(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143653
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/16 20060101AFI20241003BHJP
B60S 1/08 20060101ALI20241003BHJP
【FI】
E02F9/16 E
B60S1/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056431
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000442
【氏名又は名称】弁理士法人武和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉川 正規
(72)【発明者】
【氏名】桑岡 謙太
(72)【発明者】
【氏名】上田 智裕
(72)【発明者】
【氏名】岡▲崎▼ 正太
(72)【発明者】
【氏名】野林 寛昭
【テーマコード(参考)】
2D015
3D225
【Fターム(参考)】
2D015EA02
3D225AA01
3D225AB09
3D225AC01
3D225AD02
3D225AD09
3D225AE02
3D225AE57
3D225AG08
3D225AG12
3D225AG14
(57)【要約】
【課題】走行時あるいは作業時においてオペレータの視界を阻害することなくワイパを間欠的に作動させることが可能な作業機械を提供する。
【解決手段】自走可能な車体と、車体に取り付けられた作業装置2と、車体に設けられた運転室12と、運転室12の窓を払拭する払拭動作を行うワイパ32と、ワイパ32を所定の間欠間隔で払拭動作させる間欠動作を指示するワイパスイッチ45と、ワイパスイッチ45により間欠動作が指示されているとき、ワイパ32の払拭動作を制御するコントローラ5と、を備えたホイールローダ1において、コントローラ5は、ワイパ32が払拭動作した時点から所定の固定時間Xが経過している状態で、作業装置2に対する操作または車体の走行開始に対する操作が行われた場合には、間欠動作の所定の間欠間隔に関係なくワイパ32を払拭動作させる。
【選択図】
図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車体と、
前記車体に取り付けられた作業装置と、
前記車体に設けられた運転室と、
前記運転室の窓を払拭する払拭動作を行うワイパと、
前記ワイパを所定の間欠間隔で払拭動作させる間欠動作を指示するワイパスイッチと、
前記ワイパスイッチにより前記間欠動作が指示されているとき、前記ワイパの払拭動作を制御するコントローラと、
を備えた作業機械において、
前記コントローラは、
前記ワイパが払拭動作した時点から予め定められた所定の固定時間が経過している状態で、前記作業装置に対する操作または前記車体の走行開始に対する操作が行われた場合には、前記間欠動作の前記所定の間欠間隔に関係なく前記ワイパを払拭動作させる
ことを特徴とする作業機械。
【請求項2】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、
前記作業装置に対する操作または前記車体の走行開始に対する操作が行われた場合であっても、前記ワイパが払拭動作した時点から前記所定の固定時間が経過していない状態では、前記所定の間欠間隔で前記ワイパを払拭動作させる
ことを特徴とする作業機械。
【請求項3】
請求項1に記載の作業機械において、
前記コントローラは、
前記ワイパを前記所定の間欠間隔に関係なく払拭動作させた場合、前記間欠動作の前記所定の間欠間隔をリセットする
ことを特徴とする作業機械。
【請求項4】
請求項1に記載の作業機械において、
前記車体の前後進を切り替えるための前後進切替装置と、
前記車体の走行速度を検出する車速検出装置と、を備え、
前記コントローラは、
前記前後進切替装置から出力された前記車体の前後進の切替信号、または、前記車速検出装置により検出された前記走行速度に基づき、前記車体の走行開始に対する操作が行われたと判定する
ことを特徴とする作業機械。
【請求項5】
請求項1に記載の作業機械において、
前記作業装置を操作するための作業用操作装置を備え、
前記コントローラは、
前記作業用操作装置が非操作状態から操作状態となって前記作業用操作装置から前記作業装置を動作させる操作信号を取得した場合に、前記作業装置が操作されたと判定する
