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特開2024-14365電気化学顕微鏡用探針および電気化学顕微鏡用探針の製造方法
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  • 特開-電気化学顕微鏡用探針および電気化学顕微鏡用探針の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024014365
(43)【公開日】2024-02-01
(54)【発明の名称】電気化学顕微鏡用探針および電気化学顕微鏡用探針の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01Q 60/60 20100101AFI20240125BHJP
   G01Q 60/48 20100101ALI20240125BHJP
   G01Q 60/44 20100101ALI20240125BHJP
【FI】
G01Q60/60 101
G01Q60/48
G01Q60/44 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022117137
(22)【出願日】2022-07-22
(71)【出願人】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100152272
【弁理士】
【氏名又は名称】川越 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【弁理士】
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】熊谷 明哉
(72)【発明者】
【氏名】井田 大貴
(72)【発明者】
【氏名】堀口 佳子
(57)【要約】
【課題】探針の先端部の内径が電気化学顕微鏡の測定に用いることができる程度に小さく、かつ、耐薬品性に優れた電気化学顕微鏡用探針および電気化学顕微鏡用探針の製造方法を提供する。
【解決手段】電気化学顕微鏡用探針は、ガラス基材からなる、円筒状の円筒部10と、円筒部10と連続して接続され、円筒部から端部Eに向かって内径が小さくなっていく先端部20と、端部Eに配置された開口部30と、を備え、開口部30の内径が、200nm以下であり、先端部20の外表面が、高耐薬品性有機樹脂を含有する、樹脂組成物からなり、高耐薬品性有機樹脂は、30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の重量変化率が±5%以内である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材からなる、円筒状の円筒部と、
前記円筒部と連続して接続され、前記円筒部から端部に向かって内径が小さくなっていく先端部と、
前記端部に配置された開口部と、
を備え、
前記開口部の内径が、200nm以下であり、
前記先端部の外表面が、高耐薬品性有機樹脂を含有する、樹脂組成物からなり、
前記高耐薬品性有機樹脂は、30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の重量変化率が±5%以内となる樹脂である、電気化学顕微鏡用探針。
【請求項2】
前記先端部が
前記ガラス基材と、
前記ガラス基材上に設けられ、前記樹脂組成物からなる樹脂組成物層と、
を備える、請求項1に記載の電気化学顕微鏡用探針。
【請求項3】
前記樹脂組成物層の平均厚さが前記開口部の内径の1/2以下である、請求項2に記載の電気化学顕微鏡用探針。
【請求項4】
前記先端部の内径が1μm以下となる領域において、前記先端部が前記樹脂組成物からなる、請求項1に記載の電気化学顕微鏡用探針。
【請求項5】
前記高耐薬品性有機樹脂がフッ素樹脂である、請求項1または2に記載の電気化学顕微鏡用探針。
【請求項6】
前記ガラス基材が、鉛ドープされたソーダガラス、ボロシリケイト、または石英である、請求項1または2に記載の電気化学顕微鏡用探針。
【請求項7】
円筒状の円筒部と、
前記円筒部と連続して接続され、前記円筒部から端部に向かって内径が小さくなっていく先端部と、
前記端部に配置され、内径が200nm以下である開口部と、
を備える中空部材の前記先端部に、高耐薬品性有機樹脂を含有する樹脂組成物からなる樹脂組成物層を形成し、
前記中空部材がガラス基材からなり、
前記高耐薬品性有機樹脂は、30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の重量変化率が±5%以内となる樹脂である、電気化学顕微鏡用探針の製造方法。
【請求項8】
前記高耐薬品性有機樹脂がフッ素樹脂である、請求項7に記載の電気化学顕微鏡用探針の製造方法。
【請求項9】
前記ガラス基材が、鉛ドープされたソーダガラス、ボロシリケイト、または石英である、請求項7または8に記載の電気化学顕微鏡用探針の製造方法。
【請求項10】
