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特開2024-143648リアクトル、コンバータ、および電力変換装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143648
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】リアクトル、コンバータ、および電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H01F 37/00 20060101AFI20241003BHJP
   H01F 27/32 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
H01F37/00 E
H01F37/00 M
H01F37/00 A
H01F27/32 150
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056424
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100147
【弁理士】
【氏名又は名称】山野 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116366
【弁理士】
【氏名又は名称】二島 英明
(72)【発明者】
【氏名】高井 良典
(72)【発明者】
【氏名】山本 伸一郎
【テーマコード(参考)】
5E044
【Fターム(参考)】
5E044BA01
(57)【要約】
【課題】コイルと磁性コアとを一体化するモールド部材の一部が巻回部の内部に充填され易いリアクトルを提供する。
【解決手段】巻回部を有するコイルと、前記巻回部の内部に配置された内側コア部を有する磁性コアと、前記巻回部と前記内側コア部との間に配置された第一スペーサと、前記コイルと前記磁性コアとを一体化するモールド部材と、を備え、前記内側コア部は、四角柱形状を有し、第一端面を有する第一コア部と、前記第一端面と間隔を空けて配置される第二端面を有する第二コア部とで構成されており、前記第一スペーサは、前記内側コア部の3つの外周面に向き合う内周面を備える樋形状を有し、前記モールド部材の一部は、前記内側コア部における前記内周面が向き合っていない部分と前記巻回部との第一の隙間、および前記第一端面と前記第二端面との第二の隙間に配置されている、リアクトル。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内部に配置された内側コア部と前記巻回部の外部に配置された外側コア部とを有する磁性コアと、
前記巻回部と前記内側コア部との間に配置された第一スペーサと、
前記コイルと前記磁性コアとを一体化するモールド部材と、を備え、
前記内側コア部は、四角柱形状を有し、前記巻回部の内部に配置される第一端面を有する第一コア部と、前記第一端面と間隔を空けて配置される第二端面を有する第二コア部とで構成されており、
前記第一スペーサは、前記内側コア部の3つの外周面に向き合う内周面を備える樋形状を有し、
前記モールド部材の一部は、前記内側コア部における前記内周面が向き合っていない部分と前記巻回部との第一の隙間、および前記第一端面と前記第二端面との第二の隙間に配置されている、
リアクトル。
【請求項2】
前記第一スペーサは、前記内側コア部の周長の45%以上を覆う、請求項1に記載のリアクトル。
【請求項3】
前記巻回部の端面と前記外側コア部との間に配置される第二スペーサを備え、
前記第一スペーサと前記第二スペーサとが一体物である、請求項1または請求項2に記載のリアクトル。
【請求項4】
前記第一スペーサの厚さは0.5mm以上2.0mm以下である、請求項1または請求項2に記載のリアクトル。
【請求項5】
前記第一の隙間の幅は0.5mm以上4.0mm以下である、請求項1または請求項2に記載のリアクトル。
【請求項6】
前記第二の隙間の幅は0.8mm以上4.0mm以下である、請求項1または請求項2に記載のリアクトル。
【請求項7】
前記磁性コアは、
前記外側コア部の一部と前記第一コア部とを含む第一コア片と、
前記外側コア部の一部と前記第二コア部とを含む第二コア片と、を組み合わせて構成されている、請求項1または請求項2に記載のリアクトル。
【請求項8】
請求項1または請求項2に記載のリアクトルを備える、
コンバータ。
【請求項9】
請求項8に記載のコンバータを備える、
電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リアクトル、コンバータ、および電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、巻回部を有するコイルと磁性コアとを備えるリアクトルを開示する。磁性コアは、巻回部の内部に配置されるミドルコア部を備える。ミドルコア部は、第一ミドルコア片と第二ミドルコア片とで構成されている。巻回部の内部において、第一ミドルコア片の端面と第二ミドルコア片の端面とは間隔を空けて配置されている。
【0003】
