(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143645
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】作業車両
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20241003BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/20 C
E02F9/26 B
E02F9/20 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056421
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 義帝
(72)【発明者】
【氏名】小鷹 稔生
(72)【発明者】
【氏名】上田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 和之
【テーマコード(参考)】
2D003
2D015
【Fターム(参考)】
2D003AA01
2D003AB03
2D003AB04
2D003BA03
2D003BA06
2D003BB07
2D003BB10
2D003DA04
2D003DB04
2D015HA03
2D015HB04
(57)【要約】
【課題】オペレータに不快感を与えることなく、走行中の作業装置を路面から浮かせた姿勢で保持することが可能な作業車両を提供する。
【解決手段】作業装置2を備えたホイールローダ1において、コントローラ5,5Aは、リフトアーム角度センサ41で検出されたリフトアーム角度θと目標角度θtとの差|θ-θt|をリフトアーム21の姿勢偏差として算出し、姿勢偏差|θ-θt|が第1閾値α以上となった場合に上昇開始制御を実行し、リフトアーム21が上昇動作を開始した場合に上昇維持制御を実行し、上昇維持制御により姿勢偏差|θ-θt|が第2閾値β以下となった場合に上昇維持制御を停止する。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられた作業装置と、
前記作業装置を操作するための操作装置と、
前記作業装置の姿勢を検出する姿勢検出装置と、
前記作業装置を駆動する油圧シリンダと、
前記油圧シリンダに作動油を供給する油圧ポンプと、
前記油圧ポンプから吐出されて前記油圧シリンダに供給される作動油の流れを制御する方向制御弁と、
前記方向制御弁を制御するコントローラと、
を備えた作業車両において、
前記コントローラは、
前記姿勢検出装置で検出される前記作業装置の姿勢と目標姿勢との差を前記作業装置の姿勢偏差として算出し、
算出した前記姿勢偏差が、所定の第1閾値以上となった場合に、前記作業装置が上昇動作を開始するように前記方向制御弁を制御する上昇開始制御を実行し、
前記上昇開始制御により前記作業装置が上昇動作を開始した場合、上昇中の前記作業装置の上昇速度が維持されるように前記方向制御弁を制御する上昇維持制御を実行し、
前記上昇維持制御により、前記姿勢偏差が、所定の第2閾値以下となった場合、前記上昇維持制御を停止する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1に記載の作業車両において、
前記コントローラは、
前記操作装置が操作されない状態が所定の規定停止時間以上経過した場合に、前記姿勢検出装置で検出された前記作業装置の姿勢を前記目標姿勢として設定する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項1に記載の作業車両において、
前記コントローラは、
前記姿勢検出装置で検出された前記作業装置の姿勢に移動平均化処理を施し、
前記移動平均化処理が施された前記作業装置の姿勢と前記目標姿勢との差を前記姿勢偏差として算出する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項1に記載の作業車両において、
前記コントローラは、
前記姿勢検出装置で検出された前記作業装置の姿勢に移動平均化処理を施し、
前記移動平均化処理が施される前の前記作業装置の姿勢と前記移動平均化処理が施された後の前記作業装置の姿勢との乖離を補正する補正率を記憶し、
前記第2閾値を前記補正率に基づいて補正し、
前記上昇維持制御により、前記姿勢偏差が、補正した前記第2閾値以下となった場合に、前記上昇維持制御を停止する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項5】
請求項1に記載の作業車両において、
前記方向制御弁を制御する電磁制御弁を備え、
前記コントローラは、
前記電磁制御弁を介して前記方向制御弁を制御し、
前記姿勢偏差が前記第1閾値以上となった場合に、前記上昇開始制御として、前記電磁制御弁に対して出力する電流値を、前記方向制御弁のスプールが動き出さない上限であるスタンバイ電流値から徐々に上昇させ、
前記上昇開始制御により前記作業装置が上昇動作を開始した場合、前記上昇維持制御として、上昇中の前記作業装置の上昇速度が維持されるように前記電磁制御弁に対して出力している電流値を固定し、
