(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143661
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】二周波電源装置、高周波加熱装置及び高周波焼入装置
(51)【国際特許分類】
H05B 6/04 20060101AFI20241003BHJP
H05B 6/06 20060101ALI20241003BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20241003BHJP
【FI】
H05B6/04 321
H05B6/06 366
H02M7/48 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056441
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】390029089
【氏名又は名称】高周波熱錬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100108062
【弁理士】
【氏名又は名称】日向寺 雅彦
(74)【代理人】
【識別番号】100168332
【弁理士】
【氏名又は名称】小崎 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100146592
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 浩
(74)【代理人】
【氏名又は名称】内田 敬人
(74)【代理人】
【識別番号】100197538
【弁理士】
【氏名又は名称】竹内 功
(74)【代理人】
【識別番号】100176751
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 耕平
(72)【発明者】
【氏名】杉本 真人
(72)【発明者】
【氏名】小野 徹也
(72)【発明者】
【氏名】川幡 真志
【テーマコード(参考)】
3K059
5H770
【Fターム(参考)】
3K059AA02
3K059AA05
3K059AA09
3K059AC07
3K059AD28
5H770BA09
5H770CA02
5H770DA01
5H770DA14
5H770DA22
5H770DA30
5H770JA16Y
5H770LA01X
5H770LB08
(57)【要約】
【課題】信頼性が高い二周波電源装置、高周波加熱装置及び高周波焼入装置を提供する。
【解決手段】二周波電源装置1は、第1周波数の第1交流電流I
12を出力する第1電源部10と、第1周波数よりも高い第2周波数の第2交流電流I
22を出力する第2電源部20と、第1マッチングトランス61を有し、第1交流電流I
12が入力されたときに第1交流電流I
12を出力可能な第1整合器60と、第2マッチングトランス71を有し、第2交流電流I
22が入力されたときに第2交流電流I
22を出力可能な第2整合器70と、第1電源部10を第2電源部20に接続する信号線50と、を備える。第1電源部10が停止するときに、第1電源部10は信号線50を介して第2電源部20に停止信号を出力し、第2電源部20を停止させる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1周波数の第1交流電流を出力する第1電源部と、
前記第1周波数よりも高い第2周波数の第2交流電流を出力する第2電源部と、
第1マッチングトランスを有し、前記第1交流電流が入力されたときに前記第1交流電流を出力可能な第1整合器と、
第2マッチングトランスを有し、前記第2交流電流が入力されたときに前記第2交流電流を出力可能な第2整合器と、
前記第1電源部を前記第2電源部に接続する信号線と、
を備え、
前記第1電源部が停止するときに、前記第1電源部は前記信号線を介して前記第2電源部に停止信号を出力し、前記第2電源部を停止させる二周波電源装置。
【請求項2】
前記第1電源部は、
交流電流を第1直流電流に変換して高電位側電位及び低電位側電位を出力する第1コンバータと、
前記第1直流電流を前記第1交流電流に変換する第1インバータと、
前記信号線に接続され、前記第1コンバータ及び前記第1インバータの異常を検出したときに前記停止信号を出力する第1異常検出部と、
を有し、
前記第2電源部は、
前記交流電流を第2直流電流に変換して高電位側電位及び低電位側電位を出力する第2コンバータと、
前記第2直流電流を前記第2交流電流に変換する第2インバータと、
前記信号線に接続され、前記第2コンバータ及び前記第2インバータの異常を検出する第2異常検出部と、
を有し、
前記第2異常検出部は、前記信号線を介して前記停止信号が入力されたときに、前記第2コンバータ及び前記第2インバータを停止させる請求項1に記載の二周波電源装置。
【請求項3】
前記第2コンバータは、
前記交流電流が入力されるサイリスタと、
前記サイリスタを制御するサイリスタ制御部と、
を有し、
