00 20060101ALN20241003BHJP
   C10M 137/10 20060101ALN20241003BHJP
   C10M 135/18 20060101ALN20241003BHJP
   C10M 133/04 20060101ALN20241003BHJP
   C10N 10/04 20060101ALN20241003BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20241003BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20241003BHJP
   C10N 30/04 20060101ALN20241003BHJP
   C10N 30/12 20060101ALN20241003BHJP
   C10N 30/00 20060101ALN20241003BHJP
   C10N 40/25 20060101ALN20241003BHJP
【FI】
C10M169/04
C10M159/22
C10M129/10
C10M129/54
C10M159/24
C10M135/10
C10M133/16
C10M133/56
C10M133/12
C10M139/00 Z
C10M137/10 A
C10M135/18
C10M133/04
C10N10:04
C10N10:12
C10N30:06
C10N30:04
C10N30:12
C10N30:00 Z
C10N40:25
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056420
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】398053147
【氏名又は名称】コスモ石油ルブリカンツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大場 亨太
【テーマコード(参考)】
4H104
【Fターム(参考)】
4H104BA04
4H104BA07A
4H104BB05C
4H104BB08A
4H104BB24C
4H104BB33A
4H104BB41A
4H104BE01C
4H104BE07C
4H104BE11C
4H104BF03C
4H104BG10C
4H104BH07C
4H104CB14A
4H104DA02A
4H104DB06C
4H104DB07C
4H104FA02
4H104FA06
4H104LA02
4H104LA03
4H104LA06
4H104LA20
4H104PA42
4H104PA44
(57)【要約】
【課題】有機モリブデン化合物を含有し、かつ、省燃費性、ピストン清浄性、耐摩耗性、及び腐食防止性に優れる内燃機関用潤滑油組成物の提供。
【解決手段】潤滑油基油と、アルカリ土類金属サリシレート、アルカリ土類金属フェネート、全塩基価が250mgKOH/g以上のアルカリ土類金属スルホネート及び全塩基価が100mgKOH/g以下のアルカリ土類金属スルホネートからなる群より選択される少なくとも2種を含む金属系清浄剤と、ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤を含む無灰分散剤及びホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤と、有機モリブデン化合物とを含有し、ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤の含有量が、潤滑油組成物全量に対して、ホウ素換算で0.025~0.050質量%であり、かつホウ素含有コハク酸イミド系分散剤及びホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤の合計含有量が、潤滑油組成物全量に対して、窒素換算で0.10~0.20質量%である内燃機関用潤滑油組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
潤滑油基油と、
アルカリ土類金属サリシレート、アルカリ土類金属フェネート、全塩基価が250mgKOH/g以上のアルカリ土類金属スルホネート、及び、全塩基価が100mgKOH/g以下のアルカリ土類金属スルホネートからなる群より選択される少なくとも2種である金属系清浄剤Xと、
ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤及びホウ素含有コハク酸イミド系分散剤を含む無灰分散剤と、
有機モリブデン化合物と、を含有し、
前記ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤の含有量が、潤滑油組成物全量に対して、ホウ素換算で0.025質量%~0.050質量%であり、かつ、
前記ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤及び前記ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤の合計含有量が、潤滑油組成物全量に対して、窒素換算で0.10質量%~0.20質量%である、
内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項2】
前記金属系清浄剤Xが、前記アルカリ土類金属サリシレート及び前記全塩基価が250mgKOH/g以上のアルカリ土類金属スルホネートの少なくとも一方を含む、請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項3】
潤滑油組成物中の前記金属系清浄剤Xの全量に対する、前記アルカリ土類金属サリシレート及び前記全塩基価が250mgKOH/g以上のアルカリ土類金属スルホネートの合計含有量の比が、アルカリ土類金属換算で0.75以上である、請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項4】
さらに、無灰酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤を含む、請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項5】
