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特開2024-143676アンダーパス工法用箱形ルーフパイプ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024143676
(43)【公開日】2024-10-11
(54)【発明の名称】アンダーパス工法用箱形ルーフパイプ
(51)【国際特許分類】
   E21D 9/04 20060101AFI20241003BHJP
【FI】
E21D9/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023056464
(22)【出願日】2023-03-30
(71)【出願人】
【識別番号】000140292
【氏名又は名称】株式会社奥村組
(71)【出願人】
【識別番号】592069137
【氏名又は名称】植村技研工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川合 洋二
(72)【発明者】
【氏名】金子 大貴
【テーマコード(参考)】
2D054
【Fターム(参考)】
2D054AB05
2D054AC15
2D054AC18
2D054AD23
2D054AD27
2D054AD32
(57)【要約】
【課題】簡易な構成によって、上方からの荷重を効果的に支持できると共に、効果的にフリクションカットできるアンダーパス工法用箱形ルーフパイプを提供する。
【解決手段】分離可能に連結されたコの字状上部扁平ピース11とコの字状下部ピース12とからなり、コの字状上部扁平ピース11の天板部11aの下面側に、高さ調整金物13が、箱形ルーフパイプ10の軸方向に延設されていると共に、天板部11aと平行に配置されて固着されている。高さ調整金物13には、箱形ルーフパイプ10の軸方向と垂直で、天板部11aと平行な回転軸を有する回転ローラ14aを含む耐荷ローラ部材14が取り付けられる。函体構造物15の天面部15aとコの字状上部扁平ピース11との間に耐荷ローラ部材14を介在させて、上方からの荷重を支持しつつ函体構造物15をスライド移動させる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンダーパス工法において、既存構造物の下方の地盤に先行して設置されて、矩形断面形状を有する函体構造物の天面部と置き換えられることで、前記既存構造物の直下部分の地盤を横断して前記函体構造物による地下空間を形成するための、天面部箱形ルーフを構成する略四辺形状の中空断面形状を有するアンダーパス工法用箱形ルーフパイプであって、
当該箱形ルーフパイプは、前記既存構造物の下方の地盤における前記函体構造物の計画設置領域の天面部分に沿って、横幅方向に連設して複数配置されることで、前記天面部箱形ルーフを形成するようになっており、
当該箱形ルーフパイプは、略四辺形状の中空断面形状を備えていると共に、両側の側板部の各上端部分で上下に分離可能に連結されたコの字状上部扁平ピースと、コの字状下部ピースとからなり、前記コの字状上部扁平ピースには、これの天板部の下面側に支持されて、帯板形状の高さ調整金物が、当該箱形ルーフパイプの軸方向に延設されていると共に、前記天板部と平行に配置されて固着されており、
前記既存構造物の下方の地盤に前記天面部箱形ルーフが設置された後に、前記函体構造物が推進される際に、前記コの字状下部ピースが前記コの字状上部扁平ピースから分離されて前記函体構造物の天面部と置き換えられると共に、前記コの字状上部扁平ピースを残置させてフリクションカット部材として機能させることを可能にし、且つ前記高さ調整金物には、当該箱形ルーフパイプの軸方向と垂直で、且つ前記コの字状上部扁平ピースの前記天板部の上面と平行な回転軸を有する回転ローラを含む耐荷ローラ部材が、高さを調整可能に取り付けられて、前記函体構造物の天面部と前記コの字状上部扁平ピースとの間に介在することで、上方からの荷重を支持しつつ前記函体構造物をスライド移動させることを可能にするアンダーパス工法用箱形ルーフパイプ。
【請求項2】
前記コの字状上部扁平ピースと前記コの字状下部ピースとが、ピン接合により上下に分離可能に連結されている請求項1記載のアンダーパス工法用箱形ルーフパイプ。
【請求項3】
略四辺形状の中空断面形状を有する複数の単位箱形ルーフパイプを、軸方向に連結一体化して形成されている請求項1又は2記載のアンダーパス工法用箱形ルーフパイプ。
【請求項4】