上記リアクトルはさらに、磁性コアの少なくとも一部を覆うモールド樹脂部を備える。モールド樹脂部は、本明細書におけるモールド部材に相当する。モールド樹脂部を形成する際、モールド樹脂部を構成する樹脂は、巻回部の端面の位置から巻回部と内側コア部との隙間(以下、隙間A)に入り込み、第一ミドルコア片の端面と第二ミドルコア片の端面との隙間(以下、隙間B)にいたる。隙間Bに入り込んだモールド樹脂部は、磁性コアの磁気特性を調整する樹脂ギャップとして機能する。モールド樹脂部の一部によって構成される樹脂ギャップは内側コア部の一部とみなすことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-141123号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
リアクトルの小型化およびリアクトルの放熱性の向上のために、巻回部とミドルコア部との隙間Aを小さくしたり、巻回部の内部における第一ミドルコア片の端面と第二ミドルコア片の端面との隙間Bを小さくしたいというニーズがある。その場合、隙間Aに樹脂が充填され難くなる、また、隙間Aと隙間Bとが直交しているため、隙間Aを通って隙間Bに樹脂が充填され難い。隙間Bへの樹脂の充填が不十分で隙間Bに空隙が形成されると、リアクトルの放熱性が低下したり、樹脂ギャップの機能が低下したりするおそれがある。隙間Bに樹脂を十分に充填するために、コイルと磁性コアを外側からモールドする際の樹脂の圧力を高くし過ぎると、樹脂の圧力によって磁性コアが割れてしまうおそれがある。
【0006】
本開示の目的の一つは、コイルと磁性コアとを一体化するモールド部材の一部が巻回部の内部に充填され易いリアクトルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のリアクトルは、
巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内部に配置された内側コア部と前記巻回部の外部に配置された外側コア部とを有する磁性コアと、
前記巻回部と前記内側コア部との間に配置された第一スペーサと、
前記コイルと前記磁性コアとを一体化するモールド部材と、を備え、
前記内側コア部は、四角柱形状を有し、前記巻回部の内部に配置される第一端面を有する第一コア部と、前記第一端面と間隔を空けて配置される第二端面を有する第二コア部とで構成されており、
前記第一スペーサは、前記内側コア部の3つの外周面に向き合う内周面を備える樋形状を有し、
前記モールド部材の一部は、前記内側コア部における前記内周面が向き合っていない部分と前記巻回部との第一の隙間、および前記第一端面と前記第二端面との第二の隙間に配置されている。
【発明の効果】
【0008】
本開示のリアクトルは、コイルと磁性コアとを一体化するモールド部材の一部が巻回部の内部に十分に充填されたリアクトルである。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態1に記載されるリアクトルの概略斜視図である。
図2図2は、モールド部材を除くリアクトルの分解斜視図である。
図3図3は、図1のIII-III断面図である。
図4図4は、図4のIV-IV断面図である。
図5図5は、ハイブリッド自動車の電源系統を模式的に示す構成図である。
図6図6は、コンバータを備える電力変換装置の一例を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0011】
<1>実施形態に係るリアクトルは、
巻回部を有するコイルと、
前記巻回部の内部に配置された内側コア部と前記巻回部の外部に配置された外側コア部とを有する磁性コアと、
前記巻回部と前記内側コア部との間に配置された第一スペーサと、
前記コイルと前記磁性コアとを一体化するモールド部材と、を備え、
前記内側コア部は、四角柱形状を有し、前記巻回部の内部に配置される第一端面を有する第一コア部と、前記第一端面と間隔を空けて配置される第二端面を有する第二コア部とで構成されており、
前記第一スペーサは、前記内側コア部の3つの外周面に向き合う内周面を備える樋形状を有し、
前記モールド部材の一部は、前記内側コア部における前記内周面が向き合っていない部分と前記巻回部との第一の隙間、および前記第一端面と前記第二端面との第二の隙間に配置されている。
【0012】
実施形態に係るリアクトルでは、四角柱形状の内側コア部と巻回部との隙間に樋形状を有する第一スペーサが配置され、その第一スペーサが隙間の一部をふさいでいる。第一スペーサによって狭くなった隙間は、モールド部材を形成する際、モールド部材を構成する樹脂が通る第一の隙間である。狭くなった隙間からなる第一の隙間では、樹脂の充填圧力が高く維持され易い。そのため、コイルと磁性コアとを外側からモールドする際の樹脂の圧力を高くしなくとも、第一の隙間に樹脂が充填され易い。また、第一の隙間を通った高圧の樹脂は、内側コア部を構成する第一コア部の第一端面と第二コア部の第二端面との間に形成される第二の隙間に入り込み易い。コイルと磁性コアとを外部からモールドする際の樹脂の圧力が高くなり過ぎないことで、樹脂の圧力によって磁性コアが損傷することが抑制される。また、実施形態に係るリアクトルでは、第一の隙間と第二の隙間に樹脂が十分に充填され、第二の隙間に配置されたモールド部材に空隙などの欠陥が生じ難い。第二の隙間に配置された欠陥の少ないモールド部材の一部は、樹脂ギャップとして所望の特性を発揮する。