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、間欠動作が可能なワイパを備えた作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車には、雨天時などに窓についた雨粒を払拭して運転者の視界を良好にするワイパが設けられている。このワイパは、例えば、ホイールローダや油圧ショベルといった作業機械にも設けられることがあるが、作業機械がワイパを間欠的に作動させながら走行あるいは作業を行う場合、予め設定されたワイパの間欠間隔によっては、走行あるいは作業を開始するタイミングでワイパが作動せず、オペレータの視界が多くの雨粒で遮られてしまうことがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、自動車用の間欠ワイパの制御装置であって、自動車が制動、制動解除、停車、および、走行開始した時点においてワイパモータの駆動休止期間の残り時間が所定の限度時間以下であった場合に、その休止期間が終了したものと判断してワイパモータを駆動する、すなわち間欠間隔を早めてワイパを作動させるものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、車体の停止および走行を繰り返したり、あるいは、作業装置の停止および作動を繰り返したりすることが多い作業機械に対して、特許文献1に記載の技術を適用した場合、ワイパモータの駆動休止期間の残り時間が所定の限度時間以下となると、車体が停止して走行を行う度に、あるいは、作業装置が停止して作動する度に、ワイパが作動することになる。そのため、ワイパは必要以上に頻繁に作動することとなり、オペレータの視界が阻害されて作業効率が低下してしまう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、走行時あるいは作業時においてオペレータの視界を阻害することなくワイパを間欠的に作動させることが可能な作業機械を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明は、自走可能な車体と、前記車体に取り付けられた作業装置と、前記車体に設けられた運転室と、前記運転室の窓を払拭する払拭動作を行うワイパと、前記ワイパを所定の間欠間隔で払拭動作させる間欠動作を指示するワイパスイッチと、前記ワイパスイッチにより前記間欠動作が指示されているとき、前記ワイパの払拭動作を制御するコントローラと、を備えた作業機械において、前記コントローラは、前記ワイパが払拭動作した時点から予め定められた所定の固定時間が経過している状態で、前記作業装置に対する操作または前記車体の走行開始に対する操作が行われた場合には、前記間欠動作の前記所定の間欠間隔に関係なく前記ワイパを払拭動作させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、走行時あるいは作業時においてオペレータの視界を阻害することなくワイパを間欠的に作動させることができる。上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係るホイールローダの一構成例を示す外観側面図である。
【
図2】前方から見たホイールローダの一部を示す正面図である。
【
図4】ハンドルおよびその周辺部の構成を拡大して示す図である。
【
図5】ホイールローダがダンプトラックに対して積込み作業を行う様子を説明する図である。
【
図6】ワイパの作動システムの一構成例を示すシステム構成図である。
【
図7】コントローラが有する機能を示す機能ブロック図である。
【
図8】車体が走行する場合にコントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】ホイールローダが作業装置を用いて作業を行う場合にコントローラで実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【
図10】ホイールローダの動作状態とワイパの動作状態とを比較して説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施形態に係る作業機械の一態様として、例えば土砂や鉱物などを掘削してダンプトラックやホッパーといった積込み先へ積み込む荷役作業を行うホイールローダについて説明する。
【0011】
[ホイールローダ1の構成]
まず、ホイールローダ1の構成について、
図1~4を参照して説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施形態に係るホイールローダ1の一構成例を示す外観側面図である。