前記上昇維持制御により前記姿勢偏差が前記第2閾値以下となった場合に、前記電磁制御弁に対して出力している電流値を前記スタンバイ電流値以下に低減する
ことを特徴とする作業車両。
【請求項6】
請求項1に記載の作業車両において、
前記コントローラは、
前記上昇開始制御により、前記姿勢偏差が、前記第1閾値よりも小さく、前記第2閾値よりも大きい所定の第3閾値以下となった場合、前記作業装置が上昇動作を開始したと判定する
ことを特徴とする作業車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業装置を備えた作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、ホイールローダやトラクターなどの作業車両は、作業装置を路面から浮かせた姿勢で保持しながら道路を走行する。このとき、作業装置を駆動する油圧シリンダの動作を制御する制御弁や、油圧シリンダに過度な圧力が掛かることを回避する安全弁などから作動油がリークすると、作業装置が自重により自然降下して路面に衝突してしまう可能性がある。
【0003】
そこで、例えば、特許文献1に記載のトラクターでは、作業装置の現在の位置とメモリに予め記憶された記憶値との差分が、所定の基準量以上に拡大した場合に、当該差分を所定の基準量以内に収めるように作業装置を上昇させて作業装置の姿勢を自動で保持している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のトラクターの場合、オペレータがアクセルペダルを踏み込むとエンジンの回転数が増加し、作業装置を駆動する油圧シリンダに作動油を供給する油圧ポンプから吐出される吐出量が増える場合には、作業装置が急に上昇してしまうおそれがある。作業装置が急に上昇することによって車体が振動し、オペレータに不快感を与えることになり得る。
【0006】
そこで、本発明の目的は、オペレータに不快感を与えることなく、走行中の作業装置を路面から浮かせた姿勢で保持することが可能な作業車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、車体に取り付けられた作業装置と、前記作業装置を操作するための操作装置と、前記作業装置の姿勢を検出する姿勢検出装置と、前記作業装置を駆動する油圧シリンダと、前記油圧シリンダに作動油を供給する油圧ポンプと、前記油圧ポンプから吐出されて前記油圧シリンダに供給される作動油の流れを制御する方向制御弁と、前記方向制御弁を制御するコントローラと、を備えた作業車両において、前記コントローラは、前記姿勢検出装置で検出される前記作業装置の姿勢と目標姿勢との差を前記作業装置の姿勢偏差として算出し、算出した前記姿勢偏差が、所定の第1閾値以上となった場合に、前記作業装置が上昇動作を開始するように前記方向制御弁を制御する上昇開始制御を実行し、前記上昇開始制御により前記作業装置が上昇動作を開始した場合、上昇中の前記作業装置の上昇速度が維持されるように前記方向制御弁を制御する上昇維持制御を実行し、前記上昇維持制御により、前記姿勢偏差が、所定の第2閾値以下となった場合、前記上昇維持制御を停止することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、オペレータに不快感を与えることなく、走行中の作業装置を路面から浮かせた姿勢で保持することができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の各実施形態に係るホイールローダの一構成例を示す外観側面図である。
【
図2】第1実施形態における作業装置の駆動システムの一構成例を示すシステム構成図である。
【
図3】リフトアームの駆動に係る油圧回路および電気回路を示す図である。
【
図4】第1実施形態に係るコントローラが有する機能を示す機能ブロック図である。
【
図5】第1実施形態に係るコントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【
図6】第1実施形態に係るコントローラから電磁制御弁に対して出力される出力電流値の時間推移を示したグラフである。
【
図7】第2実施形態に係るコントローラが有する機能を示す機能ブロック図である。
【
図8】第2実施形態に係るコントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態に係る作業車両の一態様として、例えば土砂や鉱物などを掘削してダンプトラックやホッパーといった積込み先へ積み込む荷役作業を行うホイールローダについて説明する。
【0011】
[ホイールローダ1の構成]
まず、ホイールローダ1の構成について、
図1を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の各実施形態に係るホイールローダ1の一構成例を示す外観側面図である。
【0013】
ホイールローダ1は、車体が中心付近で中折れすることにより操舵されるアーティキュレート式の作業車両である。具体的には、車体の前部となる前フレーム1Aと車体の後部となる後フレーム1Bとが、センタジョイント10によって左右方向に回動自在に連結されており、前フレーム1Aが後フレーム1Bに対して左右方向に屈曲する。なお、以下の説明では、車体の左右方向のうち、前進方向を向いたオペレータの左手側を「左方向」とし、オペレータの右手側を「右方向」とする。