【0013】
モールド部材は、巻回部の内部から外部に向かう熱の伝達路として機能する。巻回部の内部においてモール部材に空隙などの欠陥が少なければ、欠陥に起因する熱の伝達路としてのモールド部材の機能が低下し難い。
【0014】
モールド部材の一部と第一スペーサとによって巻回部と内側コア部との電気絶縁距離を確保することで、巻回部と内側コア部との距離を小さくできる。その結果、巻回部を小型化することができる。従って、実施形態に係るリアクトルは小型である。
【0015】
<2>上記<1>に記載されるリアクトルにおいて、
前記第一スペーサは、前記内側コア部の周長の45%以上を覆っていても良い。
【0016】
内側コア部の周長とは、内側コア部の軸線に直交する断面で内側コア部を切断したときの輪郭線の長さである。第一スペーサが内側コア部の周長の45%以上を覆っていれば、第一の隙間における樹脂の充填圧力が高く維持され、第二の隙間に樹脂が十分に行きわたり易い。
【0017】
<3>上記<1>または<2>に記載されるリアクトルにおいて、
前記巻回部の端面と前記外側コア部との間に配置される第二スペーサを備え、
前記第一スペーサと前記第二スペーサとが一体物であっても良い。
【0018】
第二スペーサは、巻回部の端面と外側コア部との間の電気絶縁距離を十分に確保することができる。第一スペーサと第二スペーサとが一体物であれば、リアクトルを作製する際、巻回部の内部における第一スペーサの位置が固定され易い。従って、モールド部材を構成する樹脂が巻回部の内部に充填されたときに、第一スペーサが動き難い。
【0019】
<4>上記<1>から<3>のいずれかに記載されるリアクトルにおいて、
前記第一スペーサの厚さは0.5mm以上2.0mm以下であっても良い。
【0020】
第一スペーサの厚さが0.5mm以上であれば、巻回部と内側コア部との電気絶縁距離が十分に確保される。第一スペーサの厚さが2.0mm以下であれば、内側コア部の熱が巻回部に逃げ易い。従って、リアクトルの放熱性が向上する。第一スペーサの厚さが2.0mm以下であることは、巻回部が小さいことを意味する。従って、第一スペーサの厚さが2.0mm以下であるリアクトルは小型である。
【0021】
<5>上記<1>から<4>のいずれかに記載されるリアクトルにおいて、
前記第一の隙間の幅は0.5mm以上4.0mm以下であっても良い。
【0022】
第一の隙間の幅は、内側コア部の外周面と巻回部の内周面との距離である。第一の隙間の幅が0.5mm以上であれば、モールド部材を形成する際、モールド部材を構成する樹脂が第一の隙間に配置され易い。第一の隙間の幅が4.0mm以下であれば、内側コア部の熱が巻回部に逃げ易い。従って、リアクトルの放熱性が向上する。第一の隙間の幅が4.0mm以下であることは、巻回部が小さいことを意味する。従って、第一の隙間の幅が4.0mm以下であるリアクトルは小型である。
【0023】
<6>上記<1>から<5>のいずれかに記載されるリアクトルにおいて、
前記第二の隙間の幅は0.8mm以上4.0mm以下であっても良い。
【0024】
第二の隙間の幅が0.8mm以上であれば、モールド部材を形成する際、第二の隙間にモールド部材を構成する樹脂が配置され易い。第二の隙間の幅が4.0mm以下であれば、第二の隙間における磁束の漏れが低減される。そのため、漏れ磁束による損失が低減される。
【0025】
<7>上記<1>から<6>のいずれかに記載されるリアクトルにおいて、
前記磁性コアは、
前記外側コア部の一部と前記第一コア部とを含む第一コア片と、
前記外側コア部の一部と前記第二コア部とを含む第二コア片と、を組み合わせて構成されていても良い。
【0026】
磁性コアが二つのコア片によって構成されることで、リアクトルを作製する際、磁性コアをコイルに組み付ける作業が容易になる。従って、リアクトルの生産性が向上する。
【0027】
<8>実施形態に係るコンバータは、上記<1>から<7>のいずれかに記載のリアクトルを備える。
【0028】
実施形態に係るリアクトルは小型である。従って、実施形態に係るリアクトルを備えるコンバータも小型である。実施形態に係るリアクトルは放熱性に優れる。従って、実施形態に係るリアクトルを備えるコンバータは、安定して動作する。
【0029】
<9>実施形態に係る電力変換装置は、上記<8>に記載されるコンバータを備える。
【0030】
実施形態に係るコンバータを備える電力変換装置は、小型で、安定して動作する。
【0031】
[本開示の実施形態の詳細]
以下、本開示のリアクトル、コンバータ、および電力変換装置の実施形態を図面に基づいて説明する。図中の同一符号は同一名称物を示す。なお、本発明は実施形態に示される構成に限定されるわけではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内の全ての変更が含まれることを意図する。
【0032】
<実施形態1>
図1および図2に示される本例のリアクトル1は、コイル2と磁性コア3と第一スペーサ4とモールド部材5とを備える。本例の特徴の一つは、第一スペーサ4の配置および形状、ならびにモールド部材5の形成状態にある。以下、本例のリアクトル1の詳細を説明する。
【0033】
≪コイル≫