前記フェノール系酸化防止剤及び前記アミン系酸化防止剤の含有量が、潤滑油組成物全量に対して、それぞれ、0.5質量%~1.5質量%である、請求項4に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項6】
前記有機モリブデン化合物が、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、モリブデン酸アルキルアミン塩、及び有機モリブデンアミドからなる群より選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項7】
前記有機モリブデン化合物の含有量が、潤滑油組成物の全量に対して、モリブデン換算で0.01質量%~0.05質量%である、請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項8】
前記アルカリ土類金属サリシレート、前記アルカリ土類金属フェネート、前記全塩基価が250mgKOH/g以上のアルカリ土類金属スルホネート、及び前記全塩基価が100mgKOH/g以下のアルカリ土類金属スルホネートの合計含有量が、潤滑油組成物全量に対して、アルカリ土類金属換算で0.18質量%~0.24質量%である、請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項9】
硫酸灰分量が、潤滑油組成物の全量に対して、0.9質量%~1.1質量%である、請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項10】
100℃における動粘度が、12.5mm/s未満である、請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項11】
100℃における高温高せん断粘度(HTHS100)が、6.5mPa・s以下である、請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項12】
150℃における高温高せん断粘度(HTHS150)が、2.6mPa・s以上である、請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項13】
150℃における高温高せん断粘度(HTHS150)と、100℃における高温高せん断粘度(HTHS100)の比(HTHS150/HTHS100)が、0.45以上である、請求項1に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【請求項14】
ディーゼルエンジン用である、請求項1~請求項13のいずれか1項に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、内燃機関用潤滑油組成物に関する。
【0002】
近年、自動車等に対する環境規制の強化を背景として燃費向上が求められている。エンジン油による省燃費化の方策として、エンジン油の低粘度化又は低摩擦化が挙げられる。しかし、エンジン油の過度の低粘度化は、油膜厚さの低下を来たし、延いては、エンジンの摩耗増加や信頼性の低下の要因となりうる。一方、エンジン油の低摩擦化の観点からは、有機モリブデン化合物等の摩擦調整剤の適用が従来より行われている
【0003】
例えば、特許文献1には、「潤滑油基油と、潤滑油組成物全量を基準として、モリブデン元素換算で0.03質量%以上の有機モリブデン系摩擦調整剤と、金属元素換算で0.03質量%以上の、アルカリ金属フェネート及びアルカリ土類金属フェネートからなる群より選ばれる少なくとも1種の金属系清浄剤と、を含有する、内燃機関用潤滑油組成物。」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-145322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
既述のとおり、有機モリブデン化合物は、エンジン油等の内燃機関用潤滑油組成物に配合することにより摩擦調整剤として機能する化合物である。
【0006】
しかしながら、有機モリブデン化合物を配合した内燃機関用潤滑油組成物を、例えば、ディーゼルエンジン用のエンジン油として適用した場合には、スート(煤)の混入により、有機モリブデン化合物の配合に期待される効果(即ち、耐摩耗性)が低下することがある。また、自動車等に対する環境規制の一環から、排ガス後処理装置が装備されるに際しては、灰分制限が課されるため、有機モリブデン化合物の配合は、他の配合成分の配合量を相対的に低減させてしまい、当該他の配合成分に期待される効果(例えば、ピストン清浄性、腐食防止性)を低下させてしまう場合がある。
【0007】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、有機モリブデン化合物を含有し、かつ、省燃費性、ピストン清浄性、耐摩耗性、及び、腐食防止性に優れた内燃機関用潤滑油組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下の態様を含む。
<1> 潤滑油基油と、
アルカリ土類金属サリシレート、アルカリ土類金属フェネート、全塩基価が250mgKOH/g以上のアルカリ土類金属スルホネート、及び、全塩基価が100mgKOH/g以下のアルカリ土類金属スルホネートからなる群より選択される少なくとも2種である金属系清浄剤Xと、
ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤及びホウ素含有コハク酸イミド系分散剤を含む無灰分散剤と、
有機モリブデン化合物と、を含有し、
ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤の含有量が、潤滑油組成物全量に対して、ホウ素換算で0.025質量%~0.050質量%であり、かつ、
ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤及びホウ含有コハク酸イミド系分散剤の合計含有量が、潤滑油組成物全量に対して、窒素換算で0.10質量%~0.20質量%である、
内燃機関用潤滑油組成物。
<2> 金属系清浄剤Xが、アルカリ土類金属サリシレート及び前記全塩基価が250mgKOH/g以上のアルカリ土類金属スルホネートの少なくとも一方を含む<1>に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