前記単位箱形ルーフパイプは、所定の長さの単位コの字状上部扁平ピースの下方に、これよりも長さの短い複数の単位コの字状下部ピースを、軸方向に連結一体化させた状態で上下に分離可能に連結して形成されている請求項3記載のアンダーパス工法用箱形ルーフパイプ。
【請求項5】
横幅が800~1400mm、縦幅が800~1400mmの大きさの、略四辺形状の中空断面形状を有している請求項1又は2記載のアンダーパス工法用箱形ルーフパイプ。
【請求項6】
前記函体構造物の前面部分の切羽で掘削作業を行う、R&C工法(登録商標)において用いられる請求項1又は2記載のアンダーパス工法用箱形ルーフパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンダーパス工法用箱形ルーフパイプに関し、特に、アンダーパス工法において、函体構造物と置き換えられる天面部箱形ルーフを構成する、略四辺形状の中空断面形状を有するアンダーパス工法用箱形ルーフパイプに関する。
【背景技術】
【0002】
アンダーパス工法は、例えば既存の鉄道や道路等の既存構築物の下方の地盤に、これらを横断する地下空間を形成するための工法として採用されるものであり、R&C工法(登録商標)(例えば、特許文献1参照)やSFT工法(登録商標)(例えば、特許文献2参照)等が知られている。アンダーパス工法は、例えば地下空間の形成予定箇所となる既存構築物の下方の地盤に、箱形パイプ部材を連設させて設置することにより、既設構築物を下方から支えて支持する天面部箱形ルーフ、及び側面部箱形ルーフを形成した後に、形成した天面部箱形ルーフや側面部箱形ルーフを、地下空間の形成予定箇所に矩形断面形状を備える函体構造物を推進させて置換することによって、置換した函体構造物による地下空間を形成するようになっている。
【0003】
また、アンダーパス工法では、形成した天面部箱形ルーフや側面部箱形ルーフを、推進させた矩形断面形状を備える函体構造物と置換する際に、特に天面部箱形ルーフや函体構造物の天面部と、これらの上方の地盤との間の摩擦力によって、天面部箱形ルーフや函体構造物が押し出されるのに伴って、上方の地盤に影響を及ぼす恐れがあることから、天面部箱形ルーフの上面部に分離可能に予め取り付けられたフリクションカットプレートを、地中に残置したまま、天面部箱形ルーフや函体構造物を押し出すことで、これらの上方の地盤との摩擦力を、残置させたフリクションカットプレートによりカットして、上方の地盤に影響が及ばないようにしている。このフリクションカットプレートは、天面部箱形ルーフの上面に配置された状態で地盤に設置され、箱形ルーフを函体構造物と置換する際には、地盤の両端(発進側と到達側)を固定した状態で、箱形ルーフから切り離されることにより地中に残置されることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007-177553号公報
【特許文献2】特開2012-144942号公報
【特許文献3】特開2001-73670号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、近年、例えばアンダーパス工法によって、より大きな中空断面形状を有する地下空間を、地中のより深い位置に形成することが要望されており、これによって天面部箱形ルーフや函体構造物の天面部には、推進時により大きな土圧や水圧による荷重が負荷されると共に、より大きな摩擦力が上方の地盤との間に生じることから、従来の箱形ルーフ工法では、安定した状態でフリクションカットしながら、天面部箱形ルーフや函体構造物を推進させることが困難になる。
【0006】
また、特許文献3には、到達坑を築造できない場合でも、アンダーパス工法によって地下構造物を構築できるようにする技術が開示されており、この特許文献3によれば、ルーフ用筒体の上部に分離可能に配設したフリクションカットプレートを地中に残置しながら、地下構造物を推進させる際に、短尺の分割体を長さ方向に連結した構成した当該ルーフ用筒体を、地下構造物の先端刃口の位置で、後部の分割体から順次撤去して、到達坑側に回収できるようになっている。またルーフ用筒体の上部に、長さ方向に延設する複数本の補強用のフリクションカット鋼材を結合して、フリクションカットプレートとの間に介在させることで、フリクションカットプレートが上方からの荷重を受けてたわむのを、防止できるようにしている。
【0007】