コイル2は、図2に示されるように、少なくとも一つの巻回部21を有する。本例のコイル2は、一つの巻回部21を備える。巻回部21は巻線を螺旋状に巻回して構成される。巻線は、公知の巻線を利用できる。本形態の巻線は、絶縁被覆を有する導体線からなる被覆平角線である。導体線は例えば、銅製の平角線で構成されている。絶縁被覆は例えば、エナメルからなる。本例の巻回部21は、被覆平角線をエッジワイズ巻きしたエッジワイズコイルである。
【0034】
巻回部21の形状は角筒形状である。すなわち、本例の巻回部21の端面形状は矩形枠状である。本例の巻回部21の角部は丸められている。巻回部21の形状が角筒形状であることで、巻回部が同じ断面積の円筒状である場合に比較して、巻回部21と設置対象との接触面積が大きくなり易い。そのため、リアクトル1は、巻回部21を介して設置対象に放熱し易い。また、設置対象に対する巻回部21の設置状態が安定し易い。
【0035】
ここで、コイル2を基準にしてリアクトル1における方向を規定する。まず、巻回部21の軸線に沿って巻回部21の第一の端部から第二の端部に向かう方向がX1方向である。巻回部21の第一の側面から第二の側面に向かう方向がY1方向である。巻回部21の底面から上面に向かう方向がZ1方向である。X1方向とY1方向とZ1方向は互いに直交している。X2方向、Y2方向、およびZ2方向はそれぞれ、X1方向の反対方向、Y1方向の反対方向、およびZ1方向の反対方向である。
【0036】
本例では、巻回部21のX1方向に配置される巻線の端部22は、巻回部21からX1方向に向かって引き出されている。また、本例では、巻回部21のX2方向に配置される端部23は、Y2方向に向かって引き出されている。端部22,23では絶縁被覆が剥がされて導体線が露出している。露出した導体線には、図示しない端子部材が接続される。
【0037】
本例とは異なり、巻回部21が例えば二つある場合、二つの巻回部21はそれぞれ独立した電源につながっていても良いし、一つの電源につながっていても良い。
【0038】
≪磁性コア≫
磁性コア3は、その内部に閉磁路が形成される磁性体である。磁性コア3は、圧粉成形体または複合材料の成形体である。磁性コア3は、圧粉成形体からなるコア片と、複合材料の成形体からなるコア片とを組み合わせて構成しても良いし、圧粉成形体からなるコア片の外周を複合材料で覆うことで構成しても良い。
【0039】
圧粉成形体は、軟磁性粉末を含む原料粉末を加圧成形したものである。軟磁性粉末は例えば、純鉄または鉄合金である。鉄合金は例えば、Fe(鉄)-Si(シリコン)合金、またはFe-Ni(ニッケル)合金である。原料粉末には潤滑剤が含まれていても良い。圧粉成形体における軟磁性粉末の含有量は、圧粉成形体全体を100体積%としたとき、例えば80体積%超、さらには85体積%以上である。
【0040】
複合材料の成形体は、軟磁性粉末と未固化の樹脂との混合物を金型に充填し、樹脂を固化させたものである。複合材料の成形体では、軟磁性粉末が樹脂中に分散されている。樹脂は例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、液晶ポリマー(LCP)、ナイロン6やナイロン66といったポリアミド(PA)樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン(ABS)樹脂である。樹脂は、不飽和ポリエステルに炭酸カルシウムやガラス繊維が混合されたBMC(Bulk molding compound)、ミラブル型シリコーンゴム、ミラブル型ウレタンゴムでも良い。複合材料における軟磁性粉末の含有量は、複合材料全体を100体積%としたとき、例えば30体積%以上80体積%以下である。複合材料における軟磁性粉末の含有量はさらに、50体積%以上、60体積%以上、または70体積%以上でも良い。
【0041】
磁性コア3は、内側コア部31と外側コア部32とを備える。内側コア部31は、コイル2の巻回部21の内部に配置され、巻回部21の軸線に沿っている。内側コア部31の数は巻回部21の数と同じである。本例の巻回部21の数は一つなので、本例の内側コア部31の数も一つである。本例では、磁性コア3のうち、巻回部21の軸線に沿った部分の両端部が巻回部21の端面から突出している。その突出する部分も内側コア部31の一部である。
【0042】
内側コア部31の形状は、四角柱形状である。本例の巻回部21は角筒形状であるため、内側コア部31の形状は巻回部21の内部形状に沿った形状である。この内側コア部31は、第一コア部311と第二コア部312とで構成されている。図4に示されるように、内側コア部31と巻回部21との間には隙間8が形成されている。この隙間8の一部は、後述する第一スペーサ4によってふさがれている。隙間8のうち、第一スペーサ4によってふさがれていない第一の隙間81には、後述するモールド部材5の一部が配置されている。
【0043】
第一の隙間81の幅W1は例えば、0.5mm以上4.0mm以下である。幅W1が0.5mm以上であれば、モールド部材5を形成する際、モールド部材5を構成する樹脂が第一の隙間81に配置され易い。幅W1が4.0mm以下であれば、内側コア部31の熱が巻回部21に逃げ易い。そのため、リアクトル1の放熱性が向上する。幅W1が4.0mm以下であれば、巻回部21の内寸を小さくでき、それに伴い巻回部21の外寸を小さくできる。従って、幅W1が4.0mm以下であるリアクトル1は小型である。さらに幅W1は0.8mm以上3.0mm以下でも良い。