前記第2インバータは、
前記高電位側電位と前記第2電源部の第1出力端子との間に接続された第1スイッチング素子と、
前記低電位側電位と前記第1出力端子との間に接続された第2スイッチング素子と、
前記高電位側電位と前記第2電源部の第2出力端子との間に接続された第3スイッチング素子と、
前記低電位側電位と前記第2出力端子との間に接続された第4スイッチング素子と、
前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子を制御するスイッチング素子制御部と、
を有し、
前記停止信号が前記第2異常検出部に入力された場合は、前記サイリスタ制御部は前記サイリスタを非導通状態とし、前記スイッチング素子制御部は前記第1スイッチング素子、前記第2スイッチング素子、前記第3スイッチング素子及び前記第4スイッチング素子を非導通状態とする請求項2に記載の二周波電源装置。
【請求項4】
前記第1交流電流の電圧及び電流を変換する第1変換器と、
前記第2交流電流の電圧及び電流を変換する第2変換器と、
をさらに備えた請求項1に記載の二周波電源装置。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1つに記載の二周波電源装置と、
前記二周波電源装置から前記第1交流電流と前記第2交流電流の合成電流が入力されるコイルと、
を備えた高周波加熱装置。
【請求項6】
請求項5に記載の高周波加熱装置と、
前記高周波加熱装置によって加熱されたワークを冷却する冷却装置と、
を備えた高周波焼入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、二周波電源装置、高周波加熱装置及び高周波焼入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼部材に対して焼入処理を施し、表面を硬化する技術が知られている。焼入処理においては、鋼部材を加熱する工程と、加熱した鋼部材を急冷する工程を続けて実施する。歯車等の複雑な形状の部材の表面を効果的に加熱する方法として、二種類の周波数の高周波を用いた高周波焼入処理が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
このような高周波焼入処理に用いられる二周波電源装置においては、信頼性の向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の実施形態の目的は、信頼性が高い二周波電源装置、高周波加熱装置及び高周波焼入装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態に係る二周波電源装置は、第1周波数の第1交流電流を出力する第1電源部と、前記第1周波数よりも高い第2周波数の第2交流電流を出力する第2電源部と、第1マッチングトランスを有し、前記第1交流電流が入力されたときに前記第1交流電流を出力可能な第1整合器と、第2マッチングトランスを有し、前記第2交流電流が入力されたときに前記第2交流電流を出力可能な第2整合器と、前記第1電源部を前記第2電源部に接続する信号線と、を備える。前記第1電源部が停止するときに、前記第1電源部は前記信号線を介して前記第2電源部に停止信号を出力し、前記第2電源部を停止させる。
【0007】
本発明の実施形態に係る高周波加熱装置は、前記二周波電源装置と、前記二周波電源装置から前記第1交流電流と前記第2交流電流の合成電流が入力されるコイルと、を備える。
【0008】
本発明の実施形態に係る高周波焼入装置は、前記高周波加熱装置と、前記高周波加熱装置によって加熱されたワークを冷却する冷却装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施形態によれば、信頼性が高い二周波電源装置、高周波加熱装置及び高周波焼入装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、第1の実施形態に係る高周波焼入装置を示すブロック図である。
【
図2】
図2は、第1の実施形態に係る高周波加熱装置を示すブロック図である。
【
図3】
図3(a)は第1電源部を示すブロック図であり、
図3(b)は第2電源部を示すブロック図である。
【
図4】
図4(a)は第1電源部のコンバータを示す回路図であり、
図4(b)は第2電源部のコンバータを示す回路図である。
【
図5】
図5は、第1電源部のインバータを示す回路図である。
【
図6】
図6は、第2電源部のインバータを示す回路図である。
【
図7】
図7(a)は、第1整合器を示す回路図であり、
図7(b)は第2整合器を示す回路図である。
【
図8】
図8は、横軸に時間をとり、縦軸に第1電源部の出力電圧をとって、実施形態におけるインバータの動作を示すタイミングチャートである。
【
図9】
図9(a)は横軸に時間をとり縦軸に第1電源部の出力電流をとって低周波電流の波形を示す図であり、
図9(b)は横軸に時間をとり縦軸に第2電源部の出力電流をとって高周波電流の波形を示す図であり、