しかしながら、特許文献3のアンダーパス工法に用いるルーフ用筒体(箱形ルーフパイプ)では、上部に複数の補強用のフリクションカット鋼材を結合して、これらの複数のフリクションカット鋼材を介在させた状態で、フリクションカットプレートを取り付けるものであることから、その構成が複雑になると共に、ルーフ用筒体の全断面だけでなく、その上方のフリクションカット鋼材及びフリクションカットプレートの領域まで、ルーフ用筒体の先端の内部から掘削作業を行なう必要があるため、このような掘削作業は困難になる。また、フリクションカットプレートの下方を地下構造物が通過してゆく際に、フリクションカット鋼材と地下構造物の天面部との間には、依然として相当程度の摩擦力が生じることになる。このため、アンダーパス工法において特に天面部箱形ルーフに用いる箱形ルーフパイプについて、より簡易な構成によって上方からの荷重を支持しつつ、効果的にフリクションカットできるように、さらなる改善が求められている。
【0008】
本発明は、パイプの外側に補強用の鋼材を設けることなく、より簡易な構成によって、上方からの荷重を効果的に支持できると共に、下方を通過してゆく地下構造物(函体構造物)との間に大きな摩擦力を生じさせることなく、効果的にフリクションカットすることのできるアンダーパス工法用箱形ルーフパイプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、アンダーパス工法において、既存構造物の下方の地盤に先行して設置されて、矩形断面形状を有する函体構造物の天面部と置き換えられることで、前記既存構造物の直下部分の地盤を横断して前記函体構造物による地下空間を形成するための、天面部箱形ルーフを構成する略四辺形状の中空断面形状を有するアンダーパス工法用箱形ルーフパイプであって、当該箱形ルーフパイプは、前記既存構造物の下方の地盤における前記函体構造物の計画設置領域の天面部分に沿って、横幅方向に連設して複数配置されることで、前記天面部箱形ルーフを形成するようになっており、当該箱形ルーフパイプは、略四辺形状の中空断面形状を備えていると共に、両側の側板部の各上端部分で上下に分離可能に連結されたコの字状上部扁平ピースと、コの字状下部ピースとからなり、前記コの字状上部扁平ピースには、これの天板部の下面側に支持されて、帯板形状の高さ調整金物が、当該箱形ルーフパイプの軸方向に延設されていると共に、前記天板部と平行に配置されて固着されており、前記既存構造物の下方の地盤に前記天面部箱形ルーフが設置された後に、前記函体構造物が推進される際に、前記コの字状下部ピースが前記コの字状上部扁平ピースから分離されて前記函体構造物の天面部と置き換えられると共に、前記コの字状上部扁平ピースを残置させてフリクションカット部材として機能させることを可能にし、且つ前記高さ調整金物には、当該箱形ルーフパイプの軸方向と垂直で、且つ前記コの字状上部扁平ピースの前記天板部の上面と平行な回転軸を有する回転ローラを含む耐荷ローラ部材が、高さを調整可能に取り付けられて、前記函体構造物の天面部と前記コの字状上部扁平ピースとの間に介在することで、上方からの荷重を支持しつつ前記函体構造物をスライド移動させることを可能にするアンダーパス工法用箱形ルーフパイプを提供することにより、上記目的を達成したものである。
【0010】
そして、本発明のアンダーパス工法用箱形ルーフパイプは、前記コの字状上部扁平ピースと前記コの字状下部ピースとが、ピン接合により上下に分離可能に連結されていることが好ましい。
【0011】
また、本発明のアンダーパス工法用箱形ルーフパイプは、略四辺形状の中空断面形状を有する複数の単位箱形ルーフパイプを、軸方向に連結一体化して形成されていることが好ましい。
【0012】
さらに、本発明のアンダーパス工法用箱形ルーフパイプは、前記単位箱形ルーフパイプが、所定の長さの単位コの字状上部扁平ピースの下方に、これよりも長さの短い複数の単位コの字状下部ピースを、軸方向に連結一体化させた状態で上下に分離可能に連結して形成されていることが好ましい。
【0013】
さらにまた、本発明のアンダーパス工法用箱形ルーフパイプは、横幅が800~1400mm、縦幅が800~1400mmの大きさの、略四辺形状の中空断面形状を有していることが好ましい。
【0014】
また、本発明のアンダーパス工法用箱形ルーフパイプは、前記函体構造物の前面部分の切羽で掘削作業を行う、R&C工法(登録商標)において用いられるようになっていることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のアンダーパス工法用箱形ルーフパイプによれば、パイプの外側に補強用の鋼材を設けることなく、より簡易な構成によって、上方からの荷重を効果的に支持できると共に、下方を通過してゆく地下構造物(函体構造物)との間に大きな摩擦力を生じさせることなく、効果的にフリクションカットすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の好ましい一実施形態に係るアンダーパス工法用箱形ルーフパイプを説明する、(a)は横断面図、(b)はコの字状上部扁平ピースとコの字状下部ピースを分離した状態の横断面図である。