前記樹脂組成物層の形成がスプレー法によって行われる、請求項7または8に記載の電気化学顕微鏡用探針の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂組成物層の形成後に、前記先端部の前記ガラス基材の少なくとも一部を溶解させる、請求項7または8に記載の電気化学顕微鏡用探針の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気化学顕微鏡(走査型電気化学顕微鏡、走査型イオンコンダクタンス顕微鏡、走査型電気化学セル顕微鏡、ナノ電気化学セル顕微鏡、電気化学用走査型トンネル顕微鏡、電気化学用走査型原子間力顕微鏡、及びこれらと走査型プローブ顕微鏡の複合機を以下、電気化学顕微鏡と呼称する)用探針および電気化学顕微鏡用探針の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ナノスケール、マイクロスケールの電気化学反応を検出し、可視化する分析機器として、電気化学顕微鏡が知られている。
【0003】
電気化学顕微鏡では、内部を電解質で満たしたマイクロガラスピペットを探針として用いる。電解液を充填した探針の内部および試料を設置した電解液中に電極を配置し、両電極間に生じたイオン電流を信号として用いる。このイオン電流は、探針の先端が試料に近接して遮蔽されることで減少する。この現象を利用し、電極を走査し、試料表面の立体形状を画像化することができる。電気化学顕微鏡は、リチウムイオン電池、燃料電池、触媒などの電気化学反応を分析することに用いられることが期待される。
【0004】
電気化学顕微鏡の解像度は、探針の内径に依存する。例えば、特許文献1にボロシリケイトや石英からなる探針が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010-261923号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、ボロシリケイトまたは石英を用いた探針は脆いという問題がある。また、ボロシリケイトまたは石英を用いた探針は、強アルカリ、強酸環境下において、電気化学顕微鏡での計測が困難であるという問題がある。
【0007】
探針の耐薬品性を向上するためには、耐薬品性の高い樹脂からなる探針が考えられる。しかし、従来のピペットの先鋭化で用いられていたレーザープラーなどでは、樹脂が焦げてしまい、電気化学顕微鏡に必要な内径の十分に小さい探針を得ることができないという問題があった。
【0008】
本発明は、上記の事情を鑑みなされた発明であり、探針先端の開口部の内径が電気化学顕微鏡の測定に用いることができる程度に小さく、かつ、耐薬品性に優れた電気化学顕微鏡用探針および電気化学顕微鏡用探針の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明は以下の手段を提案している。
(1)本発明の態様1の電気化学顕微鏡用探針は、
ガラス基材からなる、円筒状の円筒部と、
前記円筒部と連続して接続され、前記円筒部から端部に向かって内径が小さくなっていく先端部と、
前記端部に配置された開口部と、
を備え、
前記開口部の内径が、200nm以下であり、
前記先端部の外表面が、高耐薬品性有機樹脂を含有する、樹脂組成物からなり、
前記高耐薬品性有機樹脂は、30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の重量変化率が±5%以内となる樹脂である。
(2)本発明の態様2は、態様1の電気化学顕微鏡用探針において、
前記先端部が
前記ガラス基材と、
前記ガラス基材上に設けられ、前記樹脂組成物からなる樹脂組成物層と、
を備えてもよい。
(3)本発明の態様3は、態様2の電気化学顕微鏡用探針において、
前記樹脂組成物層の平均厚さが前記開口部の内径の1/2以下であってもよい。
(4)本発明の態様4は、態様1の電気化学顕微鏡用探針において、前記先端部の内径が1μm以下となる領域において、前記先端部が前記樹脂組成物からなってもよい。
(5)本発明の態様5は、態様1~4のいずれか1つの電気化学顕微鏡用探針において、前記高耐薬品性有機樹脂がフッ素樹脂であってもよい。
(6)本発明の態様6は、態様1~5のいずれか1つの電気化学顕微鏡用探針において、前記ガラス基材が、鉛ドープされたソーダガラス、ボロシリケイト、または石英であってもよい。
(7)本発明の態様7の電気化学顕微鏡用探針の製造方法は、
円筒状の円筒部と、
前記円筒部と連続して接続され、前記円筒部から端部に向かって内径が小さくなっていく先端部と、
前記端部に配置され、内径が200nm以下である開口部と、
を備える中空部材の前記先端部に、高耐薬品性有機樹脂を含有する樹脂組成物からなる樹脂組成物層を形成し、
前記中空部材がガラス基材からなり、
前記高耐薬品性有機樹脂は、30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の重量変化率が±5%以内となる樹脂である。
(8)本発明の態様8は、態様7の電気化学顕微鏡用探針の製造方法において、前記高耐薬品性有機樹脂がフッ素樹脂であってもよい。
(9)本発明の態様9は、態様7または8の電気化学顕微鏡用探針の製造方法において、前記ガラス基材が、鉛ドープされたソーダガラス、ボロシリケイト、または石英であってもよい。
(10)本発明の態様10は、態様7~9のいずれか1つの電気化学顕微鏡用探針の製造方法において、
前記樹脂組成物層の形成がスプレー法によって行われてもよい。
(11)本発明の態様11は、態様7~10のいずれか1つに記載の電気化学顕微鏡用探針の製造方法は、