図2は、前方から見たホイールローダ1の一部を示す正面図である。
図3は、運転室12内の一構成例を示す図である。
図4は、ハンドル43およびその周辺部の構成を拡大して示す図である。
【0013】
ホイールローダ1は、
図1に示すように、車体が中心付近で中折れすることにより操舵されるアーティキュレート式の作業車両である。具体的には、車体の前部となる前フレーム1Aと車体の後部となる後フレーム1Bとが、センタジョイント10によって左右方向に回動自在に連結されており、前フレーム1Aが後フレーム1Bに対して左右方向に屈曲する。なお、以下の説明では、車体の左右方向のうち、前進方向を向いたオペレータの左手側を「左方向」とし、オペレータの右手側を「右方向」とする。
【0014】
車体には4つの車輪11が設けられており、2つの車輪11が前輪11Aとして前フレーム1Aの左右両側に、残り2つの車輪11が後輪11Bとして後フレーム1Bの左右両側に、それぞれ設けられている。なお、
図1では、4つの車輪11のうち、左側に設けられた前輪11Aおよび後輪11Bのみが示されている。
【0015】
前フレーム1Aの前部には、荷役作業を行うための油圧駆動式の作業装置2が取り付けられている。作業装置2は、前フレーム1Aに対して上下方向に回動可能に取り付けられたリフトアーム21と、リフトアーム21を駆動する2つのリフトアームシリンダ22と、リフトアーム21の先端部に対して上下方向に回動可能に取り付けられたバケット23と、バケット23を駆動するバケットシリンダ24と、リフトアーム21に回動可能に連結されてバケット23とバケットシリンダ24とのリンク機構を構成するベルクランク25と、を有している。
【0016】
リフトアーム21は、2つのリフトアームシリンダ22の各ロッド220が伸びることにより前フレーム1Aに対して上方向に回動し、2つのリフトアームシリンダ22の各ロッド220が縮むことにより前フレーム1Aに対して下方向に回動する。なお、
図1では、2つのリフトアームシリンダ22のうち、左側に配置されたリフトアームシリンダ22のみを破線で示している。
【0017】
バケット23は、バケットシリンダ24のロッド240が伸びることによりリフトアーム21に対して上方向に回動し(チルト動作)、バケットシリンダ24のロッド240が縮むことによりリフトアーム21に対して下方向に回動する(ダンプ動作)。これにより、バケット23は、例えば土砂や鉱物などの荷を掬って積込み先に排出することが可能となっている。
【0018】
なお、バケット23は、例えばブレードなどの各種アタッチメントに交換することが可能であり、ホイールローダ1は、バケット23を用いた荷役作業の他に、除雪作業や押土作業などの各種作業を行うことも可能である。
【0019】
後フレーム1Bには、オペレータが搭乗する運転室12と、ホイールローダ1の駆動に必要な各種の機器類を内部に収容する機械室13と、車体が傾倒しないように作業装置2とのバランスを保つためのカウンタウェイト14と、が設けられている。後フレーム1Bにおいて、運転室12は前部に、カウンタウェイト14は後部に、機械室13は運転室12とカウンタウェイト14との間に、それぞれ配置されている。
【0020】
図2に示すように、運転室12には、前面部から左右両側部に亘って窓が設けられている。具体的には、窓は、正面に配置された正面窓31Fと、正面窓31Fの左側に配置された左窓31Lと、正面窓31Fの右側に配置された右窓31Rと、を含んで構成されている。
【0021】
正面窓31Fには、弧を描きながら左右方向に動作して、雨天時に正面窓31Fについた雨粒などを払拭する払拭動作を行うワイパ32が設けられている。オペレータは、ワイパ32を作動させることにより、雨天時であっても視界が良好となって、運転および作業装置2の操作がしやすくなる。
図2に示すワイパ32では、正面窓31の左端が開始終了位置となっている。ワイパ32は、開始終了位置から正面窓31の右端の所定の位置に向かって動き、所定の位置に到達した後すぐに開始終了位置へ戻る。この一連の動作が、1回分のワイパ動作となる。
【0022】
図3に示すように、運転室12内の中央には、オペレータが着座する運転席41が載置されている。運転席41の右側には、作業装置2を操作するための作業用操作装置としての作業装置用操作レバー42が設けられている。また、運転席41の前側には、車体を操舵するためのハンドル43が設けられている。
【0023】