【0014】
車体には4つの車輪11が設けられており、2つの車輪11が前輪11Aとして前フレーム1Aの左右両側に、残り2つの車輪11が後輪11Bとして後フレーム1Bの左右両側に、それぞれ設けられている。なお、
図1では、4つの車輪11のうち、左側に設けられた前輪11Aおよび後輪11Bのみが示されている。
【0015】
前フレーム1Aの前部には、荷役作業を行うための油圧駆動式の作業装置2が取り付けられている。作業装置2は、前フレーム1Aに対して上下方向に回動可能に取り付けられたリフトアーム21と、リフトアーム21を駆動する2つのリフトアームシリンダ22と、リフトアーム21の先端部に対して上下方向に回動可能に取り付けられたバケット23と、バケット23を駆動するバケットシリンダ24と、リフトアーム21に回動可能に連結されてバケット23とバケットシリンダ24とのリンク機構を構成するベルクランク25と、を有している。
【0016】
リフトアーム21は、2つのリフトアームシリンダ22の各ロッド220が伸びることにより前フレーム1Aに対して上方向に回動し、2つのリフトアームシリンダ22の各ロッド220が縮むことにより前フレーム1Aに対して下方向に回動する。なお、
図1では、2つのリフトアームシリンダ22のうち、左側に配置されたリフトアームシリンダ22のみを破線で示している。
【0017】
バケット23は、バケットシリンダ24のロッド240が伸びることによりリフトアーム21に対して上方向に回動し(チルト動作)、バケットシリンダ24のロッド240が縮むことによりリフトアーム21に対して下方向に回動する(ダンプ動作)。これにより、バケット23は、例えば土砂や鉱物などの荷を掬って積込み先に排出することが可能となっている。
【0018】
なお、バケット23は、例えばブレードなどの各種アタッチメントに交換することが可能であり、ホイールローダ1は、バケット23を用いた荷役作業の他に、除雪作業や押土作業などの各種作業を行うことも可能である。
【0019】
2つのリフトアームシリンダ22およびバケットシリンダ24はそれぞれ、作業装置2を駆動する油圧シリンダの一態様である。
【0020】
本実施形態では、リフトアーム21の車体に対する角度を検出するリフトアーム角度センサ41が、リフトアーム21の基端部に設けられている。また、バケット23のリフトアーム21に対する角度を検出するバケット角度センサ42が、ベルクランク25に設けられている。これらリフトアーム角度センサ41およびバケット角度センサ42はそれぞれ、作業装置2の姿勢を検出する姿勢検出装置の一態様である。
【0021】
後フレーム1Bには、オペレータが搭乗する運転室12と、ホイールローダ1の駆動に必要な各種の機器類を内部に収容する機械室13と、車体が傾倒しないように作業装置2とのバランスを保つためのカウンタウェイト14と、が設けられている。後フレーム1Bにおいて、運転室12は前部に、カウンタウェイト14は後部に、機械室13は運転室12とカウンタウェイト14との間に、それぞれ配置されている。
【0022】
図1では不図示であるが、運転室12内には、オペレータが着座する運転席と、車体を左右方向に操舵するためのハンドルと、車体の前後進を切り替えるための前後進レバー121と、作業装置2を操作するための操作装置としての作業用操作レバー122と、が設けられている。本実施形態では、前後進レバー121および作業用操作レバー122はそれぞれ電気式のレバーであって、後述するコントローラ5に電気的に接続されている(
図2参照)。
【0023】
以下、作業装置2の駆動システムについて、実施形態ごとに説明する。
【0024】
[第1実施形態]
本発明の第1実施形態に係る作業装置2の駆動システムについて、
図2~6を参照して説明する。
【0025】
(作業装置2の駆動システムの全体構成)
まず、作業装置2の駆動システムの全体構成について、
図2および
図3を参照して説明する。
【0026】
図2は、第1実施形態における作業装置2の駆動システムの一構成例を示すシステム構成図である。
図3は、リフトアーム21の駆動に係る油圧回路および電気回路を示す図である。なお、
図2および
図3では、便宜上、2つのリフトアームシリンダ22のうちの一方のリフトアームシリンダ22のみを示している。
【0027】
作業装置2の駆動システムは、作動油を貯留する作動油タンク30と、エンジンにより駆動されるメインポンプ31およびパイロットポンプ32と、リフトアームシリンダ22およびバケットシリンダ24のそれぞれに導かれる作動油の流れ(流量および方向)を制御する方向制御弁ユニット33と、方向制御弁ユニット33を制御するコントローラ5と、を含んで構成されている。
【0028】
メインポンプ31は、リフトアームシリンダ22およびバケットシリンダ24のそれぞれに作動油(圧油)を供給する油圧ポンプである。パイロットポンプ32は、方向制御弁ユニット33に作用させるパイロット圧油を吐出する。
【0029】