<3>潤滑油組成物中の金属系清浄剤Xの全量に対する、アルカリ土類金属サリシレート及び全塩基価が250mgKOH/g以上のアルカリ土類金属スルホネートの合計含有量の比が、アルカリ土類金属換算で0.75以上である、<1>又は<2>に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
<4> さらに、無灰酸化防止剤として、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤を含む、<1>~<3>のいずれか1つに記載の内燃機関用潤滑油組成物。
<5> フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤の含有量が、潤滑油組成物全量に対して、それぞれ、0.5質量%~1.5質量%である、<4>に記載の内燃機関用潤滑油組成物。
<6> 有機モリブデン化合物が、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、モリブデン酸アルキルアミン塩、及び有機モリブデンアミドからなる群より選択される少なくとも1種である、<1>~<5>のいずれか1つに記載の内燃機関用潤滑油組成物。
<7> 有機モリブデン化合物の含有量が、潤滑油組成物の全量に対して、モリブデン換算で0.01質量%~0.05質量%である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の内燃機関用潤滑油組成物。
<8> アルカリ土類金属サリシレート、アルカリ土類金属フェネート、全塩基価が250mgKOH/g以上のアルカリ土類金属スルホネート、及び全塩基価が100mgKOH/g以下のアルカリ土類金属スルホネートの合計含有量が、潤滑油組成物全量に対して、アルカリ土類金属換算で0.18質量%~0.24質量%である、<1>~<7>のいずれか1つに記載の内燃機関用潤滑油組成物。
<9>硫酸灰分量が、潤滑油組成物の全量に対して、0.9質量%~1.1質量%である、<1>~<8>のいずれか1つに記載の内燃機関用潤滑油組成物。
<10> 100℃における動粘度が、12.5mm/s未満である、<1>~<9>のいずれか1つに記載の内燃機関用潤滑油組成物。
<11> 100℃における高温高せん断粘度(HTHS100)が、6.5mPa・s以下である、<1>~<10>のいずれか1つ記載の内燃機関用潤滑油組成物。
<12>150℃における高温高せん断粘度(HTHS150)が、2.6mPa・s以上である、<1>~<11>のいずれか1つに記載の内燃機関用潤滑油組成物。
<13>150℃における高温高せん断粘度(HTHS150)と、100℃における高温高せん断粘度(HTHS100)の比(HTHS150/HTHS100)が0.45以上である、<1>~<12>のいずれか1つに記載の内燃機関用潤滑油組成物。
<14> ディーゼルエンジン用である、<1>~<13>のいずれか1つに記載の内燃機関用潤滑油組成物。
【発明の効果】
【0009】
本開示の一実施形態によれば、有機モリブデン化合物を含有し、かつ、省燃費性、ピストン清浄性、耐摩耗性、及び腐食防止性に優れた内燃機関用潤滑油組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
【0011】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0012】
本開示において、組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する複数の成分の合計量を意味する。
【0013】
本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義である。
本開示において、2つ以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、「JIS」は、日本産業規格(Japanese Industrial Standards)の略称として用いる。
【0014】
[内燃機関用潤滑油組成物]
本開示に係る内燃機関用潤滑油組成物(以下、「潤滑油組成物」とも称する。)は、
(A):潤滑油基油と、
(B):アルカリ土類金属サリシレート、アルカリ土類金属フェネート、全塩基価が250mgKOH/g以上のアルカリ土類金属スルホネート、及び、全塩基価が100mgKOH/g以下のアルカリ土類金属スルホネートからなる群より選択される2種以上である金属系清浄剤Xと、
(C):ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤及びホウ素含有コハク酸イミド系分散剤を含む無灰分散剤と、
(D):有機モリブデン化合物と、を含有し、
ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤の含有量が、潤滑油組成物全量に対して、ホウ素換算で0.025質量%~0.050質量%であり、かつ、ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤及びホウ素含有コハク酸イミド系分散剤の合計含有量が、潤滑油組成物全量に対して、窒素換算で0.10質量%~0.20質量%である。
【0015】
本開示に係る潤滑油組成物は、さらに、フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤を含む無灰酸化防止剤を含有することが好ましく、所望により、その他の添加剤を含有してもよい。
【0016】
本開示に係る潤滑油組成物は、上記構成を有することにより、有機モリブデン化合物を含有し、かつ、省燃費性、ピストン清浄性、耐摩耗性、及び腐食防止性に優れる。
【0017】
〔(A):潤滑油基油〕
潤滑油基油としては、特に限定されず、内燃機関用潤滑油の分野において用いられる基油を用いることができる。潤滑油基油は、1種単独で含まれていてもよく、2種以上が組み合わされて含まれていてもよい。
【0018】
潤滑油基油として、具体的には、鉱油系基油及び合成系基油のうちから選ばれる1種又は2種以上の基油であってよい。例えば、潤滑油基油は、1種の鉱油系基油からなる基油、2種以上の鉱油系基油からなる混合基油、1種の合成系基油からなる基油、2種以上の合成系基油からなる混合基油、又は、1種以上の鉱油系基油と1種以上の合成系基油とからなる混合基油であってよい。
【0019】