図4に示すように、ハンドル43の左側には、車体の前後進を切り替えるための前後進切替装置としての前後進レバー44と、ワイパ32を所定の間欠間隔で払拭動作させる間欠動作を指示するワイパスイッチ45と、が設けられている。この間欠動作では、ワイパ32は、1回左右方向に動作した後、開始終了位置で所定の時間(例えば、5~6秒)停止状態となり、再び左右方向に動作するといった流れを繰り返す。
【0024】
前後進レバー44は、車体を前進させる前進位置Fと、車体を停止させる中立位置Nと、車体を後進させる後進位置Rと、を有し、オペレータの操作によりそれぞれの位置に切り替わる。
【0025】
ワイパ32は、例えば、ホイールローダ1が大雨の中で作業を行うような場合においては、所定の速度で連続して左右方向に動作して払拭動作を行い(連続動作)、ホイールローダ1が小雨(ワイパ32を連続動作させるほどの降水量ではない)の中で作業を行うような場合においては、所定の間欠間隔で左右方向に動作して払拭動作を行う(間欠動作)。
【0026】
本実施形態では、ワイパスイッチ45は、ワイパ32を連続動作させる指示と、ワイパ32を間欠動作させる指示と、を行うことが可能となっている。すなわち、オペレータは、ワイパスイッチ45を操作してワイパ32の動作内容(連続動作または間欠動作)を選択する。ワイパスイッチ45は、オペレータによりワイパ32の動作内容が選択されると、後述するコントローラ5に対して選択信号を出力する。
【0027】
[ホイールローダ1の積込み作業]
次に、ホイールローダ1の積込み作業について、
図5を参照して説明する。
【0028】
図5は、ホイールローダ1がダンプトラック100に対して積込み作業を行う様子を説明する図である。
【0029】
ホイールローダ1は、土砂や鉱物などの作業対象物を掘削した後、バケット23内の作業対象物をダンプトラック100の荷台に積み込む積込み作業を行う。ホイールローダ1は、まず、バケット23内に作業対象物を抱え込んだ状態で、リフトアーム21を上昇させながらダンプトラック100に向かって走行する。そして、ホイールローダ1は、ダンプトラック100が停車している位置の手前で停車し、バケット23内の作業対象物をダンプトラック100の荷台に排出する。
【0030】
このとき、ホイールローダ1は、走行と停車とを繰り返しながら、また、作業装置2の動作と停止とを繰り返しながら、ダンプトラック100に近づく。例えば、
図5に示すホイールローダ1は、走行または作業(リフトアーム21の上げ動作)を行うと、一旦停車状態(作業装置2も停止状態)となり、再び走行または作業を行って、ダンプトラック100の停車位置の手前で停車する。
【0031】
なお、
図5では、ホイールローダ1の始めの走行または作業を「走行または作業その1」として砂地の矢印で、ホイールローダ1の「停車状態」を白抜きの矢印で、ホイールローダ1の次の走行または作業を「走行または作業その2」としてハッチングの矢印で、それぞれ示している。
【0032】
[ワイパ32の作動システム]
次に、ワイパ32の作動システムについて、
図6を参照して説明する。
【0033】
図6は、ワイパ32の作動システムの一構成例を示すシステム構成図である。
【0034】
ワイパ32の作動システムは、ワイパ32を駆動するワイパモータ321と、ワイパモータ321の駆動を制御するワイパリレー322と、ワイパリレー322を制御するコントローラ5と、を含んで構成される。
【0035】
ワイパモータ321は、ワイパリレー322がONになると駆動し、OFFになると停止する。例えば、ワイパ32が連続動作を行う場合は、ワイパリレー322はON状態で保持されており、ワイパモータ321は駆動し続けることになる。他方、ワイパ32が間欠動作を行う場合は、ワイパリレー322はON状態とOFF状態とが繰り返され、ワイパモータ321は駆動と停止とを交互に行うことになる。
【0036】
コントローラ5は、CPU、RAM、ROM、HDD、入力I/F、および出力I/Fがバスを介して互いに接続されて構成される。そして、作業装置用操作レバー42、前後進レバー44、およびワイパスイッチ45といった各種の操作装置、ならびに、車体の走行速度(以下、単に「車速」とする)を検出する車速検出装置としての車速センサ46といったセンサ類が入力I/Fに接続され、ワイパリレー322が出力I/Fに接続されている。
【0037】
このようなハードウェア構成において、ROMやHDD若しくは光学ディスク等の記録媒体に格納された制御プログラム(ソフトウェア)をCPUが読み出してRAM上に展開し、展開された制御プログラムを実行することにより、制御プログラムとハードウェアとが協働して、コントローラ5の機能を実現する。
【0038】