【0044】
図3に示されるように、第一コア部311の第一端面311Eは、巻回部21の内部に配置さている。同様に、第二コア部312の第二端面312Eも、巻回部21の内部に配置されている。第一端面311Eと第二端面312Eとは、内側コア部31の軸線に沿った方向に離れている。すなわち、第一端面311Eと第二端面312Eとの間に第二の隙間82が形成されている。第二の隙間82には、後述するモールド部材5の一部が配置される。第二の隙間82に配置されたモールド部材5は、磁性コア3の磁気特性を調整するギャップとして機能する。
【0045】
第二の隙間82の幅W2は例えば、0.8mm以上4.0mm以下である。幅W2が0.8mm以上であれば、モールド部材5を形成する際、第二の隙間82にモールド部材5を構成する樹脂が入り込み易い。幅W2が4.0mm以下であれば、第二の隙間82における磁束の漏れが低減される。そのため、漏れ磁束による損失が低減される。さらに幅W2は1.0mm以上3.0mm以下でも良い。
【0046】
外側コア部32は、磁性コア3のうち、巻回部21の外部に配置される部分である。外側コア部32の形状は、内側コア部31の端部をつなぐ形状であれば特に限定されない。図2に示されるように、本例の外側コア部32は、巻回部21におけるX1方向の端面に臨むエンドコア部と、巻回部21におけるX2方向の端面に臨むエンドコア部と、巻回部21におけるY1方向の側面に臨むサイドコア部と、巻回部21におけるY2方向の側面に臨むサイドコア部とで構成されている。この外側コア部32は、Z2方向に見たときに矩形環状である。本例とは異なり、サイドコア部の数は一つでも良い。その他、巻回部21の数と内側コア部31の数が二つである場合、外側コア部32は例えば、二つの内側コア部31,31のX1方向の端部をつなぐエンドコア部と、二つの内側コア部31,31のX2方向の端部をつなぐエンドコア部とで構成される。
【0047】
本例の磁性コア3は、第一コア片3Aおよび第二コア片3Bによって構成される。第一コア片3Aは、内側コア部31の第一コア部311と、外側コア部32の一部とを含む。第一コア片3Aは、Z2方向に見て略『T』字形状である。第二コア片3Bは、内側コア部31の第二コア部312と、外側コア部32の一部とを含む。第二コア片3Bは、Z2方向に見て略『E』字形状である。コア片3A,3Bの形状は特に限定されない。例えば、第一コア片3Aと第二コア片3Bの両方が、Z2方向に見て略『E』字形状でも良い。その他、磁性コア3は、三つ以上の分割コアから構成されていても良い。巻回部21の数と内側コア部31の数が二つである場合、第一コア片3Aおよび第二コア片3Bの各々は、例えばU字状である。
【0048】
本例の第一コア片3Aは圧粉成形体によって構成されている。本例の第二コア片3Bは複合材料によって構成されている。
【0049】
≪第一スペーサ≫
第一スペーサ4は、図3に示されるように、巻回部21と内側コア部31との間に配置される。本例の第一スペーサ4は、内側コア部31の軸線に沿った全長とほぼ同じ長さを有する。本例とは異なり、本例の第一スペーサ4の長さは、内側コア部31の全長よりも短くても良い。
【0050】
第一スペーサ4は、図4に示されるように、内側コア部31の4つの外周面31a,31b,31c,31dのうち、3つの外周面31a,31b,31cに向き合う内周面41を備える樋形状を有する。内側コア部31の外周面31a,31b,31c,31dとは、巻回部21の内周面に向き合う面である。外周面31aは、Z2方向を向く面である。外周面31bはY1方向を向く面である。外周面31cはY2方向を向く面である。外周面31dはZ1方向を向く面である。
【0051】
第一スペーサ4の内周面41は、外周面31aの全面と、外周面31bの少なくとも一部と、外周面31cの少なくとも一部を覆っている。つまり、樋形状を有する第一スペーサ4は、四角柱形状の内側コア部31の3つの外周面31a,31b,31cを押えている。そのため、巻回部21内における内側コア部31が所定位置に配置される。従って、モールド部材5を構成する樹脂が第一の隙間81に充填される際、内側コア部31の位置が動き難い。
【0052】
上述したように、第一スペーサ4は、内側コア部31の外周面31aの全面と、外周面31b,31cの少なくとも一部に向き合う内周面41を有する。つまり、第一スペーサ4は、内側コア部31の周長の25%超を覆っている。言い換えれば、内側コア部31の軸線に直交する横断面における第一スペーサ4の内周面41の長さは、内側コア部31の周長の25%超である。一方、第一スペーサ4は、内側コア部31の外周面31dを覆っていない。従って、上記横断面における第一スペーサ4の内周面41の長さは、内側コア部31の周長の75%以下である。上記横断面における第一スペーサ4の内周面41の長さは例えば、内側コア部31の周長の30%以上でも良いし、35%以上でも良いし、45%以上でも良いし、65%以上でも良い。特に、上記横断面における第一スペーサ4の内周面41の長さが、内側コア部31の周長の45%以上であれば、第二の隙間82の大きさによらず、第二の隙間82にモールド部材5が入り込み易い。