図9(c)は横軸に時間をとり縦軸に変成器の出力電流をとって合成電流の波形を示す図である。
【
図10】
図10(a)~
図10(c)は、第2の実施形態における信号線の接続位置を示すブロック図である。
【
図11】
図11は、第3の実施形態に係る高周波加熱装置を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<第1の実施形態>
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る高周波焼入装置を示すブロック図である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態に係る高周波焼入装置100においては、高周波加熱装置101と、冷却装置102が設けられている。高周波加熱装置101は、ワーク200を誘導加熱する。ワーク200は鋼からなる部材であり、例えば、複雑な形状の部材であり、例えば、歯車である。高周波加熱装置101は、ワーク200の焼入予定部分、例えば、表面の一部をオーステナイト変態点よりも高い温度まで加熱する。冷却装置102は例えば水冷装置であり、高周波加熱装置101によって加熱されたワーク200を急冷する。
【0013】
図2は、本実施形態に係る高周波加熱装置を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態に係る高周波加熱装置101においては、二周波電源装置1と、コイル90が設けられている。コイル90はワーク200の近傍に配置され、二周波電源装置1から交流電流が供給される。これにより、コイル90はワーク200を誘導加熱する。高周波加熱装置101は、外部の制御盤300によって制御される。
【0014】
二周波電源装置1においては、第1電源部10と、第2電源部20と、信号線50と、第1整合器60と、第2整合器70と、第1変成器80aと、第2変成器80bと、が設けられている。第1電源部10は、外部から例えば交流電流I0が入力されて、第1周波数の低周波電流(第1交流電流)を出力する。第2電源部20は、交流電流I0が入力されて、第1周波数よりも高い第2周波数の高周波電流(第2交流電流)を出力する。一例では、第1周波数は3kHzであり、第2周波数は80kHzである。信号線50は、第1電源部10を第2電源部20に接続する。信号線50の役割については、後述する。
【0015】
第1整合器60は第1電源部10の出力端子に接続されている。第1整合器60は低周波電流にマッチングされており、第1電源部10から出力された低周波電流を通過させる。第2整合器70は第2電源部20の出力端子に接続されている。第2整合器70は高周波電流にマッチングされており、第2電源部20から出力された高周波電流を通過させる。第1整合器60と第1変成器80aとの間には、共振用の整合コンデンサ69が設けられており、低周波電流の周波数(第1周波数)で共振するように調整されている。第2整合器70と第2変成器80bとの間にも、共振用の整合コンデンサ79が設けられており、高周波電流の周波数(第2周波数)で共振するように調整されている。
【0016】
第1変成器80aは、第1整合器60から低周波電流が入力され、低周波電流の電圧及び電流を変換し、出力する。第2変成器80bは、第2整合器70から高周波電流が入力され、高周波電流の電圧及び電流を変換し、出力する。第1変成器80aには鉄芯トランスが設けられており、第2変成器80bには空芯トランスが設けられている。第1変成器80aから出力された低周波電流と第2変成器80bから出力された高周波電流は合成されて合成電流I3となり、コイル90に入力される。
【0017】
図3(a)は第1電源部を示すブロック図であり、
図3(b)は第2電源部を示すブロック図である。
図3(a)に示すように、二周波電源装置1の第1電源部10においては、外部から入力された交流電流I
0を直流電流I
11に変換するコンバータ30aと、コンバータ30aから出力された直流電流I
11を低周波電流I
12に変換するインバータ40aと、コンバータ30a及びインバータ40aの異常を検出する異常検出部15が設けられている。また、第1電源部10には、インバータ40aに接続された一対の出力端子11及び12が設けられている。異常検出部15には信号線50の一端が接続されている。なお、本明細書において、「直流」には、電流値が一定である狭義の直流の他に、脈流も含まれる。
【0018】
同様に、
図3(b)に示すように、第2電源部20においては、交流電流I
0を直流電流I
21に変換するコンバータ30bと、コンバータ30bから出力された直流電流I
21を高周波電流I
22に変換するインバータ40bと、コンバータ30b及びインバータ40bの異常を検出する異常検出部25が設けられている。また、第2電源部20には、インバータ40bに接続された一対の出力端子21及び22が設けられている。異常検出部25には信号線50の他端が接続されている。
【0019】
図4(a)は第1電源部のコンバータを示す回路図であり、
図4(b)は第2電源部のコンバータを示す回路図である。