前記樹脂組成物層の形成後に、前記先端部の前記ガラス基材の少なくとも一部を溶解させてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の上記態様によれば、探針先端の開口部の内径が電気化学顕微鏡の測定に用いることができる程度に小さく、かつ、耐薬品性に優れた電気化学顕微鏡用探針および電気化学顕微鏡用探針の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る電気化学顕微鏡用探針の概略断面図である。
図2図1に示す電気化学顕微鏡用探針の拡大断面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る電気化学顕微鏡用探針を製造するための中空部材の概略断面図である。
図4】本発明の別の実施形態に係る電気化学顕微鏡用探針の概略断面図である。
図5図4に示す電気化学顕微鏡用探針の拡大断面図である。
図6】実施例1および比較例1の耐薬品性試験結果を説明するための図である。
図7】実施例2および比較例1の浸漬時間と電流値との関係を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の電気化学顕微鏡用探針について、図面を用いて詳細に説明する。なお、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。また、以下の説明において例示される材料、寸法等は一例であって、本発明はそれらに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲で適宜変更して実施することが可能である。
【0013】
(第1実施形態)
図1は、第1実施形態に係る電気化学顕微鏡用探針100の概略断面図である。図2は、図1の電気化学顕微鏡用探針100の拡大断面図である。図1および図2に示すように、電気化学顕微鏡用探針100は、ガラス基材からなる円筒状の円筒部10と、円筒部10と連続して接続され、円筒部10から端部Eに向かって内径が小さくなっていく先端部20と、端部Eに配置される開口部30と、を備える。以下、各部について説明する。
【0014】
「円筒部」
円筒部10は、円筒状であり、ガラス基材からなる。円筒部は長手方向に略同一径で伸びる円筒状である。円筒部10の内径は、電気化学顕微鏡の測定が可能であれば、特に限定されない。例えば、0.5~2.0mmである。円筒部10の外径は、電気化学顕微鏡の測定が可能であれば、特に限定されない。円筒部10の外径は、例えば、0.90mm~3.00mmである。
【0015】
円筒部10を構成するガラス基材50は、特に限定されないが、例えば、鉛ドープされたソーダガラス、ボロシリケイト、または石英である。
【0016】
「先端部」
先端部20は、円筒部10と連続して接続され、円筒部10から端部Eに向かって内径が小さくなっている。先端部20の外表面は、高耐薬品性有機樹脂を含有する、樹脂組成物からなる。第1実施形態の先端部20は、ガラス基材50と、ガラス基材50の表面上(先端部20の外表面)に設けられた樹脂組成物層40と、を備える。
【0017】
<先端部のガラス基材>
第1実施形態において、先端部20のガラス基材50は、円筒部10のガラス基材と同一である。
【0018】
<先端部の樹脂組成物層>
樹脂組成物層40は、樹脂組成物からなる。樹脂組成物は、高耐薬品性有機樹脂を含有する。高耐薬品性有機樹脂は、30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の重量変化率が±5%以内となる樹脂である。高耐薬品性有機樹脂を30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の高耐薬品性有機樹脂の重量変化率が±5%以内であると、電気化学顕微鏡用探針100の耐薬品性が向上し、アルカリ環境下、酸環境下などでの測定が可能となる。また、ガラス基材上に樹脂組成物層40を形成することで、電気化学顕微鏡用探針100の柔軟性が向上する。より好ましくは、30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の重量変化率が±1%以内である樹脂である。高耐薬品性有機樹脂の重量変化率が低いほど、耐薬品性が高いので、重量変化率は0%が最も好ましい。樹脂組成物は、20℃~30℃で固体である。
【0019】
高耐薬品性有機樹脂としては、上記の重量変化率を満足するのであれば、特に限定されないが、例えば、高耐薬品性有機樹脂としては、フッ素樹脂が好ましい。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体(ETFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(EPE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。高耐薬品性有機樹脂は、これらを1種または2種以上合わせて用いてもよい。
【0020】
樹脂組成物中の高耐薬品性有機樹脂の含有量は、例えば、40質量%以上であることが好ましい。より好ましい樹脂組成物中の高耐薬品性有機樹脂の含有量は、60質量%以上である。さらに好ましい樹脂組成物中の高耐薬品性有機樹脂の含有量は、80質量%以上である。樹脂組成物中の高耐薬品性有機樹脂の含有量は、100質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、樹脂組成物中の高耐薬品性有機樹脂の含有量は、90質量%以下である。