【0053】
本例では、第一スペーサ4と内側コア部31との間、および第一スペーサ4と巻回部21との間には実質的に隙間が形成されていない。本明細書において『二つの部材の間に実質的に隙間が形成されていない』とは、二つの部材の間の隙間が0.1mm以下であることを意味する。本例とは異なり、第一スペーサ4と内側コア部31との間、および第一スペーサ4と巻回部21との間に隙間が形成されていても良い。その場合の隙間は例えば0.5mm以下である。
【0054】
第一スペーサ4の厚さtは例えば、0.5mm以上2.0mm以下である。厚さtが0.5mm以上であれば、巻回部21と内側コア部31との電気絶縁距離が十分に確保される。厚さtが2.0mm以下であれば、内側コア部31の熱が巻回部21に逃げ易い。そのため、リアクトル1の放熱性が向上する。厚さtが2.0mm以下であれば、巻回部21の内寸を小さくでき、それに伴い巻回部21の外寸を小さくできる。従って、厚さtが2.0mm以下であるリアクトル1は小型である。厚さtはさらに、0.8mm以上2.0mm以下でも良い。
【0055】
第一スペーサ4は、絶縁性の材料によって構成されている。当該材料は例えば、PPS樹脂、PTFE樹脂、LCP、PA樹脂、PBT樹脂、またはABS樹脂である。その他、第一スペーサ4の材料は例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、またはシリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂であっても良い。これらの樹脂にセラミックスフィラーが含有されていても良い。セラミックスフィラーは例えば、アルミナまたはシリカなどの非磁性粉末である。
【0056】
本例の第一スペーサ4は、後述する第二スペーサ6に一体化されている。この場合、第二スペーサ6の材料は、第一スペーサ4の材料と同じである。第二スペーサ6の構成については後述する。
【0057】
≪モールド部材≫
モールド部材5は、図1に示されるように、図2に示されるコイル2と磁性コア3とを一体化する。モールド部材5は、コイル2の外周面の少なくとも一部、および磁性コア3の外周面の少なくとも一部を覆っている。本例では、コイル2の巻回部21の一部がモールド部材5から露出している。巻回部21におけるモールド部材5から露出する部分は、リアクトル1の放熱性の向上に寄与する。
【0058】
モールド部材5は例えば、PPS樹脂、PTFE樹脂、LCP、PA樹脂、PBT樹脂、ABS樹脂などの熱可塑性樹脂によって構成される。その他、モールド部材5は、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、シリコーン樹脂などの熱硬化性樹脂などで構成されていても良い。これらの樹脂にセラミックスフィラーが含有されることで、モールド部材5の放熱性が向上される。セラミックスフィラーは例えば、アルミナまたはシリカなどの非磁性粉末である。
【0059】
モールド部材5の一部は、図3に示されるように、第一の隙間81および第二の隙間82に配置される。モールド部材5を形成する場合、コイル2と磁性コア3との組物を金型に配置し、モールド部材5を構成する樹脂を金型内に充填する。樹脂は、図3に破線矢印で示されるように、巻回部21の端部における第一の隙間81から巻回部21の内部に充填される。さらに、樹脂は、下向きの破線矢印で示されるように、第一の隙間81から第二の隙間82に充填される。
【0060】
≪第二スペーサ≫
本例のリアクトル1はさらに、図2に示されるように、二つの第二スペーサ6,7を備える。
【0061】
第二スペーサ6,7は、貫通孔60,70を有する枠状の部材である。第二スペーサ6,7は、巻回部21の端面と外側コア部32のエンドコア部との間に配置される。第二スペーサ6,7によって、巻回部21と外側コア部32との間の電気絶縁が確保される。第二スペーサ6,7は、第一スペーサ4に使用可能な材料によって構成される。貫通孔60,70は、内側コア部31の断面よりも大きく、巻回部21の内周よりも小さい。貫通孔60,70には内側コア部31が貫通される。
【0062】
第二スペーサ6,7は、端部22,23が通されるスロット61,71を備える。スロット61はX1方向に延びる孔を有する。第二スペーサ6のスロット61に端部22が通されることで、コイル2に対する第二スペーサ6の位置が決まる。スロット71はY2方向に延びる孔を有する。第二スペーサ7のスロット71に端部23が通されることで、コイル2に対する第二スペーサ7の位置が決まる。
【0063】
第二スペーサ6,7の貫通孔60,70の内周面には、貫通孔60,70の内方に向かって突出する押え部62,72が設けられている。この押え部62,72は、図3に示されるように、巻回部21と外側コア部32との間に第二スペーサ6,7が配置されたとき、内側コア部31の外周面31dを押える。すなわち、内側コア部31は、第一スペーサ4の内周面41と、第二スペーサ6,7の押え部62,72とによって四方向から支持される。従って、巻回部21の内部における内側コア部31の位置が決まる。
【0064】