図4(a)に示すように、第1電源部10のコンバータ30aにおいては、3本の配線31aと、6個のサイリスタ32aと、これらの6個のサイリスタ32aを制御するサイリスタ制御部33aと、高電位配線35aと、低電位配線36aが設けられている。3本の配線31aには、交流電流I
0として、例えば、商用の交流電流、例えば、440Vの三相電流が入力される。
【0020】
6個のサイリスタ32aは、各配線31aと高電位配線35aとの間、及び、各配線31aと低電位配線36aとの間にそれぞれ接続されている。高電位配線35aには3個のサイリスタ32aのカソードが接続されている。低電位配線36aには3個のサイリスタ32aのアノードが接続されている。各配線31aには、高電位配線35aに接続されたサイリスタ32aのアノードと、低電位配線36aに接続されたサイリスタ32aのカソードが接続されている。サイリスタ制御部33aは、サイリスタ32aのゲートに制御電位を出力する。これにより、サイリスタ制御部33aは、各サイリスタ32aを導通状態と非導通状態とに切り替える。
【0021】
コンバータ30aからは、高電位配線35aを介して高電位側電位が出力され、低電位配線36aを介して低電位側電位が出力される。この結果、コンバータ30aから高電位配線35a及び低電位配線36aを介して直流電流I11が出力される。
【0022】
同様に、
図4(b)に示すように、第2電源部20のコンバータ30bにおいては、3本の配線31bと、6個のサイリスタ32bと、これらの6個のサイリスタ32bを制御するサイリスタ制御部33bと、高電位配線35bと、低電位配線36bが設けられている。3本の配線31bには、第1電源部10に入力される電流と同じ交流電流I
0が入力される。
【0023】
6個のサイリスタ32bは、各配線31bと高電位配線35bとの間、及び、各配線31bと低電位配線36bとの間にそれぞれ接続されている。高電位配線35bには3個のサイリスタ32bのカソードが接続されている。低電位配線36bには3個のサイリスタ32bのアノードが接続されている。各配線31bには、高電位配線35bに接続されたサイリスタ32bのアノードと、低電位配線36bに接続されたサイリスタ32bのカソードが接続されている。サイリスタ制御部33bは、サイリスタ32bのゲートに制御電位を出力する。これにより、サイリスタ制御部33bは、各サイリスタ32bを導通状態と非導通状態とに切り替える。
【0024】
コンバータ30bからは、高電位配線35bを介して高電位側電位が出力され、低電位配線36bを介して低電位側電位が出力される。この結果、コンバータ30bから高電位配線35b及び低電位配線36bを介して直流電流I21が出力される。
【0025】
図5に示すように、第1電源部10のインバータ40aにおいては、スイッチング素子41a~44aと、スイッチング素子制御部45aと、コンデンサ46aが設けられている。スイッチング素子41a~44aは、例えば、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor:絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)である。なお、スイッチング素子41a~44aは、MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor:金属酸化物半導体電界効果トランジスタ)であってもよい。各スイッチング素子41a~44aには、スイッチング部分とダイオード部分とが設けられており、相互に並列に接続されている。スイッチング部分はゲートを含む。
【0026】
スイッチング素子41aは、高電位配線35a(高電位側電位)と第1電源部10の出力端子11との間に接続されている。スイッチング素子42aは、低電位配線36a(低電位側電位)と出力端子11との間に接続されている。スイッチング素子43aは、高電位配線35aと第1電源部10の出力端子12との間に接続されている。スイッチング素子44aは、低電位配線36aと出力端子12との間に接続されている。コンデンサ46aは高電位配線35aと低電位配線36aとの間に接続されている。
【0027】
スイッチング素子41a~44aの各ゲートはスイッチング素子制御部45aに接続されている。スイッチング素子制御部45aはスイッチング素子41a~44aの各ゲートに制御電位を印加することにより、スイッチング素子41a~44aのスイッチング部分の導通/非導通を相互に独立して切り替えることができる。
図5においては、出力端子11と出力端子12との間に第1負荷L1を接続している。第1負荷L1は、上述の第1整合器60、第1変成器80a及びコイル90を含んでいる。
【0028】
なお、高電位配線35aと低電位配線36aとの間には、スイッチング素子41a~44aからなるブリッジ回路が複数個、並列に接続されていてもよい。これにより、コイル90に供給する低周波電流を増加させることができる。
【0029】