【0021】
樹脂組成物中において、高耐薬品性有機樹脂の形態は特に限定されない。例えば、粒子状に樹脂組成物中に存在していてもよい。高耐薬品性有機樹脂が粒子状の場合は、その平均粒径は、例えば1μm以下が好ましい。より好ましい高耐薬品性有機樹脂の粒径は、200nm以下、さらに好ましくは、20nm以下であり、特に好ましくは5nm以下である。高耐薬品性有機樹脂の平均粒径は、例えば、JIS Z 8825:2013に準拠して、レーザー回折で測定することができる。
【0022】
樹脂組成物は、高耐薬品性有機樹脂とガラス基材との密着性を改善するバインダー樹脂をさらに含有してもよい。バインダー樹脂としては、特に限定されないが、アクリル樹脂、セルロース樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。バインダー樹脂も、耐薬品性を備えていることが好ましい。バインダ-樹脂の含有量は、電気化学顕微鏡用探針100の耐薬品性が低下しないのであれば、特に限定されない。例えば、バインダー樹脂の樹脂組成物中の含有量は、10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、バインダー樹脂の樹脂組成物中の含有量は、30質量%以上である。例えば、例えば、バインダー樹脂の樹脂組成物中の含有量は、60質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、バインダー樹脂の樹脂組成物中の含有量は、40質量%以下である。
【0023】
樹脂組成物は、用途に応じて、界面活性剤、分散剤、防錆剤、酸化防止剤、極圧剤、などを添加してもよい。
【0024】
樹脂組成物層40の平均厚さは、特に限定されない。樹脂組成物層40の平均厚さは、例えば、開口部の内径の1/2以下である。樹脂組成物層40の平均厚さの下限は4nm以上が好ましい。樹脂組成物層の平均厚さは、例えば、電気化学顕微鏡用探針100の断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察することで、測定することができる。
【0025】
「開口部」
開口部30は、端部Eに配置される。開口部30の内径Dは、10μm以下であることが好ましい。より好ましくは開口部30の内径Dは2μm以下である。内径は、開口部の内側の直径であり、開口部30の内側の形状が真円でない場合は、内側の2点間で最も長い長さを内径とする。内径Dの下限は特に限定されないが、例えば、1nm以上である。開口部30の内径Dが小さいほど、電気化学顕微鏡の空間解像度が向上するので好ましい。
【0026】
(電気化学顕微鏡用探針の製造方法)
次に、電気化学顕微鏡用探針100の製造方法について説明する。本実施形態に係る電気化学顕微鏡用探針100の製造方法において、ガラス基材からなる中空部材200の先端部21に、高耐薬品性有機樹脂を含有する樹脂組成物からなる樹脂組成物層40を形成する。樹脂組成物層40を形成する高耐薬品性有機樹脂は、30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の重量変化率が±5%以内となる樹脂である。以下、各要件について説明する。
【0027】
(中空部材)
図3は、中空部材200の概略断面図である。中空部材200は、円筒状の円筒部11と、円筒部11と連続して接続され、円筒部11から端部E1に向かって内径が小さくなっていく先端部21と、端部E1に配置された内径が200nmの開口部31と、を備える。中空部材は、電気化学顕微鏡用のガラス基材からなる探針を用いてもよいし、公知の方法で円筒状のガラスキャピラリーから製造してもよい。ガラスキャピラリーから製造する方法としては、たとえあ、レーザープラー装置を用い、レーザー照射強度、照射範囲、引張強さなどを制御することでピペットの先端形状を調整することができる。
【0028】
中空部材200を構成するガラス基材は、鉛ドープされたソーダガラス、ボロシリケイト、または石英であってもよい。開口部31の内径を小さくするには、石英が好ましい。
【0029】
(樹脂組成物層の形成)
中空部材200の先端部21に樹脂組成物層40を形成する。樹脂組成物層40の形成方法は特に限定されない。例えば、高耐薬品性有機樹脂が溶剤に分散または溶解した塗料を塗布することで形成してもよい。塗料を塗布する方法については、スプレー法、ディッピング法などが挙げられる。特にスプレー法が好ましい。
【0030】
「塗料」
本実施形態に係る電気化学顕微鏡用探針の製造方法に用いられる塗料は、溶剤と、溶剤中に分散または溶解する高耐薬品性有機樹脂とを含むことが好ましい。
【0031】