図2】耐荷ローラ部材を例示する斜視図である。
図3】箱形ルーフパイプを推進して天面部箱形ルーフを形成する工程を説明する略示縦断面図である。
図4】箱形ルーフパイプを推進して箱形ルーフを形成する工程を説明する、(a)は略示縦断面図、(b)は(a)のA-Aに沿った略示縦断面図である。
図5】作業用立坑の内部で函体構造物を形成する状況を説明する略示縦断面図である。
図6】作業用立坑の内部で函体構造物を形成する状況を説明する略示斜視図である。
図7】R&C工法によって、箱形ルーフの内側の地盤を掘削しながら函体構造物を推進する状況を説明する略示縦断面図である。
図8】R&C工法によって、箱形ルーフの内側の地盤を掘削しながら函体構造物を推進する状況を説明する略示斜視図である。
図9】既存構造物の下方を横断して形成された函体構造物による地下空間を説明する略示縦断面図である。
図10】既存構造物の下方を横断して形成された函体構造物による地下空間を説明する略示斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1(a)、(b)に示す本発明の好ましい一実施形態に係るアンダーパス工法用箱形ルーフパイプ10は、アンダーパス工法として、例えば図3図8に示すような、既存構造物30の下方の地盤に、先行して設置された箱形ルーフ20の天面部箱形ルーフ21と置き換えるようにして、既存構造物30の直下部分を横断して設置した函体構造物15によって、他の新設の地下空間26(図9図10参照)を形成することが可能な、R&C工法(登録商標)において、天面部箱形ルーフ21を構成する各々の箱形のパイプ部材として用いられる。本実施形態では、作業用立坑31を形成するのに十分な広さの敷地を確保できず、したがって狭い空間の作業用立坑31において、R&C工法の各々の作業工程が実施されるようになっている。また、既存構造物30を挟んだ函体構造物15の到達側にも、既存の設備構造物40(図3図5参照)が地下構造物として形成されていることから、発進側の立坑のみを作業用立坑31として、到達側に立坑を設けることなく、R&C工法の各々の作業工程が実施されるようになっている。
【0018】
本実施形態のアンダーパス工法用箱形ルーフパイプ10は、上下に分離可能に連結されたコの字状上部扁平ピース11と、コの字状下部ピース12とからなり、コの字状上部扁平ピース11を地中に残置させてフリクションカット部材として用いることで、パイプの外側に補強用の鋼材を設けることなく、より簡易な構成によって、上方からの荷重を効果的に支持することを可能にし、また下方を通過してゆく函体構造物15との間の大きな摩擦力を生じさせることなく、効果的にフリクションカットできるようにする構成を備えている。
【0019】
そして、本実施形態のアンダーパス工法用箱形ルーフパイプ10は、アンダーパス工法において、既存構造物30の下方の地盤に先行して設置されて、矩形断面形状を有する函体構造物15の天面部15aと置き換えられることで(図7参照)、既存構造物30の直下部分の地盤を横断して函体構造物15による地下空間26(図9図10参照)を形成するための、天面部箱形ルーフ21を構成する略四辺形状の中空断面形状を有するアンダーパス工法用の箱形のパイプ部材であって、当該箱形ルーフパイプ10は、既存構造物30の下方の地盤における函体構造物15の計画設置領域の天面部分に沿って、横幅方向に連設して複数配置されることで、天面部箱形ルーフ21を形成するようになっている(図3図4(b)参照)。箱形ルーフパイプ10は、図1(a)、(b)に示すように、略四辺形状の中空断面形状を備えていると共に、両側の側板部10aの各上端部分で上下に分離可能に連結されたコの字状上部扁平ピース11と、コの字状下部ピース12とからなり、コの字状上部扁平ピース11には、これの天板部11aの下面側に支持されて、帯板形状の高さ調整金物13が、当該箱形ルーフパイプ10の軸方向に延設されていると共に、天板部11aと平行に配置されて固着されている。コの字状上部扁平ピース11は、コの字状下部ピース12よりも高さが低くなっている。