図6に示すように、第2電源部20のインバータ40bの構成もインバータ40aと同様である。すなわち、インバータ40bにおいては、スイッチング素子41b~44bと、スイッチング素子制御部45bと、コンデンサ46bが設けられている。スイッチング素子41b~44bは、例えばIGBTであり、MOSFETであってもよい。各スイッチング素子41b~44bには、スイッチング部分とダイオード部分とが設けられており、相互に並列に接続されている。スイッチング部分はゲートを含む。
【0030】
スイッチング素子41bは、高電位配線35b(高電位側電位)と第2電源部20の出力端子21との間に接続されている。スイッチング素子42bは、低電位配線36b(低電位側電位)と出力端子21との間に接続されている。スイッチング素子43bは、高電位配線35bと第2電源部20の出力端子22との間に接続されている。スイッチング素子44bは、低電位配線36bと出力端子22との間に接続されている。コンデンサ46bは高電位配線35bと低電位配線36bとの間に接続されている。
【0031】
スイッチング素子41b~44bの各ゲートはスイッチング素子制御部45bに接続されている。スイッチング素子制御部45bはスイッチング素子41b~44bの各ゲートに制御電位を印加することにより、スイッチング素子41b~44bのスイッチング部分の導通/非導通を相互に独立して切り替えることができる。
図6においては、出力端子21と出力端子22との間に第2負荷L2を接続している。第2負荷L2は、上述の第2整合器70、第2変成器80b及びコイル90を含んでいる。
【0032】
高電位配線35bと低電位配線36bとの間には、スイッチング素子41b~44bからなるブリッジ回路が複数個、並列に接続されていてもよい。これにより、コイル90に供給する高周波電流を増加させることができる。
【0033】
図2並びに
図3(a)及び(b)に示すように、信号線50は第1電源部10の異常検出部15と第2電源部20の異常検出部25との間に接続されている。これにより、第1電源部10の異常検出部15が第1電源部10の異常を検出すると、停止信号を出力する。この停止信号は信号線50を介して第2電源部20の異常検出部25に伝達される。異常検出部25は、信号線50を介して停止信号が入力されると、サイリスタ制御部33bにサイリスタ33bを非導通状態にさせると共に、スイッチング素子制御部45bにスイッチング素子41b、42b、43b及び44bを非導通状態にさせる。
【0034】
図7(a)は、第1整合器を示す回路図であり、
図7(b)は第2整合器を示す回路図である。
図7(a)に示すように、第1整合器60においては、マッチングトランス61が設けられている。マッチングトランス61においては、切替スイッチ62と、一次コイル63と、二次コイル64と、鉄芯65が設けられている。一次コイル63は第1電源部10に接続されており、二次コイル64は低周波用の整合コンデンサ69に接続されている。切替スイッチ62は一次コイル63における電流が流れる部分の長さを選択することにより、一次コイル63のインピーダンスを制御する。一次コイル63と二次コイル64は鉄芯65に巻かれており、磁気的に相互に結合している。
【0035】
図7(b)に示すように、第2整合器70においては、マッチングトランス71が設けられている。マッチングトランス71においては、切替スイッチ72と、一次コイル73と、二次コイル74と、鉄芯75が設けられている。一次コイル73は第2電源部20に接続されており、二次コイル74は高周波用の整合コンデンサ79に接続されている。切替スイッチ72は一次コイル73における電流が流れる部分の長さを選択することにより、一次コイル73のインピーダンスを制御する。一次コイル73と二次コイル74は鉄芯75に巻かれており、磁気的に相互に結合している。
【0036】
次に、本実施形態に係る高周波焼入装置の動作について説明する。
図8は、横軸に時間をとり、縦軸に第1電源部の出力電圧をとって、本実施形態におけるインバータの動作を示すタイミングチャートである。
図9(a)は横軸に時間をとり縦軸に第1電源部の出力電流をとって低周波電流I
12の波形を示す図であり、
図9(b)は横軸に時間をとり縦軸に第2電源部の出力電流をとって高周波電流I
22の波形を示す図であり、
図9(c)は横軸に時間をとり縦軸に変成器の出力電流をとって合成電流I
3の波形を示す図である。
図8の縦軸が表す出力電圧は、出力端子12に対する出力端子11の電位である。
図8は、第1電源部10の動作を示しているが、第2電源部20の動作も同様である。第1電源部10及び第2電源部20の出力電圧は方形波であり、出力電流は正弦波である。
【0037】
図2に示すように、高周波加熱装置101は、外部の制御盤300によって制御される。制御盤300は、第1電源部10及び第2電源部20に対して、オン/オフ、並びに、オンの場合のそれぞれの出力レベルを示す信号を出力することにより、第1電源部10及び第2電源部20を制御する。第1電源部10のサイリスタ制御部33aは、制御盤300から入力された信号に基づいて、サイリスタ32aを制御する。スイッチング素子制御部45aは、制御盤300から入力された信号に基づいて、スイッチング素子41a、42a、43a及び44aを制御する。第2電源部20のサイリスタ制御部33bは、制御盤300から入力された信号に基づいて、サイリスタ32bを制御する。スイッチング素子制御部45bは、制御盤300から入力された信号に基づいて、スイッチング素子41b、42b、43b及び44bを制御する。