方向制御弁ユニット33は、メインポンプ31から吐出されてリフトアームシリンダ22に流入する圧油の流れを制御する第1方向制御弁33Aおよび第2方向制御弁33Bと、メインポンプ31から吐出されてバケットシリンダ24に流入する圧油の流れを制御する第3方向制御弁33Cと、第1方向制御弁33A内の第1スプール330Aの動作を制御する一対の第1電磁制御弁331L,331Rと、第2方向制御弁33B内の第2スプール330Bの動作を制御する一対の第2電磁制御弁332L,332Rと、第3方向制御弁33C内の第3スプール330Cの動作を制御する一対の第3電磁制御弁333L,333Rと、を含む。
【0030】
第1電磁制御弁331L,331R、第2電磁制御弁332L,332R、および第3電磁制御弁333L,333Rはいずれも、コントローラ5に接続されており、コントローラ5から出力された出力電流値に比例して作動する電磁比例弁である。
【0031】
コントローラ5は、前後進レバー121および作業用操作レバー122からそれぞれ出力された操作信号、リフトアーム角度センサ41で検出されたリフトアーム角度、バケット角度センサ42で検出されたバケット角度、および車速センサ43で検出された車速などに基づいて、第1電磁制御弁331L,331R、第2電磁制御弁332L,332R、および第3電磁制御弁333L,333Rのそれぞれに対して制御信号(出力電流)を出力する。
【0032】
また、作業装置2の駆動システムには、メインポンプ31から吐出された圧油を蓄圧するアキュムレータ34が備えられている。ホイールローダ1は、路面の凹凸が大きい悪路を走行することが多いことから、走行時に車体が振動し、さらに、車体を介して作業装置2も振動してしまう。そのため、走行中にバケット23内から荷こぼれが発生したり、オペレータが振動によって前後進レバー121や作業用操作レバー122などを誤操作したりしてしまう可能性がある。そこで、作業装置2の駆動システムでは、アキュムレータ34を用いて、特に、リフトアームシリンダ22内の圧力変動を制御し、走行中に発生する作業装置2の振動を抑制している。
【0033】
図3に示すように、第2方向制御弁33Bの下流側に接続された管路301は、アキュムレータ34に接続される第1管路301Aと、リフトアームシリンダ22のボトム室22Bに接続される第2管路301Bと、に分岐している。すなわち、アキュムレータ34は、第2方向制御弁33Bの下流側に対し、リフトアームシリンダ22のボトム室22Bと並列になるように接続されている。
【0034】
第1管路301A上には、第1電磁開閉弁35が設けられており、コントローラ5から出力された指令信号にしたがって第1管路301Aを開閉する。また、リフトアームシリンダ22のロッド室22Aと作動油タンク30とを接続する排出管路302上には、第2電磁開閉弁36が設けられており、コントローラ5から出力された指令信号にしたがって排出管路302を開閉する。
【0035】
コントローラ5は、作業用操作レバー122から出力された操作信号、各角度センサ41,42で検出された角度、および車速センサ43で検出された車速に基づいて、第1電磁開閉弁35および第2電磁開閉弁36を制御し、リフトアームシリンダ22に流入する圧油の一部をアキュムレータ34に蓄圧させることにより、車体の走行中の振動に伴う作業装置2の振動の発生を抑制している(ライドコントロール)。
【0036】
さらに、コントローラ5は、バケット23内の荷の重量やバケット23自体の重量による作業装置2(リフトアーム21)の自然降下(自重による降下)を抑制するための制御も行っている。具体的には、バケット23の位置が本来位置すべき高さから下がっている場合に、コントローラ5が、リフトアーム21を上昇させてバケット23を本来の位置に戻す補正を行うことで、作業装置2の自然降下を抑制してバケット23が路面に接触しないようにしている。
【0037】
(コントローラ5の構成)
次に、コントローラ5の構成について、
図4を参照して説明する。
【0038】
図4は、第1実施形態に係るコントローラ5が有する機能を示す機能ブロック図である。
【0039】
コントローラ5は、CPU、RAM、ROM、HDD、入力I/F、および出力I/Fがバスを介して互いに接続されて構成される。そして、作業用操作レバー122などの各種の操作装置、リフトアーム角度センサ41、およびバケット角度センサ42などのセンサ類が入力I/Fに接続され、第1~第3電磁制御弁331~333が出力I/Fに接続されている。
【0040】
このようなハードウェア構成において、ROMやHDD若しくは光学ディスク等の記録媒体に格納された制御プログラム(ソフトウェア)をCPUが読み出してRAM上に展開し、展開された制御プログラムを実行することにより、制御プログラムとハードウェアとが協働して、コントローラ5の機能を実現する。
【0041】
なお、本実施形態では、コントローラ5を、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成されるコンピュータとして説明しているが、これに限られず、例えば他のコンピュータの構成の一例として、ホイールローダ1の側で実行される制御プログラムの機能を実現する集積回路を用いてもよい。
【0042】
以下では、コントローラ5における作業装置2の自然降下の補正制御に係る構成について説明する。
【0043】
コントローラ5は、データ取得部51と、操作判定部52と、時間判定部53と、目標姿勢設定部54と、姿勢偏差算出部55と、姿勢偏差判定部56と、出力電流値制御部58と、記憶部50と、を含む。