既存構造物30の下方の地盤に天面部箱形ルーフ21が設置された後に、函体構造物15が推進される際に、コの字状下部ピース12がコの字状上部扁平ピース11から分離されて函体構造物15の天面部15aと置き換えられると共に、コの字状上部扁平ピース11を残置させてフリクションカット部材として機能させることを可能にし(図7参照)、且つ高さ調整金物13には、当該箱形ルーフパイプ10の軸方向と垂直で、且つコの字状上部扁平ピース11の天板部11aの上面と平行な回転軸を有する回転ローラ14aを含む耐荷ローラ部材14(図2参照)が、高さを調整可能に取り付けられて、函体構造物15の天面部15aとコの字状上部扁平ピース11との間に介在することで、上方からの荷重を支持しつつ函体構造物15をスライド移動させることを可能にしている。
【0020】
本実施形態では、好ましくはR&C工法によって、既存構造物30の下方の地盤に函体構造物15による地下空間26を形成する作業に先立って、既存構造物30を挟んだ一方側に、作業基地となる作業用立坑31(図3参照)を形成する。本実施形態では、上述のように、既存構造物30を挟んだ他方側には、他の既存の設備構造物40が形成されていることから、一方側のみに作業用立坑31を形成して、各々の作業工程を実施するようになっている。作業用立坑31は、例えばシールド掘進機によるシールド工法において形成される立坑と同様に、止水性に富んだ好ましくはSMW工法による地盤改良と矢板を用いた土留壁32を形成して、これの内側を山留しつつ所定の深さまで掘削することにより、容易に形成することができる。作業用立坑31側の表面は矢板で保護され、切梁等の支保工によって支持される。形成された作業用立坑31には、箱形ルーフパイプ10や函体構造物15を推進させる推進設備や、箱形ルーフパイプ10のコの字状下部ピース12を撤去する際の撤去設備等が、適宜設置されることになる(図5参照)。
【0021】
また、本実施形態では、図3及び図4(a)、(b)に示すように、形成した作業用立坑31に公知の推進設備(図示せず。)を設置して、従来のR&C工法と同様に、天面部箱形ルーフ21を形成する複数の箱形ルーフパイプ10や、側面部箱形ルーフ22及び底面部箱形ルーフ23を形成する箱形ルーフパイプ10’,10”の各々を、函体構造物15の計画設置領域の天面部分、両側の側面部分、及び底面部分の両端部分に沿って、計画設置領域における函体構造物15の横断方向と垂直な断面の周方向に並べて連設させるようにして、作業用立坑31から既存構造物30の下方の地盤に、推進させて押し込むことができる。これによって、既存構造物30の直下部分を横断する天面部箱形ルーフ21及び側面部箱形ルーフ22に加えて、好ましくは両側の端部角部部分の底面部箱形ルーフ23を含む、箱形ルーフ20を形成することが可能になる。
【0022】
ここで、天面部箱形ルーフ21を形成する箱形ルーフパイプ10は、各々、好ましくは横幅が800~1400mm、縦幅が800~1400mm程度の大きさの、略四辺形状の中空断面形状(本実施形態では略正方形の中空断面形状)を有しており、作業員が立ち入って作業を行える程度の空間を内部に備えている。側面部箱形ルーフ22や底面部箱形ルーフ23を形成する箱形ルーフパイプ10’,10”は、例えば縦横800~1400mm程度の大きさの中空の略正方形の断面形状を有しており、本実施形態では、作業用立坑31に回収されることなく、地中に残置されたまま埋設されるものとなっている(図10参照)。これらの箱形ルーフパイプ10,10’,10”は、適宜の長さに分割した単位パイプを順次継ぎ足しながら、既存地下構造物30の直下部分の地盤を横断するのに十分な延長で、地中に設置されることになる。
【0023】
そして、天面部箱形ルーフ21を形成する本実施形態の箱形ルーフパイプ10は、上述のように、略四辺形状(略正方形)の中空断面形状を備えていると共に、両側の側板部10aの各上端部分で上下に分離可能に連結されたコの字状上部扁平ピース11と、コの字状下部ピース12とからなり、コの字状上部扁平ピース11には、これの天板部11aの下面側に支持されて、帯板形状の高さ調整金物13が、当該箱形ルーフパイプ10の軸方向に延設されていると共に、天板部11aと平行に配置されて固着されている。
【0024】