【0038】
図3(a)に示すように、第1電源部10のコンバータ30aには、配線31aを介して交流電流I
0が入力される。上述の如く、交流電流I
0は三相電流である。
図4(a)に示すように、コンバータ30aにおいては、サイリスタ制御部33aが6個のサイリスタ32aを制御することにより、交流電流I
0を整流して直流電流I
11を生成し、高電位配線35a及び低電位配線36aを介してインバータ40aに対して出力する。直流電流I
11の最大電圧は例えば550Vである。
【0039】
図5及び
図9に示すように、第1電源部10のスイッチング素子制御部45aは、第1導通期T1、第1不通期T2、第2導通期T3及び第2不通期T4を、この順に繰り返し実現する。
【0040】
第1導通期T1においては、スイッチング素子制御部45aは、スイッチング素子41a及びスイッチング素子44aを導通させ、スイッチング素子42a及びスイッチング素子43aを導通させない。これにより、第1負荷L1には
図5に実線の矢印A1で示す順方向の電圧が印加される。
【0041】
第1不通期T2においては、スイッチング素子制御部45aは、スイッチング素子41a、42a、43a及び44aを全て導通させない。このとき、スイッチング素子42a及び43aのダイオード部分には出力電流が流れるため、第1負荷L1には破線の矢印A2で示す逆方向の電圧が印加される。
【0042】
第2導通期T3においては、スイッチング素子制御部45aは、スイッチング素子42a及びスイッチング素子43aを導通させ、スイッチング素子41a及びスイッチング素子44aを導通させない。これにより、第1負荷L1には
図5に破線の矢印A2で示す逆方向の電圧が印加される。
【0043】
第2不通期T4においては、スイッチング素子制御部45aは、スイッチング素子41a、42a、43a及び44aを全て導通させない。このとき、スイッチング素子41a及び44aのダイオード部分には出力電流が流れるため、第1負荷L1には実線の矢印A1で示す順方向の電圧が印加される。このようにして、
図3(a)に示すように、インバータ40aは交流電流I
12を出力する。
図9(a)に示すように、交流電流I
12は低周波電流である。
【0044】
第2電源部20の動作も上述の第1電源部10の動作と同様である。すなわち、
図3(b)に示すように、第2電源部20のコンバータ30bには、配線31bを介して交流電流I
0が入力される。
図4(b)に示すように、コンバータ30bにおいては、サイリスタ制御部33bが6個のサイリスタ32bを制御することにより、交流電流I
0を直流電流I
21に変換し、高電位配線35b及び低電位配線36bを介してインバータ40bに出力する。そして、
図6に示すように、インバータ40bにおいて、スイッチング素子制御部45bがスイッチング素子41b~44bを制御することにより、第1導通期T1、第1不通期T2、第2導通期T3及び第2不通期T4を、この順に繰り返し実現する。このようにして、
図3(b)に示すように、インバータ40bは交流電流I
22を出力する。
図9(b)に示すように、交流電流I
22は高周波電流である。
【0045】
図2に示すように、低周波の整合コンデンサ69と第1整合器60のインダクタンスによる共振回路により第1周波数が選択されることにより、第1電源部10から出力された低周波電流が第1整合器60を通過する。同様に、高周波の整合コンデンサ79と第2整合器70のインダクタンスによる共振回路により第2周波数が選択されることにより、第2電源部20から出力された高周波電流が第2整合器70を通過する。第1整合器60から出力された低周波電流(交流電流I
12)は、第1変成器80aに入力される。第1変成器80aは、低周波電流(交流電流I
12)の電圧及び電流を変換し、出力する。第2整合器70から出力された高周波電流(交流電流I
22)は、第2変成器80bに入力する。第2変成器80bは、高周波電流(交流電流I
22)の電圧及び電流を変換し、出力する。変換後の低周波電流と高周波電流が合成されることにより、
図9(c)に示す合成電流I
3が生成される。そして、合成電流I
3がコイル90に入力される。
【0046】
これにより、コイル90は、ワーク200を誘導加熱する。このとき、コイル90には低周波成分及び高周波成分を含む合成電流I3が供給されるため、ワーク200が複雑な形状であっても、焼入予定部分を均一に加熱することが可能である。例えば、ワーク200が歯車である場合、低周波成分によってワーク200の歯底を加熱し、高周波成分によってワーク200の歯先を加熱する。
【0047】