なお、本実施形態では、コントローラ5を、ソフトウェアとハードウェアとの組み合わせによって構成されるコンピュータとして説明しているが、これに限られず、例えば他のコンピュータの構成の一例として、ホイールローダ1の側で実行される制御プログラムの機能を実現する集積回路を用いてもよい。
【0039】
コントローラ5は、作業装置用操作レバー42から出力された操作信号、前後進レバー44から出力された切替信号、ワイパスイッチ45から出力された選択信号、および、車速センサ46で検出された車速に基づいて、ワイパリレー322のON/OFFを制御する。
【0040】
[コントローラ5の機能構成]
次に、コントローラ5の機能構成について、
図7を参照して説明する。
【0041】
図7は、コントローラ5が有する機能を示す機能ブロック図である。
【0042】
コントローラ5は、データ取得部51と、ワイパ動作判定部52と、走行状態判定部53と、作業状態判定部53Aと、時間判定部54と、記憶部55と、間欠タイマ設定部56と、信号出力部57と、を含む。
【0043】
データ取得部51は、作業装置用操作レバー42から出力された操作信号、前後進レバー44から出力された切替信号、ワイパスイッチ45から出力された選択信号、および、車速センサ46で検出された車速をそれぞれ取得する。
【0044】
ワイパ動作判定部52は、データ取得部51にて取得された選択信号に基づいて、ワイパ32の動作内容(連続動作か、あるいは、間欠動作か)を判定する。
【0045】
走行状態判定部53は、データ取得部51にて取得された切替信号および車速に基づいて、車体の走行開始に対する操作が行われたか否か、すなわち車体の走行状態(走行状態か、あるいは、停車状態か)を判定する。
【0046】
作業状態判定部53Aは、データ取得部51にて取得された操作信号に基づいて、作業装置2に対する操作が行われたか否か、すなわち作業装置2の動作状態(動作状態か、あるいは、停止状態か)を判定する。
【0047】
時間判定部54は、走行状態判定部53にて車体が停車状態から走行を開始(前進または後進)したと判定された場合、または、作業状態判定部53Aにて作業装置2が停止状態から動作を開始した(作業装置2に対する操作が行われた)と判定された場合に、信号出力部57がワイパリレー322に対してON信号を前回出力した時点、すなわちワイパ32が前回払拭動作した時点から所定の固定時間X(例えば1~5秒)が経過しているか否かを判定する。なお、所定の固定時間Xは、記憶部55に記憶されており、任意に設定することが可能である。
【0048】
間欠タイマ設定部56は、ワイパ32の間欠動作に係る間欠間隔(ワイパ32の停止時間)を設定する。具体的には、走行状態判定部53にて車体が停車状態から走行を開始(前進または後進)していない、すなわち停車状態のままであると判定された場合、および、時間判定部54にてワイパ32が前回払拭動作した時点から所定の固定時間Xが経過していないと判定された場合、間欠タイマ設定部56は、間欠間隔をワイパスイッチ45により指示された間欠動作に係る所定の間欠間隔(以下、「通常間欠間隔」とする)に設定する。
【0049】
信号出力部57は、時間判定部54にてワイパ32が前回払拭動作した時点から所定の固定時間Xが経過したと判定された場合に、ワイパリレー322に対してON信号を出力する。すなわち、この場合、コントローラ5は、ワイパ32を通常間欠間隔に関係なく払拭動作させることをワイパリレー322に指令する。なお、このとき、間欠タイマ設定部56は、通常間欠間隔をリセットする。
【0050】
また、信号出力部57は、間欠タイマ設定部56にて間欠間隔が通常間欠間隔に設定された場合には、通常間欠間隔にしたがってワイパリレー322に対してON信号とOFF信号とを交互に出力する。すなわち、この場合、コントローラ5は、ワイパ32を通常間欠間隔で継続して払拭動作させることをワイパリレー322に対して指令する。
【0051】
[コントローラ5における処理]
次に、コントローラ5内で実行される処理の流れについて、
図8および
図9を参照して説明する。
【0052】
まず、車体が走行する場合におけるコントローラ5によるワイパ32の動作制御について、
図8を参照して説明する。
【0053】
図8は、車体が走行する場合にコントローラ5で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0054】
コントローラ5では、まず、ワイパ動作判定部52が、データ取得部51で取得された選択信号に基づいて、ワイパ32が間欠動作中であるか否かを判定する(ステップS501)。
【0055】