塗料中に分散または溶解する高耐薬品性有機樹脂としては、30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の重量変化率が±5%以内である樹脂である。高耐薬品性有機樹脂は、30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の重量変化率が±5%以内であると、電気化学顕微鏡用探針100の耐薬品性が向上し、アルカリ環境下、酸環境下などでの測定が可能となる。高耐薬品性有機樹脂としては、上記の重量変化率を満足するのであれば、特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂が好ましい。高耐薬品性有機樹脂として用いられるフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体(ETFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(EPE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。高耐薬品性有機樹脂は、これらを1種または2種以上合わせて用いてもよい。耐薬品性、柔軟性の観点から、溶剤中の高耐薬品性有機樹脂としては、特にポリエチレンテトラフルオロエチレンが好ましい。
【0032】
塗料中の全固形分に対する高耐薬品性有機樹脂の質量割合は、例えば、40質量%以上であることが好ましい。より好ましい塗料中の全固形分に対する高耐薬品性有機樹脂の質量割合は、60質量%以上である。さらに好ましい塗料中の全固形分に対する高耐薬品性有機樹脂の質量割合は、80質量%以上である。塗料中の全固形分に対する高耐薬品性有機樹脂の質量割合は、100質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、塗料中の全固形分に対する高耐薬品性有機樹脂の質量割合の含有量は、90質量%以下である。
【0033】
塗料中の高耐薬品性有機樹脂の形態は特に限定されない。高耐薬品性有機樹脂は、塗料中に溶解していてもよいし、分散していてもよい。高耐薬品性有機樹脂が塗料中に分散している場合は、高耐薬品性有機樹脂は粒子状であってもよい。高耐薬品性有機樹脂が粒子状の場合は、その平均粒径は、例えば1μm以下が好ましい。より好ましい高耐薬品性有機樹脂の粒径は、400nm以下である。高耐薬品性有機樹脂の平均粒径は、例えば、JIS Z 8825:2013に準拠して、レーザー回折で測定することができる。
【0034】
塗料は、高耐薬品性有機樹脂とガラス基材との密着性を改善するバインダー樹脂をさらに含有してもよい。バインダー樹脂としては、特に限定されないが、アクリル樹脂、セルロース樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。バインダー樹脂も、耐薬品性を備えていることが好ましい。塗料の全固形分に対するバインダ-樹脂の質量割合は、電気化学顕微鏡用探針100の耐薬品性が低下しないのであれば、特に限定されない。例えば、塗料の全固形分に対するバインダ-樹脂の質量割合は、10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、塗料の全固形分に対するバインダ-樹脂の質量割合は、30質量%以上である。例えば、塗料の全固形分に対するバインダ-樹脂の質量割合は、60質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、塗料の全固形分に対するバインダ-樹脂の質量割合は、40質量%以下である。
【0035】
塗料には、用途に応じて、界面活性剤、分散剤、防錆剤、酸化防止剤、極圧剤、などを添加してもよい。
【0036】
塗料に用いられる溶剤は、高耐薬品性有機樹脂を溶解または分散できるのであれば、特に限定されない。例えば、メチルパーフルオロエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテルなどのハイドロフルオロエーテルなどが挙げられる。
【0037】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態に係る電気化学顕微鏡用探針100Aの概略断面図である。図5は、図4の電気化学顕微鏡用探針100の拡大断面図である。図4および図5に示すように、電気化学顕微鏡用探針100Aは、ガラス基材からなる円筒状の円筒部10と、円筒部10と連続して接続され、円筒部10から端部E2に向かって内径が小さくなっていく先端部20Aと、端部E2に配置される開口部30Aと、を備える。以下、各部について説明する。以下の説明では、互いに同一又は類似の機能を有する構成に、同一の符号を付す。互いに同一又は類似の機能を有する構成については、繰り返し説明しない場合がある。
【0038】
「先端部」
先端部20Aは、円筒部10と連続して接続され、円筒部10から端部E2に向かって内径が小さくなっている。先端部20Aの外表面は、高耐薬品性有機樹脂を含有する、樹脂組成物40Aからなる。第2実施形態において、少なくとも先端部20Aの内径が1μm以下となる領域において、先端部20Aが樹脂組成物40Aからなる。先端部20Aの内径が1μm超となる領域において、先端部20Aの構成は、特に限定されず、樹脂組成物40Aのみであってもよいし、第1実施形態と同様にガラス基材50と、ガラス基材50の表面上(先端部20Aの外表面)に設けられた樹脂組成物層とから構成されていてもよい。なお、ガラス基材50については、円筒部10のガラス基材と同一である。
【0039】
<先端部の樹脂組成物>