図1に示すように、高周波加熱装置101がワーク200の焼入予定部分をオーステナイト変態点よりも高い温度まで加熱した後、冷却装置102がワーク200を急冷する。これにより、ワーク200の焼入予定部分に焼入処理が施される。
【0048】
次に、第1電源部10からコイル90を介して第2電源部20に流入する低周波電流、及び、第2電源部20からコイル90を介して第1電源部10に流入する高周波電流について説明する。
【0049】
図2に示すように、第1電源部10から出力された低周波電流I
12は、第1整合器60、整合コンデンサ69、第1変成器80a、コイル90、第2変成器80b、整合コンデンサ79、第2整合器70を介して第2電源部20に流入する。一方、第2電源部20から出力された高周波電流I
22は、第2整合器70、整合コンデンサ79、第2変成器80b、コイル90、第1変成器80a、整合コンデンサ69、第1整合器60を介して第1電源部10に流入する。
【0050】
次に、高周波加熱装置101の稼働中に第1電源部10に不具合が生じ、緊急停止した場合の動作について説明する。
第1電源部10に例えば過熱や過電流等の不具合が発生したときは、
図5に示すスイッチング素子制御部45aがスイッチング素子41a~44aを非導通状態にして、低周波電流の出力を停止する。
【0051】
また、
図3(a)に示す異常検出部15が第1電源部10の不具合、例えば、コンバータ30a又はインバータ40aの異常を検出すると、異常検出部15は信号線50を介して第2電源部20に対して停止信号を出力し、第2電源部20を停止させる。より具体的には、停止信号は信号線50を介して、第2電源部20の異常検出部25に入力される。これにより、異常検出部25がコンバータ30bのサイリスタ制御部33bに対して制御信号を出力し、サイリスタ制御部33bが全てのサイリスタ32bを非導通状態として、直流電流I
21の出力を停止する。また、異常検出部25がインバータ40bのスイッチング素子制御部45bに対して制御信号を出力し、スイッチング素子制御部45bがスイッチング素子41b~44bを非導通状態とする。このため、直流電流I
21の出力が停止されていない場合でも、交流電流I
22(高周波電流)の出力が停止される。この結果、第2電源部20からの高周波電流の出力が速やかに停止され、高周波電流が第1電源部10に流入して第1電源部10のスイッチング素子41a~44aが破壊されることを回避できる。
【0052】
なお、仮に信号線50が設けられていないと、第1電源部10に不具合が発生して第1電源部10が停止したときに、外部の制御盤300が第1電源部10の不具合を検知し、制御盤300のシーケンサーが第2電源部20を停止させることを判断し、第2電源部20に対して停止信号を出力する。この場合は、第1電源部10が停止してから第2電源部20が停止するまでに、一定の時間を要する。
【0053】
この場合は、
図5に示すように、第1電源部10のスイッチング素子41a~44aのスイッチング部分は全て非導通状態とされているため、第2電源部20からコイル90を介して流入した高周波電流は、スイッチング素子41a~44aのスイッチング部分は流れず、ダイオード部分のみを流れる。この結果、高周波電流はスイッチング素子41a~44aのダイオード部分によって整流されて、コンデンサ46aに蓄積される。スイッチング素子41a~44aは停止状態を継続するため、コンデンサ46aに蓄積される電荷は時間と共に増加する。コンデンサ46aに過大な電荷が蓄積されると、スイッチング素子41a~44aに過大な電圧が印加され、スイッチング素子41a~44aが破壊される場合がある。
【0054】
これに対して、本実施形態においては、第1電源部10から出力された停止信号が信号線50を介して直接第2電源部20に入力されるため、制御盤300を介する場合と比較して短時間で第2電源部20を停止することができる。この結果、コンデンサ46aに蓄積される電荷量を抑制し、スイッチング素子41a~44aを保護することができる。この結果、信頼性が高い二周波電源装置1、高周波加熱装置101及び高周波焼入装置100を実現することができる。
【0055】
一例では、制御盤300を介して第2電源部20を停止させた場合は、第1電源部10が停止してから第2電源部20が停止するまでの時間が40msであったのに対し、信号線50を介して第2電源部20を停止させた場合は、0.12msであった。
【0056】
なお、第2電源部20に不具合が発生し、第2電源部20が第1電源部10よりも先に停止した場合は、第1電源部10から出力された低周波電流の一部が第2電源部20に流入し、第2電源部のコンデンサ46bに蓄積される。しかしながら、第2電源部20が第1電源部10よりも先に停止した場合は、第1電源部10が第2電源部20よりも先に停止した場合よりも、スイッチング素子が破壊される確率が小さい。これは、低周波電流は第2整合器70を通過しにくいからである。この理由の1つとして、第2変成器80bが空芯トランスであることが挙げられる。
【0057】
<第2の実施形態>
第2の実施形態は、電源部に異常検出部を設けない例である。
図10(a)~