鉱油系基油としては、例えば、原油から常圧蒸留、減圧蒸留、溶剤脱歴、溶剤抽出、水素化精製、溶剤脱ろうの工程を組み合わせて得られるAPI(American Petroleum Institute;米国石油協会) Group Iに分類される基油;水素化分解、触媒脱ろう等の工程を組み合わせて得られるAPI Group IIに分類される基油;水素化分解、水素化異性化脱ろう等の高度水素化処理の工程を組み合わせて得られるAPI Group IIIに分類される基油;等が挙げられる。
【0020】
合成系基油としては、例えば、メタン等の天然ガスを原料として合成されるイソパラフィン、α-オレフィンオリゴマー、ジアルキルジエステル類、ポリオール類、アルキルベンゼン類、ポリグリコール類、フェニルエーテル類などが挙げられる。ディーゼルエンジン油の用途に適用する場合であれば、通常、ディーゼルエンジン油に用いられる潤滑油基油の性状を有する合成系基油を、適宜、使用すればよい。
【0021】
潤滑油基油の100℃動粘度は、省燃費性、蒸発性、及び、ディーゼルエンジン油用途へ適用性の観点から、3.0m/s~7.0mm/sが好ましく、3.0m/s~6.0mm/sがより好ましく、3.0mm/s~5.0mm/sが更に好ましい。
【0022】
潤滑油基油の40℃動粘度は、特に制限されないが、省燃費性及び蒸発性の観点から、10m/s~40mm/sが好ましく、15m/s~35mm/sがより好ましく、20m/s~30mm/sが更に好ましい。
【0023】
潤滑油基油の40℃動粘度及び100℃動粘度は、基油単独又は混合基油のいずれの場合についても、上記の動粘度であることが好ましい。
【0024】
潤滑油基油の40℃動粘度及び100℃動粘度は、JIS K2283:2000(ASTM D445)に準拠して測定する。
【0025】
潤滑油基油の粘度指数は、特に制限されないが、100以上であることが好ましく、110以上であることがより好ましく、120以上であることがさらに好ましい。粘度指数が上記範囲にあることにより、温度による潤滑油組成物の粘度変化が小さくなるため、低温時でも省燃費性が発揮されやすい。
【0026】
潤滑油基油の粘度指数は、JIS K2283:2000(ASTM D2270)に準拠して測定する。
【0027】
〔(B):金属系清浄剤〕
本開示に係る潤滑油組成物は、金属系清浄剤を含有する。
金属系清浄剤は、(B-1):アルカリ土類金属サリシレート、(B-2):アルカリ土類金属フェネート、(B-3):全塩基価が250mgKOH/g以上のアルカリ土類金属スルホネート、及び、(B-4):全塩基価が100mgKOH/g以下のアルカリ土類金属スルホネートからなる群より選択される2種以上である金属系清浄剤Xを含む。
本開示に係る潤滑油組成物は、本開示に係る効果が発揮される範囲において、金属系清浄剤X以外の金属系清浄剤を含有してもよい。
【0028】
なお、以下では、適宜、金属系清浄剤Xに包含される上記4種類の金属系清浄剤(B-1)~(B-4)を、便宜上それぞれ、「特定金属系清浄剤(B-1)」等と称し、当該4種類に包含される金属系清浄剤を総じて「特定金属系清浄剤X」とも称する。
【0029】
すなわち、本開示における金属系清浄剤Xとしては、特定金属系清浄剤(B-1)、(B-2)、(B-3)及び(B-4)からなる4種類の金属系清浄剤から、少なくとも2種類が選択される。
【0030】
特定金属系清浄剤Xの組合せとしては、特定金属系清浄剤(B-1)、(B-2)、(B-3)及び(B-4)からなる4種類から少なくとも2種類が選択されればよく、組合せの態様は、下記に示すいずれであってもよい。
特定金属系清浄剤(B-1)及び(B-2)の組合せ。
特定金属系清浄剤(B-1)及び(B-3)の組合せ。
特定金属系清浄剤(B-1)及び(B-4)の組合せ。
特定金属系清浄剤(B-2)及び(B-3)の組合せ。
特定金属系清浄剤(B-2)及び(B-4)の組合せ。
特定金属系清浄剤(B-3)及び(B-4)の組合せ。
特定金属系清浄剤(B-1)、(B-2)及び(B-3)の組合せ。
特定金属系清浄剤(B-1)、(B-3)及び(B-4)の組合せ。
特定金属系清浄剤(B-2)、(B-3)及び(B-4)の組合せ。
特定金属系清浄剤(B-1)、(B-2)、(B-3)及び(B-4)の組合せ。
【0031】
上記の組合せのいずれかを満たす場合において、特定金属系清浄剤(B-1)、(B-2)、(B-3)又は(B-4)に包含される金属系清浄剤は、それぞれ、1種単独であってもよいし、2種以上であってもよい。
【0032】
以下、特定金属系清浄剤Xについて、さらに説明する。
なお、特定金属系清浄剤Xの塩基価は、いずれもJIS-K-2501-7:2003に準拠した過塩素酸法により測定する。
【0033】
(特定金属系清浄剤(B-1):アルカリ土類金属サリシレート)
特定金属系清浄剤(B-1)であるアルカリ土類金属サリシレートが含むアルカリ土類金属としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、及びバリウムが挙げられ、カルシウムが好ましい。
【0034】
特定金属系清浄剤(B-1)であるアルカリ土類金属サリシレートの塩基価は、好ましくは50mgKOH/g~350mgKOH/g、より好ましくは90mgKOH/g~300mgKOH/g、さらに好ましくは130mgKOH/g~300mgKOH/g、より一層好ましくは160mgKOH/g~270mgKOH/gである。
【0035】
(特定金属系清浄剤(B-2):アルカリ土類金属フェネート)
特定金属系清浄剤(B-2)であるアルカリ土類金属フェネートが含むアルカリ土類金属としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、及びバリウムが挙げられ、カルシウムが好ましい。
【0036】
特定金属系清浄剤(B-2)であるアルカリ土類金属フェネートの塩基価は、好ましくは50mgKOH/g~350mgKOH/g、より好ましくは100mgKOH/g~300mgKOH/g、さらに好ましくは140mgKOH/g~270mgKOH/gである。
【0037】
(特定金属系清浄剤(B-3):全塩基価が250mgKOH/g以上のアルカリ土類金属スルホネート)
特定金属系清浄剤(B-3)であるアルカリ土類金属スルホネートが含むアルカリ土類金属としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、及びバリウムが挙げられ、カルシウムが好ましい。
【0038】