少なくとも先端部20Aの内径が1μm以下となる領域において、先端部20Aは、樹脂組成物40Aからなる。先端部20Aの内径が1μm以下となる領域において、先端部20Aは、樹脂組成物40Aからなるので、電気化学顕微鏡用探針100Aの柔軟性が向上し、また、耐薬品性が向上する。樹脂組成物40Aは、高耐薬品性有機樹脂を含有する。高耐薬品性有機樹脂は、30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の高耐薬品性有機樹脂の重量変化率が±5%以内となる樹脂である。高耐薬品性有機樹脂を30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の高耐薬品性有機樹脂の重量変化率が±5%以内であると、電気化学顕微鏡用探針100の耐薬品性が向上し、アルカリ環境下、酸環境下などでの測定が可能となる。より好ましくは、30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の重量変化率が±1%以内である樹脂である。重量変化率が低いほど、耐薬品性が高いので、重量変化率は0%が最も好ましい。
【0040】
高耐薬品性有機樹脂としては、上記の重量変化率を満足し、先端部20Aが測定の際に形状を維持できる程度の強度を維持できれば、特に限定されない。例えば、高耐薬品性有機樹脂としては、フッ素樹脂が好ましい。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体(ETFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(EPE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。高耐薬品性有機樹脂は、これらを1種または2種以上合わせて用いてもよい。
【0041】
樹脂組成物40A中の高耐薬品性有機樹脂の含有量は、例えば、40質量%以上であることが好ましい。より好ましい樹脂組成物40A中の高耐薬品性有機樹脂の含有量は、60質量%以上である。さらに好ましい樹脂組成物40A中の高耐薬品性有機樹脂の含有量は、80質量%以上である。樹脂組成物40A中の高耐薬品性有機樹脂の含有量は、100質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、樹脂組成物40A中の高耐薬品性有機樹脂の含有量は、90質量%以下である。
【0042】
樹脂組成物40A中において、高耐薬品性有機樹脂の形態は特に限定されない。例えば、高耐薬品性有機樹脂が粒子状に樹脂組成物40A中に存在していてもよい。高耐薬品性有機樹脂が粒子状の場合は、その平均粒径は、例えば1μm以下が好ましい。より好ましい高耐薬品性有機樹脂の粒径は、400nm以下である。高耐薬品性有機樹脂の平均粒径は、例えば、JIS Z 8825:2013に準拠して、レーザー回折で測定することができる。
【0043】
樹脂組成物40Aは、高耐薬品性有機樹脂とガラス基材との密着性を改善するバインダー樹脂をさらに含有してもよい。バインダー樹脂としては、特に限定されないが、アクリル樹脂、セルロース樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。バインダー樹脂も、耐薬品性を備えていることが好ましい。バインダ-樹脂の含有量は、電気化学顕微鏡用探針100の耐薬品性が低下しないのであれば、特に限定されない。例えば、バインダー樹脂の樹脂組成物40A中の含有量は、10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、バインダー樹脂の樹脂組成物40A中の含有量は、30質量%以上である。例えば、例えば、バインダー樹脂の樹脂組成物40A中の含有量は、60質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、バインダー樹脂の樹脂組成物40A中の含有量は、40質量%以下である。
【0044】
樹脂組成物40Aは、用途に応じて、界面活性剤、分散剤、防錆剤、酸化防止剤、極圧剤、などを添加してもよい。
【0045】
樹脂組成物40Aの平均厚さは、測定に必要な強度が維持できれば、特に限定されない。樹脂組成物40Aの平均厚さは、例えば、開口部の内径の1/2以下である。樹脂組成物層40Aの平均厚さの下限は100nm以上が好ましい。
【0046】
「開口部」
開口部30Aは、端部E2に配置される。開口部30Aの内径Dは、400nm以下である。内径Dの下限は特に限定されないが、例えば、1nm以上である。開口部30Aの内径D1が小さいほど、電気化学顕微鏡の空間解像度が向上するので好ましい。
【0047】
(電気化学顕微鏡用探針の製造方法)
次に、電気化学顕微鏡用探針100Aの製造方法について説明する。本実施形態に係る電気化学顕微鏡用探針100Aの製造方法において、ガラス基材からなる中空部材200の先端部21に、高耐薬品性有機樹脂を含有する樹脂組成物40Aからなる樹脂組成物層40を形成する(図2)。樹脂組成物層40を形成する高耐薬品性有機樹脂を30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の高耐薬品性有機樹脂の重量変化率は±5%以内である。以下、各要件について説明する。
【0048】
(中空部材)
中空部材200は、円筒状の円筒部11と、円筒部11と連続して接続され、円筒部11から端部E1に向かって内径が小さくなっていく先端部21と、端部Eに配置された内径が200nmの開口部31と、を備える。中空部材は、電気化学顕微鏡用のガラス基材からなる探針を用いてもよいし、公知の方法で円筒状のガラスキャピラリーから製造してもよい。ガラスキャピラリーから製造する方法としては、たとえあ、レーザープラー装置を用い、レーザー照射強度、照射範囲、引張強さなどを制御することでピペットの先端形状を調整することができる。