本例では、この第二スペーサ6と第一スペーサ4とが一体物である。第一スペーサ4の端部は、第二スペーサ7の貫通孔70にはまり込む。この嵌め合いによって、第一スペーサ4と第二スペーサ6と第二スペーサ7とが機械的に連結され、互いの位置が決まる。この場合、リアクトル1を作製する際、巻回部21の内部における第一スペーサ4の位置が固定され易い。そのため、モールド部材5を構成する樹脂が巻回部21の内部に充填されたとき、第一スペーサ4が動き難い。
【0065】
本例とは異なり、第二スペーサ6と第二スペーサ7のそれぞれに第一スペーサ4が一体化されていても良い。例えば、図3の第一スペーサ4の一部が第二スペーサ6と一体物であり、第一スペーサ4の残部が第二スペーサ7と一体物であっても良い。その場合、巻回部21の内部において、第二スペーサ6に一体化された第一スペーサ4の端面と、第二スペーサ7に一体化された第一スペーサ4の端面とが付き合わされる。
【0066】
≪リアクトルの製造方法≫
上記リアクトル1を作製する場合、コイル2と磁性コア3と第一スペーサ4と第二スペーサ6,7とを組み合わせた組物を作製し、その組物を金型内に配置する。次いで、金型内に、モールド部材5の材料となる樹脂を充填する。樹脂は、図3の破線矢印に示されるように、巻回部21の端部から第一の隙間81の内部に入り込む。このとき、第一スペーサ4によって隙間8を狭くすることで構成された第一の隙間81では、樹脂の圧力が高く維持される。そのため、金型内に充填する樹脂の圧力を高くしなくとも、第一の隙間81に樹脂が充填され易い。圧力が高く保たれた樹脂は、第一の隙間81から第二の隙間82に勢いよく入り込む。そのため、第二の隙間82の全体に樹脂が行きわたり、樹脂が固化することで第二の隙間82に形成されたモールド部材5に空隙などの欠陥が形成され難い。モールド部材5は、巻回部21の外部から第一の隙間81を通って第二の隙間82までつながっている。しかも第二の隙間82に配置されたモールド部材5は、第一コア部311と第二コア部312とを接着する。従って、モールド部材5によってコイル2と磁性コア3とが強固に一体化されたリアクトル1が作製される。
【0067】
第二の隙間82に配置されたモールド部材5は熱の伝達路として機能し、内側コア部31の熱を内側コア部31の外部に逃がす。第二の隙間82の全体に配置されるモールド部材5は、リアクトル1の放熱性を向上させる。特に、本例のリアクトル1では、巻回部21の内部における第二の隙間82に配置されるモールド部材5に空隙などの欠陥が形成され難い。そのため、欠陥に起因する内側コア部31の内部から外部への熱伝導性の低下、およびモールド部材5の樹脂ギャップとしての機能の低下を抑制できる。
【0068】
本例では、モールド部材5を形成する際、第一スペーサ4によって巻回部21の内部における内側コア部31の位置が決まっている。そのため、内側コア部31と巻回部21との距離を小さくできる、すなわち巻回部21のサイズを小さくできる。従って、本例のリアクトル1は小型でかつ軽量である。
【0069】
<実施形態2>
≪コンバータ・電力変換装置≫
上記実施形態に係るリアクトル1は、以下の通電条件を満たす用途に利用できる。通電条件としては、例えば、最大直流電流が100A以上1000A以下程度であり、平均電圧が100V以上1000V以下程度であり、使用周波数が5kHz以上100kHz以下程度である。実施形態に係るリアクトル1は、代表的には電気自動車やハイブリッド自動車などの車両などに載置されるコンバータの構成部品、またはこのコンバータを備える電力変換装置の構成部品に利用される。
【0070】
ハイブリッド自動車や電気自動車などの車両1200は、図5に示すようにメインバッテリ1210と、メインバッテリ1210に接続される電力変換装置1100と、メインバッテリ1210からの供給電力により駆動して走行に利用されるモータ1220とを備える。モータ1220は、代表的には、3相交流モータであり、走行時、車輪1250を駆動し、回生時、発電機として機能する。ハイブリッド自動車の場合、車両1200は、モータ1220に加えてエンジン1300を備える。図5では、車両1200の充電箇所はインレットであるが、プラグを備える形態でも良い。
【0071】
電力変換装置1100は、メインバッテリ1210に接続されるコンバータ1110と、コンバータ1110に接続されて、直流と交流との相互変換を行うインバータ1120とを有する。この例に示すコンバータ1110は、車両1200の走行時、200V以上300V以下程度のメインバッテリ1210の入力電圧を400V以上700V以下程度にまで昇圧して、インバータ1120に給電する。コンバータ1110は、回生時、モータ1220からインバータ1120を介して出力される入力電圧をメインバッテリ1210に適合した直流電圧に降圧して、メインバッテリ1210に充電させている。入力電圧は、直流電圧である。インバータ1120は、車両1200の走行時、コンバータ1110で昇圧された直流を所定の交流に変換してモータ1220に給電し、回生時、モータ1220からの交流出力を直流に変換してコンバータ1110に出力している。
【0072】