【0044】
データ取得部51は、作業用操作レバー122から出力された操作信号(操作電流)およびリフトアーム角度センサ41で検出されたリフトアーム角度θをそれぞれ取得する。
【0045】
操作判定部52は、データ取得部51にて取得された操作電流の値(操作電流値C)が、規定電流値Cthよりも小さくなったか否かを判定する。ここで、「規定電流値Cth」とは、作業用操作レバー122によって作業装置2が操作されているときの最低限の電流値である。すなわち、操作判定部52は、作業用操作レバー122が操作されていない状態(非操作状態)であるか否かを判定する。
【0046】
時間判定部53は、操作判定部52にて操作電流値Cが規定電流値Cthよりも小さくなった(C<Cth)と判定された場合に、操作電流値Cが規定電流値Cthよりも小さい状態が所定の規定停止時間Tth以上経過しているか否かを判定する。換言すれば、時間判定部53は、作業用操作レバー122が操作されない状態が所定の規定停止時間Tth以上経過したか否かを判定する。
【0047】
ここで、「規定停止時間Tth」とは、作業装置2を用いた掘削中において作業用操作レバー122による操作が停止する時間である。すなわち、時間判定部53は、掘削作業において発生する作業用操作レバー122による操作の停止に該当しないかどうかを判定する。
【0048】
なお、コントローラ5は、必ずしも時間判定部53を含んでいる必要はないが、操作判定部52にて作業用操作レバー122が非操作状態であると判定された場合に、規定停止時間Tth以上経過しているか否かの判定を追加することで、誤判定を回避することができる。
【0049】
目標姿勢設定部54は、操作判定部52にて操作電流値Cが規定電流値Cthよりも小さくなった(C<Cth)と判定された場合に、そのときデータ取得部51にて取得されたリフトアーム角度θを目標角度(目標姿勢)θtとして設定する。本実施形態では、時間判定部53にて規定停止時間Tth以上経過している(t≧Tth)と判定されたときのリフトアーム角度θを目標角度θtとして設定する。なお、目標角度θtは、必ずしもコントローラ5により設定される必要はなく、予め記憶部50に記憶させておいた所定の角度を用いてもよい。
【0050】
姿勢偏差算出部55は、データ取得部51にて取得された現在のリフトアーム角度θと、目標姿勢設定部54にて設定された目標角度θtとの差|θ-θt|を、リフトアーム21の角度偏差(姿勢偏差)として算出する。
【0051】
姿勢偏差判定部56は、姿勢偏差算出部55にて算出された角度偏差|θ-θt|が所定の第1閾値α以上となったか否かを判定する。ここで、「第1閾値α」とは、作業装置2(バケット23)が路面に接触しない限界の角度(姿勢)となる角度偏差値であって、例えば、約5°である。すなわち、姿勢偏差判定部56は、リフトアーム21が、バケット23が路面に接触しない限界の位置まで降下したか否かを判定する。
【0052】
また、姿勢偏差判定部56は、姿勢偏差算出部55にて算出された角度偏差|θ-θt|が所定の第2閾値β以下となったか否かを判定する。ここで、「第2閾値β」とは、リフトアーム角度θ(作業装置2の姿勢)が目標角度(目標姿勢)θtを超えないように設定された角度偏差値であって、例えば、約1°である。すなわち、姿勢偏差判定部56は、リフトアーム21の位置が目標位置となったか否かを判定する。
【0053】
さらに、姿勢偏差判定部56は、姿勢偏差算出部55にて算出された角度偏差|θ-θt|が所定の第3閾値γ以下となったか否かを判定する。ここで、「第3閾値γ」とは、第1閾値αよりも小さく、第2閾値βよりも大きい角度偏差値であって(β<γ<α)、例えば、約4°(=5°-1°)である。すなわち、姿勢偏差判定部56は、リフトアーム21が上昇動作を開始したか否かを判定する。
【0054】
出力電流値制御部58は、姿勢偏差判定部56にて角度偏差|θ-θt|が第1閾値α以上となった(|θ-θt|≧α)と判定された場合、第1電磁制御弁331L,331Rおよび第2電磁制御弁332L,332Rのそれぞれに対して出力する出力電流値Coutをスタンバイ電流値から徐々に上昇させる(上昇開始制御の実行)。
【0055】
ここで、「スタンバイ電流値」とは、第1方向制御弁33Aの第1スプール330Aおよび第2方向制御弁33Bの第2スプール330Bがそれぞれ動き出さない上限の出力電流値である(
図6に示すC0およびC1を含む電流値)。
【0056】
また、出力電流値制御部58は、姿勢偏差判定部56にて角度偏差|θ-θt|が第3閾値γ以下になった(|θ-θt|≦γ)と判定された場合、第1電磁制御弁331L,331Rおよび第2電磁制御弁332L,332Rのそれぞれに対して出力している出力電流値Coutをその時点の出力電流値で固定する(上昇維持制御の実行)。
【0057】
すなわち、出力電流値制御部58は、リフトアーム21が上昇動作を開始した場合、リフトアーム21の上昇速度が維持されるように第1電磁制御弁331L,331Rおよび第2電磁制御弁332L,332Rのそれぞれに対して出力している出力電流値Coutを固定する。
【0058】