特定金属系清浄剤(B-3)であるアルカリ土類金属スルホネートの塩基価は、250mgKOH/g以上であり、より好ましくは250gKOH/g~400mgKOH/g、さらに好ましくは300gKOH/g~400mgKOH/gである。
【0039】
(特定金属系清浄剤(B-4):全塩基価が100mgKOH/g以下のアルカリ土類金属スルホネート)
特定金属系清浄剤(B-4)であるアルカリ土類金属スルホネートが含むアルカリ土類金属としては、例えば、カルシウム、マグネシウム、及びバリウムが挙げられ、カルシウムが好ましい。
【0040】
特定金属系清浄剤(B-4)であるアルカリ土類金属スルホネートの塩基価は、100mgKOH/g以下であり、より好ましくは50mgKOH/g以下、さらに好ましくは30mgKOH/g以下である。
【0041】
特定金属清浄剤Xは、省燃費性、ピストン清浄性、耐摩耗性、及び腐食防止性の観点から、アルカリ土類金属サリシレート及び全塩基価が250mgKOH/g以上のアルカリ土類金属スルホネートの少なくとも一方(即ち、特定金属系清浄剤(B-1)及び(B-3)の少なくとも一方)を含むことが好ましい。特定金属系清浄剤(B-1)及び(B-3)の両方を含んでいてもよい。特定金属系清浄剤Xは、特定金属清浄剤(B-1)及び(B-3)の少なくとも一方と、特定金属系清浄剤(B-2)及び(B-4)の少なくとも一方とを含むことがより好ましい。
【0042】
特定金属系清浄剤Xの全量に対する特定金属系清浄剤(B-1)及び(B-3)の合計含有量の比[((B-1)+(B-3))/((B-1)+(B-2)+(B-3)+(B-4))]は、ピストン清浄性の観点から、アルカリ土類金属換算で、0.75以上であることが好ましく、0.8以上であることがより好ましい。
【0043】
特定金属系清浄剤Xの合計含有量は、ピストン清浄性の確保、及び硫酸灰分の制限の観点から、潤滑油組成物全量に対して、アルカリ土類金属換算で、0.18質量%~0.24質量%であることが好ましく、0.20質量%~0.22質量%であることがより好ましい。
【0044】
アルカリ土類金属の含有量は、JPI-5S-38-92に準拠したICP発光分光分析による分析値とする。
【0045】
〔(C):無灰分散剤〕
本開示に係る潤滑油組成物は、(C-1):ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤及び(C-2):ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤を含む無灰分散剤を含有する。
【0046】
(C-1):ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤、及び、(C-2):ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤は、該当する分散剤から、それぞれ1種以上を選択すればよい。
【0047】
<(C-1):ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤>
ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤としては、内燃機関用潤滑油の分野において用いられる無灰系分散剤であってホウ素を含まないコハク酸イミド系分散剤を用いることができる。
【0048】
ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤としては、例えば、下記式(1)で表されるコハク酸イミド、及び、下記式(2)で表されるコハク酸イミドが挙げられる。
【0049】
【化1】
【0050】
式(1)及び式(2)中、R及びRは、それぞれ独立に、アルキル基又はアルケニル基を表し、Rはアルキレン基を表す。nは、0~10の整数を表す。
【0051】
ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤としては、式(1)で表されるコハク酸イミドのようなモノタイプのコハク酸イミド、及び、式(2)で表されるコハク酸イミドのようなビスタイプのコハク酸イミドのいずれであってもよいが、所定の範囲の重量平均分子量のものが得られ易い点で、式(2)で表されるコハク酸イミドのようなビスタイプのコハク酸イミドが好ましい。
【0052】
ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤の重量平均分子量(Mw)としては、3000~20000が好ましく、4000~10000がより好ましく、5000~10000が更に好ましい。ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤の重量平均分子量が上記の範囲であることで、摩耗防止性能及び低温粘度特性が向上することから好ましい。ある態様において、ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤としては、好ましくは、上記の重量平均分子量を有する、ポリアルケニルコハク酸イミドであることが好ましい。
【0053】
本開示における重量平均分子量(Mw)の測定は、測定装置:Shodex GPC-101(昭和電工社製)、測定カラム:Shodex GPC LF-804(昭和電工社製)を3本、検出器:示差屈折検出器、移動相:THF(テトラヒドロフラン)、流量:1ml/min、試料濃度:1.0mass%/vol、注入量:100μLの条件にて行う。重量平均分子量は、この測定結果から単分散ポリスチレン標準試料により作製した分子量分布曲線を使用して算出される。
【0054】
潤滑油組成物が、ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤を2種以上含有する場合、ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤の含有量は、2種以上のホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤の合計含有量である。
【0055】
<(C-2):ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤>
ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤としては、内燃機関用潤滑油の分野において用いられる無灰系分散剤であってホウ素を含むコハク酸イミド系分散剤を用いることができる。