コンバータ1110は、図6に示すように複数のスイッチング素子1111と、スイッチング素子1111の動作を制御する駆動回路1112と、リアクトル1115とを備え、ON/OFFの繰り返しにより入力電圧の変換を行う。入力電圧の変換とは、ここでは昇降圧を行う。スイッチング素子1111には、電界効果トランジスタ、絶縁ゲートバイポーラトランジスタなどのパワーデバイスが利用される。リアクトル1115は、回路に流れようとする電流の変化を妨げようとするコイルの性質を利用し、スイッチング動作によって電流が増減しようとしたとき、その変化を滑らかにする機能を有する。リアクトル1115として、実施形態に係るリアクトル1を備える。
【0073】
車両1200は、コンバータ1110の他、メインバッテリ1210に接続された給電装置用コンバータ1150や、補機類1240の電力源となるサブバッテリ1230とメインバッテリ1210とに接続され、メインバッテリ1210の高圧を低圧に変換する補機電源用コンバータ1160を備える。コンバータ1110は、代表的には、DC-DC変換を行うが、給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160は、AC-DC変換を行う。給電装置用コンバータ1150のなかには、DC-DC変換を行うものもある。給電装置用コンバータ1150や補機電源用コンバータ1160のリアクトルに、実施形態に係るリアクトル1などと同様の構成を備え、適宜、大きさや形状などを変更したリアクトルを利用できる。また、入力電力の変換を行うコンバータであって、昇圧のみを行うコンバータや降圧のみを行うコンバータに、実施形態に係るリアクトル1などを利用することもできる。
【0074】
<試験例>
試験例では、株式会社JSOLのMoldex3Dによって、第二の隙間82への樹脂の充填状態に及ぼす第一スペーサ4の影響を調べた。Moldex3Dは、樹脂流動解析ソフトウェアである。
【0075】
調べた試料の主要部の寸法は以下の通りである。幅W1は第一の隙間81の幅である。幅W2は第二の隙間82の幅である。高さ割合は、内側コア部31のZ1方向の長さを100%としたとき、第一スペーサ4が内側コア部31の外周面31b、31cを覆う割合である。被覆割合は、内側コア部31の軸線に直交する横断面において、内側コア部31の周長を100%としたとき、第一スペーサ4が内側コア部31を覆う割合である。
・試料1…幅W1=2.0mm、幅W2=2.0mm、高さ割合=80%、被覆割合=65%
・試料2…幅W1=2.0mm、幅W2=2.0mm、高さ割合=40%、被覆割合=45%
・試料3…幅W1=2.0mm、幅W2=2.0mm、高さ割合=20%、被覆割合=35%
・試料4…幅W1=2.0mm、幅W2=1.5mm、高さ割合=80%、被覆割合=65%
・試料5…幅W1=2.0mm、幅W2=1.5mm、高さ割合=40%、被覆割合=45%
・試料6…幅W1=2.0mm、幅W2=1.5mm、高さ割合=20%、被覆割合=35%
【0076】
試料1から試料5では、第二の隙間82全体に樹脂が十分に充填されることが分かった。一方、試料6では、第二の隙間82におけるZ2方向の端部において樹脂が充填されていない部分が形成されることが分かった。試料1から試料5における内外の圧力差を調べたところ、試料1から試料3における内外の圧力差は0.4MPa以下、試料4および試料5における内外の圧力差は2.0MPa以下であった。『内外の圧力差』とは、外側コア部32の外周における樹脂の圧力と、第二の隙間82のZ1方向の中央における樹脂の圧力との圧力差である。一方、試料6における内外の圧力差は2.0MPa超であった。これらのことから、上記内外の圧力差が2MPa以下であることが、第二の隙間82全体に樹脂が充填されることの指標であることが分かった。
【0077】
試験の結果から、第一スペーサ4が内側コア部31の周長の45%以上を覆う大きさを有すれば、第二の隙間82の厚さにかかわらず、第二の隙間82に十分に樹脂を充填できることが分かった。一方、第二の隙間82の幅W2が2.0mmである試料3と、第二の隙間82の幅W2が1.5mmである試料6との比較から、第二の隙間82の幅W2によっては、第一スペーサ4が内側コア部31の周長の45%以下を覆う大きさであっても、第二の隙間82に十分に樹脂を充填できる可能性があることが分かった。
【符号の説明】
【0078】
1 リアクトル
2 コイル
21 巻回部
22,23 端部
3 磁性コア
3A 第一コア片
3B 第二コア片
31 内側コア部
31a,31b,31c,31d 外周面
311 第一コア部
311E 第一端面
312 第二コア部
312E 第二端面
32 外側コア部
4 第一スペーサ
41 内周面
5 モールド部材
6,7 第二スペーサ
60,70 貫通孔
61,71 スロット
62,72 押え部
8 隙間
81 第一の隙間
82 第二の隙間
1100 電力変換装置
1110 コンバータ
1111 スイッチング素子
1112 駆動回路
1115 リアクトル
1120 インバータ
1150 給電装置用コンバータ
1160 補機電源用コンバータ
1200 車両
1210 メインバッテリ
1220 モータ
1230 サブバッテリ
1240 補機類
1250 車輪
1300 エンジン
t 厚さ
W1,W2 幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2024-03-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】図3
【補正方法】変更
【補正の内容】
図3