そして、出力電流値制御部58は、姿勢偏差判定部56にて角度偏差|θ-θt|が第2閾値β以下になった(|θ-θt|≦β)と判定された場合、第1電磁制御弁331L,331Rおよび第2電磁制御弁332L,332Rのそれぞれに対して出力している出力電流値Cout(固定値)をスタンバイ電流値以下に低減する(上昇維持制御の停止)。
【0059】
記憶部50には、規定電流値Cth、規定停止時間Tth、目標角度θt、第1閾値α、第2閾値β、および第3閾値γがそれぞれ記憶されている。
【0060】
(コントローラ5における処理)
次に、コントローラ5で実行される処理の流れについて、
図5を参照して説明する。
【0061】
図5は、第1実施形態に係るコントローラ5で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0062】
コントローラ5では、まず、操作判定部52が、データ取得部51にて取得された操作電流値Cが規定電流値Cthよりも小さくなったか否かを判定する(ステップS501)。
【0063】
ステップS501において操作電流値Cが規定電流値Cthよりも小さくなった(C<Cth)と判定された場合には(ステップS501/YES)、本実施形態では、時間判定部53は、操作電流値Cが規定電流値Cthよりも小さい状態が規定停止時間Tth以上経過しているか否かを判定する(ステップS502)。
【0064】
他方、ステップS501において操作電流値Cが規定電流値Cth以上である(C≧Cth)と判定された場合には(ステップS501/NO)、コントローラ5における処理が終了する。
【0065】
ステップS502において操作電流値Cが規定電流値Cthよりも小さい状態となっている時間tが規定停止時間Tthを経過している(t≧Tth)と判定された場合(ステップS502/YES)、目標姿勢設定部54は、現在データ取得部51にて取得されたリフトアーム角度θを目標角度(目標姿勢)θtとして設定する(ステップS503)。
【0066】
他方、ステップS502において現在の時間tが規定停止時間Tth未満である(t<Tth)と判定された場合(ステップS502/NO)、ステップS501に戻って処理を繰り返す。
【0067】
次に、姿勢偏差判定部56は、姿勢偏差算出部55にて算出された角度偏差|θ-θt|が第1閾値α以上となったか否かを判定する(ステップS504)。
【0068】
ステップS504において角度偏差|θ-θt|が第1閾値α以上となった(|θ-θt|≧α)と判定された場合(ステップS504/YES)、出力電流値制御部58は、第1電磁制御弁331L.331Rおよび第2電磁制御弁332L,332Rのそれぞれに対して出力する出力電流値Coutをスタンバイ電流値から徐々に上昇させる(ステップS505)。
【0069】
すなわち、コントローラ5は、ステップS505では、リフトアーム21が上昇動作を開始するように第1電磁制御弁331L.331Rおよび第2電磁制御弁332L,332Rのそれぞれを制御する上昇開始制御を実行する。
【0070】
他方、ステップS504において角度偏差|θ-θt|が第1閾値α未満となった(|θ-θt|<α)と判定された場合(ステップS504/NO)、コントローラ5における処理が終了する。
【0071】
次に、姿勢偏差判定部56は、姿勢偏差算出部55にて算出された角度偏差|θ-θth|が第3閾値γ以下になったか否かを判定する(ステップS506)。
【0072】
ステップS506において角度偏差|θ-θth|が第3閾値γ以下になった(|θ-θt|≦γ)と判定された場合(ステップS506/YES)、出力電流値制御部58は、第1電磁制御弁331L,331Rおよび第2電磁制御弁332L,332Rのそれぞれに対して出力している出力電流値Coutを固定する(ステップS507)。
【0073】
すなわち、コントローラ5は、ステップS507では、上昇中のリフトアーム21の上昇速度が維持されるように第1電磁制御弁331L,331Rおよび第2電磁制御弁332L,332Rのそれぞれを制御する上昇維持制御を実行する。
【0074】
他方、ステップS506において角度偏差|θ-θth|が第3閾値γよりも大きい(|θ-θt|>γ)と判定された場合には(ステップS506/NO)角度偏差|θ-θth|が第3閾値γ以下になるまでステップS507に進まない。
【0075】
次に、姿勢偏差判定部56は、姿勢偏差算出部55にて算出された角度偏差|θ-θth|が第2閾値β以下になったか否かを判定する(ステップS508)。
【0076】
ステップS508において角度偏差|θ-θth|が第2閾値β以下になった(|θθth|≦β)と判定された場合(ステップS508/YES)、出力電流値制御部58は、第1電磁制御弁331L,331Rおよび第2電磁制御弁332L,332Rのそれぞれに対して出力している出力電流値Coutをスタンバイ電流値以下に低減し(ステップS509)、コントローラ5における処理が終了する。すなわち、コントローラ5は、ステップS509では、上昇維持制御を停止する。
【0077】
他方、ステップS508において角度偏差|θ-θth|が第2閾値βよりも大きい(|θ-θth|>β)と判定された場合には(ステップS508/NO)、角度偏差|θ-θth|が第2閾値β以下となるまでステップS509に進まない。
【0078】
(出力電流値Coutの時間推移)
次に、コントローラ5の制御による出力電流値Coutの時間推移について、