【0049】
中空部材200を構成するガラス基材は、鉛ドープされたソーダガラス、ボロシリケイト、または石英であってもよい。開口部31の内径を小さくするには、石英が好ましい。
【0050】
(樹脂組成物層の形成)
中空部材200の先端部21に樹脂組成物層40を形成する。樹脂組成物層40の形成方法は特に限定されない。例えば、高耐薬品性有機樹脂が溶剤に分散または溶解した塗料を塗布することで形成してもよい。塗料を塗布する方法については、スプレー法、ディッピング法などが挙げられる。特にスプレー法が好ましい。
【0051】
「塗料」
本実施形態に係る電気化学顕微鏡用探針の製造方法に用いられる塗料は、溶剤と、溶剤中に分散または溶解する高耐薬品性有機樹脂とを含むことが好ましい。
【0052】
塗料中に分散または溶解する高耐薬品性有機樹脂としては、30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の重量変化率が±5%以内である樹脂である。高耐薬品性有機樹脂は、30wt%水酸化ナトリウム水溶液に23±1℃で1週間浸漬した前後の重量変化率が±5%以内であると、電気化学顕微鏡用探針100の耐薬品性が向上し、アルカリ環境下、酸環境下などでの測定が可能となる。高耐薬品性有機樹脂としては、上記の重量変化率を満足するのであれば、特に限定されないが、例えば、フッ素樹脂が好ましい。高耐薬品性有機樹脂として用いられるフッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレンとテトラフルオロエチレンの共重合体(ETFE)、エチレンとクロロトリフルオロエチレンとの共重合体(ECTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとの共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロアルキルビニルエーテルとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(EPE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等が挙げられる。高耐薬品性有機樹脂は、これらを1種または2種以上合わせて用いてもよい。
【0053】
塗料中の全固形分に対する高耐薬品性有機樹脂の質量割合は、例えば、40質量%以上であることが好ましい。より好ましい塗料中の全固形分に対する高耐薬品性有機樹脂の質量割合は、60質量%以上である。さらに好ましい塗料中の全固形分に対する高耐薬品性有機樹脂の質量割合は、80質量%以上である。塗料中の全固形分に対する高耐薬品性有機樹脂の質量割合は、100質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、塗料中の全固形分に対する高耐薬品性有機樹脂の質量割合の含有量は、90質量%以下である。
【0054】
塗料中の高耐薬品性有機樹脂の形態は特に限定されない。高耐薬品性有機樹脂は、塗料中に溶解していてもよいし、分散していてもよい。高耐薬品性有機樹脂が塗料中に分散している場合は、高耐薬品性有機樹脂は粒子状が好ましい。高耐薬品性有機樹脂が粒子状の場合は、その平均粒径は、例えば1μm以下が好ましい。より好ましい高耐薬品性有機樹脂の粒径は、400nm以下である。高耐薬品性有機樹脂の平均粒径は、例えば、JIS Z 8825:2013に準拠して、レーザー回折で測定することができる。
【0055】
塗料は、高耐薬品性有機樹脂とガラス基材との密着性を改善するバインダー樹脂をさらに含有してもよい。バインダー樹脂としては、特に限定されないが、アクリル樹脂、セルロース樹脂、イミド樹脂、ウレタン樹脂などが挙げられる。バインダー樹脂も、耐薬品性を備えていることが好ましい。塗料の全固形分に対するバインダ-樹脂の質量割合は、電気化学顕微鏡用探針100の耐薬品性が低下しないのであれば、特に限定されない。例えば、塗料の全固形分に対するバインダ-樹脂の質量割合は、10質量%以上であることが好ましい。より好ましくは、塗料の全固形分に対するバインダ-樹脂の質量割合は、30質量%以上である。例えば、塗料の全固形分に対するバインダ-樹脂の質量割合は、60質量%以下であることが好ましい。より好ましくは、塗料の全固形分に対するバインダ-樹脂の質量割合は、40質量%以下である。
【0056】
塗料には、用途に応じて、界面活性剤、分散剤、防錆剤、酸化防止剤、極圧剤、などを添加してもよい。
【0057】
塗料に用いられる溶剤は、高耐薬品性有機樹脂を溶解または分散できるのであれば、特に限定されない。例えば、メチルパーフルオロエーテル、メチルノナフルオロブチルエーテル、メチルノナフルオロイソブチルエーテルなどのハイドロフルオロエーテルなどが挙げられる。
【0058】
次に、樹脂組成物層40を形成した後、先端部21の端部側から一定の距離にあるガラス基材50を溶解させる。具体的には、ガラス基材50溶解後に、先端部20Aの内径が1μm以下となる領域において、構成材質が樹脂組成物40Aのみとなるように、ガラス基材50を溶解させる。
【0059】
ガラス基材50を溶解させる方法は特に限定されない。例えば、水酸化ナトリウム水溶液に先端部21を浸漬することで、溶解してもよい。