【0056】
ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤としては、式(1)で表されるコハク酸イミド又は式(2)で表されるコハク酸イミドが、ホウ酸、ホウ酸無水物、ハロゲン化ホウ素、ホウ酸エステル、ホウ酸アミド、酸化ホウ素などのホウ素化合物、好ましくはホウ酸で変性されたものが挙げられる。ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤としては、分散性が高くなる点で、式(2)で表されるコハク酸イミドが、ホウ素化合物で変性されたものが好ましい。
【0057】
ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤のB/N比は、摩耗防止性及び腐食防止性の観点から、0.05~1.50、好ましくは0.10~1.00、より好ましくは0.20~0.80、最も好ましくは0.30~0.60である。
ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤のB/N比とは、ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤中の窒素含有量に対するホウ素含有量の質量比を指す。
【0058】
ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤の重量平均分子量(Mw)は、特に制限されないが、分散性及び低温粘度特性の観点から、好ましくは1500~10000、より好ましくは2000~8000、更に好ましくは3000~7000である。ある態様において、ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤としては、好ましくは、上記の重量平均分子量を有する、ホウ酸変性ポリアルケニルコハク酸イミドであることが好ましい。
【0059】
ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤の含有量は、潤滑油組成物全量に対して、ホウ素換算で、0.025質量%~0.050質量%、より好ましくは0.030質量%~0.040質量%である。
【0060】
潤滑油組成物が、ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤を2種以上含有する場合、ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤の含有量は、2種以上のホウ素含有コハク酸イミド系分散剤の合計含有量である。
【0061】
(C-1):ホウ素含有コハク酸イミド系分散剤、及び、(C-2):ホウ素非含有コハク酸イミド系分散剤の合計含有量は、省燃費性、ピストン清浄性、及び腐食防止性の観点から、潤滑油組成物全量に対して、窒素換算で0.10質量%~0.20質量%であり、0.10質量%~0.17質量%が好ましく、0.10質量%~0.14質量%がより好ましい。
【0062】
〔(D):有機モリブデン化合物〕
本開示に係る潤滑油組成物は、(D):有機モリブデン化合物を含有する。有機モリブデン化合物は、摩擦調整剤として機能しうる。
【0063】
有機モリブデン化合物は、1種であっても2種以上の組み合わせであってもよい。
【0064】
有機モリブデン化合物としては、内燃機関用潤滑油の分野において用いられる有機モリブデン化合物を用いることができる。省燃費性の観点からは、ジアルキルジチオリン酸モリブデン、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン、モリブデン酸アルキルアミン塩、及び有機モリブデンアミドからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。また、ピストン清浄性の観点からは、有機モリブデン化合物は、2種以上を組み合わせることがより好ましい。
【0065】
有機モリブデン化合物としては、ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン又はジアルキルジチオリン酸モリブデンと、モリブデン酸アルキルアミン塩又は有機モリブデンアミドとの組合せであることが好ましい。
【0066】
ある態様において、有機モリブデン化合物としては、下記式(3)で表される化合物も挙げられる。
【0067】
【化2】
【0068】
式(3)中、R~Rは、それぞれ独立に、炭素数4~18の直鎖又は分岐の炭化水素基を表す。X、X、Y及びYは、それぞれ独立に、酸素原子又は硫黄原子を表す。
【0069】
有機モリブデン化合物の含有量は、摩耗防止性及腐食防止性の観点から、潤滑油組成物の全量に対して、モリブデン換算で、0.01質量%~0.05質量%であることが好ましく、より好ましくは0.02質量%~0.04質量%である。
【0070】
潤滑油組成物が、有機モリブデン化合物を2種以上含有する場合、有機モリブデン化合物の含有量は、2種以上の有機モリブデン化合物の合計含有量である。
【0071】
〔(E):無灰酸化防止剤〕
本開示に係る潤滑油組成物は、(E):無灰酸化防止剤として、(E-1):フェノール系酸化防止剤、及び、(E-2):アミン系酸化防止剤を含むことが好ましい。
【0072】
(E-1):フェノール系酸化防止剤、及び、(E-2):アミン系酸化防止剤は、該当する酸化防止剤から、それぞれ1種以上を選択すればよい。
【0073】
<(E-1):フェノール系酸化防止剤>
フェノール系酸化防止剤としては、酸化防止剤として公知のフェノール系化合物が挙げられる。
【0074】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、アルキルフェノール系化合物、ビスフェノール系化合物、ヒンダードフェノール系化合物;などが挙げられる。これらの化合物はアルキル基の炭素数又は構造が異なる異性体であってもよい
【0075】
フェノール系酸化防止剤としては、例えば、下記式(4)で表されるヒンダードフェノールが好ましい。
【0076】
【化3】
【0077】
式(4)中、Rは、炭素数1~30の直鎖又は分岐鎖の炭化水素基を表す。Rで表される炭化水素基の炭素数は、4~24が好ましく、7~18がより好ましい。
【0078】