ステップS501においてワイパ32が間欠動作中であると判定された場合(ステップS501/YES)、走行状態判定部53は、データ取得部51で取得された切替信号に基づいて、前後進レバー44が中立位置Nに切り替わっているか否か、すなわち車体が停車中であるか否かを判定する(ステップS502)。一方、ステップS501においてワイパ32が間欠動作中でないと判定された場合には(ステップS501/NO)、コントローラ5における処理が終了する。
【0056】
ステップS502において前後進レバー44が中立位置Nに切り替わっていると判定された場合(ステップS502/YES)、続いて、走行状態判定部53は、前後進レバー44が中立位置Nから前進位置Fまたは後進位置Rに切り替わったか否か、すなわち車体が走行開始したか否かを判定する(ステップS503)。
【0057】
ステップS503において前後進レバー44が中立位置Nから前進位置Fまたは後進位置Rに切り替わったと判定された場合(ステップS503/YES)、時間判定部54は、ワイパ32が前回払拭動作した時点から所定の固定時間Xが経過しているか否かを判定する(ステップS504)。
【0058】
ステップS504においてワイパ32が前回払拭動作した時点から所定の固定時間Xが経過していると判定された場合には(ステップS504/YES)、信号出力部57は、ワイパリレー322に対してON信号を出力し(ステップS505)、コントローラ5における処理が終了する。
【0059】
他方、ステップS502において前後進レバー44が中立位置Nに切り替わっていないと判定された場合には(ステップS502/NO)、続いて、走行状態判定部53は、データ取得部51で取得された車速に基づいて、車体が停車中であるか否かを判定する(ステップS506)。
【0060】
ステップS506において車体が停車中であると判定された場合には(ステップS506/YES)、続いて、走行状態判定部53は、車体が走行を開始したか否かを判定する(ステップS507)。一方、ステップS506において車体が停車中でないと判定された場合には(ステップS506/NO)、ステップS503に進む。
【0061】
ステップS507において車体が走行を開始したと判定された場合には(ステップS507/YES)、ステップS504に進む。一方、ステップS507において車体が走行を開始していない、すなわち停車中のままであると判定された場合には(ステップS507/NO)、間欠タイマ設定部56は、ワイパ32の間欠間隔を通常間欠間隔(通常間欠タイマ)に設定し(ステップS508)、ステップS505に進む。
【0062】
また、ステップS503において前後進レバー44が中立位置Nから前進位置Fまたは後進位置Rに切り替わっていない、すなわち前後進レバー44が中立位置Nのままであると判定された場合(ステップS503/NO)、および、ステップS504においてワイパ32が前回払拭動作した時点から所定の固定時間Xが経過していないと判定された場合(ステップS504/NO)についても、それぞれステップS508に進む。
【0063】
次に、作業装置2が動作する場合におけるコントローラ5によるワイパ32の動作制御について、
図9を参照して説明する。
【0064】
図9は、作業装置2が動作する場合にコントローラ5で実行される処理の流れを示すフローチャートである。
【0065】
コントローラ5では、まず、
図8に示すフローチャートと同様に、ワイパ動作判定部52が、データ取得部51で取得された選択信号に基づいて、ワイパ32が間欠動作中であるか否かを判定する(ステップS501)。
【0066】
ステップS501においてワイパ32が間欠動作中であると判定された場合(ステップS501/YES)、作業状態判定部53Aは、データ取得部51で取得された操作信号に基づいて、作業装置用操作レバー42が非操作状態であるか否か、すなわち作業装置2が動作停止中であるか否かを判定する(ステップS502A)。一方、ステップS501においてワイパ32が間欠動作中でないと判定された場合には(ステップS501/NO)、コントローラ5における処理が終了する。
【0067】
ステップS502Aにおいて作業装置用操作レバー42が非操作状態であると判定された場合(ステップS502A/YES)、続いて、作業状態判定部53Aは、作業装置用操作レバー42が操作状態となったか否か、すなわち作業装置2が動作開始したか否かを判定する(ステップS503A)。
【0068】
ステップS503Aにおいて作業装置用操作レバー42が操作状態になったと判定された場合(ステップS503A/YES)、時間判定部54は、ワイパ32が前回払拭動作した時点から所定の固定時間Xが経過しているか否かを判定する(ステップS504)。