【0060】
なお、本発明の技術的範囲は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。例えば、第1実施形態では、円筒部10と先端部20とが同一のガラス基材を用いていたが、異なるガラス基材を用いてもよい。
【0061】
その他、本発明の趣旨に逸脱しない範囲で、前記実施形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能であり、また、前記した実施形態を適宜組み合わせてもよい。
【実施例0062】
次に、本発明の実施例について説明するが、実施例での条件は、本発明の実施可能性及び効果を確認するために採用した一条件例であり、本発明は、この一条件例に限定されるものではない。本発明は、本発明の要旨を逸脱せず、本発明の目的を達成する限りにおいて、種々の条件を採用し得るものである。
【0063】
(樹脂組成物層形成スライドガラス)
スライドガラス(松浪硝子S1112 83-0277サイズ72×26mm厚さ1.0mm~1.2mm)を1cm幅に4枚カットし、ファインケミカルジャパン社製ポリテトラフルオロエチレン(フッ素樹脂)スプレー(FC-250)を2秒間噴射し、樹脂組成物層を形成し、樹脂組成物層形成スライドガラスを得た。
【0064】
(評価用スライドガラス)
スライドガラス(松浪硝子S1112 83-0277サイズ72×26mm厚さ1.0mm~1.2mm)を1cm幅に4枚カットし、評価用スライドガラスを得た。
【0065】
(樹脂の耐薬品性試験)
上記の樹脂組成物層形成スライドガラスおよび評価用スライドガラスを水酸化ナトリウム水溶液(濃度30wt%)に常温(20℃~25℃)で5日浸漬した。浸漬前後の重量を電子天秤で測定し、重量の変化を調べた。
【0066】
樹脂組成物層形成スライドガラス及びスライドガラスともに、水酸化ナトリウム水溶液に浸漬しても外観に変化は見られなかった。樹脂組成物層形成スライドガラスの重量変化は0%であったのに対し、評価用スライドガラスの重量変化率は0.1%であった。以上より、フッ素樹脂については、重量変化が無く、フッ素樹脂からなる樹脂組成物層を形成した樹脂組成物層形成スライドガラスの耐薬品性が確認された。
【0067】
(実施例1)
ガラスキャピラリー(HARVARD社製CAPILLARIESシリーズおよびSUTTER社製QUARTZ GLASS)をレーザープラー(SUTTER社製MODEL P-2000)を用いて開口部の内径100nmの中空部材を作製した。その後、中空部材の先端部にファインケミカルジャパン社製フッ素樹脂スプレー(FC-250)を2秒間噴射し、樹脂組成物層を形成し、実施例1の電気化学顕微鏡用探針を作製した。同条件でスライドガラス上に製膜した場合膜厚は、約3.5nmであった。
【0068】
(実施例2)
ガラスキャピラリー(HARVARD社製CAPILLARIESシリーズおよびSUTTER社製QUARTZ GLASS)をレーザープラー(SUTTER社製MODEL P-2000)を用いて開口部の内径100nmの中空部材を作製した。その後、中空部材の先端部にファインケミカルジャパン社製フッ素樹脂スプレー(FC-250)を2秒間2回スプレー噴射し、樹脂組成物層を形成し、実施例1の電気化学顕微鏡用探針を作製した。同条件でスライドガラス上に製膜した場合膜厚は、約7nmであった。
【0069】
(比較例)
ガラスキャピラリー(HARVARD社製CAPILLARIESシリーズおよびSUTTER社製QUARTZ GLASS )をレーザープラーを用いて開口部の内径100nmの比較例1の電気化学顕微鏡用探針を作製した。
【0070】
(耐薬品性試験)
実施例1および比較例1の電気化学顕微鏡用探針を水酸化ナトリウム水溶液(濃度30wt%)に常温(20℃~25℃)で1日浸漬した。浸漬前後の電気化学顕微鏡用探針を走査型電子顕微鏡で観察した。
【0071】
(電流値測定)
実施例2および比較例1の電気化学顕微鏡用探針を水酸化ナトリウム水溶液(濃度30wt%)に常温(20℃~25℃)で20時間浸漬した。その後、浸漬時間0時間および20時間の各探針を電気化学顕微鏡に取り付け、リン酸緩衝液中で電流値(参照極Ag/AgCl、印可電圧0.2V)を測定した。
【0072】
図6に示すように、実施例1の電気化学顕微鏡用探針は、水酸化ナトリウム水溶液に浸漬しても形状に変化が見られなかった。一方、比較例1の電気化学顕微鏡用探針は、1日浸漬後先端の形状が変化していた。
【0073】
図7に、各探針の電流値の測定結果を示す。図7に示すように20時間水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した実施例1の電気化学顕微鏡用探針(図7の被覆あり)の電流値変化率は120%であった。一方、20時間水酸化ナトリウム水溶液に浸漬した比較例1の電気化学顕微鏡用探針(図7の被覆無し)の電流値の変化率は273%であった。この電流値の増加は探針の内径が大きくなったことを示す。以上より、本開示の電気化学顕微鏡用探針100が優れた耐薬品性を有することが確認された。
【符号の説明】
【0074】
10 円筒部、20 先端部、30 開口部、40 樹脂組成物層、100 電気化学顕微鏡用探針
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7