式(4)で表されるヒンダードフェノールとしては、例えば、イソオクチル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、n-オクタデシル-3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートが挙げられる。
【0079】
フェノール系酸化防止剤としては、上記の他、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾールなどのアルキルフェノール類、4,4’-メチレンビス-(2,6-ジ-t-ブチルフェノールなどのビスフェノール類が挙げられる。
【0080】
<(E-2):アミン系酸化防止剤>
アミン系酸化防止剤としては、酸化防止剤として公知のアミン系酸化防止剤が挙げられる。アミン系酸化防止剤としては、ナフチルアミン類、ジアルキルジフェニルアミン類などの芳香族アミン化合物が挙げられ、例えば、ジフェニルアミン、4-ベンジルアミン、2-アミノビフェニル、ナフチルアミン、アリルアニリン、4-アミノビネフェニル、o-トルイジン、m-トルイジン、p-トルイジン、アニリン、アリルアミン、それらのアルキル化誘導体、ヒンダードアミン系化合物、それらのアルケニル化誘導体等のアミン系化合物などが挙げられる。これらの化合物が有するアルキル基の炭素数や構造が異なる異性体であってもよい。
【0081】
潤滑油組成物中の(E-1):フェノール系酸化防止剤、及び、(E-2):アミン系酸化防止剤の含有量は、省燃費性、ピストン清浄性、及び、腐食防止性をバランス良く達成する観点から、潤滑油組成物全量に対して、それぞれ、0.5質量%~1.5質量%であることが好ましく、より好ましくは0.5質量%~1.0質量%である。
【0082】
潤滑油組成物が、フェノール系酸化防止剤を2種以上含有する場合、フェノール系酸化防止剤の含有量は、2種以上のフェノール系酸化防止剤の合計含有量である。潤滑油組成物が、アミン系酸化防止剤を2種以上含有する場合、アミン系酸化防止剤の含有量は、2種以上のアミン系酸化防止剤の合計含有量である。
【0083】
フェノール系酸化防止剤は、ピストン清浄性の観点から、潤滑油組成物全量に対して、1質量%以上含有されることがより好ましい。
【0084】
また、潤滑油組成物中の(E-1):フェノール系酸化防止剤の含有量に対する(E-2):アミン系酸化防止剤の含有量の比((E-2)/(E-1))は、質量基準で、0.3以上1以下であることが好ましく、0.4以上1以下であることがより好ましく、0.4以上0.6以下であることが更に好ましい。
【0085】
〔(F):その他の添加剤〕
本開示に係る潤滑油組成物は、必要に応じて、その他の添加剤を含有してもよい。
【0086】
その他の添加剤としては、摩耗防止剤、粘度指数向上剤、流動点降下剤、金属不活性化剤、摩擦調整剤、消泡剤等が挙げられる。
【0087】
摩耗防止剤としては、ジアルキルジチオリン酸亜鉛等の亜鉛化合物(即ち、亜鉛系摩耗防止剤)、リン酸エステル等が挙げられる。
【0088】
粘度指数向上剤としては、JASO M355:2021に記載された、非分散タイプの粘度指数向上剤、及び分散タイプの粘度指数向上剤が挙げられ、例えば、ポリメタクリレート系や、エチレンプロピレン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体、スチレン-イソプレン共重合体の水素化物あるいはポリイソブチレン等の各種粘度指数向上剤が挙げられる。
【0089】
流動点降下剤としては、例えば、オレフィンコポリマー、ポリアルキルメタクリレート、その共重合体、そのアルキル化誘導体等が挙げられる。
【0090】
金属不活性化剤としては、例えば、チアジアゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、イミダゾール誘導体等が挙げられる。
消泡剤としては、例えば、ポリジメチルシロキサン、アルキル化ポリジメチルシロキサ誘導体、ハロゲン化アルキル化ポリジメチルシロキサン誘導体等のシリコーンオイル等が挙げられる。
【0091】
その他の添加剤を用いる場合、その他の添加剤の含有量は、潤滑油組成物全量に対して、10質量%~25質量%とすることが好ましい。
【0092】
(内燃機関用潤滑油組成物の物性)
-動粘度-
本開示に係る潤滑油組成物の40℃における動粘度は、25mm/~90mm/sが好ましく、30mm/~70mm/sがより好ましく、35~50mm/sが更に好ましい。
本開示に係る潤滑油組成物の100℃における動粘度は、12.5mm/s未満が好ましく、6.9mm/s~12.5mm/sがより好ましく、8.1mm/s~11.5mm/sが更に好ましく、9.3mm/s~10.5mm/sが特に好ましい。
【0093】
潤滑油組成物の40℃における動粘度及び100℃における動粘度は、JIS K2283:2000(ASTM D445)に準拠して測定する。
【0094】
―粘度指数―
本開示に係る潤滑油組成物の粘度指数は、特に制限されないが、好ましくは140~300、より好ましくは160~280、特に好ましくは180~260である。
【0095】
潤滑油組成物の粘度指数は、JIS K 2283:2000(ASTM D2270)に準拠して測定する。
【0096】
―高温高せん断粘度(HTHS粘度)―
本開示に係る潤滑油組成物の100℃における高温高せん断粘度(HTHS100)は、省燃費性の観点から、6.5mPa・s以下が好ましく、6.2mPa・s以下がより好ましい。
【0097】
本開示に係る潤滑油組成物の150℃における高温高せん断粘度(HTHS150)は、摩耗防止性の観点から、2.6mPa・s以上が好ましく、2.9mPa・s以上がより好ましい。
【0098】
本開示に係る潤滑油組成物の150℃における高温高せん断粘度(HTHS150)と、100℃における高温高せん断粘度(HTHS100)の比(HTHS150/HTHS100)は、省燃費性の観点から、0.45以上が好ましく、0.47以上がより好ましい。
【0099】
150℃における高温高せん断粘度(HTHS150)は、ASTM D4683に準拠して測定する。
100℃における高温高せん断粘度(HTHS100)は、ASTM D6616に準拠して測定する。
【0100】
-硫酸灰分-
本開示に係る潤滑油組成物の硫酸灰分は、ピストン清浄性、排出ガス後処理装置適合の観点から、潤滑油組成物の全量に対して、0.9質量%~1.1質量%が好ましい。
硫酸灰分量は、JIS K2272:1998に準拠した方法により測定する。
【0101】