本実施形態では、箱形ルーフパイプ10は、図1(a)、(b)に示すように、例えば横幅が1400mm、縦幅が1400mm程度の大きさの、略正方形の中空断面形状を有しており、例えば両側の側板部10aにおける底板部10bから1250mm程度の高さ位置の上端部分において、コの字状上部扁平ピース11とコの字状下部ピース12とが、着脱が容易な好ましくはピン接合によって、上下に分離可能に一体として連結されている。すなわち、コの字状下部ピース12の上端縁部には、内側に張り出すようにして、下部フランジ12aが溶接等により固着されて取り付けられていると共に、下部フランジ12aから上方に突出して、係合ピン12bが、箱形ルーフパイプ10の長さ方向に所定の間隔をおいて配置されて立設している。コの字状上部扁平ピース11の下端縁部には、内側に張り出すようにして、上部フランジ11bが溶接等により固着して取り付けられていると共に、上部フランジ11bには、下部フランジ12aの係合ピン12bと対応する位置に、係合ピン12bを係合させる係合孔が、箱形ルーフパイプ10の長さ方向に所定の間隔をおいて配置されて形成されている。下部フランジ12aの係合ピン12bを、上部フランジ11bの係合孔に各々係合させることで、コの字状上部扁平ピース11とコの字状下部ピース12とを、容易に分離可能な状態で、上下に一体として連結しておくことができる。
【0025】
また、本実施形態では、コの字状上部扁平ピース11の天板部11aの下面における、横幅方向の中央部分に溶接等により固着されて、下方に突出する一対の線状凸リブ11cが、箱形ルーフパイプ10の長さ方向に、互いに平行に延設して取り付けられている。これらの線状凸リブ11cを介して天板部11aの下面側に支持させて、帯板形状の高さ調整金物13が、当該線状凸リブ11cに溶接等により固着されて取り付けられている。高さ調整金物13は、線状凸リブ11cと同様に、箱形ルーフパイプ10の長さ方向に延設されていると共に、天板部11aと平行に配置されて、上部フランジ11bを超えて下方に突出しない高さ位置に取り付けられることになる。高さ調整金物13の下面側には、コの字状上部扁平ピース11からコの字状下部ピース12が分離されて、コの字状上部扁平ピース11がフリクションカット部材として機能する際に、函体構造物15の天面部15aが下方を通過するのに先立って、図2に示す耐荷ローラ部材14が、箱形ルーフパイプ10の長さ方向に所定の間隔をおいて取り付けられることになる。耐荷ローラ部材14は、回転ローラ14aの下端部が、好ましくは上部フランジ11bよりも下方の位置として、例えば天板部11aから200mm程度の高さ位置に配置されるように、高さを調整した状態で、高さ調整金物13の下面側に取り付けられることになる。
【0026】
本実施形態では、箱形ルーフパイプ10は、好ましく略四辺形状(略正方形)の中空断面形状を有する例えば3m程度の長さの複数の単位箱形ルーフパイプを、公知のボルト接合やピン接合等の接合手段を用いて、軸方向に連結一体化して所定の長さに形成されるようになっている。
【0027】
また、本実施形態では、単位箱形ルーフパイプは、所定の長さとして、例えば3mの長さの単位コの字状上部扁平ピースの下方に、これよりも長さの短い例えば1mの長さの複数の単位コの字状下部ピース12c(図7図8参照)を、軸方向に連結一体化させた状態で、上下に分離可能に連結して形成されている。これによって、後述するように、天面部箱形ルーフ21を形成する箱形ルーフパイプ10を、フリクションカット部材となるコの字状上部扁平ピース11を構成する単位コの字状上部扁平ピースの各々を地中に残置したまま、コの字状下部ピース12を、単位コの字状下部ピース12c毎に、後端部の当該単位コの字状下部ピース12cから、函体構造物15の内側に、順次撤去できるようになっている。これらの単位コの字状下部ピース12cは、公知のボルト接合やピン接合等の接合手段を用いて、軸方向に連結一体化しておくことができる。
【0028】
既存構造物30の直下部分を横断する函体構造物15の計画設置領域に、天面部箱形ルーフ21、側面部箱形ルーフ22、及び底面部箱形ルーフ23を含む、箱形ルーフ20を形成したら、本実施形態では、好ましくは側面部箱形ルーフ22及び底面部箱形ルーフ23を地中に残置したまま、天面部箱形ルーフ21のみを天面部15aと置き換えるようにして、作業用立坑31から、当該作業用立坑31に設置した推進設備27によって、函体構造物15を既存構造物30の直下部分の地盤に向けて推進させることにより、函体構造物15による地下空間26を形成することができる(図7図10参照)。
【0029】