図10(c)は、本実施形態における信号線の接続位置を示すブロック図である。
【0058】
図10(a)に示すように、本実施形態に係る二周波電源装置2においては、第2電源部20に信号線51が設けられている。また、第1電源部10に異常検出部15が設けられておらず、第2電源部20に異常検出部25が設けられていない。
【0059】
信号線50の一端は第1電源部10のインバータ40aのスイッチング素子制御部45aに接続されている。信号線50の他端は第2電源部20のコンバータ30bのサイリスタ制御部33bに接続されている。また、信号線51の一端は第2電源部20のサイリスタ制御部33bに接続されており、信号線51の他端は第2電源部20のスイッチング素子制御部45bに接続されている。これにより、第1電源部10のスイッチング素子制御部45aから出力された停止信号が信号線50を介して第2電源部20のサイリスタ制御部33bに入力される。サイリスタ制御部33bは信号線50を介して停止信号が入力されると、信号線51を介して停止信号を出力する。そして、サイリスタ制御部33bから出力された停止信号が信号線51を介してスイッチング素子制御部45bに入力される。
【0060】
なお、信号線50の他端は、サイリスタ制御部33b及びスイッチング素子制御部45bのうち少なくとも一方に接続されていればよい。例えば、
図10(b)に示すように、信号線50の他端はスイッチング素子制御部45bに接続されており、スイッチング素子制御部45bから信号線51を介してサイリスタ制御部33bに停止信号が伝達されてもよい。この場合は、第1電源部10のスイッチング素子制御部45aから出力された停止信号が信号線50を介して第2電源部20のスイッチング素子制御部45bに入力され、スイッチング素子制御部45bから出力された停止信号は信号線51を介してサイリスタ制御部33bに入力される。
【0061】
または、
図10(c)に示すように、信号線50はサイリスタ制御部33b及びスイッチング素子制御部45bの双方に接続されており、第1電源部10のスイッチング素子制御部45aから出力された停止信号が第2電源部20のサイリスタ制御部33b及びスイッチング素子制御部45bに同時に入力されてもよい。この場合は、第1電源部10のスイッチング素子制御部45aから出力された停止信号が信号線50を介して第2電源部20のサイリスタ制御部33b及びスイッチング素子制御部45bの双方に入力される。なお、この場合は、信号線51は不要である。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0062】
<第3の実施形態>
第3の実施形態は、低周波電流と高周波電流の共用の変成器を設ける例である。
図11は、本実施形態に係る高周波加熱装置を示すブロック図である。
【0063】
図11に示すように、本実施形態に係る二周波電源装置3は、第1の実施形態に係る二周波電源装置1(
図2参照)と比較して、第1変成器80a及び第2変成器80bの替わりに1つの変成器80が設けられている点が異なっている。変成器80には、整合コンデンサ69から低周波電流が入力されると共に、整合コンデンサ79から高周波電流が入力される。変成器80は低周波電流の電流及び電圧を変換すると共に高周波電流の電流及び電圧を変換し、変換後の低周波電流と高周波電流を合成して、合成電流I
3を生成する。そして、変成器80は合成電流I
3をコイル90に対して出力する。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、第1の実施形態と同様である。
【0064】
前述の各実施形態は、本発明を具現化した例であり、本発明はこれらの実施形態には限定されない。例えば、前述の各実施形態において、いくつかの構成要素を追加、削除又は変更したものも本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0065】
1、2、3:二周波電源装置
10:第1電源部
11、12:出力端子
15:異常検出部
20:第2電源部
21、22:出力端子
25:異常検出部
30a、30b:コンバータ
31a、31b:配線
32a、32b:サイリスタ
33a、33b:サイリスタ制御部
35a、35b:高電位配線
36a、36b:低電位配線
40a、40b:インバータ
41a~44b:スイッチング素子
45a、45b:スイッチング素子制御部
46a、46b:コンデンサ
50:信号線
51:信号線
60:第1整合器
61:マッチングトランス
62:切替スイッチ
63:一次コイル
64:二次コイル
65:鉄芯
69:整合コンデンサ
70:第2整合器
71:マッチングトランス
72:切替スイッチ
73:一次コイル
74:二次コイル
75:鉄芯
79:整合コンデンサ
80:変成器
80a:第1変成器
80b:第2変成器
90:コイル
100:高周波焼入装置
101:高周波加熱装置
102:冷却装置
200:ワーク
300:制御盤
I0:交流電流
I11:直流電流
I12:交流電流(低周波電流)
I21:直流電流
I22:交流電流(高周波電流)
I3:合成電流