図6を参照して説明する。
【0079】
図6は、第1実施形態に係るコントローラ5から第1電磁制御弁331L,331Rおよび第2電磁制御弁332L,332Rのそれぞれに対して出力される出力電流値Coutの時間推移を示したグラフである。
【0080】
コントローラ5は、角度偏差|θ-θt|が第1閾値α以上となった場合に、上昇開始制御を実行し、第1電磁制御弁331L,331Rおよび第2電磁制御弁332L,332Rのそれぞれに対して出力する出力電流値Coutを、スタンバイ電流値(
図6ではC1)から徐々に上昇させる。したがって、出力電流値Coutは、時間の経過に比例して大きくなっていく(
図6に示す第1段階X1)。
【0081】
ここで、
図6に示す例では、スタンバイ電流値が下限値C0および上限値C1を含む所定の範囲に亘った値となっている。そして、下限値C0と上限値C1との差がある程度大きいことから、コントローラ5は、第1電磁制御弁331L,331Rおよび第2電磁制御弁332L,332Rのそれぞれに対して出力する出力電流値Coutを、下限値C0から上限値C1まで一気に上昇させている(
図6に示す準備段階X0)。これにより、第1スプール330Aおよび第2スプール330Bのそれぞれ動き出しがスムーズとなる。なお、スタンバイ電流値は、
図6に示すような所定の範囲に亘った値である必要はなく、任意の一の値(
図6に示すC0あるいはC1)に設定されていてもよい。
【0082】
次に、コントローラ5は、上昇開始制御によりリフトアーム21が上昇動作を開始すると、上昇維持制御を実行し、第1電磁制御弁331L,331Rおよび第2電磁制御弁332L,332Rのそれぞれに対して出力している出力電流値Coutをその時点の値で固定する(
図6に示す第2段階X2)。これにより、リフトアーム21の上昇動作は、リフトアーム21を上昇動作させることが可能な最低限の速度によってゆっくりと制御される。
【0083】
ここで、リフトアーム21が上昇動作を開始するタイミングは、バケット23内の荷の重量によって変わってくることから、コントローラ5による上昇維持制御の実行のタイミング、すなわち固定する出力電流値の大きさもバケット23内の荷の重量に応じて変動することになる。換言すれば、コントローラ5は、バケット23内の荷の重量に応じた出力電流値で固定するため、バケット23内の重量によらず適度な速度でリフトアーム21を上昇させることができる。
【0084】
そして、コントローラ5は、リフトアーム21の位置が目標位置に達すると、上昇維持制御を停止し、第1電磁制御弁331L,331Rおよび第2電磁制御弁332L,332Rのそれぞれに対して出力している出力電流値Coutをスタンバイ電流値以下に低減する。これにより、出力電流値Coutは、スタンバイ電流値の下限値C0まで一気に下降する(
図6に示す第3段階X3)。
【0085】
このように、コントローラ5が、リフトアーム21の現状位置(路面からの高さ)に応じて出力電流値Coutの大きさおよび出力の仕方を制御するため、リフトアーム21が所定の目標位置に位置するよう一律に補正する制御を行う場合と比べて、オペレータに不快感を与えることなく、走行中の作業装置2を路面から浮かせた姿勢で保持することができる。
【0086】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2実施形態に係るコントローラ5Aについて、
図7および
図8を参照して説明する。
【0087】
図7は、第2実施形態に係るコントローラ5Aが有する機能を示す機能ブロック図である。
図8は、第2実施形態に係るコントローラ5Aで実行される処理の流れを示すフローチャートである。なお、
図7および
図8において、第1実施形態で説明したものと共通する構成要素については、同一の符号を付してその説明を省略する。
【0088】
本実施形態に係るコントローラ5Aは、
図7に示すように、データ取得部51と、操作判定部52と、時間判定部53と、目標姿勢設定部54と、姿勢偏差算出部55Aと、姿勢偏差判定部56Aと、出力電流値制御部58と、記憶部50Aと、に加え、移動平均化処理部59を含む。
【0089】
移動平均化処理部59は、データ取得部51にて取得されたリフトアーム角度θに移動平均化処理を施し、移動平均角度θaveを算出する。
【0090】
姿勢偏差算出部55Aは、移動平均化処理部59にて移動平均化処理が施されたリフトアーム角度(移動平均角度θave)と目標角度θtとの差|θave-θt|を角度偏差として算出する。
【0091】
記憶部50Aは、移動平均化処理部59にて移動平均化処理が施される前のリフトアーム角度θと移動平均化処理が施された後の移動平均角度θaveとの乖離を補正する補正率を記憶している。そして、記憶部50Aは、補正率に基づいて補正された第2閾値βcを記憶している。
【0092】
姿勢偏差判定部56Aは、姿勢偏差算出部55Aにて算出された角度偏差|θave-θt|が第1閾値α以上となったか否かを判定する。また、姿勢偏差判定部56Aは、姿勢偏差算出部55Aにて算出された姿勢偏差|θave-θt|が第2閾値βc以下となったか否かを判定する。さらに、姿勢偏差判定部56は、姿勢偏差算出部55Aにて算出された角度偏差|θave-θt|が第3閾値γ以下となったか否かを判定する。