本実施形態では、上述のように、狭い空間の作業用立坑31での作業になることから、函体構造物15は、軸方向に連続して連結一体化される複数のプレキャストコンクリート製の単位函体16によって、形成されるようになっている。また単位函体16は、周方向に分割された複数の分割ピースであるプレキャストピース16aを、作業用立坑31において一体として組み付けることで、例えば推進設備27のジャッキストロークに相当する、1m程度の厚さを備えるように形成されることになる。すなわち、各々の単位函体16は、図5及び図6に示すように、地上から作業用立坑31に吊り込まれたプレキャストピース16aを、作業用立坑31において組み付けることによって形成されると共に、形成された単位函体16は、軸方向に順次連接されて、作業用立坑31に設置した推進設備27によって、函体構造物15として既存構造物30の直下部分の地盤に向けて推進されてゆくことになる(図7参照)。
【0030】
このようにして、例えば推進設備27のジャッキストローク毎に形成された単位函体16は、従来のR&C工法と同様に、函体構造物15の構成部材として、函体構造物15の推進方向にこれの後方側から順次連接して組み付けられる。これによって形成される函体構造物15は、図7に示すように、天面部15aを天面部箱形ルーフ21の各々の箱形ルーフパイプ10のコの字状下部ピース12と置き換えるようにしながら、各々のコの字状上部扁平ピース11をフリクションカット部材として地中に残置したまま、作業用立坑31から既存構造物30の直下部分の地盤に向けて推進されるようになっている。これによって、当該函体構造物15による地下空間26を、既存構造物30の直下部分の地盤を横断させて、形成することが可能になる(図9図10参照)。
【0031】
また、本実施形態では、上述のように、好ましくはR&C工法によるアンダーパス工法として、図7に示すように、切羽部28において箱形ルーフ20の内側の地盤を掘削しながら函体構造物15が推進されると共に、発進側の立坑のみを作業用立坑31としていることから、図8にも示すように、天面部箱形ルーフ21を構成する箱形ルーフパイプ10のコの字状上部扁平ピース11とコの字状下部ピース12とを、係合ピン12bを引き抜くことにより分離して、単位コの字状下部ピース12c毎に作業用立坑31に回収しつつ、函体構造物15を既存地下構造物30下方の地盤に推進するようになっている。
【0032】
すなわち、本実施形態では、函体構造物15の推進方向の先端部には、箱形ルーフ20との間に介在して、函体構造物15の断面形状に沿った外周形状を有する一対の矩形枠体18a,18bを備える、ルーフ支持鋼殻17が設置されている(図5図6参照)。ルーフ支持鋼殻17は、ルーフ側矩形枠体18a及び函体側矩形枠体18bと、これらの矩形枠体18a,18bを平行に並べた状態で接合一体化する、複数の連結鋼材19とを含んで構成されている。ルーフ支持鋼殻17が介在していることで、矩形枠体18a,18bの間に、箱形ルーフパイプ10の単位コの字状下部ピース12cが通過可能で、且つ作業員が立入り可能な間隔部分が保持される。またルーフ支持鋼殻17は、ルーフ側矩形枠体18aの上辺部鋼材の上に、天面部箱形ルーフの後端部分を載置させて当該後端部分を下方から支持すると共に、函体側矩形枠体18bを函体構造物15の前面に当接させた状態で、函体構造物15の推進に伴って、函体構造物15と共に前進できるようになっている。
【0033】
そして、本実施形態では、箱形ルーフ20の内側の地盤を切羽部28において掘削しつつ、函体構造物15を推進させる際に、ルーフ側矩形枠体18aと函体側矩形枠体18bとの間隔部分の直上に張り出してきた、天面部箱形ルーフ21を構成する各々の箱形ルーフパイプ10の後端部の単位コの字状下部ピース12cを、これらの間隔部分を介して函体構造物15の内側に回収して、順次撤去することができるようになっている(図7図8参照)。
【0034】
また、単位コの字状下部ピース12cを撤去する際に、函体構造物15の先端と切羽部28との間の部分における上方からの荷重は、先端部分が耐荷ローラ部材14を介して函体構造物15の天面部15aに載置された、フリクションカット部材として機能するコの字状上部扁平ピース11によって、下方から支持されることになる。本実施形態では、図1(a)、(b)に示すように、コの字状上部扁平ピース11は、両側の側部が下方に折れ曲がった、扁平なコの字状の断面形状を備えていることで、平坦な形状のフリクションカットプレートと比較して、相当の剛性を備えることになるので、安定した状態で、上方からの荷重を支持することが可能になる。これに加えて、本実施形態では、コの字状上部扁平ピース11は、これの天板部11aの下面側に、帯板形状の高さ調整金物13が、一対の線状凸リブ11cを介して固着された状態で取り付けられているので、これらの高さ調整金物13や線状凸リブ11cにより剛性がさらに高められることによって、より安定した状態で、上方からの荷重を支持することが可能になる。