【0069】
ステップS504においてワイパ32が前回払拭動作した時点から所定の固定時間Xが経過していると判定された場合には(ステップS504/YES)、信号出力部57は、ワイパリレー322に対してON信号を出力し(ステップS505)、コントローラ5における処理が終了する。
【0070】
他方、ステップS502Aにおいて作業装置用操作レバー42が非操作状態でない、すなわち作業装置2が動作中であると判定された場合(ステップS502A/NO)、ステップS503Aにおいて作業装置用操作レバー42が操作状態でない、すなわち作業装置2が停止中のままであると判定された場合(ステップS503A/NO)、および、ステップS504においてワイパ32が前回払拭動作した時点から所定の固定時間Xが経過していないと判定された場合(ステップS504/NO)には、間欠タイマ設定部56は、ワイパ32の間欠間隔を通常間欠間隔(通常間欠タイマ)に設定し(ステップS508)、ステップS505に進む。
【0071】
なお、
図8に示すフローチャートおよび
図9に示すフローチャートは、コントローラ5内においてそれぞれ並行して進むものである。
【0072】
このように、コントローラ5は、ワイパ32が間欠動作を行っているときに、車体が停止状態から走行を開始した場合、あるいは、作業装置2が停止状態から動作を開始した場合、すぐにワイパリレー322に対してON信号を出力するのではなく、ワイパ32が前回払拭動作した時点から所定の固定時間Xが経過している場合に限り、ワイパリレー322に対してON信号を出力するため、車体が走行を開始する度に、あるいは、作業装置2が動作を開始する度に、ワイパ32が作動するといった事態が抑制され、オペレータの視界を阻害することなくワイパ32を間欠的に作動させることができる。
【0073】
また、車体の走行が再開されるタイミング、あるいは、作業装置2の動作が再開されるタイミングで、すなわち通常間欠間隔よりも早い間欠間隔で、ワイパ32を作動させることができるため、オペレータの視界が良好となり作業効率の向上につながる。
【0074】
[ワイパ32の動作例]
次に、ワイパ32の動作例について、
図10を参照して説明する。
【0075】
図10は、ホイールローダ1の動作状態とワイパ32の動作状態とを比較して説明する図である。なお、
図10において、砂地の矢印は
図5に示された砂地の矢印に、白抜き矢印は
図5に示された白抜き矢印に、ハッチングの矢印は
図5に示されたハッチングの矢印に、それぞれ対応している。
【0076】
図10では、ワイパ32が間欠動作を行っている場合に、ホイールローダ1が、停車状態から走行または作業を再開すると(「走行または作業その2」における1番目の矢印に相当)、ワイパ32の前回作動時点(α)からX秒経過しているため、ワイパ32は通常間欠間隔に関係なく作動する(β)。
【0077】
続いて、ホイールローダ1は、再び停止状態となり、再び走行または作業を再開する(「走行または作業その2」における2番目の矢印に相当)が、この場合は、ワイパ32の前回作動時点(β)からX秒経過していないため、ワイパ32は作動しない。
【0078】
また、ワイパ32が通常間欠間隔に関係なく作動した場合(β)、それまでの通常間欠間隔がリセットされるため、(β)の時点から本来の停止間隔後の時点(γ)ではワイパ32は作動しない(
図10において破線で示す)。
【0079】
以上、本発明の実施形態について説明した。なお、本発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、本実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、本実施形態の構成に他の実施形態の構成を加えることも可能である。またさらに、本実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0080】
例えば、上記実施形態では、作業機械の一態様としてホイールローダ1を例に挙げて説明したが、これに限られず、ワイパ32を備えた作業機械であれば、例えば油圧ショベルなどであってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1:ホイールローダ(作業機械)
1A:前フレーム(車体)
1B:後フレーム(車体)
2:作業装置
5:コントローラ
12:運転室
32:ワイパ
42:作業装置用操作レバー(作業用操作装置)
44:前後進レバー(前後進切替装置)
46:車速センサ(車速検出装置)
45:ワイパスイッチ
X:所定の固定時間