【0093】
図8に示すように、コントローラ5Aでは、ステップS501~ステップS503までの処理は、第1実施形態に係るコントローラ5と同様である。ステップS503において目標角度θtが設定されると、移動平均化処理部59は、データ取得部51にて取得されたリフトアーム角度θに移動平均化処理を施して移動平均角度θaveを算出する(ステップS510)。
【0094】
次に、姿勢偏差判定部56Aは、姿勢偏差算出部55Aにて算出された角度偏差|θave-θt|が第1閾値α以上になったか否かを判定する(ステップS504A)。
【0095】
ステップS504Aにおいて角度偏差|θave-θt|が第1閾値α以上になった(|θave-θt|≧α)と判定された場合には(ステップS504A/YES)、出力電流値制御部58が上昇開始制御を実行し(ステップS505)、他方、ステップS504Aにおいて角度偏差|θave-θt|が第1閾値α未満である(|θave-θt|<α)と判定された場合には(ステップS504A/NO)、コントローラ5Aにおける処理が終了する。
【0096】
続いて、姿勢偏差判定部56Aは、姿勢偏差算出部55Aにて算出された角度偏差|θave-θt|が第3閾値γ以下になったか否かを判定する(ステップS506A)。
【0097】
ステップS506Aにおいて角度偏差|θave-θt|が第3閾値γ以下になった(|θave-θt|≦γ)と判定された場合には(ステップS506A/YES)、出力電流値制御部58が上昇維持制御を実行する(ステップS507)。
【0098】
他方、ステップS506Aにおいて角度偏差|θave-θt|が第3閾値γよりも大きい(|θave-θt|>γ)と判定された場合には(ステップS506A/NO)、角度偏差|θave-θt|が第3閾値γ以下になるまでステップS507に進まない。
【0099】
ステップS507において上昇維持制御が実行されると、姿勢偏差判定部56Aは、姿勢偏差算出部55Aにて算出された角度偏差|θave-θt|が第2閾値βc以下になったか否かを判定する(ステップS508A)。
【0100】
ステップS508Aにおいて角度偏差|θave-θt|が第2閾値βc以下になった(|θave-θt|≦βc)と判定された場合には(ステップS508A/YES)、出力電流値制御部58は、上昇維持制御を停止し(ステップS509)、コントローラ5Aにおける処理が終了する。
【0101】
他方、ステップS508Aにおいて角度偏差|θave-θt|が第2閾値βcよりも大きい(|θave-θt|>βc)と判定された場合には(ステップS508A/NO)、角度偏差|θave-θt|が第2閾値βc以下になるまでステップS509に進まない。
【0102】
本実施形態では、リフトアーム角度センサ41で検出されたリフトアーム角度θに対して移動平均化処理を施すことにより、ホイールローダ1が悪路を走行しているような場合に、上下振動するリフトアーム角度θを真値に近づけることができる。
【0103】
ただし、移動平均化処理において、移動平均する時間が長くなると真値に対しての乖離が大きくなることから、コントローラ5Aでは、移動平均時間、リフトアーム21の上昇速度、および補正する角度の3つの変数を用いて、移動平均角度θaveを真値に近づけるための補正率を設定して記憶部50Aに記憶している。
【0104】
以上、本発明の各実施形態について説明した。なお、本発明は上記した各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した各実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、各実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、各実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0105】
例えば、上記各実施形態では、作業車両の一態様としてホイールローダ1を例に挙げて説明したが、これに限られず、作業装置2を備えた作業車両であれば、例えばホイール式の油圧ショベルなどであってもよい。
【0106】
また、例えば、上記各実施形態では、作業装置2の姿勢を検出する姿勢検出装置として、リフトアーム角度センサ41およびバケット角度センサ42を用いていたが、これに限られず、例えば、ストロークセンサやIMUなどを用いてもよい。
【符号の説明】
【0107】
1:ホイールローダ(作業車両)
1A:前フレーム(車体)
1B:後フレーム(車体)
2:作業装置
5,5A:コントローラ
22:リフトアームシリンダ(油圧シリンダ)
24:バケットシリンダ(油圧シリンダ)
31:メインポンプ(油圧ポンプ)
33A:第1方向制御弁
33B:第2方向制御弁
33C:第3方向制御弁
41:リフトアーム角度センサ(姿勢検出装置)
42:バケット角度センサ(姿勢検出装置)
122:作業用操作レバー(操作装置)
330A:第1スプール
330B:第2スプール
330C:第3スプール
331L,331R:第1電磁制御弁
332L,332R:第2電磁制御弁
333L,333R:第3電磁制御弁
C0,C1:スタンバイ電流値
Tth:規定停止時間
α:第1閾値
β,βc:第2閾値
γ:第3閾値