【0035】
さらに、本実施形態では、天面部箱形ルーフ21を構成する各々の箱形ルーフパイプ10の後端部における単位コの字状下部ピース12cを、コの字状上部扁平ピース11を構成する単位コの字状上部扁平ピースから分離して順次撤去したら、残ったコの字状上部扁平ピース11の天板部11aの下面に取り付けられた、高さ調整金物13の下面側に、耐荷ローラ部材14を、好ましくはルーフ支持鋼殻17のルーフ側矩形枠体18aと函体側矩形枠体18bとの間隔部分での作業によって、箱形ルーフパイプ10の軸方向に所定の間隔をおいて配置した状態で取り付ける。耐荷ローラ部材14は、好ましくは箱形ルーフパイプ10の軸方向と垂直で、且つコの字状上部扁平ピース11の天板部11aの上面と平行な回転軸を有する回転ローラ14aの下端部が、天板部11aから例えば200mm程度の高さ位置に配置されるように、好ましくは高さ調整プレートを介在させて高さを調整した状態で、取り付けることができる。これによって、フリクションカット部材として機能するコの字状上部扁平ピース11を、耐荷ローラ部材14の回転ローラ14aを介在させた状態で、函体構造物15の天面部15aに載置させることが可能になって、これらの間に大きな摩擦力が生じないようにすることで、複数の単位函体16による函体構造物15を、コの字状上部扁平ピース11をフリクションカット部材として機能させながら、スムーズに移動させつつ推進させることが可能になる。
【0036】
これらによって、本実施形態のアンダーパス工法用箱形ルーフパイプ10によれば、パイプの外側に補強用の鋼材を設けることなく、より簡易な構成によって、上方からの荷重を効果的に支持できると共に、フリクションカット部材として機能するコの字状上部扁平ピース11の下方を通過してゆく函体構造物15との間に大きな摩擦力を生じさせることなく、効果的にフリクションカットすることが可能になる。また箱形ルーフパイプ10の全断面以外の余分な領域まで、掘削する必要もない。
【0037】
このようにして、本実施形態では、函体構造物15が地中に推進されて、函体構造物15の先端が、例えば既存構造物30を挟んだ推進方向の前方側の先端到達部分の鏡部改良地盤に至ることで、既存地下構造物30の直下部分を横断して設置された当該函体構造物15による、地下空間26が形成されることになる(図9図10参照)。形成された地下空間26は、例えば他の既存の設備構造物40における地下空間26と対応する部分の側壁40aを撤去することによって、既存の設備構造物40と連通させて用いることができる(図9参照)。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されることなく種々の変更が可能である。例えば、下方の地盤に函体構造物による地下空間が形成される既存構造物は、地下鉄用の既存構造物や道路用の既存構造物等の他、ビルの地下室や下水用の管路等の、その他の種々の既存構造物であっても良い。また、本発明のアンダーパス工法用箱形ルーフパイプを用いた天面部箱形ルーフや、これと置き換えられる函体構造物は、既存構造物を挟んだ到達側にも作業用立坑を設けて、到達側の作業用立坑に向けて推進させるようにしても良い。到達側にも作業用立坑が設けられている場合には、アンダーパス工法として、到達側の作業用立坑で箱形ルーフの内側に残置された地盤や土砂を撤去する、SFT工法(登録商標)において、本発明の箱形ルーフパイプを用いた天面部箱形ルーフを採用することもできる。
【0039】
10 アンダーパス工法用箱形ルーフパイプ
10’,10” 箱形ルーフパイプ
10a 側板部
10b 底板部
11 コの字状上部扁平ピース
11a 天板部
11b 上部フランジ
11c 線状凸リブ
12 コの字状下部ピース
12a 下部フランジ
12b 係合ピン
12c 単位コの字状下部ピース
13 高さ調整金物
14 耐荷ローラ部材
14a 回転ローラ
15 函体構造物
15a 天面部
16 単位函体
16a プレキャストピース
17 ルーフ支持鋼殻
18a ルーフ側矩形枠体
18b 函体側矩形枠体
19 連結鋼材
20 箱形ルーフ
21 天面部箱形ルーフ
22 側面部箱形ルーフ
23 底面部箱形ルーフ
26 地下空間
27 推進設備
28 切羽部
30 既存構造物
31 作業用立坑
32 土留壁
40 既存の設備構造物
40a 地下空間と対応する部分の側壁
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10