[内燃機関用潤滑油組成物の用途]
本開示に係る潤滑油組成物は、四輪車、発電用、舶用等のディーゼルエンジン、ガソリンエンジン、ガスエンジン等の内燃機関用潤滑油として用いることができ、ディーゼルエンジン用であることが好ましい。本開示に係る潤滑油組成物は、ディーゼルエンジン用として用いた場合において、有機モリブデン化合物を含有しながらも、省燃費性、ピストン清浄性、耐摩耗性、及び、腐食防止性に優れる。
【0102】
[内燃機関用潤滑油組成物の調製方法]
本開示に係る潤滑油組成物の調製方法は、特に制限されず、潤滑油基油と、潤滑油基油以外の含有成分とを適宜混合すればよい。混合の方法及び混合順序は、特に制限されるものではなく、潤滑油基油に基油以外の含有成分を順次混合してもよい。
【実施例0103】
以下に実施例について説明するが、本開示はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0104】
[実施例1~3、比較例1~5]
潤滑油基油と、金属系清浄剤、無灰分散剤、無灰酸化防止剤(フェノール系酸化防止剤及びアミン系酸化防止剤)、有機モリブテン化合物、及びその他添加剤からなる各添加剤を、表1に示す種類にて準備し、基油及び各添加剤が表1に示す含有量(質量%)になるように混合し、潤滑油組成物を調製した。
【0105】
<基油及び添加剤>
(A):潤滑油基油
・API GroupIII、100℃動粘度:4.2mm/s、粘度指数:122である基油、及び、API GroupIII、100℃動粘度:6.5mm/s、粘度指数:131である基油の混合物
【0106】
(B):金属系清浄剤
・特定金属系清浄剤(B-1);カルシウムサリシレート、塩基価:225mgKOH/g
・特定金属系清浄剤(B-2);カルシウムフェネート、塩基価:255mgKOH/g
・特定金属系清浄剤(B-3);カルシウムスルホネート、塩基価305mgKOH/g
・特定金属系清浄剤(B-4);カルシウムスルホネート、塩基価0mgKOH/g
【0107】
(C):無灰分散剤
・無灰分散剤(C-1);ホウ酸変性ポリアルケニルコハク酸イミドMw:6000
・無灰分散剤(C-2);ポリアルケニルコハク酸イミドMw:6000
・無灰分散剤(C-3);ポリアルケニルコハク酸イミドMw;5000
【0108】
(D):有機モリブデン化合物
・有機モリブデン化合物(D-1);ジアルキルジチオカルバミン酸モリブデン
・有機モリブデン化合物(D-2);ジアルキルジチオリン酸モリブデン
・有機モリブデン化合物(D-3);モリブデン酸アルキルアミン塩
・有機モリブデン化合物(D-4);有機モリブデンアミド
【0109】
(E):無灰酸化防止剤
・フェノール系酸化防止剤(E-1);ヒンダードフェノールアルキルエステル
・アミン系酸化防止剤(E-2);アルキル化ジフェニルアミン
(F):その他添加剤(下記に示す添加剤)
・摩耗防止剤
・粘度指数向上剤
・流動点降下剤
・消泡剤
【0110】
<潤滑油組成物の性状>
・40℃動粘度、100℃動粘度、及び粘度指数:
JIS K2283:2000で規定される40℃における動粘度、100℃における動粘度、及び粘度指数を測定した。
・150℃高温高せん断粘度(HTHS150):
ASTM D4683で規定される150℃における高温高せん断粘度を測定した。
・100℃高温高せん断粘度(HTHS100):
ASTM D6616で規定される100℃における高温高せん断粘度を測定した。
・硫酸灰分:
JIS K2272:1998に規定される硫酸灰分を測定した。
【0111】
<評価>:エンジン試験
実施例1~3及び比較例1~5の潤滑油組成物を用いて、ピストン清浄性、耐摩耗性、腐食防止性、及び省燃費性の各項目について、評価試験を実施した。
【0112】
1.ピストン清浄性
ピストン清浄性は、WTD(Weighted Total Demerit、荷重総デメリット)の評点、及び、アンダーサイド(ピストン裏面)のメリット評点の2項目を評価した。
【0113】
1-1.WTD
・評価方法
JASO M336に規定されるピストン清浄性試験にて評価を行った。
・評価基準
荷重総デメリット評点が550以下である潤滑油組成物を、清浄性に優れると評価した
【0114】
1-2.アンダーサイド
・評価方法
JASO M336に規定されるピストン清浄性試験にて評価を行った。
・評価基準
メリット評点が8.0以上である潤滑油組成物を、清浄性に優れると評価した。
【0115】
2.耐摩耗性(タペット摩耗量)
・評価方法
JASO M354に規定される動弁系摩耗試験にて評価を行った。
・評価基準
タペット摩耗量が9μm以下である潤滑油組成物を、耐摩耗性に優れると評価した。
【0116】
3.腐食防止性(試験後油中Cu量)
・評価方法
ピストン清浄性試験後の潤滑油組成物中のCu量を、JPI-5S-44-11で規定されるICP発光分析法により測定した。
・評価基準
Cu量が30質量ppm以下である潤滑油組成物を、腐食防止性に優れると評価した。
【0117】
4.省燃費性
・評価方法
日野自動車(株)製「N04C-VHエンジン」を使用し、JASO M362で規定される省燃費性試験と同様のシミュレーション法により、比較対象品に対する燃費向上率(%)を60℃及び90℃において測定し、得られた測定値の平均値(%)により評価した。比較対象品として、SAE粘度グレードが10W-30である市販品の潤滑油組成物を用いた。
・評価基準
比較対象品に対する燃費向上率が3.0%以上である潤滑油組成物を、省燃費性に優れると評価した。
なお、表1では、60℃及び90℃の燃費向上率及び平均値を、それぞれ「市販10W-30対比燃費向上率(60℃)」、「市販10W-30対比燃費向上率(90℃)」及び「市販10W-30対比燃費向上率(平均)」の欄に表示した。
【0118】
以上の結果を表1に示す。
【0119】
【表1】

【0120】
表1中、組成欄に示す「-」は、該当する成分を配合していないことを示す。
表1中、無灰分散剤(C-1)の欄に示す「B換算含有量/N換算含有量」は、ホウ素換算含有量及び窒素換算含有量が、潤滑油組成物の全量に対して、表1中の数値となる量で無灰分散剤(C-1)を配合したことを示す。
表1中、「残部」とは、全量が100質量%になるように、基油を含有させたことを示す。
【0121】
表1に示すように、本実施例の潤滑油組成物は、有機モリブデン化合物を含有し、かつ、省燃費性、ピストン清浄性、耐摩耗性、及び腐食防止性に優れることが分かる。